説明

車両管理方法

【課題】車両の入出庫管理において、DSRC無線機の設置台数を削減してDSRCシステムの導入コストを抑制するとともに、入庫用路と出庫用路とを別々設けず車庫スペースを効率的に活用できる。車両管理方法を提供する。
【解決手段】管理PC19に接続される路側DSRC無線機6をタクシー車両2が通過する際、当該路側DSRC無線機6と、前記タクシー車両2に搭載される車載DSRC無線機11と、が通信を行って、前記タクシー車両2の入出庫状態を管理する車両管理方法であって、前記タクシー車両2に付設された入庫ボタン15が押下された場合にのみ、前記タクシー車両2の入庫処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタクシー車両などの車両が車庫の出入口に配置される路側DSRC(Dedicated Short Range Communication;専用狭域通信)無線機を通過する際、当該路側DSRC無線機と車両に搭載される車載DSRC無線機とが通信を行って、前記車両の入出庫状態を管理する車両管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばタクシー会社において、1営業毎の賃走時間や運賃などから構成される営業データをタクシー車両から取り込んで事務所システムで管理するため、DSRCシステムが用いられている。このDSRCシステムでは、タクシー車両内、および事務所の車庫(例えば、車庫の入庫路、出庫路)などにそれぞれDSRC無線機を配置する。これにより、タクシー車両の1日の業務終了時、即ち入庫時に当該DSRC無線機の通信エリアを通過した際、その日の営業データを事務所システム側に無線送信するので、営業データが格納されている記録媒体等を事務所へ持ち帰る必要がなく、運転手の労力削減とともに事務所の管理効率化を図ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなタクシー会社に装備されたDSRCシステムでは、入庫時に営業データを取得するために入庫用路と出庫用路とを分けた上でそれぞれにDSRC無線機を配置して、車両の入庫処理と出庫処理とを物理的に区別している。
【0004】
さらに、駐車場料金課金システムにおいても、上記特許文献1と同様にDSRCシステムを用いて、駐車場において入庫用路と出庫用路とをそれぞれ設けて、入庫用路側DSRC無線機から送信された入庫情報と、出庫用路側DSRC無線機から送信された出庫情報と管理するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2)
【0005】
【特許文献1】特開2006−92232号公報
【特許文献2】特開2003−150989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1、2ではDSRCシステムを採用するに際し、入出庫を管理するため車庫または駐車場に少なくとも2機のDSRC無線機を付設する必要があり、コストアップにつながっていた。また、入庫用路、出庫用路を別々に設ける必要があるためスペースの効率化を図ることができなかった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の入出庫管理において、DSRC無線機の設置台数を抑制して入庫用路と出庫用路とを別々設ける必要がなくDSRC無線機の配置数を抑制して、導入コストを抑制するとともに車庫スペースを効率的に活用できる車両管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係る車両管理方法は、以下(1)、(2)を特徴としている。
(1) 管理演算器に接続される路側DSRC無線機を車両が通過する際、当該路側DSRC無線機と、前記車両に搭載される車載DSRC無線機と、が通信を行って、前記車両の入出庫状態を管理する車両管理方法において、前記車両に付設された報知手段が作動された場合にのみ、前記車両の入庫処理または出庫処理のいずれかを実施することを特徴としている。
(2) 上記(1)の車両管理方法において、前記報知手段の作動状態を示すデータを、前記車載車載DSRC無線機から前記路側DSRC無線機に送信し、前記報知手段が作動された場合に、入庫要求または出庫要求のデータを、前記車載DSRC無線機から路側DSRC無線機に送信することによって、前記車両の入庫処理または出庫処理のいずれかを実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の入出庫管理において、DSRC無線機の設置台数を削減してDSRCシステムの導入コストおよびメンテナンスの労力を抑制するとともに、入庫用路と出庫用路とを別々設ける必要がなく、車庫スペースを効率的に活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る複数の好適な実施形態について図を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について、図1〜図6に従って説明する。図1〜図6は本発明に係る車両管理方法の実施形態を示すもので、図1は本発明に係る車両管理方法の一実施形態のシステム全体の構成を示すブロック図、図2は図1の車両管理方法における路側DSRC無線機周りの側面図、図3は図1の車両管理方法に用いる入庫ボタン状態データを説明するための表、図4は図1の車両管理方法に用いる入出庫管理情報表、図5は図1の車両管理方法の制御動作を説明するフローチャート、図6は図1の車両管理方法に用いる別の変形例の入出庫管理情報表である。
【0012】
図1および図2に示されるように、本発明の実施形態に係る車両管理方法を用いた車両管理装置1は、タクシー車両2に搭載されているDSRC車載機3と、同じくタクシー車両2に搭載されている運行記録装置4と、タクシー会社の事務所7内に設置されている事務所システム8と、から構成されている。また、入出庫路には図示しない入出庫ゲートが設けられており、車両管理装置1の命令により当該入出庫ゲートが昇降することによってタクシー車両2の通過を許可している。
【0013】
DSRC車載器3は、車載DSRC無線機11と、CPU(中央処理装置)12と、メモリ13と、I/F(インターフェース回路)14と、を備えており、CPU12には入庫ボタンが電気的に接続されている。
【0014】
CPU12は、タクシー車両2の運転手が入庫時、車両管理装置1に対して入庫を要求するための入庫ボタン(報知手段)15が接続されており、車載DSRC無線機に関する制御他、速度センサ15とタイマ16とから出力される信号の処理を実施する。メモリ13は、ROMまたはRAMなど記憶媒体装置により構成され、車載DSRC無線機11、入庫ボタン15に関するアプリケーションプログラムの他に、車載器固有IDを記録保持している。また、運行記録装置4から送信されてくる営業データを一時的に格納する機能も有する。
なお、メモリ13は、EEPROM(Electrically Erasable and Program)も含んで、電源供給が停止されてもデータをバックアップして保持可能な構成となっている。営業データとは、運行記録装置4で生成される、1営業毎に賃走時間や運賃等から構成されるデータである。
【0015】
入庫ボタン15は、例えば接触形式が常開形である単純なスイッチ回路で構成されてタクシー車両2の車室内に付設されている。タクシー車両2の乗務員は、車庫にタクシー車両2を入庫したい際、この入庫ボタンを押下することにより、車両管理装置1に対し入庫要求を請求する。そして、この入庫ボタン15の押下の結果は、図示しないデジタルI/Oボードを介して、メモリ13に入庫ボタン状態データとして前記車載器固有IDに付随された形で保存される(図3参照)。
【0016】
運行記録装置4は、I/F(インターフェース回路)16と、CPU(中央処理装置)17と、メモリ18とを備えている。CPU17は、主に営業データの収集に係る処理を実施する。メモリ18は、収集された営業データを記録しており、RAM、ROMなどの記憶媒体装置で構成される。
【0017】
DSRC車載器3のI/F14と運行記録装置4のI/F16との間は、所定の有線である通信用電気ケーブルを介して相互の接続されている。このため、DSRC車載器3のCPU12と運行記録装置4のCPU17とは前記通信用電気ケーブルを介して通信可能である。したがって、運行記憶装置4において記録された営業データは一時的にメモリ18に格納された後、運行記録装置4のCPU17の命令によりI/F16を介してDSRC車載器3に転送される。DSRC車載器3では転送された営業データをCPU12の命令に基づきDSRC車載器3のメモリ13に格納し、事務所システム8との通信時に伝送する。なお、前記通信用電気ケーブルにおける通信としては、営業データなど容量の大きいデータを伝送する必要があるため、シリアル通信が好適である。
【0018】
事務所システム8は、事務所7内の車庫の入出庫路に固定設置されている路側DSRC無線機6と、データベースを有して営業データとともにタクシー車両の入出庫状態を管理する管理PC(パーソナルコンピュータ)19とから構成される。管理PC19は、例えばデスクトップ型の汎用コンピュータであり、運用管理ソフトが実装されて、車載DSRC車載器11から伝送されてくる、例えば1日分の営業データなどを、路側DSRC無線機6を通じて受信して、タクシー乗務員の業務管理等に用いる。また、管理PC19は、データベース内に入庫管理情報として、図4に示すように入庫状態にあるタクシー車両のリストデータを有している。
なお、路側DSRC無線機6は送受信される信号を適宜処理するため制御部を有している。
【0019】
車載DSRC無線機11と路側DSRC無線機6とは、ごく狭い範囲(例えば10mm程度)内で例えば5.8GHzの電波を使用して通信し合うためのDSRC無線機である。したがって、入出庫路に配置固定された路側DSRC無線機6の近傍をタクシー車両が通過することで、路側DSRC無線機6と車載DSRC無線機11とが通信可能状態となる。即ち、タクシー車両2が入出庫路に固定設置された路側DSRC無線機6の通信エリア内に入ることで、前記車載DSRC無線機11と前記路側DSRC無線機6とが相互に検知し合って通信可能状態となる。
【0020】
ここで、DSRC車載器のCPU12は、この通信可能状態時に、メモリ内に格納された車載固有IDとともに当該車載固有IDに付随された入庫ボタン状態データを参照する。この車載固有IDと入庫ボタン状態データは、後述するタクシー車両2の入出庫状態の管理に用いられる。
【0021】
次に、この通信可能状態時におけるタクシー車両2の入出庫状態の判定動作の流れについて図5に示したフローチャートに従ってさらに詳しく説明する。
【0022】
タクシー車両2の乗務員が、車庫に入庫したい場合には、入出庫路を通過する前にDSRC車載器3にて入庫ボタン15を押下して入庫要求を行う(即ち、S101の入庫、S102)。この入庫ボタン15押下の結果に基づき、DSRC車載器3のCPU12は入庫要求が有ったとして、メモリ13内に格納されている入庫ボタン状態データを入庫として変更記録する(即ち、S103)。乗務員は入出庫路にタクシー車両2を進めて、当該入出庫路に固定配置された路側DSRC無線機11の通信エリアに進入する(即ち、S104)。
一方、入庫要求がない場合、即ち出庫したい場合には、乗務員は入庫ボタンを押下せず、そのまま路側DSRC無線機11の通信エリアに進入する(即ち、S104)。
【0023】
次に、路側DSRC無線機6の通信可能エリアに進入すると、前記路側DSRC無線機6は、前記車載DSRC無線機11を検出する(即ち、S105)。これらDSRC無線機6,11が。互いに検知して通信可能状態になった後、路側DSRC無線機6は、車載DSRC無線機11を介して、車載器固有IDとともに入庫ボタン状態データ(DSRC車載器3の要求内容)を取得する(即ち、S106)。
【0024】
そして、DSRC車載器3から取得した入庫ボタン状態データが入庫要求を示しているか否かを判断する(即ち、S107)。要求がなしと判断される場合には(即ち、S107の要求=なし)、管理PC19は、データベース内に今回取得した車載器固有IDがあるかないかを判定する(即ち、S114)。管理PC19のデータベースにないときには(即ち、S114のNO)、そのまま処理を終了する。
【0025】
また、管理PC19のデータベース内に今回取得した車載器固有IDがあるときには(即ち、S114のYES)、路側DSRC無線機6は出庫処理を行い(即ちS115)、管理PC19は、データベース内の車載器IDを削除する(即ち、S116)。
【0026】
ここで、上記S107に戻って、さらに説明を続ける。
取得した入庫ボタン状態データが入庫要求を示している場合には(即ち、S107の要求=入庫)、路側DSRC無線機6は入庫処理を行い(即ちS108)、管理PC19は、データベースに車載器IDを追加する(即ち、S109)。
【0027】
上記S109および上記S116のステップの後は、路側DSRC無線機6は、車載DSRC無線機11を通じて、DSRC車載器3に入庫要求をクリア(要求=なし)するように指令を送信する(即ち、S110)。
【0028】
そして、路側DSRC無線機6は、入出庫ゲートを開放するように指示して(即ち、S111)、タクシー車両2を通過させる(即ち、S112)。タクシー車両2通過後は、入出庫ゲートが閉まっているか判定して(即ち、S113)、閉まっていなければ再度閉める動作を行い(即ち、S113のNO)、閉まっていれば処理を終了する。
【0029】
したがって、本実施形態によれば、タクシー車両に搭載された入庫ボタン15を押下した場合にのみ、前記車両の入庫処理を実施するので、1台の路側DSRC無線機でもタクシー車両の入出庫状態を管理できる。このため、タクシー車両の入出庫管理においてDSRC無線機の設置台数を削減してDSRCシステムの導入コストおよびメンテナンスの労力を抑制するとともに、入庫用路と出庫用路とを別々設ける必要がなく車庫スペースを効率的に活用できる。
【0030】
また、入庫ボタンに代えて、出庫要求時に押下する出庫ボタンを設けてもよい。この場合には、出庫ボタンを押下する場合にのみ、出庫処理を実施するように構成すればよい。
【0031】
さらに、データ容量削減のため、例えば入庫ボタン状態データにおいて、入庫要求がある場合を「1」、ない場合を「0」として対応付けると好適である。さらに、本実施形態では、管理PC19が、入庫状態にあるタクシー車両のリストデータに基いて車両管理を行っていたが、これに限らず、例えば図6に示すように一台ごとのタクシー車両の入出庫状態を車載器固有IDに各々対応付けたリストデータでもって車両管理を行ってもよい。
【0032】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば限定されない。
【0033】
また、前述した実施形態では、タクシー車両の車両管理方法を例示して説明したが、これに限らず、駐車場など車両の入出庫を管理するものであれば本発明を適用することができる。また、管理PCをパーソナルコンピュータとして例示して説明したが、これに限らず組み込みマイコンなどで構成される専用演算管理装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る車両管理方法の一実施形態のシステム全体の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の車両管理方法における路側DSRC無線機周りの側面図である。
【図3】図1の車両管理方法に用いる入庫ボタン状態データを説明するための表である。
【図4】図1の車両管理方法に用いる入出庫管理情報表である。
【図5】図1の車両管理方法の制御動作を説明するフローチャートである。
【図6】図1の車両管理方法に用いる別の変形例の入出庫管理情報表である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両管理装置
2 タクシー車両(車両)
3 DSRC車載器
4 運行記録装置
6 路側DSRC無線機
7 事務所
8 事務所システム
15 入庫ボタン(報知手段)
19 管理PC(管理演算器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理演算器に接続される路側DSRC無線機を車両が通過する際、当該路側DSRC無線機と、前記車両に搭載される車載DSRC無線機と、が通信を行って、前記車両の入出庫状態を管理する車両管理方法において、
前記車両に付設された報知手段が作動された場合にのみ、前記車両の入庫処理または出庫処理のいずれかを実施することを特徴とする車両管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両管理方法において、
前記報知手段の作動状態を示すデータを、前記車載DSRC無線機から前記路側DSRC無線機に送信し、
前記報知手段が作動された場合に、入庫要求または出庫要求のデータを、前記車載DSRC無線機から路側DSRC無線機に送信することによって、前記車両の入庫処理または出庫処理のいずれかを実施することを特徴とする車両管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−152366(P2008−152366A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337312(P2006−337312)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】