説明

車両走行案内システム

【課題】 走行中の車両への的確な情報提供が行われるとともに、走行中の車両において迂回経路の算出を適切に実行することができる車両走行案内システムを提供する。
【解決手段】 基地局1では、複数の車両2から送信される車両走行情報に基づいて、所定の道路RJM上に存在する渋滞の最後尾車両位置LASTVPが推定され、その最後尾車両位置LASTVPを示す情報が走行中の車両2に送信される。システムを構成する車両2により、自車両の走行状況を示す車両走行情報が基地局1に送信されるとともに、ナビゲーション装置22による経路誘導中において、所定の道路RJMが誘導経路中に含まれるときは、基地局1から送信される最後尾車両位置LASTVPを示す情報を用いて、迂回経路の算出の要否が判定され、迂回経路の算出が必要と判定されたときは、ナビゲーション装置22に迂回経路の算出が指示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両における走行経路の選択を支援する車両走行案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行中の車両に目的地までの経路情報を提供する経路情報提供装置が示されている。この装置は、走行中の車両に経路情報を提供するルート制御サーバを有し、ルート制御サーバは、走行中の車両から自車位置情報及び目的地情報を受信するとともに、VICSセンターから渋滞情報を受信し、受信した各情報に基づいて、複数の車両の迂回経路が集中しないように経路情報を作成し、複数の車両にその経路情報を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−216176号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
VICSセンターから得られる渋滞情報は大まかなものであるため、変化する渋滞の状況が正確に反映されていないことがある。したがって、必要のない迂回経路への誘導が行われる可能性があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、目的地までの経路における渋滞状況を示すより正確な車両走行情報を収集し、走行中の車両への的確な情報提供が行われるとともに、走行中の車両において迂回経路の算出を適切に実行することができる車両走行案内システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、走行中の複数の車両(2)に搭載された送受信手段を介して前記複数の車両との間で情報通信を行う基地局(1)と、前記複数の車両(2)とによって構成される車両交通案内システムであって、前記基地局(1)は、前記複数の車両(2)から送信される各車両の走行状況を示す車両走行情報に基づいて、所定の道路(RJM)上における車両走行情報を収集する走行情報収集手段と、収集した車両走行情報に基づいて、前記所定の道路(RJM)上に存在する渋滞の最後尾車両位置(LASTVP)を推定する最後尾車両位置推定手段とを備え、推定した最後尾車両位置(LASTVP)を示す情報を前記複数の車両(2)に送信し、前記複数の車両(2)は、ナビゲーション装置(22)と、自車両の走行状況を示す車両走行情報を、前記送受信手段を介して前記基地局(1)に送信する走行情報提供手段と、前記ナビゲーション装置(22)による経路誘導中において、前記所定の道路(RJM)が誘導経路中に含まれるときは、前記基地局(1)から送信される最後尾車両位置(LASTVP)を示す情報を用いて、迂回経路の算出の要否を判定する迂回要否判定手段とを備え、該迂回要否判定手段は、前記迂回経路の算出が必要と判定したときは、前記ナビゲーション装置(22)に前記迂回経路の算出を指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、車両走行案内システムが基地局と、複数の車両とによって構成され、基地局が、複数の車両から送信される各車両の走行状況を示す車両走行情報に基づいて、所定の道路上における車両走行情報を収集し、収集した車両走行情報に基づいて、所定の道路上に存在する渋滞の最後尾車両位置を推定し、推定した最後尾車両位置を示す情報を複数の車両に送信する。一方、システムを構成する複数の車両においては、自車両の走行状況を示す走行情報が基地局に送信されるとともに、ナビゲーション装置による経路誘導中において、所定の道路が誘導経路中に含まれるときは、基地局から送信される最後尾車両位置情報を用いて、迂回経路の算出の要否が判定され、迂回経路の算出が必要と判定されたときは、ナビゲーション装置に迂回経路の算出が指示される。基地局は、複数の車両から送信される各車両の走行状況を示す車両走行情報に基づいて、所定の道路上における車両走行情報を収集するので、所定の道路における正確な車両走行情報を得て、所定の道路上に存在する渋滞の最後尾車両位置を正確に推定することができる。したがって、基地局から送信される最後尾車両位置情報を用いて、迂回経路の算出の要否を判定することにより、迂回経路の算出及び誘導を適切に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両走行案内システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す車両の通信制御ユニットで実行される走行情報送信処理のフローチャートである。
【図3】図1に示す車両の通信制御ユニットで実行される迂回要否判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる車両走行案内システムの構成を示す図であり、このシステムは、複数の車両2と、走行中の車両2との間で情報通信を行う基地局1とによって構成される。車両2は、基地局1との間で情報通信を行う通信制御ユニット21と、ナビゲーション装置22と、車両2の走行速度(車速)VPを検出する車速センサ23と、1対のカメラ(以下「ステレオカメラ」という)24とを備えている。ナビゲーション装置22は、少なくとも経路誘導機能及び迂回経路探索機能を含む周知の機能を有するものである。ナビゲーション装置22は、自車位置情報IPを示す情報、及び前方にある最も近い交差点までの距離(以下「前方交差点距離」という)DFCを示す情報を、通信制御ユニット21に供給する。
【0010】
通信制御ユニット21は、ステレオカメラ24により前方の車両との距離(以下「前方車間距離」という)DFVを計測するとともに、前方車間距離DFV、車速VP、及び前方交差点距離DFCに応じて、基地局1への情報送信を行う情報送信条件を判定し、情報送信条件が成立するときに、自車位置IP、車速VP、及び前方車間距離DFVを示す車両走行情報を基地局1へ送信する。
【0011】
図2は、通信制御ユニット21が実行する情報送信処理のフローチャートである。
ステップS11では、車速VPが所定低車速VPL(例えば5km/h)以下であるか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、前方車間距離DFVが所定車間距離DFVL(例えば2m)以下であるか否かを判別する(ステップS12)。
【0012】
ステップS12の答が肯定(YES)であるときは、前方交差点距離DFCが所定距離DFCL(例えば100m)以上であるか否かを判別する(ステップS13)。ステップS11〜S13の何れかの答が否定(NO)であるときは、直ちに処理を終了する。
【0013】
ステップS13の答が肯定(YES)であるときは、情報送信条件が成立したと判定し、自車位置IP、車速VP、及び前方車間距離DFVを示す車両走行情報を基地局1へ送信する。
【0014】
基地局1は、複数の車両2から送信される車両走行情報を収集し、所定の道路(例えば渋滞が発生する可能性が高い道路)RJMで渋滞が発生している場合に、その渋滞の最後尾の車両位置を示す最後尾車両位置LASTVPの推定、及びその渋滞が延びる方向に変化しているか、短縮する方向に変化しているかの判定を行うとともに、推定した最後尾車両位置LASTVPを示す情報、及び渋滞の変化方向の判定結果を示す渋滞変化方向CHGDJMを示す情報を生成し、走行中の車両2にそれらの情報を送信する。
【0015】
最後尾車両位置LASTVPは、例えば次のようにして推定される。車速VPが急速に低下している車両2を抽出し、その車両2が最後尾車両であると推定し、その最後尾車両の位置を最後尾車両位置LASTVPとして推定する。
【0016】
図3は、所定の道路RJMを走行中の車両2の通信制御ユニット21において実行される迂回要否判定処理のフローチャートである。
ステップS21では、経路誘導フラグFNAVONが「1」であるか否かを判別する。経路誘導フラグFNAVONは、ナビゲーション装置22による経路誘導が実行されているとき「1」に設定される。ステップS21の答が肯定(YES)であるときは、渋滞を回避することができる迂回経路の分岐点となる交差点(以下「迂回分岐交差点」という)GAが、当該車両2の前方に存在するか否かをナビゲーション装置22からの情報により判別する(ステップS22)。
【0017】
ステップS22の答が肯定(YES)であるときは、基地局1から最後尾車両位置情報を受信したか否かを判別する(ステップS23)。その答が肯定(YES)であるときは、最後尾車両位置LASTVPが迂回分岐交差点GAより前方であるか否かを判別する(ステップS24)。その答が肯定(YES)であるときは、迂回分岐交差点GAと最後尾車両位置LASTVPとの距離DGALSTVが所定距離DGLTH(例えば50m)以下か否かを判別する(ステップS25)。
【0018】
ステップS25の答が肯定(YES)であるときは、渋滞変化方向CHGDJMにより、渋滞が延びる方向に変化しているか否かを判別する(ステップS26)。ステップS26の答が肯定(YES)であるときは、迂回経路への誘導が必要であり、かつ迂回分岐交差点GAから迂回経路へ誘導が可能と判定し、ナビゲーション装置22に迂回経路の計算を指示する(ステップS27)。
【0019】
ステップS21〜S26の何れかの答が否定(NO)であるときは、処理を終了する。
【0020】
以上のように本実施形態では、基地局1では、複数の車両2から送信される各車両の走行状況を示す車両走行情報に基づいて、所定の道路上における車両走行情報が収集されるとともに、収集された車両走行情報に基づいて、所定の道路上に存在する渋滞の最後尾車両位置LASTVPが推定され、その最後尾車両位置LASTVPを示す情報が走行中の車両2に送信される。一方、システムを構成する車両2により、自車両の走行状況を示す車両走行情報が基地局1に送信されるとともに、ナビゲーション装置22による経路誘導中において、所定の道路RJMが誘導経路中に含まれるときは、基地局1から送信される最後尾車両位置LASTVPを示す情報を用いて、迂回経路の算出の要否が判定され、迂回経路の算出が必要と判定されたときは、ナビゲーション装置22に迂回経路の算出が指示される。基地局1は、複数の車両2から送信される各車両の走行状況を示す車両走行情報に基づいて、所定の道路上における車両走行情報を収集するので、所定の道路RJMにおける正確な車両走行情報を得て、所定の道路RJM上に存在する渋滞の最後尾車両位置LASTVPを正確に推定することができる。したがって、基地局1から送信される最後尾車両位置LASTVPを示す情報を用いて、迂回経路の算出の要否を判定することにより、迂回経路の算出及び誘導を適切に実行することができる。
【0021】
本実施形態では、通信制御ユニット21が送受信手段、走行情報提供手段、及び迂回要否判定手段を構成し、図2の処理が走行情報提供手段に相当し、図3の処理が迂回要否判定手段に相当する。
【0022】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、ステレオカメラ24を用いて前方車間距離DFVを検出するようにしたが、レーダを用いて検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 基地局
2 車両
21 通信制御ユニット(送受信手段、走行情報提供手段、迂回要否判定手段)
22 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の複数の車両に搭載された送受信手段を介して前記複数の車両との間で情報通信を行う基地局と、前記複数の車両とによって構成される車両交通案内システムであって、
前記基地局は、
前記複数の車両から送信される各車両の走行状況を示す車両走行情報に基づいて、所定の道路上における車両走行情報を収集する走行情報収集手段と、
収集した車両走行情報に基づいて、前記所定の道路上に存在する渋滞の最後尾車両位置を推定する最後尾車両位置推定手段とを備え、
推定した最後尾車両位置を示す情報を前記複数の車両に送信し、
前記複数の車両は、
ナビゲーション装置と、
自車両の走行状況を示す車両走行情報を、前記送受信手段を介して前記基地局に送信する走行情報提供手段と、
前記ナビゲーション装置による経路誘導中において、前記所定の道路が誘導経路中に含まれるときは、前記基地局から送信される最後尾車両位置を示す情報を用いて、迂回経路の算出の要否を判定する迂回要否判定手段とを備え、
該迂回要否判定手段は、前記迂回経路の算出が必要と判定したときは、前記ナビゲーション装置に前記迂回経路の算出を指示することを特徴とする車両交通案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−226872(P2011−226872A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95581(P2010−95581)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】