説明

車両用調光ガラス及び車両用ドア構造

【課題】シール性を確保すると共に、見栄えを良くする車両用調光ガラス及び車両用ドア構造を得る。
【解決手段】調光部材56の少なくとも上端部に薄肉部54を設けることで、薄肉部54と光透過ガラス50との間に隙間tを設け、当該隙間t内にシール剤52を充填させるようにしている。つまり、調光部材56の少なくとも上端部では、調光部材56の薄肉部54とシール剤52とが重なった状態となっている。これにより、光透過ガラス48、50同士のシール性を確保すると共に、調光部材56の調光領域を実線Rで示す位置まで移動させることができる。したがって、乗員及び外部から見て、調光ガラス28の端部側まで調光可能となり、その分透明部分の面積を狭くすることができ、見栄えを良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過率を変える車両用調光ガラス及びこれを用いた車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドドアの昇降ガラスとして調光ガラスが用いられるが、一般に調光ガラスは、調光部材が2枚の光透過ガラスの間に挟まれ、2枚の光透過ガラスの周囲がシール剤にてシールされた構造となっている。2枚の光透過ガラス間のシール性を確保するためには、ある程度のシール幅が必要であり、調光領域が狭くなる。
【0003】
遮光状態において、調光部材は光の透過率が低くなり透明から黒色系に変色するが、シール剤が充填されている領域では、透明のままである。このため、調光部材とシール剤とでその境界位置が目視でき、調光ガラスを昇降させる際に、幅広いシール剤の領域(透明部分)が上下に移動して、見栄えが良くない。一方、光透過ガラス同士をシールするシール剤は所定の量を必要とするため、調光部材の面積を広くすると、その分シール剤の量が減少することとなり、シール性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−344878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、シール性を確保すると共に、見栄えを良くする車両用調光ガラス及び車両用ドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係る車両用調光ガラスは、対面する光透過ガラスと、前記光透過ガラス間に設けられ、電圧が印加されると光の透過率が変化し調光する調光部材と、前記調光部材の少なくとも上端部に設けられ、調光すると共に調光部材の他の部分よりも薄肉の薄肉部と、前記調光部材の外側に設けられ、前記光透過ガラス同士をシールするシール剤と、を有している。
【0007】
請求項1に係る車両用調光ガラスでは、対面する光透過ガラス間には、電圧が印加されると光の透過率が変化し調光する調光部材が設けられており、この調光部材の外側には、光透過ガラス同士をシールするシール剤が設けられている。ここで、調光部材の少なくとも上端部には、調光すると共に調光部材の他の部分よりも薄肉の薄肉部が設けられている。
【0008】
調光部材の外縁側に薄肉部を設けることで、例えば、薄肉部と光透過ガラスとの間に隙間を設けることができる。この隙間内にシール剤を充填させることで、光透過ガラス同士のシール性を確保するに十分なシール剤を充填させることができる。このため、調光部材の面積を広くすることができる。薄肉部は調光可能であるため、その分、乗員及び外部から見て調光ガラスの端部側まで調光可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用調光ガラスは、請求項1に記載の車両用調光ガラスにおいて、前記薄肉部が、一定の肉厚であって、当該薄肉部と前記光透過ガラスとの隙間に前記シール剤が設けられている。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る車両用調光ガラスでは、薄肉部が形成された部分にもシール剤が充填されるため、高いシール性を得ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用調光ガラスは、請求項2に記載の車両用調光ガラスにおいて、前記薄肉部が、前記調光部材の外縁側へ行くにしたがって徐々に薄肉となる徐変部である。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る車両用調光ガラスでは、調光部材の外縁側へ行くにしたがって徐々に薄肉となる徐変部を設けることで、徐変部において、光の透過率を徐々に変えることができる。このため、徐変部ではグラデーションが掛かったような状態となり、デザイン性が増す。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る車両用調光ガラスは、請求項2に記載の車両用調光ガラスにおいて、前記薄肉部が前記シール剤よりも車外側に設けられている。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る車両用調光ガラスでは、薄肉部をシール剤よりも車外側に設けることで、シール剤は車内側に充填されることとなる。このため、車内側では、薄肉部とシール剤との境界位置が目視可能となるが、ガラスランのアウタリップ部の長さとインナリップ部の長さを比較した場合、一般的に、インナリップ部の方がアウタリップ部よりも長い場合が多い。
【0015】
したがって、薄肉部を車外側に設けて、シール剤を車内側に充填するようにすることで、調光ガラスが全閉された状態で、インナリップ部で隠れる位置に薄肉部とシール剤との境界位置を定めれば良く、シール剤を車外側に充填させた場合と比較して、その分、薄肉部の長さを長くすることができ、調光部材の面積を広くすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る車両用調光ガラスは、請求項3に記載の車両用調光ガラスにおいて、前記徐変部の肉厚に合わせて前記光透過ガラスの外縁側が徐々に厚肉となっている。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る車両用調光ガラスでは、徐変部の肉厚に合わせて光透過ガラスの外縁側を徐々に厚肉とすることで、光透過ガラス同士の隙間を小さくすることができる。これにより、光透過ガラス同士のシール性を確保するのに必要なシール剤の量を少なくすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る車両用ドア構造は、請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用調光ガラスに弾性的に圧接され、当該車両用調光ガラスとの間をシールするガラスランが設けられ、前記車両用調光ガラスが全閉された状態で、前記シール剤が前記ガラスランで隠れるようにしている。
【0019】
請求項6に記載の発明に係る車両用ドア構造では、調光ガラスが全閉された状態で、乗員からはシール剤は見えない。
【0020】
請求項7に記載の発明に係る車両用ドア構造は、請求項6に記載の車両用ドア構造において、前記ガラスランが、車幅方向に延在する基部と、前記基部の一端部から延出し、全閉された前記車両用調光ガラスの車外側に配置されたアウタリップ部と、前記基部の他端部から延出し、全閉された前記車両用調光ガラスの車内側に配置され、前記アウタリップ部よりも長く延出したインナリップ部と、を含んで構成され、前記車両用調光ガラスが全閉された状態で、前記シール剤が前記インナリップ部で隠れるようにしている。
【0021】
請求項7に記載の発明に係る車両用ドア構造では、ガラスランが、車幅方向に延在する基部を備え、基部の車幅方向外側からはアウタリップ部が延出し、基部の車幅方向内側からはインナリップ部が延出している。アウタリップ部は全閉された車両用調光ガラスの車外側に配置されており、インナリップ部は全閉された車両用調光ガラスの車内側に配置されている。そして、車両用調光ガラスが全閉された状態で、シール剤がインナリップ部で隠れるようにすることで、車両用調光ガラスが全閉された状態で、乗員からはシール剤が見えないようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記構成としたので、請求項1に記載の車両用調光ガラスによれば、ガラス同士のシール性を確保すると共に、調光部材の面積を広くすることでその分透明部分の面積が狭くなり見栄えを良くすることができる。
【0023】
請求項2に記載の車両用調光ガラスによれば、薄肉部を一定の肉厚で形成するため、生産性が高い。
【0024】
請求項3に記載の車両用調光ガラスによれば、薄肉部の肉厚を徐変させることで、調光部材の外側に一定の肉厚を有する薄肉部を設けた場合と比較して、調光部材の他の部分と徐変部との境界が分かり難くなり、さらに見栄えが良くなる。
【0025】
請求項4に記載の車両用調光ガラスによれば、調光部材の面積を広くすることで透明部分の面積が狭くなり、さらに見栄えを良くすることができる。
【0026】
請求項5に記載の車両用調光ガラスによれば、シール剤と徐変部との境界位置を調光ガラスの外縁側へさらに移動させることができ、透明部分の面積が狭くなり、さらに見栄えを良くすることができる。
【0027】
請求項6に記載の車両用ドア構造によれば、調光ガラスが全閉された状態で、シール剤が乗員から見えないため、見栄えが良い。
【0028】
請求項7に記載の車両用ドア構造によれば、調光ガラスが全閉された状態で、シール剤が乗員から見えないため、乗員にとっても見栄えが良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係るドア構造が適用された車両左側のリアドアの側面図であり、調光ガラスを全閉させた状態である。
【図2】本実施形態に係るドア構造が適用された車両左側のリアドアの側面図であり、調光ガラスを僅かに開放させた状態である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図3の要部拡大断面図であり、本実施形態に係る調光ガラスを示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る調光ガラスの変形例を示す断面図である。
【図6】(A)、(B)は、本実施形態に係る調光ガラスの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本実施の形態の一例を図面に基づき説明する。
【0031】
図1及び図2は、本実施形態に係るドア構造が適用された車両左側のリアドア12の側面図であり、図1は調光ガラス28を全閉させた状態、図2は調光ガラス28を僅かに開放させた状態である。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向内側を矢印IN、車両上方を矢印UPで示している。
【0032】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る車両左側のリアドア12は、アウタパネル14及びインナパネル(図示省略)を備えており、アウタパネル14は車幅方向外側に配置され、インナパネルは車幅方向内側に配置されている。なお、ここでは、車両左側のリアドア12が図示されているが、フロントドアについても同様である。また、車両右側のフロントドア、リアドアについてもこれと同様である。さらに、これ以外のドアについても適用可能である。以下、車両左側のリアドア12(以下、「ドア本体12」という)を例に挙げて説明する。
【0033】
(ドア本体の構成)
【0034】
図1及び図2に示されるように、ドア本体12の上側部位における外周部は、下方が開放された枠状のドアフレーム18で構成されている。ドア本体12の車両後方側には、車両上下方向に沿ってディビジョンバー20が延設されており、ドアフレーム18とベルトラインLとで形成される空間を区画している。また、ドア本体12の車両後方側には、ディビジョンバー20とドアフレーム18とで略三角形状の小窓22が形成されており、嵌込み式のクォータガラス24によってこの小窓22は閉止されている。
【0035】
また、ドア本体12の車両前方側には、ドアフレーム18、ベルトラインL及びディビジョンバー20によって形成されたウインド開口部26が設けられており、後述する調光ガラス28が配置可能とされる。調光ガラス28の下方には、ドア本体12内部にウインドレギュレータ(図示省略)が設けられており、当該ウインドレギュレータによって、調光ガラス28が昇降可能となり、ウインド開口部26(図1参照)が開放され、又は閉止される。
【0036】
ここで、図3に示すように(なお、後述するボディ本体16及びウェザーストリップ40については本来仮想線で示されるが、説明の都合上、実線で示している)、ドアフレーム18のウインド開口部26側には、ドアフレーム18の延設方向に沿って溝部30が形成されており、溝部30の側壁30A、30Bは、車内側(側壁30A)の方が車外側(側壁30B)よりも長く形成されている。この溝部30内にガラスラン32が嵌め込まれる。
【0037】
ガラスラン32は、調光ガラス28との間をシールする部材であり、車幅方向に沿った横断面が略U字状を成している。このガラスラン32には、車幅方向に沿って基部34が設けられており、ドアフレーム18の溝部30の底壁30Cと対面可能となる。基部34の車幅方向外側には、アウタリップ支持部36が設けられており、溝部30の側壁30Bと対面可能とされている。また、基部34の車幅方向内側には、インナリップ支持部38が設けられており、溝部30の側壁30Aと対面可能とされている。
【0038】
アウタリップ支持部36の先端部からは、ガラスラン32の内側へ向かってアウタリップ部36Aが延出しており、アウタリップ支持部36へ向かって弾性変形可能とされている。また、アウタリップ支持部36の先端部からは、ガラスラン32の外側へ向かって張出し、ドアフレーム18の溝部30の側壁30Bの外縁部に掛止される掛止片36Bが設けられている。
【0039】
一方、インナリップ支持部38の先端部からは、ガラスラン32の内側へ向かってインナリップ部38Aが延出しており、インナリップ支持部38へ向かって弾性変形可能とされている。また、インナリップ支持部38の先端部からは、ガラスラン32の外側へ向かって張出し、ドアフレーム18の溝部30の側壁30Aの外縁部に掛止される掛止片38Bと、が設けられている。
【0040】
ドアフレーム18の溝部30内にガラスラン32を嵌め込み、掛止片38Bがドアフレーム18の側壁30Aの外縁部に掛止されると共に、掛止片36Bがドアフレーム18の側壁30Aの外縁部に掛止されることで、ガラスラン32はドアフレーム18に装着された状態となる。
【0041】
この状態で、アウタリップ部36Aとインナリップ部38Aの間には調光ガラス28が配置可能とされるが、アウタリップ部36Aとインナリップ部38Aの間に調光ガラス28が配置された状態で、アウタリップ部36Aは調光ガラス28によってドアフレーム18の側壁30B側へ押圧され、インナリップ部38Aは調光ガラス28によってドアフレーム18の側壁30A側へ押圧される。そして、アウタリップ部36A及びインナリップ部38Aは、調光ガラス28に圧接された状態で、調光ガラス28との間をシールし、車内のシール性能を向上させている。
【0042】
また、ここでは、ドアフレーム18と同様に、インナリップ支持部38の方がアウタリップ支持部36よりも長く延出している。つまり、インナリップ支持部38の方が車内側へ張出している。
【0043】
一方、ドアフレーム18とボディ本体16との間には隙間が設けられており、当該隙間内には、ガラスラン32と略平行に配置された異形状のウェザーストリップ40が設けられている。このウェザーストリップ40には、車幅方向に沿った横断面で中空部42や切欠き部44が形成されており、弾性変形可能とされている。
【0044】
また、ウェザーストリップ40の外面からは複数の突起部46が設けられており、ドアフレーム18又はボディ本体16に圧接されている。そして、これらにより、ウェザーストリップ40は、ドア本体12とボディー本体16との間をシールして、当該隙間を通じて風や雨などが車内へ侵入しないようにしている。
【0045】
(調光ガラスの構成及び作用・効果)
【0046】
ここで、調光ガラス28について説明する。
【0047】
図4(図4は図3の要部拡大図である)に示されるように、調光ガラス28は、光透過ガラス48と光透過ガラス50を合わせた、いわゆる合わせガラスを用いている。光透過ガラス48と光透過ガラス50の間には、シート状の調光部材(例えば、液晶等の調光物質が用いられている)56が設けられており、調光物質へ印加する電圧を変化させることで、光の透過率を変化させる。
【0048】
調光部材56は光透過ガラス48、50よりも外形が小さく形成されており、調光部材56の外側(高さH)には、透明のシール剤52が充填され、光透過ガラス48、50同士が接着されシールされる。
【0049】
ここで、調光部材56の少なくとも上端部には、一定の肉厚で形成され調光可能な薄肉部54が設けられており、調光部材56の他の領域よりも肉厚が薄くなっている。この薄肉部54は調光部材56の車内側の部分を切り落とした状態で形成されており、薄肉部54と光透過ガラス50との間には隙間tが設けられ、当該隙間t内にはシール剤52が充填されている。
【0050】
調光部材56の少なくとも上端部に薄肉部54を設けることで、薄肉部54と光透過ガラス50との間に隙間tを設けることができるが、当該隙間t内にシール剤52を充填させることで、調光部材56の少なくとも上端部では、調光部材56の薄肉部54とシール剤52とが重なった状態となっている。つまり、光透過ガラス48、50同士のシール性を確保するに十分なシール剤52を充填させることができる。
【0051】
例えば、従来では、光透過ガラス48、50同士のシール性を確保するため、調光部材56の上端部の位置は仮想線Pで示す位置となり、仮想線Pの上方がシール剤52の充填領域ということとなって、仮想線Pから上端部が透明部分となる。しかし、調光部材56の外縁部に薄肉部54を設け、薄肉部54と光透過ガラス50と隙間tにシール剤52を充填することによって、シール剤52の充填領域は仮想線Pより下方に位置する仮想線Qから上方ということになるものの、調光部材56の上端部の位置は実線Rで示す位置となり、調光部材56の面積を広くすることができる。薄肉部54では調光が可能であるため、調光領域は広がることとなる。
【0052】
つまり、これによると、光透過ガラス48、50同士のシール性を確保すると共に、調光部材56の調光領域を実線Rで示す位置まで移動させることができる。したがって、乗員及び外部から見て、調光ガラス28の端部側まで調光可能となり、その分透明部分の面積を狭くすることができ、見栄えを良くすることができる。
【0053】
ここで、シール剤52の境界位置Qは、できるだけ調光部材56の外縁側に配置された方が良いが、薄肉部54の肉厚、シール剤52の充填量等によってもその位置が異なってくる。ここでは、薄肉部54を車外側に設けており、車内側はシール剤52の充填領域となるようにしている。
【0054】
車内側では、シール剤52の境界位置Qが目視可能となるが、ガラスラン32のアウタリップ部36Aの長さとインナリップ部38Aの長さを比較した場合、一般的に、インナリップ部38Aの方がアウタリップ部36Aよりも長い場合が多い。したがって、シール剤52を車内側に充填することで、調光ガラス28が全閉された状態で、インナリップ部38Aで隠れる位置に当該境界位置Qを定めれば良く、シール剤52を車外側に充填させた場合と比較して、その分、薄肉部54の長さを長くすることができ、調光部材56の面積を広くすることができる。
【0055】
これにより、調光ガラス28が全閉された状態で、シール剤52の境界位置Qが乗員から見えないようにすることができ、見栄えを良くすることができる。なお、ここでは、調光部材56の少なくとも上端部に薄肉部54を設けたが、調光部材56の全周に薄肉部54を設けても良い。
【0056】
(その他の実施形態)
【0057】
図4に示されるように、上記の実施形態では、調光部材56の少なくとも上端部に、一定の肉厚で形成された薄肉部54を設けている。当該薄肉部54を一定の肉厚で形成することで、生産性の向上を図ることができるが、他の観点から以下の実施形態が挙げられる。
【0058】
例えば、図5に示されるように、薄肉部(徐変部)58において、調光部材60の上端部へ行くにしたがって徐々に薄肉となるように、調光部材60の両面に傾斜面58A、58Bを設けるようにしても良い。この場合、光の透過率を徐々に変えることができるため、この薄肉部58ではグラデーションが掛かったような状態となる。このため、薄肉部54と比較して、調光部材56の他の部分と薄肉部58との境界が分かり難くなり、さらに見栄えが良くなると共に、デザイン性が増す。
【0059】
一方、光透過ガラス48、50の外縁側では、薄肉部58の形状に合わせて、徐々に厚肉となっている。これにより、光透過ガラス48と光透過ガラス50の離間距離を小さくして、シール剤52の充填量を少なくすることができる。そして、これによると、シール剤52と薄肉部58との境界位置Sを調光ガラス28の外縁側へさらに移動させることも可能となり、さらに見栄えを良くすることができる。
【0060】
なお、ここでは、光透過ガラス48、50の外縁側において、薄肉部58の形状に合わせて、徐々に厚肉となるようにしたが、生産性の理由などにより、光透過ガラス48、50の外縁部における形状変化が困難な場合は、例えば、図6(A)に示されるように、薄肉部58と光透過ガラス48、50との間に生じる隙間内にシール剤52を充填するようにしても良いし、図6(B)に示されるように、薄肉部62を形成するための傾斜面62Aを車内側のみに形成して、光透過ガラス50側のみにシール剤52を充填するようにしても良い。
【0061】
以上、本実施形態は、あくまでも一実施例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
12 ドア本体(車両用ドア構造)
28 調光ガラス
32 ガラスラン
34 基部
36A アウタリップ部
38A インナリップ部
48 光透過ガラス
50 光透過ガラス
52 シール剤
54 薄肉部
56 調光部材
58 薄肉部(徐変部)
60 調光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する光透過ガラスと、
前記光透過ガラス間に設けられ、電圧が印加されると光の透過率が変化し調光する調光部材と、
前記調光部材の少なくとも上端部に設けられ、調光すると共に調光部材の他の部分よりも薄肉の薄肉部と、
前記調光部材の外側に設けられ、前記光透過ガラス同士をシールするシール剤と、
を有する車両用調光ガラス。
【請求項2】
前記薄肉部が、一定の肉厚であって、当該薄肉部と前記光透過ガラスとの隙間に前記シール剤が設けられている請求項1に記載の車両用調光ガラス。
【請求項3】
前記薄肉部が、前記調光部材の外縁側へ行くにしたがって徐々に薄肉となる徐変部である請求項1に記載の車両用調光ガラス。
【請求項4】
前記薄肉部が前記シール剤よりも車外側に設けられた請求項2に記載の車両用調光ガラス。
【請求項5】
前記徐変部の肉厚に合わせて前記光透過ガラスの外縁側が徐々に厚肉となっている請求項3に記載の車両用調光ガラス。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用調光ガラスに弾性的に圧接され、当該車両用調光ガラスとの間をシールするガラスランが設けられ、
前記車両用調光ガラスが全閉された状態で、前記シール剤が前記ガラスランで隠れる車両用ドア構造。
【請求項7】
前記ガラスランが、
車幅方向に延在する基部と、
前記基部の一端部から延出し、全閉された前記車両用調光ガラスの車外側に配置されたアウタリップ部と、
前記基部の他端部から延出し、全閉された前記車両用調光ガラスの車内側に配置され、前記アウタリップ部よりも長く延出したインナリップ部と、
を含んで構成され、
前記車両用調光ガラスが全閉された状態で、前記シール剤が前記インナリップ部で隠れる請求項6に記載の車両用ドア構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−136594(P2011−136594A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295997(P2009−295997)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】