説明

車両用視認支援装置

【課題】簡単な構成で運転者に車外情報を容易かつ適正に視認させることができる車両用視認支援装置を提供する。
【解決手段】車外の情景を撮影する撮像手段7と、撮影された車外情景のデータおよび車両の形状データに基づいて運転者の死角となる領域の画像を表示画像として生成する表示画像生成手段とを備えるとともに、該表示画像生成手段により生成された表示画像を表示する表示部11が車室内に設けられた車両用視認支援装置であって、上記表示画像生成手段は、運転者の死角となる領域とその周辺領域とを含む領域の画像を表示画像として生成するとともに、該周辺領域を含んだ表示画像を上記表示部11に表示させるように構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の死角となる領域の死角画像を車室内に設けられた表示部に表示することにより車外情報の視認性を効果的に向上させることができる車両用視認支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車両の外方を撮像する撮像装置と、車両のピラーの室内側面への取付部を有する装置本体と、該装置本体と一体的に設けられて上記取付部に対する室内側に配置された表示画面を有する表示装置とを備え、上記装置本体には、ピラーおよび当該ピラーと連続する不透明部材により形成される運転者の死角領域内に表示画面が配置されるように、上記取付部と表示画面との位置関係を設定することにより、ピラー以外に運転者の死角を形成する部材を考慮して、運転者からの見易さを確保しつつ新たな死角を作らないように表示画面を適切に配置した車両用運転支援装置が知られている。
【0003】
また、下記特許文献2には、走行車両の前方に位置する画像領域情報を撮影カメラにより撮影するとともに、運転者の視線位置を視線位置検出カメラにより検出し、この視線位置検出カメラにより検出された運転者の視線位置に基づいて、運転者の死角視野となる画像領域情報を判別して抽出し、この抽出した画像領域情報を右ピラーに嵌め込んだ画像表示モニターに表示することにより、運転時の死角領域を解消できるとともに、他車両や人などの移動体の接近を確実に視認できる車両周囲視認装置を備えた車両周囲視認システムが開示されている。
【0004】
さらに、下記特許文献3に示されるように、車両の周辺を撮像する車外カメラと、運転席に着座した運転者の視点の空間的な位置を認識する視点認識器と、運転者の視界を遮るサイドピラーやドア等の遮蔽物が透明であるとした場合に運転者の目に映るべき車外の景色を、車外カメラによって得られた周辺画像データを視点認識器の認識結果に応じて加工することにより生成する画像データ処理装置と、画像データ処理装置が生成する画像を表示するディスプレイとを設け、該ディスプレイをピラー等の遮蔽物に取り付けることにより、映し出されている画像が、どの方向のものであるのかを運転者が瞬時かつ直感的に把握し易いように構成することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−307981号公報
【特許文献2】特開2005−125828号公報
【特許文献2】特開2006−44596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜3に開示された車両用運転支援装置等では、運転者の視界がフロントピラー等で遮られることにより形成された運転者の死角となる領域の情景を撮影カメラによって撮影し、撮影された情景データを運転者の視点位置等に対応させて加工することにより、フロントピラー等からなる遮蔽物により覆われた死角領域の実像に対応した画像データを作成し、該画像データに基づいた画像を上記遮蔽物上の表示部(ディスプレイ)に表示させるように構成されている。したがって、上記死角領域の実像に正確に対応した画像を表示部に表示させることができれば、上記遮蔽物があたかも透明体であると錯覚させるようにして死角をなくすことが可能である。
【0007】
しかし、実際には、運転者の着座姿勢等に応じてその視点位置が移動するため、該運転者の視点位置と、車外の情景を撮像するために固定的に設けられた撮像手段の設置位置との間には所定の位置ずれが生じることが避けられず、上記可視領域の実像と表示部上の画像とを正確に連続させることは不可能である。また、上記撮像手段および表示部の機能には限界があり、該表示部に表示される画像と、これに対応した実像との間には、その色彩および陰影等に微妙な相違が生じることが避けられないとともに、信号の処理時間に対応した動きのずれが生じることが避けられない。したがって、車外に存在する障害物の一部が上記フロントピラー等からなる遮蔽物により覆われている場合には、上記可視領域を介して透視された実像と、上記表示部に表示された画像とを一体的に認識することが困難であり、運転者に戸惑いが生じて車外情報の視認性が悪化する可能性があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で運転者に車外情報を容易かつ適正に視認させることができる車両用視認支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車外の情景を撮影する撮像手段と、撮影された車外情景のデータおよび車両の形状データに基づいて運転者の死角となる領域の画像を表示画像として生成する表示画像生成手段とを備えるとともに、該表示画像生成手段により生成された表示画像を表示する表示部が車室内に設けられた車両用視認支援装置であって、上記表示画像生成手段が、運転者の死角となる領域とその周辺領域とを含む領域の画像を表示画像として生成するとともに、該周辺領域を含んだ表示画像を上記表示部に表示させるように構成されたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両用視認支援装置において、車幅方向における運転者の視点位置を検出する視点位置検出手段を有し、該視点位置検出手段により検出された運転者の視点位置に応じて上記死角領域の実像が求められるとともに、この実像と、上記撮像手段により撮影された画像とのずれを修正した表示画像が上記表示画像生成手段により生成されるように構成されたものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両用視認支援装置において、上記撮像手段が、車室前部上辺の車幅方向中央部近傍に設置されたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用視認支援装置において、フロントピラーの車室内側面を覆うようにフロントピラートリムが設置され、該フロントピラートリムの内側壁部と後壁部との接続部が車室内の中心部に向けて膨出するように形成されるとともに、該内側壁部および後壁部に跨るように上記表示部が設けられたものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、上記請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両用視認支援装置において、上記視点位置検出手段の出力信号に応じて運転者の視点位置が車幅方向外方側に移動したことが確認された場合には、上記表示部の表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて増大させた表示画像が形成されるように構成されたものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、上記請求項2〜5のいずれか1項に記載の車両用視認支援装置において、上記視点位置検出手段の出力信号に応じて運転者の視点位置が表示部近傍を向いた状態で一定時間以上、停止していることが確認された場合には、上記表示部の表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて低減した表示画像が形成されるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、上記表示部に表示された死角領域の周縁に位置する周縁領域の画像と、上記表示部の設置位置に隣接した可視領域を介して透視される上記周縁領域の実像とを入れ子状に重ねた状態で同時に視認することができるため、上記運転者の視点位置と撮像手段の設置位置とが異なることに起因して上記可視領域の実像と表示部上の画像とが相違し、あるいは表示画像と実像との間に色彩、陰影および動き等に微妙な相違が生じている場合等においても、運転者は上記表示画像と実像とを比較することにより、両者が同じものであると容易かつ正確に認識することができ、上記表示部に表示された画像に基づいて死角領域に位置する障害物等を適正に把握できるという利点がある。
【0016】
請求項2に係る発明では、上記視点位置検出手段により検出された運転者の視点位置に応じて上記死角領域の実像を求めるとともに、この実像と上記撮像手段により撮影された画像とのずれを修正した表示画像を上記表示画像生成手段により生成するように構成したため、上記のように入れ子状に重ねた状態で表示される表示部の表示画像を運転者に視認される実像に極力近づけることができ、両者が同一であることを運転者に対して容易に認識させることできるとともに、これによって表示部に表示された表示画像に基づき、上記死角領域に位置する障害物等を、より適正に視認させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、上記撮像手段を車室前部上辺の車幅方向中央部近傍に設置したため、単一の撮像手段により車両前方の車外情報を広範囲に取得することができる。したがって、車室前部の左右に撮像手段を設けることなく、簡単な構成で上記左右両側にそれぞれ設けられた表示部に表示画像を個別に表示させることができる等の利点がある。
【0018】
請求項4に係る発明では、フロントピラーの車内側面を覆うように設置されたフロントピラートリムの内側壁部と後壁部との接続部を車室内の中心部に向けて膨出させるように形成したため、上記フロントピラートリムに沿って配設されるフロントピラーも同様にその内側壁部と後壁部との接続部を車室内の中心部に向けて膨出させることにより、上記フロントピラーが大型化するのを防止しつつ、その断面係数を充分に確保して車体強度を向上できるという利点がある。そして、上記フロントピラートリムの内側壁部および後壁部に跨るように上記表示部を設けた構造とした場合においても、上記のように運転者の死角となる領域とその周辺領域を含んだ表示画像を上記表示部に表示させることにより、上記表示画像と実像とを比較して両者が同じものであると認識させることができるため、上記表示部に表示された死角画像に基づいて、上記フロントピラー等により隠蔽された領域に位置する障害物等を適正に把握できるという利点がある。
【0019】
請求項5に係る発明では、上記視点位置検出手段の出力信号に応じて運転者の視点位置が車幅方向外方側に移動したことが確認された場合に、上記表示部の表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて増大させた表示画像を形成するように構成したため、フロントウインドに比べて車外情報の取得が困難なサイドウインドを介して車外情報を得ようとしている状態にある運転者に対し、車外情報を、より容易かつ適正に視認させることができるという利点がある。
【0020】
請求項6に係る発明では、視点位置検出手段の出力信号に応じて運転者の視点位置が表示部近傍を向いた状態で一定時間以上に亘り停止していることが確認された場合に、上記表示部の表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて低減するように構成したため、上記表示部に表示される画像を介して情報を得ようとしている運転者に対し、より正確な車外情報を視認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る車両用視認支援装置を備えた車両の車室内構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用視認支援装置を備えた車両の平面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る車両用視認支援装置の実施形態を示すブロック図である。
【図5】撮像手段により撮影された障害物の画像を示す説明図である。
【図6】運転者から見える実像の形状を示す説明図である。
【図7】運転者の視点の移動状態を示す平面図である。
【図8】本発明に係る車両用視認支援装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図9】表示部に表示された画像等の一例を示す説明図である。
【図10】フロントピラーおよびピラートリムの変形例を示す図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜図3は、本発明に係る車両用視認支援装置を備えた車両の車室内構造を示している。該車両の車室内には、前部下方に沿ってインストルメントパネル1が車幅方向に延びるように設置されるとともに、その上方にはフロントウインド2が設置されている。また、該フロントウインド2の左右両側辺部には、フロントピラー3が上下方向に延びるように設置されるとともに、上記フロントウインド2の上方部には、バックミラー5が取り付けられるミラー取付部6が設けられている。
【0023】
上記ミラー取付部6には、車外の情景を撮像するCCDカメラ等からなる撮像手段7が設置されている。該撮像手段7は、運転者Aによって視認される車両前方の情景を広範囲に亘って撮影可能な広角レンズを有している。また、運転席4側(当実施形態では右側)に位置するフロントピラー3の上方部には、車幅方向における運転者Aの視点位置を検出するCCDカメラ等からなる視点位置検出手段8が設置されている。
【0024】
上記フロントピラー3には、その車室内側面を覆うようにフロントピラートリム9が設置されている。該フロントピラートリム9は、平面視においてフロントピラー3の車幅方向内方側面を覆う内側壁部9aと、その後端部から車外側に向けて延びる後壁部9bとを有し、該内側壁部9aと後壁部9bとの接続部が湾曲しつつ車室内の中心部に向けて膨出するように形成されている。そして、後述の表示画像生成手段10により生成された表示画像を表示する液晶モニターまたはELフィルムディスプレイ等からなる表示部11が、上記フロントピラートリム9の内側壁部9aおよび後壁部9bに跨るように設置されている。
【0025】
図4は、本発明に係る本発明に係る車両用視認支援装置の具体的構成を示すブロック図である。該車両用視認支援装置は、上記撮像手段7により撮影された車外情景のデータと、図外の記憶手段に予め記憶された車両の形状データと、上記視点位置検出手段8により検出された運転者Aの視点位置等とに基づき、運転席4に着座した運転者Aの死角となる領域の画像を表示画像として生成するとともに、該表示画像を上記表示部11に表示させるように制御する表示画像生成手段10を備えている。
【0026】
すなわち、上記表示画像生成手段10は、撮像手段7により撮影された車外情景のデータと、上記視点位置検出手段8により検出された運転者Aの視点位置、つまり運転者Aの眼球位置(アイポイント)の情報とに基づき、上記フロントピラー3により運転者Aの視線が遮られることにより形成される死角領域の画像データを特定するとともに、該死角領域の周辺領域に位置する画像データを所定範囲に亘って特定する機能を有している。そして、上記フロントピラー3により形成された死角領域に対応した実像と、上記撮像手段7により撮影された画像とのずれを、上記表示画像生成手段10により修正する修正制御が実行されるとともに、死角領域の画像データと周辺領域に位置する画像データとが合成されることにより得られた表示画像を所定の表示率で上記表示部11に表示させる表示率制御が実行されるようになっている。
【0027】
例えば、図2示すように、車両の右側に位置するフロントピラー3の前方に障害物Bが位置している場合において、車室前部上辺部の車幅方向略中央部に取り付けられた撮像手段7により撮影される障害物Bの画像は、図5に示すように、障害物Bの左右長Lが比較的に短く見える傾向がある。これに対して、運転席4に着座した運転者Aにより視認される障害物Bの実像は、図6の実線で示すように、障害物Bの左右長Lが比較的に長く見える傾向がある。
【0028】
上記表示画像生成手段10は、図5の仮想線で示すように、上記撮像手段7により撮影される障害物Bの右側面部を外方側へ拡張した拡張部bを形成するとともに、その拡張幅を、上記撮像手段7の設置位置と運転者Aの視点位置とのずれ量に基づいて設定することにより、上記撮影画像のデータを加工する。つまり、上記撮像手段7の設置位置と運転者Aの視点位置とのずれ量が大きいほど、上記拡張部bの幅寸法を大きく設定し、これによって上記表示部11に表示される障害物Bの画像を、運転者Aから見える実像(図6参照)に近づける画像修正か行われるように構成されている。
【0029】
また、図7に示すように、上記表示画像生成手段10は、視点位置検出手段8により検出された運転者Aの視点位置(アイポイント)が、車幅方向の何れかの方向に移動したか否かを判定するとともに、運転者Aが上記表示部11の近傍を一定時間以上に亘って注視した状態にあるか否を判定し、その判定結果に応じて上記表示部11に表示される表示画像の表示率を所定値に設定することにより、該表示部11に表示される表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を調節する機能、つまり上記表示画像を縮小また拡大するようにその表示率を変化させる機能を有している。
【0030】
具体的には、上記視点位置検出手段8の出力信号に応じ、右側のフロントピラー3側を向いている運転者Aの視点位置(アイポイント)が、フロントピラー3を挟んでその左右に移動しておらず、かつ運転者Aが上記表示部11を一定時間以上に亘って注視した状態にもない通常の視認状態にあることが、上記表示画像生成手段10において確認された場合には、上記表示部11に表示される表示画像の表示率が、予め定められた基準値、例えば90%程度に設定されるようになっている。これにより、上記表示部11の設置部により覆われた死角領域の実像が0.9倍程度に縮小された死角領域の画像と、その周辺領域とを含む領域の画像とが上記表示部11に表示されることになる。
【0031】
また、上記視点位置検出手段8の検出信号に応じ、運転者Aの視点位置が車幅方向中央部側(フロントウインド2側)から車幅方向外方側(フロントピラー3の右側に位置するサイドウインド12側)へと移動したことが、上記表示画像生成手段10において確認された場合には、上記表示部11に表示される表示画像の表示率が、上記基準値以下の値、例えば85%に設定される。逆に、運転者Aの視点位置が車幅方向外方側(サイドウインド12側)から車幅方向中央部(フロントウインド2側)へと移動したことが、上記表示画像生成手段10において確認された場合には、上記表示部11に表示される表示画像の表示率が、上記基準値以上の値、例えば95%に設定されるようになっている。
【0032】
さらに、上記視点位置検出手段8の検出信号に応じ、運転者Aの視点が上記表示部11の近傍に一定時間以上に亘り留まっていること、つまり該表示部11を運転者Aが注視した状態にあることが、上記表示画像生成手段10において確認された場合には、上記表示部11に表示される表示画像の表示率が、上記基準値以上の値、例えば100%に設定されるようになっている。これにより、上記表示部11の設置部により覆われた死角領域の実像と同一尺度の画像、つまり該表示部11に表示される周辺領域が0に低減され、運転者Aにとって死角となる領域の画像のみが上記表示部11に表示されることになる。
【0033】
次に、上記表示画像生成手段10において生成された画像を運転席4側(右側)に位置するフロントピラー3の表示部11に表示させる画像の表示制御動作を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。当該制御動作がスタートすると、まず上記撮像手段7により撮影された車外情景のデータおよび上記視点位置検出手段8により検出された運転者Aの視点位置データ等を入力した後(ステップS1)、該視点位置の入力データに基づいて運転者Aの視点が上記表示部11の近傍を向いているか否か、つまり運転者Aが右側のフロントピラー3の近傍を視認しているか否かを判断する(ステップS2)。該ステップS2でNOと判定され、運転者Aの視点が表示部11の近傍を向いていないことが確認された場合には、運転者Aが上記表示部11を一定時間以上に亘って注視した状態にあるか否かを判定するためのカウンターのカウント値Cを0にリセットした後(ステップS3)、表示部11に画像を表示させることなく、リターンする。
【0034】
上記ステップS2でYESと判定され、運転者Aの視点が表示部11の近傍を向いていることが確認された場合には、上記カウンターのカウント値Cを1だけインクリメントして(C+1)とした後(ステップS4)、上記撮像手段7により撮影された車外情景のデータと、上記視点位置検出手段8により検出された運転者Aの視点位置の情報とに基づき、上記フロントピラー3により運転者Aの視線が遮られることにより形成される死角領域の画像データと、該死角領域の周辺領域に位置する画像データを所定範囲に亘って特定するとともに、必要に応じて上記死角領域に対応した実像と上記撮像手段7により撮影された画像とのずれを修正することにより、表示部11に表示される画像データを生成する(ステップS5)。
【0035】
次いで、上記視点位置検出手段8により検出された運転者Aの視点位置が車幅方向の何れかの方向へ一定距離以上に亘って移動したか否かを判定し(ステップS6)、NOと判定された場合には、上記カウンターのカウント値Cが予め設定された基準値Crを超えたか否かを判別することにより、運転者Aが上記表示部11を一定時間以上に亘って注視した状態にあるか否かを判定する(ステップS7)。該ステップS7でNOと判定されて運転者Aが車外を視認する動作が、通常の状態、つまり運転者Aの視点が左右の何れか一方へ大きく移動した状態にはなく、かつ上記表示部11を一定時間以上に亘って注視した状態にもないことが確認された場合には、上記表示部11に表示される表示画像の表示率Hを上記基準値(90%)に設定した後(ステップS8)、当該倍率に対応した画像を上記表示部11において表示させる(ステップS9)。
【0036】
上記ステップS6でYESと判定され、運転者Aの視点位置が車幅方向の何れかの方向へ一定距離以上、移動したことが確認された場合には、上記タイマーのカウント値Cを0にリセットした後(ステップS10)、上記視点位置が車幅方向中央部から車幅方向外方側、つまり移動方向が右側であるか否かを判定する(ステップS11)。そして、該ステップS11でYESと判定され、上記視点位置がフロントウインド2側からフロントピラー3の右側(サイドウインド12側)へと移動したことが確認された場合には、上記表示部11に表示される表示画像の表示率Hを上記基準値よりも小さい値、例えば85%に設定した後(ステップS12)、上記ステップS9に移行して当該倍率(85%)に対応した表示画像を上記表示部11において表示させる。
【0037】
これに対して上記ステップS11でNOと判定され、上記視点位置がフロントピラー3の右側からフロントウインド2側(左側)へと移動したことが確認された場合には、上記表示部11に表示される表示画像の表示率Hを上記基準値よりも大きい値、例えば95%に設定した後(ステップS13)、上記ステップS9に移行して当該倍率(95%)に対応した画像を上記表示部11において表示させる。
【0038】
一方、上記ステップS7でカウンターのカウント値Cが基準値Cr以上であると判定され、運転者Aが上記表示部11を一定時間以上に亘り注視した状態にあることが確認された場合には、上記表示部11に表示される表示画像の表示率Hを100%に設定して表示部11に表示される周辺領域を0に低減した後(ステップS14)、上記ステップS9に移行して当該倍率(100%)に対応した画像を上記表示部11において表示させる制御を実行する。
【0039】
上記のように車外の情景を撮影する撮像手段7と、撮影された車外情景のデータおよび車両の形状データに基づいて運転者Aの死角となる領域の画像を表示画像として生成する表示画像生成手段10とを備えるとともに、該表示画像生成手段10により生成された表示画像を表示する表示部11が車室内に設けられた車両用視認支援装置において、上記表示画像生成手段10により、運転者Aの死角となる領域とその周辺領域とを含む領域の画像を表示画像として生成するとともに、該周辺領域を含んだ表示画像を上記表示部11に表示させるように構成したため、簡単な構成で運転者Aに車外情報を容易かつ適正に視認させることができるという利点がある。
【0040】
すなわち、上記表示部11の近傍に視点を向けた運転者Aは、図9に示すように、該表示部11に表示された上記死角領域の周縁に位置する周縁領域の画像Gと、上記表示部11が設置されたフロントピラー3の側方部に位置するフロントウインド2およびサイドウインド12からなる可視領域を介して透視される上記周縁領域の実像Jとを入れ子状に重ねた状態で同時に視認することができる。したがって、上記運転者Aの視点位置と撮像手段7の設置位置とが異なることに起因して上記可視領域の実像Jと表示部11上の画像Gとが相違し、あるいは表示画像Gと実像Jとの間に色彩、陰影および動き等に微妙な相違が生じている場合等においても、運転者Aは上記表示画像Gと実像Jとを比較することにより、両者が同じものであると容易かつ正確に認識することができるため、上記表示部11に表示された画像Gに基づいて、上記フロントピラー3等により隠蔽された領域に位置する障害物等を適正に把握することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、車幅方向における運転者Aの視点位置を検出する視点位置検出手段8を設け、該視点位置検出手段8により検出された運転者Aの視点位置に応じてフロントピラー3により形成される死角領域の実像を求めるとともに、この実像と、上記撮像手段7により撮影された画像とのずれを修正した表示画像を上記表示画像生成手段10により生成するように構成したため、上記表示部11に表示される表示画像を、上記可視領域を介して運転者Aに透視される実像に極力近づけることができる(図5および図6参照)。したがって、上記のように入れ子状に重ねた状態で表示される表示部11の表示画像Gと、上記フロントウインド2およびサイドウインド12からなる可視領域を介して透視される上記周縁領域の実像Jとが同一であることを運転者Aに対して容易に認識させることできるとともに、これによって上記表示画像Gに基づき、上記フロントピラー3等により隠蔽された領域に位置する障害物等を、より適正に視認させることができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、運転席4側(右側)に位置するフロントピラー3の表示部11に画像を表示させる場合の制御動作について説明したが、車幅方向に左側(助手席側)に位置するフロントピラー3の表示部11にも、同様に運転者Aの死角となる領域とその周辺領域とを含む領域の画像を表示画像として生成するとともに、該周辺領域を含んだ表示画像を上記表示部11に表示させることにより、簡単な構成で運転者に車外情報を容易かつ適正に視認させることができる。
【0043】
そして、上記実施形態に示すように、上記撮像手段7を車室前部上辺の車幅方向中央部近傍に設置するように構成した場合には、単一の撮像手段7によって左右のフロントピラー3によりそれぞれ形成される死角領域の画像データを取得することができる。したがって、車室前部の左右に撮像手段を設けた場合に比べ、簡単な構成で上記左右両側に位置する両フロントピラー3の設置部にそれぞれ設けられた表示部11に上記死角領域とその周辺領域とを含む領域の画像を個別に表示させることができるという利点がある。
【0044】
なお、上記フロントピラー3の車内側面を覆うように設置された上記フロントピラートリム9の内側壁部9aと後壁部9bとの接続部を車室内の中心部に向けて膨出させるように構成した上記実施形態に代えて、図10に示すように、フロントピラー30の車内側面を覆うフロントピラートリム90を運転者に対向させるように傾斜させた状態で設置した構造とすることも考えられる。この場合には、平面視で上記フロントピラートリム90の車内側面に沿わせるように表示部70を偏平状態で設置することができるため、この表示部70に歪みのない画像を表示させることが可能である。しかし、図10に示すように、上記膨出部を省略した場合には、フロントピラー30の幅寸法Wを大きくしなければ、その断面係数を充分に確保することができず、車体強度が低下し、かつ上記フロントピラー30により形成される死角領域が増大する等の問題がある。
【0045】
これに対して、上記実施形態では、図3に示すように、フロントピラートリム9の内側壁部9aと後壁部9bとの接続部を車室内の中心部に向けて膨出させるとともに、その内方側に配設されるフロントピラー3も同様にその内側壁部と後壁部との接続部を車室内の中心部に向けて膨出させることにより、上記フロントピラー3が大型化するのを防止しつつ、その断面係数を充分に確保して車体強度を向上できるという利点がある。
【0046】
上記のように車室内の中心部に向けて膨出したフロントピラートリム9の内側壁部9aおよび後壁部9bに跨るように上記表示部11を設けた構造とした場合には、該表示部11が車室内の中心部に向けて膨出した形状となって該表示部11に表示される画像に歪みが生じるため、該画像と、その周囲の可視領域を介して透視された実像とを正確に相対応させることが困難である。しかし、このような場合であっても、上記のように運転者Aの死角となる領域とその周辺領域を含んだ表示画像を上記表示部11に表示させることにより、上記表示画像と実像とを比較して両者が同じものであると認識できるように構成すれば、上記表示部11に表示された死角画像に基づいて、上記フロントピラー3等により隠蔽された領域に位置する障害物等を適正に把握できるという利点がある。
【0047】
また、上記実施形態では、視点位置検出手段8の出力信号に応じて運転者Aの視点位置が車幅方向外方側に移動したことが確認された場合に、上記表示部11に表示される画像の表示率を基準倍率(90%)よりも小さな値(例えば85%)に設定することにより、上記表示部11の表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて増大するように構成したため、運転者Aに車外情報を、より容易かつ適正に視認させることができるという利点がある。すなわち、上記運転者Aの視点位置が車幅方向外方側に移動した場合、フロントウインド2に比べて車外情報の取得が困難なサイドウインド12を介して車体の側方位置する障害物等の情報を得ようとしている状態にあると考えられる。このため、上記表示部11に表示される死角領域の周辺領域を通常時に比べて増大させることにより、該表示部11を介して広範囲の車外情報が得られるように構成すれば、車体の側方位置する障害物等の情報を、運転者Aに対して適正に視認させることができる。
【0048】
逆に、上記視点位置検出手段8の出力信号に応じて運転者Aの視点位置が車幅方向内方側に移動したことが確認された場合には、上記表示部11に表示される画像の表示率を基準倍率よりも大きな値(例えば95%)に設定して、上記表示部11の表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて低減するように構成すれば、該表示部11に表示される画像を、フロントウインド2から介して視認される車外の実像に近づけることにより、該実像と上記画像情報との両方に基づいて車外情報を、さらに適正に視認できるという利点がある。
【0049】
また、上記実施形態に示すように、視点位置検出手段8の出力信号に応じて運転者Aの視点位置が表示部11の近傍に一定時間以上に亘り停止した状態にあることが確認された場合には、上記表示部11に表示される画像の表示率を基準倍率よりも。さらに大きな値(例えば100%)に設定して、表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて低減(例えば0)するように構成した場合には、表示部11に表示される画像を通常時の表示率(例えば90%)よりも拡大することができるため、該画像を介して情報を得ようとしている運転者Aに、より正確な車外情報を認識させることができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、フロントピラー3の上方部にCCDカメラ等からなる視点位置検出手段8を設置しているが、これに限らず当該視点位置検出手段8を、例えばインストルメントパネル1に設置し、あるいは上記ミラー取付部6の車内側面に取り付けた構造としてもよい。また、車両の左右に位置するフロントピラー3の車内側面を覆うように設置された左右のフロントピラートリム9にそれぞれ表示部11を設置してなる上記実施形態に代え、左右フロントピラートリム9の何れか一方にのみ上記表示部11を設置してもよく、さらに運転者Aに対して外部情報の死角を形成する車室内の遮蔽部材、例えばインストルメントパネル1に上記表示部11を設置した構造としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
3 フロントピラー
7 撮像手段
8 視点位置検出手段
9 フロントピラートリム
9a 内側壁部
9b 後壁部
10 表示画像生成手段
11 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外の情景を撮影する撮像手段と、撮影された車外情景のデータおよび車両の形状データに基づいて運転者の死角となる領域の画像を表示画像として生成する表示画像生成手段とを備えるとともに、該表示画像生成手段により生成された表示画像を表示する表示部が車室内に設けられた車両用視認支援装置であって、上記表示画像生成手段は、運転者の死角となる領域とその周辺領域とを含む領域の画像を表示画像として生成するとともに、該周辺領域を含んだ表示画像を上記表示部に表示させるように構成されたことを特徴とする車両用視認支援装置。
【請求項2】
車幅方向における運転者の視点位置を検出する視点位置検出手段を有し、該視点位置検出手段により検出された運転者の視点位置に応じて上記死角領域の実像が求められるとともに、この実像と、上記撮像手段により撮影された画像とのずれを修正した表示画像が上記表示画像生成手段により生成されるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用視認支援装置。
【請求項3】
上記撮像手段は、車室前部上辺の車幅方向中央部近傍に設置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用視認支援装置。
【請求項4】
フロントピラーの車室内側面を覆うようにフロントピラートリムが設置され、該フロントピラートリムの内側壁部と後壁部との接続部が車室内の中心部に向けて膨出するように形成されるとともに、該内側壁部および後壁部に跨るように上記表示部が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用視認支援装置。
【請求項5】
上記視点位置検出手段の出力信号に応じて運転者の視点位置が車幅方向外方側に移動したことが確認された場合には、上記表示部の表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて増大させた表示画像が形成されるように構成されたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両用視認支援装置。
【請求項6】
上記視点位置検出手段の出力信号に応じて運転者の視点位置が表示部近傍を向いた状態で一定時間以上、停止していることが確認された場合には、上記表示部の表示画像に含まれる死角領域の周辺領域を通常時に比べて低減した表示画像が形成されるように構成されたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の車両用視認支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−234095(P2011−234095A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102202(P2010−102202)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】