説明

車両用防犯装置

【課題】従来よりも信頼性を向上し得る車両用防犯装置を提供する。
【解決手段】車両用防犯装置1では、盗難者による盗難行為によって生じる無線信号の受信状態の変化を基に、車体に異常が発生したか否かを判別できるとともに、異常判別モード時にユーザが車両を運転するために鍵4を通常通り持ち出すだけで、自動的に異常判別モードを解除できるので、ユーザが車両を運転する際に異常判別モードが維持されてしまうことを回避でき、かくして従来よりも信頼性を向上し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用防犯装置に関し、例えば自動二輪車や自動車等の車両を駐車している際に用いられる車両用防犯装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に使用されている車両用防犯装置としては、車両の複数方向における加速度を検出する加速度検出手段と、この加速度検出手段により検出される加速度に基づいて、車両の盗難に伴う異常の有無を判定する判定手段とを備えた車両盗難防止装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、その他の車両用防犯装置としては、屋外に駐車した車両と、屋外機の超音波センサとの距離を記憶しておき、車両と超音波センサとの距離が変わると、駐車中の車両が盗難者によって移動され盗難行為に伴う異常が発生したと判断し、室内にいるユーザに異常を通知する車両用防犯装置が考えられている(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3622723号
【特許文献2】特許第4531464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の車両盗難防止装置では、盗難者によってスピーカ自体が破壊されたり、或いはスピーカに接続された配線が切断されてしまうと、盗難時にスピーカから警告音を発することができず、屋内にいるユーザに対しても異常を通知することができず、信頼性が低いという問題があった。
【0006】
また、後者の車両用防犯装置では、屋内に設置した屋内機の異常検出モードを終了させずに、ユーザが車両を所定の駐車位置から移動させると、正規のユーザが車両を移動させているにもかかわらず、屋内機が車両に盗難行為が発生したと認識してしまい、警報用ブザが鳴動されてしまうことから、この点において信頼性が低いという問題があった。また、この車両用防犯装置では、装置間の通信が双方向通信なので電波法上、屋内機に付属したアンテナで充分な性能が得られない場合、アンテナを備えた屋外機が更に必要である。
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたもので、従来よりも信頼性を向上し得る車両用防犯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明において、請求項1記載の発明では、所定位置に駐車される車両に設置され周期的に無線信号を発信する送信機と、所定の屋内に設置され、前記送信機からの前記無線信号の受信状態の変化を基に、前記車体に異常が発生したか否かを判別する受信機とを備え、前記受信機は、前記車両のエンジンを始動させるための鍵が、該受信機から所定距離範囲内に存在するか否かを検知する検知手段を有し、前記無線信号を受信するとともに、前記検知手段により前記鍵を検知すると、前記車体に異常が発生したか否かを判別する異常判別モードとなり、前記異常判別モード時に前記検知手段により前記鍵を検知しなくなると、前記異常判別モードを解除することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明では、前記送信機は、前記車両の電源が入れられエンジンが始動可能になると、前記無線信号を停止することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の発明では、前記受信機は、前記検知手段により前記鍵を検知しなくなったときから前記異常判別モードを解除するまでの時間を設定可能であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4記載の発明では、前記受信機は、前記送信機から前記無線信号を受信し始めた際に、前記検知手段により前記鍵を検知しなくても、所定時間経過後に前記異常判別モードへ移行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、盗難者による盗難行為によって生じる無線信号の受信状態の変化を基に、前記車体に異常が発生したか否かを判別できるとともに、異常判別モード時にユーザが車両を運転するために鍵を通常通り持ち出すだけで、自動的に異常判別モードを解除できるので、ユーザが車両を運転する際に異常判別モードが維持されてしまうことを回避でき、かくして従来よりも信頼性を向上し得る。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、車両運転時にユーザに対して無線信号の発信の停止操作を別途行わせる手間を省かせ、使い勝手を向上し得る。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、ユーザが鍵を検知手段から所定距離以内に離したときから車両の駐車位置まで移動する間、異常判別モードを維持し得、その間に行われる盗難行為を判別することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、ユーザが車両を駐車した後に何らかの原因により、検知手段の所定距離範囲内に鍵を持っていけない理由が生じた場合でも、自動的に異常判別モードとなり、盗難行為による異常が車両に発生したか否かを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の車両用防犯装置の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面に基づいて、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0018】
図1において、1は本発明による車両用防犯装置を示し、図示しない車両に装着される送信機2と、例えば自宅屋内に設置され、送信機2から所定間隔で発信される無線信号を受信する受信機3とから構成されており、送信機2から受信機3に片方向通信が行われ得る。
【0019】
実際上、送信機2は、車両の車載バッテリー5に接続された電源部6を有し、電源部6のバッテリーに充電された電力によって駆動し得るようになされている。電源部6は、演算部7及び増幅回路部(AMP)8に接続されており、これら演算部7及びAMP8に電力を供給し得るように構成されている。因みに、この実施の形態の場合においては、電源部6のバッテリーに充電した電力により送信機2を動作させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電源部6を設けることなく、例えば車両の車載バッテリー5や車両ACCから演算部7及びAMP8に直接電力を供給し、送信機2を動作させるようにしてもよい。
【0020】
送信機2は、所定の駐車位置にて、例えばメインスイッチに差し込まれON位置にある鍵4がOFF位置まで回転されエンジンが停止されると、これにより生じる車両電装品への12ボルトの電源供給の停止を検知し、無線信号を自動的に発信し得るようになされている。実際上、送信機2は、演算部7が車両の電気回路に接続されており、当該電気回路から電気信号を受け取っているか否かに基づいて、エンジンが停止されたか否かを判断し得るようになされている。
【0021】
演算部7は、電気回路から供給されていた電気信号が停止されると、エンジンが停止され車両が駐車状態になったと判断し、所定の周期(例えば1秒周期)で所定周波数の無線信号を生成して、これをAMP8に送出し得る。AMP8は、演算部7から受け取った無線信号を増幅した後、これをフィルムアンテナ9に送出し、当該フィルムアンテナ9を介してこの無線信号を発信させ得る。
【0022】
実際上、この実施の形態の場合、送信機2は、例えば無線信号を周囲約10〜15m程度まで送信し得るようになされており、車両の所有者であるユーザが自宅から所定距離離れた駐車位置に車両を駐車させると、自宅屋内に設置した受信機3まで無線信号を到達させ得るようになされている。
【0023】
因みに、演算部7は、駐車してある車両のエンジンが鍵4により始動可能にされると、車両の電気回路から供給される電気信号に基づいて、エンジンが始動可能であることを認識し得、これにより無線信号の生成を停止し得るようになされている。
【0024】
ここで、受信機3は、送信機2が装着された車両が自宅屋外の所定位置に駐車されると、送信機2から発信された無線信号を受信し得るようになされている。ここで、受信部3は、オンオフスイッチ11を備えており、例えばユーザが自宅屋外の駐車場に駐車した車両を監視したいとき、オンオフスイッチ11がオフからオンに切り換えられ、オンオフスイッチ11から電源部12にオン操作命令が送出され得る。これにより、電源部12は、家庭用電源(AC100V)から電力を受け取り、AMP13,14、演算部15及び鍵検知部16にそれぞれ電力を供給し得るようになされている。
【0025】
受信機3は、電源部12から演算部15に電力が供給されると、アンテナ18を介して送信機2からの無線信号を待ち受けるようになされている。これによりアンテナ18は、送信機2から発信された無線信号を受信すると、当該無線信号をAMP14に送出して増幅させた後、これを演算部15に送出させ得る。演算部15は、無線信号を受け取ると、共通鍵方式等の暗号化アルゴリズム方式の復号化情報をメモリ19から読み出し、当該復号化情報を基に無線信号を復号化し、受信機3に予め登録した送信機2から発信された無線信号であることを認識し得るようになされている。
【0026】
かかる構成に加えて、この受信機3は、車両のエンジンの始動に用いる鍵4を挿入可能な鍵検知部16を備えており、ユーザが自宅にいる際に鍵4を鍵検知部16に挿入することで鍵4を管理し得るようになされている。
【0027】
この実施の形態の場合、鍵検知部16は、鍵4の先端部の形状に合わせて形成された穴を有しており、当該鍵4の先端部を穴に差し込み可能に構成されている。またこれに加えて、鍵検知部16は、穴の内部にスイッチを有し、当該穴に鍵4が差し込まれた際に、穴内部のスイッチが鍵4に押されてスイッチが切り替わり、スイッチの切り換え動作により検知信号を生成し、これを演算部15に送出し得るようになされている。
【0028】
また、この鍵検知部16は、穴に差し込まれている鍵4が抜かれると、鍵4で押されていたスイッチが付勢力で元の位置に戻り、検知信号の生成を停止し、当該検知信号の演算部16への送出が中止され得る。
【0029】
ここで、演算部15は、AMP14から無線信号を受け取り始めた際、当該無線信号を最初に受け取り始めたときから所定の時間(以下、これを待ち受け時間と呼ぶ)が経過するまでの間、鍵検知部16からの検知信号を待ち受けており、鍵検知部16から検知信号を受け取ると、盗難者による盗難行為に伴う異常が車両に発生したか否かを判別する異常判別モードとなり得る。一方、演算部15は、AMP14から無線信号を受け取り始めたときから待ち受け時間が経過しても鍵検知部16から検知信号を受け取らない場合、自動的に異常判別モードとなり得る。
【0030】
演算部15は、異常判別モード時、所定間隔で無線信号をAMP14から受け取っており、この際、所定時間の間(例えば10秒間、以下、これを異常判別時間と呼ぶ)、AMP14から無線信号を受け取らない状態が発生したか否かを判断し得るようになされている。その結果、演算部15は、今までAMP14から所定間隔で受け取っていた無線信号が、異常判別時間を経過してもAMP14から受け渡されないと、報知出力信号を生成し、これをAMP13に送出し得る。報知出力信号は、AMP13にて増幅された後、スピーカ20に送出され報知音としてスピーカ20から放音され得る。
【0031】
すなわち、受信機3は、異常判別時間の間に演算部15がAMP14から無線信号を受け取らないとき、自宅屋外の駐車場に駐車した車両が盗難者によって所定距離まで移動されたり、盗難するために車両電源が入れられたり、或いは送信機2が破壊されたりして、送信機2からの無線信号を受信し得なくなったと判断し、スピーカ20から所定の報知音を放音し、盗難者による盗難行為が車両に対して行われた可能性があることをユーザに対し通知し得るようになされている。
【0032】
一方、この演算部15は、異常判別モード時、鍵検知部16から鍵4が抜かれることにより、当該鍵検知部16からの検知信号が途絶えると、当該検知信号が途絶えたときから所定の時間(以下、これを解除時間と呼ぶ)が経過した後に異常判別モードを解除し得るようになされている。すなわち、この場合、受信機3は、屋外に駐車していた車両を運転するために、ユーザ自身により鍵4が鍵検知部16から抜かれたと判断し、異常判別モードを解除し得る。
【0033】
因みに、この実施の形態の場合、受信機3は、無線信号の受信感度の調整を行える設定部21が演算部15に接続されており、演算部15において無線信号の受信感度を設定部21により調整し得るようになされている。例えば、設定部21は、演算部15の無線信号の受信感度を強めることで、一段と遠くに位置した送信機2からの無線信号でも受信し易くなり、監視すべき車両の駐車範囲を広げることができる。一方、設定部21は、演算部15の無線信号の受信感度を弱めることで、近くに位置した送信機2からの無線信号だけ受信し得るようになり、監視すべき車両の駐車範囲を狭めることができる。
【0034】
また、この設定部21は、上述した待ち受け時間と、異常判別時間と、解除時間とをそれぞれ変更し得るようになされており、使用状況に応じて受信機3の設定を調整し得るようになされている。
【0035】
因みに、車両の車載バッテリー5における電圧低下や、電源部6自体のバッテリーの電圧低下は、送信機2から発信される無線信号の電圧低下にも繋がり、その結果、当該送信機2から無線信号が到達する距離が変化してしまう虞もあり、この場合、送信機2と受信機3との距離が誤検知される虞もある。
【0036】
そこで、送信機2は、車両の車載バッテリー5における電圧値を電源部6によって検知するとともに、電源部6自体のバッテリーの電圧値を検知しており、これら車載バッテリー5及び電源部6のバッテリーの各電圧値が所定の基準値以下になると、車載バッテリーや電源部6のバッテリーの電圧低下により能力が低下していることを知らせる送信信号を演算部7で生成し、これをAMP8で増幅した後フィルムアンテナ9を介して受信機3に送信するようなされている。
【0037】
これにより受信機3は、アンテナ18により送信信号を受信すると、当該送信信号をAMP14を介して演算部15に送出し、これに応じて演算部15においてバッテリー低下通知信号を生成して、これをAMP13を介してスピーカ20に送出し得る。これにより、スピーカ20は、バッテリー低下通知信号に基づき通知音を放音し、当該通知音を介して車両の車載バッテリーや、送信機2における電源部6のバッテリーの電圧が低下していることをユーザに対して知らせることができる。
【0038】
また、この場合には、車両の車載バッテリー5の電圧値や、電源部6自体のバッテリーの電圧値に応じて変化した無線信号の強弱に合わせて、受信機3における演算部15での無線信号の受信感度を設定部21により調整することもできる。
【0039】
以上の構成において、ユーザが車両用防犯装置1を使用する際には、監視すべき車両の所定位置に送信機2を装着するとともに、車両の駐車場から所定距離にある例えばユーザの自宅屋内に受信機3を設置する。この状態において、受信機3のオンオフスイッチ11をオフからオンに切り換えることにより受信機3を待機状態にしておく。この待機状態において、監視すべき車両のエンジンが停止されて駐車されると、送信機2は所定周波数の無線信号を所定周期で発信する。
【0040】
この際、受信機3は、監視すべき車両が例えば自宅から所定範囲内にて駐車されると、当該車両に装着された送信機2からの無線信号を、アンテナ18を介して受信する。次いで、受信機3は、このように送信機2からの無線信号を受信している状態において、鍵検知部16に車両の鍵4が差し込まれ、当該鍵検知部16にて鍵4を検知したか否かを判断する。その結果、受信機3は、鍵検知部16にて鍵4を検知すると、盗難者による盗難行為により車両に異常が発生したか否かを判別する異常判別モードとなる。
【0041】
受信機3では、異常判別モード時、盗難者による盗難行為により、車両が駐車位置から移動され受信機3から所定距離以上離されたり、盗難するために車両電源が入れられたり、或いは送信機2が破壊されたりすると、送信機2からの無線信号が途絶える。これにより受信機3は、報知動作を開始してスピーカ20から報知音を放音する。かくして、受信機3では、スピーカ20から報知音を放音することによりユーザに対して監視すべき車両が盗難者によって盗難行為にあったことを知らせることができ、その結果ユーザは例えば警察への通報等、盗難行為にあった車両を取り戻すような行動を取り得る。
【0042】
一方、受信機3では、異常判別モード時、鍵検知部16から鍵4が抜かれると、鍵検知部16からの検知信号が途絶え、これにより異常判別モードが解除される。これにより受信機3では、車両が受信機3から所定距離以上離れ、送信機2からの無線信号が途絶えても、報知動作を開始せずスピーカ20から報知音を放音しない。
【0043】
かくして、車両用防犯装置1では、受信機3の異常判別モードを解除するためのスイッチ操作等の煩雑な操作を別途行うことなく、ユーザが車両を運転するために鍵4を鍵検知部16から単に引き抜くだけで、自動的に異常判別モードを解除できるので、ユーザが車両を運転する際に誤って異常判別モードが維持されてしまうことを回避できる。
【0044】
また、送信機2では、ユーザが鍵4により車両の電源を入れ、エンジンが始動可能になると、無線信号を停止するようにしたことにより、車両運転時にユーザに対して無線信号の発信の停止操作を別途行わせる手間を省かせ、使い勝手を向上し得る。
【0045】
さらに、受信機3では、異常判別モード時に、鍵検知部16により鍵4を検知しなくなったときから異常判別モードを解除するまでの解除時間を設定可能な構成としたことにより、ユーザが鍵4を鍵検知部16から抜いたときから車両の駐車位置まで移動する間、異常判別モードを維持し得、その間に行われる盗難行為を判別することができる。
【0046】
さらに、受信機3では、送信機2から無線信号を受信し始めた際に、鍵検知部16により鍵4を検知しなくても、当該無線信号を受信し始めてから所定の待ち受け時間経過後に異常判別モードへ移行するようにしたことにより、ユーザが車両を駐車した後に何らかの原因により受信機3の鍵検知部16に鍵4を差し込めない理由が生じた場合でも、自動的に異常判別モードとなり、盗難者による盗難行為により車両に異常が生じたか否かを判別することができる。
【0047】
そして、この車両用防犯装置1では、送信機2から受信機3に片方向通信が行われていることから、双方向通信では電波法上容易に行い難い外部アンテナの接続が、屋外機なしでも受信機3に直接容易に行え、かくして受信機3の使用環境に応じて外部アンテナを別途設置して無線信号の受信感度を調整し得る。
【0048】
また、受信機3では、送信機2からの無線信号の一時的な遮断ではなく、異常判別時間の間に送信機2からの無線信号を受信しないとき、車両に異常が発生したと判別するようにしたことにより、例えば障害物による無線信号の一時的な遮断等、継続的に無線信号が遮断されない盗難行為以外の状態が生じても、この状態を盗難者による盗難行為であると誤って判断してしまうことを回避できる。
【0049】
以上の構成によれば、所定位置に駐車される車両に設置され周期的に無線信号を発信する送信機2と、所定の屋内に設置され、送信機2からの無線信号の受信状態の変化を基に、車体に異常が発生したか否かを判別する異常判別モードを有する受信機3とを備え、受信機3は、無線信号を受信し始めた後に、鍵検知部16により鍵4を検知すると、異常判別モードとなり、異常判別モード時に鍵検知部16により鍵4を検知しなくなると、異常判別モードを解除するようにした。
【0050】
これにより、車両用防犯装置1では、盗難者による盗難行為によって生じる無線信号の受信状態の変化を基に、車体に異常が発生したか否かを判別できるとともに、異常判別モード時にユーザが車両を運転するために鍵4を通常通り持ち出すだけで、自動的に異常判別モードを解除できるので、ユーザが車両を運転する際に異常判別モードが維持されてしまうことを回避でき、かくして従来よりも信頼性を向上し得る。
【0051】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施の形態においては、送信機からの無線信号の受信状態の変化を基に、車体に異常が発生したか否かを判別する受信機として、送信機2からの無線信号を受信しているか否かを基に、車体に異常が発生したか否かを判別する受信機3を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、送信機2からの無線信号の電圧レベルの変化を基に、車体に異常が発生したか否かを判別する受信機3を適用してもよい。
【0052】
この場合、受信機3は、設定部21によって演算部15に基準電圧が設定されており、当該演算部15における無線信号の電圧レベルが基準電圧よりも低くなると、盗難行為により車体に異常が発生したと判別する。具体的に、車両に装着された送信機2から発信される無線信号は、盗難者の盗難行為により当該車体が受信機3から遠くなるに従って、屋内の受信機3に到達する電波強度が弱くなってゆき、これに応じて受信機3の演算部15に与えられる無線信号の電圧レベルも低下してゆく。
【0053】
やがて無線信号の電圧レベルが基準電圧より低くなるような位置まで車両が受信機3から離れると、受信機3の演算部15が報知動作を開始して報知信号をAMP13に供給し、これによりAMP13で増幅された報知信号が報知音としてスピーカ20から放音する。かくして、スピーカ20は報知音を放音することによりユーザに対して監視すべき車両が盗難者より盗難行為にあっていることを知らせることができる。
【0054】
また、上述した実施の形態においては、前記車両のエンジンを始動させるための鍵が、該受信機から所定距離範囲内に存在するか否かを検知する検知手段として、車両の鍵4自体が穴に差し込まれているか否かを基に、鍵4が受信機3から所定距離範囲内に存在するか否かを検知する鍵検知部16を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば車両の鍵4に取り付けたキーホルダーが穴に差し込まれているか否かを基に、鍵4が受信機3から所定距離範囲内に存在するか否かを検知する検知手段や、車両の鍵4に取り付けたリモコンとの間で無線通信が行われているか否かを基に、鍵4が受信機3から所定距離範囲内に存在するか否かを検知する検知手段等その他種々の検知手段を適用してもよい。
【0055】
さらに、上述した実施の形態においては、1つの送信機2が受信機3に対して無線信号を発信する車両用防犯装置1を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、複数の送信機が受信機3に対して無線信号を発信する車両用防犯装置を適用してもよい。この場合、車両用防犯装置では、複数の車両にそれぞれ送信機を装着して、これら複数の車両を受信機3にて監視することができる。
【0056】
実際上、この場合、車両用防犯装置では、送信機毎に異なる暗号の無線信号を用い、これら複数の無線信号の受信状態の変化を基に、各送信機が装着された車体に異常が発生したか否かを受信機3にて判別し得る。また、受信機は、これら車両毎にそれぞれの鍵を差し込み可能な複数の穴を有しており、上述した実施の形態と同様にして鍵検知部によって各鍵を管理し得るようになされている。
【0057】
かくして、受信機は、送信機毎にそれぞれ無線信号を受信するとともに、鍵検知部により各送信機に対応させた鍵を検知すると、送信機毎に車体に異常が発生したか否かを判別する異常判別モードとなり、異常判別モード時に鍵検知部により鍵毎にそれぞれ鍵を検知しなくなると、当該鍵に対応した異常判別モードだけを解除する。
【0058】
また、上述した実施の形態においては、スピーカ20を受信機3に設け、盗難者による盗難行為により車両に異常が発生したとき、当該スピーカ20から報知音を放音し、ユーザに対して盗難行為があったことを知らせるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ネットワークや電話回線に接続した通信手段を受信機3に設け、盗難者による盗難行為により車両に異常が発生したとき、当該通信手段からネットワークや電話回線を経由して、ユーザ所有の携帯電話機等の端末装置に、電子メールや音声案内等の各種手段により盗難行為があったことを知らせるようにしてもよい。
【0059】
さらに、上述した実施の形態においては、メインスイッチに差し込まれON位置にある鍵4がOFF位置まで回転されエンジンが停止されると、これにより生じる車両電装品への電源供給の停止を送信機2において検知し、当該送信機2から無線信号を自動的に発信するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、メインスイッチに差し込まれON位置にある鍵4がACC位置まで回転されてエンジンが停止されたり、或いはメインスイッチから鍵4が抜かれると、これを送信機2において検知し、当該送信機2から無線信号を自動的に発信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 車両用防犯装置
2 送信機
3 受信機
16 鍵検知部(検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に駐車される車両に設置され周期的に無線信号を発信する送信機と、
所定の屋内に設置され、前記送信機からの前記無線信号の受信状態の変化を基に、前記車体に異常が発生したか否かを判別する受信機とを備え、
前記受信機は、
前記車両のエンジンを始動させるための鍵が、該受信機から所定距離範囲内に存在するか否かを検知する検知手段を有し、
前記無線信号を受信するとともに、前記検知手段により前記鍵を検知すると、前記車体に異常が発生したか否かを判別する異常判別モードとなり、前記異常判別モード時に前記検知手段により前記鍵を検知しなくなると、前記異常判別モードを解除する
ことを特徴とする車両用防犯装置。
【請求項2】
前記送信機は、前記車両の電源が入れられエンジンが始動可能になると、前記無線信号を停止する
ことを特徴とする請求項1記載の車両用防犯装置。
【請求項3】
前記受信機は、前記検知手段により前記鍵を検知しなくなったときから前記異常判別モードを解除するまでの時間を設定可能である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用防犯装置。
【請求項4】
前記受信機は、前記送信機から前記無線信号を受信し始めた際に、前記検知手段により前記鍵を検知しなくても、所定時間経過後に前記異常判別モードへ移行する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の車両用防犯装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−203526(P2012−203526A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65819(P2011−65819)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)
【Fターム(参考)】