説明

車両用空調装置

【課題】乗車中の空調を開始するときに臭気を含んだ空調風が供給されてしまうことを低減できる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置100は、空気通路10aを内部に含む空調ケース10と、空調ケース10内で内部を流れる冷媒と空気通路10aを流れる空気との間で熱交換を行う蒸発器7と、車室内に空気を送風する室内用ブロワ14と、蒸発器7へ冷媒を供給する圧縮機2及び室内用ブロワ14の作動を制御するエアコン制御装置50と、を備え、駐車中に室内用ブロワ14によって蒸発器7に対して送風可能である。エアコン制御装置50は、駐車中において、蒸発器7に関する温度情報を用いて蒸発器7が臭気を発生しない乾燥状態であると判定するまでの間は、圧縮機2の作動を制御して蒸発器7への冷媒供給を停止すると共に、室内用ブロワ14の作動を制御して蒸発器7に対して送風を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルの構成部品である熱交換器での冷媒の吸熱作用を用いて空気調和を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置の一例として、蒸発器表面での凝縮水が起因する臭気を防止するために、蒸発器の吹出温度と臭気強度との関係に着目して臭気発生防止を図る技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、蒸発器吹出温度が11℃まで低下すると圧縮機を停止し、23℃まで上昇すると圧縮機を再起動させるという圧縮機の断続制御を行った場合に、蒸発器吹出温度の変動パターンと吹出し空気の臭気強度との関係から蒸発器吹出空気に臭気が発生するタイミングに着目し、このようなタイミングを回避することで臭気発生を回避するものである。
【0003】
具体的には、当該従来の車両用空調装置は、圧縮機の停止時に、蒸発器の冷却度合が高温側へ上昇する過程において、蒸発器表面の凝縮水が乾ききる直前に生じる、蒸発器吹出温度の一時的な低下が生じると、これを判定して、圧縮機を再起動させる。この再起動により、蒸発器の冷媒蒸発潜熱による冷却作用が再開されて、当該吹出温度の一時的低下の開始直後に凝縮水が再度発生し、蒸発器のフィン表面を濡らすようになる。この結果、蒸発器のフィン表面から付着の臭い成分が離脱することを未然に防止でき、吹出し空気への臭気発生を阻止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−13247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の車両用空調装置において、乗員乗車時に空調運転が開始されてブロワによる車室内への送風が行われた場合には、圧縮機の上記再起動による凝縮水の再発生が間に合わず、送風初期に空調ケース内にこもった臭いのする水分を含んだ空気が空調開始時に車室内に向けて吹き出されてしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗車中の空調を開始するときに臭気を含んだ空調風が供給されてしまうことを低減できる車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。なお、特許請求の範囲および下記各手段に記載の括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【0008】
請求項1は、車室内に送風される空気が通る空気通路(10a)を内部に含む空調ケース(10)と、空調ケース内に設けられて、内部を流れる冷媒と空気通路を流れる空気との間で熱交換が行われる熱交換器(7)と、車室内に空気を送風するための送風手段(14)と、熱交換器へ冷媒を供給する圧縮機(2)の作動及び送風手段の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、駐車中に送風手段によって熱交換器に対して送風可能な車両用空調装置に係る発明である。当該制御装置は、駐車中において、熱交換器に関する温度情報を用いて熱交換器の乾燥度合いを判定し、熱交換器が臭気を発生しない乾燥状態であると判定するまでの間は、圧縮機の作動を制御して熱交換器への冷媒供給を停止すると共に、送風手段の作動を制御して熱交換器に対して送風を行うことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、当該熱交換器が上記の乾燥状態でないならば、駐車中に熱交換器に対して冷媒供給の停止及び送風が行われる。これにより、乗車時の空調運転を行う前で、臭気成分を含む水分を飛ばして熱交換器を当該乾燥状態に維持することができるため、乗車時に行われる空調運転開始直後の車室内への送風に臭気成分を含んだ水分が混じって車室内に送り出されることを防止できる。したがって、乗車中の空調開始時に臭気を含んだ空調風が車室内に供給されることによる乗員の不快感を低減できる車両用空調装置を提供できる。また、駐車中に熱交換器を当該乾燥状態に維持して熱交換器での細菌の繁殖を抑制するため、熱交換器の汚れ、腐食を抑制することができ、その耐久性向上にも寄与することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、熱交換器における所定箇所の熱交換器温度(TE)を検出する熱交換器温度検出手段(44)をさらに備え、熱交換器の乾燥度合いを判定するために用いる熱交換器に関する温度情報は、熱交換器温度(TE)であることを特徴とする。この発明によれば、熱交換器の温度を直接検出した値を用いて熱交換器の乾燥度合いを判定するため、高精度の乾燥判定を実施することができ、空調開始時のより確実な臭気防止を実現できる。
【0011】
請求項3に記載の発明によると、制御装置は、上記の熱交換器温度(TE)の所定時間の変化量が第一の所定値未満のとき熱交換器が乾燥状態であると判定することを特徴とする。傾向として、熱交換器の乾燥が進行している最中は、水分が多いうちは気化熱を多く奪うため、例えば蒸発器の場合その温度が低く、また蒸発器の乾燥が進むに連れて蒸発する水分が少なくなるため、その温度は高くなる。したがって、乾燥がまだ進行している最中は、熱交換器温度(TE)の所定時間の変化量は大きく、乾燥が進むにつれて乾燥度合いが高くなると当該変化量は小さくなってくる。そこで、この発明によれば、熱交換器温度(TE)の所定時間の変化量に着目し、この変化量が熱交換器の乾燥状態を判定できる第一の所定値未満になったときに熱交換器の乾燥を終了することにより、精度の高い適切な乾燥運転を実現できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、熱交換器における所定箇所の熱交換器温度(TE)を検出する熱交換器温度検出手段(44)と、空気通路を流れる空気の熱交換器よりも上流における熱交換器前温度(TU)を検出する熱交換器前温度検出手段(45)と、をさらに備え、制御装置は、熱交換器前温度(TU)と熱交換器温度(TE)との差が第二の所定値未満であるとき、熱交換器が乾燥状態であると判定することを特徴とする。
【0013】
傾向として、熱交換器の乾燥が進行している最中は、水分が多いうちは気化熱を多く奪うため、例えば蒸発器の場合その温度が低くなり、また蒸発器の乾燥が進むに連れて蒸発する水分が少なくなるため、蒸発器の温度はより上流の空気温度に近くなる。したがって、乾燥が進むにつれて乾燥度合いが高くなると水分が少なくなり気化熱も奪わなくなるため、蒸発器の温度はより上流の空気温度にほぼ等しくなる。そこで、この発明によれば、熱交換器よりも上流の熱交換器前温度(TU)と熱交換器温度(TE)との差に着目し、この差が熱交換器の乾燥状態を判定できる第二の所定値未満になったときに熱交換器の乾燥を終了することにより、精度の高い適切な乾燥運転を実現できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、空気通路を流れる空気の熱交換器よりも上流における熱交換器前温度(TU)を検出する熱交換器前温度検出手段(45)と、空気通路を流れる空気の熱交換器よりも下流における熱交換器後温度(TL)を検出する熱交換器後温度検出手段(46)と、をさらに備え、制御装置は、熱交換器前温度(TU)と熱交換器後温度(TL)との差が第二の所定値未満であるとき、熱交換器が乾燥状態であると判定することを特徴とする。
【0015】
傾向として、熱交換器の乾燥が進行している最中は、水分が多いうちは気化熱を多く奪うため、例えば蒸発器の場合その温度が低くなり、また蒸発器の乾燥が進んで乾燥状態になると蒸発する水分がなくなってくるため、蒸発器の下流空気温度は上流空気温度近くに上昇する。したがって、乾燥が進むにつれて乾燥度合いが高くなると水分が少なくなり気化熱も奪わなくなるため、当該下流空気温度は上流空気温度にほぼ等しくなる。そこで、この発明によれば、熱交換器よりも上流の熱交換器前温度(TU)と下流の熱交換器後温度(TL)との差に着目し、この差が熱交換器の乾燥状態を判定できる第二の所定値未満になったときに熱交換器の乾燥を終了することにより、精度の高い適切な乾燥運転を実現できる。
【0016】
なお、特許請求の範囲及び上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置100の概略構成を示す模式図である。
【図2】車両用空調装置100の制御に係る構成を示すブロック図である。
【図3】車両用空調装置100のエアコンECU50による基本的な空調制御処理を示したフローチャートである。
【図4】上記空調制御処理における室内用ブロワ電圧決定及び蒸発器の乾燥制御の処理(ステップ6)を示すフローチャートである。
【図5】上記空調制御処理における吸込口モード決定の処理(ステップ7)を示すフローチャートである。
【図6】上記空調制御処理におけるウォータポンプ作動決定の処理(ステップ10)を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態の室内用ブロワ電圧決定及び蒸発器の乾燥制御の処理(ステップ6)を示すフローチャートである。
【図8】第3実施形態の室内用ブロワ電圧決定及び蒸発器の乾燥制御の処理(ステップ6)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1〜図6を用いて説明する。第1実施形態では、車両用空調装置100をハイブリッド自動車用の空調装置に適用した例について説明する。図1は車両用空調装置100の概略構成を示す模式図である。図2は車両用空調装置100の制御に係る構成を示すブロック図である。
【0020】
ハイブリッド自動車は、ガソリン等の液体燃料を爆発燃焼させて動力を発生させる走行用内燃機関をなすエンジン30、走行補助用電動機機能及び発電機機能を備える走行補助用の電動発電機、エンジン30への燃料供給量や点火時期等を制御するエンジン用電子制御装置(以下、エンジンECU60ともいう)、電動発電機やエンジンECU60等に電力を供給する電池、電動発電機の制御及び無断変速機や電磁クラッチの制御を行うと共にエンジンECU60に制御信号を出力するハイブリッド電子制御装置(以下、ハイブリッドECU70ともいう)を備えている。ハイブリッドECU70は、電動発電機及びエンジン30のいずれの駆動力を駆動輪に伝達するかの駆動切替を制御する機能、及び電池の充放電を制御する機能を備えている。
【0021】
また電池は、車室内空調、走行等によって消費した電力を充電するための充電装置を備えており、充電装置には例えばニッケル水素蓄電池、リチウムイオン電池等が用いられる。この充電装置は、電力供給源としての電気スタンドや商業用電源(家庭用電源)に接続されるコンセントを備えており、このコンセントに電源供給源を接続することにより、電池の充電を行うこともできる。
【0022】
具体的には、以下のような制御を行う。
(1)車両が停止しているときは、基本的にエンジン30を停止させる。
(2)走行中は、減速時を除き、エンジン30で発生した駆動力を駆動輪に伝達する。なお、減速時は、エンジン30を停止させて電動発電機にて発電して電池に充電する(電気走行モード)。
(3)発進時、加速時、登坂時及び高速走行時等の走行負荷が大きいときには、電動発電機を電動モータとして機能させてエンジン30で発生した駆動力に加えて、電動発電機に発生した駆動力を駆動輪に伝達する(ハイブリッド走行モード)。
(4)電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジン30の動力を電動発電機に伝達して電動発電機を発電機として作動させて電池の充電を行う。
(5)車両が停止しているときに電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジンECU60に対してエンジン30を始動する指令を発するとともに、エンジン30の動力を電動発電機に伝達する。
【0023】
車両用空調装置100は、車室内空調運転の実施可能な装置であり、駐車中、例えば乗員乗車前に室内用ブロワ14を駆動して送風することも可能である。車両用空調装置100は、図1に示すように、車室内に空調空気を導く空気通路10aを形成する空調ケース10、空調ケース10内において空気流を発生させる送風手段としての室内用ブロワ14、空調ケース10内を流れる空気を冷却するための冷凍サイクル1、及び空調ケース10内を流れる空気を加熱するための冷却水回路31、エアコン電子制御装置(以下、エアコンECU50ともいう)等を備える。
【0024】
空調ケース10は、ハイブリッド自動車の車室内の前方付近に設けられている。空調ケース10の最も上流側には、内外気切替箱を構成する部分であり、車室内の空気(以下、内気ともいう)を取り入れる内気吸込口11、及び車室外の空気(以下、外気ともいう)を取り入れる外気吸込口12が形成されている。
【0025】
内気吸込口11及び外気吸込口12の内側には、内外気切替ドア13が回動自在に設けられている。この内外気切替ドア13は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、吸込口モードを内気循環モード、外気導入モード等に切り替えることが可能である。
【0026】
空調ケース10の最も下流側には、吹出口切替箱を構成する部分であり、デフロスタ開口部、フェイス開口部およびフット開口部が形成されている。そして、デフロスタ開口部には、デフロスタダクト23が接続されて、このデフロスタダクト23の最下流端には、車両のフロント窓ガラスの内面に向かって主に温風を吹き出すデフロスタ吹出口18が開口されている。フェイス開口部には、フェイスダクト24が接続されて、このフェイスダクト24の最下流端には、乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出すフェイス吹出口19が開口されている。さらに、フット開口部には、フットダクト25が接続されて、このフットダクト25の最下流端には、乗員の足元部に向かって主に温風を吹き出すフット吹出口20が開口されている。
【0027】
各吹出口18,19,20の内側には、2個の吹出口切替ドア21,22が回動自在に取り付けられている。2個の吹出口切替ドア21,22は、サーボモータ等のアクチュエータによりそれぞれ駆動されて、吹出口モードをフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードのいずれに切り替えることが可能である。
【0028】
室内用ブロワ14は、ブロワケース、ファン16、モータ15よりなり、このモータ15への印加電圧に応じて、モータ15の回転速度が決定される。モータ15への印加電圧がエアコンECU50からの制御信号に基づいて制御されることにより、室内用ブロワ14の送風量は制御される。
【0029】
冷凍サイクル1は、インバータ80により回転数制御されて冷媒を圧縮する圧縮機2、圧縮された冷媒を凝縮液化させる凝縮器3、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流す気液分離器5、液冷媒を減圧膨張させる膨張弁6、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる蒸発器7、及びこれらを環状に接続する冷媒配管等から構成されている。
【0030】
室内用ブロワ14よりも送風空気の下流側における空調ケース10内の空気通路10aには、上流側から下流側に進むにしたがい順に、蒸発器7(冷却用の熱交換器の一例)、エアミックスドア17、ヒータコア34が配置されている。
【0031】
圧縮機2は、内蔵された電動モータにより駆動され、回転数制御が可能であり、回転数に応じて冷媒吐出流量が可変である。圧縮機2はインバータ80により周波数が調整された交流電圧が印加されてその電動モータの回転速度が制御される。インバータ80は車載電池から直流電源の供給を受け、エアコンECU50により制御される。
【0032】
凝縮器3は、エンジンコンパートメント等の車両が走行する際に生じる走行風を受け易い場所に設けられ、内部を流れる冷媒と室外ファン4により送風される外気および走行風とを熱交換する室外熱交換器である。冷却水回路31は、電動のウォータポンプ32によってエンジン30のウォータジャケットで暖められた冷却水を循環させる回路であり、ラジエータ、サーモスタット(いずれも図示せず)及びヒータコア34を有している。このヒータコア34は、内部にエンジン30を冷却した冷却水が流れ、この冷却水を暖房用熱源として空調ケース10を流れる空気を再加熱する。また、水温センサ33は、冷却回路31を流れる冷却水の水温TWを検出する温度検出手段である。水温センサ33によって検出された信号は制御装置50に入力される。
【0033】
蒸発器7は、室内用ブロワ14直後の通路全体を横断するように配置されており、室内用ブロワ14から吹き出された空気全部が通過するようになっている。蒸発器7は、内部を流れる冷媒と空気通路10aを流れる空気との間で熱交換が行われて当該空気を冷却する空気冷却作用及び自身を通過する空気を除湿する空気除湿作用を行う室内熱交換器である。
【0034】
蒸発器7よりも下流側であってヒータコア34よりも上流側の通風路には、蒸発器7を通過した空気を、ヒータコア34を通る空気とヒータコア34を迂回する空気の風量比率を調整できるエアミックスドア17が設けられている。エアミックスドア17は、アクチュエータ等によりそのドア本体の位置を変化させて、空調ケース10内の蒸発器7よりも下流の通路の一部を塞ぐことで、車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整する温度調整手段である。
【0035】
冷媒圧力センサ43は、冷凍サイクル1の高圧側の流路に設けられ、凝縮器3よりも上流の冷媒の高圧圧力、すなわち圧縮機2の吐出圧力Preを検出する。蒸発器温度センサ44は、蒸発器7における所定箇所の温度(本実施形態ではフィン温度)である蒸発器温度TE(蒸発器7に関する温度情報の一つ)を検出する温度検出手段である。蒸発器前空気温度センサ45は、空気通路10aを流れる空気の蒸発器7よりも上流における空気温度である蒸発器前温度TU(蒸発器7に関する温度情報の一つ)を検出する温度検出手段である。蒸発器後空気温度センサ46は、空気通路10aを流れる空気の蒸発器7よりも下流における空気温度である蒸発器後温度TL(蒸発器7に関する温度情報の一つ)を検出する温度検出手段である。蒸発器温度センサ44、蒸発器前空気温度センサ45、蒸発器後空気温度センサ46のそれぞれによって検出された信号は制御装置50に入力される。
【0036】
車室内のフロント窓の内面付近には、フロント窓の内面付近の空気の代表的な湿度と温度を検出できる湿度センサ47と温度センサ48が設けられている。湿度センサ47は、感湿膜の誘電率が空気の相対湿度に応じて変化し、それにより、静電容量が空気の相対湿度に応じて変化する容量変化型のものである。温度センサ48は温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタである。
【0037】
制御装置50は、湿度センサ47の出力値に基づいて、フロント窓付近の車室内空気の相対湿度RHを演算する。すなわち、制御装置50は、湿度センサ47の出力値を相対湿度RHに変換するための所定の演算式が予め記憶しており、この演算式に湿度センサ47の出力値を適用することにより、相対湿度RHを演算する。下記の式1は、この湿度演算式の具体例である。
(式1)
RH=αV+β
但し、αは制御係数で、βは定数である。
【0038】
次に、制御装置50は、温度センサ48の出力値を予め記憶されている所定の演算式に適用することにより、フロント窓付近の車室内空気温度を演算する。さらに、制御装置50は、窓温度センサ49の出力値を予め設定された所定の演算式に適用することにより、窓の温度(窓の室内側表面温度)を演算する。さらに、制御装置50は、相対湿度RH、空気温度および窓の温度に基づいて、窓表面相対湿度(窓の室内側表面の相対湿度)RHWを演算する。すなわち、湿り空気線図を用いることにより、相対湿度RHと空気温度と窓の温度とから窓表面相対湿度RHWを演算する。
【0039】
エアコンECU50は、車室内の空調運転を制御するエアコン電子制御装置であり、マイクロコンピュータと、車室内前面に設けられた操作パネル51上の各種スイッチからの信号や、内気センサ40、外気センサ41、日射センサ42、冷媒圧力センサ43、蒸発器温度センサ44、蒸発器前空気温度センサ45、蒸発器後空気温度センサ46、水温センサ33、湿度センサ47、温度センサ48、窓温度センサ49等からセンサ信号が入力される入力回路と、各種アクチュエータに出力信号を送る出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、ROM(読み込み専用記憶装置)、RAM(読み込み書き込み可能記憶装置)等のメモリおよびCPU(中央演算装置)等から構成されており、操作パネル51等から送信された運転命令に基づいた演算に使用される各種プログラムを有している。
【0040】
エアコンECU50は、上記の各サイクル運転時に、エアコン環境情報、エアコン運転条件情報及び車両環境情報を受信してこれらを演算し、圧縮機2の設定すべき容量等を算出する。そして、エアコンECU50は、演算結果に基づいてインバータ80に対して制御信号を出力し、インバータ80によって圧縮機2の出力量は制御される。このように乗員による操作パネル51の操作によって、空調装置の運転・停止および設定温度などの操作信号などがエアコンECU50に入力されて各種センサの検出信号が入力されると、エアコンECU50は、エンジンECU60、ハイブリッドECU70等と通信し、各種の演算結果に基づいて、圧縮機2、室内用ブロワ14、室外ファン4、エアミックスドア17、ウォータポンプ32、内外気切替ドア13、吹出口切替ドア21,22等の各機器の運転を制御する。
【0041】
図3は、エアコンECU50による基本的な制御処理を示したフローチャートである。図3の基本的な制御処理がスタートすると、エアコンECU50は以降の各ステップに係る処理を実行していく。なお、ステップ2からステップ9の処理は250msに1回行われる。
【0042】
(イニシャライズ)
まず、ステップ1でエアコンECU50内のRAM等の記憶されている各パラメータ等を初期化する。
【0043】
(スイッチ信号読み込み)
次に、ステップ2で操作パネル51等からの各種スイッチ信号等を読み込む。
【0044】
(センサ信号読み込み)
次に、ステップ3で上記の各種センサからの信号を読み込む。
【0045】
(TAO算出基本制御)
次に、ステップ4で、ROMに記憶された下記の式2を用いて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する。
【0046】
(式2)
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
ここで、Tsetは、温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気センサ40にて検出された内気温度、Tamは外気センサ41にて検出された外気温度、Tsは日射センサ42にて検出された日射量である。また、Kset,Kr,Kam及びKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。そして、このTAO及び上記各種センサからの信号により、エアミックスドア17のアクチュエータの制御値及びウォータポンプ32の回転数の制御値等を算出する。
【0047】
(エアミックスドア開度決定)
次に、ステップ5で、ROMに記憶された下記の式3を用いて、エアミックスドア17の開度決定を実行する。
【0048】
(式3)
開度=((TAO−TE)/(TW−TE))×100(%)
式3において、TEは蒸発器温度センサ44が検出する蒸発器温度、TWは水温センサ33が検出する冷却水温度である。
【0049】
(ブロワ電圧決定及び蒸発器の乾燥制御)
次に、ステップ6のブロワ電圧決定及び蒸発器の乾燥制御を実施する。このステップ6は、具体的には、図4にしたがって実行する。図4は、図3のステップ6におけるブロワ電圧決定及び蒸発器の乾燥制御の詳細を示すフローチャートである。このブロワ電圧は、電池の電力により駆動される室内用ブロワ14に印加される電圧である。
【0050】
図4に示すように、本制御がスタートすると、ステップ60でイグニッションスイッチ(以下、IGスイッチと記載することがある)がOFF状態であるか否かを判定する。つまり、IGスイッチがOFF状態であれば駐車中であると判定し、ON状態であれば駐車中以外の状態であると判定するものである。このときIGスイッチがON状態であり、駐車中でないと判定すると、乗員が乗車中の空調運転が行われる可能性が高く、ブロワ電圧は、ステップ61に示すように、予めROMに記憶されている、目標吹出温度TAOとブロワ電圧との関係を表したマップにしたがって決定される。そして、ステップ6のブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。このマップによれば、目標吹出温度TAOに対する適正なブロワ電圧を考慮して決定することができる。
【0051】
ステップ60でIGスイッチがOFF状態であると判定すると、さらにステップ62で車両のドアが一旦開いてから閉められた後所定時間(ここでは5分)が経過しているか否かを判定する。この判定により、ドアの開閉動作があることで車内に人がいない可能性が高く、さらに閉じてから5分経過を確認することで乗員がいないことを確実に検出できる。このため、この後、蒸発器7を乾燥する途中で発生する臭いが車内に流出したとしても、人に不快感を与えることがない。この判定は、当該所定時間が経過していると判定するまで繰り返される。
【0052】
そして、当該所定時間が経過していると判定すると、ステップ63で、直近のIGがON状態での圧縮機のON時間(運転時間)が所定時間(ここでは5分)を超えているか否かを判定する。この判定により、駐車前に蒸発器7が結露した可能性があるかを判定することができる。ステップ63で5分以内であると判定すると、蒸発器7は乾燥していると判定し、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定してブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。つまり、室内用ブロワ14を運転せず蒸発器7の乾燥運転を行わない。
【0053】
ステップ63で5分を超えていると判定すると、コンセント等の外部電源からの電力供給があるか(例えばプラグインによる充電状態)否かを判定する(ステップ64)。ステップ64で外部からの電力供給がないと判定すると、バッテリあがり等の電力不足を考慮し、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定してブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。つまり、室内用ブロワ14を運転せず蒸発器7の乾燥運転を行わない。
【0054】
一方、ステップ64で外部からの電力供給があると判定すると、上記の電力不足を心配することがないため、ステップ65でブロワ電圧を6Vに決定し、室内用ブロワ14のモータ15に6Vを印加する。室内用ブロワ14は6Vに相当する中レベルの風量の送風を蒸発器7に提供し乾燥運転が開始される。なお、車両に対して急速充電が行われている場合は、乗員が短時間で運転動作を再開する可能性が高いため、蒸発器7の乾燥運転を行うと、蒸発器7から発生する臭いが車室内に残ったり、外気の取入れにより車室内温度が低下したりするので、蒸発器7の乾燥運転は行わないようにしてもよい。
【0055】
そしてステップ66で、蒸発器7の乾燥運転開始から所定時間(ここでは5分)を経過したか否かを判定する。蒸発器7の乾燥運転が5分以上継続していると判定すると、次にステップ67で、現在の蒸発器温度TEから5分前の蒸発器温度TEを除した温度差が1℃(第一の所定値)未満であるか否かを判定する。
【0056】
ステップ67の判定処理は、以下の特性に基づくものである。蒸発器7が乾いている最中は、水分が多いときは気化熱を多く奪うので蒸発器7の温度が低く、蒸発器7の乾燥が進むにつれて蒸発する水分が少なくなるため、蒸発器7の温度は高くなる。つまり、蒸発器7が乾燥している最中は、蒸発器7の温度は変化し続けているので、5分前とは蒸発器7の温度に差が生じる。よって、このように温度差が生じている場合には乾燥を続けるが、蒸発器7が乾いてくると、水分がなくなり、気化熱も奪わなくなるので、蒸発器7の温度は時間がたっても変化しないようになる。したがって、蒸発器7の当該温度差が小さくなると蒸発器7は乾燥状態であり、乾燥運転を終了することができる。
【0057】
ステップ67で、当該温度差が1℃未満であると判定すると、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了し、ブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。なお、ステップ67で当該温度差が1℃未満であると判定した後、さらに外気を取入れつつ室内用ブロワ14の運転を5分程度継続してから、すなわち車室内の換気をしてから、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了するようにしてもよい。このようにすれば、乾燥運転とともに車室内に送られた湿気を車室外に排出でき、乗員に対して車室内の臭い軽減したり、湿気による不快感を回避したりすることができる。
【0058】
一方、ステップ67で当該温度差が1℃以上であると判定すると、蒸発器7の乾燥運転開始から所定時間(ここでは1時間)を経過したか否かを判定する(ステップ68)。蒸発器7の乾燥運転開始から1時間経過していない場合は、ステップ65に戻る。蒸発器7の乾燥運転開始から1時間以上継続していると判定すると、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了し、ブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。このように蒸発器7の乾燥運転開始から所定時間(ここでは1時間)が経過すると、強制的に乾燥運転を終了することにより、消費電力の低減と、室内用ブロワ14のモータ15の運転時間に起因する耐久性の確保とを図ることができる。
【0059】
(吸込口モード決定)
次に、ステップ7の吸込口モード決定処理を実施する。このステップ7は、具体的には、図5にしたがって実行する。図5は、図3のステップ7における吸込口モード決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0060】
図5に示すように、ステップ7がスタートすると、ステップ70でIGスイッチがOFF状態であるか否かを判定する。このときIGスイッチがOFF状態であり、駐車中であると判定すると、ステップ71で吸込口モードを外気導入率100%の外気導入モードに決定し、ステップ7を終了する。このように駐車中に外気導入モードにすることで、車室内に残った湿気が車外に排出され易くなる。例えば、室内用ブロワ14の運転を停止して蒸発器7の乾燥制御を行わない場合でも、外気導入モードを実施することで車室内に湿気がこもらないようにできる。
【0061】
ステップ70でIGスイッチがON状態であると判定すると、次にステップ72でオート運転が設定されているか否かを判定する。ステップ72でオート運転が設定されず、マニュアル運転であると判定すると、ステップ73でマニュアルでの設定に準じ、内気循環モードの場合は外気導入率0%に決定し、外気導入モードの場合は外気導入率100%に決定して、ステップ7を終了する。
【0062】
ステップ72でオート運転が設定されていると判定すると、ステップ74で、ROMに記憶されたマップから目標吹出温度TAOに対応する吸込口モードを決定する。このマップにしたがえば、目標吹出温度TAOが低い温度から高い温度にかけて、内気循環モード、内気と外気の両方を吸い込む内外気導入モード、外気を吸い込む外気導入モードとなるように決定される。
【0063】
(吹出口モード決定)
次に、図3のステップ8で、ROMに記憶されたマップから、目標吹出温度TAOに対応する吹出口モードを決定する。具体的には、目標吹出温度TAOが高いときには、フットモードが選択され、目標吹出温度TAOの低下に伴ってバイレベルモード、さらにはフェイスモードの順に選択される。
【0064】
(圧縮機回転数等決定)
次に、図3のステップ9で圧縮機の回転数の決定を実行する。エアコンスイッチがONされているときに圧縮機2の運転状態を決定する。エアコンECU50は、蒸発器温度TEに基づいて、圧縮機2の回転数を決定する。具体的には、予めROMに記憶されたマップにしたがって、蒸発器温度TEに対応する圧縮機の回転数を演算して決定する。後のステップ11でエアコンECU50は、インバータ80に対して、決定された回転数に圧縮機2を制御するための制御信号を送信する。インバータ80は送信された制御信号に基づいて圧縮機2のモータを制御する。
【0065】
(ウォータポンプ作動決定)
次に、図3のステップ10のウォータポンプ作動決定処理を実施する。このステップ10は、具体的には、図6にしたがって実行する。図6は、図3のステップ10におけるウォータポンプ作動決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0066】
図6に示すように、ステップ10がスタートすると、ステップ100で水温センサ33によって検出される冷却水の水温TWが蒸発器温度TEより高いか否かを判定する。水温TWが蒸発器温度TE以下であると判定すると、ステップ101でウォータポンプ32をOFFする要求を決定し、ステップ10を終了する。
【0067】
ステップ100で水温TWが蒸発器温度TEよりも高いと判定すると、次にステップ102で室内用ブロワ14をON(運転)する状態であるか否かを判定する。室内用ブロワ14をONしない状態であれば、ステップ101に進み、ウォータポンプ32をOFFする要求を決定し、ステップ10を終了する。室内用ブロワ14をONする状態であれば、ステップ103に進み、ウォータポンプ32をONする要求を決定し、ステップ10を終了する。このように、エアコンECU50は、冷却水の水温と室内用ブロワ14の運転及び停止に応じて、電動のウォータポンプ32の作動を決定する。
【0068】
(制御信号出力)
次に、図3のステップ11において、上記各ステップ2〜9で算出または決定された各制御状態が得られるように、インバータ80、各種アクチュエータ等に対して制御信号を出力する。そして、図3のステップ12において所定時間の経過を待って、ステップ2に戻り、継続して各ステップが実行される。
【0069】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。車両用空調装置100は、車室内に送風される空気が通る空気通路10aを内部に含む空調ケース10と、空調ケース10内に設けられて、内部を流れる冷媒と空気通路10aを流れる空気との間で熱交換が行われる蒸発器7と、車室内に空気を送風するための室内用ブロワ14と、蒸発器7へ冷媒を供給する圧縮機2の作動及び室内用ブロワ14の作動を制御するエアコン制御装置50と、を備え、駐車中に室内用ブロワ14によって蒸発器7に対して送風可能である。エアコン制御装置50は、駐車中において、蒸発器7に関する温度情報を用いて蒸発器7の乾燥度合いを判定し蒸発器7が臭気を発生しない乾燥状態であると判定するまでの間は、圧縮機2の作動を制御して蒸発器7への冷媒供給を停止すると共に、室内用ブロワ14の作動を制御して蒸発器7に対して送風を行う。
【0070】
これによれば、蒸発器7が上記の乾燥状態でない場合は、駐車中に蒸発器7に対して冷媒供給の停止及び送風を行う。これにより、乗車時の空調運転を行う前で、臭気成分を含む水分を飛ばして蒸発器7を乾燥状態に維持することができるため、乗車時に行われる空調運転開始直後に吹き出される車室内への送風に臭気成分を含んだ水分が混じって車室内に供給されてしまうことを防止できる。したがって、乗車中の空調開始時に臭気を含んだ空調風が車室内に供給されることを抑止し、乗員の不快感を低減することができる。また、駐車中に蒸発器7を乾燥状態に維持して蒸発器7での細菌の繁殖を抑制することができる。これにより、蒸発器7の汚れ、腐食を抑制することができ、その耐久性向上が図れる。
【0071】
また、エアコンECU50は、蒸発器7の乾燥度合いを判定するために用いる蒸発器7に関する温度情報は、蒸発器7における所定箇所の蒸発器温度TEを用いる。これによれば、蒸発器7の温度を直接検出した値を用いて蒸発器7の乾燥度合いを判定するため、高精度の乾燥判定を実施することができるしたがって、空調開始時に起こりうる臭気防止を確実に実現できる。
【0072】
また、エアコンECU50は、蒸発器温度TEの所定時間(例えば5分間)の変化量が第一の所定値(1℃)未満のとき蒸発器7が乾燥状態であると判定する。これによれば、上記のように、蒸発器7が乾燥しているときに、蒸発器温度TEの所定時間の変化量が所定範囲の小さな値になることに着目し、乾燥運転完了の判断材料とすることにより、乾燥状態の確保と無駄が少なく効率的な運転との両方を実現することができる。
【0073】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態の基本制御のメインルーチンにおけるブロワ電圧決定及び蒸発器の乾燥制御の第一の他の例を図7にしたがって説明する。
【0074】
本実施形態で説明する処理のフローは、第1実施形態で図4にしたがって説明したフローに対して、ステップ66A及びステップ67Aの各処理を実行する点が異なっている。ステップ67Aの処理では、蒸発器7の上流の空気温度を用いた判定を行う。その他のステップは第1実施形態と同様である。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1実施形態と同様である。以下に、異なる処理について説明する。
【0075】
図7に示すように、エアコンECU50は、第1実施形態で説明したステップ65の処理の後、ステップ66Aで蒸発器7よりも下流における空気の湿度が80%未満であるか否かを判定する。この空気の湿度は、前述のとおり、湿度センサ47の出力値と上記の式1を用いて算出するフロント窓付近の車室内空気の相対湿度RHと、温度センサ48の出力値と所定の演算式によって演算したフロント窓付近の車室内空気温度と、窓温度センサ49の出力値と所定の演算式によって演算した窓の室内側表面温度と、に基づいて演算される窓表面相対湿度RHWである。このように求めた窓表面相対湿度RHWが80%以上であると判定すると、蒸発器7の結露水がまだ空気中に蒸発しており蒸発器7はまだ乾燥途中であり乾燥しきっていないと判断できるので、ステップ68に進み、所定時間が経過するまで乾燥運転を継続する。そして、所定時間の乾燥運転が終了すると、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定してブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。
【0076】
一方、窓表面相対湿度RHWが80%未満であると判定すると、蒸発器7は乾燥した状態であると判断できる。このように蒸発器7の下流の空気湿度を乾燥終了の判断材料とするのは、蒸発器7からの結露水の蒸発が終わり、乾燥状態に近づくと、蒸発器7の下流の空気湿度は上流の空気湿度とほぼ同じまで低下するからである。さらに、確実を期して、ステップ67Aで、蒸発器前温度TUから蒸発器温度TEを除した温度差が3℃(第二の所定値)未満であるか否かを判定する。
【0077】
ステップ67Aの判定処理は、以下の特性に基づくものである。蒸発器7の乾燥が進行している途中の水分が多いうちは、気化熱を多く奪うため、蒸発器7の温度が低くなり、また蒸発器7の乾燥が進むに連れて蒸発する水分が少なくなるため、蒸発器7の温度はより上流の空気温度に近くなる。すなわち、乾燥終了状態に近づくと乾燥度合いが高くなって水分が少なくなり気化熱も奪わなくなるため、蒸発器7の温度は蒸発器7の上流の空気温度にほぼ等しくなる。したがって、蒸発器7の上流における蒸発器前温度TUと、蒸発器温度TEとの温度差が実験データから求められる所定温度差よりも小さくなると、乾燥状態に到達したと判断できるのである。
【0078】
ステップ67Aで、上記の温度差が3℃未満であると判定すると、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了し、ブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。なお、ステップ67Aで当該温度差が3℃未満であると判定した後、さらに外気を取入れつつ室内用ブロワ14の運転を5分程度継続してから、すなわち車室内の換気をしてから、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了するようにしてもよい。このようにすれば、乾燥運転とともに車室内に送られた湿気を車室外に排出でき、乗員に対して車室内の臭い軽減したり、湿気による不快感を回避したりすることができる。
【0079】
一方、ステップ67Aで上記の温度差が3℃以上であると判定すると、ステップ68に進み、所定時間の乾燥運転が終了するまで乾燥運転を継続し、ブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了し、ブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。
【0080】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。車両用空調装置100のエアコンECU50は、蒸発器7よりも上流における蒸発器前温度TUと蒸発器7の所定箇所の温度である蒸発器温度TEとの差が第二の所定値未満であるとき蒸発器7が乾燥状態であると判定する。
【0081】
これによれば、上記のように、蒸発器7が乾燥しているときに、上流の蒸発器前温度TUと蒸発器温度TEとの温度差が所定範囲の小さな値になることに着目し、乾燥運転完了の判断材料とすることにより、乾燥状態の確保と無駄が少なく効率的な運転との両方を実現することができる。
【0082】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態の基本制御のメインルーチンにおけるブロワ電圧決定及び蒸発器の乾燥制御の第一の他の例を図8にしたがって説明する。
【0083】
本実施形態で説明する処理のフローは、第2実施形態で図7にしたがって説明したフローに対して、ステップ67Aの代わりにステップ67Bの処理を実行する点が異なっている。ステップ67Bの処理では、蒸発器7の下流の空気温度を用いた判定を行う。その他のステップは第1および第2実施形態と同様である。なお、その他の各構成部品及びこれらの作動、他の制御処理手順については、第1および第2実施形態と同様である。以下に、異なる処理について説明する。
【0084】
図8に示すように、エアコンECU50は、第1実施形態で説明したステップ66Aで窓表面相対湿度RHWが80%未満であると判定すると、前述のように、蒸発器7は乾燥した状態であると判断できる。さらに、確実を期して、ステップ67Bで、蒸発器前温度TUから蒸発器後温度TLを除した温度差が3℃(第二の所定値)未満であるか否かを判定する。
【0085】
ステップ67Bの判定処理は、以下の特性に基づくものである。蒸発器7の乾燥が進むに連れて蒸発する水分が少なくなるため、蒸発器7の下流の空気温度は上流の空気温度に近くなる。すなわち、乾燥終了状態に近づくと乾燥度合いが高くなって水分が少なくなり気化熱も奪わなくなるため、蒸発器7の下流の空気温度は蒸発器7の上流の空気温度にほぼ等しくなるように上昇する。したがって、蒸発器7の上流における蒸発器前温度TUと、蒸発器7の下流における蒸発器後温度TLとの温度差が実験データから求められる所定温度差よりも小さくなると、乾燥状態に到達したと判断できるのである。
【0086】
ステップ67Bで、上記の温度差が3℃未満であると判定すると、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了し、ブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。なお、ステップ67Bで当該温度差が3℃未満であると判定した後、さらに外気を取入れつつ室内用ブロワ14の運転を5分程度継続してから、すなわち車室内の換気をしてから、ステップ69に進みブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了するようにしてもよい。このようにすれば、乾燥運転とともに車室内に送られた湿気を車室外に排出でき、乗員に対して車室内の臭い軽減したり、湿気による不快感を回避したりすることができる。
【0087】
一方、ステップ67Bで上記の温度差が3℃以上であると判定すると、ステップ68に進み、所定時間の乾燥運転が終了するまで乾燥運転を継続し、ブロワ電圧を0Vに決定して蒸発器7の乾燥運転を終了し、ブロワ電圧決定及び蒸発器7の乾燥制御を終了する。
【0088】
本実施形態の車両用空調装置100がもたらす効果を以下に述べる。車両用空調装置100のエアコンECU50は、蒸発器7よりも上流における蒸発器前温度TUと蒸発器7よりも下流における蒸発器後温度TLとの差が第二の所定値未満であるとき蒸発器7が乾燥状態であると判定する。
【0089】
これによれば、上記のように、蒸発器7が乾燥しているときに、上流の蒸発器前温度TUと下流の蒸発器後温度TLとの温度差が所定範囲の小さな値になることに着目し、乾燥運転完了の判断材料とすることにより、乾燥状態の確保と無駄が少なく効率的な運転との両方を実現することができる。
【0090】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0091】
上記実施形態の圧縮機2の回転数は、インバータ80により制御される構成であるが、これに限定されるものではない。例えば、圧縮機2は、エンジン30にベルト駆動されて冷媒を圧縮するものであってもよい。この場合、圧縮機2には、エンジン30から圧縮機2への回転動力の伝達を断続するクラッチ手段としての電磁クラッチが連結されており、この電磁クラッチは、クラッチ駆動回路等により制御される。電磁クラッチが通電された時に、エンジン30の回転動力が圧縮機2に伝達されて、蒸発器7による空気冷却作用が行われ、電磁クラッチの通電が停止した時に、エンジン30と圧縮機2とが遮断され、蒸発器7による空気冷却作用が停止するようになる。
【0092】
また、上記実施形態のヒータコア34の後方にさらに空気を加熱できる電気式補助熱源としてPTCヒータ(positive temperature coefficient)を設けるようにしてもよい。このPTCヒータは、通電発熱素子部を備え、通電発熱素子部に通電されることによって発熱し、周囲の空気を暖めることができる。この通電発熱素子部は、耐熱性を有する樹脂材料(例えば、66ナイロンやポリブタジエンテレフタレートなど)で成形された樹脂枠の中に複数個のPTC素子を嵌め込むことにより構成したものである。
【符号の説明】
【0093】
7…蒸発器(熱交換器)
10…空調ケース
10a…空気通路
14…室内用ブロワ(送風手段)
44…蒸発器温度センサ(熱交換器温度検出手段)
45…蒸発器前空気温度センサ(熱交換器前温度検出手段)
46…蒸発器後空気温度センサ(熱交換器後温度検出手段)
50…エアコンECU(制御装置)
TE…蒸発器温度(熱交換器温度)
TU…蒸発器前温度(熱交換器前温度)
TL…蒸発器後温度(熱交換器後温度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に送風される空気が通る空気通路(10a)を内部に含む空調ケース(10)と、前記空調ケース内に設けられて、内部を流れる冷媒と前記空気通路を流れる前記空気との間で熱交換が行われる熱交換器(7)と、前記車室内に空気を送風するための送風手段(14)と、前記熱交換器へ冷媒を供給する圧縮機(2)の作動及び前記送風手段の作動を制御する制御装置(50)と、を備え、駐車中に前記送風手段によって前記熱交換器に対して送風可能な車両用空調装置であって、
前記制御装置は、前記駐車中において、前記熱交換器に関する温度情報を用いて前記熱交換器の乾燥度合いを判定し、前記熱交換器が臭気を発生しない乾燥状態であると判定するまでの間は、前記圧縮機の作動を制御して前記熱交換器への冷媒供給を停止すると共に、前記送風手段の作動を制御して前記熱交換器に対して送風を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記熱交換器における所定箇所の熱交換器温度(TE)を検出する熱交換器温度検出手段(44)を備え、
前記熱交換器の乾燥度合いを判定するために用いる前記熱交換器に関する温度情報は、前記熱交換器温度(TE)であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記熱交換器温度(TE)の所定時間の変化量が第一の所定値未満のとき前記熱交換器が前記乾燥状態であると判定することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記熱交換器における所定箇所の熱交換器温度(TE)を検出する熱交換器温度検出手段(44)と、前記空気通路を流れる前記空気の前記熱交換器よりも上流における熱交換器前温度(TU)を検出する熱交換器前温度検出手段(45)と、を備え、
前記制御装置は、前記熱交換器前温度(TU)と前記熱交換器温度(TE)との差が第二の所定値未満であるとき前記熱交換器が前記乾燥状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空気通路を流れる前記空気の前記熱交換器よりも上流における熱交換器前温度(TU)を検出する熱交換器前温度検出手段(45)と、前記空気通路を流れる前記空気の前記熱交換器よりも下流における熱交換器後温度(TL)を検出する熱交換器後温度検出手段(46)と、を備え、
前記制御装置は、前記熱交換器前温度(TU)と前記熱交換器後温度(TL)との差が第二の所定値未満であるとき前記熱交換器が前記乾燥状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−57180(P2011−57180A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212269(P2009−212269)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】