説明

車両用気液分離装置

【課題】気液分離性能を向上させる車両用気液分離装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、車両に搭載する気液分離装置であって、入口管(21)と、前記入口管(21)を側壁に連設し、その入口管(21)に比べて流路断面積を急拡大させて、その入口管(21)から流入したガスから液体を分離する気液分離部(11)と、前記気液分離部(11)の側壁の内面に突き出るように形成され、上方から気液分離部(11)の天井を透視したときに、中心軸の延長線が入口管(21)の中心軸の延長線と鋭角又は直角を成して交叉し、気液分離部(11)で液体が分離されたガスが流出する出口管(22)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用気液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気液混合ガスから液体を遠心分離する遠心式気液分離装置が知られている。従来の気液分離装置は、気液混合ガスが流入する入口管を円筒状の本体部の接線方向に設け、液体が分離されたガスが流出する出口管を本体部の天板部の中央に内部に突出させて設けている。そして入口管から流入される気液混合ガスが旋回流となり遠心力が働く。このためガス中の密度が大きい液体は壁面側に集まり、密度が小さいガスは中央に集まる。よって中央に集まったガスは出口管から外部に流出される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−358995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし車両用の気液分離装置のように上下方向の配置空間の制約が厳しい場合は、気液分離装置の出口管を本体部の天板部に上下方向に設けると本体部の高さが低くなって容量が減るので気液分離率が低下する懸念がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、気液分離性能を向上させる車両用気液分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明の車両用気液分離装置は、入口管と、入口管を側壁に連設し、その入口管に比べて流路断面積を急拡大させて、その入口管から流入した気液混合ガスから液体を分離する気液分離部とを有する。さらに気液分離部の側壁の内面に突き出るように形成され、上方から気液分離部の天井を透視したときに、中心軸の延長線が入口管の中心軸の延長線と鋭角又は直角を成して交叉し、気液分離部で液体が分離されたガスが流出する出口管を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入口管から気液分離部に流入する気液混合ガスは気液分離部で流速が低減してから出口管に流れる。気液混合ガスの流速が低下するとガス中に重い液体は下方に落ちやすくなる。これにより出口管からは気液分離部で液体が分離されたガスが流出する。さらに出口管は気液分離部の側壁の内面に付着した液体が側壁を伝って流出するのを防止する構造なので、気液分離性能を向上させる。また気液分離の方法は遠心力を利用する遠心式ではなくガス成分の重力によって分離する重力式を採用するので、出口管を気液分離部の天井面中央に設ける必要がなく気液分離部の高さ方向に設置空間の制約がある場合にも気液分離部の天井を制約空間ぎりぎりに設けることができるので気液分離性能の向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の気液分離装置が搭載される領域を示す図である。
【図2】第1実施形態の燃料電池システムの概略構成図である。
【図3】本発明による車両用気液分離装置の第1実施形態を示す構造図である。
【図4】第1実施形態の気液分離装置の気液分離率を比較例の遠心式気液分離装置と比較した図である。
【図5】本発明による車両用気液分離装置の第2実施形態を示す構造図である。
【図6】本発明による車両用気液分離装置の第3実施形態を示す構造図である。
【図7】本発明による車両用気液分離装置の第4実施形態を示す構造図である。
【図8】第4実施形態の気液分離部の側壁に設けられる溝の周辺構造図である。
【図9】第4実施形態の気液分離装置における入口管及び出口管の流路断面積と気液分離率との関係図である。
【図10】本発明による車両用気液分離装置の第5実施形態を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の気液分離装置1が搭載される領域を示す図である。
【0012】
本実施形態の気液分離装置1は、車両の燃料電池システム100の構成要素である。燃料電池システム100は、車両の床面に取り付けられる。燃料電池システム100は乗員が座る前部座席から後部座席に亘る車内居室空間の下に配置され、広い室内空間が確保されている。
【0013】
図2は、本実施形態の燃料電池システム100の概略構成図である。
【0014】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック110と、アノードガス供給機構120と、カソードガス供給機構130と、を備える。
【0015】
燃料電池スタック110は、積層された複数枚の燃料電池を含み、車両の駆動に必要な電力を発電する。燃料電池は電解質膜を燃料極であるアノード電極と酸化剤極であるカソード電極とによって挟んだ構造である。一般に車両用の燃料電池は燃料の水素をアノード電極(マイナス極)に供給して酸化反応させて、空気中の酸素をカソード電極(プラス極)に供給して還元反応させる。燃料電池は、単体では得られる電圧が小さいため数百枚の燃料電池を積層して使用する。このときアノード電極に供給する水素を含有するガスをアノードガス、カソード電極に供給する酸素を含有するガスをカソードガスという。
【0016】
アノードガス供給機構120は、燃料電池スタック110のアノード電極側に設けられ、アノード電極にアノードガスを供給し、アノード電極から排出されるアノードオフガスの未反応水素をアノードガスに還流して水素の利用効率を高めている。アノードガス供給機構120は、燃料タンク121と、アノードガス供給通路122と、気液分離装置1と、アノードオフガス還流通路123と、排水通路124と、排水バルブ124aと、循環ポンプ125と、アノードオフガス排出通路126と、アノードオフガス排出バルブ126aと、を備える。
【0017】
まずアノードガスが燃料タンク121からアノードガス供給通路122を通って燃料スタック110のアノードガス入口孔111aに供給される。そして燃料電池スタック110で電極反応が起こり、燃料電池スタック110のアノードオフガス出口孔111bからアノードオフガスが排出される。ここでアノードオフガスとは、燃料電池のアノード電極から排出されるガスのことで、未反応水素ガス及び多くの水分を含有している。アノードオフガスは気液分離装置1に流入する。そして気液分離装置1でアノードオフガスの液水が分離される。液水が分離されたアノードオフガスは再び下流のアノードオフガス還流通路123に戻されて循環ポンプ125によってアノードガス供給通路122に流される。このとき余分なアノードオフガスはアノードオフガス排出通路126に流され、アノードオフガス排出バルブ126aで調整されてシステム外部へ排出される。またアノードガス供給通路122に戻されるアノードオフガスは再び燃料として燃料電池スタック110に供給される。気液分離装置1でアノードオフガスから分離された液水は排水通路124に流され、排水バルブ124aで調整されてシステム外部に排水される。
【0018】
カソードガス供給機構130は、燃料電池スタック110のカソード電極側に設けられ、コンプレッサ131と、カソードガス供給通路132と、カソードオフガス排出通路133と、を備える。カソードガスはコンプレッサ131を通じて外部から取り込まれた空気であって、カソードガス供給通路132を通って燃料電池スタック110のカソード電極に供給される。そして燃料電池スタック110で電極反応が起こり、燃料電池スタック110から排出されるカソードオフガスがカソードオフガス排出通路133を通って外部へ排出される。
【0019】
続いて本発明である気液分離装置1の構造について説明する。
【0020】
図3は、本発明による気液分離装置1の第1実施形態を示す構造図である。図3(A)は、上方から気液分離装置1の天井を透視した図である。図3(B)は、図3(A)のB−B断面図である。図3(C)は、図3(A)のC−C断面図である。
【0021】
気液分離装置1は、気液分離部11と、貯留部12と、入口管21と、出口管22と、排水管23と、を備える。
【0022】
気液分離部11は、円筒形状である。気液分離部11の側壁には、アノードオフガスの入口管21と出口管22とが設けられる。気液分離部11は、入口管21及び出口管22に比べて流路断面積が大きい。気液分離部11は、重力方向の下方で貯留部12と連続する。気液分離部11では、入口管21から内部に流入されたアノードオフガスから液水を分離する。そして液水が分離されたアノードオフガスは出口管22を通って外部へ流出する。気液分離部11でアノードオフガスから分離された液水は、重力によって下方の貯留部12に貯められる。
【0023】
貯留部12は、気液分離部11と同じ断面で円筒形状である。貯留部12は、気液分部11の重力方向の下方に配置される。貯留部12には、側壁に排水管23が設けられる。貯留部12には気液分離部11でアノードオフガスから分離された液水が貯められ、貯められた液水は排水管23から外部に排出される。
【0024】
入口管21は、気液分離部11の側壁に連接される。入口管21は、図3(A)に示すように上面からみたときに中心軸の延長線が気液分離部11の断面中心を通るように配置される。入口管21は、図3(C)に示すように側面からみたときに気液分離部11の内部に向かって斜め下に傾斜して配置される。入口管21の流路断面形状は出口管22と同一断面で円形状である。入口管21には、燃料電池システム100のアノードオフガス還流通路123の上流側を流れるアノードオフガスが流れる。そしてアノードオフガスは入口管21を通って気液分離部11に流入する。
【0025】
出口管22は、気液分離部11の側壁の内面に突き出るように形成される。出口管22は、図3(A)に示すように上面からみたときに中心軸の延長線が入口管21の中心軸の延長線と気液分離部11の断面中心で直交するように配置される。出口管22は、図3(B)に示すように側面からみたときに気液分離部の内部に向かって斜め上に傾斜して配置される。出口管22の流路断面積は、入口管21の流路断面積と同じである。出口管22は、気液分離部11で液水を分離されたアノードオフガスを下流に流す。そして出口管22を流れるアノードオフガスは、燃料電池システム100のアノードオフガス還流通路123の下流側を流れる。
【0026】
排水管23は、貯留部12の下方の側壁に連接される。排水管23は、貯留部12に貯まった水を外部に排水する。排水管23は、燃料電池システム100の排水通路124に連通する。
【0027】
本実施形態の作用について説明する。入口管21から気液分離部11に流入したアノードオフガスは、液水を含んでいる。入口管21から気液分離部11に流れると流路断面積が拡大するのでアノードオフガスの流速が低速になる。よって、アノードオフガスは重力の影響を大きく受けることになる。気液分離部11の内部を流れる間に重力によってアノードオフガスから液水が分離されて下方の貯留部12に落ちる。そして気液分離部11に残った、液水が取り除かれたアノードオフガスが出口管22から流出する。貯留部12に溜まる液水は排水管23から適宜排水される。
【0028】
このように本発明の気液分離装置1は、ガスの旋回流の遠心力によって気液分離するのではなく、重力によって気液分離する。
【0029】
図4は、本実施形態の気液分離装置1の気液分離率を比較例の遠心式気液分離装置と比較した図である。横軸は、入口管21から流入するアノードオフガスに含まれる液水量を示す。入口管21から流入するアノードオフガスが多くなるほど、流入液水量は増える。縦軸は、前述した流入液水量に対して、気液分離部11で分離されて貯留部12に溜まった液水量の割合を示す。流入液水量に対する貯留液水量の割合が大きいほど気液分離率が高い。また、このとき双方の気液分離装置の気液分離部、入口管及び出口管は同じサイズのものとし、気液分離部に流入する流入液水量を変化させて気液分離率を測定する。
【0030】
図4によると、本実施形態の重力式気液分離装置1は比較例の遠心式気液分離装置に比べて気液分離率が高い。そして流入液水量が増えると気液分離率は低下する傾向にある。比較例の遠心式気液分離装置は、流入液水量の増加に対する気液分離率の低下が著しい。これに対して本実施形態の重力式気液分離装置1は、流入液水量が増えても気液分離率の低下を若干に抑えられる。遠心式気液分離装置はガスの旋回流による遠心力を利用している。そして遠心力は質量の影響を受ける。一般に水素より水の密度が大きい。本実施形態のアノードオフガスの場合は、遠心力により液水が気液分離部11の側壁側に集まって水素ガスが気液分離部11の中心に集まることでアノードオフガスから液水が分離される。このため遠心式の場合は、流入するガス量に対して適度な気液分離部11の容量が必要である。図4では一定容量の気液分離部11に対して流入するガス量を増やしているので、ガス量が多くなると水素ガスと液水との分離率が低下する。そして重力式気液分離装置1は遠心力を利用せず、アノードオフガスの流速を気液分離部11で減速させて重力によって水素ガスと液水とを分離する。このため一定容量の気液分離部11に対して流入するガス量が増えると側壁に付着する液水量が増えることが考えられるが遠心式ほどの気液分離率の低下はない。
【0031】
本実施形態によれば、入口管21及び出口管22を気液分離部11の側壁に配置して遠心式ではなく重力式の気液分離方法を採用する。これにより流入液水量が多くても良好な気液分離率を保つことができる。
【0032】
気液分離部11は、入口管21及び出口管22に比べて流路断面積が大きい。このため気液分離部11に流入したアノードオフガスの流速は低減されて重力の影響を受けやすくなる。流速が低減するほど重力によってアノードオフガスから分離される液水量が増えるので、気液分離率が向上する。
【0033】
このとき入口管21及び出口管22は、気液分離部11の側壁に設けられる。これにより本実施形態のように上下方向に厳しい空間制約があるような場合に、気液分離部11の高さを空間の許容限界まで設定することが可能である。気液分離部11の容量が大きいと気液分離率が向上する。このため空間制約がある中で最適な気液分離性能を得ることができる。
【0034】
また入口管21及び出口管22は、互いの中心軸の延長線が直交する。これにより入口管21及び出口管22が向かい合わない。そして入口管21から流入するアノードオフガスが気液分離部11に滞留せず液水が分離されないままに出口管22に流れるのを防止することができる。本実施形態では入口管21及び出口管22の互いの中心軸の延長線が直交しているが、鋭角を成すように交叉する場合も互いが向かい合わないので同様の効果が得られる。
【0035】
さらに入口管21及び出口管22の中心軸の延長線はそれぞれ気液分離部11の中心軸と交叉する。すなわち入口管21及び出口管22は気液分離部11の内部中心に向かって配置される。これにより入口管21から気液分離部11の内部中心に向かって流入するアノードオフガスは、気液分離部11の側壁の内面に到達するまでにその流速が低減する。このためアノードオフガスが気液分離部11の側壁の内面に衝突して生じる乱流を防止することができる。また気液分離部11の側壁の内面への液水付着も防止することができる。
【0036】
また出口管22は、気液分離部11の側壁の内面に突き出して設けられる。これにより気液分離部11の側壁の内面に付着した液水が側壁を伝って出口管22から流出するのを防止することができる。また出口管22を気液分離部11において車両後方にあたる側壁に配置するとブレーキによる慣性力で貯留部12の液水が車両前方に揺れて出口管22から流出するのを防止することができる。
【0037】
また入口管21及び出口管22を気液分離部11の側壁に設けるので、車両の前後左右方向に流路が延びる。車両の前後左右方向は上下方向に比べてスペースに余裕がある。このため入口管21及び出口管22の流路を気液分離部11の開口からある程度直線に設けることができる。これにより入口管21及び出口管22の開口付近の流路抵抗を小さくしてガスの流入及び流出をスムーズにすることができる。
【0038】
また気液分離部11と貯留部12とは、同一断面の円筒形状とする。気液分離部11と貯留部12とはそれぞれの側壁の内面が連続する。また気液分離部11と貯留部12との間に介在するものはない。このため気液分離部11で分離した液水が貯留部12に落下する間、液水の落下を妨げるものはなく、分離した液水はほとんど貯留部12に溜めることができる。よって気液分離部11での気液分離性能を維持することができる。
【0039】
以上の効果が得られることから、本実施形態において気液分離性能が向上する。
【0040】
(第2実施形態)
図5は、本発明による気液分離装置1の第2実施形態を示す構造図である。図5(A)は、上方から気液分離装置1の天井を透視した図である。図5(B)は、図5(A)のB−B断面図である。図5(C)は、図5(A)のC−C断面図である。なお以下では前述した内容と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0041】
本実施形態では、第1実施形態から出口管22の配置を変更する。図5(B)に示すように出口管22を気液分離部11の側壁に対して垂直に、すなわち地面に対して水平に配置する。また本実施形態の気液分離部11の高さは、第1実施形態から低くなっている。気液分離部11の高さは必要最低限とする。
【0042】
本実施形態によれば、出口管22を水平に配置する。このため出口管22を上向きに配置する場合に比べて、出口管22よりも上方の空間に流れるアノードオフガスから重力によって分離される液水が下方の貯留部12に落下せずに出口管22から流出するのを防ぐことができる。また出口管22を下向きに配置する場合に比べて、出口管22の下方に位置する貯留部12に溜められる液水が車両の振動等により跳ねかえって気液分離部11に戻るようなときに出口管22からの液水の流出を防ぐことができる。特に本実施形態のように気液分離部11の高さ制約が厳しく必要最低限の高さしか確保できない場合に出口管22を水平に配置することは、上下方向からの出口管22への液水の流入を防止するのに有効である。よって出口管22への液水流入を防止するので、気液分離性能が向上する。
【0043】
(第3実施形態)
図6は、本発明による気液分離装置1の第3実施形態を示す構造図である。図6(A)は、上方から気液分離装置1の天井を透視した図である。図6(B)は、図6(A)のB−B断面図である。図6(C)は、図6(A)のC−C断面図である。
【0044】
本実施形態では、第2実施形態から入口管21の配置を変更する。図6(C)に示すように入口管21を気液分離部11の側壁に対して垂直に、すなわち地面に対して水平に配置する。さらに本実施形態では、入口管21及び出口管22をそれぞれの中心軸が気液分離部11の高さを等分する位置となるように配置する。
【0045】
本実施形態によれば、入口管21を水平に配置する。このため入口管21を上向きに配置する場合に比べて、入口管21よりも上方の空間に流れるアノードオフガス量を低減することができる。また入口管21を下向きに配置する場合に比べて、貯留部12の液面に入口管21からのアノードオフガスの流れが届くのを防止できるので、貯留部12の液水の攪拌や飛散を防止することができる。さらに入口管21の高さ方向の配置を気液分離部11の高さの中間にするので、前述した入口管21の上方空間に流れるアノードオフガス量の低減効果及び貯留部12の液水の攪拌や飛散の防止効果をバランスよく得ることができる。また出口管22も入口管21と同様に高さ方向の配置を気液分離部11の高さの中間にする。これにより出口管22より上方で分離された液水の流入防止効果及び貯留部12の液水の流入防止効果をバランスよく得ることができる。特に本実施形態のように気液分離部11の高さが必要最低限しかない場合に、入口管21及び出口管22を本実施形態のような配置にすることは気液分離性能を保つのに有効である。言い換えると入口管21及び出口管22を気液分離部11の上下方向の中間に水平に配置することで、気液分離部11の容量に対する気液分離性能を向上させることができる。また気液分離性能が向上した分、気液分離部11の必要高さを低くすることも可能となるので、気液分離装置1をコンパクト化できる。よって気液分離性能や車両搭載性が向上する。
【0046】
(第4実施形態)
図7は、本発明による気液分離装置1の第4実施形態を示す構造図である。図7(A)は、上方から気液分離装置1の天井を透視した図である。図7(B)は、図7(A)のB−B断面図である。図7(C)は、図7(A)のC−C断面図である。
【0047】
本実施形態では、第3実施形態から入口管21の流路断面積Aiと出口管22の流路断面積Ao及び突出量L0とを変更する。また出口管22と気液分離部11の側壁との間には側壁の内面に開口して溝11aが設けられる。さらに気液分離装置1の上面中央から上下方向に水位センサ30が設けられる。
【0048】
入口管21の流路断面積Aiは、出口管22の流路断面積Aoよりも大きく設定する。出口管22の流路断面積Aoは、気液分離部11で液水を分離したアノードオフガスを流出するための必要最低限の断面積とする。出口管22の突出量L0は、気液分離部11の側壁の内面から水位センサ30の測定管31の壁面までの距離L1の半分とする。溝11aは、出口管22の外周面に沿って形成される。水位センサ30の測定管31は気液分離部11の天井から貫通して気液分離部11を通り貯留部12の液面の位置を測定する。
【0049】
ここで気液分離部11の側壁に設けられる溝11a及び出口管22について説明する。図8は、本実施形態の気液分離部11の側壁に設けられる溝11aの周辺構造図である。図8(A)は、図7(A)のB−B断面を気液分離部11の部分だけ拡大した図である。図8(B)は、出口管22の分解斜視図である。
【0050】
溝11aは、出口管22の外周面に沿って気液分離部11の側壁に、側壁の内面に開口して形成される。出口管22は、突出部22aと、側壁内部22bと、ガス還流通路部22cと、からなる。突出部22aは、気液分離部11の側壁の内面から内部空間へ突出する。側壁内部22bは、一端が突出部22aに連続して気液分離部11の側壁を通って、他端がガス還流通路部22cに連続する。側壁内部22bとガス還流通路部22cとは、互いの配管のフランジ部分でボルト結合される。ガス還流通路部22cは、側壁内部22bに直交して設けられ、前述した燃料電池システム100のアノードオフガス還流通路123に接続する。溝11aは出口管22の側壁内部22bの外周面と、気液分離部11の側壁との間に形成される。
【0051】
また入口管21の流路断面積Aiを出口管22の流路断面積Aoよりも大きくする。ここで入口管21の流路断面積Aiと出口管22の流路断面積Aoとの大小関係が気液分離率に及ぼす影響を説明する。図9は、本実施形態の気液分離装置における入口管及び出口管の流路断面積と気液分離率との関係図である。横軸の流入液水量及び縦軸の気液分離率は、図4で説明した通りそれぞれ入口管21から流入するアノードオフガスに含まれる液水量と、流入液水量に対して気液分離部11で分離されて貯留部12に溜まった液水量の割合とを示す。そして入口管21の流路断面積Aiを出口管22の流路断面積Aoよりも大きく設定したときの流入液水量と気液分離率との関係をプロットして図中の三角で示す。同一流入液量のときに複数の三角印があるのは、入口管21の流路断面積Aiと出口管22の流路断面積Aoとの断面積の差を変えて測定しているからである。双方の断面積の差が大きくなるほど、気液分離率は高くなる。同様に入口管21の流路断面積Aiを出口管22の流路断面積Aoよりも小さく設定したときの流入液水量と気液分離率との関係をプロットして図中のひし形で示す。このとき双方の断面積の差が大きくなるほど、気液分離率は低くなる。なお入口管21の流路断面積Ai及び出口管22の流路断面積Aoを除いて他は同じ仕様とする。
【0052】
図9によると、入口管21の流路断面積Aiを出口管22の流路断面積Aoよりも大きく設定するほうが、入口管21の流路断面積Aiを出口管22の流路断面積Aoよりも小さく設定するときよりも気液分離率が高い。また入口管21の流路断面積Aiが出口管22の流路断面積Aoよりも大きい場合は、流路断面積の差が大きいほど気液分離率が上がる傾向にある。逆に入口管21の流路断面積Aiが出口管22の流路断面積Aoよりも小さい場合は、流路断面積の差が大きいほど気液分離率が下がる傾向にある。これらの傾向は、流入液水量が増えても変わらない。これは入口管21の流路断面積Aiを大きく設定したほうが、気液分離部11に流入するアノードオフガスの流速が低減し、液水が落下し易くなるためと考えられる。また出口管22の流路断面積Aoは小さく設定したほうが、液水の流出を防止することができる。
【0053】
本実施形態によれば、入口管21の流路断面積Aiを出口管22の流路断面積Aoよりも大きく設定する。これにより入口管21から気液分離部11に流入するアノードオフガスの流速が低減されるので、気液分離部11で液水が分離しやすい。
【0054】
また出口管22の流路断面積Aoは、気液分離部11で液水を分離したアノードオフガスを流出するための必要最低限の断面積とする。これにより出口管22からの液水の流出を防止することができる。
【0055】
また出口管22の気液分離部11の空間への突出量L0を気液分離部11の側壁の内面から水位センサ30の測定管31までの距離L1の半分とする。すなわち出口管22の突出量L0は、気液分離部11の側壁の内面と、出口管22を延長して最初に突きあたる壁面と、の間の距離の半分とする。これにより気液分離部11の側壁の内面を伝って出口管22から流出する液水量と、水位センサ30の測定管31の壁面に付着する液水の跳ねかえりによって出口管22から流出する液水量と、をバランスよく抑制することができる。
【0056】
さらに出口管22の外周面に沿って気液分離部11の側壁に、側壁の内面に開口して溝11aを形成する。これにより気液分離部11の側壁の内面を伝う液水が出口管22から流出しづらくなる。
【0057】
以上の効果が得られることから、本実施形態ではさらに気液分離性能が向上する。
【0058】
(第5実施形態)
図10は、本発明による気液分離装置1の第5実施形態を示す構造図である。図10(A)は、上方から気液分離装置1の天井を透視した図である。図10(B)は、図10(A)のB−B断面図である。図10(C)は、図10(A)のC−C断面図である。
【0059】
本実施形態では、第4実施形態から貯留部12の円筒の円断面積を気液分離部11の円筒の円断面積よりも大きくする。
【0060】
本実施形態によれば、貯留部12の断面積を気液分離部11の断面積よりも大きくする。本実施形態のように気液分離装置1を車両に搭載する場合には、車両の加速減速時には前後Gがかかりコーナリング時には横Gがかかるので、貯留部12の液面が揺動する。このように貯留部12の液水が偏っても、貯留部12の側壁の内面は気液分離部11の側壁の内面と連続しておらず、貯留部12の液水が壁伝いに気液分離部11に戻って出口管22から流出するのを防止できる。また貯留部12の断面積が気液分離部11の断面積よりも大きいので、貯留部12の液水が揺動して側壁にあたっても貯留部12の天井を伝うにとどまる。よって貯留部12の液水が気液分離部11に戻るのを防止できるので、気液分離部11の気液分離性能を維持することができる。
【0061】
また本実施形態の気液分離部11及び貯留部12はそれぞれ均一断面の円筒形状であるが、均一断面でない場合は気液分離部11と貯留部12との境界において気液分離部11の断面積よりも貯留部12の断面積のほうが大きくなるようにすれば同様の効果が得られる。
【0062】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。
【0063】
例えば実施形態は燃料電池用の気液分離装置で説明をしたが、本発明の気液分離装置は燃料電池用に限らず適用することが可能である。例えば内燃機関においてブローバイガスから潤滑油を分離するブリーザ装置のような流体から液体を分離する装置に適用できる。また気液分離部及び貯留部の形状を同一断面の円筒形状としたがこれに限らない。円筒形状は加工しやすいのでコストが低い利点があるが、搭載スペースの制約等により直方体などにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 気液分離装置
11 気液分離部
11a 溝
12 貯留部
21 入口管
22 出口管
22a 突出部
23 排出管
30 水位センサ
31 測定管
100 燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載する気液分離装置であって、
入口管と、
前記入口管を側壁に連設し、その入口管に比べて流路断面積を急拡大させて、その入口管から流入したガスから液体を分離する気液分離部と、
前記気液分離部の側壁の内面に突き出るように形成され、上方から気液分離部の天井を透視したときに、中心軸の延長線が前記入口管の中心軸の延長線と鋭角又は直角を成して交叉し、気液分離部で液体が分離されたガスを流出する出口管と、
を含む車両用気液分離装置。
【請求項2】
前記入口管は、燃料電池システムのアノードオフガス還流通路の上流側に接続され、
前記出口管は、燃料電池システムのアノードオフガス還流通路の下流側に接続され、
前記気液分離部は、アノードオフガス還流通路を流れるオフガスから液水を分離する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用気液分離装置。
【請求項3】
前記入口管及び前記出口管の中心軸の延長線は、それぞれ前記気液分離部の中心軸と交叉する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用気液分離装置。
【請求項4】
前記入口管は、水平に配置される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用気液分離装置。
【請求項5】
前記出口管は、水平に配置される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用気液分離装置。
【請求項6】
前記入口管及び前記出口管は、前記気液分離部の上下方向の中央に配置される、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用気液分離装置。
【請求項7】
前記出口管の外周には、前記気液分離部の側壁の内面に開口する溝が設けられる、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両用気液分離装置。
【請求項8】
前記出口管は、前記気液分離部の側壁の内面から突き出る突出量を、内面から出口管を延長して最初に突き当たる壁面までの距離の略半分にする、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用気液分離装置。
【請求項9】
前記入口管の流路断面積は、前記出口管の流路断面積以上である、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両用気液分離装置。
【請求項10】
前記気液分離部の下方に設けられ、ガスから分離された液体を貯める貯留部を有し、
前記貯留部と前記気液分離部との境界において、貯留部の断面積は気液分離部の断面積以上である、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車両用気液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−16039(P2011−16039A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160677(P2009−160677)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】