車両用警報装置
【課題】車両と人間との接触を確実に回避することが可能な車両用警報装置を提供する。
【解決手段】車両用警報装置10は、スピーカ12と受信部13と物体検知部15と出力制御部16とを備える。スピーカ12は、車両1の外部へ超音波と可聴音波とを出力可能である。受信部13は、スピーカ12が出力した超音波の反射波を受信する。物体検知部15は、受信部13が受信した反射波に基づいて車両の周囲の所定範囲の物体を検知する。出力制御部16は、物体検知部15が物体を検知したときに、スピーカ12から可聴音波を出力させる。
【解決手段】車両用警報装置10は、スピーカ12と受信部13と物体検知部15と出力制御部16とを備える。スピーカ12は、車両1の外部へ超音波と可聴音波とを出力可能である。受信部13は、スピーカ12が出力した超音波の反射波を受信する。物体検知部15は、受信部13が受信した反射波に基づいて車両の周囲の所定範囲の物体を検知する。出力制御部16は、物体検知部15が物体を検知したときに、スピーカ12から可聴音波を出力させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周囲の歩行者などに対して、警報音を報知する車両用警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007−57527号公報には、車両用障害物検知システムが記載されている。車両用障害物検知システムは、車両の外方に向けて超音波信号を送信する送信手段と、車両から離間した位置に存在する物体の表面で反射した超音波信号を異なる位置で夫々受信する複数の受信手段とを備え、送信手段により送信されてから各受信手段によって超音波信号が受信された夫々の時間に基づいて物体の位置を特定する。物体までの距離が一定の範囲内にあれば、その物体の存在を運転席におけるブザーや警告表示などにより運転者に知らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−57527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特開2007−57527号公報の車両用障害物検知システムでは、例えば、車両の外部の人間が一定の範囲内に存在する場合には、車両の運転者に物体の存在がブザーなどによって報知されても、その人間が車両に気付かずに車両にさらに近づいてしまうと、運転者が接触を回避しきれずに、車体と人間とが接触してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、車両と人間との接触を確実に回避することが可能な車両用警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の車両用警報装置は、音波出力手段と受信手段と物体検知手段と出力制御手段とを備える。音波出力手段は、車両の外部へ超音波と可聴音波とを出力可能である。受信手段は、音波出力手段が出力した超音波の反射波を受信する。物体検知手段は、受信手段が受信した反射波に基づいて車両の周囲の所定範囲の物体を検知する。出力制御手段は、物体検知手段が物体を検知したときに、音波出力手段から可聴音波を出力させる。
【0007】
音波出力手段は、例えば、可聴音波と超音波とを発振可能なスピーカであってもよく、超音波を発振可能な超音波発振装置を複数設け、変調した所定の超音波を超音波発振装置から発振させることによって可聴音波を出力するパラメトリック・スピーカであってもよい。
【0008】
上記構成では、車両の周囲の所定範囲に人間が存在すると、物体検知手段がこれを検知し、音波出力手段から車両の外部へ可聴音波を出力する。従って、車両の外部の人間は、かかる可聴音波を聞くことによって車両の存在を認識して、車両との接触を回避することができる。これにより、例えば、電気自動車など、低騒音で走行する車両であっても、所定範囲にまで車両に近づいている人間に車両の存在を確実に認識させることができる。
【0009】
また、物体を検知するために超音波を出力する手段と、可聴音波を出力して車両の外部の人間に車両との接触のおそれがあることを報知する手段とを音波出力手段によって共通化するため、装置の大型化を抑えることができる。また、コストの増大を抑えることができる。
【0010】
また、物体を検知するための超音波と報知のための可聴音波とを、音波出力手段によって出力するため、車両の同じ位置から同じ方向へ超音波と可聴音波とを出力することができる。従って、例えば、車両に対する物体の相対速度を無視できる状態であれば、物体を検知するための超音波を出力した音波出力手段と同じ音波出力手段によって可聴音波を出力することにより、簡単な構成によって確実に検知した物体に向けて可聴音波を出力することができる。
【0011】
また、所定範囲に物体が存在しないときは、可聴音波を出力しないため、車両の周囲への騒音を抑えることができる。ここで、例えば、車両が右左折する状態やバックする状態のときに、車両が移動すると車両と接触してしまうおそれのある位置に物体が存在するか否かにかかわらず、かかる状態であることを示す音声を報知する場合には、車両の周辺の住民などへの騒音被害が増大してしまう。この点に関して、上記車両用警報装置を備えることによって、車両が右左折する状態やバックする状態のときに、車両の周囲の所定範囲に物体が存在するときにのみ可聴音波を出力し、車両の周囲の所定範囲に物体が存在しないときには可聴音波を出力しないことによって、車両の周辺の住民などへの騒音被害を抑えることができる。
【0012】
また、受信手段は、離間した2点で反射波をそれぞれ受信してもよく、物体検知手段は、受信手段が2点で反射波をそれぞれ受信した時間に基づいて所定範囲の物体の位置を推定してもよい。
【0013】
上記構成では、例えば、一つの物体で超音波が反射したときに、その超音波の反射波を離間した2点で受信し、2点から一つの物体までのそれぞれの距離を検出することによって、物体が存在する位置を推定することができる。具体的には、例えば、受信手段が反射波を受信する点を、水平方向に離間した2点に設定した場合には、水平方向において物体が存在する位置を推定することができる。
【0014】
また、物体検知手段が物体の位置を推定するため、所定範囲を予め詳細に設定することができる。
【0015】
また、音波出力手段は、車両の外部の異なる2つの領域に対して選択的に可聴音波を出力可能であってもよく、出力制御手段は、物体検知手段が推定した物体の位置に応じて、音波出力手段が可聴音波を出力する領域を2つの領域のうち一方の領域に設定してもよい。
【0016】
異なる2つの領域に対して選択的に可聴音波を出力するためには、例えば、互いに異なる領域へ可聴音波を出力可能な2つの音波出力手段を設けてもよく、異なる2つの領域へ向けて可聴音波を出力する位置や角度を設定可能な1つの音波出力手段を設けてもよい。
【0017】
上記構成では、所定範囲に物体が存在する場合に、その物体の推定された位置に応じて異なる2つの領域のうち一方の領域に対して可聴音波を出力する。例えば、物体が存在すると推定された位置を含む領域へ可聴音波を出力してもよい。具体的には、所定範囲を2つの範囲に設定するとともに、音波出力手段が可聴音波を出力する2つの領域を、それぞれ、所定範囲の一方の範囲と他方の範囲とを含む領域に設定する。これにより、例えば車両に対する物体の相対速度が無視できる場合には、検知した物体に向けて可聴音波を確実に報知することができる。
【0018】
従って、所定範囲に存在する物体に対して、可聴音波が反射波ではなく直接波として物体へ伝播するため、所定範囲に人間が存在するときには、その人間は、明瞭な可聴音波を聞くことができ、可聴音波の報知が自分に対するものであると早期に認識することができる。
【0019】
また、所定範囲に物体が存在する場合であっても、2つの領域のうち一方の領域へ可聴音波が出力されるため、可聴音波が出力されない他方の領域への音量を抑えることができる。従って、車両と接触するおそれのない人間への騒音被害を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両と人間との接触を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る車両用警報装置を備えた車両を示す模式図である。
【図2】図1の車両用警報装置を示す模式図である。
【図3】図1の車両用警報装置を示すブロック構成図である。
【図4】図1の車両用警報装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態に係る車両用警報装置を備えた車両を示す模式図である。
【図6】図5の車両用警報装置の音波入出力ユニットを示す模式図である。
【図7】図5の車両用警報装置を示すブロック構成図である。
【図8】図5の車両用警報装置が実行する処理の例を示す模式図である。
【図9】図5の車両用警報装置が実行する処理の例を示す模式図である。
【図10】図5の車両用警報装置が実行する処理の例を示す模式図である。
【図11】図5の車両用警報装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態の車両用警報装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0023】
図1は本実施形態に係る車両用警報装置を備えた車両を示す模式図であり、図2は図1の車両用警報装置を示す模式図であり、図3は図1の車両用警報装置を示すブロック構成図であり、図4は図1の車両用警報装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る車両用警報装置10は、音波入出力ユニット11とコントローラ14とを備え、車両1に搭載される。
【0025】
図2及び図3に示すように、音波入出力ユニット11は、スピーカ12と受信部13とを備え、車両1の車体に設けられている。
【0026】
スピーカ12は、音波出力手段を構成し、可聴音波帯域と超音波帯域とを含む広帯域の周波数を発振可能なスピーカ(例えばリボンツイータ)であり、超音波と可聴音波とを含む広帯域の音波を車両1の外部へ出力可能である。本実施形態では、スピーカ12は、車両1前方に向けられて車体の前部に固定されている。また、スピーカ12は、超音波と可聴音波とを同時に出力可能である。本実施形態では、車両1に電源が投入されると、スピーカ12は60kHzの超音波を第1の所定の時間(例えば200msec)間隔で出力する。
【0027】
受信部13は、受信手段を構成し、スピーカ12が出力した超音波の反射波を受信する。
【0028】
図2及び図3に示すように、コントローラ14は、物体検知部15と出力制御部16とを備え、車両1に設けられている。
【0029】
物体検知部15は、物体検知手段を構成し、受信部13が受信した反射波に基づいて車両1の周囲の所定範囲の物体(図1に4で示す)を検知する。所定範囲は、車両1の周囲に予め設定された範囲である。本実施形態では、車両1の前方の範囲であり、スピーカ12が超音波を出力してから、その超音波が物体で反射されて反射波を受信部13が受信するまでの時間が、第2の所定の時間(例えば50msec)以下となる物体の位置の範囲が、所定範囲として設定されている。このため、本実施形態では、物体検知部15は、スピーカ12が超音波を出力してから第2の所定の時間内に受信部13が反射波を受信したか否かを判定する。物体検知部15は、スピーカ12が超音波を出力してから第2の所定の時間内に受信部13が反射波を受信したときに、車両1の外部の所定範囲に物体が存在すると認識する。また、物体検知部15は、スピーカ12が超音波を出力してから第2の所定の時間内に受信部13が反射波を受信しなかったときには、車両1の外部の所定範囲に物体が存在しないと認識する。このようにして物体検知部15は車両1の外部の所定範囲の物体を検知する。
【0030】
出力制御部16は、出力制御手段を構成し、スピーカ12の出力を制御する。本実施形態では、出力制御部16は、車両1に電源が投入されるとスピーカ12から60kHzの超音波を第1の所定の時間間隔で出力させる。また、出力制御部16は、車両1の外部の所定範囲に存在する物体を物体検知部15が検知したときに、スピーカ12から可聴音波を出力させる。本実施形態では、出力制御部16は、超音波を出力している状態のスピーカ12から、超音波の出力を継続したまま可聴音波として1kHzの警告音を2秒間出力させる。すなわち、可聴音波を超音波とを同時に出力する。
【0031】
ここで、出力制御部16がスピーカ12から超音波を出力させる時間間隔である第1の所定の時間と、所定範囲の物体を検知するために物体検知部15に設定された第2の所定の時間とは、第1の所定の時間が第2の所定の時間以上となる関係を有する。
【0032】
以下、図4に示すフローチャートに従って、本実施形態のコントローラ14が実行する処理を説明する。本処理は、車両1に電源が投入されると開始し、第1の所定の時間毎(例えば200msec毎)に実行する。
【0033】
まず、出力制御部16は、スピーカ12から超音波を出力し(ステップS1)、ステップS2へ移行する。次に、ステップS2では、物体検知部15は、スピーカ12から超音波が出力されてから第2の所定の時間経過したか否かを判定し、第2の所定の時間経過していないときには(ステップS2:NO)ステップS2の判定を繰り返し実行し、第2の所定の時間経過しているときには(ステップS2:YES)、ステップS3へ移行する。ステップS3では、物体検知部15は、受信部13が反射波を受信しているか否かを判定し、受信部13が反射波を受信していないときには(ステップS3:NO)、本処理を終了し、受信部13が反射波を受信しているときには(ステップS3:YES)、ステップS4へ移行する。ステップS4では、出力制御部16は、スピーカ12から可聴音波を出力させる。
【0034】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0035】
また、本実施形態では、スピーカ12を1つ設けたが、これに限らず、2つ以上設けてもよい。スピーカ12を複数設ける場合には各スピーカ12を離間して配置する。例えば、水平方向に離間して配置する。また、各スピーカ12より超音波を出力させる場合には、それぞれ(例えば周波数や波形が)異なる超音波を出力させてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、受信部13を1つ設けたが、これに限らず、受信部13を2つ以上設けてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、スピーカ12と受信部13とを音波入出力ユニット11として車体に一対設けるが、これに限らず、かかる音波入出力ユニット11を車体に複数設けることなどによってスピーカ12と受信部13とを車体に複数対で設けてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、スピーカ12から可聴音波を出力するときに超音波を同時に出力したが、これに限らず、可聴音波を出力するときには超音波の出力を停止させる構成であってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、本発明にかかる音波出力手段としてスピーカ12を設けたが、これに限らず、例えば、本発明の音波出力手段としてパラメトリックスピーカを設けてもよい。パラメトリックスピーカは、複数の超音波発振部を有し、超音波と可聴音波とを選択的に出力する。具体的には、変調等されていない超音波を超音波発振部が発振することによって超音波を出力し、所定の変調及び位相の制御がされた超音波を複数の超音波発振部が発振することによって可聴音波を出力する。このようにスピーカ12に代えてパラメトリックスピーカを使用することにより、指向性の高い可聴音を出力させることができる。また、超音波を出力する場合において同時に複数の超音波発振部を使用するときには、それぞれの超音波発振部で(例えば周波数や波形が)同一の超音波を発振させてもよく、それぞれの超音波発振部で異なる超音波を発振させてもよい。
【0040】
また、複数のスピーカ12(又は複数の超音波発振部)が設けられ、それぞれ異なる波形の超音波を出力する場合には、受信部13は、反射波の波形に基づいて、いずれのスピーカ12(又は超音波発振部)が出力した超音波であるかを区別して受信してもよく、物体検知部15は、受信部13がスピーカ12(又は超音波発振部)を区別して受信した反射波に基づいて物体の位置を求めてもよい。
【0041】
また、複数のスピーカ12(又は複数の超音波発振部)が設けられる場合には、複数のスピーカ12(又は超音波発振部)のうちいずれか一つを第1の所定の時間間隔に超音波を発振するスピーカ12(又は超音波発振部)として用いてもよい。この場合、超音波を発振するスピーカ12(又は超音波発振部)が一つであってもよく、第1の所定の時間間隔毎に超音波を発振するスピーカ12(又は超音波発振部)を変更してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、車両1が走行状態のときには、常に、車両1の外部の所定範囲に物体が存在するときにスピーカ12から可聴音波を出力させるが、これに限らず、例えば、車両1が所定速度以下で走行する徐行状態のときに、車両1の外部の所定範囲に物体が存在した場合にスピーカ12から可聴音波を出力させてもよい。ここで、車両1が徐行状態のときには、車両1から発生する騒音が小さく車両1の外部に存在する人間が車両1に気付き難いが、可聴音波を出力させることによって、車両1の外部に存在する人間に車両1の存在を確実に認識させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、車両1の外部の所定範囲に存在する物体を検知したときに、車両1の外部に対して可聴音波を出力するが、このとき、車両1の外部の所定範囲に物体が存在することを示す情報を車両1の内部の運転席に対して報知してもよい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、車両1の周囲の所定範囲に人間が存在すると、物体検知部15がこれを検知し、スピーカ12から車両1の外部へ可聴音波を出力する。従って、車両1の外部の人間は、かかる可聴音波を聞くことによって車両1の存在を認識して、車両1との接触を回避することができる。これにより、例えば、車両1が電気自動車など、低騒音で走行する車両であっても、所定範囲にまで車両1に近づいている人間に車両1の存在を確実に認識させることができる。
【0045】
また、物体を検知するために超音波を出力する手段と、可聴音波を出力して車両1の外部の人間に車両1との接触のおそれがあることを報知する手段とをスピーカ12によって共通化するため、装置の大型化を抑えることができる。また、コストの増大を抑えることができる。
【0046】
また、物体を検知するための超音波と報知のための可聴音波とを、スピーカ12によって出力するため、車両1の同じ位置から同じ方向へ超音波と可聴音波とを出力することができる。従って、例えば、車両1に対する物体の相対速度を無視できる状態(例えば、徐行中など)であれば、物体を検知するための超音波を出力したスピーカ12によって可聴音波を出力することにより、簡単な構成によって確実に検知した物体に向けて可聴音波を出力することができる。
【0047】
また、所定範囲に物体が存在しないときは、可聴音波を出力しないため、車両1の周囲への騒音を抑えることができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態を、図5〜図12に基づいて説明する。
【0049】
図5は本実施形態に係る車両用警報装置を備えた車両を示す模式図であり、図6は図5の車両用警報装置の音波入出力ユニットを示す模式図であり、図7は図5の車両用警報装置を示すブロック構成図であり、図8〜図10は図5の車両用警報装置が実行する処理の例を示す模式図であり、図11は図5の車両用警報装置が実行する処理を示すフローチャートであり、図12は本実施形態の車両用警報装置の変形例を示す模式図である。
【0050】
図5及び図6に示すように、本発明の第2の実施形態に係る車両用警報装置20は、音波入出力ユニットとコントローラとを備え、車両2に搭載される。また、車両用警報装置20は、走行状態情報検知部21を備える。
【0051】
図7に示すように、走行状態情報検知部21は、車速センサ22と操舵角センサ23とを備え、車両2の走行状態情報を検知する。車速センサ22は、車両2の走行速度を検出する。操舵角センサ23は、ステアリングホイールの回転方向と回転角とを検出する。
【0052】
図6及び図7に示すように、音波入出力ユニット24は、スピーカ25と受信部26とを備え、車両2の車体に設けられている。
【0053】
スピーカ25は、音波出力手段を構成し、可聴音波帯域と超音波帯域とを含む広帯域の周波数を発振可能なスピーカ(例えばリボンツイータ)であり、超音波と可聴音波とを含む広帯域の音波を車両1の外部へ出力可能である。また、スピーカ25は、車両2の外部の異なる2つの領域に対して選択的に可聴音波を出力可能である。本実施形態では、スピーカ25は、車体の左側部に水平方向に離間して2つ配置される。
【0054】
受信部26は、受信手段を構成し、スピーカ25が出力した超音波の反射波を離間した2点でそれぞれ受信する。本実施形態では、受信部26は、車体の左側部に水平方向に離間して2つ配置される。
【0055】
また、本実施形態では、図6に示すように、2つ配置されたスピーカ25をそれぞれ第1のスピーカ25,31及び第2のスピーカ25,32とし、2つ配置された受信部26をそれぞれ第1の受信部26,33及び第2の受信部26,34とすると、第1のスピーカ25,31から第1の受信部26,33までの距離と、第1のスピーカ25,31から第2の受信部26,34までの距離と、第2のスピーカ25,32から第2の受信部26,34までの距離とがそれぞれ等距離に設定されている。
【0056】
図6及び図7に示すように、コントローラ27は、物体検知部28と出力制御部29と記憶部30とを備え、車両2に設けられている。
【0057】
物体検知部28は、物体検知手段を構成し、受信部26が2点で反射波をそれぞれ受信した時間に基づいて車両2の外部の所定範囲の物体(図5に40で示す)の位置を推定する。本実施形態では、車両2の外部の所定範囲は、予め車体の左方の範囲(例えば車体から左方へ2mの範囲)が設定される。物体検知部28は、本実施形態では、スピーカ25が超音波を出力してから、車両2の外部の所定範囲に存在する物体に超音波が反射し、反射波を受信部26が受信するために充分な第3の所定の時間(例えば200msec)の間に受信部26が受信した反射波に基づいて、所定範囲に存在する物体を検知する。物体検知部28は、スピーカ25が超音波を出力してから第3の所定の時間の間に受信部26が反射波を受信している場合には、2つの受信部26が反射波をそれぞれ受信するまでの時間に基づいて、2つの受信部26から物体までのそれぞれの距離を、車両2に対する物体の相対速度を無視して演算し、算出した距離に基づいて、車両2に対する物体の相対速度を無視した物体の位置を演算する。次に、車速センサ22が検出した車両2の走行速度に基づいて、算出した物体の位置に対して超音波のドップラーシフトの補正処理を実行し、物体の位置を推定する。これにより、車両2が移動することによって車両2に対する物体の相対速度が無視できない状態であっても、車両2に対する物体の水平方向の相対位置を正確に推定することができる。
【0058】
また、物体検知部28は、物体の位置を推定すると、その物体が車両2の外部の所定範囲に含まれているか否かを判定し、物体が所定範囲に含まれていなければ車両2が巻き込むおそれがある物体が存在しないと認識して処理を終了し、物体が所定範囲に含まれている場合には車両2が巻き込むおそれがある物体が存在すると認識する。
【0059】
出力制御部29は、出力制御手段を構成し、スピーカ25の出力を制御する。本実施形態では、出力制御部29は、車両2が左方向へ旋回しているときにスピーカ25から超音波を出力させる。具体的には、出力制御部29は、操舵角センサ23が検出したステアリングホイールの回転方向と回転角とに基づいて、ステアリングホイールが左方向へ所定角度以上回転されているときに、スピーカ25から60kHzの超音波を第4の所定の時間間隔で出力させる。また、出力制御部29は、物体検知部28が車両2の外部の所定範囲に物体を検知したときに、物体検知部28が推定した物体の位置に応じて、スピーカ25が可聴音波を出力する領域を2つの領域のうち一方の領域に設定してスピーカ25から可聴音波を出力させる。出力制御部29は、本実施形態では、2つのスピーカ25のうち、物体検知部28が推定した物体の位置が近い一方のスピーカ25を選択して、記憶部30に記憶された「車が左へ曲がります」という音声案内を可聴音波として出力させる。
【0060】
以下、図8〜図10に従って、本実施形態のコントローラ27が実行する処理を説明する。図8〜図10に示すように、第1のスピーカ25,31から出力された超音波が物体で反射し、反射波が第1の受信部26,33と第2の受信部26,34とで受信される。なお、図8及び図9に示す例では、車両2に対する物体の相対速度を無視できる状態を示す。
【0061】
図8に示す例では、物体41から第1の受信部26,33までの距離と、物体41から第2の受信部26,34までの距離とが等距離であり、反射波が第1の受信部26,33及び第2の受信部26,34で同時に受信される。物体検知部28は、第1の受信部26,33から物体41までの距離と、第2の受信部26,34から物体41までの距離とを、第1のスピーカ25,31から超音波が出力されてから第1の受信部26,33及び第2の受信部26,34で反射波を受信するまでのそれぞれの時間に基づいて算出する。これにより、物体検知部28は、図8に示す位置に物体41が存在することを算出する。また、この場合、物体41は第2のスピーカ25,32よりも第1のスピーカ25,31に距離が近いため、出力制御部29が第1のスピーカ25,31により可聴音波を出力させる。
【0062】
次に、図9に示す例では、物体42から第1の受信部26,33までの距離よりも、物体42から第2の受信部26,34までの距離の方が長いため、反射波は第1の受信部26,33で受信された後に第2の受信部26,34で受信される。物体検知部28は、第1の受信部26,33から物体42までの距離と、第2の受信部26,34から物体42までの距離とを算出することによって、図9に示すように、第2の受信部26,34よりも第1の受信部26,33に近い位置に物体42が存在することを算出する。また、この場合、物体42は第2のスピーカ25,32よりも第1のスピーカ25,31に距離が近いため、出力制御部29が第1のスピーカ25,31により可聴音波を出力させる。
【0063】
次に、図10は、ドップラーシフトの補正処理を説明するための例であり、実線で示すように、物体43で反射した反射波は、第2の受信部26,34で受信された後に第1の受信部26,33で受信される。物体検知部28は、第1の受信部26,33から物体43までの距離と第2の受信部26,34から物体43までの距離とを算出することによって、図10に実線で示すように、第1の受信部26,33よりも第2の受信部26,34に近い位置に物体43が存在することを算出する。次に、物体検知部28は、車速センサ22が検出した車両2の走行速度に基づいて、算出した物体43の位置(実線で示す)に対して超音波のドップラーシフトの補正処理を実行し、図10に破線で示す位置に物体43が存在すると推定する。これにより、ドップラーシフトの補正処理を実行する前には第1のスピーカ25,31よりも第2のスピーカ25,32に距離が近い位置に算出されていた物体43が、実際には第2のスピーカ25,32よりも第1のスピーカ25,31に距離が近い位置に存在することが推定され、出力制御部29が第1のスピーカ25,31により可聴音波を出力させる。
【0064】
以下、図11に示すフローチャートに従って、本実施形態のコントローラ27が実行する処理を説明する。本処理は、車両2が走行状態のときに所定時間毎(例えば200msec毎)に実行する。
【0065】
まず、ステップS11では、出力制御部29は、操舵角センサ23が検出したステアリングホイールの回転方向と回転角とに基づいて、ステアリングホイールが左方向へ所定角度以上回転されているか否かを判定し、ステアリングホイールが左方向へ所定角度以上回転されていないときには(ステップS11:NO)、本処理を終了し、ステアリングホイールが左方向へ所定角度以上回転されているときには(ステップS11:YES)、ステップS12へ移行してスピーカ25から超音波を出力し(ステップS12)、ステップS13へ移行する。次に、ステップS13では、物体検知部28は、スピーカ25から超音波が出力されてから第3の所定の時間が経過したか否かを判定し、第3の所定の時間が経過していないときには(ステップS13:NO)ステップS13の判定を繰り返し実行し、第3の所定の時間が経過しているときには(ステップS13:YES)、ステップS14へ移行する。ステップS14では、物体検知部28は、受信部26が反射波を受信しているか否かを判定し、受信部26が反射波を受信していないときには(ステップS14:NO)、本処理を終了し、受信部26が反射波を受信しているときには(ステップS14:YES)、ステップS15へ移行する。ステップS15では、物体検知部28は、スピーカ25が超音波を出力してから2つの受信部26が反射波を受信するまでのそれぞれの時間に基づいて、2つの受信部26から物体までのそれぞれの距離を、車両2に対する物体の相対速度を無視して演算し、ステップS16へ移行する。ステップS16では、物体検知部28は、ステップS15で算出した距離に基づいて、物体の位置を、車両2に対する物体の相対速度を無視して演算し、ステップS17へ移行する。次に、ステップS17では、物体検知部28は、車速センサ22が検出した車両2の走行速度に基づいて、ステップS16で算出した物体の位置に対して超音波のドップラーシフトの補正処理を実行し、物体の位置を推定してステップS18へ移行する。ステップS18では、物体検知部28は、ステップS17で推定した物体の位置が、車両2の外部の所定範囲に含まれているか否かを判定し、物体の位置が所定範囲に含まれていないときには(ステップS18:NO)、車両2が巻き込むおそれがある物体が存在しないと認識して本処理を終了し、物体の位置が所定範囲に含まれている場合には(ステップS18:YES)、車両2が巻き込むおそれがある物体が存在すると認識して、ステップS19へ移行する。ステップS19では、出力制御部29は、2つのスピーカ25のうち物体に近い方のスピーカ25を選択し、選択したスピーカ25から可聴音波を出力させて(ステップS20)、本処理を終了する。
【0066】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
【0067】
本実施形態では、スピーカ25を2つ設けたが、これに限らず、1つ或いは3つ以上設けてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、受信部26を2つ設けたが、これに限らず、3つ以上設けてもよい。図12に、スピーカ25を2つ設けて受信部26を3つ設けた例を示す。例えば、2つのスピーカ25からそれぞれ、40kHzの超音波と80kHzの超音波を出力させる。かかる複数の超音波の出力周波数は、スピーカ25から出力した超音波と反射波とがドップラーシフトによって異なる周波数になっても、いずれのスピーカ25から出力した超音波の反射波であるかを識別可能な程度に離間した周波数が設定される。
【0069】
また、本実施形態では、2つのスピーカ25は、水平方向に離間して配置されるが、これに限らず、垂直方向に離間して配置したり、斜め方向に離間して配置してもよい。例えば垂直方向に2つのスピーカ25を離間して配置することにより、車両2の外部の上下方向に異なる2つの領域に対して出力制御部29が選択的に可聴音波をスピーカ25から出力させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、2つの受信部26は、車体2に水平方向に離間して配置されるが、これに限らず、垂直方向に離間して配置したり、斜め方向に離間して配置してもよい。例えば垂直方向に2つのスピーカ25を離間して配置することにより、物体の上下方向の位置を物体検知部28が正確に算出することができる。
【0071】
また、本実施形態では、車両2の外部の異なる複数の領域に対して選択的に可聴音波を出力するために、車体に対して固定された2つのスピーカ25の一方を選択的に使用するが、これに限らず、車両2の外部の異なる複数の領域に対して可聴音波を出力する位置や角度を設定可能なスピーカを設けてもよい。具体的には、例えば、可聴音波を出力する位置を複数の領域に対して設定可能にする構成として、車体の側部に前後方向に延びたレールを固定し、レールに沿って水平方向に移動可能なスピーカを設け、スピーカをレールに沿って水平方向に移動させる駆動部及び駆動制御部を設けてもよい。また、可聴音波を出力する角度を複数の領域に対して設定可能にする構成として、可聴音波を出力する水平方向の角度を設定可能なスピーカを設け、スピーカの角度を変更させる駆動部及び駆動制御部を設けてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、スピーカ25及び受信部26を車体の左側部に配置したが、これに限らず、車体の他の部分に配置してもよい。例えば、車体の右側部に配置してもよく、車体の後部に配置してもよい。スピーカ25及び受信部26を車体の右側部に配置するときには、車両2が右に旋回するときに、車両2の外部右側の所定範囲の物体の有無を検知して、物体が存在するときにスピーカ25により「車が右へ曲がります」などと案内する音声を出力させてもよい。また、スピーカ25及び受信部26を車体の後部に配置するときには、車両2がバックするとき(ギアがRに設定されたとき)に、車両2の外部後部の所定範囲の物体の有無を検知して、物体が存在するときにスピーカ25により「車がバックします」などと案内する音声を出力させてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、本発明に係る音波出力手段としてスピーカ25を配置したがこれに限らず、例えば、パラメトリックスピーカを、フェイズドアレイ状に並べて配置してもよい。フェイズドアレイ状に水平方向に並べて配置されたパラメトリックスピーカでは、超音波を発振する超音波発振部の組み合わせによって所定の領域に対して可聴音波を出力する。例えば、車両2の外部のそれぞれ異なる領域に対して、可聴音波を出力する複数のパラメトリックスピーカを水平方向に並べて配置する。また、複数の超音波発振部を一つのパラメトリックスピーカの組として配置するのではなく、複数の角度に向けられた複数の超音波発振部が車体に固定され、車両2の外部のどの領域に可聴音波を出力するかに応じて、必要な角度に向けられた超音波発振部の組み合わせが適宜選択されてパラメトリックスピーカとして所定の変調及び位相の制御がされて可聴音波を出力する構成であってもよい。すなわち、それぞれ異なる領域に向けて可聴音波を出力する複数のパラメトリックスピーカに一つの超音波発振部が共通に使用される構成であってもよい。このように、スピーカに代えてフェイズドアレイ状に配置されたパラメトリックスピーカを使用することにより、複数の領域のうち一つの領域へ選択的に指向性の高い可聴音を出力させることができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、一つの物体で超音波が反射したときに、その超音波の反射波を離間した2点で受信し、2点から一つの物体までのそれぞれの距離を検出することによって、物体が存在する位置を推定することができる。具体的には、受信部26が反射波を受信する点を、水平方向に離間した2点に設定しているため、水平方向において物体が存在する位置を推定することができる。
【0075】
また、物体検知部28が物体の位置を推定するため、所定範囲を予め詳細に設定することができる。
【0076】
また、所定範囲に物体が存在する場合に、その物体の推定された位置に応じて、2つのスピーカ25のうち、物体検知部28が推定した物体の位置が近い一方のスピーカ25を選択して可聴音波を出力させる。これにより、検知した物体に向けて可聴音波を確実に報知することができる。
【0077】
従って、所定範囲に存在する物体に対して、可聴音波が反射波ではなく直接波として物体へ伝播するため、所定範囲に人間が存在するときには、その人間は、明瞭な可聴音波を聞くことができ、可聴音波の報知が自分に対するものであると早期に認識することができる。
【0078】
また、所定範囲に物体が存在する場合であっても、2つの領域のうち一方の領域へ可聴音波が出力されるため、可聴音波が出力されない他方の領域への音量を抑えることができる。従って、車両2と接触するおそれのない人間への騒音被害を抑えることができる。
【0079】
また、所定範囲に物体が存在しないときは、可聴音波を出力しないため、車両2の周囲への騒音を抑えることができる。すなわち、車両2が左折する状態のときに、車両2が移動すると車両2と接触してしまうおそれのある位置に物体が存在するか否かにかかわらず、かかる状態であることを示す音声を報知する場合には、車両2の周辺の住民などへの騒音被害が増大してしまう。この点に関して、本実施形態の車両用警報装置20を備えることによって、車両2が左折する状態において、車両2の周囲の所定範囲に物体が存在する場合にのみ可聴音波を出力し、車両2の周囲の所定範囲に物体が存在しないときには可聴音波を出力しないことによって、車両2の周辺の住民などへの騒音被害を抑えることができる。
【0080】
また、車両2の走行速度に基づいて超音波のドップラーシフトの補正処理がされるため、車両2が移動することによって車両2に対して物体が相対的に移動していても、物体の存在する領域に対して最適なスピーカ25から可聴音波を出力することができる。
【0081】
また、第2の実施形態の車両用警報装置20は、第1の実施形態の車両用警報装置10の上記効果と同様の効果を得ることができる。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0083】
1,2:車両
10,20:車両用警報装置
12,25:スピーカ(音波出力手段)
13,26:受信部(受信手段)
15,28:物体検知部(物体検知手段)
16,29:出力制御部(出力制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周囲の歩行者などに対して、警報音を報知する車両用警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007−57527号公報には、車両用障害物検知システムが記載されている。車両用障害物検知システムは、車両の外方に向けて超音波信号を送信する送信手段と、車両から離間した位置に存在する物体の表面で反射した超音波信号を異なる位置で夫々受信する複数の受信手段とを備え、送信手段により送信されてから各受信手段によって超音波信号が受信された夫々の時間に基づいて物体の位置を特定する。物体までの距離が一定の範囲内にあれば、その物体の存在を運転席におけるブザーや警告表示などにより運転者に知らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−57527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特開2007−57527号公報の車両用障害物検知システムでは、例えば、車両の外部の人間が一定の範囲内に存在する場合には、車両の運転者に物体の存在がブザーなどによって報知されても、その人間が車両に気付かずに車両にさらに近づいてしまうと、運転者が接触を回避しきれずに、車体と人間とが接触してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、車両と人間との接触を確実に回避することが可能な車両用警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の車両用警報装置は、音波出力手段と受信手段と物体検知手段と出力制御手段とを備える。音波出力手段は、車両の外部へ超音波と可聴音波とを出力可能である。受信手段は、音波出力手段が出力した超音波の反射波を受信する。物体検知手段は、受信手段が受信した反射波に基づいて車両の周囲の所定範囲の物体を検知する。出力制御手段は、物体検知手段が物体を検知したときに、音波出力手段から可聴音波を出力させる。
【0007】
音波出力手段は、例えば、可聴音波と超音波とを発振可能なスピーカであってもよく、超音波を発振可能な超音波発振装置を複数設け、変調した所定の超音波を超音波発振装置から発振させることによって可聴音波を出力するパラメトリック・スピーカであってもよい。
【0008】
上記構成では、車両の周囲の所定範囲に人間が存在すると、物体検知手段がこれを検知し、音波出力手段から車両の外部へ可聴音波を出力する。従って、車両の外部の人間は、かかる可聴音波を聞くことによって車両の存在を認識して、車両との接触を回避することができる。これにより、例えば、電気自動車など、低騒音で走行する車両であっても、所定範囲にまで車両に近づいている人間に車両の存在を確実に認識させることができる。
【0009】
また、物体を検知するために超音波を出力する手段と、可聴音波を出力して車両の外部の人間に車両との接触のおそれがあることを報知する手段とを音波出力手段によって共通化するため、装置の大型化を抑えることができる。また、コストの増大を抑えることができる。
【0010】
また、物体を検知するための超音波と報知のための可聴音波とを、音波出力手段によって出力するため、車両の同じ位置から同じ方向へ超音波と可聴音波とを出力することができる。従って、例えば、車両に対する物体の相対速度を無視できる状態であれば、物体を検知するための超音波を出力した音波出力手段と同じ音波出力手段によって可聴音波を出力することにより、簡単な構成によって確実に検知した物体に向けて可聴音波を出力することができる。
【0011】
また、所定範囲に物体が存在しないときは、可聴音波を出力しないため、車両の周囲への騒音を抑えることができる。ここで、例えば、車両が右左折する状態やバックする状態のときに、車両が移動すると車両と接触してしまうおそれのある位置に物体が存在するか否かにかかわらず、かかる状態であることを示す音声を報知する場合には、車両の周辺の住民などへの騒音被害が増大してしまう。この点に関して、上記車両用警報装置を備えることによって、車両が右左折する状態やバックする状態のときに、車両の周囲の所定範囲に物体が存在するときにのみ可聴音波を出力し、車両の周囲の所定範囲に物体が存在しないときには可聴音波を出力しないことによって、車両の周辺の住民などへの騒音被害を抑えることができる。
【0012】
また、受信手段は、離間した2点で反射波をそれぞれ受信してもよく、物体検知手段は、受信手段が2点で反射波をそれぞれ受信した時間に基づいて所定範囲の物体の位置を推定してもよい。
【0013】
上記構成では、例えば、一つの物体で超音波が反射したときに、その超音波の反射波を離間した2点で受信し、2点から一つの物体までのそれぞれの距離を検出することによって、物体が存在する位置を推定することができる。具体的には、例えば、受信手段が反射波を受信する点を、水平方向に離間した2点に設定した場合には、水平方向において物体が存在する位置を推定することができる。
【0014】
また、物体検知手段が物体の位置を推定するため、所定範囲を予め詳細に設定することができる。
【0015】
また、音波出力手段は、車両の外部の異なる2つの領域に対して選択的に可聴音波を出力可能であってもよく、出力制御手段は、物体検知手段が推定した物体の位置に応じて、音波出力手段が可聴音波を出力する領域を2つの領域のうち一方の領域に設定してもよい。
【0016】
異なる2つの領域に対して選択的に可聴音波を出力するためには、例えば、互いに異なる領域へ可聴音波を出力可能な2つの音波出力手段を設けてもよく、異なる2つの領域へ向けて可聴音波を出力する位置や角度を設定可能な1つの音波出力手段を設けてもよい。
【0017】
上記構成では、所定範囲に物体が存在する場合に、その物体の推定された位置に応じて異なる2つの領域のうち一方の領域に対して可聴音波を出力する。例えば、物体が存在すると推定された位置を含む領域へ可聴音波を出力してもよい。具体的には、所定範囲を2つの範囲に設定するとともに、音波出力手段が可聴音波を出力する2つの領域を、それぞれ、所定範囲の一方の範囲と他方の範囲とを含む領域に設定する。これにより、例えば車両に対する物体の相対速度が無視できる場合には、検知した物体に向けて可聴音波を確実に報知することができる。
【0018】
従って、所定範囲に存在する物体に対して、可聴音波が反射波ではなく直接波として物体へ伝播するため、所定範囲に人間が存在するときには、その人間は、明瞭な可聴音波を聞くことができ、可聴音波の報知が自分に対するものであると早期に認識することができる。
【0019】
また、所定範囲に物体が存在する場合であっても、2つの領域のうち一方の領域へ可聴音波が出力されるため、可聴音波が出力されない他方の領域への音量を抑えることができる。従って、車両と接触するおそれのない人間への騒音被害を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両と人間との接触を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る車両用警報装置を備えた車両を示す模式図である。
【図2】図1の車両用警報装置を示す模式図である。
【図3】図1の車両用警報装置を示すブロック構成図である。
【図4】図1の車両用警報装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態に係る車両用警報装置を備えた車両を示す模式図である。
【図6】図5の車両用警報装置の音波入出力ユニットを示す模式図である。
【図7】図5の車両用警報装置を示すブロック構成図である。
【図8】図5の車両用警報装置が実行する処理の例を示す模式図である。
【図9】図5の車両用警報装置が実行する処理の例を示す模式図である。
【図10】図5の車両用警報装置が実行する処理の例を示す模式図である。
【図11】図5の車両用警報装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態の車両用警報装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0023】
図1は本実施形態に係る車両用警報装置を備えた車両を示す模式図であり、図2は図1の車両用警報装置を示す模式図であり、図3は図1の車両用警報装置を示すブロック構成図であり、図4は図1の車両用警報装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る車両用警報装置10は、音波入出力ユニット11とコントローラ14とを備え、車両1に搭載される。
【0025】
図2及び図3に示すように、音波入出力ユニット11は、スピーカ12と受信部13とを備え、車両1の車体に設けられている。
【0026】
スピーカ12は、音波出力手段を構成し、可聴音波帯域と超音波帯域とを含む広帯域の周波数を発振可能なスピーカ(例えばリボンツイータ)であり、超音波と可聴音波とを含む広帯域の音波を車両1の外部へ出力可能である。本実施形態では、スピーカ12は、車両1前方に向けられて車体の前部に固定されている。また、スピーカ12は、超音波と可聴音波とを同時に出力可能である。本実施形態では、車両1に電源が投入されると、スピーカ12は60kHzの超音波を第1の所定の時間(例えば200msec)間隔で出力する。
【0027】
受信部13は、受信手段を構成し、スピーカ12が出力した超音波の反射波を受信する。
【0028】
図2及び図3に示すように、コントローラ14は、物体検知部15と出力制御部16とを備え、車両1に設けられている。
【0029】
物体検知部15は、物体検知手段を構成し、受信部13が受信した反射波に基づいて車両1の周囲の所定範囲の物体(図1に4で示す)を検知する。所定範囲は、車両1の周囲に予め設定された範囲である。本実施形態では、車両1の前方の範囲であり、スピーカ12が超音波を出力してから、その超音波が物体で反射されて反射波を受信部13が受信するまでの時間が、第2の所定の時間(例えば50msec)以下となる物体の位置の範囲が、所定範囲として設定されている。このため、本実施形態では、物体検知部15は、スピーカ12が超音波を出力してから第2の所定の時間内に受信部13が反射波を受信したか否かを判定する。物体検知部15は、スピーカ12が超音波を出力してから第2の所定の時間内に受信部13が反射波を受信したときに、車両1の外部の所定範囲に物体が存在すると認識する。また、物体検知部15は、スピーカ12が超音波を出力してから第2の所定の時間内に受信部13が反射波を受信しなかったときには、車両1の外部の所定範囲に物体が存在しないと認識する。このようにして物体検知部15は車両1の外部の所定範囲の物体を検知する。
【0030】
出力制御部16は、出力制御手段を構成し、スピーカ12の出力を制御する。本実施形態では、出力制御部16は、車両1に電源が投入されるとスピーカ12から60kHzの超音波を第1の所定の時間間隔で出力させる。また、出力制御部16は、車両1の外部の所定範囲に存在する物体を物体検知部15が検知したときに、スピーカ12から可聴音波を出力させる。本実施形態では、出力制御部16は、超音波を出力している状態のスピーカ12から、超音波の出力を継続したまま可聴音波として1kHzの警告音を2秒間出力させる。すなわち、可聴音波を超音波とを同時に出力する。
【0031】
ここで、出力制御部16がスピーカ12から超音波を出力させる時間間隔である第1の所定の時間と、所定範囲の物体を検知するために物体検知部15に設定された第2の所定の時間とは、第1の所定の時間が第2の所定の時間以上となる関係を有する。
【0032】
以下、図4に示すフローチャートに従って、本実施形態のコントローラ14が実行する処理を説明する。本処理は、車両1に電源が投入されると開始し、第1の所定の時間毎(例えば200msec毎)に実行する。
【0033】
まず、出力制御部16は、スピーカ12から超音波を出力し(ステップS1)、ステップS2へ移行する。次に、ステップS2では、物体検知部15は、スピーカ12から超音波が出力されてから第2の所定の時間経過したか否かを判定し、第2の所定の時間経過していないときには(ステップS2:NO)ステップS2の判定を繰り返し実行し、第2の所定の時間経過しているときには(ステップS2:YES)、ステップS3へ移行する。ステップS3では、物体検知部15は、受信部13が反射波を受信しているか否かを判定し、受信部13が反射波を受信していないときには(ステップS3:NO)、本処理を終了し、受信部13が反射波を受信しているときには(ステップS3:YES)、ステップS4へ移行する。ステップS4では、出力制御部16は、スピーカ12から可聴音波を出力させる。
【0034】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0035】
また、本実施形態では、スピーカ12を1つ設けたが、これに限らず、2つ以上設けてもよい。スピーカ12を複数設ける場合には各スピーカ12を離間して配置する。例えば、水平方向に離間して配置する。また、各スピーカ12より超音波を出力させる場合には、それぞれ(例えば周波数や波形が)異なる超音波を出力させてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、受信部13を1つ設けたが、これに限らず、受信部13を2つ以上設けてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、スピーカ12と受信部13とを音波入出力ユニット11として車体に一対設けるが、これに限らず、かかる音波入出力ユニット11を車体に複数設けることなどによってスピーカ12と受信部13とを車体に複数対で設けてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、スピーカ12から可聴音波を出力するときに超音波を同時に出力したが、これに限らず、可聴音波を出力するときには超音波の出力を停止させる構成であってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、本発明にかかる音波出力手段としてスピーカ12を設けたが、これに限らず、例えば、本発明の音波出力手段としてパラメトリックスピーカを設けてもよい。パラメトリックスピーカは、複数の超音波発振部を有し、超音波と可聴音波とを選択的に出力する。具体的には、変調等されていない超音波を超音波発振部が発振することによって超音波を出力し、所定の変調及び位相の制御がされた超音波を複数の超音波発振部が発振することによって可聴音波を出力する。このようにスピーカ12に代えてパラメトリックスピーカを使用することにより、指向性の高い可聴音を出力させることができる。また、超音波を出力する場合において同時に複数の超音波発振部を使用するときには、それぞれの超音波発振部で(例えば周波数や波形が)同一の超音波を発振させてもよく、それぞれの超音波発振部で異なる超音波を発振させてもよい。
【0040】
また、複数のスピーカ12(又は複数の超音波発振部)が設けられ、それぞれ異なる波形の超音波を出力する場合には、受信部13は、反射波の波形に基づいて、いずれのスピーカ12(又は超音波発振部)が出力した超音波であるかを区別して受信してもよく、物体検知部15は、受信部13がスピーカ12(又は超音波発振部)を区別して受信した反射波に基づいて物体の位置を求めてもよい。
【0041】
また、複数のスピーカ12(又は複数の超音波発振部)が設けられる場合には、複数のスピーカ12(又は超音波発振部)のうちいずれか一つを第1の所定の時間間隔に超音波を発振するスピーカ12(又は超音波発振部)として用いてもよい。この場合、超音波を発振するスピーカ12(又は超音波発振部)が一つであってもよく、第1の所定の時間間隔毎に超音波を発振するスピーカ12(又は超音波発振部)を変更してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、車両1が走行状態のときには、常に、車両1の外部の所定範囲に物体が存在するときにスピーカ12から可聴音波を出力させるが、これに限らず、例えば、車両1が所定速度以下で走行する徐行状態のときに、車両1の外部の所定範囲に物体が存在した場合にスピーカ12から可聴音波を出力させてもよい。ここで、車両1が徐行状態のときには、車両1から発生する騒音が小さく車両1の外部に存在する人間が車両1に気付き難いが、可聴音波を出力させることによって、車両1の外部に存在する人間に車両1の存在を確実に認識させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、車両1の外部の所定範囲に存在する物体を検知したときに、車両1の外部に対して可聴音波を出力するが、このとき、車両1の外部の所定範囲に物体が存在することを示す情報を車両1の内部の運転席に対して報知してもよい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、車両1の周囲の所定範囲に人間が存在すると、物体検知部15がこれを検知し、スピーカ12から車両1の外部へ可聴音波を出力する。従って、車両1の外部の人間は、かかる可聴音波を聞くことによって車両1の存在を認識して、車両1との接触を回避することができる。これにより、例えば、車両1が電気自動車など、低騒音で走行する車両であっても、所定範囲にまで車両1に近づいている人間に車両1の存在を確実に認識させることができる。
【0045】
また、物体を検知するために超音波を出力する手段と、可聴音波を出力して車両1の外部の人間に車両1との接触のおそれがあることを報知する手段とをスピーカ12によって共通化するため、装置の大型化を抑えることができる。また、コストの増大を抑えることができる。
【0046】
また、物体を検知するための超音波と報知のための可聴音波とを、スピーカ12によって出力するため、車両1の同じ位置から同じ方向へ超音波と可聴音波とを出力することができる。従って、例えば、車両1に対する物体の相対速度を無視できる状態(例えば、徐行中など)であれば、物体を検知するための超音波を出力したスピーカ12によって可聴音波を出力することにより、簡単な構成によって確実に検知した物体に向けて可聴音波を出力することができる。
【0047】
また、所定範囲に物体が存在しないときは、可聴音波を出力しないため、車両1の周囲への騒音を抑えることができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態を、図5〜図12に基づいて説明する。
【0049】
図5は本実施形態に係る車両用警報装置を備えた車両を示す模式図であり、図6は図5の車両用警報装置の音波入出力ユニットを示す模式図であり、図7は図5の車両用警報装置を示すブロック構成図であり、図8〜図10は図5の車両用警報装置が実行する処理の例を示す模式図であり、図11は図5の車両用警報装置が実行する処理を示すフローチャートであり、図12は本実施形態の車両用警報装置の変形例を示す模式図である。
【0050】
図5及び図6に示すように、本発明の第2の実施形態に係る車両用警報装置20は、音波入出力ユニットとコントローラとを備え、車両2に搭載される。また、車両用警報装置20は、走行状態情報検知部21を備える。
【0051】
図7に示すように、走行状態情報検知部21は、車速センサ22と操舵角センサ23とを備え、車両2の走行状態情報を検知する。車速センサ22は、車両2の走行速度を検出する。操舵角センサ23は、ステアリングホイールの回転方向と回転角とを検出する。
【0052】
図6及び図7に示すように、音波入出力ユニット24は、スピーカ25と受信部26とを備え、車両2の車体に設けられている。
【0053】
スピーカ25は、音波出力手段を構成し、可聴音波帯域と超音波帯域とを含む広帯域の周波数を発振可能なスピーカ(例えばリボンツイータ)であり、超音波と可聴音波とを含む広帯域の音波を車両1の外部へ出力可能である。また、スピーカ25は、車両2の外部の異なる2つの領域に対して選択的に可聴音波を出力可能である。本実施形態では、スピーカ25は、車体の左側部に水平方向に離間して2つ配置される。
【0054】
受信部26は、受信手段を構成し、スピーカ25が出力した超音波の反射波を離間した2点でそれぞれ受信する。本実施形態では、受信部26は、車体の左側部に水平方向に離間して2つ配置される。
【0055】
また、本実施形態では、図6に示すように、2つ配置されたスピーカ25をそれぞれ第1のスピーカ25,31及び第2のスピーカ25,32とし、2つ配置された受信部26をそれぞれ第1の受信部26,33及び第2の受信部26,34とすると、第1のスピーカ25,31から第1の受信部26,33までの距離と、第1のスピーカ25,31から第2の受信部26,34までの距離と、第2のスピーカ25,32から第2の受信部26,34までの距離とがそれぞれ等距離に設定されている。
【0056】
図6及び図7に示すように、コントローラ27は、物体検知部28と出力制御部29と記憶部30とを備え、車両2に設けられている。
【0057】
物体検知部28は、物体検知手段を構成し、受信部26が2点で反射波をそれぞれ受信した時間に基づいて車両2の外部の所定範囲の物体(図5に40で示す)の位置を推定する。本実施形態では、車両2の外部の所定範囲は、予め車体の左方の範囲(例えば車体から左方へ2mの範囲)が設定される。物体検知部28は、本実施形態では、スピーカ25が超音波を出力してから、車両2の外部の所定範囲に存在する物体に超音波が反射し、反射波を受信部26が受信するために充分な第3の所定の時間(例えば200msec)の間に受信部26が受信した反射波に基づいて、所定範囲に存在する物体を検知する。物体検知部28は、スピーカ25が超音波を出力してから第3の所定の時間の間に受信部26が反射波を受信している場合には、2つの受信部26が反射波をそれぞれ受信するまでの時間に基づいて、2つの受信部26から物体までのそれぞれの距離を、車両2に対する物体の相対速度を無視して演算し、算出した距離に基づいて、車両2に対する物体の相対速度を無視した物体の位置を演算する。次に、車速センサ22が検出した車両2の走行速度に基づいて、算出した物体の位置に対して超音波のドップラーシフトの補正処理を実行し、物体の位置を推定する。これにより、車両2が移動することによって車両2に対する物体の相対速度が無視できない状態であっても、車両2に対する物体の水平方向の相対位置を正確に推定することができる。
【0058】
また、物体検知部28は、物体の位置を推定すると、その物体が車両2の外部の所定範囲に含まれているか否かを判定し、物体が所定範囲に含まれていなければ車両2が巻き込むおそれがある物体が存在しないと認識して処理を終了し、物体が所定範囲に含まれている場合には車両2が巻き込むおそれがある物体が存在すると認識する。
【0059】
出力制御部29は、出力制御手段を構成し、スピーカ25の出力を制御する。本実施形態では、出力制御部29は、車両2が左方向へ旋回しているときにスピーカ25から超音波を出力させる。具体的には、出力制御部29は、操舵角センサ23が検出したステアリングホイールの回転方向と回転角とに基づいて、ステアリングホイールが左方向へ所定角度以上回転されているときに、スピーカ25から60kHzの超音波を第4の所定の時間間隔で出力させる。また、出力制御部29は、物体検知部28が車両2の外部の所定範囲に物体を検知したときに、物体検知部28が推定した物体の位置に応じて、スピーカ25が可聴音波を出力する領域を2つの領域のうち一方の領域に設定してスピーカ25から可聴音波を出力させる。出力制御部29は、本実施形態では、2つのスピーカ25のうち、物体検知部28が推定した物体の位置が近い一方のスピーカ25を選択して、記憶部30に記憶された「車が左へ曲がります」という音声案内を可聴音波として出力させる。
【0060】
以下、図8〜図10に従って、本実施形態のコントローラ27が実行する処理を説明する。図8〜図10に示すように、第1のスピーカ25,31から出力された超音波が物体で反射し、反射波が第1の受信部26,33と第2の受信部26,34とで受信される。なお、図8及び図9に示す例では、車両2に対する物体の相対速度を無視できる状態を示す。
【0061】
図8に示す例では、物体41から第1の受信部26,33までの距離と、物体41から第2の受信部26,34までの距離とが等距離であり、反射波が第1の受信部26,33及び第2の受信部26,34で同時に受信される。物体検知部28は、第1の受信部26,33から物体41までの距離と、第2の受信部26,34から物体41までの距離とを、第1のスピーカ25,31から超音波が出力されてから第1の受信部26,33及び第2の受信部26,34で反射波を受信するまでのそれぞれの時間に基づいて算出する。これにより、物体検知部28は、図8に示す位置に物体41が存在することを算出する。また、この場合、物体41は第2のスピーカ25,32よりも第1のスピーカ25,31に距離が近いため、出力制御部29が第1のスピーカ25,31により可聴音波を出力させる。
【0062】
次に、図9に示す例では、物体42から第1の受信部26,33までの距離よりも、物体42から第2の受信部26,34までの距離の方が長いため、反射波は第1の受信部26,33で受信された後に第2の受信部26,34で受信される。物体検知部28は、第1の受信部26,33から物体42までの距離と、第2の受信部26,34から物体42までの距離とを算出することによって、図9に示すように、第2の受信部26,34よりも第1の受信部26,33に近い位置に物体42が存在することを算出する。また、この場合、物体42は第2のスピーカ25,32よりも第1のスピーカ25,31に距離が近いため、出力制御部29が第1のスピーカ25,31により可聴音波を出力させる。
【0063】
次に、図10は、ドップラーシフトの補正処理を説明するための例であり、実線で示すように、物体43で反射した反射波は、第2の受信部26,34で受信された後に第1の受信部26,33で受信される。物体検知部28は、第1の受信部26,33から物体43までの距離と第2の受信部26,34から物体43までの距離とを算出することによって、図10に実線で示すように、第1の受信部26,33よりも第2の受信部26,34に近い位置に物体43が存在することを算出する。次に、物体検知部28は、車速センサ22が検出した車両2の走行速度に基づいて、算出した物体43の位置(実線で示す)に対して超音波のドップラーシフトの補正処理を実行し、図10に破線で示す位置に物体43が存在すると推定する。これにより、ドップラーシフトの補正処理を実行する前には第1のスピーカ25,31よりも第2のスピーカ25,32に距離が近い位置に算出されていた物体43が、実際には第2のスピーカ25,32よりも第1のスピーカ25,31に距離が近い位置に存在することが推定され、出力制御部29が第1のスピーカ25,31により可聴音波を出力させる。
【0064】
以下、図11に示すフローチャートに従って、本実施形態のコントローラ27が実行する処理を説明する。本処理は、車両2が走行状態のときに所定時間毎(例えば200msec毎)に実行する。
【0065】
まず、ステップS11では、出力制御部29は、操舵角センサ23が検出したステアリングホイールの回転方向と回転角とに基づいて、ステアリングホイールが左方向へ所定角度以上回転されているか否かを判定し、ステアリングホイールが左方向へ所定角度以上回転されていないときには(ステップS11:NO)、本処理を終了し、ステアリングホイールが左方向へ所定角度以上回転されているときには(ステップS11:YES)、ステップS12へ移行してスピーカ25から超音波を出力し(ステップS12)、ステップS13へ移行する。次に、ステップS13では、物体検知部28は、スピーカ25から超音波が出力されてから第3の所定の時間が経過したか否かを判定し、第3の所定の時間が経過していないときには(ステップS13:NO)ステップS13の判定を繰り返し実行し、第3の所定の時間が経過しているときには(ステップS13:YES)、ステップS14へ移行する。ステップS14では、物体検知部28は、受信部26が反射波を受信しているか否かを判定し、受信部26が反射波を受信していないときには(ステップS14:NO)、本処理を終了し、受信部26が反射波を受信しているときには(ステップS14:YES)、ステップS15へ移行する。ステップS15では、物体検知部28は、スピーカ25が超音波を出力してから2つの受信部26が反射波を受信するまでのそれぞれの時間に基づいて、2つの受信部26から物体までのそれぞれの距離を、車両2に対する物体の相対速度を無視して演算し、ステップS16へ移行する。ステップS16では、物体検知部28は、ステップS15で算出した距離に基づいて、物体の位置を、車両2に対する物体の相対速度を無視して演算し、ステップS17へ移行する。次に、ステップS17では、物体検知部28は、車速センサ22が検出した車両2の走行速度に基づいて、ステップS16で算出した物体の位置に対して超音波のドップラーシフトの補正処理を実行し、物体の位置を推定してステップS18へ移行する。ステップS18では、物体検知部28は、ステップS17で推定した物体の位置が、車両2の外部の所定範囲に含まれているか否かを判定し、物体の位置が所定範囲に含まれていないときには(ステップS18:NO)、車両2が巻き込むおそれがある物体が存在しないと認識して本処理を終了し、物体の位置が所定範囲に含まれている場合には(ステップS18:YES)、車両2が巻き込むおそれがある物体が存在すると認識して、ステップS19へ移行する。ステップS19では、出力制御部29は、2つのスピーカ25のうち物体に近い方のスピーカ25を選択し、選択したスピーカ25から可聴音波を出力させて(ステップS20)、本処理を終了する。
【0066】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
【0067】
本実施形態では、スピーカ25を2つ設けたが、これに限らず、1つ或いは3つ以上設けてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、受信部26を2つ設けたが、これに限らず、3つ以上設けてもよい。図12に、スピーカ25を2つ設けて受信部26を3つ設けた例を示す。例えば、2つのスピーカ25からそれぞれ、40kHzの超音波と80kHzの超音波を出力させる。かかる複数の超音波の出力周波数は、スピーカ25から出力した超音波と反射波とがドップラーシフトによって異なる周波数になっても、いずれのスピーカ25から出力した超音波の反射波であるかを識別可能な程度に離間した周波数が設定される。
【0069】
また、本実施形態では、2つのスピーカ25は、水平方向に離間して配置されるが、これに限らず、垂直方向に離間して配置したり、斜め方向に離間して配置してもよい。例えば垂直方向に2つのスピーカ25を離間して配置することにより、車両2の外部の上下方向に異なる2つの領域に対して出力制御部29が選択的に可聴音波をスピーカ25から出力させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、2つの受信部26は、車体2に水平方向に離間して配置されるが、これに限らず、垂直方向に離間して配置したり、斜め方向に離間して配置してもよい。例えば垂直方向に2つのスピーカ25を離間して配置することにより、物体の上下方向の位置を物体検知部28が正確に算出することができる。
【0071】
また、本実施形態では、車両2の外部の異なる複数の領域に対して選択的に可聴音波を出力するために、車体に対して固定された2つのスピーカ25の一方を選択的に使用するが、これに限らず、車両2の外部の異なる複数の領域に対して可聴音波を出力する位置や角度を設定可能なスピーカを設けてもよい。具体的には、例えば、可聴音波を出力する位置を複数の領域に対して設定可能にする構成として、車体の側部に前後方向に延びたレールを固定し、レールに沿って水平方向に移動可能なスピーカを設け、スピーカをレールに沿って水平方向に移動させる駆動部及び駆動制御部を設けてもよい。また、可聴音波を出力する角度を複数の領域に対して設定可能にする構成として、可聴音波を出力する水平方向の角度を設定可能なスピーカを設け、スピーカの角度を変更させる駆動部及び駆動制御部を設けてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、スピーカ25及び受信部26を車体の左側部に配置したが、これに限らず、車体の他の部分に配置してもよい。例えば、車体の右側部に配置してもよく、車体の後部に配置してもよい。スピーカ25及び受信部26を車体の右側部に配置するときには、車両2が右に旋回するときに、車両2の外部右側の所定範囲の物体の有無を検知して、物体が存在するときにスピーカ25により「車が右へ曲がります」などと案内する音声を出力させてもよい。また、スピーカ25及び受信部26を車体の後部に配置するときには、車両2がバックするとき(ギアがRに設定されたとき)に、車両2の外部後部の所定範囲の物体の有無を検知して、物体が存在するときにスピーカ25により「車がバックします」などと案内する音声を出力させてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、本発明に係る音波出力手段としてスピーカ25を配置したがこれに限らず、例えば、パラメトリックスピーカを、フェイズドアレイ状に並べて配置してもよい。フェイズドアレイ状に水平方向に並べて配置されたパラメトリックスピーカでは、超音波を発振する超音波発振部の組み合わせによって所定の領域に対して可聴音波を出力する。例えば、車両2の外部のそれぞれ異なる領域に対して、可聴音波を出力する複数のパラメトリックスピーカを水平方向に並べて配置する。また、複数の超音波発振部を一つのパラメトリックスピーカの組として配置するのではなく、複数の角度に向けられた複数の超音波発振部が車体に固定され、車両2の外部のどの領域に可聴音波を出力するかに応じて、必要な角度に向けられた超音波発振部の組み合わせが適宜選択されてパラメトリックスピーカとして所定の変調及び位相の制御がされて可聴音波を出力する構成であってもよい。すなわち、それぞれ異なる領域に向けて可聴音波を出力する複数のパラメトリックスピーカに一つの超音波発振部が共通に使用される構成であってもよい。このように、スピーカに代えてフェイズドアレイ状に配置されたパラメトリックスピーカを使用することにより、複数の領域のうち一つの領域へ選択的に指向性の高い可聴音を出力させることができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、一つの物体で超音波が反射したときに、その超音波の反射波を離間した2点で受信し、2点から一つの物体までのそれぞれの距離を検出することによって、物体が存在する位置を推定することができる。具体的には、受信部26が反射波を受信する点を、水平方向に離間した2点に設定しているため、水平方向において物体が存在する位置を推定することができる。
【0075】
また、物体検知部28が物体の位置を推定するため、所定範囲を予め詳細に設定することができる。
【0076】
また、所定範囲に物体が存在する場合に、その物体の推定された位置に応じて、2つのスピーカ25のうち、物体検知部28が推定した物体の位置が近い一方のスピーカ25を選択して可聴音波を出力させる。これにより、検知した物体に向けて可聴音波を確実に報知することができる。
【0077】
従って、所定範囲に存在する物体に対して、可聴音波が反射波ではなく直接波として物体へ伝播するため、所定範囲に人間が存在するときには、その人間は、明瞭な可聴音波を聞くことができ、可聴音波の報知が自分に対するものであると早期に認識することができる。
【0078】
また、所定範囲に物体が存在する場合であっても、2つの領域のうち一方の領域へ可聴音波が出力されるため、可聴音波が出力されない他方の領域への音量を抑えることができる。従って、車両2と接触するおそれのない人間への騒音被害を抑えることができる。
【0079】
また、所定範囲に物体が存在しないときは、可聴音波を出力しないため、車両2の周囲への騒音を抑えることができる。すなわち、車両2が左折する状態のときに、車両2が移動すると車両2と接触してしまうおそれのある位置に物体が存在するか否かにかかわらず、かかる状態であることを示す音声を報知する場合には、車両2の周辺の住民などへの騒音被害が増大してしまう。この点に関して、本実施形態の車両用警報装置20を備えることによって、車両2が左折する状態において、車両2の周囲の所定範囲に物体が存在する場合にのみ可聴音波を出力し、車両2の周囲の所定範囲に物体が存在しないときには可聴音波を出力しないことによって、車両2の周辺の住民などへの騒音被害を抑えることができる。
【0080】
また、車両2の走行速度に基づいて超音波のドップラーシフトの補正処理がされるため、車両2が移動することによって車両2に対して物体が相対的に移動していても、物体の存在する領域に対して最適なスピーカ25から可聴音波を出力することができる。
【0081】
また、第2の実施形態の車両用警報装置20は、第1の実施形態の車両用警報装置10の上記効果と同様の効果を得ることができる。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0083】
1,2:車両
10,20:車両用警報装置
12,25:スピーカ(音波出力手段)
13,26:受信部(受信手段)
15,28:物体検知部(物体検知手段)
16,29:出力制御部(出力制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部へ超音波と可聴音波とを出力可能な音波出力手段と、
前記音波出力手段が出力した超音波の反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した反射波に基づいて前記車両の周囲の所定範囲の物体を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段が物体を検知したときに、前記音波出力手段から可聴音波を出力させる出力制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用警報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用警報装置であって、
前記受信手段は、離間した2点で反射波をそれぞれ受信し、
前記物体検知手段は、前記受信手段が前記2点で反射波をそれぞれ受信した時間に基づいて前記所定範囲の物体の位置を推定する
ことを特徴とする車両用警報装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用警報装置であって、
前記音波出力手段は、前記車両の外部の異なる2つの領域に対して選択的に可聴音波を出力可能であり、
前記出力制御手段は、前記物体検知手段が推定した物体の位置に応じて、前記音波出力手段が可聴音波を出力する領域を前記2つの領域のうち一方の領域に設定する
ことを特徴とする車両用警報装置。
【請求項1】
車両の外部へ超音波と可聴音波とを出力可能な音波出力手段と、
前記音波出力手段が出力した超音波の反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した反射波に基づいて前記車両の周囲の所定範囲の物体を検知する物体検知手段と、
前記物体検知手段が物体を検知したときに、前記音波出力手段から可聴音波を出力させる出力制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用警報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用警報装置であって、
前記受信手段は、離間した2点で反射波をそれぞれ受信し、
前記物体検知手段は、前記受信手段が前記2点で反射波をそれぞれ受信した時間に基づいて前記所定範囲の物体の位置を推定する
ことを特徴とする車両用警報装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用警報装置であって、
前記音波出力手段は、前記車両の外部の異なる2つの領域に対して選択的に可聴音波を出力可能であり、
前記出力制御手段は、前記物体検知手段が推定した物体の位置に応じて、前記音波出力手段が可聴音波を出力する領域を前記2つの領域のうち一方の領域に設定する
ことを特徴とする車両用警報装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−106860(P2011−106860A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259800(P2009−259800)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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