説明

車両空調ユニットの配設構造

【課題】車室内スペースが狭められる等の問題を生じることなく、ダッシュパネルの後方側に空調ユニットを適正に配設してその空調性能を充分に発揮させるとともに、車体の後方側に位置させて操縦安定性等を向上する。
【解決手段】エンジンルーム1と車室2とを車両の前後方向に区画するダッシュパネル3には、パワートレインユニットの一部が配設されるように車体の後方側へ凹設された中央凹部5と、その左右両端部から車幅方向外方側に延びる左右一対のダッシュ側部20,21とが形成されるとともに、両ダッシュ側部20,21の何れか一方の後方側部位に配設されたエア分配ユニット26を備えた空調ユニット22が配設され、かつ上記エア分配ユニット22に基端部が接続されて運転席用のエア吹出部27にエアを案内する運転席側空調用ダクト32と、助手席用のエア吹出部28にエアを案内する助手席側空調用ダクト33との管長が略等しく設定された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームと車室とがダッシュパネルにより車両の前後方向に区画されるとともに、車輪を駆動するパワートレインユニットを備えた車両における車両空調ユニットの配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1〜3に示されるように、車室と、その前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、上記エンジンルーム内にエンジン本体およびトランスミッション等からなるパワートレインユニットが配設された車両において、上記ダッシュパネルの車幅方向中央部に、その両側部よりも車両の後方側に向けて凹入する凹部を設け、この凹部内にエンジン本体の後部およびトランスミッション等を配設することにより、上記パワートレインユニットを車体の後方側に位置させることが行われている。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【特許文献2】特開2005−028911号公報
【特許文献3】特開2005−029057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1〜3に開示された発明では、ダッシュパネルの車幅方向中央部に形成された凹部内に上記パワートレインユニットを配設して、車両の重心を車体の中心部寄りに位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができるとともに、エンジンルーム内の有効スペースを効果的に拡大できるという利点がある。
【0004】
しかし、上記のように車両の後方側に向けて凹入する凹部をダッシュパネルの車幅方向中央部に設けた場合には、このダッシュパネルに沿ってその車室内側に設置される空調ユニットの設置スペースを確保することが困難であり、上記凹部の車室内側(後方側)に空調ユニットが設置されることに起因して車室内スペースが狭められ、あるいは所望の空調性能を有する空調ユニットを設置することができない等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車室内スペースが狭められる等の問題を生じることなく、ダッシュパネルの後方側に空調ユニットを適正に配設してその空調性能を充分に発揮させるとともに、パワートレインユニットを車体の後方側に位置させて操縦安定性および走行安定性を向上させることができる車両空調ユニットの配設構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、エンジンルームと車室とがダッシュパネルにより車両の前後方向に区画されるとともに、車輪を駆動するパワートレインユニットを備えた車両において、上記ダッシュパネルには、上記パワートレインユニットの一部が配設されるように車体の後方側へ凹設された中央凹部と、その左右両端部から車幅方向外方側に延びる左右一対のダッシュ側部とが形成されるとともに、両ダッシュ側部の何れか一方の後方側部位に配設されたエア分配ユニットを備えた空調ユニットが配設され、かつ上記エア分配ユニットに基端部が接続されて運転席用のエア吹出部にエアを案内する運転席側空調用ダクトと、助手席用のエア吹出部にエアを案内する助手席側空調用ダクトとの管長が略等しく設定されたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両空調ユニットの配設構造において、上記空調ユニットが、ブロアユニットと熱交換ユニットとを有し、このブロアユニットおよび熱交換ユニットの車幅方向内方側に上記エア分配ユニットが配設されるとともに、このエア分配ユニットの車幅方向内方側壁面に上記運転席側空調用ダクトおよび助手席側空調用ダクトの基端部が接続されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両空調ユニットの配設構造において、上記エア分配ユニットに接続された運転席側空調用ダクトの下方に、助手席側調用ユニットの基端部が接続されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の車両空調ユニットの配設構造において、上記エア分配ユニットが上下方向に縦長状態で延びるように設置されるとともに、上記エア分配ユニットに接続された上記運転席側空調用ダクトの上方に、フロントウインドに向けて開口するディフロスタ用のエア吹出部にエアを案内するディフロスタ側空調用ダクトが接続されたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両空調ユニットの配設構造において、上記両ダッシュ側部の一方が他方よりも車体の前方側にオフセットして配設され、この車体の前方側にオフセットされたダッシュ側部の後方側部位に空調ユニットが配設されたものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両空調ユニットの配設構造において、車室内の前部には運転席と助手席とが並設され、助手席の前方に位置するダッシュ側部が運転席の前方に位置するダッシュ側部よりも車両の前方側に位置するようにオフセットして配設されたものである。
【0012】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両空調ユニットの配設構造において、上記パワートレインが、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後部に接続されたトランスミッションとを有し、当該エンジン本体の後部とトランスミッションとが上記中央凹部内に配設されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、パワートレインユニットをダッシュパネルの中央凹部内に配設することにより、重量物である上記パワートレインユニットを可及的に車両の後方側に位置させることができるため、車両の重心を車体の中心部に近付けることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性および走行安定性を向上させることができる。そして、上記中央凹部の左右両端部から車幅方向外方側に延びる両ダッシュ側部の何れか一方の後方側部位に、エア分配ユニットを備えた空調ユニットを配設し、かつこのエア分配ユニットに基端部が接続されて運転席用のエア吹出部にエアを案内する運転席側空調用ダクトと、助手席用のエア吹出部にエアを案内する助手席側空調用ダクトとの管長を略等しく設定したため、上記ダッシュパネルに沿って車幅方向に延びるように空調ユニットを設置した場合のように、上記中央凹部の後方側に配設されたエア分配ユニット等が車室内側に大きく突出するという事態が生じるのを防止することにより、車室内のスペースが狭められることを抑制しつつ、上記ダッシュ側部の後方空間部を有効に利用して空調ユニットを効率よく配設できるとともに、上記運転席側空調用ダクトおよび助手席側空調用ダクトを通過するエアの通気抵抗を均一化して運転席および助手席に対するエアの配風性能を効果的に向上できるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明では、上記ダッシュ側部の後方側部位に空調ユニットのブロアユニットと熱交換ユニットとを配設し、かつその車幅方向内方側に上記エア分配ユニットを配設するとともに、このエア分配ユニットの車幅方向内方側壁面に上記運転席側空調用ダクトおよび助手席側空調用ダクトの基端部を接続した構造としたため、これらの各ユニットをコンパクト化して限られたスペース内に配設できるとともに、上記熱交換ユニットにおいて熱交換されたエアを車幅方向の中央部側に案内した後、上記エア分配ユニットから上記運転席側空調用ダクトおよび助手席側空調用ダクトを介して車室内の全体に亘り効率よくエアを供給できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、上記エア分配ユニットに接続された運転席側空調用ダクトの下方に、助手席側調用ユニットの基端部を接続したため、簡単な構成で上記運転席側空調用ダクトおよび助手席側空調用ダクトの管長を略等しく設定することにより、上記運転席および助手席に対するエアの配風性能を効果的に向上させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、上記エア分配ユニットを上下方向に縦長状態で延びるように設置するとともに、このエア分配ユニットに接続された上記運転席側空調用ダクトの上方に、フロントウインドに向けて開口するディフロスタ用のエア吹出部にエアを案内するディフロスタ側空調用ダクトを接続したため、上記ダッシュ側部の何れか一方の後方側部位において縦長状態で設置された上記エア分配ユニットに各空調用ダクトを適正状態でコンパクトに配列できるという利点がある。
【0017】
請求項5に係る発明では、上記両ダッシュ側部の一方が他方よりも車体の前方側にオフセットして配設され、この車体の前方側にオフセットされることによりダッシュ側部の後方側部位に形成された広い空間部内に上記空調ユニットを配設したため、この後方空間部を有効に利用することにより、車室内のスペースが狭められることを、より効果的に抑制しつつ、上記空調用ユニットを、さらに効率よく配設できるという利点がある。
【0018】
請求項6に係る発明では、車室内の前方部に運転席と助手席とが並設された車両において、助手席の前方に位置するダッシュ側部を運転席の前方に位置するダッシュ側部よりも車両の前方側にオフセットさせるとともに、上記助手席の前方に位置するダッシュ側部の後方側に空調ユニットを配設したため、運転席の前方に位置するダッシュ側部を車両の前方側にオフセットさせてその後方側に空調ユニットを配設した場合のように、運転席側に設置されるステアリングシャフト、ブレーキペダルやアクセルペダル等に干渉するという事態を生じることなく、上記空調ユニットを容易かつ適正にレイアウトできるという利点がある。
【0019】
請求項7に係る発明では、エンジンルーム内において縦置き式に配設された重量物であるエンジン本体およびトランスミッションを有するパワートレインを可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1および図2は、本発明に係る車両空調ユニットの配設構造の第1実施形態を示している。上記車両には、エンジンルーム1と車室2とを区画するダッシュパネル3が設けられるとともに、このダッシュパネル3の下端部にフロアパネル4の前端部が接続されている。上記ダッシュパネル3の車幅方向中央部には、車体の後方側に向けて凹入する中央凹部5が形成されるとともに、上記フロアパネル4の車幅方向中央部には、上方に向けて膨出するトンネル部6が形成され、かつ上記車室2の前方部には、運転席7および助手席8が左右に併設されている。
【0021】
上記エンジンルーム1内には、左右一対のフロントサイドフレーム9,9が車体の前後方向に延びるように配設されるとともに、その前端部に支持されたバンパレインフォースメント10が車幅方向に延びるように設置されている。また、上記エンジンルーム1の後方部には、縦置き式に配設されたロータリエンジンからなるエンジン本体12と、その後部に接続されたトランスミッション13とを有するパワートレインユニット11が配設されている。
【0022】
上記エンジン本体12の後部およびトランスミッション13の前部が、ダッシュパネル3に形成された中央凹部5内に配設されるとともに、上記トランスミッション13の後部と、これに接続されたプロペラシャフト14とが上記トンネル部6内に配設されている。そして、上記パワートレインユニット11の駆動力がプロペラシャフト14を介して後部車輪15,15に伝達されることにより、この後部車輪15,15が駆動されるように構成されている。また、上記パワートレインユニット11の前方部には、後述する空調ユニット22の冷媒から熱を奪って冷媒を液化するコンデンサ16と、このコンデンサ16に冷却エアを送風する冷却ファン17と、パワーステアリング用のパワーシリンダ18とが配設されている。なお、図2において、符号19は、図示を省略したサスペンションアーム等を支持する前部車輪用のサスペンションクロスメンバである。
【0023】
上記ダッシュパネル3は、中央凹部5の左右両端部から車幅方向の外方側に延びる左右一対のダッシュ側部20,21を有し、両ダッシュ側部20,21の一方、つまり上記助手席8の前方に位置する右側のダッシュ側部21が、上記運転席7の前方側に位置する他方(左側)のダッシュ側部20よりも車両の前方側にオフセットして配設されている。この助手席8の前方側に位置する一方のダッシュ側部21を車両の前方側にオフセットさせることにより、その後方側部位、つまり上記ダッシュ側部21と、その車室内側(後方側)に位置するインストルメントパネルとの間に形成された空間部内には、空調ユニット22が配設されている。
【0024】
上記空調ユニット22は、図3〜図7に示すように、エア導入部23からエアを吸引して送風するブロアユニット24と、このブロアユニット24により送風されたエアとの間で熱交換を行ってエアの温度を調節する熱交換ユニット25と、この熱交換ユニット25の下流側に配設されたエア分配ユニット26とを有している。
【0025】
上記エア分配ユニット26には、フロントウインド29に向けて開口するディフロスタ用のエア吹出部30と、運転席7に対向するように設置された左右一対の運転席用のエア吹出部27,27と、助手席8に対向するように設置された左右一対の助手席用のエア吹出部28,28とにそれぞれエアを案内する第1〜第3空調用ダクト31〜33の基端部が接続されている。なお、これらの空調用ダクト31〜33に加えて、図外の後部座席に着座した乗員に向けて空調用エアを供給する後席乗員用ダクトの基端部を上記エア分配ユニット26に接続した構造としてもよい。
【0026】
上記エア導入部23は、内外気切換用のダンパ34を有し、このダンパ34が、実線で示す外気導入位置と、仮想線で示す内気導入位置とに変位可能に支持されている。また、上記ブロアユニット24は、エア導入部23の底部に臨むように設置されたブロア本体35と、このブロア本体35のファンを回転駆動するブロアモータ36とを備えている。そして、上記ブロア本体35のファンをブロアモータ36により回転駆動してエア導入部23内のエアを吸引し、上記熱交換ユニット25の設置部に送風するように構成されている。
【0027】
上記熱交換ユニット25は、ブロアユニット24により送風されたエアと冷媒との間で熱交換することにより、エアの熱を奪って温度を低下させるクーラのエバポレータ37と、このエバポレータ37の設置部を通過したエアを、エンジンの冷却水等が有する熱によって加熱するヒータコア38と、このヒータコア38の設置部に供給されるエア量を調節するエアミックスダンパ39とを有している。また、上記熱交換ユニット25が、図3に示すように、平面視でブロアユニット24の後方側に配設されることにより、これらのブロアユニット24と熱交換ユニット25とが車両の前後方向に並べて設置されている。
【0028】
上記熱交換ユニット25は、エアミックスダンパ39を揺動変位させてヒータコア38の設置部に供給されるエア量を変化させることにより、上記エア分配ユニット26に供給されるエアの温度を調整するように構成されている。具体的には、図外の駆動手段を介して上記エアミックスダンパ39を揺動変位させることにより、ヒータコア38に対するエアの供給を完全に遮断した状態とすれば、エア温度が最も低い冷房状態となり、逆に、上記ヒータコア38に供給されるエア量を最大値とすれば、エア温度が最も高い暖房状態となり、図3の実線で示す中間位置では、温風と冷風とがミックスされた中間温度状態が得られるようになっている。
【0029】
上記エア分配ユニット26は、ブロアユニット24および熱交換ユニット25の設置部よりも車幅方向の内方側(中央部側)に配設されるとともに、上下方向に縦長状態で延びるように設置されたエア分配ボックス40を有し、このエア分配ボックス40の車幅方向外側に位置する外側壁面に上記熱交換ユニット25が接続されている。また、上記エア分配ボックス40の車幅方向内側に位置する内側壁面には、上記第1〜第3空調用ダクト31〜33の基端部が上下に配列された状態で接続されている。そして、上記各空調用ダクト31〜33の接続部には、開閉ダンパ42〜44が設置され、これらの開閉ダンパ42〜44の揺動変位に応じて上記各空調用ダクト31〜33のエア供給口が開閉されることにより、各空調用ダクト31〜33に分配されるエアの供給量が調節されるようになっている。
【0030】
上記第2空調用ダクト32からなる運転席側空調用ダクトは、エア分配ボックス40の内側壁面から運転席側(左側)に向けて水平に延びる第1エア供給部45と、その側端部から上方に延びる第2エア供給部46と、その上端部から運転席側(左側)に延びるエア案内部47とを有し、このエア案内部47の左右両端部にそれぞれ運転席用のエア吹出部27が設けられている。
【0031】
また、上記第3空調用ダクト33からなる助手席側空調用ダクトは、エア分配ボックス40の内側壁面から運転席側(左側)に向けて略水平に延びる第1エア供給部48と、その先端部から上方側に向けて第2エア供給部49と、その上端部から助手席側(右側)に延びるエア案内部50とを有し、このエア案内部50の左右両端部にそれぞれ助手席用のエア吹出部28が設けられている。
【0032】
上記第2空調用ダクト32の第1エア供給部45および第2エア供給46の全長と、第3空調用ダクト33の第1エア供給部48および第2エア供給部49の全長とが略等しい長さに形成されるとともに、上記第2空調用ダクト32のエア案内部47と、第3空調用ダクト33のエア案内部50とが略等しい長さに形成されることにより、両空調用ダクト32,33の管長、つまり第2空調用ダクト32の中心線長さAと、第3空調用ダクト33の中心線長さBとが略等しく設定されている。
【0033】
上記のようにエンジンルーム1と車室2とがダッシュパネル3により車両の前後方向に区画されるとともに、車輪15を駆動するパワートレインユニット11を備えた車両において、上記ダッシュパネル3に、パワートレインユニット11の一部が配設されるように車体の後方側に向けて凹設された中央凹部5と、その左右両端部から車幅方向の外方側に延びる左右一対のダッシュ側部20,21とを形成するとともに、両ダッシュ側部20,21の何れか一方の後方側部位に、エア分配ユニット26を備えた空調ユニット22を配設し、かつ上記エア分配ユニット26に基端部が接続されて運転席用のエア吹出部27にエアを案内する第2空調用ダクト32からなる運転席側空調用ダクトと、助手席用のエア吹出部28にエアを案内する第3空調用ダクト33からなる助手席側空調用ダクトとの管長A,Bを略等しく設定したため、車室内スペースが狭められる等の問題を生じることなく、ダッシュパネル3の後方側に空調ユニット22を適正に配設できるとともに、パワートレインユニット11を車体の後方側に位置させて操縦安定性および走行安定性を向上できるという利点がある。
【0034】
すなわち、上記パワートレインユニット11を構成するエンジン本体12の後部およびトランスミッション13の前部等を上記ダッシュパネル3の中央凹部5内に配設することにより、エンジンルーム1内に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を有するパワートレインユニット11を、可及的に車両の後方側に位置させることができるため、車両の重心を車体の中心部に近付けることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性および走行安定性を向上させることができる。
【0035】
そして、上記のように両ダッシュ側部20,21の何れか一方の後方側部位に、エア分配ユニット26を備えた空調ユニット22を配設し、かつ上記エア分配ユニット26に基端部が接続されて運転席用のエア吹出部27にエアを案内する第2空調用ダクト32からなる運転席側空調用ダクトと、助手席用のエア吹出部28にエアを案内する第3空調用ダクト33からなる助手席側空調用ダクトとの管長A,Bを略等しく設定したため、上記ダッシュパネル3に沿って車幅方向に延びるように空調ユニット22を設置した場合のように、上記中央凹部5の後方側に配設されたエア分配ユニット26等が車室内側に大きく突出するという事態が生じるのを防止することにより、車室2内のスペースが狭められることを抑制しつつ、上記ダッシュ側部21の後方空間部を有効に利用して空調ユニット22を効率よく配設できるとともに、上記運転席側空調用ダクトおよび助手席側空調用ダクトを通過するエアの通気抵抗を均一化して運転席7および助手席8に対するエアの配風性能を効果的に向上できるという利点がある。
【0036】
また、上記のように両ダッシュ側部20,21の何れか一方、例えば助手席8の前方に位置するダッシュ側部21の後方側部位に空調ユニット22のブロアユニット24と熱交換ユニット25とを配設し、かつその車幅方向内方側に上記エア分配ユニット26を配設するとともに、このエア分配ユニット26の車幅方向内方側壁面に上記第2空調用ダクト32からなる運転席側空調用ダクトの基端部と、第3空調用ダクト33からなる助手席側空調用ダクトの基端部とを接続した構造とした場合には、これらの各ユニット24〜26をコンパクト化して限られたスペース内に配設できるとともに、上記熱交換ユニット25において熱交換されたエアを車幅方向の中央部側に案内した後、上記エア分配ユニット26から第2空調用ダクト32および第3空調用ダクト33を介して車室内の全体に亘り効率よくエアを供給できるという利点がある。
【0037】
さらに、上記実施形態では、エア分配ユニット26の上下方向中央部に第2空調用ダクト(運転席側空調用ダクト)32を接続するとともに、その下方に上記第3空調用ダクト(助手席側調用ユニット)33を接続するように構成したため、簡単な構成で上記第2空調用ダクト32管長Aと第3空調用ダクト33の管長Bとを略等しく設定し、上記運転席7および助手席8に対するエアの配風性能を効果的に向上させることができる。
【0038】
すなわち、助手席側に配設された上記エア分配ユニット26の設置部から離れた位置にある運転席7にエアを供給する上記第2空調用ダクト32の車幅方向に延びる第1エア供給部45は、上記エア分配ユニット26の設置部に近接した位置にある助手席8にエアを供給する上記第3空調用ダクト33の第1エア供給部48よりも長くなる傾向にあるため、これに対応して上記第2空調用ダクト32の上下方向に延びる第2エア供給部46が、第3空調用ダクト33の第2エア供給部49よりも短くなるように、上記エア分配ユニット26に対する第2空調用ダクト32の接続位置を第3空調用ダクト33の接続位置よりも上方に設定している。これにより、簡単な構成で上記第2空調用ダクト32の第1,第2エア供給部45,46の全長と、上記第3空調用ダクト33の第1,第2エア供給部48,49の全長とを略等しくして、上記第2空調用ダクト32と第3空調用ダクト33との間に管長差が生じるのを防止できるという利点がある。
【0039】
上記第1実施形態に示すようにエア分配ユニット26が上下方向に縦長状態で延びるように設置された車両において、上記エア分配ユニット26に接続された上記運転席側空調用ダクト(第2空調用ダクト32)の上方に、フロントウインド29に向けて開口するディフロスタ用のエア吹出部30にエアを案内する第1空調用ダクト31からなるディフロスタ側空調用ダクトを接続した構造とした場合には、上記ダッシュ側部21の後方側部位において縦長状態で設置された上記エア分配ユニット26のエア分配ボックス40に各空調用ダクト31〜33を適正状態でコンパクトに配列することができる。
【0040】
また、上記第1実施形態に示すように、中央凹部5の左右両端部から車幅方向の外方側に延びるように形成された両ダッシュ側部20,21の何れか一方の後方空間部内に上記空調ユニット22のブロアユニット24と熱交換ユニット25とを車両の前後方向に並べて設置した場合には、車幅方向における空調ユニット22の設置スペースを効果的にコンパクト化することができるため、上記ダッシュ側部21等の後方空間部を、より効果的に利用して空調ユニット22を効率よく配設できるとともに、空調ユニット22を適正に作動させることができる等の利点がある。
【0041】
さらに、上記第1実施形態に示すように、一方のダッシュ側部21の後方に空調ユニット22のブロアユニット24を配設するとともに、その後方側に熱交換ユニット25を配設した場合には、車体の前方部から車室内に導入されるエアの流れに沿って上記ブロアユニット24から熱交換ユニット25にエアをスムーズに流通させることができるとともに、上記熱交換ユニット25における熱交換を効率よく行うことができ、かつブロアユニット24、熱交換ユニット25およびエア分配ユニット26をコンパクト化した状態で、ダッシュ側部21等の後方側部位に形成された空間部に適正に配設できるという利点がある。
【0042】
また、上記のようにダッシュパネル3に形成された中央凹部5の左右両端部から車幅方向の外方側に延びるように構成された両ダッシュ側部20,21の一方を他方よりも車両の前方側にオフセットして配設し、これに応じてスペース的に余裕が生じた一方のダッシュ側部21の後方空間部内に上記空調ユニット22のエア分配ユニット26を縦置き状態で配設した場合には、上記後方空間部を有効に利用することができるため、車室2内のスペースが狭められることを、さらに効果的に抑制できるという利点がある。
【0043】
特に、上記第1実施形態では、車室内の前方部には運転席7と助手席8とが並設された車両において、助手席8の前方に位置するダッシュ側部21を運転席7の前方に位置するダッシュ側部20よりも車両の前方側にオフセットさせるとともに、このダッシュ側部21の後方側に空調ユニット22を配設したため、運転席7の前方に位置するダッシュ側部20を車両の前方側にオフセットさせてその後方側に空調ユニット22を配設した場合のように、上記運転席側に設置されるステアリングシャフト、ブレーキペダルやアクセルペダル等に干渉するという事態を生じることなく、上記空調ユニット22を容易かつ適正にレイアウトできるという利点がある。
【0044】
また、上記第1実施形態では、エンジンルーム内において縦置き式に配設される重量物であるエンジン本体12およびトランスミッション13を、上記中央凹部5内に配設して可及的に車両の後方側に位置させるように構成したため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。
【0045】
なお、ロータリエンジンからなるエンジン本体12をエンジンルーム1内に配設した上記実施形態に代え、レシプロエンジンを備えた車両においても本発明を適用可能である。しかし、上記ロータリエンジンは、レシプロエンジンに比べて小型に形成することができるため、このロータリエンジンからなるエンジン本体12の配設部となる上記中央凹部5の幅寸法等が極端に大きくなるのを防止しつつ、その側方部に形成された空間部を有効に利用して上記空調ユニット22を適正に配設できるという利点がある。
【0046】
図8は、車両の前方側にオフセットさせた一方のダッシュ側部21等の後方に、エバポレータ37とヒータコア38とを有する熱交換ユニット25を配設するとともに、その後方側にブロアユニット24を配設した本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態の構成によれば、上記熱交換ユニット25を車室2内の座席位置から離れた位置に配設することにより、上記熱交換ユニット25において発生する熱の影響が上記助手席8等に着座した乗員に及ぶのを効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る車両空調ユニットの配設構造の第1実施形態を示す平面断面図である。
【図2】上記前部車体構造の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図3】空調ユニットの具体的構成を示す平面断面図である。
【図4】ブロアユニットの具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】空調ユニットの具体的構成を示す平面図である。
【図6】空調ユニットの具体的構成を示す背面断面図である。
【図7】空調ユニットの具体的構成を示す側面図である。
【図8】上記前部車体構造の第2実施形態を示す図3相当図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車室
2 エンジンルーム
3 ダッシュパネル
5 中央凹部
7 運転席
8 助手席
11 パワートレインユニット
12 エンジン本体
13 トランスミッション
20,21 ダッシュ側部
22 空調ユニット
24 ブロアユニット
25 熱交換ユニット
26 エア分配ユニット
27 運転席用のエア吹出部
28 助手席用のエア吹出部
29 フロントウインド
30 ディフロスタ用のエア吹出部
31 第1空調用ダクト(ディフロスタ側空調用ダクト)
32 第2空調用ダクト(運転席側空調用ダクト)
33 第3空調用ダクト(助手側空調用ダクト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームと車室とがダッシュパネルにより車両の前後方向に区画されるとともに、車輪を駆動するパワートレインユニットを備えた車両において、上記ダッシュパネルには、上記パワートレインユニットの一部が配設されるように車体の後方側へ凹設された中央凹部と、その左右両端部から車幅方向外方側に延びる左右一対のダッシュ側部とが形成されるとともに、両ダッシュ側部の何れか一方の後方側部位に配設されたエア分配ユニットを備えた空調ユニットが配設され、かつ上記エア分配ユニットに基端部が接続されて運転席用のエア吹出部にエアを案内する運転席側空調用ダクトと、助手席用のエア吹出部にエアを案内する助手席側空調用ダクトとの管長が略等しく設定されたことを特徴とする車両空調ユニットの配設構造。
【請求項2】
上記空調ユニットは、ブロアユニットと熱交換ユニットとを有し、このブロアユニットおよび熱交換ユニットの車幅方向内方側に上記エア分配ユニットが配設されるとともに、このエア分配ユニットの車幅方向内方側壁面に上記運転席側空調用ダクトおよび助手席側空調用ダクトの基端部が接続されたことを特徴とする請求項1に記載の車両空調ユニットの配設構造。
【請求項3】
上記エア分配ユニットに接続された運転席側空調用ダクトの下方に、助手席側調用ユニットの基端部が接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両空調ユニットの配設構造。
【請求項4】
上記エア分配ユニットが上下方向に縦長状態で延びるように設置されるとともに、上記エア分配ユニットに接続された上記運転席側空調用ダクトの上方に、フロントウインドに向けて開口するディフロスタ用のエア吹出部にエアを案内するディフロスタ側空調用ダクトが接続されたことを特徴とする請求項3に記載の車両空調ユニットの配設構造。
【請求項5】
上記両ダッシュ側部の一方が他方よりも車体の前方側にオフセットして配設され、この車体の前方側にオフセットされたダッシュ側部の後方側部位に上記エア分配ユニットが配設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両空調ユニットの配設構造。
【請求項6】
助手席の前方に位置するダッシュ側部が運転席の前方に位置するダッシュ側部よりも車両の前方側に位置するようにオフセットして配設されたことを特徴とする請求項4に記載の車両空調ユニットの配設構造。
【請求項7】
上記パワートレインは、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後部に接続されたトランスミッションとを有し、当該エンジン本体の後部とトランスミッションとが上記中央凹部内に配設されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両空調ユニットの配設構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−292280(P2009−292280A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147250(P2008−147250)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】