説明

車両用灯具ユニット

【課題】個別に点消灯制御される複数の照射領域間に隙間(周囲よりも暗い部分)ができるのを防止又は低減することが可能な車両用灯具ユニットを提供する。
【解決手段】車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、前記投影レンズの車両後方側焦点面よりも後方側に配置された光源ユニットと、を備えた車両用灯具ユニットにおいて、前記光源ユニットは、前記投影レンズの焦点面近傍に配置され、車幅方向に配置された両側面を含む中実の複数の導光レンズ部と、出射面から出射する光を放射する複数の発光素子と、を備えており、前記複数の導光レンズ部はそれぞれ、前記出射面から入光面の後端縁に向かうにつれ前記両側面のうち一方の側面と他方の側面との間の厚みが薄くなる楔形状とされるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具ユニットに係り、特に個別に点消灯制御される複数の照射領域間に隙間(周囲よりも暗い部分)ができるのを防止又は低減することが可能な車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個別に点消灯制御される複数の照射領域を含む配光パターンを形成する車両用灯具ユニットが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図11に示すように、特許文献1に記載の車両用灯具ユニット200は、内周面211に鏡面処理が施された複数の筒状部材210と、リフレクタ220を介して筒状部材210の一端212から筒状部材210内に入射し鏡面処理が施された内周面211で反射されて筒状部材210の他端213(出射口)から出射する光を発光する複数の発光素子230等を備えている。複数の筒状部材210の出射口213は、投影レンズ240の後側焦点面近傍に配置されている。
【0004】
上記構成の特許文献1に記載の車両用灯具ユニット200においては、発光素子230からの光は、リフレクタ220を介して対応する筒状部材210の一端212から筒状部材210内に入射し鏡面処理が施された内周面211で反射されて出射口213から出射し、出射口213に均一(又は特定)の光度分布を形成する。出射口213(すなわち、出射口213に形成される光度分布)は、投影レンズ240の作用により前方に反転投影され、個別に点消灯制御される複数の照射領域を含む配光パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−070679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成の車両用灯具ユニット200においては、複数の出射口213のうち互いに隣接する出射口213の間に肉厚部分Bが存在するため、この肉厚部分Bが前方に投影され、個別に点消灯制御される複数の照射領域間に隙間(周囲よりも暗い部分)ができてしまう、という問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、個別に点消灯制御される複数の照射領域間に隙間(周囲よりも暗い部分)ができるのを防止又は低減することが可能な車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、前記投影レンズの車両後方側焦点面よりも後方側に配置された光源ユニットと、を備えた車両用灯具ユニットにおいて、前記光源ユニットは、前記投影レンズの焦点面近傍に配置され、略鉛直方向に延びて上端縁が前記光軸よりも上に位置する出射面、前記出射面の上端縁から車両後方側に向かって略水平方向に延びる入光面、前記出射面の下端縁から前記入光面の後端縁に向かって斜め方向に延びる反射面、車幅方向に配置された両側面を含む中実の複数の導光レンズ部と、前記複数の導光レンズ部のうち対応する導光レンズ部の前記入光面から当該導光レンズ部内に導入され、前記反射面及び前記両側面で反射されて、前記出射面から出射する光を放射する複数の発光素子と、を備えており、前記複数の導光レンズ部それぞれの前記出射面は、前記投影レンズの焦点面近傍に略水平方向にかつ隣接して配置されており、前記複数の導光レンズ部は、それぞれの出射面のうち隣接する出射面が互いに連結された導光レンズ体を構成しており、前記複数の導光レンズ部はそれぞれ、前記出射面から前記入光面の後端縁に向かうにつれ前記両側面のうち一方の側面と他方の側面との間の厚みが薄くなる楔形状とされており、前記複数の導光レンズ部それぞれの前記反射面は、これに入射する前記導光レンズ部内に導入された前記発光素子からの光を反射して、前記出射面に所望の照度分布を形成するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、複数の出射面は従来の肉厚部分を間に挟むことなく、投影レンズの焦点面近傍に略水平にかつ隣接して配置されており、かつ、当該隣接配置された複数の出射面(すなわち、各出射面に形成される照度分布)を投影レンズの作用により前方に拡大反転投影する構成であるため、個別に点消灯制御される複数の照射領域(各出射面の反転投影像)間に隙間(周囲よりも暗い部分)ができるのを防止又は低減することが可能となる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明によれば、出射面から入光面の後端縁に向かうにつれ一方の側面と他方の側面との間の厚みが薄くなる楔形状とされた各導光レンズ部の作用により、両側面で反射(全反射)を繰り返して各出射面から出射する光の出射角を狭くすることが可能となる(すなわち、各出射面から出射する光を、水平方向に関し、収束させることが可能となる)。これにより、両側面で反射を繰り返して各出射面から出射する光を、水平方向に関し、投影レンズに効率よく入射させることが可能な、光利用効率の極めて高い車両用灯具ユニットを構成することが可能となる。
【0011】
また、請求項1に記載の発明によれば、各導光レンズ部の反射面の形状を調整し当該反射面に入射する光を制御することで、各出射面に所望の照度分布(例えば、均一な照度分布、特定のムラを持つ不均一な照度分布)を形成することが可能となる。これにより、投影レンズの作用により拡大反転投影される各出射面の反転投影像である照射領域を、所望の照度分布とすることが可能となる。
【0012】
また、請求項1に記載の発明によれば、各導光レンズ部の出射面が、投影レンズの焦点面に沿って略水平にかつ隣接して配置されているため、仮想鉛直スクリーン上に投影される各出射面の投影像である照射領域の輪郭(特に、隣接する照射領域間の境界線)を明瞭にすることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数の発光素子はそれぞれ、前記投影レンズの車両後方側焦点よりも後方側に、発光面が略下向きで、略水平方向に一列に配置されており、前記複数の導光レンズ部それぞれの前記入光面は、前記出射面の上端縁から前記複数の発光素子のうち対応する発光素子側に向かって略水平方向に延びており、前記複数の導光レンズ部はそれぞれ、前記複数の発光素子のうち対応する発光素子からの光が前記入光面から導光レンズ部内に導入されるように、当該対応する発光素子の下方に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、各発光素子は、略水平方向に一列に配置されているため、複数の発光素子が光軸方向に分散配置されている従来と比べ(図11中発光素子230参照)、光軸方向寸法が短い小型の車両用灯具ユニットを構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、個別に点消灯制御される複数の照射領域間に隙間(周囲よりも暗い部分)ができるのを防止又は低減することが可能な車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態である車両用灯具ユニット10を含む右側車両用灯具の横断面図である。
【図2】車両用灯具ユニット10の斜視図である。
【図3】光源ユニット13の斜視図である。
【図4】(a)光源ユニット13の平面図、(b)正面図、(c)側面図、(d)光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である。
【図5】発光素子14から放射される光を説明するための図である。
【図6】光源ユニット13の横断面図である(導光レンズ部16内に導入された発光素子14からの光の光路図を含む)。
【図7】光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である(導光レンズ部16内に導入された発光素子14からの光の光路図を含む)。
【図8】投影レンズ12の光取り込み角αを説明するための図である。
【図9】(a)すれ違いビーム専用の灯具ユニット70により形成される配光パターンP2の例、(b)車両用灯具ユニット10Lにより形成される配光パターンP1Lの例、(c)車両用灯具ユニット10Rにより形成される配光パターンP1Rの例、(d)各配光パターンP1L、P1R、P2を重畳した合成配光パターンの例である。
【図10】(a)遠方に存在する対向車V(又は先行車)をカバーする照射領域に対応する発光素子14を消灯又は減光した場合に形成される合成配光パターンの例、(b)遠方に存在する対向車V(又は先行車)をカバーする照射領域に対応する発光素子14を消灯又は減光した場合に形成される合成配光パターンの例、(c)近辺に存在する対向車V(又は先行車)をカバーする照射領域に対応する発光素子14を消灯又は減光した場合に形成される合成配光パターンの例である。
【図11】従来の個別に点消灯制御される複数の照射領域を含む配光パターンを形成する車両用灯具ユニット200の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具ユニットについて、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は車両用灯具ユニット10及びすれ違いビーム専用の灯具ユニット70を含む前照灯の横断面図、図2は車両用灯具ユニット10の斜視図である。
【0019】
本実施形態の車両用灯具ユニット10は、図1に示すように、ハウジング61と透光カバー62とを組み合わせて構成される灯室60内に、すれ違いビーム専用の灯具ユニット70とともに配置されている。
【0020】
車両用灯具ユニット10及びすれ違いビーム専用の灯具ユニット70は、車両前部の左右両側にそれぞれ配置されている。
【0021】
図2に示すように、車両用灯具ユニット10は、いわゆるダイレクトプロジェクション型の灯具ユニットであり、放熱部材11、車両前後方向に延びる光軸AX上に配置された投影レンズ12、投影レンズ12の車両後方側焦点F12よりも後方側でかつ光軸AX近傍に配置された光源ユニット13等を備えている。
【0022】
放熱部材11は、光軸AXよりも上方に配置された下面11a(略水平面)及び上面11bを含むベース板11c、上面11bに固定された放熱フィン11dを含んでいる。放熱フィン11dは、光軸AX方向ではなく上下方向に延びている。これにより、光軸AX方向に延びた放熱フィンを用いる場合と比べ、車両用灯具ユニット10の光軸AX方向寸法を短くすることが可能となる。
【0023】
投影レンズ12は、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が平面の平凸非球面レンズである。投影レンズ12は、例えば、放熱部材11に固定されたレンズホルダー12aに保持されて光軸AX上に配置されている。
【0024】
図3は光源ユニット13の斜視図、図4(a)は光源ユニット13の平面図、図4(b)は正面図、図4(c)は側面図、図4(d)は光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である。
【0025】
図3〜図4(d)に示すように、光源ユニット13は、発光素子14、導光レンズ15等を備えている。
【0026】
発光素子14は、例えば、青色LEDチップ(例えば、0.7mm角のチップ×7)である。各発光素子14は、発光面14aを略下方に向けて、放熱部材11の下面11aに固定された金属製基板K上に実装されている(図3、図4(c)参照)。各発光素子14は、投影レンズ12の車両後方側焦点F12よりも後方側(例えば、約5mm後方側)を通り略水平方向に延びる円弧に沿って、かつ光軸AXに対して対称に配置されている(図4(a)参照)。各発光素子14を円弧に沿って配置したのは、投影レンズ12の像面湾曲に沿わせるためである。各発光素子14は、光軸AXよりも上方に位置している(図4(c)、図4(d)参照)。中央の5つの発光素子14は一定間隔で配置されており、両端の2つの発光素子14はこれよりも大きい間隔で配置されている(図4(a)参照)。
【0027】
発光素子14(LEDチップ)は黄色蛍光体(例えば、YAG蛍光体)で覆われている。発光素子14はこれに接続された制御装置(図示せず)からの制御に従い個別に点消灯制御される。発光素子14から発生する熱量は放熱部材11の作用により放熱される。なお、発光素子14は7つに限られず、6つ以下又は8つ以上であってもよい。なお、発光素子14は、略点状に面発光する発光チップを有する素子状の光源であればよく、LEDチップに限定されない。発光素子14は、LEDチップ以外の発光ダイオードやレーザダイオードであってもよい。
【0028】
発光素子14の下方には、放熱部材11の下面11aに固定された導光レンズ15が配置されている(図3等参照)。
【0029】
図3、図4(a)等に示すように、導光レンズ15は、各発光素子14の下方に配置された導光レンズ部16(本実施形態では合計7つ)を含んでいる。
【0030】
各導光レンズ部16は、投影レンズ12の焦点面近傍に配置され、略鉛直方向に延びて上端縁が光軸AXよりも上に位置する出射面16a、出射面16aの上端縁から対応する発光素子14側に向かって略水平方向に延びる入光面16b、出射面16aの下端縁から入光面16bの後端縁に向かって斜め方向に延びる反射面16c、車幅方向に配置された側面16d、16e等を含んでいる。
【0031】
各導光レンズ部16の出射面16a〜16aは、従来の肉厚部分(図11中肉厚部分B参照)を間に挟むことなく、投影レンズ12の焦点面に沿って略水平にかつ隣接して配置されている(図4(a)、図4(b)等参照)。光軸AXは、中央の出射面16aの上端縁近傍(例えば、上端縁から下方1[mm]の位置)かつ左右幅の略中央を通って車両前後方向に延びている。投影レンズ12の車両後方側焦点F12は、中央の出射面16aの上端縁近傍(例えば、上端縁から下方1[mm]の位置)かつ左右幅の略中央に位置している。
【0032】
各導光レンズ部16は、隣接する出射面16a〜16aが互いに連結された導光レンズ15を構成している。導光レンズ15(各導光レンズ部16)は、透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)を、金型に注入し、冷却、固化させることで一体成形されている。
【0033】
図4(b)に示すように、中央の5つの出射面16a〜16aは、鉛直方向に長い矩形形状の鉛直平面(例えば、鉛直方向寸法h:6[mm]、左右幅寸法w1:1.5[mm])とされている。一方、両端の2つの出射面16a、16aは、鉛直方向に長い矩形形状の鉛直平面(例えば、鉛直方向寸法h:6[mm]、左右幅寸法w2:4.5[mm])とされている。なお、出射面16a〜16aは矩形形状に限られず、平行四辺形、台形その他の形状であってもよい。また、出射面16a〜16aは、鉛直平面に限られず、投影レンズ12の焦点面に沿って湾曲した曲面であってもよい。
【0034】
図4(a)に示すように、入光面16bの後端縁側の左右幅寸法w3は、発光素子14(の一辺)より大きくかつ出射面16a〜16aの左右幅寸法w1より小さい寸法、例えば1[mm]とされている。出射面16a、16aも同様である。
【0035】
入光面16bのうち後端側領域には、発光素子14(発光面)が近接(又は略密着)して対向している(図4(c)、図4(d)参照)。これにより、発光素子14から放射される中心軸AX14(発光素子14の発光面の中心を通り発光面に対して直角の方向に延びる軸)に対し狭角方向の光Ray1と中心軸AX14に対し広角方向の光Ray2との両方(図5参照)を導光レンズ部16内に入光させることが可能となる。
【0036】
図3、図4(c)に示すように、一方の側面16dは、出射面16aの一方の側方縁、入光面16bの一方の側方縁及び反射面16cの一方の側方縁で囲まれた範囲とされている。一方の側面16dは、例えば、鉛直平面であり、その後端縁側が出射面16a〜16aに対して直角の鉛直面に対して他方の側面16e側に3度傾いて配置されている(図6等参照)。
【0037】
同様に、他方の側面16eは、出射面16aの他方の側方縁、入光面16bの他方の側方縁及び反射面16cの他方の側方縁で囲まれた範囲とされている。他方の側面16eは、例えば、鉛直平面であり、その後端縁側が出射面16a〜16aに対して直角の鉛直面に対して一方の側面16d側に3度傾いて配置されている(図6等参照)。
【0038】
上記のように側面16d、16eが傾いて配置されているため、導光レンズ部16は、出射面16a〜16aから入光面16bの後端縁に向かうにつれ一方の側面16dと他方の側面16eとの間の厚みが薄くなる楔形状となる(図4(a)、図6等参照)。
【0039】
図6は、光源ユニット13の横断面図である(導光レンズ部16内に導入された発光素子14からの光の光路図を含む)。
【0040】
図6に示すように、入光面16bから導光レンズ部16内に導入されて側面16d、16eに入射する発光素子14からの光は、当該側面16d、16eで全反射を繰り返して出射面16a〜16aまで導光されて、当該出射面16a〜16aから出射する。この出射面16a〜16aから出射する光の左右方向の拡散の程度は、導光レンズ部16の光軸方向寸法L(すなわち、側面16d、16eの光軸方向寸法)を調整することで調整することが可能である。これは、上記のように、導光レンズ部16が、出射面16a〜16aから入光面16bの後端縁に向かうにつれ一方の側面16dと他方の側面16eとの間の厚みが薄くなる楔形状とされているためである。
【0041】
本実施形態では、側面16d、16eで全反射を繰り返して出射面16a〜16aから出射する光が略全て投影レンズ12を透過するように、導光レンズ部16の光軸方向寸法L(すなわち、側面16d、16eの光軸方向寸法)が調整されている。
【0042】
なお、導光レンズ部16は、出射面16a〜16aから入光面16bの後端縁に向かうにつれ一方の側面16dと他方の側面16eとの間の厚みが薄くなる楔形状とされていればよく、側面16d、16eの具体的な形状は鉛直平面に限定されない。例えば、側面16d、16eは、外側に若干膨らんだ凸面であってもよい。
【0043】
図7は、光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である(導光レンズ部16内に導入された発光素子14からの光の光路図を含む)。
【0044】
図7に示すように、反射面16cは、入光面16bの後端縁から発光素子14の中心軸AX14近傍にかけての範囲に設定された第1反射領域A、発光素子14の中心軸AX14近傍から出射面16a〜16aの下端縁にかけての範囲に設定された第2反射領域Bを含んでいる。
【0045】
第1反射領域Aは、第1焦点F1が発光素子14近傍に設定され第2焦点F2が出射面16aのうち上端縁近傍(例えば、上端縁から下方1[mm]の位置)、すなわち、投影レンズ12の車両後方側焦点F12近傍に設定された回転楕円系の反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)である。
【0046】
第1反射領域Aには、金属反射膜17が形成されている。これにより、入光面16bから導光レンズ部16内に導入される発光素子14からの光が入射角の関係で第1反射領域Aから導光レンズ部16外へ屈折透過するのを防止することが可能となる。なお、金属反射膜17に代えて、第1反射領域Aに対向して反射シートを配置してもよい。
【0047】
第2反射領域Bは、回転放物面系(回転放物面又はこれに類する自由曲面等)の反射面を光軸AX方向に細かく分割し、当該分割した個々の反射領域B〜B(レンズカット)を出射面16aの下端縁に向かうにつれ徐々に下方にシフトした位置に配置することで形成される領域である。
【0048】
ここで、投影レンズ12に効率よく光線を入射させるための手法について検討する。
【0049】
投影レンズ12の光取り込み角α=60度(図8参照)、導光レンズ15(各導光レンズ部16)の屈折率を1.5とすると、投影レンズ12の車両後方側焦点F12を通る光線が投影レンズ12に入射する範囲は、スネルの法則により出射面16aに入射する光線の入射角β(図7参照)=最大19.5度となる。つまり、投影レンズ12に効率よく光線を入射させるためには、導光レンズ15内を導光される光線が、出射面16aにおいて、光軸AX(出射面16aの法線)に対し、0〜19.5度の範囲で入射するのが望ましい。
【0050】
第1反射領域Aは、このことを考慮して、当該第1反射領域Aからの反射光の、光軸AX(出射面16aの法線)に対する入射角β=19.5度以下となるように、入光面16bの後端縁から発光素子14の中心軸AX14近傍にかけての範囲に設定されている(図7参照)。そして、入射角度19.5度以上の範囲は、出射面16a〜16aに目的の照度分布(例えば、出射面16a〜16aの下端縁に向かうにつれ照度が低下する分布)が形成されるように個々の反射領域B〜Bで徐々に下方向に拡げていき、照射領域A〜A上方の光を形成するように設計されている。
【0051】
次に、上記構成の車両用灯具ユニット10により形成される配光パターンについて説明する。
【0052】
図7に示すように、入光面16bから導光レンズ部16内に導入されて第1反射領域Aに入射する発光素子14からの光は、当該第1反射領域Aで反射されて出射面16a〜16aのうち上端縁近傍(例えば、上端縁から下方1[mm]の位置。すなわち、第2焦点F2)に集光する。一方、入光面16bから導光レンズ部16内に導入されて第2反射領域Bに入射する発光素子14からの光は、当該第2反射領域Bで全反射されて出射面16aに目的の照度分布(例えば、出射面16a〜16aの下端縁に向かうにつれ照度が低下する分布)を形成する。このようにして、各出射面16a〜16aに、その上端縁近傍(例えば、上端縁から下方1[mm]の位置)が周囲よりも明るい照度分布が形成される。
【0053】
各出射面16a〜16aの光源像(すなわち、上記のように各出射面16a〜16aに形成された照度分布)は、投影レンズ12の作用により拡大反転投影される。これにより、仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前端部前方約25mに配置されている)上に、各発光素子14が個別に点消灯制御されることで個別に光度が増減される照射領域A〜Aを含む配光パターンP1L、P1Rが形成される(図9(b)、図9(c)参照)。図9(b)は車両前部の左側に配置された車両用灯具ユニット10(以下、車両用灯具ユニット10Lと称す)により形成される配光パターンP1Lの例、図9(c)は車両前部の右側に配置された車両用灯具ユニット10(以下車両用灯具ユニット10Rと称す)により形成される配光パターンP1Rの例である。
【0054】
投影レンズ12は、その焦点面上の1[mm]が仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前端部前方約25mに配置されている)上のl[deg]に相当するように設計されている。このため、出射面16a〜16a(例えば、鉛直方向寸法h:6[mm]、左右幅寸法w1:1.5[mm])の光源像の投影像である照射領域A〜Aは鉛直方向に6度、左右方向に1.5度の矩形パターンとなる。一方、出射面16a、16a(例えば、鉛直方向寸法h:6[mm]、左右幅寸法w2:4.5[mm])の光源像の投影像である照射領域A、Aは、鉛直方向に6度、左右方向に4.5度の矩形パターンとなる。これにより、遠方を光束密度が高い照射領域A〜Aで照射し、近辺を照射領域A、Aで広範囲に照射することが可能となる。
【0055】
各出射面16a〜16aは、従来の肉厚部分(図11中肉厚部分B参照)を間に挟むことなく、投影レンズ12の焦点面に沿って略水平にかつ隣接して配置されている。このため、出射面16a〜16aの反転投影像である照射領域A〜Aは、水平方向に隙間無く密に隣接配置される(図9(b)、図9(c)参照)。
【0056】
なお、互いに連結された各出射面16a〜16aの後方側には、導光レンズ部16の外周面とこれに隣接する他の導光レンズ部16の外周面との間に縦エッジEが形成されるが(図4(a)参照)、当該縦エッジEは従来の肉厚部分(図11中肉厚部分B参照)ではなく、その幅をほとんど無視できるエッジである。このため、当該縦エッジEが前方に投影されても、照射領域A〜A間に従来のような隙間(周囲よりも暗い部分)はできない。
【0057】
車両用灯具ユニット10L、10Rはそれぞれ、鉛直方向に関し、配光パターンP1L、P1R(照射領域A〜A)の下端縁が仮想鉛直スクリーン上の水平線H−H下−1度に位置し、かつ、鉛直線V−Vが中央の照射領域Aの略中央に位置するように公知のエイミング機構(図示せず)により照準(光軸調整)されている。このため、仮想鉛直スクリーン上に形成される各照射領域A〜Aを含む配光パターンP1L、P1Rは、水平線H−H近傍領域が特に明るい遠方視認性に優れた配光パターンとなる。
【0058】
車両用灯具ユニット10L、10Rは、水平方向に関し、配光パターンP1L、P1R(照射領域A〜A)が部分的に重なるように公知のエイミング機構(図示せず)により照準(光軸調整)されている。例えば、車両用灯具ユニット10Rの光軸AXは、車両用灯具ユニット10Lの光軸AXに対して0.75°分左右いずれかに傾くように照準(光軸調整)されている。これにより、特定の照射領域A〜Aを点消灯制御(消灯又は減光)することで、合計14の領域を消灯又は減光することが可能となる(中心付近は0.75°刻みで消灯又は減光することが可能である)。
【0059】
次に、すれ違いビーム専用の灯具ユニット70により仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前端部前方約25mに配置されている)上に形成されるロービーム用配光パターンP2について説明する。
【0060】
図9(a)は、すれ違いビーム専用の灯具ユニット70により形成されるロービーム用配光パターンP2の例である。
【0061】
図9(a)に示すように、ロービーム用配光パターンP2は、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCLを有している。
【0062】
このカットオフラインCLは、灯具正面方向の消点であるH−Vを通る鉛直線であるV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側が、対向車線側カットオフラインCLとして水平方向に延びるようにして形成されるとともに、V−V線より左側が、自車線側カットオフラインCLとして対向車線側カットオフラインCLよりも段上がりで水平方向に延びるようにして形成されている。そして、この自車線側カットオフラインCLにおけるV−V線寄りの端部は、斜めカットオフラインCLとして形成されている。この斜めカットオフラインCLは、対向車線側カットオフラインCLとV−V線との交点から左斜め上方へ15°の傾斜角で延びている。
【0063】
このロービーム用配光パターンP2においては、対向車線側カットオフラインCLとV−V線との交点であるエルボ点は、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しており、このエルボ点Eをやや左寄りに囲むようにして高光度領域であるホットゾーンが形成されている。
【0064】
上記配光パターンP1L、P1Rとロービーム用配光パターンP2は重畳されて、図9(d)に示すように、合成配光パターンを形成する。
【0065】
次に、上記構成の車両用灯具ユニット10L、10Rの動作例について説明する。
【0066】
例えば、図10(a)に示すように、車両前方の遠方に先行車Vが存在する場合(又は、図10(b)に示すように、車両前方の対向車線の遠方に対向車Vが存在する場合)には、複数の照射領域A〜Aのうち遠方に存在する先行車V(又は、対向車V)をカバーする照射領域に対応する発光素子14を消灯(又は減光)する。これにより、当該遠方に存在する先行車V(又は対向車V)に対するグレアを防止することが可能となる。
【0067】
一方、図10(c)に示すように、対向車Vがある程度自車に近づいた場合、すなわち、近辺に対向車が存在する場合には、複数の照射領域A〜Aのうち近辺に存在する対向車Vをカバーする照射領域に対応する発光素子14を消灯(又は減光)する。これにより、当該近辺に存在する対向車Vに対するグレアを防止することが可能となる。
【0068】
なお、車両前方の対向車(又は先行車)の仮想鉛直スクリーン上における水平方向の位置は、例えば、CCDカメラ等により車両前方を撮像し、その撮像データに基づいて対向車(又は先行車)の点灯状態にある前照灯(又は尾灯)の位置を高濃度の画素として検出すること等により、簡易に検出することが可能である。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、従来の肉厚部分(図11中肉厚部分B参照)を間に挟むことなく、投影レンズ12の焦点面に沿って略水平にかつ隣接して配置されており、かつ、当該隣接配置された複数の出射面16a〜16a(すなわち、上記のように各出射面16a〜16aに形成される照度分布)を投影レンズ12の作用により拡大反転投影する構成であるため、個別に点消灯制御される複数の照射領域A〜A(各出射面16a〜16aの反転投影像)間に隙間(周囲よりも暗い部分)ができるのを防止又は低減することが可能となる。
【0070】
すなわち、各出射面16a〜16aの反転投影像である照射領域A〜Aが、水平方向に隙間無く密に隣接配置された配光パターンP1L、P1Rを形成することが可能となる(図9(b)、図9(c)参照)。
【0071】
なお、互いに連結された各出射面16a〜16aの後方側には、導光レンズ部16の外周面とこれに隣接する他の導光レンズ部16の外周面との間に縦エッジEが形成されるが(図4(a)参照)、当該縦エッジEは従来の肉厚部分(図11中肉厚部分B参照)ではなく、その幅をほとんど無視できるエッジである。このため、当該縦エッジEが前方に投影されても、照射領域A〜A間に従来のような隙間(周囲よりも暗い部分)はできない。
【0072】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、出射面16aから入光面16bの後端縁に向かうにつれ一方の側面16dと他方の側面16eとの間の厚みが薄くなる楔形状とされた各導光レンズ部16の作用により、側面16d、16eで全反射を繰り返して各出射面16a〜16aから出射する光の出射角を狭くすることが可能となる(すなわち、各出射面16a〜16aから出射する光を、水平方向に関し、収束させることが可能となる)。これにより、側面16d、16eで全反射を繰り返して各出射面16a〜16aから出射する光を、水平方向に関し、投影レンズ12に効率よく入射させることが可能な、光利用効率の極めて高い車両用灯具ユニット10を構成することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、各導光レンズ部16の反射面16cの形状を調整し当該反射面16cに入射する光を制御することで、各出射面16a〜16aに所望の照度分布(例えば、均一な照度分布、特定のムラを持つ不均一な照度分布)を形成することが可能となる。これにより、投影レンズ12の作用により拡大反転投影される各出射面16a〜16aの反転投影像である照射領域A〜Aを、所望の照度分布とすることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、各導光レンズ部16の出射面16a〜16aが、投影レンズ12の焦点面に沿って略水平にかつ隣接して配置されているため、仮想鉛直スクリーン上に投影される各出射面16a〜16aの投影像である照射領域A〜Aの輪郭(特に、隣接する照射領域A〜A間の境界線)を明瞭にすることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、各発光素子14は、略水平方向に延びる円弧に沿って一列に配置されているため(図4(a)参照)、複数の発光素子が光軸AX方向に分散配置されている従来と比べ(図11中発光素子230参照)、光軸AX方向寸法が短い小型の車両用灯具ユニットを構成することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、側面16d、16e及び反射面16c(第2反射領域B)での全反射(反射率100%)を利用し、なおかつ、全反射を利用できない反射面16c(第1反射領域A)についてはこれに金属反射膜17(又は反射シート)を施した構成である。これにより、入光面16bから導光レンズ部16内に導入された発光素子14からの光のほぼ全てが出射面16aから出射する、光利用効率の極めて高い車両用灯具ユニット10を構成することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、リフレクタを用いない構成であるため、リフレクタを用いる従来と比べ(図11中リフレクタ220参照)、より少ない部品点数で車両用灯具ユニット10を構成することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、複数の発光素子14が同一の基板Kに実装されているため(すなわち、複数の発光素子14が1ユニット化されているため)、複数の発光素子が同一の基板に実装されることなく光軸AX方向に分散配置されている従来と比べ(図11中発光素子230参照)、複数の発光素子の組み付けを極めて容易に行うことが可能となる。また、複数の発光素子14の複数の導光レンズ部16に対する位置決めを極めて精度良く行うことが可能となる。
【0079】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、発光素子14自体ではなく、出射面16a〜16aを拡大反転投影する構成であるため、発光素子自体を反転投影する構成と比べ、発光素子14の配置間隔を広くすることが可能となる。これにより、発光素子14から発生する熱量の影響を緩和することが可能となる。
【0080】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
10、10R、10L…車両用灯具ユニット、11…放熱部材、12…投影レンズ、13…光源ユニット、14…発光素子、14a…発光面、15… 導光レンズ、16…導光レンズ部、16a(16a〜16a)…出射面、16b…入光面、16c…反射面、16d、16e…側面、17…金属反射膜、60…灯室、61…ハウジング、62…透光カバー、70…灯具ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、前記投影レンズの車両後方側焦点面よりも後方側に配置された光源ユニットと、を備えた車両用灯具ユニットにおいて、
前記光源ユニットは、
前記投影レンズの焦点面近傍に配置され、略鉛直方向に延びて上端縁が前記光軸よりも上に位置する出射面、前記出射面の上端縁から車両後方側に向かって略水平方向に延びる入光面、前記出射面の下端縁から前記入光面の後端縁に向かって斜め方向に延びる反射面、車幅方向に配置された両側面を含む中実の複数の導光レンズ部と、
前記複数の導光レンズ部のうち対応する導光レンズ部の前記入光面から当該導光レンズ部内に導入され、前記反射面及び前記両側面で反射されて、前記出射面から出射する光を放射する複数の発光素子と、を備えており、
前記複数の導光レンズ部それぞれの前記出射面は、前記投影レンズの焦点面近傍に略水平方向にかつ隣接して配置されており、
前記複数の導光レンズ部は、それぞれの出射面のうち隣接する出射面が互いに連結された導光レンズ体を構成しており、
前記複数の導光レンズ部はそれぞれ、前記出射面から前記入光面の後端縁に向かうにつれ前記両側面のうち一方の側面と他方の側面との間の厚みが薄くなる楔形状とされており、
前記複数の導光レンズ部それぞれの前記反射面は、これに入射する前記導光レンズ部内に導入された前記発光素子からの光を反射して、前記出射面に所望の照度分布を形成するように構成されていることを特徴とする車両用灯具ユニット。
【請求項2】
前記複数の発光素子はそれぞれ、前記投影レンズの車両後方側焦点よりも後方側に、発光面が略下向きで、略水平方向に一列に配置されており、
前記複数の導光レンズ部それぞれの前記入光面は、前記出射面の上端縁から前記複数の発光素子のうち対応する発光素子側に向かって略水平方向に延びており、
前記複数の導光レンズ部はそれぞれ、前記複数の発光素子のうち対応する発光素子からの光が前記入光面から導光レンズ部内に導入されるように、当該対応する発光素子の下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−256491(P2012−256491A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128405(P2011−128405)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】