説明

車両

【課題】モータの鉛直上方に燃料電池(及び/又はPCU)を備えた車両において、衝突時における燃料電池(及び/又はPCU)の水平方向への移動を抑制する。
【解決手段】車両は、エンジンコンパートメントと、エンジンコンパートメント内に配置されたモータと、エンジンコンパートメント内においてモータの上方に配置され、モータに電力を供給する燃料電池と、燃料電池を支持する支持部であって、燃料電池を車両の高さ方向に回転可能に支持する支持部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池及び電力制御ユニットを搭載した車両における燃料電池及び電力制御ユニットの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を電力源とする車両では、燃料電池の発電により得られた電力がDC/DCコンバータやDC/ACインバータ等を含む電力制御ユニット(Power Control Unit:PCU)を介して、車両駆動用のモータに供給される。このような車両では、一般に、車両前方のエンジンコンパートメント内において、モータを下方に配置し、モータの鉛直上方に燃料電池及びPCUを配置する構成が採用される(特許文献1)。これは、モータの駆動力を車輪に伝える軸が車両の下方に配置されるため、モータを下方に配置することが合理的であること、また、燃料電池を高い位置に配置することにより、燃料電池から排出される水を重力を利用して外部排出口のある車両後方に容易に移動させ得ることなどを理由とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−367637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータの鉛直上方に燃料電池及びPCUを配置する構成では、車輌が前方衝突した際に、燃料電池やPCUは、衝突の際の衝撃により後方に略水平に移動する。このとき、燃料電池やPCUは、比較的剛性の高いモータが下方に配置されているため下方への移動は抑制される。一般に、燃料電池やPCUは、平常時の設置安定性を確保するため、長手方向が水平方向と平行となるように配置される。したがって、燃料電池やPCUは、衝突時に後方に移動しても長手方向が水平方向と平行のままであるので、燃料電池やPCUのためにクラッシャブルゾーン(衝突時に潰れることにより衝撃を吸収するための空間)が狭くなるという問題があった。また、衝突時において、燃料電池及びPCUが後方に移動することによりダッシュパネルに衝突し、車室内へ侵入するおそれがあった。
【0005】
なお、上記問題は、燃料電池及びPCUの一方のみがモータの鉛直上方に搭載された構成においても発生し得る。また、エンジンコンパートメントが後方に配置されている車輌では、後方衝突時に同様な問題が発生し得る。
【0006】
本発明は、モータの鉛直上方に燃料電池(及び/又はPCU)を備えた車両において、衝突時における燃料電池(及び/又はPCU)の水平方向への移動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]車両であって、エンジンコンパートメントと、前記エンジンコンパートメント内に配置されたモータと、前記エンジンコンパートメント内において前記モータの上方に配置され、前記モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池を支持する支持部であって、前記燃料電池を前記車両の高さ方向に回転可能に支持する支持部と、を備える、車両。
【0009】
適用例1の車輌では、車輌が衝突した際の衝撃により、燃料電池を車輌の高さ方向に回転させることができるので、燃料電池の水平方向への移動を抑制できる。一般に、燃料電池は、長手方向が水平方向と平行となるように配置されるので、衝突時に燃料電池を高さ方向に回転させることにより、燃料電池全体の車輌長さ方向の長さを短くすることができる。したがって、衝突の際に、エンジンコンパートメントにおけるクラッシャブルゾーンを広げることができる。また、燃料電池がエンジンコンパートメントと車室との境界部分にあるダッシュパネルに衝突することを抑制できる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の車輌において、前記支持部は、前記車輌の長さ方向における前記燃料電池の重心位置に対して、前記車輌の長さ方向にオフセットされた位置において、前記燃料電池を支持する、車輌。
【0011】
このような構成により、車輌が衝突してモータがエンジンコンパートメント内を移動した際に、燃料電池の自重により燃料電池を車輌の高さ方向に回転させ易くできる。
【0012】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の車輌において、さらに、前記支持部に対して前記車輌の長さ方向にオフセットされた位置に配置され、前記エンジンコンパートメント内における前記モータの移動の応力を、前記燃料電池に伝える伝達部を備える、車輌。
【0013】
このような構成により、衝突に伴いモータがエンジンコンパートメント内を移動した場合に、燃料電池の自重に加えてモータの移動の応力により燃料電池が車輌の高さ方向に回転させることができるので、より短期間のうちに燃料電池を回転させることができる。したがって、衝突の際に、エンジンコンパートメントにおけるクラッシャブルゾーンをより短期間のうちに広げることができる。
【0014】
[適用例4]適用例3に記載の車両において、前記伝達部は、前記車両の衝突が発生していない状態において、前記モータと前記燃料電池とにそれぞれ当接している、車両。
【0015】
このような構成により、モータの移動が開始するのと同時に、モータの移動の応力により燃料電池を車輌の高さ方向に回転させることができる。したがって、短期間のうちにエンジンコンパートメントにおけるクラッシャブルゾーンを広げることができる。
【0016】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の車両において、さらに、前記エンジンコンパートメント内において互いに前記車両の幅方向に離れて配置された一対のサイドメンバを備え、前記支持部は、前記一対のサイドメンバに両端を接続された棒状部材を有する、車両。
【0017】
このような構成により、支持部の剛性を増すことができ、衝突に伴う支持部の変形や移動を抑制できる。また、支持部は、サイドメンバに接続されているので、衝突が発生していない状態において燃料電池がエンジンコンパートメント内を落下しないように支持することができる。
【0018】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の車両において、前記エンジンコンパートメントは、前記車輌の前方側に配置され、前記モータの前方端部は、前記燃料電池の前方端部よりも前方に突出している、車両。
【0019】
このような構成により、エンジンコンパートメント内に配置された種々の機器が車輌の前方衝突により後方に移動した際に、かかる機器を、燃料電池よりも先にモータに衝突させることができる。したがって、種々の機器の衝突によるモータの移動を、種々の機器の衝突による燃料電池の移動よりも先に発生させることができる。それゆえ、燃料電池の自重及び/又はモータの移動の応力を利用して、燃料電池を車輌高さ方向に回転させることができる。
【0020】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれかに記載の車両において、さらに、前記エンジンコンパートメント内において前記モータよりも前方に配置され、剛性の高い部材である高剛性部材を備え、前記エンジンコンパートメントは、前記車輌の前方側に配置され、前記高剛性部材の前方端部は、前記燃料電池の前方端部よりも前方に突出している、車両。
【0021】
このような構成により、エンジンコンパートメント内に配置された種々の機器が車輌の前方衝突により後方に移動した際に、かかる機器を、燃料電池よりも先に高剛性部材に衝突させることができる。したがって、種々の機器の衝突によって高剛性部材を後方に移動させてモータに衝突させることができるので、モータを後方に移動させて、燃料電池の自重及び/又はモータの移動の応力を利用して燃料電池を車輌の高さ方向に回転させることができる。
【0022】
[適用例8]燃料電池を搭載した車両であって、エンジンコンパートメントと、前記エンジンコンパートメント内に配置され、前記燃料電池から供給される電力により駆動するモータと、前記エンジンコンパートメント内において前記モータの上方に配置され、前記燃料電池により得られた電力を、前記モータに供給するための電力制御ユニットと、
前記電力制御ユニットを支持する支持部であって、前記電力制御ユニットを前記車両の高さ方向に回転可能に支持する支持部と、を備える、車両。
【0023】
適用例8の車輌では、車輌が衝突した際の衝撃により、電力制御ユニットを車輌の高さ方向に回転させることができるので、電力制御ユニットの水平方向への移動を抑制できる。一般に、電力制御ユニットは、長手方向が水平方向と平行となるように配置されるので、衝突時に電力制御ユニットを高さ方向に回転させることにより、電力制御ユニット全体の車輌長さ方向の長さを短くすることができる。したがって、衝突の際に、エンジンコンパートメントにおけるクラッシャブルゾーンを広げることができる。また、電力制御ユニットがエンジンコンパートメントと車室との境界部分にあるダッシュパネルに衝突することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施例における車両の概略構成を示す断面図である。
【図2】エンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの詳細配置を示す断面図である。
【図3】エンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの詳細配置を示す斜視図である。
【図4】衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す第1の断面図である。
【図5】衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す第2の断面図である。
【図6】比較例としての従来における衝突時の燃料電池FC及び駆動用モータMの配置状態を示す断面図である。
【図7】第2の実施例の車輌における平常時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。
【図8】第2の実施例における衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す第1の断面図である。
【図9】第2の実施例における衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す第2の断面図である。
【図10】第3の実施例の車輌の平常時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。
【図11】第3の実施例における衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。
【図12】第4の実施例の車輌のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。
【図13】第5の実施例の車輌のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。
【図14】第6の実施例の車輌のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.第1の実施例:
A1.平常時における構成:
図1は、第1の実施例における車両の概略構成を示す断面図である。なお、図1では、衝突が発生していない平常時における車両の構成を示している。車両VEは、電気自動車であり、エンジンコンパートメントECと、車室CAと、駆動用モータMと、燃料電池FCと、前輪FWと、後輪RWとを備える。エンジンコンパートメントECは、車両の前方側に配置されている。車室CAは、ダッシュパネルDPと、フロアパネルFPとを備えている。車室CAは、ダッシュパネルDPを介してエンジンコンパートメントECの後方に配置されている。
【0026】
駆動用モータMは、エンジンコンパートメントEC内において下方に配置され、前輪FW及び後輪RWを駆動する。なお、駆動用モータMと後輪RWとは、フロアパネルFPの下方に配置された図示しないドライブシャフトを介して接続されており、このドライブシャフトを介して駆動用モータMの回転力が後輪RWに伝達される。
【0027】
燃料電池FCは、エンジンコンパートメントEC内において駆動用モータMの鉛直上方に配置され、駆動用モータMに電力を供給する。燃料電池FCとしては、例えば、MEA(Membrane Electrode Assembly)を有する固体高分子型燃料電池(単セル)が多数積層された構成を有し、燃料ガスである純水素と、酸化剤ガスである空気に含まれる酸素とが、各電極において電気化学反応を起こすことによって起電力を得る燃料電池を採用することができる。なお、かかる構成においては、単セルの積層方向は水平方向となる。また、燃料電池FCは、設置安定性を向上させるために長手方向が水平方向と平行となるように配置されている。
【0028】
図2は、エンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの詳細配置を示す断面図である。図3は、エンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの詳細配置を示す斜視図である。なお、図3では、図示の便宜上、燃料電池FCを、実際の配置位置よりも鉛直上方に離して表わしている。
【0029】
図2,3に示すように、エンジンコンパートメントEC内には、上述した燃料電池FC及び駆動用モータMに加えて、一対のサイドメンバ18a,18bと、支持部16と、一対の軸受け部14a,14bと、支持シャフト12と、一対のブラケット10a,10bとが配置されている。
【0030】
図3に示すように、サイドメンバ18a,18bは、車輌の長さ方向に延びた剛材であり、互いに車輌幅方向LHに所定の距離だけ離れて配置されている。
【0031】
支持部16は、燃料電池FCを載せるための部材であり、一対のフレーム15a,15bと、複数の補強フレーム17と、を備えている。
【0032】
一対のフレーム15a,15bは、車輌長さ方向に延びた剛材であり、互いに車輌幅方向LHに所定の距離だけ離れて配置されている。一対のフレーム15a,15b間の距離は、燃料電池FCの幅(車輌幅方向の長さ)とほぼ同じである。一対のフレーム15a,15bは、それぞれ、燃料電池FC(燃料電池FCを収容する図示しないケース)の底面と接合され、また、後端付近において貫通する支持シャフト12と、貫通部分において接合されている。複数の補強フレームは、それぞれ、フレーム15a及びフレーム15bの間に配置され、一端がフレーム15aに接合され、他端がフレーム15bに接合されている。
【0033】
軸受け部14aは、サイドメンバ18aの上面に接合されている。同様に、軸受け部14bは、サイドメンバ18bの上面に接合されている。図2に示すように、一対の軸受け部14a,14bは、燃料電池FCの背面Sf0よりも後方に位置している。この一対の軸受け部14a,14bの配置位置は、車両VEの長さ方向における燃料電池FCの中央位置(重心位置に相当)に対して、後方にオフセットされた位置である。
【0034】
支持シャフト12は、一対の14a,14bの間に配置された金属製の円柱形部材である。支持シャフト12の一端は軸受け部14aにより、他端は軸受け部14bにより、それぞれ回動可能に支持されている。
【0035】
ブラケット10aは、フレーム15aの底面の先端部と駆動用モータM(駆動用モータMを収容する図示しないケース)の上面とに接合されている。同様に、ブラケット10bは、フレーム15bの底面の先端部と駆動用モータM(駆動用モータMを収容する図示しないケース)の上面とに接合されている。
【0036】
図2に示すように、燃料電池FCの先端面Sf1と、支持部16の先端面Sh1と、駆動用モータMの先端面Sm1とは、いずれも車輌長さ方向FRの位置がほぼ同じになっている。
【0037】
上記構成により、燃料電池FCは、支持シャフト12を軸として車輌高さ方向に回転可能に構成されている。但し、平常時には、燃料電池FCは、支持部16と、一対のブラケット10a,10bを介して接続されている駆動用モータMとにより支持され、また、駆動用モータMは図示しないサスペンションメンバにより支持されているため、駆動用モータMは、車輌高さ方向に回転せずに配置されている。
【0038】
前述の一対のブラケット10a,10b及び支持部16は、請求項における伝達部に相当する。また、支持シャフト12及び一対の軸受け部14a,14bは、請求項における支持部に相当する。
【0039】
A2.衝突時の構成:
図4は、衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す第1の断面図である。図5は、衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す第2の断面図である。図5は、図4に示す状態よりも時間的に後となる状態を表わしている。図4,5では、エンジンコンパートメントEC内において、燃料電池FC及び駆動用モータMよりも前方に配置されているラジエータや、配管や、各種センサ等を、搭載物100として模式的に表わしている。なお、図4,5では、図示の便宜上、一対のサイドメンバ18a,18bは省略している。また、図4,5では、平常時の燃料電池FC,支持部16,ブラケット10a,10b及び駆動用モータMの配置位置を、破線で示している。
【0040】
図4に示すように、車両VEが前方衝突した場合、搭載物100は、衝突の際の衝撃によって後方に移動し、駆動用モータMに衝突する。駆動用モータMは、搭載物100の衝突によって、後方かつ鉛直下方に移動(落下)する。図4では、駆動用モータMは右下方の方向d1に移動している。
【0041】
支持部16は、ブラケット10a,10bにより駆動用モータMに接合されているので、駆動用モータMの移動の応力(方向d1の力)がブラケット10a,10bを介して伝わり、駆動用モータMにより右下方に引っ張られる。ここで、一対のブラケット10a,10bは、支持シャフト12(回転軸)に対して前方にオフセットされた位置に配置されているので、支持部16は、駆動用モータMによる下方への引っ張りにより、支持シャフト12を軸として鉛直下方に回転する。燃料電池FCは、支持部16と接合されているので、支持部16と共に支持シャフト12を軸として鉛直下方に回転する。また、支持部16は、燃料電池FCの重心位置に対して後方にオフセットされた位置に配置されているので、燃料電池FCの自重により下方への回転が助長される。
【0042】
図5に示すように、搭載物100がさらに後方(車輌内部方向)に移動すると、駆動用モータMは、さらに後方かつ下方(方向d2)に移動する。図5では、駆動用モータMの移動により、一対のブラケット10a,10bは、駆動用モータMからはずれている。支持部16及び燃料電池FCは、駆動用モータMによる支持を失うため、自重により支持シャフト12を軸として鉛直下方にさらに回転する。このように、燃料電池FCは、支持シャフト12を軸として回転するために水平後方への移動が抑制され、ダッシュパネルDPへの衝突が抑制される。このとき、燃料電池FCは、ほぼ縦置き(長手方向が鉛直方向と平行となる配置)となるため、燃料電池FC全体の車輌長さ方向の長さ(奥行き)w1は、平常時の長さw0に比べて短くなっている。それゆえ、エンジンコンパートメントEC内のクラッシャブルゾーン(衝突時に潰れることにより衝撃を吸収するための空間)が広くなる。
【0043】
図6は、比較例としての従来における衝突時の燃料電池FC及び駆動用モータMの配置状態を示す断面図である。比較例の車輌では、支持部16は省略されており、駆動用モータMの上面に燃料電池FCが載置されている。なお、図6では、比較例における平常時の燃料電池FC及び駆動用モータMの配置位置を破線で示している。
【0044】
図6に示すように、比較例では、衝突時において、搭載物100が後方に移動して駆動用モータMに衝突すると、駆動用モータM及び燃料電池FCは、いずれも後方かつ下方(方向d0)に移動する。その結果、燃料電池FCはダッシュパネルDPに衝突し、ダッシュパネルDPは変形し、燃料電池FCの一部AR1は、車室CA内に達している。これに対し、第1の実施例の車両VEでは、衝突時における燃料電池FCのダッシュパネルDPへの衝突が抑制される。
【0045】
以上説明したように、第1の実施例の車両VEでは、衝突時において、燃料電池FCは、支持シャフト12を軸として下方に回転するので、後方への移動が抑制される。したがって、燃料電池FCのダッシュパネルDPへの衝突が抑制される。
【0046】
加えて、燃料電池FCを、支持シャフト12を軸として回転させるので、FC燃料電池FCを縦置きに近い状態にすることができる。したがって、燃料電池FC全体の車輌長さ方向の長さを短くできるので、クラッシャブルゾーンを広げることができる。それゆえ、衝撃により支持シャフト12が後方に移動した場合であっても、燃料電池FCがダッシュパネルDPに衝突することを抑制できる。
【0047】
また、支持シャフト12が、燃料電池FCの重心位置に対して、後方にオフセットされた位置に配置されているので、燃料電池FCの自重を利用して燃料電池FCの回転を助長させることができる。
【0048】
また、一対のブラケット10a,10bが、支持シャフト12(回転軸)に対して前方にオフセットされた位置に配置されているので、駆動用モータMの下方への移動(下方への引っ張り)により、支持部16及びFC燃料電池FCを、支持シャフト12を軸として下方に回転させることができる。
【0049】
また、支持部16は、ブラケット10a,10bにより駆動用モータMと接続されているので、駆動用モータMの移動の応力(後方かつ下方の力)を、ブラケット10a,10bを介して燃料電池FCに伝えることができる。したがって、自重のみにより燃料電池FCを回転させる構成に比べて、より短期間のうちに燃料電池FCを下方に回転させることができる。加えて、支持部16は、ブラケット10a,10bにより駆動用モータMと接続されているので、駆動用モータMの移動が開始すると同時に、燃料電池FCを下方に回転させることができ、より短期間のうちに燃料電池FCを回転させることができる。したがって、クラッシャブルゾーンをより短期間のうちに広げることができる。
【0050】
B.第2の実施例:
図7は、第2の実施例の車輌における平常時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。なお、図7では、図示の便宜上、一対のサイドメンバ18a,18bを省略している。第2の実施例の車輌は、一対のブラケット10a,10bに代えて一対のブラケット20a,20bと備えている点と、一対の軸受け部14a,14b及び支持シャフト12の配置位置と、において図1〜5に示す第1の実施例の車両VEと異なり、他の構成は、第1の実施例と同じである。
【0051】
第1の実施例の一対のブラケット10a,10bは、一対のフレーム15a,15bの底面の先端部に接合されていたが、第2の実施例の一対のブラケット20a,20bは、一対のフレーム15a,15bの底面の後端部に接合されている。本実施例では、第1の実施例と異なり、一対のブラケット20a,20bは、支持シャフト12に対して後方にオフセットされた位置に配置されている。
【0052】
第1の実施例では、一対の軸受け部14a,14b及び支持シャフト12は、燃料電池FCの背面よりも後方に位置していたが、第2の実施例では、燃料電池FCの中央位置Cfよりも前方側に配置されている。本実施例では、第1の実施例と異なり、一対の軸受け部14a,14b及び支持シャフト12は、車両VEの長さ方向における燃料電池FCの中央位置(重心位置)に対して、前方にオフセットされた位置である。
【0053】
図8は、第2の実施例における衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す第1の断面図である。図9は、第2の実施例における衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す第2の断面図である。図9は、図8に示す状態よりも時間的に後となる状態を表わしている。なお、図8,9では、図7と同様に、一対のサイドメンバ18a,18bは省略し、また、平常時の燃料電池FC,支持部16及び駆動用モータMの配置位置を、破線で示している。
【0054】
図8に示すように、第2の実施例では、車輌の前方衝突により、搭載物100が下方に移動して駆動用モータMに衝突すると、駆動用モータMは、前端部側が下方(方向d3)に回転し、後端部側が上方(方向d4)に回転する。この駆動用モータMの移動は第1の実施例とは異なる。この相違は、例えば、駆動用モータMにおける搭載物100の衝突箇所の相違に起因して起こり得る。
【0055】
駆動用モータMの後端部側が上方に回転することにより、支持部16及び燃料電池FCの後端部側は、一対のブラケット20a,20bを介して上方に押し上げられる。したがって、支持部16及び燃料電池FCは、支持シャフト12を軸として車輌高さ方向に回転する。
【0056】
図9に示すように、搭載物100がさらに後方(車輌内部方向)に移動すると、駆動用モータMは、さらに回転すると共に下方に移動し、角P1がダッシュパネルDPに衝突する。すると、駆動用モータMは、このダッシュパネルDPと衝突した角P1を軸として、先端部側がさらに下方(方向d6)に回転することとなる。図9に示すように、駆動用モータMの移動により、一対のブラケット20a,20bは、駆動用モータMからはずれている。したがって、駆動用モータMとの接続から解放された支持部16及び駆動用モータMの後端部側は、駆動用モータMに引っ張られて下方かつ後方に移動することなく、支持シャフト12を軸としてより上方(方向d7)に回転する。
【0057】
以上の構成を有する第2の実施例の車輌は、第1の実施例の車両VEと同様な効果を有する。加えて、支持シャフト12が、燃料電池FCの中央位置Cfよりも前方側に配置されているので、燃料電池FCの先端部側を下方に、後端部側を上方に回転させることができる。したがって、燃料電池FCのうち、下方に移動する部分(体積)を少なくできるので、エンジンコンパートメントECの下方の空きスペースが少ない場合でも、燃料電池FCを回転させることができる。
【0058】
C.第3の実施例:
図10は、第3の実施例の車輌の平常時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。なお、図10では、図示の便宜上、一対のサイドメンバ18a,18bを省略している。第3の実施例の車輌は、第2支持部26を備えている点と、一対の軸受け部14a,14b及び支持シャフト12の配置位置とにおいて、図7〜9に示す第2の実施例の車輌と異なり、他の構成は、第2の実施例と同じである。
【0059】
第3の実施例の車輌は、燃料電池FCの鉛直上方に第2支持部26を備えている。第2支持部26は、支持部16と同じ構成を有しており、燃料電池FCの上面に接合されている。第3の実施例では、一対の軸受け部14a,14bは、第2支持部26に接合されており、支持シャフト12は、第2支持部26を車輌幅方向に貫通している。
【0060】
図11は、第3の実施例における衝突時のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。なお、図11では、図10と同様に、一対のサイドメンバ18a,18bは省略し、また、平常時の燃料電池FC,支持部16及び駆動用モータMの配置位置を、破線で示している。
【0061】
図11に示すように、第3の実施例では、第2の実施例と同様に、車輌の前方衝突により搭載物100が下方に移動して駆動用モータMに衝突すると、駆動用モータMは、前端部側が下方に回転し、後端部側が上方に回転した後、ダッシュパネルDPに衝突する。このとき、支持部16と燃料電池FCと第2支持部26との後端部側は、一対のブラケット20a,20bを介して上方に押し上げられる。したがって、支持部16と燃料電池FCと第2支持部26とは、支持シャフト12を軸として車輌高さ方向に回転する。
【0062】
以上の構成を有する第3の実施例の車輌は、第2の実施例の車両VEと同様な効果を有する。
【0063】
D.第4の実施例:
図12は、第4の実施例の車輌のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。なお、図12では、図示の便宜上、一対のサイドメンバ18a,18bを省略している。第4の実施例の車輌は、駆動用モータMの先端面Sm1が、燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりも、前方に突出して配置されている点において、第1の実施例の車両VEと異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0064】
図12に示すように、駆動用モータMの先端面Sm1は、燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりも、Δxだけ前方に突出している。したがって、衝突時の衝撃により搭載物100が後方に移動した場合に、第1の実施例に比べて、より早いタイミングで搭載物100が駆動用モータMに衝突する。また、駆動用モータMの先端面Sm1を燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりも前方に配置するので、搭載物100が比較的大きい場合でも、搭載物100は燃料電池FCよりも先に駆動用モータMに衝突する。
【0065】
以上の構成を有する第4の実施例の車輌は、第1の実施例の車両VEと同様な効果を有する。加えて、駆動用モータMの先端面Sm1が、燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりも前方に突出するように、駆動用モータMを配置しているので、衝突時において、搭載物100を、燃料電池FC及び支持部16よりも先に駆動用モータMに衝突させることができる。したがって、搭載物100の衝突による駆動用モータMの下方かつ後方への移動を、搭載物100の衝突による燃料電池FCの後方への移動よりも先に発生させることができるので、燃料電池FCをより確実に下方に回転させることができる。また、駆動用モータMを、第1の実施例に比べてより前方に配置させるので、衝突が発生した際に、より早いタイミングで搭載物100を駆動用モータMに衝突させることができる。したがって、より早いタイミングで燃料電池FCの回転を発生させることができるため、より早いタイミングでクラッシャブルゾーンの拡大を開始できる。加えて、より早いタイミングで燃料電池FCの回転を発生させることができるため、燃料電池FCを縦置きに近い状態までより大きく回転させることができる。それゆえ、クラッシャブルゾーンをより広げることができる。
【0066】
E.第5の実施例:
図13は、第5の実施例の車輌のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す断面図である。なお、図13では、図示の便宜上、一対のサイドメンバ18a,18bを省略している。第5の実施例の車輌は、衝撃伝達部50を備えている点において第1の実施例の車両VEと異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0067】
衝撃伝達部50は、車輌の長さ方向に延びた剛材であり、駆動用モータMの先端面Sm1の下方に接合されている。衝撃伝達部50は、衝突時の衝撃により搭載物100が後方に移動した場合に搭載物100と衝突し、その衝突による力を駆動用モータMに伝える。衝撃伝達部50の前方の先端位置は、燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりもΔxだけ前方に位置している。したがって、衝突時の衝撃により搭載物100が後方に移動した場合に、第1の実施例に比べて、より早いタイミングで搭載物100が衝撃伝達部50を介して駆動用モータMに衝突する。また、衝撃伝達部50の先端部を燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりも前方に配置するので、搭載物100が比較的大きい場合でも、搭載物100は燃料電池FCよりも先に衝撃伝達部50に衝突する。
【0068】
以上の構成を有する第5の実施例の車輌は、第1の実施例の車両VE及び第4の実施例の車輌と同様な効果を有する。なお、第5の実施例における衝撃伝達部50は、請求項における高剛性部材に相当する。
【0069】
F.第6の実施例:
図14は、第6の実施例の車輌のエンジンコンパートメント内における燃料電池及び駆動用モータの配置状態を示す斜視図である。第6の実施例の車輌は、支持部16,支持シャフト12及び一対のブラケット10a,10bを備えていない点と、一対の軸受け部14a,14bに代えて一対の接合部24a,24bを備えている点と、一対のブラケット25a,25bを備えている点とにおいて、第1の実施例の車両VEと異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0070】
接合部24aは、第1の実施例の軸受け部14aと同じ位置に配置されている。同様に、接合部24bは、第1の実施例の軸受け部14bと同じ位置に配置されている。ブラケット25aは、軸受け部14a及び燃料電池FCの第1の側面Sf2に接合されている。同様に、ブラケット25bは、軸受け部14b及び燃料電池FCの第2の側面Sf3に接合されている。
【0071】
燃料電池FCは、駆動用モータMの上面に載置され、駆動用モータMと接合されている。したがって、燃料電池FCは、駆動用モータMにより支持されると共に、一対のブラケット25a,25bを介して一対のサイドメンバ18a,18bにより支持されている。
【0072】
このような構成を有する第6の実施例の車輌において、前方衝突が発生して、搭載物100が駆動用モータMに衝突すると、駆動用モータMは、下方かつ後方(方向d1)に移動する。燃料電池FCは駆動用モータMと接合されているので、駆動用モータMの移動の応力(下方かつ後方への力)が燃料電池FCに伝わる。ここで、燃料電池FCは、一対のブラケット25a,25bと接合されているので、燃料電池FCのうち、先端面Sf1側は、駆動用モータMの移動の応力により一対のブラケット25a,25bを結ぶ仮想軸CXを軸として下方に回転し、背面Sf0側は、仮想軸CXを軸として上方に回転する。
【0073】
以上の構成を有する第6の実施例の車輌は、第1の実施例の車両VEと同様な効果を有する。加えて、支持部16や支持シャフト12や一対のブラケット10a,10bを省略できるので、車両VEの製造コストを抑えることができる。なお、第6の実施例において、一対のブラケット25a,25bは、請求項における支持部に相当する。以上の各実施例からも理解できるように、燃料電池をモータの移動の応力により車輌の高さ方向に回転可能に支持する任意の支持部を、本発明の車輌に採用することができる。また、第6の実施例において、駆動用モータMの上面は、請求項における伝達部に相当する。
【0074】
G.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0075】
G1.変形例1:
各実施例では、駆動用モータMの鉛直上方に配置されていたのは燃料電池FCであったが、燃料電池FCに代えて、又は、燃料電池FCに加えて、PCU(Power Control Unit:電力制御ユニット)を配置することもできる。かかる構成においても、車輌の衝突時における、PCUの後方への水平移動を抑制することができる。なお、燃料電池FC及びPCUを駆動用モータMの鉛直上方に配置する場合、駆動用モータMの上方に燃料電池FCを配置すると共に燃料電池FCの上方にPCUを配置する構成や、燃料電池FCとPCUとを駆動用モータMの鉛直上方の位置において、互いに水平に並べて配置する構成を採用することができる。
【0076】
G2.変形例2:
第2実施例では、一対のブラケット20a,20bは、駆動用モータMと支持部16とのいずれにも接合されていたが、これに代えて、いずれか一方のみに接合され、他方には接合されない構成とすることもできる。例えば、一対のブラケット20a,20bを、それぞれ、駆動用モータMに接合し、支持部16には接合しない構成とすることもできる。この構成においては、平常時(衝突が発生していない状態)において、駆動用モータMと燃料電池FCとは接続されていない。この構成においても、図8,9に示すように、駆動用モータMの後端部側が上方に回転するのに伴って一対のブラケット20a,20bも上方に回転するため、一対のブラケット20a,20bは、支持部16と当接して支持部16の後端部側を押し上げることができる。以上の実施例及び変形例からも理解できるように、エンジンコンパートメント内におけるモータの移動の応力を、燃料電池に伝える任意の伝達部を、本発明の車輌に採用することができる。
【0077】
G3.変形例3:
第6の実施例では、駆動用モータMと燃料電池FCとは接合されていたが、これに代えて、駆動用モータMと燃料電池FCとを接合しない構成とすることもできる。この構成では、搭載物100の衝突により駆動用モータMが下方かつ後方に移動すると、駆動用モータMは燃料電池FCから離れるので、下方における燃料電池FCの支持が失われることとなる。この場合、燃料電池FCは、一対のブラケット25a,25bのみにより支持される。ここで、燃料電池FCにおいて一対のブラケット25a,25bの接合位置は、背面Sf0に近い位置であるので、一対のブラケット25a,25bが燃料電池FCの重量を支えきれず、燃料電池FCの先端面Sf1側は下方に移動することとなる。この場合、燃料電池FCの先端面Sf1側は仮想軸CXを軸として下方に回転し、背面Sf0側は仮想軸CXを軸として上方に回転する。
【0078】
G4.変形例4:
第1〜5の実施例では、燃料電池FCを回転移動させるための軸として、支持シャフト12を備えていたが、支持シャフト12を省略することもできる。この場合、一対のサイドメンバ18a,18b間に配置されている剛材であるクロスメンバを、燃料電池FCを回転移動させるための軸として用いる構成を採用することができる。
【0079】
G5.変形例5:
第5の実施例では、衝撃伝達部50として、車輌の長さ方向に延びた剛材を用いていたが、これに代えて、エンジンコンパートメントEC内に配置されるべき剛性の高い任意の部材を用いることもできる。具体的には、エアコンプレッサーや、ウォーターポンプや、各種配管等を、駆動用モータMの前方に配置して駆動用モータMの先端面Sm1と接合する構成を採用することができる。この構成においても、エアコンプレッサーや、ウォーターポンプや、各種配管等の前方の先端位置を、燃料電池FCの先端面Sf1よりも前方に位置させることにより、第5の実施例の車輌と同様な効果を奏する。
【0080】
また、衝撃伝達部50やエアコンプレッサー等を、駆動用モータMと接合する構成に代えて、駆動用モータMと接合しない構成とすることもできる。例えば、衝撃伝達部50やエアコンプレッサー等を、駆動用モータMから離して駆動用モータMの前方に配置する構成を採用することもできる。この構成においても、衝突の際には、搭載物100の後方への移動に伴って衝撃伝達部50が後方に移動するので、衝撃伝達部50と駆動用モータMとが当接して第5の実施例と同様な効果を奏する。
【0081】
また、第5の実施例では、駆動用モータMの先端面Sm1と、燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1とは、車両長さ方向の位置がほぼ同じであったが、本発明は、これに限定されるものではない。第4の実施例と同様に、駆動用モータMの先端面Sm1を、燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりも前方に突出させる構成を採用することもできる。また、これとは反対に、駆動用モータMの先端面Sm1を、燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりも後方に突出させる構成を採用することもできる。この構成においても、衝撃伝達部50の前方の先端位置が、燃料電池FCの先端面Sf1及び支持部16の先端面Sh1よりも前方に位置することにより、衝突時において、搭載物100を、燃料電池FC及び支持部16によりも先に駆動用モータMに衝突させることができる。
【0082】
G6.変形例6:
第1〜5の実施例では、一対の軸受け部14a,14b及び支持シャフト12は、車輌の長さ方向における燃料電池FCの中央位置(重心位置)に対して、車両VEの長さ方向にオフセットされた位置に配置されていたが、本発明は、これに限定されるものではない。一対の軸受け部14a,14b及び支持シャフト12を、車両VEの長さ方向における燃料電池FCの中央位置(重心位置)に配置することもできる。この場合であっても、駆動用モータMの移動により、一対のブラケット10a,10b、又は一対のブラケット20a,20bを介して支持部16及び燃料電池FCが下方に引っ張られるので、燃料電池FCを鉛直下方に回転させることができる。また、上記変形例3に示すように、第6の実施例において駆動用モータMと燃料電池FCとを接合しない構成においても、衝突の衝撃により、一対のブラケット25a,25bを通る仮想軸CXを軸として、燃料電池FCを回転させることができる。
【0083】
G7.変形例7:
各実施例では、エンジンコンパートメントECは、車輌の前方側に配置されていたが、これに代えて、車輌の後方側に配置された構成にも、本発明を適用することができる。この構成においても、車輌の後方衝突時における、燃料電池FCやPCUの前方への移動を抑制できる。加えて、後方衝突の際に、燃料電池FCやPCUが、エンジンコンパートメントと車室CAとの境界部に衝突することを抑制できる。
【0084】
G8.変形例8:
各実施例では、車両VEは電気自動車であったが、動力源としてガソリンエンジンとモータとを備えるハイブリッド車輌に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0085】
10a,10b,20a,20b,25a,25b…ブラケット、12…支持シャフト、14a,14b…軸受け部、15a,15b…フレーム、16…支持部、17…補強フレーム、18a,18b…サイドメンバ、24a,24b…接合部、26…第2支持部、50…衝撃伝達部、100…搭載物、M…駆動用モータ、P1…角、CA…車室、EC…エンジンコンパートメント、FC…燃料電池、VE…車両、DP…ダッシュパネル、FP…フロアパネル、FW…前輪、RW…後輪、CX…仮想軸、Cf…中央位置、Sf0…背面、Sf1,Sm1,Sh1…先端面、Sf2…第1の側面、Sf3…第2の側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
エンジンコンパートメントと、
前記エンジンコンパートメント内に配置されたモータと、
前記エンジンコンパートメント内において前記モータの上方に配置され、前記モータに電力を供給する燃料電池と、
前記燃料電池を支持する支持部であって、前記燃料電池を前記車両の高さ方向に回転可能に支持する支持部と、
を備える、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車輌において、
前記支持部は、前記車輌の長さ方向における前記燃料電池の重心位置に対して、前記車輌の長さ方向にオフセットされた位置において、前記燃料電池を支持する、車輌。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車輌において、さらに、
前記支持部に対して前記車輌の長さ方向にオフセットされた位置に配置され、前記エンジンコンパートメント内における前記モータの移動の応力を、前記燃料電池に伝える伝達部を備える、車輌。
【請求項4】
請求項3に記載の車両において、
前記伝達部は、前記車両の衝突が発生していない状態において、前記モータと前記燃料電池とにそれぞれ当接している、車両。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両において、さらに、
前記エンジンコンパートメント内において互いに前記車両の幅方向に離れて配置された一対のサイドメンバを備え、
前記支持部は、前記一対のサイドメンバに両端を接続された棒状部材を有する、車両。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両において、
前記エンジンコンパートメントは、前記車輌の前方側に配置され、
前記モータの前方端部は、前記燃料電池の前方端部よりも前方に突出している、車両。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両において、さらに、
前記エンジンコンパートメント内において前記モータよりも前方に配置され、剛性の高い部材である高剛性部材を備え、
前記エンジンコンパートメントは、前記車輌の前方側に配置され、
前記高剛性部材の前方端部は、前記燃料電池の前方端部よりも前方に突出している、車両。
【請求項8】
燃料電池を搭載した車両であって、
エンジンコンパートメントと、
前記エンジンコンパートメント内に配置され、前記燃料電池から供給される電力により駆動するモータと、
前記エンジンコンパートメント内において前記モータの上方に配置され、前記燃料電池により得られた電力を、前記モータに供給するための電力制御ユニットと、
前記電力制御ユニットを支持する支持部であって、前記電力制御ユニットを前記車両の高さ方向に回転可能に支持する支持部と、
を備える、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−162108(P2011−162108A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28774(P2010−28774)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】