説明

車両用灯具

【課題】従来の車両用灯具では、ガラスレンズの意匠への影響があり、ガラスレンズの裏面に発熱体を貼着する作業が面倒であり、部品組付作業が面倒である。
【解決手段】灯室6内に配置されるランプユニット2の光照射部としての投影レンズ12の周囲一部の上側リフレクタ7に直線形状の線ヒータ16からなるヒータユニット5を設ける。この結果、ランプレンズ4の意匠への影響がなく、ガラスレンズの裏面に発熱体を貼着する面倒な作業が不要であり、部品組付作業が簡単である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、融雪(解氷、防曇)構造を有する車両用灯具に関するものである。特に、この発明は、たとえば、LEDをはじめとする半導体型光源やHIDなどの光源であって、白熱光源と比較して発熱量が少ない光源を使用する前照灯(ヘッドランプやフォグランプなど)や信号灯(ターンシグナルランプやテールランプやストップランプなど)などの車両用灯具であって、融雪(解氷、防曇)構造を有する車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、灯室を区画するランプハウジングおよびガラスレンズと、前記灯室内に配置されているディスチャージランプと、前記ガラスレンズの裏面に貼着されている発熱体と、を備えるものである。
【0003】
以下、従来の車両用灯具の作用について説明する。発熱体に給電すると、その発熱体が発熱し、その熱により、ガラスレンズに付着した雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりする。この結果、ディスチャージランプからの光であって、ガラスレンズを通して外部に照射される光の損失を防ぐことができる。特に、光源として、白熱光源と比較して、ガラスレンズを通る光の温度が低い光源、たとえば、LEDなどの半導体型光源やHIDなどの放電灯を使用した車両用灯具においては、効果的である。
【0004】
ところが、従来の車両用灯具は、ガラスレンズの裏面に発熱体を貼着してなるものであるから、ガラスレンズの意匠への影響があり、しかも、ガラスレンズの裏面に発熱体を貼着する作業が面倒である。その上、従来の車両用灯具は、灯室内において、ランプハウジングからガラスレンズ側に発熱体の電気配線する必要があるために、灯室内へのディスチャージランプのセットと、ランプハウジングとガラスレンズの組付と、発熱体の電気配線と、を同時に行う必要があり、部品組付作業が面倒である。
【0005】
【特許文献1】特開平10−289602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では、ガラスレンズの意匠への影響があり、また、ガラスレンズの裏面に発熱体を貼着する作業が面倒であり、さらに、部品組付作業が面倒であるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、灯室内に配置される照明ユニットの光照射部の周囲一部にヒータユニットを設ける、ことを特徴とする。
【0008】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、ヒータユニットが、直線形状の線ヒータと、線ヒータの熱をランプレンズ側に反射させるリフレクタと、から構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、ヒータユニットのリフレクタに放物線もしくは楕円からなる熱反射面を設け、その熱反射面の軸をランプレンズの所定の箇所に向けた、ことを特徴とする。
【0010】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、ヒータユニットのリフレクタと照明ユニットの光照射部の周囲とが一体構造をなす、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、照明ユニットの光照射部の周囲にヒータユニットを設けたものであるから、ランプレンズの意匠に与える影響がなくランプレンズの意匠が向上し、ガラスレンズの裏面に発熱体を貼着する面倒な作業が不要である。その上、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、照明ユニットに設けられているヒータユニットに電気配線するものであるから、あらかじめ照明ユニットに設けられているヒータユニットに電気配線してから、灯室内への照明ユニットおよびヒータユニットのセットと、ランプハウジングとランプレンズの組付と、を同時に行うだけであり、部品組付作業が簡単である。
【0012】
また、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、照明ユニットの光照射部の周囲一部にヒータユニットを設けるものであるから、ランプレンズのうちヒータユニットと対応する箇所がヒータユニットからの熱により暖められるので、ランプレンズのうち光照射部と対応する箇所であって光が透過する有効照射部の周囲一部たとえば上部を暖めることができ、上部の雪や氷を融かして下に落として下の雪や氷を落下させることによりランプレンズの有効照射部の雪氷曇りなどを有効に除去することができる。
【0013】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、ヒータユニットが直線形状の線ヒータと線ヒータの熱をランプレンズ側に反射させるリフレクタとから構成されているので、線ヒータの熱を直接ランプレンズに放射すると共に、線ヒータの熱を熱反射面でランプレンズ側に反射させることができ、ランプレンズに熱を効率よく与えることができる。しかも、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、照明ユニットとヒータユニットとを別体構造とすることにより、ヒータユニットを種々様々な照明ユニットに対して共通化することができ、逆に、照明ユニットを種々様々なヒータユニットに対して共通化することができ、ヒータユニットあるいは照明ユニットを低コスト化することができる。その上、照明ユニットとヒータユニットとを組み合わせたアセンブリは、種々様々な車両用灯具に対して汎用性が高い。特に、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、直線形状の線ヒータを使用するので、この直線形状の線ヒータを左右方向(水平方向)に配置することにより、ランプレンズの有効照射部の雪氷曇りなどを左右方向に広く融かして下に落として下の雪や氷を落下させることによりランプレンズの有効照射部の雪氷曇りなどを有効に除去することができる。
【0014】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、ヒータユニットのリフレクタに放物線もしくは楕円からなる熱反射面を設け、その熱反射面の軸をランプレンズの所定の箇所に向けたので、線ヒータからの熱であって、熱反射面で反射された熱をランプレンズの所定の箇所に当てることができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、線ヒータからの熱をさらに有効に利用することができ、融雪(解氷、防曇)性能が向上して省電力化を図ることができる。
【0015】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、照明ユニットとヒータユニットとが一体構造をなすことにより、部品点数が低減し、その分、製造コストが安価となる。しかも、一体構造をなす照明ユニットおよびヒータユニットは、種々様々な車両用灯具に対して汎用性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例のうちの4例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1〜図3は、この発明にかかる車両用灯具の実施例1を示す。以下、この実施例1にかかる車両用灯具の構成について説明する。この実施例1にかかる車両用灯具は、所定の配光パターン、たとえば、すれ違い用の配光パターンを照射する自動車用のヘッドランプ1L、1Rである。前記ヘッドランプ1L、1Rは、図1に示すように、自動車Cの前部の左右両側にそれぞれ装備されている。以下、左側のヘッドランプ1Lについて説明する。なお、右側のヘッドランプ1Rは、左側のヘッドランプ1Lの構造とほぼ左右逆である。
【0018】
前記ヘッドランプ1Lは、図2に示すように、1個もしくは複数個の照明ユニットとしてのランプユニット2と、ランプハウジング3と、ランプレンズ4と、ヒータユニット5と、を備えるものである。前記ランプハウジング3と前記ランプレンズ4とにより、灯室6が区画されている。前記灯室6内には、前記ランプユニット2および前記ヒータユニット5が配置されている。
【0019】
前記ランプユニット2は、所定の配光パターン、この例では、すれ違い用配光パターンを照射(放射、出射)するものである。前記ランプユニット2は、図2に示すように、プロジェクタタイプであって、ユニット構造をなす。前記ランプユニット2は、上側リフレクタ7および下側リフレクタ8と、反射面9およびシェード10と、半導体型光源11と、投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)12と、から構成されている。
【0020】
前記ランプユニット2は、図2に示すように、ホルダ部材13を介して前記ランプハウジング3に取り付けられている。前記ランプハウジング3の外側(前記灯室6の外側)には、ヒートシンク部材14が設けられている。前記ヒートシンク部材14は、前記ランプハウジング3を介して前記ホルダ部材13に接続されている。これにより、前記半導体型光源11において発生する熱は、前記ホルダ部材13、前記ランプハウジング3、前記ヒートシンク部材14を介して外部に放出される。なお、ヒートシンク部材は、前記灯室6内に設けても良いし、また、前記灯室6の内外両側に設けても良い。
【0021】
前記半導体型光源11は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例1ではLED)を使用する。このために、前記半導体型光源11自体においては熱が発生するが、前記半導体型光源11から放射される光には熱がほとんど発生しない。これにより、前記ランプレンズ4には、雪や氷や曇りが付着し易い。前記半導体型光源11は、基板を介して前記ホルダ部材13に取り付けられている。
【0022】
前記上側リフレクタ7と前記反射面9とは、一体構造をなす。前記反射面9は、回転楕円面もしくは回転楕円面を基本とする自由曲面からなる。前記下側リフレクタ8と前記シェード10とは、一体構造をなす。前記シェード10は、前記反射面9からの反射光の一部をカットオフして残りの反射光ですれ違い用配光パターンを形成する。前記上側リフレクタ7および前記下側リフレクタ8は、前記ホルダ部材13に取り付けられている。なお、この例の前記上側リフレクタ7と前記下側リフレクタ8とは、別体構造であるが、一体構造であっても良い。
【0023】
前記投影レンズ12は、前記上側リフレクタ7の前端および前記下側リフレクタ8の前端に保持固定されている。前記投影レンズ12は、図3に示すように、正面形状がほぼ円形をなす。一方、前記上側リフレクタ7の前端および前記下側リフレクタ8の前端は、図3に示すように、リング形状をなす。前記上側リフレクタ7の前端および前記下側リフレクタ8の前端は、前記投影レンズ12の周囲を構成する。
【0024】
前記投影レンズ12は、前記残りの反射光を透過させてすれ違い用配光パターンとして前記ランプレンズ4を通して外部に照射する。前記投影レンズ12は、光を前記ランプレンズ4を通して外部に照射する光照射部を構成する。前記投影レンズ12および前記上側リフレクタ7の前端および前記下側リフレクタ8の前端は、図2に示すように、前記ランプユニット2の他の部品と比較して、前記ランプレンズ4に近接している。
【0025】
前記ランプレンズ4は、ほぼ素通しのレンズであって、いわゆるアウターカバー(アウターレンズ)である。前記ランプレンズ4は、この例では、たとえばPC(ポリカーボネート)などの合成樹脂から成形されている。また、前記ランプレンズ4は、図2に示すように、縦断面(垂直断面)において、上から下にかけて後方から前方にスラント(傾斜)している。さらに、前記ランプレンズ4は、断面凹形状をなしていて、前記ランプユニット2から照射される光が透過する正面部(もしくは前面部)と、前記正面部からの全周縁から後方に一体に延設されている側壁部と、から構成されている。前記正面部のうち光が透過する部分は、光照射部の前記投影レンズ12と対応する部分であって、有効照射部(有効発光部、有効投影部)15を形成する。なお、前記ランプレンズ4の材質がPCの場合、前記ランプレンズ4の耐熱温度は約130°Cである。
【0026】
前記ヒータユニット5は、前記ランプユニット2の光照射部としての前記投影レンズ12の周囲一部たとえば上部、すなわち、リング形状の前記上側リフレクタ7の前端および前記下側リフレクタ8の前端のうち、前記上側リフレクタ7の前端に設けられている。前記ヒータユニット5は、熱(たとえば、赤外線などの熱線であって、可視光を含むものであっても良い)を前記ランプレンズ3に放射するものである。前記ヒータユニット5は、線ヒータ16と、前記線ヒータ16の熱を前記ランプレンズ4側に反射させるリフレクタ17と、から構成されている。
【0027】
前記線ヒータ16は、電流を供給すると発熱する部材から構成されており、この例では、ニクロム線やタングステン線から構成されている。前記線ヒータ16は、図3に示すように、左右方向(水平方向)に直線形状をなす。前記線ヒータ16は、保持具18により前記リフレクタ17に保持されている。
【0028】
前記リフレクタ17は、図3に示すように、正面形状がほぼ台形形状をなす。前記リフレクタ17と、前記上側リフレクタ7および前記下側リフレクタ8とは、別個構造をなす。前記リフレクタ17の前面には、放物線(放物面)もしくは放物線(放物面)を基本とする自由曲面からなる熱反射面19が設けられている。前記熱反射面19は、縦方向(垂直方向)の断面形状が放物線をなすものであって、その縦方向の放物線が横方向(水平方向)に連続してなるものであって、たとえば、シリンドリカル形状をなす。前記熱反射面19の軸は、前記ランプユニット2の光軸とほぼ平行に設定されている。この結果、図2中の実線矢印に示すように、熱を前記ランプレンズ4の所定の箇所、この例では、前記有効照射部15にほぼ平行に反射させることができる。なお、熱反射面19としては、前記の放物線以外に、たとえば、楕円(楕円面)もしくは楕円(楕円面)を基本とする自由曲面からなる熱反射面であっても良い。
【0029】
前記ヒータユニット5の前記線ヒータ16は、給電部20を介して電源側と電気的に接続されている。前記給電部20は、ソケット21と、ハーネス22と、から構成されている。このように、前記給電部20は、あらかじめ前記ランプユニット2に設けられている前記ヒータユニット5に電気配線を施すものである。
【0030】
前記線ヒータ16は、前記給電部20を介して、手動スイッチ(図示せず)またはおよび自動スイッチ(図示せず)に接続されている。前記手動スイッチは、手動により、前記線ヒータ16への電流供給をオンしたりオフしたりするものである。前記自動スイッチは、自動的に、前記線ヒータ16への電流供給をオンしたりオフしたりするものである。
【0031】
前記自動スイッチは、ECUなどの制御部と、温度センサや光センサなどの検出部と、から構成されている。前記検出部は、自動車Cの周囲環境、たとえば、自動車Cの外の温度や前記ランプレンズ4から照射される光などを検出してその検出信号を前記制御部に出力する。前記制御部は、前記検出部からの検出信号に基づいて前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着しているか否か、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度か否かを判断する。そして、前記制御部は、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着している、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度であると判断すると、前記給電部20を介して前記線ヒータ16に電流を供給する。一方、前記制御部は、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着していない、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度でないと判断すると、前記給電部20を介して前記線ヒータ16への電流供給を遮断する。
【0032】
前記線ヒータ16には、温度制御部(図示せず)が設けられている。前記温度制御部は、前記線ヒータ16の発熱温度を制御するものである。前記温度制御部としては、たとえば、PTCサーミスターを使用する。このPTCサーミスターは、温度が上昇すると抵抗値が高くなって所定の抵抗値に達すると電流が流れなくなる特性を有するものである。たとえば、前記ランプレンズ4の材質がPCの場合、前記ランプレンズ4の耐熱温度は約130°Cであるから、前記ランプレンズ4の内面温度を温度センサで検出して、前記ランプレンズ4の内面温度が約60°C付近に達した時点で電流が流れなくなる抵抗特性を有するPTCサーミスターを前記温度制御部として使用する。
【0033】
この実施例1にかかる車両用灯具は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0034】
ランプユニット2の半導体型光源11を点灯する。すると、ランプユニット2の半導体型光源11からの光(図示せず)が上側リフレクタ7の反射面9で反射され、その反射光の一部が下側リフレクタ8のシェード10によりカットオフされ、残りの反射光が投影レンズ12およびランプレンズ4の正面部の有効照射部15を透過して外部にカットオフラインを有する所定の配光パターン、すなわち、すれ違い用配光パターンで照射される。このすれ違い用配光パターンのカットオフラインは、シェード10のエッジにより形成される。また、シェード10に反射面を設けることにより、反射面9からの反射光であってシェード10の反射面で反射された反射光を利用することができる。
【0035】
ここで、半導体型光源11からの光には熱がほとんど発生しないので、ランプレンズ4には、雪や氷や曇りが付着し易い。この場合、手動スイッチまたはおよび自動スイッチにより、ヒータユニット5の線ヒータ16に電流が供給される。
【0036】
線ヒータ16に電流が供給されると、線ヒータ16の電気抵抗により、線ヒータ16が発熱する。この線ヒータ16において発生した熱は、ランプレンズ4側に直接照射され、かつ、熱反射面19で反射されてランプレンズ4の正面部の有効照射部15にほぼ平行に照射される。この線ヒータ16から放射される熱の作用により、ランプレンズ4が暖められ、このランプレンズ4を介して雪氷曇りなどの温度を上げる。一方、一部の波長の熱(熱線)は、ランプレンズ4を透過して雪氷曇りなどの温度を直接上げる。これにより、ランプレンズ4に雪や氷や曇りが付着するのが防止され、あるいは、ランプレンズ4に付着している雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりする。この結果、ランプレンズ4の正面部の有効照射部15から照射される光の損失を防ぐことができる。
【0037】
このとき、ランプレンズ4の正面部の有効照射部15のうち、ヒータユニット5と対応する箇所であって熱が照射される箇所の雪や氷を溶すことにより、この溶けた雪や氷がランプレンズ4の正面部の有効照射部15の表面上を滑って、いわゆる雪崩現象で、ランプレンズ4の正面部の有効照射部15うち、ヒータユニット5に対応しない箇所であって熱が照射されない箇所に付着している雪や氷をランプレンズ4の正面部の有効照射部15の表面上から剥がして落とす。この結果、ランプレンズ4に付着している雪や氷や曇りを確実に除去することができる。
【0038】
線ヒータ16の発熱作用中において、この線ヒータ16の発熱温度が所定温度に達すると、温度制御部の温度制御作用により、線ヒータ16への電流供給が制御され、線ヒータ16の発熱温度が所定温度付近に保持される。この結果、耐熱温度が比較的低い樹脂製のランプレンズ4を過熱から保護することができる。
【0039】
ランプレンズ4に雪や氷や曇りが付着するのが防止され、また、ランプレンズ4に付着した雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりしたところで、手動スイッチまたはおよび自動スイッチにより、ヒータユニット5の線ヒータ16への電流供給が遮断される。
【0040】
ランプユニット2の半導体型光源11が点灯中において、半導体型光源11において発生する熱は、ホルダ部材13、ランプハウジング3、ヒートシンク部材14を介して外部に放出される。
【0041】
この実施例1にかかる車両用灯具は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0042】
この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプユニット2の光照射部としての投影レンズ12の周囲にヒータユニット5を設けたものであるから、ランプレンズ4にヒータを直接設ける必要がないので、ランプレンズ4の意匠に与える影響がなくランプレンズの意匠が向上し、かつ、光の損失や配光の影響などをさらに防ぐことができる。しかも、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプユニット2の光照射部としての投影レンズ12の周囲にヒータユニット5を設けたものであるから、ガラスレンズの裏面に発熱体を貼着する面倒な作業が不要である。その上、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプユニット2に設けられているヒータユニット5に給電部20により電気配線するものであるから、あらかじめランプユニット2に設けられているヒータユニット5に電気配線してから、灯室6内へのランプユニット2およびヒータユニット5のセットと、ランプハウジング3とランプレンズ4の組付と、を同時に行うだけであり、部品組付作業が簡単である。
【0043】
また、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプユニット2の光照射部としての投影レンズ12の周囲一部たとえば上部にヒータユニット5を設けるものであるから、ランプレンズ4のうちヒータユニット5と対応する箇所がヒータユニット5からの熱により暖められるので、ランプレンズ4のうち投影レンズ12と対応する箇所であって光が透過する有効照射部15の上部を暖めることができ、上部の雪や氷などを融かして下に落下させて下部の雪や氷を落とすことにより、ランプレンズ4の有効照射部15の雪氷曇りなどを有効に除去することができる。
【0044】
また、この実施例1にかかる車両用灯具は、ヒータユニット5が線ヒータ16とその線ヒータ16の熱をランプレンズ4側に反射させるリフレクタ17とから構成されているので、線ヒータ16の熱を直接ランプレンズ4に放射すると共に、線ヒータ16の熱をリフレクタ17の熱反射面19でランプレンズ4側に反射させることができ、ランプレンズ4に熱を効率よく与えることができる。しかも、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプユニット2とヒータユニット5とが別体構造をなすので、ヒータユニット5を種々様々なランプユニット2に対して共通化することができ、逆に、ランプユニット2を種々様々なヒータユニット5に対して共通化することができ、ヒータユニット5あるいはランプユニット2を低コスト化することができる。その上、ランプユニット2とヒータユニット5とを組み合わせたアセンブリは、種々様々な車両用灯具に対して汎用性が高い。特に、この実施例1にかかる車両用灯具は、左右方向の直線形状の線ヒータ16を使用するので、ランプレンズ4の有効照射部15の雪氷曇りなどを左右方向に広く暖めて下に落下させて下部の雪や氷を落とすことにより、ランプレンズ4の有効照射部15の雪氷曇りなどを有効に除去することができる。
【0045】
さらに、この実施例1にかかる車両用灯具は、ヒータユニット5のリフレクタ17に放物線もしくは楕円からなる熱反射面19を設け、その熱反射面19の軸をランプレンズ4の有効照射部15に向けたので、線ヒータ16からの熱であって、熱反射面19で反射された熱をランプレンズ4の有効照射部15に当てることができる。この結果、この実施例1にかかる車両用灯具は、線ヒータ16からの熱をさらに有効に利用することができ、融雪(解氷、防曇)性能が向上して省電力化を図ることができる。特に、この実施例1にかかる車両用灯具は、熱をランプレンズ4の有効照射部15にほぼ平行に反射させるように、熱反射面19の軸が平行に設定されているので、熱反射面19からの反射熱がランプレンズ4の有効照射部15にほぼ平行に照射されることにより、ランプレンズ4の有効照射部15が広い範囲に亘ってほぼ均等に暖められ、省電力化が図ることができかつ融雪ムラが少ない。
【0046】
またさらに、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプレンズ4に近接する投影レンズ12の周囲の一部である上側リフレクタ7の前端にヒータユニット5を設けるので、ヒータユニット5からの熱をランプレンズ4に有効に伝達することができる。しかも、この実施例1にかかる車両用灯具は、投影レンズ12を保持する上側リフレクタ7にヒータユニット5を設けるので、ランプユニット2の光照射機能を損なうことなく融雪機能を備えることができる。
【0047】
またさらに、この実施例1にかかる車両用灯具は、線ヒータ16から可視光を発生させることにより、クリアランスランプとしても機能させることができる。
【実施例2】
【0048】
図4は、この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示す。図中、図1〜図3と同符号は、同一のものを示す。以下、この実施例2にかかる車両用灯具について説明する。この実施例2にかかる車両用灯具は、前記の実施例1にかかる車両用灯具がランプユニット2とヒータユニット5とが別個構造をなすのに対して、ランプユニット2とヒータユニット5とが一体構造をなすものである。
【0049】
この実施例2にかかる車両用灯具は、ランプユニット2とヒータユニット5とが一体構造をなすものであるから、部品点数が低減し、その分、製造コストが安価となる。しかも、一体構造をなすランプユニット2およびヒータユニット5は、種々様々な車両用灯具に対して汎用性が高い。
【実施例3】
【0050】
図5は、この発明にかかる車両用灯具の実施例3を示す。図中、図1〜図4と同符号は、同一のものを示す。以下、この実施例3にかかる車両用灯具について説明する。この実施例3にかかる車両用灯具は、前記の実施例1、2にかかる車両用灯具が熱をランプレンズ4の有効照射部15にほぼ平行に反射させるように熱反射面19の軸がランプユニット2の光軸に平行に設定されているのに対して、熱をランプレンズ4の有効照射部15のほぼ中央に反射させるように、熱反射面19の軸がランプレンズ4の有効照射部15のほぼ中央に向いて設定されているものである。
【0051】
この実施例3にかかる車両用灯具は、ヒータユニット5からの熱をランプレンズ4の有効照射部15のほぼ中央に反射させることができるので、ランプレンズ4の有効照射部15のうちランプユニット2から照射される光が多く透過するほぼ中央部を暖めることができ、ランプレンズ4の有効照射部15のほぼ中央の雪氷曇りなどを有効に除去することができる。
【実施例4】
【0052】
図6は、この発明にかかる車両用灯具の実施例4を示す。図中、図1〜図5と同符号は、同一のものを示す。以下、この実施例4にかかる車両用灯具について説明する。この実施例4にかかる車両用灯具は、前記の実施例1にかかる車両用灯具がランプユニット2とヒータユニット5とが別個構造をなすのに対して、ランプユニット2とヒータユニット5とが一体構造をなすものである。また、この実施例4にかかる車両用灯具は、前記の実施例3にかかる車両用灯具と同様に、前記の実施例1、2にかかる車両用灯具が熱をランプレンズ4の有効照射部15にほぼ平行に反射させるように熱反射面19の軸がランプユニット2の光軸に平行に設定されているのに対して、熱をランプレンズ4の有効照射部15のほぼ中央に反射させるように、熱反射面19の軸がランプレンズ4の有効照射部15のほぼ中央に向いて設定されているものである。
【0053】
この実施例4にかかる車両用灯具は、前記の実施例2にかかる車両用灯具と同様に、ランプユニット2とヒータユニット5とが一体構造をなすものであるから、部品点数が低減し、その分、製造コストが安価となる。しかも、一体構造をなすランプユニット2およびヒータユニット5は、種々様々な車両用灯具に対して汎用性が高い。また、この実施例4にかかる車両用灯具は、前記の実施例3にかかる車両用灯具と同様に、ヒータユニット5からの熱をランプレンズ4の有効照射部15のほぼ中央に反射させることができるので、ランプレンズ4の有効照射部15のうちランプユニット2から照射される光が多く透過するほぼ中央部を暖めることができ、ランプレンズ4の有効照射部15のほぼ中央の雪氷曇りなどを有効に除去することができる。
【0054】
以下、前記の実施例1〜4以外の例について説明する。前記の実施例1〜4においては、自動車Cのヘッドランプ1L、1Rのランプレンズ4に使用した例を説明するものである。ところが、この発明においては、自動車Cのヘッドランプ1L、1R以外の車両用灯具、たとえば、フォグランプなどの前照灯、ストップランプなどの信号灯、カーブランプなどの照明灯、フロントコンビネーションランプ、リアコンビネーションランプなどのランプレンズに使用しても良い。
【0055】
また、前記の実施例1〜4においては、光をランプレンズ4の正面部の有効照射部15を通して外部に照射するランプユニット2として、半導体型光源11を光源とするプロジェクタタイプのものについて説明するものである。ところが、この発明においては、ランプユニットとして、前記のランプユニット2以外、たとえば、光源が半導体型光源やHIDなどの放電灯やハロゲンバルブや白熱バルブであって、プロジェクタタイプや反射タイプや直射タイプのランプユニットであっても良いし、あるいは、プロジェクタタイプや反射タイプや直射タイプの車両用灯具において、半導体型光源やHIDなどの放電灯やハロゲンバルブや白熱バルブの光源、および、その光源と反射面との組み合わせのものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例1を示し、自動車のヘッドランプに使用されている状態の説明図である。
【図2】同じく、ヘッドランプおよびランプユニットの垂直断面図(縦断面図)である。
【図3】同じく、ヘッドランプに使用されているランプユニットの正面図である。
【図4】この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示し、自動車のヘッドランプに使用されている状態の垂直断面図(縦断面図)である。
【図5】この発明にかかる車両用灯具の実施例3を示し、自動車のヘッドランプに使用されている状態の垂直断面図(縦断面図)である。
【図6】この発明にかかる車両用灯具の実施例4を示し、自動車のヘッドランプに使用されている状態の垂直断面図(縦断面図)である。
【符号の説明】
【0057】
C 自動車
1L、1R ヘッドランプ(車両用灯具)
2 ランプユニット
3 ランプハウジング
4 ランプレンズ
5 ヒータユニット
6 灯室
7 上側リフレクタ
8 下側リフレクタ
9 反射面
10 シェード
11 半導体型光源(LED)
12 投影レンズ
13 ホルダ部材
14 ヒートシンク部材
15 有効照射部
16 線ヒータ
17 リフレクタ
18 保持具
19 熱反射面
20 給電部
21 ソケット
22 ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融雪構造の車両用灯具において、
灯室を区画するランプハウジングおよびランプレンズと、
前記灯室内に配置されており、光を前記ランプレンズを通して外部に照射する光照射部を有する照明ユニットと、
前記照明ユニットの前記光照射部の周囲一部に設けられており、熱を前記ランプレンズに放射するヒータユニットと、
を備える、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記ヒータユニットは、直線形状の線ヒータと、前記線ヒータの熱を前記ランプレンズ側に反射させるリフレクタと、から構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ヒータユニットの前記リフレクタには、放物線もしくは楕円からなる熱反射面が設けられており、前記熱反射面の軸は、熱を前記ランプレンズの所定の箇所に反射させるように前記ランプレンズの所定の箇所に向けて設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ヒータユニットの前記リフレクタと前記照明ユニットの前記光照射部の周囲とは、一体構造をなす、ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−21602(P2008−21602A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194287(P2006−194287)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】