説明

車両駆動用誘導電動機の制御装置

【課題】トルク推定の精度を向上させることができる、車両駆動用誘導電動機の制御装置。
【解決手段】上位コントローラ110から入力されるトルク指令Tmrefおよび二次磁束指令φ2refに基づいて、車両駆動用誘導電動機108を高周波駆動するインバータ107に制御信号を出力するモータコントローラ109は、インバータ107の駆動周波数ω1を設定する一次周波数演算部219と、誘導電動機108の三相電流値を検出するモータ電流値検出部209と、検出された三相電流値をd軸電流値Idおよびq軸電流値Iqに変換する座標変換部223と、誘導電動機108の出力トルクを推定するトルク推定部211と、を備え、トルク推定部211は、モータ電流値検出部209による電流検出からトルク推定までの電流位相変化を補正する位相補償量と、d軸電流値およびq軸電流値とに基づいて、出力トルクTmを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動用誘導電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車などには多数の電動機が搭載されており、中でも駆動用に高出力電動機が用いられている。誘導電動機の制御装置では、誘導電動機の回転速度を検出する速度検出器が備えられ、当該速度検出器により速度に基づいて制御が行われている。一般に、誘導電動機の制御においては、三相交流電流を直交する2軸を持つ回転座標系に変換して取り扱うベクトル制御方式が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ベクトル制御方式における誘導電動機のトルクTmは、電動機定数に誤差が無く、二次磁束がd軸に一致した目標動作点において、次式(1)により表される。式(1)において、mは変換係数、Ppは極対数、Mは相互インダクタンス、l2は2次側漏れインダクタンス、φ'は二次鎖交磁束、Iqはq軸電流を示す。
【数1】

【0004】
特許文献1に記載の発明では、式(1)により誘導電動機のトルクTmを推定し、このトルク推定値とトルク指令値との差分に応じて一次周波数の補正を行うことで、トルク指令値とトルク推定値との誤差を修正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−219697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにベクトル制御理論に基づきトルク推定を行う場合、検出した三相電流よりd軸電流Idおよびq軸電流Iqを算出する必要がある。しかし、電流センサにより検出された電流をモータコントローラが取得してから、三相−二相変換によってIdおよびIqを算出し、さらにトルク推定演算を行うまでにはタイムラグが生じる。
【0007】
そのタイムラグの間にも電流の位相は変化するため、トルク推定演算に用いられる三相電流値と、トルク推定演算を行う瞬間に検出される三相電流との間には、電流の位相変化に起因するずれが生じている。そのため、このずれの発生によりトルク推定に必要なId、Iqを正確に算出できず、トルク推定値の精度が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上位コントローラから入力されるトルク指令および磁束指令に基づいて、車両駆動用誘導電動機を高周波駆動するインバータに制御信号を出力する制御装置であって、インバータの駆動周波数を設定する駆動周波数設定部と、誘導電動機の三相電流値を検出する電流値検出部と、検出された三相電流値をd軸電流値およびq軸電流値に変換する変換部と、誘導電動機の出力トルクを推定するトルク推定部と、を備え、トルク推定部は、電流値検出部による電流検出からトルク推定までの電流位相変化を補正する位相補償量と、d軸電流値およびq軸電流値とに基づいて、出力トルクを推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トルク推定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態によるモータ制御装置を搭載した車両の全体ブロック図である。
【図2】モータコントローラ109におけるモータ制御演算部を詳細に示すブロック図である。
【図3】UVW相静止座標系、αβ軸静止座標系およびdq軸回転座標系と出力電流との関係を示す図である。
【図4】タイムラグの間に電流位相がΔθだけ変化した場合を説明する図である。
【図5】モータトルク実測値と従来のトルク推定値とを示す図である。
【図6】モータトルク実測値と本実施の形態のトルク推定値とを示す図である。
【図7】力行、回生でC0、C1の値を変更する場合のトルク推定部211の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。 図1は、本発明の実施の形態によるモータ制御装置を搭載した電気自動車の全体ブロック図である。電気自動車は電源部101およびモータ駆動部102を備えている。電源部101は、バッテリ103、セルコントローラ104、リレー回路105、および、バッテリコントローラ106を備えている。
【0012】
リレー回路105は、インバータ107とバッテリ103とを接続し、また、それらを切り離すことができる。セルコントローラ104は、バッテリ情報を取得し、バッテリ103の状態を監視する。セルコントローラ104で取得されたバッテリ情報は、不図示の通信手段によりバッテリコントローラ106へ伝送される。バッテリコントローラ106は、受信したバッテリ情報に基づいてバッテリ103のSOC演算やモータ駆動部102への電力制限値算出などを行い、モータ駆動部102への電力供給および遮断などを制御する。
【0013】
一方、モータ駆動部102は、少なくとも一つのインバータおよび一つのモータを備えている。図1に示す例では、モータ駆動部102には、車両走行用の誘導電動機108と、誘導電動機108を駆動するためのインバータ107と、モータ制御用のモータコントローラ109とが設けられている。モータコントローラ109は、車両全体を統御する上位コントローラ110から通信手段等により受信したトルク目標値或いは回転数目標値に基づいて、インバータ107への駆動信号を生成し、モータの発生トルクあるいは回転数を制御する。図1ではコンバータ等の記載は無いが、これら機器を有していても構わない。
【0014】
図2は、図1のモータコントローラ109におけるモータ制御演算部を詳細に示すブロック図である。モータ制御演算部201は、直流電圧検出部204、モータ回転数算出部207、モータ電流検出部209、電流指令演算部214、すべり周波数演算部217、一次周波数演算部219、座標変換部223、電流FB制御演算部225、電圧FF制御演算部227、座標変換部231、およびPWMデューティ算出部233を備えている。
【0015】
モータ制御演算部201はベクトル制御により誘導電動機108を制御するものであり、ベクトル制御において用いられる各座標系の関係を図3に示す。図3は、UVW相静止座標系、αβ軸静止座標系およびdq軸回転座標系と出力電流との関係を示している。図3において,静止座標系α軸から回転座標系d軸までの位相角をθdq、回転座標系d軸から電流ベクトルI1までの位相角をθとする。dq軸回転座標系は、αβ静止座標系に対して後述する一次周波数ω1で回転している。三相電流検出値は、ベクトル制御理論に基づき座標変換を施すとId及びIqを成分とする一次電流ベクトルI1として表現される。そして、ベクトル制御の目標とする動作点は、二次磁束ベクトルがd軸と一致する状態である。
【0016】
以下、図2のモータ制御演算部201と対応させながら説明する。電流指令演算部214は、上位コントローラ110から入力されたトルク指令Tmrefと二次磁束指令φ2refとに基づいて、制御電流指令であるd(磁束)軸電流指令Idrefおよびq(トルク)軸電流指令Iqrefを算出する。Idrefは式(2)で表現され、Iqrefは式(3)で表現される。ここで、Mは相互インダクタンス、L2は二次側自己インダクタンス、pは極対数である。
【数2】

ここで、二次磁束指令φ2refはバッテリ電圧に応じて最適値が変化する。よって直流電圧検出部204から出力された直流電圧203に応じた二次磁束指令φ2refの補正値の算出を行い,その補正値を基にIdref,Iqrefを算出する。
【0017】
モータ電流検出部209は、電流センサ208により取得したモータ駆動電流データに基づき、誘導電動機108のU相電流IuとW相電流Iwを検出する。座標変換部223は、α軸からd軸までの位相角θdq(電流位相)に基づいて、d軸(励磁)電流Idとq軸(トルク)電流Iqとを分離生成する。位相角θdqの算出方法については後述する。Idは式(4)で,Iqは式(5)で表現される。
【数3】

【0018】
電流FB制御演算部225は、d軸電流指令IdRefとd軸電流Idとが一致するようにd軸電圧指令VdRefを補正する。電流FB制御演算部225は、同様に、q軸電流指令IqRefとq軸電流Iqとが一致するように,q軸電圧指令VqRefを補正する。これらの電圧指令値がFB電圧指令226として出力される。また,電圧FF制御演算部227により一次抵抗の電圧降下と誘起電圧を補償するフィードフォワード制御が行われ、FF電圧指令228として出力される。モータに印加される電圧指令は,このFB電圧指令及びFF電圧指令の和となり,式(6)及び式(7)のように表現される。式(6)、(7)において、L1は一次側自己インダクタンス、σL1は一次漏れインダクタンス、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲインである。
【数4】

【0019】
dq軸電圧指令VdRef,VqRefは、座標変換部231において三相電圧指令VuRef, VvRef,VwRefへと変換され、電圧指令230として出力される。Vurefは式(8)で表現され、Vvrefは式(9)で表現され、Vwrefは式(10)で表現される。
【数5】

【0020】
PWMデューティ算出部233は、三相電圧指令VuRef,VvRef,VwRefに基づいて、インバータ107内のスイッチング素子に対するゲート指令234を生成し、それをインバータ107へ出力する。なお、このPWM制御は周知の技術であるので、ここではその詳細な説明については省略する。
【0021】
誘導電動機108にはモータ回転センサ205が備えられている。モータ回転数算出部207は、モータ回転センサ205により取得したデータに基づきモータ回転数ωrを算出する。すべり周波数演算部217は、d軸(励磁)電流指令IdRefとq軸(トルク)電流指令IqRefとに基づいて、すべり周波数基準ωs*を算出する。ωs*は式(11)で表現される。式(11)において、R2は2次抵抗、L2は2次側自己インダクタンスである。
【数6】

【0022】
一次周波数演算部219は、インバータ107の出力周波数であって電動機一次周波数であるω1を算出する。ω1は次式(12)で表現される。すなわち、インバータ107の出力周波数が式(12)で算出されるω1に設定される。そして、一次周波数ω1を積分演算部220で積分することにより、図3に示す静止座標系α軸から回転座標系のd軸までの位相角θdq(電流位相)が算出される。
【数7】

【0023】
ところで、前述したように、誘導電動機108のトルクTmは、電動機定数に誤差が無く、二次鎖交磁束がd軸に一致した目標動作点において、式(1)により表される。ここで、mは変換係数、Ppは極対数、Mは相互インダクタンス、l2は2次側漏れインダクタンス、φ'は二次鎖交磁束、Iqはq軸電流を示す。
【数8】

【0024】
二次鎖交磁束φ'はd軸に一致しているので、座標変換部223から出力されたIdを用いて式(13)で示される。よって、式(1)は次式(14)のように変換できる。
【数9】

【0025】
(従来の問題点)
前述したように、Id・Iqは電流検出器208より検出された三相電流値をモータコントローラ108に取り込み、その三相電流値を位相情報(位相角θdq)に基づいて変換することで算出される。モータコントローラ108はデジタル制御により駆動するため、三相電流値の取り込みと電流変換処理を同時に行うことはできず、電流検出の後に変換処理を行いId・Iqを確定させ、そのId・Iqに基づいてトルク推定値算出を行うまでにタイムラグが生じることとなる。
【0026】
ところで、実際に誘導電動機108に流れる電流の位相はこのタイムラグの間にも変化しているので、算出されたId・Iqと実際のId・Iqとの間にずれが生じるという問題が発生する。
【0027】
(本実施の形態におけるトルク推定)
図4は、電流検出からId・Iq算出まで(すなわちトルク推定値算出まで)のタイムラグの間に、電流位相がΔθだけ変化した場合の関係を示す図である。図4に示すように、三相電流検出値は、ベクトル制御理論に基づき座標変換を施すと、Id及びIqを成分とする一次電流ベクトルI1として表現される。そのとき、一次電流ベクトルI1は回転座標系d軸に対し位相角θを有し、I1とId、Iqとの間には次式(15)、(16)に示すような関係が成立する。
【数10】

【0028】
ここで、検出データに基づく一次電流ベクトル検出値I1とタイムラグ後の値である真値I1'との間には、Δθだけの位相のずれがある。そのため、位相角θを用いるとId', Iq'は位相ずれΔθを用いて次式(17)、(18)のように表現できる。
【数11】

【0029】
位相ずれΔθが非常に小さい値であると仮定すると、式(17)、(18)は次式(19)、(20)のように近似できる。
【数12】

【0030】
よって、上述したトルク推定式(14)は次式(21)のように補正される。
【数13】

【0031】
ここで、電流位相は一次周波数ω1で変化するので、電流位相のずれΔθもω1に比例する。よって、位相ずれΔθは次式(22)のように表現できる。
【数14】

【0032】
式(22)に含まれる係数C0、C1はモータ駆動システム固有の定数であり、例えば、実測によって決定し、図2のトルク推定部211に予め記憶されている。トルク推定部211は、一次周波数演算部219で算出された一次周波数ω1と式(22)とから位相ずれΔθを算出し、その算出されたΔθと座標変換部223からのId、Iqとに基づいて式(21)に示す補正されたトルク推定値Tmを算出する。算出されたトルク推定値Tmは上位コントローラ110に出力される。
【0033】
上述した例では、誘導電動機108の駆動状態(力行駆動、回生駆動)によらず所定のC0、C1により位相ずれΔθを算出するようにしているが、誘導電動機108が力行駆動であるか回生駆動であるかによってC0、C1の値が異なる場合がある。そこで、図7に示すようにトルク推定部211にトルク指令Tmrefが入力される構成とし、力行、回生に応じたトルク推定を行うようにする。
【0034】
図7では、記憶部301に力行駆動用のC01、C11が記憶され、記憶部302に回生駆動用のC02、C12が記憶されている。切換制御部304は、入力されるトルク指令Tmrefが正(力行駆動)の場合には切換部303を記憶部301へ接続し、トルク指令Tmrefが負(回生駆動)の場合には切換部303を記憶部302へ接続する。演算部305は、力行駆動時にはC0=C01、C1=C11を用いてΔθを算出し、そのΔθに基づいてトルク推定値Tmを演算する。また、力行駆動の場合には力行駆動用のC0=C02、C1=C12を用いてΔθを算出し、そのΔθに基づいてトルク推定値Tmを演算する。このような構成とすることで、誘導電動機108の駆動状態に応じたより高精度なトルク推定値を得ることができる。
【0035】
なお、力行駆動であるか回生駆動であるかによらず同一のC0、C1を用いてΔθを算出するようにしても良い。
【0036】
また、電流位相のずれΔθを、一次周波数ω1に応じて変化させるのではなく定数としても良い。例えば、定数として一次周波数ω1の平均的な値を採用する。この場合、図1に示すような、トルク推定部211へのω1の入力は必要ない。力行時と回生時とで位相補償量を変える場合には、図7の記憶部301に力行時の位相補償量が記憶され、記憶部302に回生時の位相補償量が記憶される。
【0037】
図5,6は、モータトルク実測値とモータ制御演算部201で算出されるトルク推定値とを比較したものである。図5は従来のトルク推定値(式(14)で算出したトルク推定値)の場合を示し、図6は本実施の形態のトルク推定値の場合を示す。なお、ここでは、モータ回転数ωrを一定に保ち、モータトルク指令値をランプ状に上昇させるようにした。
【0038】
いずれの場合も、モータトルク指令の上昇に伴いトルク推定値とトルク実測値との間にずれが生じている。これは、モータトルク指令の上昇により(11)のq軸電流指令IqRefが上昇すると、すべり周波数基準ωs*が増加する。モータ回転数ωrは一定なので、式(12)で算出される一次周波数ω1も増加することになる。トルク推定値とトルク実測値と間のずれ量は一次周波数ω1の大きさに依存するので、モータトルク指令が大きくなるほどずれ量が大きくなる。
【0039】
図6に示す本実施の形態では、式(21)に示すように、タイムラグに起因する位相ずれΔθに応じてトルク推定値を補正しているので、従来の場合(図5)に比べてトルク推定値とトルク実測値と間のずれ量が小さくなっていることが分かる。
【0040】
(1)このように、本実施の形態のモータコントローラ109では、駆動周波数であるインバータ107の出力周波数(上記一次周波数ω1)が一次周波数演算部219で設定される。トルク推定部211は、モータ電流検出部209による電流検出からトルク推定までの電流位相変化を補正する位相補償量(例えば式(22)で算出される位相ずれΔθ)と、d軸電流値およびq軸電流値とに基づいて、誘導電動機108の出力トルクTmを推定する。その結果、電流検出からトルク推定値演算までのタイムラグのトルク推定への影響が低減され、トルク推定精度の向上を図ることができる。
【0041】
上位コントローラ110は、モータコントローラ109で算出されたトルク推定値に基づいて、適切なトルク指令Tmrefおよび二次磁束指令φ2refをモータコントローラ109に入力している。そのため、モータコントローラ109から入力されるトルク推定値の精度向上により、誘導電動機108の駆動状況に応じた適切なトルク指令Tmrefおよび二次磁束指令φ2refをモータコントローラ109に与えることができる。
【0042】
(2)位相補償量としての位相ずれΔθを、上述の式(22)で算出されるように一次周波数ω1の大きさに応じて変化させるのが好ましい。その結果、時々刻々と変化する一次周波数ω1に応じて位相補償量が変化するので、広範なモータ駆動範囲においてトルク推定値を精度良く行うことができる。また、位相補償量を上述のように定数としても良い。
【0043】
(3)切換制御部304は、入力されたトルク指令Tmrefに基づいて誘導電動機108の力行および回生を判定する。切換制御部304によって力行と判定されると、トルク推定部211の演算部305は、記憶部301の値C01、C11用いて力行用位相補償量Δθを算出し、その力行用位相補償量Δθに基づいてトルク推定値を算出する。一方、切換制御部304によって回生と判定されると、トルク推定部211の演算部305は、記憶部301の値C02、C12用いて回生用位相補償量Δθを算出し、その回生用位相補償量Δθに基づいてトルク推定値を算出する。
【0044】
また、位相補償量を定数とする場合、例えば、一次周波数ω1の平均的な値を式(22)のω1とする場合も、力行時と回生時とでC0,C1の値を変更することで、力行時用の定数値および回生時用の定数値が得られる。もちろん、式(22)でω1=0とした場合のΔθを位相補償量としても良い。
【0045】
その結果、誘導電動機108の駆動状態(力行、回生)に応じた、より正確なトルク推定値を算出することができる。
【0046】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。また、上述の実施形態では電気自動車を例に説明したが、例えば、ハイブリッド自動車のような電動車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
101:電源部、102:モータ駆動部、107:インバータ、108:誘導電動機、109:モータコントローラ、110:上位コントローラ、209:モータ電流検出部、211:トルク推定部、214:電流指令演算部、219:一次周波数演算部、223,230:座標変換部、301,302:記憶部、303:切換部、304:切換制御部、305:演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位コントローラから入力されたトルク指令および二次磁束指令に基づく制御信号を、車両駆動用誘導電動機を高周波駆動するインバータへ出力する制御装置であって、
前記誘導電動機の三相電流値を検出する電流値検出部と、
前記検出された三相電流値をd軸電流値およびq軸電流値に変換する変換部と、
前記誘導電動機の出力トルクを推定するトルク推定部と、を備え、
前記トルク推定部は、前記電流値検出部による電流検出からトルク推定までの電流位相変化を補正する位相補償量と、前記d軸電流値およびq軸電流値とに基づいて、前記出力トルクを推定することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記誘導電動機の回転数に基づいて前記インバータの駆動周波数を設定する駆動周波数設定部を備え、
前記トルク推定部は、前記駆動周波数に基づいて前記d軸電流値およびq軸電流値に対する前記位相補償量を算出し、算出された該位相補償量と前記d軸電流値およびq軸電流値とに基づいて前記出力トルクを推定することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置において、
前記トルク指令に基づいて誘導電動機の力行および回生を判定する判定部を備え、
前記トルク推定部は、前記判定部により力行と判定された場合には力行時の前記電流位相変化を補正する第1の位相補償量を算出し、前記判定部により回生と判定された場合には回生時の前記電流位相変化を補正する第2の位相補償量を算出することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置において、
前記位相補償量として一定の値が予め記憶された記憶部を備え、
前記トルク推定部は、前記記憶部に記憶された前記位相補償量と、前記d軸電流値およびq軸電流値とに基づいて前記出力トルクを推定することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置において、
前記トルク指令に基づいて誘導電動機の力行および回生を判定する判定部を備え、
前記記憶部には、力行時の前記電流位相変化を補正する第1の位相補償量と回生時の前記電流位相変化を補正する第2の位相補償量とが予め記憶され、
前記トルク推定部は、前記判定部により力行と判定された場合には前記第1の位相補償量と前記d軸電流値およびq軸電流値とに基づいて前記出力トルクを推定し、前記判定部により回生と判定された場合には前記第2の位相補償量と前記d軸電流値およびq軸電流値とに基づいて前記出力トルクを推定することを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94031(P2013−94031A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236127(P2011−236127)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】