説明

車体パネル

【課題】 インナパネルを設けた車体パネルにおいて、車体パネルのいずれの部位に歩行者の頭部が衝突しても、衝突安全性に優れている車体パネルを提供することである。
【解決手段】 アウタパネル裏面にインナパネルが接合された車体パネルにおいて、前記インナパネルは、周辺部パネル3 、4 、5 、6 と中央部パネル1 とが一体に接合された構成とされ、前記周辺部パネル3 、4 、5 、6 は前記アウタパネルと互いの周縁部3a、4a、5a、6aで接合されているとともに、前記中央部パネル1 には前記アウタパネル側に頂部が向かう凸部2 が所定間隔をおいて複数形成されていることである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に自動車フードなどに適し、パネルのいずれの (任意の) 部位に歩行者の頭部が衝突しても、歩行者頭部衝突時の安全性に優れた車体パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、自動車のフード、ドアなどの車体パネルには、アウタパネル (外装パネル、外板) とインナパネル (内装パネル、内板) とが、空間を介した閉断面構造をとって組み合わされた複合パネルが汎用される。
【0003】これら複合パネルの、特にインナパネルには、従来から使用されていた鋼板に代わって、軽量化のために、AA乃至JIS 規格による 2000 系、3000系、5000系、6000系、7000系等の高強度で高成形性のアルミニウム合金板が使用され始めている。
【0004】前記フードなどの自動車の複合パネルには、薄板化、軽量化した上での高剛性化が求められており、曲げ剛性や捩じり剛性あるいは張り剛性(耐デント性)の高いことが求められている。このため、前記インナパネルが、これらの剛性の補強に重要な役割を果たす。
【0005】アルミニウム合金製のインナパネルとしては、従来から、鋼板製としてもよく知られている、ビーム型パネルがある。図9 に斜視図で示す通り、このビーム型パネル16は、部分的にパネルをトリミング(除去)して軽量化し、複数本のビーム17から構成されるインナパネルである。
【0006】また、これとは別に、USP 5,244,745 号、USP 6,012,764 号、USP 5,124,191号や、特開2000-168622 号などの公報に開示された、凸部を表面に複数 (多数)設けたコーン型と称されるアルミニウム合金製インナパネルが知られている。図10に斜視図で示す通り、このコーン型パネル18は、円錐台形状(断面が台形形状) のコーンと称される、アウタパネル側に頂部が向かう比較的大きな凸部(突起、ディンプル)19 を、多数、パネル表面に設けている。この凸部2 は、個々に独立した凸部であり、互いの凸部同士の間 (間隔部) は平板乃至凹部となっている。なお、図10では、インナパネルの周辺部に、パネル剛性の補強用として汎用される、例えばコの字状に延在するビード (凸部) が設けられている。
【0007】ただ、近年、自動車の複合パネルには、これらの性能に加えて、歩行者などの衝突安全性の確保が、新たに求められるようになっている。この内、特に自動車フードでは、大人や子供の歩行者などの頭部が衝突した際の安全性の確保が求められるようになっている。より具体的には、自動車フードには、前記歩行者の頭部衝突時の安全性の基準として、国際的に、HIC 値 (Head Injury Criteria、頭部障害値) が、例えば1000以下と、低いことが求められている。
【0008】この衝突安全性について、歩行者頭部の自動車フードへの衝突時には、アウタパネルとインナパネル (複合パネル) が) フード内部のエンジンに向かって変形して、内部のエンジンルーム内蔵物( 剛体) と二次衝突して大きな反力となり、二次的ではあるが、頭部に大きな衝撃を与えることが問題となる。そして、この反力は前記HIC 値を1000以上に著しく高めてしまう。
【0009】図7 に頭部衝突時の頭部への加速度と時間との関係 (実線の曲線) を示す。この図7 の通り、頭部衝突時の頭部への加速度の第1 波のピークは、歩行者頭部の自動車フードへの衝突 (自動車フードの変形) である。図7 から分かる通り、加速度のピークには、前記第1 波のピークP1に続く、第2 波のピークP2がある。これが、前記した、自動車フードパネルが内部のエンジンルーム内蔵物 (剛体) との二次衝突により発生する反力である。ここで、HIC 値とは、図7 の加速度と時間との曲線の積分値であり、HIC 値を低くするためには、前記加速度の第1 波および第2 波のピークを下げる必要がある。
【0010】ただ、加速度の第1 波のピークを下げること自体は難しい。この理由は、加速度の第1 波のピークが、自動車フードのパネルの変形特性 (剛性) に依存するためである。第1 波のピークを下げるためには、自動車フードパネルの剛性を小さくするよう、フードパネルの構造や使用材料特性 (耐力等) を変更する。しかし、自動車フードパネルには、前記した通り、基本要求特性として、薄板化、軽量化した上での高剛性化が求められており、フード全体としての剛性を小さくすることはできない。また、例えこの全体剛性を小さくしても、パネルの変形ストロークの増加に伴い、却って前記加速度の第2 波のピークが大きくなり、HIC 値自体を低くできない。
【0011】したがって、実際問題としてHIC 値を低くするためには、前記加速度の第1 波のピークではなく、前記加速度の第2 波のピークの方を下げる必要がある。
【0012】この加速度の第2 波のピークを下げる場合に大きな問題となるのが、自動車フードパネルと内部のエンジンルーム内蔵物との間隔 (クリアランス) である。加速度の第2 波のピークは、自動車フードの内でも、フードパネル4 ( インナパネル1)と内部のエンジンルーム内蔵物との間隔 (後述する図2 、5 で示すクリアランスS)が比較的小さいパネルの場合や、パネルの部位によって大きくなる。
【0013】この間隔が小さい場合には、歩行者頭部の衝突時の運動エネルギーを吸収できずに、フードパネルが変形して、エンジンルーム内蔵物と二次衝突するため、頭部への反力が大きくなる。そして、この場合、前記加速度の第2 波のピークP2は、前記図6 に示したように、加速度の第1 波のピークP1に比して、著しく大きくなる。この傾向が著しいのは、フード内部のエンジンルーム内蔵物とフードインナパネルとの最小間隔が、特に、50mm以下であるような場合である。
【0014】これに対し、自動車フードパネルの内、内部のエンジンルーム内蔵物が真下に無いなど、前記間隔が比較的大きいパネル領域などでは、歩行者頭部の衝突時に、フードパネルが大きく変形しても、内部のエンジンルーム内蔵物 (剛体) と衝突しないため、前記加速度の第2 波のピークは発生せず、HIC 値は元々低い。
【0015】但し、今日における自動車の構造においては、排気量の増加に伴うエンジンの大型化や、多機能化による搭載部品の増加などにより、設計上、前記間隔を大きくできない部位が必然的に生じる。したがって、このようなパネルやパネル部位でも、歩行者の頭部衝突時の前記加速度のピークを低減できる、フードパネル構造が求められている。
【0016】また、歩行者の頭部などは、車体パネルのいずれの部位にの衝突するか特定はできない。このため、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた車体パネルとは、車体パネルのいずれの (任意の) 部位に歩行者の頭部が衝突しても、そして、前記間隔が小さい部位に歩行者の頭部が衝突しても、衝突安全性に優れている必要がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】前記ビーム型インナパネルは、パネルをトリミングした空間部への衝突の場合には、前記間隔が比較的大きいパネル領域に相当するため、前記図7 に示す加速度の第1 波や第2 波のピークは大きくならない。しかし、図9 にh で示す歩行者頭部が、ビーム型インナパネルに配置されたビーム17の部分に衝突した場合、剛性の大きい剛体であるビーム17への衝突ゆえに、前記図7 に示す加速度の第1 波のピークP1が著しく大きくなる。したがって、車体パネルのいずれの部位に歩行者の頭部が衝突しても、衝突安全性に優れるとは言えない。
【0018】一方、前記コーン型インナパネルは、前記ビーム型インナパネルに比して、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れる。また、このコーン型凸部に限らず、後述するインナパネルを略波形の断面形状とする凸部など、インナパネルに所定の凸部を設けた場合には、歩行者の頭部衝突時の安全性を向上させる。
【0019】しかし、このような歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた形状の凸部を、インナパネルに、プレス成形にて形成するのは容易ではない。歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた形状の凸部は、車体パネルの剛性向上のためにも、凸部の高さや凸部の幅などの大きさを比較的乃至十分大きくする必要があるためである。このような、大きな凸部を成形するには、素材板の特性やプレス成形条件などの点で限界が伴う。このため、インナパネルに実際に設けられる前記凸部は、歩行者の頭部衝突時の安全性から期待される高さや幅からすると、より小さいものに制約せざるを得ない。
【0020】このため、前記した、特に、インナパネルと内部の内蔵物 (剛体) との間隔が比較的小さい車体パネル部位では、図10にh で示す歩行者頭部衝突時に、変形した車体パネルが剛体と二次衝突するため、頭部への反力が大きくなる可能性がある。そして、この場合、前記図7 に示す加速度の第2 波のピークP2は、著しく大きくなる。したがって、やはり、車体パネルのいずれの部位に歩行者の頭部が衝突しても、衝突安全性に優れるとは言えない。
【0021】したがって、現状では、ビーム型インナパネルやコーン型インナパネルを採用するしないにかかわらず、歩行者頭部がフードなどの車体パネルの何処に衝突しても、HIC 値を1000以下に小さくするための適切な車体パネル構造手段が無い。この結果、前記最小間隔部分の間隔を50mmを相当量越える値に大きくしており、そのために、フード乃至ボンネットの高さを高くしているのが実情である。そして、この最小間隔部分を大きくした場合、自動車フードの設計やデザインなどが大きく制約や犠牲を受けざるを得ない。
【0022】また、自動車フードの設計やデザインなどの都合から、前記最小間隔部分を50mm以下に小さくする場合には、前記ビーム型パネルなども含め、特開平5-155356号公報などのように、重量増加となるグラスウールなどの衝撃吸収体をアウタとインナパネルとの間の空間に充填しているのが実情である。しかし、衝撃吸収体の使用のみで、その効果を出すためには、アウタとインナパネルとの間の空間を満たすだけの相当の量や材質の選択が必要である。このため、車体の軽量化を犠牲にするとともに、衝撃吸収体充填のためのコスト増や作業の煩雑さも伴う。
【0023】このような実情に鑑み、本発明の目的は、インナパネルを設けた車体パネルにおいて、車体パネルのいずれの (任意の) 部位に歩行者の頭部が衝突しても、そして、前記間隔が小さい部位に歩行者の頭部が衝突しても、衝突安全性に優れている車体パネルを提供しようとするものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明請求項1 の要旨は、アウタパネル裏面にインナパネルが接合された車体パネルにおいて、前記インナパネルは周辺部パネルと中央部パネルとが一体に接合された構成とされ、前記周辺部パネルは前記アウタパネルと互いの周縁部で接合されているとともに、前記中央部パネルには前記アウタパネル側に頂部が向かう凸部が形成されていることである。
【0025】以下、車体パネルとして、フードを主たる例にして説明するが、本発明はフードのみに限定されるものではない。先ず、本発明では、上記中央部パネルに、アウタパネル側に頂部が向かう凸部を形成する。そして、この凸部は、好ましくは前記コーン型や略波形の断面形状を有するような、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた凸部形状であることを前提とする。
【0026】しかし、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた形状の凸部を、所定間隔をおいて複数個、プレス成形にて、インナパネルに形成するのは、前記した通り、容易ではない。通常のインナパネルでも、車体パネルの形状設計に応じてプレス成形される。しかし、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた形状の凸部を、上記中央部パネルに、プレス成形にて形成する場合、前記車体パネルの形状設計に応じた形状へのプレス成形の上に、更に、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた形状の凸部のプレス成形が加わる。また、そして、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた形状の凸部では、車体パネルの剛性向上のためにも、凸部高さや凸部幅などの大きさを比較的大きくする必要がある。
【0027】このような凸部が大きく、車体パネルの形状設計に応じた形状を有するようなインナパネルの成形は極めて困難となる。したがって、工程を分けて複数回の成形を行ったり、形状の手直しなどの余分な工程が必然的に必要となる。また、これらを行っても、成形不良発生による歩留りの低下は必然的である。
【0028】本発明では、このような状況に鑑み、インナパネル素板の構成として、インナパネルを一枚の単一の板から構成するのではなく、周辺部パネルと中央部パネルとに分離 (分割) した構成とする。これによって、本来のインナパネル中央部に相当する中央部パネルの、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた凸部形状を設ける成形加工と、車体パネルの形状設計に応じた本来の形状への成形加工とを、両者とも容易にする。
【0029】即ち、中央部パネルには、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れ、また、必要によって、要求される車体パネルの剛性を補強できうる形状の凸部を、成形加工により設ける。また、車体パネルの形状設計に応じた本来のインナパネル中央部形状への成形加工も行う。
【0030】一方、周辺部パネルは、前記アウタパネルと互いの周縁部で接合されるような設計形状に、また、必要によって、中央部パネルのみでは不足する剛性を補う形状に、別個にプレス成形する。そして、これらの成形後に、中央部パネルと周辺部パネルとを接合して、インナパネルとして一体化させる。ただ、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた形状の凸部を中央部パネルに設けた後に、周辺部パネルと接合して一体化させ、その後、車体パネルの形状設計に応じたインナパネル全体形状へ成形加工しても良い。
【0031】ここで、本発明における中央部パネルとは、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れ、かつ、これが求められる領域や広さあるいは平面形状を有するインナパネル部分を言う。一方、本発明における周辺部パネルとは、歩行者の頭部衝突時の安全性が特には求められず、剛性に優れ、前記アウタパネルと接合される領域や広さ、あるいは平面形状を有するインナパネル部分を言う。
【0032】したがって、中央部パネルは、歩行者の頭部衝突時の安全性に優れた凸部形状を設けることを最優先する。このためには、凸部形状を中央部パネルに成形しやすい耐力の低い材料を選択する、あるいは、周辺部パネルと同種の材料であっても中央部パネルの板厚を薄くする、などの手段を適宜選択する。しかし、これらの手段の採用は、必然的に、インナパネルとしての剛性を犠牲にし低くする。
【0033】一方、周辺部パネルは、この中央部パネルの剛性低下を補うことを最優先する。このためには、周辺部パネルに、耐力が高い材料を選択する、あるいは、中央部パネルと同種の材料であっても、周辺部パネルの板厚を中央部パネルよりも厚くする、などの手段を適宜選択する。
【0034】また、本発明では、好ましくは、請求項2 に記載のように、前記中央部パネルに吸音効果を有する多数の貫通穴を設けるか、および/または、前記中央部パネル裏面に吸音効果を有する多数の貫通穴が設けられた吸音パネルを設けた、構成とされていることで、衝突時の歩行者の頭部などの保護だけではなく、車体パネルに吸音効果を持たせることが可能となる。このため、例えば、自動車のフード(ボンネット) であれば、前記中央部パネルの貫通穴や吸音パネルを併用あるいは各々単独で用いることで、フード内部のエンジン音を吸音して低減し、車両走行を快適化する吸音効果が得られる。また、前記多数の貫通穴を設けることで、中央部パネルの軽量化も可能である。
【0035】更に、好ましくは、請求項3 に記載のように、前記周辺部パネル板厚の方を前記中央部パネル板厚よりも厚くすることで、インナパネルの全体剛性やフードパネルとしての全体剛性をより向上させることができる。そして、一方では、前記中央部パネルを薄くして、前記凸部をより歩行者の頭部衝突時の保護性を増すための形状に成形しやすくすることが可能となる。しかも、これらの手段によって、車体パネルの軽量化を阻害せずに、歩行者の頭部衝突時の安全性と、要求される車体パネルの剛性の補強とを達成しうる。
【0036】本発明効果は、請求項4 に記載のように、前記中央部パネルの板厚が1.2mm 以下であるような薄板から構成されるインナパネルで達成可能であり、車体パネルの更なる軽量化も可能である。
【0037】また、本発明は、請求項5 に記載のように、前記周辺部パネルと前記中央部パネルとが突き合わせ溶接された後にプレス成形される、所謂テーラードブランク材が、インナパネル用に使用でき、端材の利用など、インナパネルをより製作しやすくすることができる。
【0038】そして、請求項6 に記載のように、車体パネルを構成する各パネルの内の選択されたパネルをアルミニウム合金製とすることが好ましい。アルミニウム合金は、軽量で剛性や成形性にも優れるため、車体パネルのより一層の高剛性化と薄肉化、軽量化が可能となる。
【0039】前記中央部パネルに設ける凸部としては、請求項7 に記載のような、コーン型の凸部を有するか、中央部パネルが略波形の断面形状を有することが、歩行者の頭部衝突時の安全性向上効果が優れている点で好適である。
【0040】本発明車体パネルでは、請求項8 に記載のように、歩行者保護が特に要求される自動車のフードに適用されることが好ましい。
【0041】また、請求項9 に記載のように、自動車のフードであって、歩行者保護が特に難しい、フード内部のエンジンルーム内蔵物とフードにおけるインナパネルとの最小間隔が50mm以下であるフードに適用されることが好ましい。
【0042】本発明車体パネルは、以上のような優れた効果を有するため、自動車のフード以外にも、フェンダ、ドア、ルーフなどの車体パネルとして、車体パネル全般に用いることが出来る。
【0043】なお、本発明では、車体パネルの軽量化などを妨げない範囲で、アウタパネル裏面側の適宜の箇所に、緩衝材および/ または吸音材を配置することを許容する。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図を用いて詳述する。なお、以上および以下の説明は、自動車のフードを主体とした、衝突時の歩行者の頭部保護を中心に説明している。しかし、フードでの歩行者の頭部保護に有効であれば、フード以外の車体パネルでも、衝突時の歩行者の頭部や身体の保護に有効である。
【0045】先ず、図1 〜3 を用いて、自動車フードパネルの場合の一態様を以下に説明する。図1 は本発明に係るフードインナパネルを示す斜視図、図2 は図1 の A-A断面図 (但し、インナパネルにアウタパネル7 を更に設けたフードパネル8aとしての断面を示す) 、図3 は車体20にフードパネル8aを取り付けた態様を示す斜視図である。
【0046】図1 において、インナパネルは、インナパネルの内の中央部パネル1 と、中央部パネル1 を4 周囲から囲む、インナパネルの内の周辺部パネル3 、4 、5 、6とから基本的になる。なお、周辺部パネル3 、4 、5 、6 は、この図1 では、周辺部パネル3 、4 、5 を元々一体のパネルとし、車体前部の周辺部パネル6 との分割構造として例示している。しかし、周辺部パネル3 、4 、5 、6 を全て元々一体のパネルとするか、または全てのパネルを分割構造とするか、あるいはいずれかのパネルを分割構造とするかは、車体パネルの設計や製造条件に応じて適宜選択される。
【0047】図1 において、インナパネルの内の周辺部パネル3 、4 、5 、6 は、各々後述するアウタパネル7 との接合部である端縁部 (平坦部)3a 、4a、5a、6aと、中央部パネルとの接合部である端縁部 (平坦部)3b 、4b、5b、6bとを、段差を有する形状としている。この周辺部パネルは、前記した通り、中央部パネル1 の剛性低下を補うことを最優先する。このためには、断面形状を、図1 の板状から、日形、目形、田形などの適宜の中空形状に変えて、剛性を上げても良い。また、より耐力が高い材料を選択する、あるいは、中央部パネルと同種の材料であっても、周辺部パネルの板厚を中央部パネルよりも厚くする、などの手段を適宜選択する。また、周辺部パネルには、中央部パネル1 やアウタパネル7 と接合して、複合パネルとして一体化させ、車体パネルとしての剛性を発揮するなどの重要な役割もある。このため、中央部パネル1 やアウタパネル7 と接合部は、図1 のような平坦な形状以外にも、後述する接合手段に応じた形状を適宜選択する。
【0048】図1 において、中央部パネル1 と周辺部パネル3 、4 、5 、6 とは、中央部パネル1 の端縁部と、ボルト、ナットあるいはセルフピアシングリベット等の機械的締結手段10a 、10b 、10c により接合されている。この接合は、中央部パネル1 に凸部を形成する成形加工後など、中央部パネル1 や周辺部パネル3 、4 、5、6 が各々成形加工された後に行われる。なお、前記接合手段は、接着剤や溶接(スポット溶接、FSW 法) などにより接合しても、あるいはこれら接合手段と前記機械的な接合手段とを組み合わせて使用しても良く、要は公知の接合手段が適宜選択される。また、接合箇所についても適宜選択される。
【0049】ここで、中央部パネルには、アウタパネル側に頂部が向かう凸部が、車幅方向や車体方向などに所定間隔を置いて、複数個設けられる。例えば、図1 、2 において、中央部パネル1 には、アウタパネル7 側に頂部2aが向かう凸部2 であって、中央部パネル1 の断面を波形とする、複数本のビード (畝) 状の凸部2 が、車幅方向に所定間隔を置いて、車体長手方向に延在して設けられている。この凸部2 は前記頂部2aと凹部 (間隔部)2b とからなる、断面波形の連続する凹凸形状を有する。この凸部2 は、凸部の中でも、歩行者頭部衝突時の安全性が優れている点で好適である。
【0050】ただ、この凸部は、同じく、歩行者頭部衝突時の安全性が優れている前記図10で示したコーン型凸部 (円錐台形状) に置き換えても良い。このコーン型凸部は前記図1 、2 の畝状に連続した (連なった) 凸部2 とは違って、略平らな突起頂部に対する斜辺 (斜面) を有し、基本的に個々に独立 (孤立) した、略同一乃至類似形状の凸部群からなる。そして、互いの凸部同士の間 (間隔部) は平板乃至凹部となっている。
【0051】但し、このような凸部以外にも、前記ビード型 (部分的にパネルをトリミングしない場合も含む) や、エンボス成形形状などの凸部も本発明の範囲に含む。また、これら凸部同士が部分的に連なった凸部群や凸部の高さや径などの大きさや形状が部位により異なる凸部群、これらを組み合わせた凸部群なども変形例として含みうる。そして、凸部を構成する斜辺 (断面) 形状も、傾斜角度や、直線状、下方に凹むシグモード曲線状、上方に膨らむ凸状曲線、これらの組み合わせがなどの斜面形状が適宜選択される。更に、凸部が略直角の縦壁乃至側壁などを有している場合も適宜選択される。
【0052】更にまた、歩行者頭部衝突時の安全性を向上させるために、設ける凸部形状を前記コーン型凸部や断面波型凸部を基本形から変形させ、歩行者頭部衝突時に、凸部ひとつ当たりの局部変形 (衝撃吸収) がより生じ易い形状としても良い。以上説明した凸部は、パネル素板をプレス成形などにより成形加工することにより得られる。
【0053】次に、これらの凸部の機能について説明する。歩行者の頭部が衝突した際に、車体パネルは、アウタパネルとインナパネルとの変形により、車体パネルの内部側に変形する。そして、この衝突の際に、前記各凸部は、凸部の頂部自体が縦圧壊するように変形し、車体パネルと頭部との衝突により生じる衝撃を吸収する機能を果たす。
【0054】この衝撃吸収機能を発揮するためには、凸部の頂部がアウタパネル側に向かう形状である必要がある。また、凸部の頂部自体が縦圧壊にて最大に変形して衝撃吸収機能を高められるように、そして、車体パネルの剛性向上のためにも、凸部高さや凸部幅などの大きさを比較的大きくする必要がある。更に、車体パネルの任意の場所に対して歩行者の頭部が衝突した際にも対応できるように、インナパネル (中央部パネル) に、所定間隔をおいて複数乃至多数形成されている必要がある。
【0055】なお、凸部の所定間隔や配置 (数、間隔等) 条件については、発揮すべき、歩行者頭部衝突可能性領域や部位、衝撃吸収機能や剛性向上効果などから適宜選択される。例えば、凸部を中央パネルの裏面全面に設ける必要は必ずしも無い。即ち、衝突時の歩行者頭部保護のために、例えば、フード内部のエンジンルーム内蔵物とフードインナパネルとの最小間隔が50mm以下であるような小さい部位、特に、子供や大人の頭部が衝突し易い部位など、衝突安全性を高める必要性のある部位を選択して、その部位に部分的に設けることができる。また、設ける凸部は、同じ乃至相似形状としても良く、子供や大人の頭部が衝突し易い部位などに応じ、前記した凸部の諸条件 (形状や大きさ等) を変えることも可能である。
【0056】更に、本発明では、これら中央部パネルの凸部を歩行者の頭部保護の観点からより変形しやすい形状としても良い。この歩行者の頭部保護の観点からの中央部パネル凸部の形状設計は、前記従来のインナパネルの凸部形状には考慮が無かった。より具体的には、本発明においては、インナパネルを分割構造として、周辺部パネルの方で、パネルとしての全体剛性を向上できる。このため、中央部パネル凸部のパネル全体剛性への寄与を低減できる。したがって、本発明においては、中央部パネルに設ける凸部の、歩行者頭部保護の観点からの、設計の自由度が広がる。
【0057】この結果、中央部パネル凸部自体の局部剛性を低下させ、この凸部に対応するアウタパネルへの歩行者頭部衝突時に、凸部をより変形しやすくし、前記二次衝突時の歩行者頭部への反力を低減することができる。これは、中央部パネルに配置された凸部の内の必要箇所の凸部形状を、より変形しやすい形状に、全面的あるいは部分的に変えるようにしてできる。例えば、凸部を構成する前記斜辺に、凸部自体の局部剛性を低下させ、凸部をより変形しやすくするような、凹みや切り欠きなどを設けても良い。
【0058】次に、車体パネル構造につき説明する。図2 の本発明車体パネル (フードパネル) 8aにおいて、前記図1 での中央部パネル1 と周辺部パネル4 、5 とからなるインナパネルは、フードなどの車体デザインに応じた一定の曲率を有するアウタパネル7 と接合され、複合パネル (フード) として一体化されている。
【0059】図2 において、中央部パネル1 の凸部2 の頂部2a上には、樹脂層9 が配置されている。そして、この樹脂層9 を介して、中央部パネル1 の凸部2 とアウタパネル7 の裏面とが互いに接合されている。更に、周辺部パネル4 、5 の縁端部4a、5aにおいて、アウタパネル7 の周縁部7aのヘム(曲げ)加工による嵌合によって、複合パネルとして一体化されている。
【0060】また、この図2 の複合パネルを、自動車のフード( ボンネット) として、自動車20に取り付けた態様を図3 に斜視図で示す。
【0061】次に、図4 は、別の実施態様の複合パネル8bを、自動車のフードとして、自動車20に取り付けた態様を斜視図で示している。図4 において、複合パネル8bのインナパネルである中央部パネル1 は、図1 のものと同じ構造である。ただ、周辺部パネル12は、中央部パネル1 を4 周囲から囲む一体のパネルとされ、かつ、中央部パネル板厚よりも厚くされ、インナパネルの全体剛性やフードパネルとしての全体剛性をより向上させている。そして、中央部パネル1 と周辺部パネル12との各々のパネルの周縁部 (接合部) において、溶接ビード13で示す通り、突き合わせ溶接されて、インナパネルとして一体化されている。なお、図示はしないが、アウタパネル7 との接合は、前記図2 の場合と基本的に同じである。
【0062】なお、前記周辺部パネル12と前記中央部パネル1 とを、突き合わせ溶接した後にプレス成形する、所謂テーラードブランク材としても良い。この場合、パネル製造工程で発生した端材の利用など、インナパネルをより安価に製作することができる。また、図4 において、21はヒンジレインフォースメント、ラッチレインフォースメントなどの公知の (局部) 補強部材である。本発明車体パネルは、これら公知の乃至既存の補強部材を適宜用いて、補強されることを許容する。
【0063】次に、本発明車体パネルに更に吸音性能を付加する態様を示す。車体パネルに吸音性能を付加するためには、前記中央部パネルに吸音効果を有する多数の貫通穴を直接設けるか、または、前記中央部パネルの裏面に吸音効果を有する多数の貫通穴が設けられた吸音パネルを設ける。
【0064】通常、インナパネルに対し、歩行者頭部衝突時の安全性が優れている凸部を設けることと、吸音貫通穴を設けることとは相矛盾するため、いずれかしか設けられない。実際、平板状のインナパネル素材に吸音貫通穴を設けた後に、凸部を成形する際には、吸音貫通穴を起点にパネルが割れたり、吸音貫通穴が潰れてしまうからである。この理由は、後述する通り、吸音効果を有するための貫通穴は穴径が微細であり、かつ、工程の煩雑さを防止するために、凸部成形後ではなく、平板状インナパネル素材に予め設ける必要があるためである。また、凸部の成形条件も、吸音貫通穴が潰れやすい、厳しいものとなるからである。
【0065】しかし、本発明では、前記した通り、中央部パネルの凸部の成形を容易とし、凸部の成形条件も緩和できるため、凸部を成形する際に、吸音貫通穴を起点にパネルが割れたりせず、また、貫通穴を潰さずに成形することが可能となる。このため、インナパネルに対し、歩行者頭部衝突時の安全性が優れている凸部と、吸音効果を有する多数の貫通穴とを、両者設けることができる。
【0066】図5 に、インナパネルである中央部パネルに吸音貫通穴を設ける態様と、吸音貫通穴を設けた吸音パネルを中央部パネルの裏面に設ける態様とを同時に示す。図5 は車体パネル8cの幅方向の断面を示し、15a は中央部パネルに多数設けられた吸音貫通穴である (但し、図では部分的に設けた場合のみ示す) 。また、14は多数の吸音貫通穴15b を設けた吸音パネルであり、中央部パネル1 の裏面に設けられている。車体パネル8cの、この吸音パネル14や吸音貫通穴15b 以外の複合パネル構成は、図2 の車体パネル8aと基本的に同じである。
【0067】吸音パネル14の中央部パネル1 の裏面への設け方は、中央部パネル1 の凸部2の各平坦部2c裏面 (間隔部裏面) において、図示しないボルト、ナットあるいはセルフピアシングリベット等の機械的な接合手段あるいは接着手段、溶接手段などの適宜の接合手段により一体に接合している。また、中央部パネル1 に吸音貫通穴15a を設ける場合には、機械加工により平板状パネルに吸音貫通穴15a を穴あけした後に、凸部2 を成形する。
【0068】なお、吸音パネルの剛性や車体パネルとしての全体剛性をより向上させるために、吸音パネルの端部がアウタパネルとも接合されていることが好ましい。図5はこの態様も示しており、吸音パネル14の端部は、周辺部パネル4 、5 と接合され、間接的にアウタパネル7 とも接合されている。また、吸音パネル自体は平板であっても、凹凸を設けた断面形状であっても良い。
【0069】このように、中央部パネルに吸音効果を有する多数の貫通穴を設けるか、吸音効果を有する多数の貫通穴を有する吸音パネルを設けることで、自動車のフードであれば、フード内部のエンジンなどの音源に対する前面に吸音効果を有する貫通穴を配置したことになる。この結果、衝突時の歩行者頭部保護だけではなく、車体パネルに、パネル内部の音源に対する吸音効果を持たせることが可能となる。即ち、自動車のフードであれば、フード内部のエンジン音を吸音して低減し、車両走行を快適化する吸音効果が得られる。また、吸音パネルを設けた場合、車体パネル自体の補強にもなる。
【0070】この貫通穴の吸音効果は、貫通穴を設けるパネルの板厚と貫通穴径、貫通穴の分布面積 (吸音パネルの設置面積) 、貫通穴前面 (アウタパネル側面) の空気層(空間) 厚みによって決まる。そして、パネル板厚が厚いほど、貫通穴径が小さいほど、貫通穴の分布面積が大きいほど、貫通穴前面 (アウタパネル側面) の空気層 (空間) が厚いほど、前記エンジン音などの吸音効果が高い。
【0071】この点、図5 の吸音パネル14では中央部パネル1 の凸部2 内の空間2dが、貫通穴15b の前面の空気層を形成している。言い換えると、吸音パネルに多数の貫通穴を設けて吸音効果をもたせる場合には、中央部パネルの凸部内に、前記空間 (空気層) を持たせるように、吸音パネルを中央部パネルに接合する必要がある。なお、中央部パネル1 に吸音効果を有する多数の貫通穴15a を設ける場合には、アウタパネル7 の裏面と凸部2 との空間が、貫通穴15a の前面の空気層を形成している。
【0072】ただ、前記パネルの板厚と設置面積は、車体パネルの重量増加抑制との兼ね合いで、また、前記貫通穴前面の空気層厚みは、車体パネル厚みの設計条件や車体パネルと内蔵物との間隔の設計条件との兼ね合いでも決定される。これらを考慮すると、吸音貫通穴の穴径はΦ3mm 以下、好ましくはΦ1mm 以下とし、かつ、設ける貫通穴の合計の開口率を吸音パネルの表面積 (片面) に対し1 〜5%とすることが好ましい。
【0073】なお、吸音貫通穴の吸音効果を増すために、中央パネル裏面や吸音パネル裏面の適宜の箇所に、グラスウールやフェルトなどの吸音材を層状に設けても良い。例えば、従来において、フードインナ裏面に吸音材を設ける場合には、吸音効果を発揮するためには、通常は最低でも10mm以上に厚くして設ける必要がある。しかし、吸音パネルでは、吸音材を新たに設ける必要がなく、吸音材を設ける場合でも数mm程度に薄くすることが可能となる。
【0074】更に、前記貫通穴は、中央パネルや吸音パネルの全面に設ける必要は必ずしも無く、吸音を必要とする部位に限定しても良い。例えば、前記図5 において、中央部パネル1 との接合部には貫通穴を設けずに、この部分の接合強度を確保し、中央部パネル1 の凸部2 (底部面) に対応する吸音パネル14の領域にのみ貫通穴を設けても良い。
【0075】本発明車体パネルで用いる材料は、アウタパネル、インナパネル、そして吸音パネルも含めて、アルミニウム合金以外に、パネル用途によっては、鋼板、樹脂板を使用しても良い。本発明車体パネルは、材料の違いに関わり無く、効果を発揮する。このため、アウタパネルを鋼板やアルミニウム合金板とし、インナパネルを本発明凸部を有するアルミニウム合金板とするような、アウタとインナで材料を変える態様でも良い。但し、軽量化と高剛性化の特性と歩行者保護が特に要求される、フードなどの車体パネルには、アルミニウム合金板を用いるのが特に好ましい。
【0076】このアルミニウム合金板の中でも、特に、1.2mm 以下の特にインナパネル薄板用パネル材としては、高成形性と高強度 (高耐力) の点で、軽量化が図れるAl-Mg-Si系(6000 系) やAl-Mg 系(5000 系) などのアルミニウム合金板が特に好ましい。但し、パネル要求特性を満足するものであれば、前記の他、3000系、7000系等の各種アルミニウム合金板を使用しても良い。
【0077】また、本発明では、車体パネルの軽量化などを妨げない範囲で、アウタパネル裏面側の適宜の箇所に緩衝材や吸音材を配置することを許容する。アウタパネル裏面側とは、例えば、アウタパネルとインナパネルとの間の空間内、インナパネルの裏面側などである。
【0078】次に、前記した図1 、2 の態様の本発明インナパネルであって、図6 に示すようなインナパネル相当部位に、歩行者頭部がh1 (凸部頂部2a、発明例1)、h2( 凸部間隔部2c、発明例2)に各々衝突した時の荷重- 変位曲線の解析結果を、図8 に、長い点線(h1 、発明例1)と短い点線(h2 、発明例2)で示す。前提として、フード内部のエンジンルーム内蔵物とフードインナパネルとの最小間隔は30mmとした。比較として、前記した従来例の内、図9 の従来のビーム型インナパネルを従来例として実線で、また、このビーム型インナパネルの場合に車体パネル内部の内蔵物とインナパネルとの最小間隔 (クリアランス) を80mmと大きくした場合も、一点鎖線で参考に示す。
【0079】解析はFEM 解析を用いたが、実際の車体パネル構造は複雑であるために、簡単にはモデル化できない。このため、発明例の図1 、2 に示すようなインナパネル分割 (接合) 構造も、また図9 の従来のビーム型インナパネルも、アウタパネルとの接合やフードとしての取り付け態様や構造など、車体パネル構造を大幅に簡略化して、HIC 値の傾向をつかむための簡易モデルとした。なお、解析対象のアウタパネルとインナパネルとは同じ6061-T4 アルミニウム合金板とした。
【0080】図8 から分かる通り、図9 の従来のビーム型インナパネル (従来例) の荷重-変位曲線は、時間 (パネル変形) の進行 (ストローク) によって、衝突 (荷重)初期の前記第1 波のピークP1に続き、第2 波のピークP2では、荷重 (頭部への反力) が大きく上昇している。このため、必然的にHIC 値を1000以下にはできないことが予測される。
【0081】これに対し、発明例はいずれも、第1 波および特に第2 波のピークP2領域で、従来例に比して、荷重 (頭部への反力) を小さくできる。したがって、本発明によれば、前記凸部頂部や凸部の間隔部のいずれに歩行者の頭部が衝突しても、また、前記間隔が小さい部位に歩行者の頭部が衝突しても、HIC 値を1000以下に低減し、頭部衝突時の歩行者の安全性を確保できる可能性があることが分かる。
【0082】
【発明の効果】本発明によれば、インナパネルを設けた車体パネルにおいて、車体パネルのいずれの (任意の) 部位に歩行者の頭部が衝突しても、そして、前記間隔が小さい部位に歩行者の頭部が衝突しても、衝突安全性に優れている車体パネルを提供することができる。しかも、この歩行者の頭部衝突時の安全性を、特に、フード内部の内蔵物とインナパネルとの最小間隔が小さくても確保できる、車体パネルを提供することができる。このため、HIC 値を低減して、頭部衝突時の歩行者の安全性を確保した、自動車フードなどに適した車体パネルを提供することができる。また、これらの効果をコストを増加させずに達成することができ、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフードインナパネルの1 態様を示す斜視図である。
【図2】図1 の A-A断面図 (但し、インナパネルにアウタパネル7 を更に設けたフードパネル8aとしての断面を示す) である。
【図3】車体に本発明に係るフードパネルを取り付けた態様を示す斜視図である。
【図4】本発明車体パネルの別の態様を示す斜視図である。
【図5】本発明車体パネル別の態様を示す断面図である。
【図6】本発明に係る車体パネルの解析モデルを示す斜視図である。
【図7】頭部衝突時の頭部への加速度と時間との関係(荷重- 変位曲線)を一般的に示す説明図である。
【図8】実施例における頭部衝突時の頭部への加速度と時間との関係(荷重- 変位曲線)を示す説明図である。
【図9】従来のビーム型インナパネルを示す斜視図である。
【図10】従来のコーン型インナパネルを示す斜視図である。
【符号の説明】
1:インナパネルの中央部パネル、2:凸部、3 、4 、5 、6 、12: インナパネルの周辺部パネル、7:アウタパネル、8:車体パネル、9:樹脂層、10: 締結手段、11: エンジン等内容物、13: 溶接ビード、14: 吸音パネル、15: 吸音用貫通孔、16: ビーム型インナパネル、17: ビーム、18: コーン型インナパネル、19: コーン型凸部、20: 車体、21: ヒンジレインフォースメント、22: ラッチレインフォースメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アウタパネル裏面にインナパネルが接合された車体パネルにおいて、前記インナパネルは周辺部パネルと中央部パネルとが一体に接合された構成とされ、前記周辺部パネルは前記アウタパネルと互いの周縁部で接合されているとともに、前記中央部パネルには前記アウタパネル側に頂部が向かう凸部が形成されていることを特徴とする車体パネル。
【請求項2】 前記中央部パネルに吸音効果を有する多数の貫通穴を設けるか、および/または、前記中央部パネル裏面に吸音効果を有する多数の貫通穴が設けられた吸音パネルを設けた請求項1に記載の車体パネル。
【請求項3】 前記周辺部パネル板厚の方が前記中央部パネル板厚よりも厚い請求項1または2に記載の車体パネル。
【請求項4】 前記中央部パネルの板厚が1.2mm 以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車体パネル。
【請求項5】 前記周辺部パネルと前記中央部パネルとが突き合わせ溶接された後にプレス成形されてインナパネルとされた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車体パネル。
【請求項6】 前記各パネルの内の選択されたパネルがアルミニウム合金製である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車体パネル。
【請求項7】 前記中央部パネルが、コーン型の凸部を有するか、および/または、略波形の断面形状を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車体パネル。
【請求項8】 前記車体パネルが自動車のフードである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車体パネル。
【請求項9】 前記フード内部のエンジンルーム内蔵物と、フードにおける前記中央部パネルとの最小間隔が50mm以下である請求項8に記載の車体パネル。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2003−252246(P2003−252246A)
【公開日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−51410(P2002−51410)
【出願日】平成14年2月27日(2002.2.27)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】