説明

車体前部構造

【課題】正面からのオフセット衝突時にバルクヘッドに発生する衝突荷重を分散させてバルクヘッドに発生する曲げモーメントを小さくすることが可能な車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体の前部に設けられたフロントバルクヘッド14の上辺がバルクヘッドアッパ21、左右の側辺がバルクヘッドサイド31,32で構成され、バルクヘッドサイド31が前傾するとともに下端がフロントサイドフレーム11に結合し、バルクヘッドアッパ21がバルクヘッドアッパサイド23,24を介してダンパハウジング16,17に結合する車体前部構造において、バルクヘッドアッパ21の中央部に荷重伝達部材35,36の各一端部が着脱自在に結合され、左右のダンパハウジング16,17に荷重伝達部材35,36の各他端部が着脱自在に結合されて、バルクヘッドアッパ21とダンパハウジング16,17とが荷重伝達部材35,36でV字状に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造、特に、フロントバルクヘッドを補強する補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車体前部構造として、フロントバルクヘッドの左右端部が支持部材によって、左右のAピラー側に連結されたもの(例えば、特許文献1参照。)や、左右のサスペンション支持部に連結されたもの(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
特許文献1の図1を以下の図7で説明する。なお、符号は振り直した。
図7に示されるように、フロントバルクヘッドとしてのラジエータサポート100は、正面視矩形であり、このラジエータサポート100の上部を構成する車幅方向に延びるラジエータサポートアッパ101の両端部と、左右のAピラー102に渡されたカウル部103との間に第1の補強部材104が設けられ、カウル部103を構成する前壁106と後壁107との間に且つ第1の補強部材104の延長線上に補強部材としてのカウルバルク108が設けられている。なお、符号111は、前後方向に延びてラジエータサポート100の側部を支持するフロントサイドメンバである。
【0004】
特許文献2の図2を以下の図8で説明する。なお、符号は振り直した。
図8に示されるように、フロントバルクヘッドとしてのラジエタシュラウド120は、上部に上横フレーム部121を備え、この上横フレーム部121の両端部と、左右のサスペンション支持部122,122とに前アッパフレーム123,123が渡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−193118公報
【特許文献2】特開2006−56394公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7において、例えば、ラジエータサポート100に正面から衝突物がオフセット衝突した場合には、衝突荷重がラジエータサポート100から左又は右の第1の補強部材104を介してカウル部103及びAピラー102に伝わるが、この衝突荷重を車体の他の部位へも分散することができれば、各部に作用する荷重が小さくなり、車体への衝撃が緩和される。
【0007】
図8においても、ラジエタシュラウド120に正面からオフセット衝突があった場合に、ラジエタシュラウド120から左右一方の前アッパフレーム123を介してサスペンション支持部122に伝わる衝突荷重を車体の他の部位へ分散させることが可能であれば、特許文献1と同様に、車体への衝撃が緩和される。
【0008】
また、図9に示すように、車体の前部に設けられたフロントバルクヘッド130の両側部に、クラッシュストロークを確保する目的で上端が下端よりも前方に位置するように傾斜したバルクヘッドサイド131を備え、左右一方のバルクヘッドサイド131に、SUV等の車高の高い車両135のサイドフレーム136が衝突すると、その衝突荷重におけるバルクヘッドサイド131の軸線131aに直交する垂直分力F1によって、矢印で示すように、バルクヘッドサイド131には曲げモーメントM1が発生する。
【0009】
上記図9でのオフセット衝突を図10の平面図で説明する。
図10に示すように、バルクヘッドサイド131に垂直分力F1が作用すると、フロントバルクヘッド130の上部を構成するバルクヘッドアッパ143の左端部143Lに斜めに連結されたバルクヘッドアッパサイド137では上記の垂直分力F1を十分に支えることが難しいため、バルクヘッドアッパ143には、バルクヘッドアッパ143と右側のバルクヘッドサイド131との結合部である右端部143Rを支点とした、曲げモーメントM2が発生する。
【0010】
この曲げモーメントM2が大きいと、バルクヘッドアッパ143の変形が大きくなり、衝突エネルギーが吸収しにくくなる。そこで、曲げモーメントM2を小さくするためにフロントバルクヘッドアッパ143に補強を施した場合には、車両重量が増加する。
【0011】
本発明の目的は、正面からのオフセット衝突時にバルクヘッドに発生する衝突荷重を分散させてバルクヘッドに発生する曲げモーメントを小さくすることが可能な車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、車体の前部に正面視矩形又は矩形に近いフロントバルクヘッドが設けられ、このフロントバルクヘッドの上辺がバルクヘッドアッパ、左右の側辺がバルクヘッドサイドで構成され、バルクヘッドサイドの下端より上端が前方に位置するようにバルクヘッドサイドが傾斜するとともに下端がフロントサイドフレームに結合し、バルクヘッドアッパがバルクヘッドアッパサイドを介してダンパハウジングに結合する車体前部構造において、バルクヘッドアッパの中央部に一対のバー状に形成された荷重伝達部材の各一端部が着脱自在に結合され、左右のダンパハウジングのそれぞれに一対の荷重伝達部材の各他端部が着脱自在に結合されて、バルクヘッドアッパと左右のダンパハウジングとが荷重伝達部材でV字状に連結されることを特徴とする。
【0013】
フロントバルクヘッドに正面から衝突物がオフセット衝突した際に、フロントバルクヘッドの一方のバルクヘッドサイドに加わった衝突荷重によりバルクヘッドアッパに発生する曲げモーメントのアーム長さは、荷重伝達部材を設けない場合に、衝突を受ける一方のバルクヘッドサイド(即ち、バルクヘッドアッパの一端部)からバルクヘッドアッパの他端部とバルクヘッドアッパサイドとの結合部までの長さになるのに対し、本発明のように荷重伝達部材を設けた場合には、荷重を受ける一方のバルクヘッドサイド(即ち、バルクヘッドアッパの一端部)からバルクヘッドアッパにおける荷重伝達部材で支持された中央部までの長さになり、曲げモーメントのアーム長さが半減して曲げモーメントは小さくなる。
【0014】
また、バルクヘッドアッパの中央部と左右のダンパハウジングとを荷重伝達部材でV字状に連結することで、バルクヘッドアッパ、バルクヘッドアッパサイド、ダンパハウジング及び荷重伝達部材によって左右に枠状の骨格がそれぞれ形成され、これらの枠状の骨格によってフロントバルクヘッドアッパが支持される。この結果、フロントバルクヘッドアッパの曲げモーメントが小さくなる。
【0015】
請求項2に係る発明は、バルクヘッドサイドに沿ってフロントサイドフレームの側面に三角形引掛け部材の底辺の上半分が取付けられ、この三角形引掛け部材の底辺に対向する頂点が、ダンパハウジングの上部に取付けられるとともに前後方向に延びるホイールハウスアッパメンバの先端に取付けられることを特徴とする。
【0016】
フロントサイドフレームの位置が自車より低い相手車両と衝突した場合は、相手車両のフロントサイドフレームを自車の三角形引掛け部材の下半分に当て、衝突荷重を三角形引掛け部材からフロントサイドフレーム、ホイールハウスアッパメンバに伝え、衝突荷重を分散して衝撃エネルギーを吸収しやすくする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、バルクヘッドアッパの中央部に一対のバー状に形成された荷重伝達部材の各一端部が着脱自在に結合され、左右のダンパハウジングのそれぞれに一対の荷重伝達部材の各他端部が着脱自在に結合されて、バルクヘッドアッパと左右のダンパハウジングとが荷重伝達部材でV字状に連結されるので、荷重伝達部材により、バルクヘッドアッパに発生する曲げモーメントのアーム長さを半減することができ、荷重伝達部材を設けないものに比較して曲げモーメントを小さくすることができる。
【0018】
従って、バルクヘッド及びバルクヘッドを支持する支持フレームに対する補強を無くして軽量化を図ることができる。また、荷重伝達部材は着脱自在なので、バルクヘッドアッパ中央に取付けてもエンジンルーム内のメンテナンスに支障ない。
【0019】
更に、バルクヘッドアッパ、バルクヘッドアッパサイド、ダンパハウジング及び荷重伝達部材により左右に枠状の骨格を形成し、これらの枠状の骨格でバルクヘッドアッパを支持することができ、補強すること無しに一層曲げモーメントを小さくすることができ、車体の軽量化も図ることができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、バルクヘッドサイドに沿ってフロントサイドフレームの側面に三角形引掛け部材の底辺の上半分が取付けられ、この三角形引掛け部材の底辺に対向する頂点が、ダンパハウジングの上部に取付けられるとともに前後方向に延びるホイールハウスアッパメンバの先端に取付けられるので、フロントサイドフレームの位置が自車より低い相手車両とオフセット衝突した場合に、フロントサイドフレーム同士がすれ違っても、相手車両のフロントサイドフレームを三角形引掛け部材に衝突させて衝突エネルギーを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る車体前部構造の斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造の平面図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造の側面図である。
【図4】本発明に係る車体前部構造の作用を示す平面図である。
【図5】本発明に係る車体前部構造の作用を示す第1側面図である。
【図6】本発明に係る車体前部構造の作用を示す第2側面図である。
【図7】従来の車体前部構造を示す第1斜視図である。
【図8】従来の車体前部構造を示す第2斜視図である。
【図9】従来の車体前部構造の作用を示す側面図である。
【図10】従来の車体前部構造の作用を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は車両に乗車した運転者を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0023】
本発明の実施例を説明する。なお、図中の矢印(FRONT)は車体前方を表している。
図1に示すように、フロントボディ10は、車室とエンジン室とを隔てるダッシュボードの下部から車体前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム11,12と、これらのフロントサイドフレーム11,12の前端に取付けられたバンパビーム13と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前部の間に取付けられたフロントバルクヘッド14と、フロントサイドフレーム11,12の各長手方向中間部の上部に取付けられたダンパハウジング16,17と、これらのダンパハウジング16,17の上部外縁部に図示せぬ左右のフロントピラーから前方に延びるように取付けられたホイールハウスアッパメンバ18,19と、フロントバルクヘッド14の上部、詳しくは、フロントバルクヘッド14を構成するバルクヘッドアッパ21の両端部に前端がそれぞれ結合されるとともに後端がホイールハウスアッパメンバ18,19の中間部上部に結合されたバルクヘッドアッパサイド23,24と、フロントサイドフレーム11,12の前部外側部に三角形の底辺の上半部26a,27a(一方の符号26aのみ示す。)が取付けられるとともに底辺26c,27c(一方の符号26cのみ示す。)に対向する頂点26d,27d(一方の符号26dのみ示す。)にホイールハウスアッパメンバ18,19の先端部が結合された正面視三角形状の三角形引掛け部材26,27とを備える。
【0024】
フロントバルクヘッド14は、正面視矩形又は矩形に近い枠状のフレームであり、矩形の上辺となるバルクヘッドアッパ21と、矩形の左右の側辺となるバルクヘッドサイド31,32と、矩形の下辺となるバルクヘッドロア33とからなる。
【0025】
バルクヘッドアッパ21は、中央部に棒状の荷重伝達部材35,36の各前端がボルトで着脱自在に取付けられている。荷重伝達部材35,36の各後端は、左右のダンパハウジング16,17にボルトで着脱自在に取付けられている。
【0026】
左側のバルクヘッドサイド31は、上端が下端よりも前方に位置するように傾斜し、右側のバルクヘッドサイド32は、上下方向に延びている。このように、左側のバルクヘッドサイド31を傾斜させたのは、左ハンドルの自動車において、相手車両が自車両の左側にオフセット衝突する際の、フロントバルクヘッド14の後方に配置されたエンジンとバルクヘッドサイド32の上端部との距離、即ち、クラッシュストロークを大きく確保するためである。クラッシュストロークを大きくすれば、より大きな衝突エネルギーを吸収することができる。
【0027】
荷重伝達部材35,36は、自車両に相手車両が正面衝突、特にオフセット衝突した際に、バルクヘッドアッパ21からダンパハウジング16,17へ衝突荷重を伝達するものであり、バルクヘッドアッパ21の左端部又はバルクヘッドサイド31に衝突荷重が加わったときに、バルクヘッドアッパ21に生じる曲げモーメントを小さくする部材である。
荷重伝達部材35と荷重伝達部材36とは同一形状であるが、ここでは、識別のために符号を区別した。荷重伝達部材35,36の詳細な作用は図4〜図6で説明する。
【0028】
図2に示すように、左右のバルクヘッドアッパサイド23,24は、バルクヘッドアッパ21の両端部から車体後方にいくにつれて車体外側方へ広がるようにしてホイールハウスアッパメンバ18,19に結合されている。
荷重伝達部材35,36は、バルクヘッドアッパ21の中央部と左右のダンパハウジング16,17とにV字状に連結されている。
【0029】
バルクヘッドアッパサイド23,24は、ホイールハウスアッパメンバ18,19を介してダンパハウジング16,17に連結されているため、バルクヘッドアッパ21、バルクヘッドアッパサイド23,24、ホイールハウスアッパメンバ18,19、ダンパハウジング16,17及び荷重伝達部材35,36により、左右にそれぞれ平行四辺形に近い枠体41,42(二点鎖線で示した部分である。)が形成される。
このような枠体41,42が形成されることで、フロントボディ10の強度・剛性をより高めることができる。
【0030】
図3に示すように、バルクヘッドサイド31,32(手前側の符号31のみ示す。)は、上端が下端よりも前方に位置するように前傾し、その傾斜角度はθである。
このようにバルクヘッドサイド31,32を前傾させることで、バルクヘッドアッパ21を前方に突出させて、バルクヘッドアッパ21とエンジン45との距離、即ち、クラッシュストロークSTを大きくして衝突エネルギー吸収性能を高めている。
【0031】
三角形引掛け部材26,27(手前側の符号26のみ示す。)は、三角柱状の部材であり、その上半分である上半部26a,27a(手前側の符号26aのみ示す。)がフロントサイドフレーム11,12(手前側の符号11のみ示す。)の側面に固定され、下半分である下半部26b,27b(手前側の符号26bのみ示す。)がフロントサイドフレーム11,12より下方に突出し、三角形の頂点26d,27d(手前側の符号26dのみ示す。)にホイールハウスアッパメンバ18,19(手前側の符号18のみ示す。)の先端部が結合されている。
【0032】
以上に述べた車体前部構造における荷重伝達部材35,36の作用を次に説明する。
図4に示すように、相手車両48が自車両50に前方からオフセット衝突する際には、自車両50のバルクヘッドサイド31又はバルクヘッドアッパ21の左端部21Lに白抜き矢印で示す衝突荷重(垂直分力F1)が作用する。
【0033】
バルクヘッドアッパ21の左端部21Lから右端部21Rまでの長さ(即ち、バルクヘッドアッパ21の全長)をL1とすると、バルクヘッドアッパ21の中央部21Cが荷重伝達部材35,36で支持されているので、バルクヘッドアッパ21の中央部21Cから左端部21Lまでの部分が、衝突荷重によって車体後方へ撓もうとする。このとき、中央部21Cを支点にして衝突荷重とアーム長さL1の半分のL2とによる曲げモーメントM3が発生する。
【0034】
曲げモーメントM3は、図10に示した曲げモーメントM2よりも小さく(M3=M2/2)なるので、バルクヘッドアッパ21、ひいてはバルクヘッド14の変形を抑えることができる。
【0035】
また、バルクヘッドアッパ21、バルクヘッドアッパサイド23,24、ホイールハウスアッパメンバ18,19、ダンパハウジング16,17及び荷重伝達部材35,36により形成される2つの枠体41,42(網掛け部分を囲む枠状の部分である。)によって、バルクヘッドアッパ21が支持されるので、曲げモーメントM3をより一層小さくすることができる。
【0036】
このときに、衝突荷重は、フロントバルクヘッド14から黒塗りの矢印A,Aで示すように、バルクヘッドアッパサイド23,24、ホイールハウスアッパメンバ18,19に順に伝わり、黒塗りの矢印B,Bで示すように、フロントサイドフレーム11,12を後方に伝わり、更に、白抜きの矢印C,Cで示すように、バルクヘッドアッパ21、荷重伝達部材35,36、ダンパハウジング16,17の順に伝わる。
【0037】
図5は図4の状態を側面図で示している。
自車両50のフロントサイドフレーム11,12(手前側の符号11のみ示す。)に対して高さH1だけ高いフロントサイドフレーム136を有するSUV等の車高の高い相手車両48が自車両50に正面からオフセット衝突すると、その衝突荷重におけるバルクヘッドサイド31の軸線31aに直交する垂直分力によって、矢印で示すように、バルクヘッドサイド31には曲げモーメントM4が発生する。
【0038】
このときに、衝突荷重は、フロントサイドフレーム136に衝突されたバルクヘッドサイド31から、黒塗りの矢印Dで示すように、バルクヘッドアッパ21、バルクヘッドアッパサイド23、ホイールハウスアッパメンバ18の順に伝わり、また、白抜きの矢印Eで示すように、バルクヘッドアッパ21、荷重伝達部材35、ダンパハウジング16の順に伝わり、更に、黒塗りの矢印Fで示すように、バルクヘッドサイド31からフロントサイドフレーム11、三角形引掛け部材26、ホイールハウスアッパメンバ18の順に伝わり、また更に、黒塗りの矢印Gで示すように、バルクヘッドサイド31からフロントサイドフレーム11の後方に伝わる。
【0039】
図6に示すように、自車両50のフロントサイドフレーム11,12(手前側の符号11のみ示す。)に対して高さH2だけ低いフロントサイドフレーム136を有する車高の低い相手車両55がオフセット衝突する際には、フロントサイドフレーム136が自車両50の三角形引掛け部材26(又は三角形引掛け部材27(不図示))に衝突し、その衝突荷重は、黒塗りの矢印Hで示すように、三角形引掛け部材26又は三角形引掛け部材27(不図示)からフロントサイドフレーム11(又はフロントサイドフレーム12)に伝わり、また、黒塗りの矢印Jで示すように、三角形引掛け部材26又は三角形引掛け部材27(不図示)からホイールハウスアッパメンバ18(又はホイールハウスアッパメンバ19)に伝わる、というように分散され、衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0040】
上記の図1〜図3に示したように、車体の前部に正面視矩形又は矩形に近いフロントバルクヘッド14が設けられ、このフロントバルクヘッド14の上辺がバルクヘッドアッパ21、左右の側辺がバルクヘッドサイド31,32で構成され、少なくとも一方のバルクヘッドサイド31の下端より上端が前方に位置するようにバルクヘッドサイド31が傾斜するとともに下端がフロントサイドフレーム11に結合し、バルクヘッドアッパ21がバルクヘッドアッパサイド23,24を介してダンパハウジング16,17に結合する車体前部構造において、バルクヘッドアッパ21の中央部21Cに一対のバー状に形成された荷重伝達部材35,36の各一端部が着脱自在に結合され、左右のダンパハウジング16,17のそれぞれに一対の荷重伝達部材35,36の各他端部が着脱自在に結合されて、バルクヘッドアッパ21と左右のダンパハウジング16,17とが荷重伝達部材35,36でV字状に連結されるので、荷重伝達部材35,36により、バルクヘッドアッパ21に発生する曲げモーメントのアーム長さを半減することができ、荷重伝達部材35,36を設けないものに比較してバルクヘッドアッパ21に発生する曲げモーメントを小さくすることができる。
【0041】
従って、フロントバルクヘッド14及びフロントバルクヘッド14を支持する支持フレームに対する補強を無くして軽量化を図ることができる。また、荷重伝達部材35,36は着脱自在なので、バルクヘッドアッパ21の中央部21Cに取付けてもエンジンルーム内のメンテナンスに支障ない。
【0042】
更に、バルクヘッドアッパ21、バルクヘッドアッパサイド23,24、ダンパハウジング16,17及び荷重伝達部材35,36により左右に枠状の骨格としての枠体41,42を形成し、これらの枠体41,42でバルクヘッドアッパ21を支持することができ、補強すること無しにバルクヘッドアッパ21に発生する曲げモーメントを一層小さくすることができ、車体の軽量化も図ることができる。
【0043】
また、バルクヘッドサイド31,32に沿ってフロントサイドフレーム11,12の側面に三角形引掛け部材26,27の底辺26c,27c(一方の符号26cのみ示す。)の上半分としての上半部26a,27a(一方の符号26aのみ示す。)に対応する部位が取付けられ、この三角形引掛け部材26,27の底辺26c,27cに対向する頂点26d,27dが、ダンパハウジング16,17の上部に取付けられるとともに前後方向に延びるホイールハウスアッパメンバ18,19の先端に取付けられるので、フロントサイドフレーム11,12の位置が自車より低い相手車両とオフセット衝突した場合に、フロントサイドフレーム同士がすれ違っても、相手車両のフロントサイドフレームを三角形引掛け部材26又は三角形引掛け部材27に衝突させて衝突エネルギーを吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の車体前部構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0045】
10…フロントボディ(車体前部構造)、11,12…フロントサイドフレーム、14…フロントバルクヘッド、16,17…ダンパハウジング、18,19…ホイールハウスアッパメンバ、21…バルクヘッドアッパ、23,24…バルクヘッドアッパサイド、26,27…三角形引掛け部材、26a,27a…上半部、26b,27b…下半部、26c,27c…底辺、26d,27d…頂点、31,32…バルクヘッドサイド、35,36…荷重伝達部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に正面視矩形又は矩形に近いフロントバルクヘッドが設けられ、このフロントバルクヘッドの上辺がバルクヘッドアッパ、左右の側辺がバルクヘッドサイドで構成され、前記バルクヘッドサイドの下端より上端が前方に位置するようにバルクヘッドサイドが傾斜するとともに下端がフロントサイドフレームに結合し、前記バルクヘッドアッパがバルクヘッドアッパサイドを介してダンパハウジングに結合する車体前部構造において、
前記バルクヘッドアッパの中央部に、一対のバー状に形成された荷重伝達部材の各一端部が着脱自在に結合され、左右の前記ダンパハウジングのそれぞれに前記一対の荷重伝達部材の各他端部が着脱自在に結合されて、バルクヘッドアッパと左右のダンパハウジングとが荷重伝達部材でV字状に連結されることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記バルクヘッドサイドに沿って前記フロントサイドフレームの側面に三角形引掛け部材の底辺の上半分が取付けられ、この三角形引っ掛け部材の前記底辺に対向する頂点は、前記ダンパハウジングの上部に取付けられるとともに前後方向に延びるホイールハウスアッパメンバの先端に取付けられることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−184530(P2010−184530A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28579(P2009−28579)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】