説明

車両識別システム

【課題】 改良型の車両識別システムを提供すること。
【解決手段】本発明による車両識別システムは、外部通信手段と、車両に搭載された車両側通信手段とから構成される。車両通信手段は、(a)車両の複数の位置に設置され、それぞれに識別情報(ID)が記憶されている複数の記憶装置(30、70)と、(b)一定の時間間隔ごとに複数の記憶装置に記憶されている複数の識別情報を比較し、これらの識別情報が一致する場合にのみ、この車両側通信手段と外部通信手段との間の通信を可能にし、これらの識別情報が一致しないときには、異常の発生を告知する信号を発信させる、制御手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広く、車両の識別システムに関する。更に詳しくは、車両に識別子としてICチップを取り付け、車両と外部装置との間で通信を行うことにより車両を識別するシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】有料道路や有料駐車場における料金の徴収、工場など機密を有する特定の施設に出入りする車両の監視、盗難車の発見など、多くの場合に車両の識別が必要となる。
【0003】例えば、高速道路などの有料道路を利用する車両から通行料を徴収するためには、車両が高速道路に入る地点において運転者に通行券を与え、高速道路から出る地点において通行券を回収することによって、利用区間を特定し、通行料を計算する。有料駐車場における駐車料の課金についても同様である。駐車場に入る時点で運転者に与えたチケットを駐車場を出る時に回収して駐車時間を判断し、駐車料金を計算する。
【0004】このように、高速道路や駐車場の利用料金を計算するためには、特定の時間及び場所においてある車両が存在していることが確定されなければならず、そのために、通行券やチケットを用いて車両を識別している。しかし、従来行われている、このような通行券やチケットを媒介とする方法では、特に回収と料金の計算及び精算とに時間がかかり、料金所や駐車場出口において渋滞が生じやすい。料金の支払いに、現金ではなくプリペイド・カードやクレジット・カードを利用して精算を簡略化することも行われてはいるが、係員の人手を介して個別的に処理している点では変わりなく、抜本的な改善とはいえず、依然として、合理化が求められている。
【0005】工場など、企業機密保護が考慮されなければならないにもかかわらず、性質上、多くの車両が出入りせざるを得ない場所への車両の出入りについては、許可証などを提示させるなどして、警備員による監視が行われるのが通常である。しかし、人手に頼っているのでは正確さに欠ける虞があるし、24時間体制での監視には困難が伴う。
【0006】盗難車や犯罪に関与した疑いのある車両の位置検出にも、車両の識別が必要である。例えば、盗難届の出ている車両がある時刻に特定の地点を通過したことがわかれば、その車両の発見に役に立つ。また、乗り捨てられた盗難車が発見された場合には、複数の地点での車両の識別が可能であれば、通行履歴を得ることができる。
【0007】このように、車両の正確かつ能率的な識別は、応用の範囲が広い。出願人は、これまでに、特願平9−24934(特開平10−222794)、特願平9−101131(特開平10−293898)、特願平9−164349(特開平11−16087)、特願平9−164350(特開平11−16088)などの出願において、車両に送受信機を設置し、その送受信機と通行ゲートなどに設置した外部の装置との間で通信を行うことによって、車両の通行を管理するシステムを提案してきた。
【0008】具体的には、例えば、第1の特願平9−24934では、車両に車両側通信装置を、有料道路への出入り口などのゲートにゲート側通信装置を設置し、これらの通信装置の間で通信を行って車両を識別し、それによって、通行料金の計算及び徴収を人手に頼ることなく自動的に行う車両通行管理システムが開示されている。それ以下の3件において開示されている発明は、この車両通行管理システムを基礎として修正を加えたものであり、車両側通信装置とゲート側通信装置との間で通信を行うという基本的な原理は同一である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これに対し、本発明では、「車両識別のために、車両に車両側通信装置を、有料道路への出入り口にあるゲートにゲート側通信装置を設置し、これらの通信装置の間で通信を行う」という上述のシステムの基本的な構成に改良を加えている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による車両識別システムは、外部通信手段と、車両に搭載された車両側通信手段とから構成される。そして、車両通信手段は、(a)車両の複数の位置に設置され、それぞれに識別情報が記憶されている複数の記憶装置と、(b)一定の時間間隔ごとに複数の記憶装置に記憶されている複数の識別情報を比較し、これらの識別情報が一致する場合にのみ、この車両側通信手段と外部通信手段との間の通信を可能にし、これらの識別情報が一致しないときには、異常の発生を告知する信号を発信させる、制御手段と、を備えている。
【0011】最も簡単な場合には、前後いずれか一方のナンバープレートと車両内のそれ以外の位置との2箇所に記憶装置を設ける。又は、前後のナンバープレート両方と車両内のそれ以外の位置との合計3箇所に記憶装置を設けることもできる。
【0012】また、本発明による車両識別システムにおける上述の制御手段は、車両のエンジンがオンされるたびに、第1の識別情報と第2の識別情報とを比較して、ナンバープレートの無断での交換など、異常事態が発生しているかどうかを確認する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施例を、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、本発明によるシステムの中の、車両に搭載される構成要素のブロック図である。
【0014】車両(図示せず)のナンバープレート10に、この車両を一意的に識別する識別情報(ID)が記憶されている記憶装置を含む集積回路(IC)チップ30が付着されている。ICチップ30は車両の識別子として機能するのであるから、車両とIDとの間には一対一の対応が存在していなければならず、同じIDが異なる複数の車両に割り当てられることはない。また、この記憶装置は、後からの書き込みができず記憶内容の変更もできないリードオンリメモリ(ROM)によって構成されるのが典型的である。
【0015】ICチップ30と離れた車両内の位置に、制御基板20が取り付けられており、制御基板20は、ICチップ30と電気的に結合されている。この電気的結合は、配線によるものでも無線によるものでもよい。図1に示した実施例では、無線によって通信が行われるように構成されている。制御基板20は、その内部に、送信制御部40と、受信制御部50と、比較制御部60と、記憶部70と、充電可能な電源部80と、電源制御部90とを有し、電源制御部90は、車両に搭載されている電源100からの電力供給を制御する。制御基板20は、例えば、高速道路の料金徴収所ゲートに設置された送受信装置などの外部の装置と、車両に搭載されているアンテナを介して、通信する能力を有している。なお、ICチップ30と制御基板20との間に、別の専用アンテナ(図示せず)を設置してもよい。制御基板20内の記憶部70には、ICチップ30内に記憶されているものと同じ識別情報(ID)が記憶されている。ICチップ30内の記憶装置と同様に、記憶部70もROMであり、後からの書き込みや、記憶内容の変更はできない。
【0016】ナンバープレート10に設置されたICチップと制御基板20との両者によって、上述した特願平9−24934におけるものと同様の車両側通信装置が構成され、この車両側通信装置と、有料道路の料金徴収所にあるゲートに設置されたゲート側通信装置などの外部通信装置との間で通信が行われ、車両が識別される。
【0017】本発明では、このように、車両側通信装置を2つの部分に分け、車両を一意的に識別する同一のIDが、それぞれの部分の内部にある別々の2つの記憶装置に記憶されているように構成し、これら2つの部分の間で通信を行うように制御する。これら2つの部分の間での通信の態様は、図2の流れ図に概要が示されている。図2では、左側にICチップ30の側の動作が図解され、右側に制御基板20の側の動作が図解されている。
【0018】本発明の基本動作原理は、ICチップ30に記憶されているIDと制御基板20に記憶されているIDとが一致することを確認し、これら2つのIDが一致している場合にのみ、外部の通信装置との間での通常の通信が行われ、IDが一致しない場合には、何らかの異常事態が発生したものと判断して、警告信号が送信される、というものである。
【0019】制御基板20は、車両搭載のバッテリ100に接続されており、運転者がエンジンをオンするたびに、2つのIDの一致を確認する動作を行う。図2に即して説明すると、待機状態(ステップ110)にある制御基板20では、運転者がエンジンをオンにすると、送信制御部40が、ナンバープレート10の上のICチップ30に向けてID発信指令信号を送信する(ステップ120)。ICチップ30の側では、その信号を受信し(ステップ150)、信号によって運ばれる指令に応答して、記憶しているIDを、制御基板20に向かって送信する(ステップ160)。制御基板20の側では、受信制御部50が、ICチップ30からのIDを受信し(ステップ130)、受信したIDは、比較制御部60に送られ、制御基板20自身の記憶部70に記憶されているIDと一致するかどうかが判断される(ステップ170)。2つのIDが一致することが確認されると、制御基板20は、ナンバープレートの無断変更など、違法な行為が車両に加えられていないものと判断し、外部の通信装置との間で通常の通信を開始する。しかし、ステップ170において2つのIDが一致しない場合には、何らかの異常事態が発生しているものと判断して、その旨を外部に告知する信号を連続的又は断続的に発信する(190)。制御基板20がID発信指令信号をICチップ30に向けて送信したにもかかわらずICチップ30からの応答がない場合には、やはり異常事態が発生したものと判断し、その旨を外部に告知する信号を連続的又は断続的に発信する(190)。
【0020】車両側通信装置(ICチップ30+制御基板20)と外部の通信装置(図示せず)との間の通信によって、外部の通信装置は、特定の時間に特定の場所をその車両が通過したことを確認し、記録を作成する。例えば、その地域を統括するデータベース内にこれらの記録を蓄積することによって、その車両の走行状況の記録が得られる。このような記録は、既に述べたように、有料道路や有料駐車場の利用料金の課金及び計算、盗難車の位置検出、工場に出入りする車両の管理などに利用できる。
【0021】また、IDが一致しないと判断されたり、ICチップ30が応答しない場合には、制御基板20は、異常情報信号を外部に向けて連続的又は断続的に送信する。この異常情報信号をいずれかの外部通信装置が受信すると、車両の管理を行う機関などがその車両における異常事態の発生を認識し、必要な対応策を講じる。異常情報信号を発信している車両の位置は検出できるので、どの地域においてその対応策を講じるべきかも決定可能である。
【0022】なお、制御基板20には、バックアップ用の充電可能な電源部80が搭載されている。この電源部80を用いて、車両の電源をオフにした場合でも、一定の時間間隔でIDの一致確認動作を行うように構成することもできる。
【0023】以上の説明では、識別情報が記憶されている記憶装置は、前後いずれか一方のナンバープレートに設置されたICチップ30内と制御基板20内との2箇所に設けられているものとした。しかし、セキュリティをより厳重に維持するなどの目的で、例えば、前後のナンバープレート両方に上述のICチップを設置するなど、更に多くの記憶装置を車両内の複数の位置に設け、これらの複数の記憶装置に記憶されているすべての識別情報が一致する場合にのみ、外部との通信をイネーブルするという構成も可能である。
【0024】
【発明の効果】同じIDを車両側通信装置の中の離れた少なくとも2つの記憶装置に記憶しておき、一定の時間間隔ごとにこれら少なくとも2つの記憶装置に記憶されたIDが一致することを確認する。そしてすべてのIDが一致する場合にだけ車両側通信装置と外部の通信装置との間の通信がイネーブルされる。一致しない場合には、警報信号が発信される。このように構成することにより、車両側通信装置が違法に変更された場合、特に、いずれかのIDが変更された場合には、通常の通信は行われず、従って、通常の車両識別は不可能となり、その代わりに、警報信号によって、車両の外部から車両において異常事態が発生していることが自動的に告知される。
【0025】従来技術における単純な車両側通信装置の場合とは異なり、上述したように、車両側通信装置の通信機能が一定の条件を満たした場合にのみ働くように構成することによって、車両識別システムの確実性が向上する。
【0026】車両の識別は、銀行口座からの高速道路通行料自動引き落としや犯罪捜査などを含む、非常に広い応用範囲を有している。従って、確実かつ正確な識別がなされなければ、この車両識別システムの信頼性が失われてしまう。そのためにも、車両の識別子である識別情報(ID)は厳密に保護されなければならない。その点で、本発明による車両識別システムでは、従来のシステムと比較して、IDを少なくとも2箇所に記憶しておくという簡単な構成により、効果的なID保護機構を実現している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両識別システムにおける車両側通信装置の概略である。
【図2】図1の車両側通信装置の基本動作を表す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両識別システムであって、(1)外部通信手段と、(2)前記車両に搭載された車両側通信手段であって、(a)前記車両の複数の位置に設置され、それぞれに識別情報が記憶されている複数の記憶装置と、(b)一定の時間間隔ごとに前記複数の記憶装置に記憶されている複数の識別情報を比較し、これらの識別情報が一致する場合にのみ、この車両側通信手段と前記外部通信手段との間の通信を可能にし、これらの識別情報が一致しないときには、異常の発生を告知する信号を発信させる、制御手段と、を備えている車両側通信手段と、を備えていることを特徴とする車両識別システム。
【請求項2】 請求項1記載の車両識別システムにおいて、前記複数の記憶装置として2つの記憶装置が設置されており、一方の記憶装置は、前記車両の前後のナンバープレートのいずれか一方に設置され、他方の記憶装置は、前記車両のナンバープレートとは別の位置に設置されており、前記複数の識別情報は、これら2つの記憶装置のそれぞれに記憶された2つの識別情報であることを特徴とする車両識別システム。
【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の車両識別システムにおいて、前記制御手段は、前記車両のエンジンがオンされるたびに、前記複数の識別情報を比較することを特徴とする車両識別システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−34885(P2001−34885A)
【公開日】平成13年2月9日(2001.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−204800
【出願日】平成11年7月19日(1999.7.19)
【出願人】(390033961)株式会社日本ティーエムアイ (10)
【Fターム(参考)】