説明

車体のフレーム用連結部材

【課題】走行中の外乱を抑えると共にオフセット衝突に対する衝撃吸収量を向上しかつ軽量化し得るフレーム構造を実現する。
【解決手段】フロントサイドフレーム12とメンバー22との各車体前側端部12a・22a同士が車体幅方向に間隔をあけて配設され、両端部同士を矩形閉断面形状の連結部材25を介して一体的に結合する。連結部材を、コ字形部材と板状部材とにより形成し、両部材の溶接部分となる各縁部に形成された各フランジ状部分を車体前後方向に対して斜め方向に延出するように設ける。車体の上下前後方向からの外力を、斜め方向のフランジ状部分がせん断方向で受けることができるため、連結部材を薄肉板材による軽量な構造としても、位相の異なる上下運動を容易に抑えることができると共に、サイドフレームとメンバーとが一体となって変形することができ、衝撃時の大きなエネルギ吸収量を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドフレームとメンバーとの各端部同士を連結する車体のフレーム用連結部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車型自動車の車体前部のフレーム構造において、車体前後方向に延在する左右のサイドフレームと、ホイールハウスの上部からヘッドライト回りに至るメンバーとが車体前端部にて互いに近接するように配設されているものがある。そのようなフレーム構造にあって、フロントサイドフレームとメンバーとの各車体前端部同士が車体幅方向に間隔をあけて配置され手いる場合には、それら両端部同士を連結部材により一体的に連結するものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−231435公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1のものにあっては、フロントサイドフレームの車体前側端面と、フロントピラーの付け根部分から前方に延出して設けられたメンバーとしてのエプロンレインフォースメントの車体前側端面(特許文献1の図示例では、さらに連結部材と呼ばれる部材を介している)とが面部と呼ばれる板状部材を介して互いに連結されている。
【0004】
そのようなフレーム構造の場合には、走行中における路面凹凸など(外乱)に伴うフロントサイドフレームとエプロンレインフォースメント(特許文献1における連結部材)との間における位相の異なる上下運動を抑えることが困難であるという問題があった。また、オフセット衝突した場合に、フロントサイドフレームとエプロンレインフォースメント(特許文献1における連結部材)とが車体幅方向に開き易く、衝撃吸収量が低減するという問題があった。それらを解決するためには、フレームなどを厚肉で形成したりすることが考えられるが、重量増になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決して、走行中の外乱を抑えると共にオフセット衝突に対する衝撃吸収量を向上しかつ軽量化し得るフレーム構造を実現するために本発明に於いては、車体前後方向に延在するサイドフレーム(11・12)と、前記サイドフレーム(11・12)の一端部(12a)に対して間隔をあけて位置する端部(22a)を有するメンバー(21・22)と、前記サイドフレーム(11・12)と前記メンバー(21・22)との前記各端部(12a・22a)同士を一体的に連結する連結部材(25)とを有し、前記連結部材(25)が、車体幅方向から見てコ字状断面形状をなしかつその開放面を車体前方に向けたコ字形部材(26)と、前記コ字形部材(26)の前記開放面を閉塞する板状部材(27)とにより矩形閉断面形状に形成され、前記コ字形部材(26)の一対の縁部と前記板状部材(27)の対応する両縁部とが車体前後方向に対して斜め上下方向に延出する各フランジ状に形成され、かつ前記各フランジ状部分(26a・27a、26b・27b)が結合されているものとした。
【発明の効果】
【0006】
このように本発明によれば、サイドフレームとメンバーとの両端部同士を一体的に連結する連結部材を、コ字形部材と板状部材とによる矩形閉断面形状とし、さらに両部材の対応する縁部同士を車体前後方向に対して斜め上下方向に延出するフランジ状に形成しかつ対応する各フランジ状部分同士を結合したことから、車体の上下前後方向からの外力に対して、斜め方向に延在することになるフランジ状部分がせん断方向で外力を受けることができるため、連結部材を薄肉板材から形成するという軽量な構造としても、サイドフレームとメンバーとの間の連結部材を介しての剛性を高めることができる。それにより、車体剛性が高まり、走行中における路面凹凸など(外乱)に伴うサイドフレームとメンバーとの間における位相の異なる上下運動を容易に抑えることができる。また、オフセット衝突に対して、サイドフレームとメンバーとの車体幅方向への開きを防止できると共に、サイドフレームとメンバーとが高剛性の連結部材を介して結合されていることから、サイドフレームとメンバーとが一体となって変形することができ、衝撃時の大きなエネルギ吸収量を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された乗用車型自動車の全体を斜め前方から見た斜視図であり、図2は、図1の矢印II線から見た車体右前側部分を示す要部拡大上面図である。
【0008】
図1に示されるように、本実施形態の車体構造は、前部車体の骨格強度部材として、車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレーム11・12と、フロントサイドフレーム11・12の先端(車体前側)を互いに接続するフロントバンパビーム13とを有し、これらの内側にエンジンルーム14を画定している。なお、フロントサイドフレーム11・12の車体前側には車体前方に延出する左右のエクステンション30がそれぞれ結合されており、各エクステンション30の車体前側部分にフロントバンパビーム13の左右両端部が結合されている。左右のフロントサイドフレーム11・12は、各々、後端をアウトリガー15・16によって左右のサイドシルメンバー17・18の前端に固定接合されている。
【0009】
また、左右のフロントピラー19・20から斜め下方に延出し、左右のフロントサイドフレーム11・12の車体前側端部の近傍にそれぞれ至る左右のメンバー21・22が配設されている。なお、左右のメンバー21・22と左右のフロントサイドフレーム11・12とにより確定される空間には前輪用の左右のホイールハウス23・24が設けられている。
【0010】
なお、各骨格強度部材は例えばコ字状断面部材と板状部材とにより矩形閉断面を形成するものであって良く、この形状は車体の骨格強度部材として公知であり、その詳しい説明は省略する。
【0011】
図2は車体前側右角部を示すものであるが、左右については同じ構造であって良く、以下、特に断らない限り車体前側右角部について説明する。上記したようにまた図2に示されるように、フロントサイドフレーム12の車体前側端部12aの車体幅方向外側となる側方に所定の間隔をあけて、メンバー24の車体前側端部24aが位置している。それら両端部12a・24a同士は連結部材25を介して互いに一体に結合されている。
【0012】
連結部材25は、図3に示されるように、例えば鋼板をコ字状断面形状を有するように形成したコ字形部材26と、コ字形部材26の開放面を覆うように鋼板を形成した板状部材27とを一体化して車体幅方向から見て矩形閉断面形状を有するように形成されている。コ字形部材26の開放面を画定する車体上下方向の両縁部分が拡開状に斜め上下方向ににそれぞれ曲折されており、それら曲折された斜め延出部分により横長の各フランジ状部分26a・26bが形成されている。また、板状部材27の車体上下方向の各フランジ状部分26a・26bに対応する両縁部分が、コ字形部材26の開放面に対して反り返る斜め上下方向に曲折されており、それら曲折された斜め延出部分により横長の各フランジ状部分27a・27bが形成されている。
【0013】
連結部材25のフロントサイドフレーム12とメンバー24との結合状態では、コ字形部材25aの開放面すなわち板状部材27の外面が車体前方に臨むようにされている。連結部材25の長手方向は車体幅方向に延在し、連結部材25の長手方向の各端がフロントサイドフレーム12とメンバー24とに結合されている。なお、連結部材25の長手方向の各端における矩形状の各開口の辺となる部分にはスポット溶接用の各舌片が形成されており、各舌片が各端部12a・24aの適所に溶接されている。
【0014】
このようにして構成された車体構造にあっては、走行中における路面凹凸など(外乱)に伴って、フロントサイドフレーム11・12とメンバー23・24との間に位相の異なる上下運動(図5の矢印により示される上・下)や前後運動(図5の矢印により示される前・後)が生じた場合に、連結部材25における互いに溶接結合された各フランジ状部分26a・27a(26b・27b)に、図5の矢印S1・S2に示されるようにそれぞれの延出方向の力が作用する。その力を各フランジ状部分26a・27a(26b・27b)ではせん断方向で受けることができるため、厚肉部材を用いることなく、上下前後方向の外乱に対する高い剛性を確保することができ、車体の軽量かつ高剛性化を促進することができる。
【0015】
また、本図示例のように各フロントサイドフレーム11・12と各メンバー23・24とが車体幅方向に間隔をあけて配設され、かつ両部材が車体前後方向の荷重入力に対して高剛性となる連結部材25を介して一体的に結合されているものにあっては、オフセット衝突時に連結部材25で荷重を受けると、フロントサイドフレーム11・12とメンバー23・24とで荷重を分担でき、オフセット衝突に対する剛性が高いものとなる。そのように車体剛性が高くなることにより、オフセット衝突時にはフロントサイドフレーム11・12とメンバー23・24とが一体となって変形するので、衝突エネルギの吸収量が大きくなり、オフセット衝突に対して大きな効果を奏し得る。
【0016】
なお、上記図示例では車体前部の構造について示したが、車体後部の構造として同様にサイドフレームとメンバーとの互いに結合対象となる各一端部同士が車体幅方向に間隔をあけて配設されている場合には、そのような車体後部の構造に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】発明が適用された乗用車型自動車の全体を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1の矢印II線から見た車体右前側部分を示す要部拡大上面図である。
【図3】図2の矢印III線から見た要部拡大斜視図である。
【図4】図2の矢印IV線から見た要部拡大斜視図である。
【図5】図2の矢印V−V線に沿って見た本発明に基づく連結部材の断面図である。
【符号の説明】
【0018】
11・12 フロントサイドフレーム
12a 端部
21・22 メンバー
22a 端部
25 連結部材
26 コ字形部材
27 板状部材
26a・27a、26b・27b フランジ状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延在するサイドフレームと、前記サイドフレームの一端部に対して間隔をあけて位置する端部を有するメンバーと、前記サイドフレームと前記メンバーとの前記各端部同士を一体的に連結する連結部材とを有し、
前記連結部材が、車体幅方向から見てコ字状断面形状をなしかつその開放面を車体前方に向けたコ字形部材と、前記コ字形部材の前記開放面を閉塞する板状部材とにより矩形閉断面形状に形成され、
前記コ字形部材の一対の縁部と前記板状部材の対応する両縁部とが車体前後方向に対して斜め上下方向に延出する各フランジ状に形成され、かつ前記各フランジ状部分が結合されていることを特徴とする車体のフレーム用連結部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−23424(P2009−23424A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186796(P2007−186796)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】