説明

車両間通信システム

【課題】 道路上を走行する無線通信端末が設置された車両に、車両の周囲環境の情報又は車両に異常が発生した場合の異常情報又は基地局からリアルタイムに提供される様々な情報を、基地局を介し、又は直接、その他の車両に伝達を可能にした車両間通信システムを提供すること。
【解決手段】 道路上を走行する車両に、太陽電池201と二次電池202を備えた自立型電源である電源部200、照度センサ又は加速度センサを備えたセンサ部203、センサを少なくとも二種類以上搭載可能なアナログ/デジタル変換ポートを有するCPU制御部204、微弱無線又は特定小電力無線、ZigBeeの低消費電力無線を用いた無線部205、アンテナ部206からなる無線通信端末を設置しマルチホップ通信を行うこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両間通信システムに関し、特に、基地局から通信範囲外にある車両間でリアルタイムに様々な情報を共有するのに好適な車両間通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路上を走行する車両によって道路付近に敷設された基地局を介した無線通信が行われている。図3に、道路上を走行する車両が利用するセルラー通信網を示す。道路401に沿ってセルラー通信の基地局402、403、404が敷設されている。それらのサービスエリアは、それぞれ通信可能範囲である基地局通信範囲409、410、411で表され、道路を覆っている。道路上の無線通信端末を搭載した車両405、407、408は、これらの基地局を介して広域通信網による通信が可能になる。
【0003】
しかしながら、このような通信システムでは、基地局の通信する範囲外を走行している無線通信端末を搭載した車両406は情報を受け取ることができないという問題点があった。
【0004】
また、基地局の通信する範囲外を走行している無線通信端末を搭載した車両の通信を可能にする技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、マルチホップ通信技術を用い、基地局と直接通信できない地域のユーザでも他のユーザ(無線通信端末を搭載した車両)の中継機を介して、通信を可能にしている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−244064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、マルチホップ通信技術により取得する情報は、「車両情報」や「車両走行位置」をベースにした情報である。また、マルチホップ通信機の構成部品である、電源部、無線部に関しての詳細な構成は開示されていない。
【0007】
本発明は、上記問題点を踏まえ、基地局から通信範囲外にあるような車両においても、車両間でマルチホップ通信をすることにより、リアルタイムに様々な情報を共有できる車両間通信システムを、独立電源を有する低消費電力の小型無線通信機を使用して実現するものである。
【0008】
本発明の技術課題は、道路上を走行する無線通信端末が設置された車両に、車両の周囲環境の情報又は車両に異常が発生した場合の異常情報又は基地局からリアルタイムに提供される様々な情報を、基地局を介し、又は直接、その他の車両に伝達を可能にした、独立電源を有する低消費電力の小型無線通信機を使用した車両間通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の発明は、道路上を走行する車両に、電源部、センサ部、制御部、無線部、アンテナ部からなる無線通信端末を設置し、基地局を介して、又は直接その他の車両と無線で通信する車両間通信システムにおいて、前記車両の周囲環境の情報、又は前記車両に異常が発生した場合の異常情報又は基地局からリアルタイムに提供される様々な情報を、基地局を介し、または直接、その他の車両に伝達した車両間通信システムである。
【0010】
上記目的を達成するための第2の発明は、前記無線通信端末が、前記無線通信端末同士で前記基地局を介さずに通信する自立分散型無線ネットワークを構築し、前記無線通信端末が、無線通信範囲内に存在する別の前記無線通信端末を経由して、マルチホップ通信を行うことで、無線通信範囲外にある前記基地局又は前記無線通信端末に前記情報の伝達を可能にした車両間通信システムである。
【0011】
上記目的を達成するための第3の発明は、前記電源部が、太陽電池と二次電池を備えた自立型電源である車両間通信システムである。
【0012】
上記目的を達成するための第4の発明は、前記制御部が、前記センサを少なくとも二種類以上搭載可能なアナログ/デジタル変換ポートを有する車両間通信システムである。
【0013】
上記目的を達成するための第5の発明は、前記センサ部に、温度センサ又は加速度センサを備えた車両間通信システムである。
【0014】
上記目的を達成するための第6の発明は、前記無線部に、微弱無線又は特定小電力無線又はZigBeeの低消費電力無線を用いた車両間通信システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、道路上を走行する車両に、太陽電池と二次電池を備えた自立型電源である電源部、照度センサ、加速度センサを備えたセンサ部、センサを少なくとも二種類以上搭載可能なアナログ/デジタル変換ポートを有する制御部、微弱無線又は特定小電力無線、ZigBeeの低消費電力無線を用いた無線部、アンテナ部からなる無線通信端末を設置することで、基地局を介して、又は直接その他の車両と無線で通信する車両間通信システムにおいて、車両の周囲環境の情報は温度センサを備えたセンサ部で検知し、車両に異常が発生した場合の異常情報は、加速度センサを備えたセンサ部で検知できる。
【0016】
また、センサ部で検知したこれらの情報や基地局からリアルタイムに提供される様々な情報は、無線通信端末を設置した車両間同士で基地局を介さずに通信する自立分散型無線ネットワークを構築し、無線通信範囲内に存在する別の無線通信端末を設置した車両を経由して、マルチホップ通信を行うことで、基地局を介し、又は直接、その他の車両に伝達できるようになる。
【0017】
その結果、道路上を走行する無線通信端末が設置された車両に、車両の周囲環境の情報又は車両に異常が発生した場合の異常情報又は基地局からリアルタイムに提供される様々な情報を、基地局を介し、又は直接、その他の車両に伝達を可能にした、独立電源を有する低消費電力の小型無線通信機を使用した車両間通信システムの提供が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態に係る車両間通信システムを以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る車両間通信システムの無線通信端末の構成を示すブロック図である。図2は、本発明の車両間通信システムを説明する概念図である。
【0020】
図1に示すように、本発明を実施するための最良の形態に係る車両間通信システムは、電源部200、センサ部203、CPU制御部204、無線部205、アンテナ部206とから構成される。
【0021】
電源部200は、太陽電池201とリチウムイオン二次電池からなる二次電池202を組み合わせて、独立電源を構成しているので、電池の充電、取替えが不要になる。また、独立電源を構成し、車のバッテリーから電源を供給する必要が無いので、電源を供給するための配線が不要になり、電源を設置する場所の自由度が広がり、小型化に有利になる。
【0022】
なお、本発明の最良の形態では、リチウムイオン二次電池の二次電池202と太陽電池201を組み合わせて、独立電源を構成しているが、二次電池となりうる機能を有する電池であれば、同様の効果を奏する。
【0023】
制御部であるCPU制御部204は、センサ部203として搭載される各種センサのインタフェースを搭載できる8bitマイコンを用いている。アナログ/デジタル変換ポートが2つ搭載されており、最大2つのセンサを搭載することができ、それぞれのセンサから取得されるアナログ情報をデジタル情報に変換する機能を備えている。
【0024】
なお、必要な車両の周囲環境の情報と車両に異常が発生した場合の異常情報を伝達するために、アナログ/デジタル変換ポートは、最低2つ搭載される必要がある。また、2つ以上搭載されるとより多くの情報の提供が可能になる。
【0025】
センサ部203には、情報の検知手段である温度センサと加速度センサが搭載されている。それぞれのセンサは、アナログ情報としてデータを出力し、制御部でデジタル情報に変換される。温度センサは、車両が走行している道路周辺の位置における温度情報を検知し、加速度センサは、車両に事故が起きた場合の車両に生じた衝撃を感知する。センサ部203により、道路上を走行する無線通信端末が設置された車両の周囲環境の情報又は車両に異常が発生した場合の異常情報を検知できる。
【0026】
無線部205は、特定省電力の400MHz帯を用いることで、低消費電力通信を行う。なお、無線通信端末のカバーする通信範囲は1km前後である。
【0027】
また、本発明の最良の形態では、無線部205は、通信範囲1kmを確保できる観点で、特定省電力の400MHz帯を用いているが、通信形態は、多種多様でありそれぞれのシステムの用途に応じて、微弱無線又は他の特定小電力無線又はZigBeeの低消費電力無線を用いても同様の効果を奏する。
【0028】
図2に示すように、本発明の車両間通信システムである無線通信端末を搭載した車両と基地局間の車両間通信システムでは、道路101に沿って基地局102が敷設され、サービスエリアは、それぞれの通信可能範囲である基地局通信範囲103で表され、道路を覆っている。道路上の無線通信端末を搭載した車両106は基地局を介して広域通信網による通信を行うことができる。無線通信端末を搭載した車両104、105は、基地局102がカバーする基地局通信範囲103の範囲外に存在し、基地局と直接通信できない状態にある。
【0029】
しかし、無線通信端末を搭載した車両104、105、106は、それぞれの無線通信端末同士で基地局102を介さずに、マルチホップ通信を示す矢印107,108ではマルチホップ通信可能なので、無線通信端末を搭載した車両104、105は基地局から提供される渋滞情報や、天候情報、駐車場の空き情報などが無線通信端末を搭載した車両106を経由して、無線通信端末を搭載した車両104、105で受信可能になる。
【0030】
また、無線通信端末を搭載した車両106が衝突事故を起こした場合には、無線通信端末に搭載した加速度センサが衝撃を感知し、温度センサが自動車近傍の位置の温度を感知し、基地局を介さずにマルチホップ通信を用いて、基地局の通信範囲外にある後続の無線通信端末を搭載した車両104、105に迅速に通報することで、二次災害を未然に防ぐことが可能となる。また、通常の場合も、温度センサ又は加速度センサの情報を随時モニターし、これらの情報を同様に提供できる。
【0031】
以上に示したように、本発明により道路上を走行する無線通信端末が設置された車両に、車両の周囲環境の情報又は車両に異常が発生した場合の異常情報又は基地局からリアルタイムに提供される様々な情報を、基地局を介し、又は直接、その他の車両に伝達を可能にした、独立電源を有する低消費電力の小型無線通信機を使用した車両間通信システムの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る車両間通信システムの無線通信端末の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の車両間通信システムを説明する概念図。
【図3】従来の道路上を走行する車両が利用するセルラー通信網を示す概念図。
【符号の説明】
【0033】
101,401 道路
102,402,403,404 基地局
104,105,106,405,406,407,408 無線通信端末を搭載した車両
103,409,410,411 基地局通信範囲
107,108 マルチホップ通信を示す矢印
200 電源部
201 太陽電池
202 二次電池
203 センサ部
204 CPU制御部
205 無線部
206 アンテナ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上を走行する車両に、電源部、センサ部、制御部、無線部、アンテナ部からなる無線通信端末を設置し、基地局を介して、又は直接その他の車両と無線で通信する車両間通信システムにおいて、前記車両の周囲環境の情報、又は前記車両に異常が発生した場合の異常情報又は基地局からリアルタイムに提供される様々な情報を、基地局を介し、または直接、その他の車両に伝達したことを特徴とする車両間通信システム。
【請求項2】
前記無線通信端末が、前記無線通信端末同士で前記基地局を介さずに通信する自立分散型無線ネットワークを構築し、前記無線通信端末が、無線通信範囲内に存在する別の前記無線通信端末を経由して、マルチホップ通信を行うことで、無線通信範囲外にある前記基地局又は前記無線通信端末に前記情報の伝達を可能にしたことを特徴とする請求項1記載の車両間通信システム。
【請求項3】
前記電源部が、太陽電池と二次電池を備えた自立型電源であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両間通信システム。
【請求項4】
前記制御部が、前記センサを少なくとも二種類以上搭載可能なアナログ/デジタル変換ポートを有することを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の車両間通信システム。
【請求項5】
前記センサ部に、温度センサ又は加速度センサを備えたたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載の車両間通信システム。
【請求項6】
前記無線部に、微弱無線又は特定小電力無線又はZigBeeの低消費電力無線を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5記載の車両間通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−67533(P2007−67533A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247881(P2005−247881)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】