車体前部構造
【課題】ポールのように車幅方向に広がりを備えていない障害物に対して車幅方向中央部分が激突したときに左右のフロントサイドフレームに衝突荷重を分散させると共にパワープラントの後退を抑える。
【解決手段】1本ワイヤ215がパワープラント208の後面に掛け渡たされ、ワイヤ215の左右の前端は、左右のフロントサイドフレーム210の前端部に連結されている。また、ワイヤ215は側面視したときに、フロントサイドフレーム210の軸線と平行に配索されている。
【解決手段】1本ワイヤ215がパワープラント208の後面に掛け渡たされ、ワイヤ215の左右の前端は、左右のフロントサイドフレーム210の前端部に連結されている。また、ワイヤ215は側面視したときに、フロントサイドフレーム210の軸線と平行に配索されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、より詳しくは、ポール状の障害物に対して車幅方向中央部分が前面衝突したときの安全性を向上することのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部は、一般的に、車体前端において車幅方向に延びるバンパーレインフォースメントの左右の端部を夫々左右一対のフロントサイドフレームの前端に連結する、より詳しくはクラッシュカンを介して連結する構造が採用されている。すなわち、車体前部構造として、左右のフロントサイドフレームは前面衝突の際の主なる衝撃吸収部材として機能する構造が採用されている。
【0003】
前面衝突に関する衝撃安全性能試験は二つの態様で行われている。第一の態様がフルラップ前面衝突であり、第二の態様がオフセット前面衝突である。フルラップ前面衝突試験では、車両を所定速度でコンクリート製の障壁に衝突させることにより行われる。オフセット前面衝突試験では、車両の一方の側部(オーバーラップ率40%)をハニカム状の障壁に前面衝突させることにより行われる。
【0004】
自動車製造会社では上記のフルラップ衝突及びオフセット衝突に関する試験を念頭においた前面衝突に関する社内基準を設け、社内基準に合致する車両の開発を行っているのが実状である。
【0005】
実際の前面衝突事故では種々様々な態様がある。その一つに、道路脇に植設された電柱や道路標識の支柱などに衝突した場合である。このポール状の障害物に対して車両の側部で前面衝突したときには、前述したオフセット前面衝突試験と同様に、一方のフロントサイドフレームによって衝撃を吸収することが可能である。しかし、車両の車幅方向中央部分がポール状の障害物に激突した場合、バンパーレインフォースメントは、一般的に設計上これを受け止める強度を備えていないため、その車幅方向中央部分で折れ曲がってしまい、この結果、左右のフロントサイドフレームが機能せずに大きな損壊が発生してしまう虞がある。
【0006】
特許文献1は、圧縮スプリングを内蔵した張力維持機構とワイヤとを使った衝撃荷重分散装置を開示している。この衝撃荷重分散装置は、ワイヤをバンパーレインフォースメントに沿って左右に張設し、そして、このワイヤを左右のフロントサイドフレームのブラケットを介して後方に導いてワイヤの左右の端部の間に張力維持機構を介装すると共にバンパーレインフォースメントの車幅方向中央部分をワイヤに連結する構成が採用されている。この構成によれば、前面衝突時の荷重は、左右のフロントサイドフレームと共にパンパーレインフォースメントの中央部分からワイヤに入力される。
【0007】
【特許文献1】特開2005−262951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の発明は、当該特許文献1に記載のとおり、車両の前面衝突に対して効率良く荷重分散やエネルギ吸収を行うことを目的とするものであるが、圧縮バネを使った張力維持機構を配設した構成から考えて、車速十数Km/h以下でのいわゆる軽衝突時に有効であると考えられる。
【0009】
本発明の目的は、ポールのように車幅方向に広がりを備えていない障害物に対して車幅方向中央部分が激突したときに左右のフロントサイドフレームに衝突荷重を分散させると共にパワープラントの後退を抑えることのできる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
エンジンルームに搭載したパワープラントに係合して該パワープラントから左右に且つ前方に延びる可撓性張力材を備え、
該可撓性張力材は、その前端が、夫々、左右のフロントサイドフレームの前端部に締結されていると共に、側面視したときに、前記可撓性張力材が、車体前後方向に延びる前記左右のフロントサイドフレームの軸線と平行に延びていることを特徴とする車体前部構造を提供することにより達成される。
【0011】
図1〜図4は本発明の基本的概念を説明するための図である。図1〜図4において、参照符号1は車体前部に位置するエンジンルームである。エンジンルーム201はダッシュパネル202によって車室203と区画されている。
【0012】
エンジンルーム201には、多気筒往復動エンジン205、自動変速機206、デファレンシャルギア207を含むパワープラント208が配設されており、パワープラント208の出力がデファレンシャルギア207を介して左右の前輪209に分配される。
【0013】
なお、これら図面には、他起動往復動エンジン205の出力軸205aを車幅方向に向けた所謂「横置き」エンジン方式を採用した例を例示しているが、エンジン出力軸205aを車体前後方向に向けた所謂「縦置き」エンジン方式に対しても本発明を適用してもよい。
【0014】
エンジンルーム201には、その左右の側部に、車体前後方向に延びる閉断面構造のフロントサイドフレーム210を有し、この左右のフロントサイドフレーム210に直接又は間接的にパワープラント208が搭載される。左右のフロントサイドフレーム210の前端にはクラッシュカン211を介してバンパーレインフォースメント212が取り付けられており、バンパーレインフォースメント212は、既知のように、車体前端において車幅方向に延在している。
【0015】
左右のフロントサイドフレーム210には、その前端部に、可撓性張力材の典型例であるワイヤ215の端が固定されており、ワイヤ215はパワープラント208に係合されている。換言すると、パワープラント208に係合したワイヤ215は、平面視したときに、パワープラント208から左右に且つ前方に延びており、左右のワイヤ215の前端が、対応する左右のフロントサイドフレーム210の前端部に締結されている。ここに、本発明にいう「フロントサイドフレームの前端部」という意味は、パワープラント208の前方且つフロントサイドフレーム210が前面衝突(フルオーバーラップ衝突、オフセット衝突)の際に軸線方向への潰れが十分にとれる前方位置という技術的意味であり、必ずしもフロントサイドフレーム210の前端近傍に限定したものでないことは言うまでもない。
【0016】
ワイヤ215は、左右のフロントサイドフレーム210の間に亘って連続して延びる1本のワイヤをパワープラント208の後面に掛け渡してもよいし(図1)、図2及び図3に図示のように、第1、第2の分割ワイヤ215a、215bを用意し、一方のワイヤ215aをパワープラント208の右側に配設し、他方のワイヤ215bをパワープラント208の左側に配設するようにしてもよい。第1、第2のワイヤ215a、215bは、その後端をパワープラント208に締結したアイボルトやパワープラント208に一体成形した固定部材などの固定要素216に締結してよいし、パワープラント208をフロントサイドフレーム210に直接に搭載するマウント部材217に締結してもよい。勿論、第1、第2の分割ワイヤ215a、215bのいずれか一方をパワープラント208の固定要素216に締結し、他方をマウント部材217に締結するようにしてもよい。
【0017】
ワイヤ215は図4に示すように上下に離置する少なくとも2組のワイヤ215A、215Bを用意してもよい。この点については後に説明するが、1組のワイヤ215又は複数組のワイヤ215A、215Bの場合のいずれであっても、側面視したときに、少なくとも一組のワイヤ215が車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム210の軸線と平行であるのがよい。
【0018】
上記の複数の例示のように、パワープラント208と係合してパワープラント208の左右から前方に延びるワイヤ215のような可撓性の張力材の前端を左右のフロントサイドフレーム210に締結したことによって、前面衝突の際に、特に、ポールPのように車幅方向に大きな幅を有していない障害物に対して車幅方向中央部分が激突したときに、このポールPがエンジンルーム201内に侵入し、そしてパワープラント208と干渉してパワープラント208の後退が発生したときには、衝突荷重を、ワイヤ215を介して、左右のフロントサイドフレーム210に分散することができる。前述したように、左右のフロントサイドフレーム210への衝突荷重の入力がフロントサイドフレーム210の軸線方向の潰れを大きくとれる位置であって且つパワープラント208よりも前方位置であるため、フロントサイドフレーム210が有している衝撃吸収機能を発揮させることができる。また、パワープラント208はワイヤ215によって過度に後退するのが抑制されるため、パワープラント208が車室203内まで侵入するのを抑止することができる。
【0019】
図4を再び参照して、前述したように、ワイヤ215を上下に離置した少なくとも2組用意した場合、上方ワイヤ215A及び下方ワイヤ215Bとパワープラント208との係合の仕方は図1〜図3に開示の態様から任意に選択可能であるが、上方のワイヤ215A又は下方のワイヤ215Bの少なくとも一方を、側面視したときにフロントサイドフレーム210の軸線と平行に配置するのがよい。ここに、本発明に言う「可撓性張力材がフロントサイドフレームの軸線に平行に延びている」という意味は、上方ワイヤ215A及び/又は下方ワイヤ215Bからの衝突荷重が、フロントサイドフレームの設計上の潰れ方向に入力されるという技術的意味を有するのであり、従ってフロントサイドフレームの設計上の潰れ方向に衝突荷重が入力される範囲で「平行」の意味を把握されたい。換言すれば、「平行」という意味を幾何学上の意味に限定して解釈すべきではない。フロントサイドフレームのなかには、その軸線が側面視で緩やかな曲線を描くフロントサイドフレームも存在しているが、この場合には、エネルギ吸収量が大きくなる効率的なフロントサイドフレームの潰れ方向に、衝突時に緊張した上方ワイヤ215A及び/又は下方ワイヤ215Bの延び方向が側面視で略一致する態様は本発明の「平行」に含まれることになる。
【0020】
また、上方のワイヤ215Aをエンジン出力軸205aよりも上方に位置するのがよい。これにより後退するポールPがパワープラント208と干渉したときに、パワープラント208の上端部が後方に転倒する動作を抑制することができる。
【0021】
また、下方のワイヤ215Bに関しては、好ましくは、エンジン出力軸205aよりも下方位置又はパワープラント208の下面に係合させるのがよい。これにより、後退するポールPがパワープラント208と干渉したときに、パワープラント208の下端部が上端部よりも後方に回転する動作を抑制することができる。
【0022】
下方ワイヤ215Bをエンジン出力軸205aよりも下方に位置させるために、必要であれば、閉断面構造のフロントサイドフレーム210を縦方向に貫通するロングボルト218のような固定具を使用すると共に、フロントサイドフレーム210の下端面に延長部材220を設けて、下方ワイヤ215Bの前端の取付位置を下方に変位させることで、この下方ワイヤ215Bを側面視したときに、フロントサイドフレーム210の軸線と平行になるようしてもよい。上下に延びるロングボルト218を設けたときには、このロングボルト218の上部に上方ワイヤ215Aの前端を連結し、ロングボルト218の下部に下方ワイヤ215Bの前端を連結するのがよい。
【0023】
ワイヤ215のような可撓性張力材を追加することで、既存の車体の基本構造を大きく変更することなく、ポールPのような障害物に対して車幅方向中央部分が衝突する前面衝突に関する安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0025】
第1実施例(図5〜図11):
図5、図6を参照して、参照符号1はダッシュパネルを示し、ダッシュパネル1によって車室2とエンジンルーム3とが区画されている。車室2には、インスツルメントパネル4、ブレーキペダル5やアクセルペダル等が設けられている。参照符号6はフロントウインドウである。
【0026】
図5はエンジンルーム3を斜め前方から図であり、図6はエンジンルーム3を側方から見た図である。エンジンルーム3の下方域には、車体前後方向にエンジンルーム3の全域に亘って延在する左右のフロントサイドフレーム10が配設されており、フロントサイドフレーム10は、矩形の閉断面構造を有している。既知のように、左右のフロントサイドフレーム10の前端には、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント12がクラッシュカン14を介して連結されている。なお、図5では、バンパーレインフォースメント12及びクラッシュカン14を省いてエンジンルーム3を描いてある。エンジンルーム3の下方域には、更に、フロントサイドフレーム10よりも下方に位置するサブフレーム16が配設されている。参照符号18は前輪である。
【0027】
エンジン20は、水冷式の直列四気筒エンジンであり、エンジン出力軸を車幅方向に向けてエンジンルーム3内に搭載されている(図5)。すなわち、エンジン20は横置きのレシプロエンジンであり、エンジン20の後端にはトランスアクスル22が連結されており、エンジン20とトランスアクスル22は車幅方向に並んで配設され、エンジン出力は、トランスアクスル22に内蔵されたデファレンシャルギア24を介して左右の前輪18に分配される。この自動車は前輪駆動形式の車両であるが、4輪駆動形式の車両に対しても本発明を適用することができる。
【0028】
エンジン20は水冷式の4気筒エンジンであり、このエンジン20の冷却水は、フロントサイドフレーム10の前端部の間のシュラウドパネル26に固設されたラジエータ(図示せず)によって冷却される。
【0029】
横置きのエンジン20は、その前面20aから吸気され、後面20bから排気される。すなわち、エンジン20は前方吸気、後方排気の形式が採用されており(図6)、エンジン20のシリンダヘッド28には、その前面に吸気管30が連結され、後面に排気管32が連結されている。
【0030】
サブフレーム16は、左右のフロントサイドフレーム10の前端部及び後端部の間を車幅方向に延びる前方及び後方部分16a、16bと、各フロントサイドフレーム10に沿って延びる左右の側方部分16cと、を有する平面視略四角形の形状のペリメーターフレームで構成されている。
【0031】
図6を参照して、左右のフロントサイドフレーム10の前端部には、下方に延びるペリメーターフレーム用ブラケット34が設けられ、このペリメーターフレーム用ブラケット34の下端にサブフレーム16がロングボルト36(図5、図7)を使って固定されている。
【0032】
エンジン20及びトランスアクスル22を含むパワープラント40は、サブフレーム16の後方部分16bとデファレンシャルギア24のケース42の下面との間の第1マウント部材44と、一方のフロントサイドフレーム10の上面とシリンダブロック46との間の第2マウント部材48と、他方のフロントサイドフレーム10の上面とトランスアクスル22の変速機ケース50の上面との間の第3マウント部材52とでエンジンルーム3に搭載されている。
【0033】
パワープラント40は、上下に離置した2組のワイヤ60、62によって左右のフロントサイドフレーム10の前端部に係止されており、この実施例では、上方ワイヤ60及び下方ワイヤ62は共に夫々1本のワイヤで構成されている。上方ワイヤ60は、エンジン20のシリンダブロック46つまりクランクケース64とシリンダヘッド28との間を通過して前方に延び、上方ワイヤ60の左右の前端が左右のフロントサイドフレーム10を上下に貫通して延びるロングボルト36の上端部に締結されている。
【0034】
下方ワイヤ62は、クランクケース54とデファレンシャルギアケース42と変速機ケース50を通過して前方に延び、下方ワイヤ62の前端が左右のロングボルト36の下端部に締結されている。すなわち、上方及び下方ワイヤ60、62の前端は、サブフレーム16を左右のフロントサイドフレーム10に締結するためのロングボルト36を利用して、フロントサイドフレーム10の前端部に締結されている。ここに、好ましくは、フロントサイドフレーム10の前端部をレインフォースメントで補強するのがよい。
【0035】
図7は、上方及び下方ワイヤ60、62の前端をフロントサイドフレーム10に締結する具体例の詳細図である。フロントサイドフレーム10は、アウタ10aとインナ10bとで縦長の閉断面構造を有しており、この閉断面構造の内部に断面コ字状のレインフォースメント10cが添設されており、フロントサイドフレーム10の上下の壁及びこれに添設したレインフォースメント10cには、ボルト挿入孔70が形成され、このボルト挿入孔70にロングボルト36が挿入される。また、フロントサイドフレーム10の前端部には、前述したように、下方に延びるブラケット34が溶接されており、このブラケット34の下端面にサブフレーム16が配設されており、サブフレーム16をフロントサイドフレーム10に締結するためのロングボルト36は上下に延びている。
【0036】
ロングボルト36は、ボルトヘッド36aと、下端部に第1、第2の2つの雄ねじ部36b、36cを有している。他方、フロントサイドフレーム10には上下に貫通するボルト挿通孔が形成されており、また、ブラケット34にはロングボルト36の第1ねじ部36bが螺合する雌ねじ部34aが形成されている。他方、サブフレーム16には、ゴムブッシュ72を備えたマウント部材74が固設されており、このマウント部材74は、上下に延びる中心スリーブ76を有している。
【0037】
図7から分かるように、上方ワイヤ60、下方ワイヤ62の前端は共にシングルロック80の端末を有し、このシングルロック80のアイ80aにロングボルト36を挿入して、大径ワッシャ77を介在させた状態でナット78をロングボルト36に螺着させることにより、上方ワイヤ60及び下方ワイヤ62が左右のフロントサイドフレーム10に締結される。ここに、上方ワイヤ60の前端はフロントサイドフレーム10の上面に配設され、下方ワイヤ62の前端はブラケット34とサブフレーム16との間に配設される。
【0038】
上下のワイヤ60、62から衝突荷重がフロントサイドフレーム10に入力されると、このフロントサイドフレーム10に衝突荷重が入力される部位がレインフォースメント10cによって補強されているため、このレインフォースメント10cによってフロントサイドフレーム10の閉断面矩形の4辺のうち3辺に衝突荷重が分散させつつフロントサイドフレーム10に衝突荷重が入力される。したがって、ロングボルト36を介在した衝突荷重の入力によってフロントサイドフレーム10は、効果的な潰れが生じ、これによりフロントサイドフレーム10が本来的に有している衝撃吸収機能を発揮させることができる。また、縦長の矩形の閉断面構造のフロントサイドフレーム10に対して上下に貫通するロングボルト36を介在して上下のワイヤ60、62から衝突荷重が入力されるため、換言すれば、ロングボルト36を横方向(水平方向)にフロントサイドフレーム10を貫通させた場合に対比して、ボルト挿入孔70とフロントサイドフレーム10の角部とが接近しているため、ボルト挿入孔70の近傍が裂けるなどの問題を誘発する可能性を低減することができ、ロングボルト36から衝突荷重を的確にフロントサイドフレーム10に伝達することができる。
【0039】
上方ワイヤ60、下方ワイヤ62の配索は、図8から分かるように、ガイド部材82によって位置決めされる。ガイド部材82は2つの壁82aを有し、この2つの壁82aの間に上方ワイヤ60、62が位置決めされるが、本体82bと壁82aとを一体成形した成型品であってもよいし、図9に示すように、本体82bと壁82aとが別体品であってもよい。ガイド部材82はボルト84を使ってパワープラント40に締結される。また、ガイド部材82は、好ましくは上方ワイヤ60、下方ワイヤ62を設置した後にキャップ86(図10)で覆うのがよい。これにより、パワープラント40が動作することに伴って上下のワイヤ60、62がガイド部材82から離脱するのを防止することができる。
【0040】
上方ワイヤ60は、エンジン20のシリンダブロック46の上端部に掛け渡されて、一方の端部がエンジン20の前端面つまりトランスアクスル22とは反対側の端面に沿って前方に延び、他方の端部がトランスアクスル22の上方を通って前方に延び、そして上方ワイヤ60の左右の先端部が左右のフロントサイドフレーム10の前端部に連結されている。そして、上方ワイヤ60は、図6から分かるように、フロントサイドフレーム10の軸線とほぼ平行に位置している。
【0041】
下方ワイヤ62は、トランスアクスル22及びクランクケー64に掛け渡されて前方に延び、その左右の先端が、フロントサイドフレーム10の前端部のブラケット34とサブフレーム16との間に固定されている。そして、下方ワイヤ62は、エンジン出力軸20c(図6)よりも下方域を通過するように位置決めされている。
【0042】
前面衝突において、バンパーレインフォースメント12の車幅方向中央部分にポールなどが激突してバンパーレインフォースメント12が車幅方向中央部分で屈曲し、そしてエンジンルーム3内に侵入してパワープラント40と干渉したときには、この衝突荷重を上方及び下方のワイヤ60、62によってフロントサイドフレーム10の前端部に分散することができる。フロントサイドフレーム10は前面衝突の衝撃を緩和する機能を有しているのは従来と同様であり、このことから車幅方向中央部分がポールなどに激突するような前面衝突に対してもフロントサイドフレーム10によって衝突エネルギを吸収することができる。
【0043】
また、フロントサイドフレーム10の前端部に固定されたワイヤ60、62をパワープラント40に掛け渡すことにより、このワイヤ60、62によってパワープラント40の後退を抑制することができる。
【0044】
勿論のことであるが、フルラップ前面衝突、オフセット前面衝突に対する衝突エネルギを吸収する基本構造に大きな変更を必要とせずに、上方ワイヤ60、下方ワイヤ62を追加するだけで車幅方向中央部分がポールなどの障害物に衝突した場合にも上記基本構造によって衝突エネルギを吸収することができる。
【0045】
上下に離間した上方ワイヤ60と下方ワイヤ62によって、後退するパワープラント40を受け止めることで、側面視でパワープラント40の回転を抑制することができ、これにより上下のワイヤ60、62によって左右のフロントサイドフレーム10へ早期に衝突荷重を入力することができる。
【0046】
また、フロントサイドフレーム10を上下に貫通してサブフレーム16を締結するためのロングボルト36を使って上方ワイヤ60及び下方ワイヤ62をフロントサイドフレーム10に締結してあるため、上方ワイヤ60及び下方ワイヤ62の前端をフロントサイドフレーム10に固定するための部材を別途用意する必要がないだけでなく、衝突荷重をフロントサイドフレーム10だけでなくサブフレーム16にも分散することができる。
【0047】
また、閉断面構造のフロントサイドフレーム10を貫通する部材(ロングボルト36)によってワイヤ60、62をフロントサイドフレーム10に固定する構造を採用することにより、ワイヤ60、62から入力される衝突荷重をフロントサイドフレーム10の互いに対抗する面に分散することができ、フロントサイドフレーム10の局部破壊やワイヤ60、62からの入力に伴うフロントサイドフレーム10の前端部の予期しない変形を抑制することができ、これによりフロントサイドフレーム10の本来の変形を伴う衝突エネルギ吸収機能を発揮させることができる。
【0048】
また、フロントサイドフレーム10の前端部から下方から延びるブラケット34とサブフレーム16との間に下方ワイヤ62の前端を締結することで、下方ワイヤ62をエンジン出力軸20cよりも下方に位置させるのが容易であり、また、下方ワイヤ62をフロントサイドフレーム10の軸線とほぼ平行に配置させることができる。これにより、下方ワイヤ62からフロントサイドフレーム10への衝突荷重の力方向をフロントサイドフレームフレーム10とほぼ平行にできるため、換言すると、フロントサイドフレーム10に衝突荷重の分力が作用してフロントサイドフレーム10に予期しない変形が発生するのを抑制することができ、これによりフロントサイドフレーム10の本来の変形を伴う衝突エネルギ吸収機能を発揮させることができる。
【0049】
勿論、シリンダブロック46の上端部に上方ワイヤ60を掛け渡すことでフロントサイドフレーム10への入力方向がフロントサイドフレームフレーム10と平行となることから、フロントサイドフレーム10の本来の変形を伴う衝突エネルギ吸収機能を発揮させることができる。
【0050】
また、上下のワイヤ60、62の前端が、側方に突出する部材を備えていないシングルロック80の端末を有していることから、ワイヤ60、62の端部がフロントサイドフレーム10と干渉する虞がない。
【0051】
以下の他の実施例でも同様であるが、上方ワイヤ60と下方ワイヤ62を用意することは必須ではない。少なくともいずれか一方のワイヤ60(62)だけであってもよい。
【0052】
図11は、第1実施例の変形例を示す。この図11から分かるように、下方ワイヤ62を左右のフロントサイドフレーム10の軸線と平行になるように配索するようにしてもよいのは勿論である。
【0053】
第2実施例(図12〜図14):
この第2実施例では、上方ワイヤ60を第1実施例と同様に一本のワイヤで構成すると共にフロントサイドフレーム10の軸線と平行になるように配索されているが、下方ワイヤ62に関しては、この下方ワイヤ62を第1、第2の分割下方ワイヤ94、96で構成してある。そして、この第1、第2の分割下方ワイヤ94、96の後端が第1マウント部材44に締結され(図14)、この第1マウント部材44を介してパワープラント40に係止されている。この第2実施例では、図14から分かるように、第1、第2の分割下方ワイヤ94、96が共にパワープラント40の下面に沿って配索されているが、第1、第2の分割下方ワイヤ94、96をパワープラント40の側面に沿って配索するようにしてもよい。
【0054】
変形例として、図示を省略したが、第1、第2の分割下方ワイヤ94、96と同様に、上方ワイヤ60を第1、第2の分割上方ワイヤで構成し、この第1、第2の分割上方ワイヤを第2、第3のマウント部材48、52に締結して、この第2、第3のマウント部材48、52を介してパワープラント40に係止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の基本概念に含まれる一例を示す図である。
【図2】本発明の基本概念に含まれる他の例を示す図である。
【図3】本発明の基本概念に含まれる更なる例を示す図である。
【図4】本発明の基本概念に含まれる上下に複数組のワイヤ(可撓性張力材)を配設する例を示す図である。
【図5】第1実施例に関し、エンジンルームを斜め上方から見た図である。
【図6】第1実施例に関し、エンジンルームを側方から見た図である。
【図7】第1実施例に関し、ワイヤの前端がシングルロックの端末を備え、サブフレームをフロントサイドフレームに締結するロングボルトを使ってワイヤの前端をフロントサイドフレームに固定する例を説明するための斜視図である。
【図8】第1実施例に関し、上方ワイヤ、下方ワイヤを配索するのに使用するガイド部材を説明するためにパワープラントを後方から見た図である。
【図9】第1実施例に関し、ガイド部材の一例を説明するための図である。
【図10】第1実施例に関し、ガイド部材の他の例を説明するための図である。
【図11】第1実施例の変形例を示す側面図であり、上方ワイヤ及び下方ワイヤが共にフロントサイドフレームの軸線と平行に配索した例を示す図である。
【図12】第2実施例に関し、エンジンルームを上方から見た図である。
【図13】第2実施例に関し、エンジンルームを斜め後方から見た図である。
【図14】第2実施例に関し、エンジンルームを斜め下方から見た図である。
【符号の説明】
【0056】
201 エンジンルーム
205 多気筒往復動エンジン
205a エンジン出力軸
208 パワープラント
210 フロントサイドフレーム
212 バンパーレインフォースメント
215 ワイヤ(可撓性張力材)
215a 分割ワイヤ
215b 分割ワイヤ
215A 上方ワイヤ
215B 下方ワイヤ
218 マウント部材
P ポール
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、より詳しくは、ポール状の障害物に対して車幅方向中央部分が前面衝突したときの安全性を向上することのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部は、一般的に、車体前端において車幅方向に延びるバンパーレインフォースメントの左右の端部を夫々左右一対のフロントサイドフレームの前端に連結する、より詳しくはクラッシュカンを介して連結する構造が採用されている。すなわち、車体前部構造として、左右のフロントサイドフレームは前面衝突の際の主なる衝撃吸収部材として機能する構造が採用されている。
【0003】
前面衝突に関する衝撃安全性能試験は二つの態様で行われている。第一の態様がフルラップ前面衝突であり、第二の態様がオフセット前面衝突である。フルラップ前面衝突試験では、車両を所定速度でコンクリート製の障壁に衝突させることにより行われる。オフセット前面衝突試験では、車両の一方の側部(オーバーラップ率40%)をハニカム状の障壁に前面衝突させることにより行われる。
【0004】
自動車製造会社では上記のフルラップ衝突及びオフセット衝突に関する試験を念頭においた前面衝突に関する社内基準を設け、社内基準に合致する車両の開発を行っているのが実状である。
【0005】
実際の前面衝突事故では種々様々な態様がある。その一つに、道路脇に植設された電柱や道路標識の支柱などに衝突した場合である。このポール状の障害物に対して車両の側部で前面衝突したときには、前述したオフセット前面衝突試験と同様に、一方のフロントサイドフレームによって衝撃を吸収することが可能である。しかし、車両の車幅方向中央部分がポール状の障害物に激突した場合、バンパーレインフォースメントは、一般的に設計上これを受け止める強度を備えていないため、その車幅方向中央部分で折れ曲がってしまい、この結果、左右のフロントサイドフレームが機能せずに大きな損壊が発生してしまう虞がある。
【0006】
特許文献1は、圧縮スプリングを内蔵した張力維持機構とワイヤとを使った衝撃荷重分散装置を開示している。この衝撃荷重分散装置は、ワイヤをバンパーレインフォースメントに沿って左右に張設し、そして、このワイヤを左右のフロントサイドフレームのブラケットを介して後方に導いてワイヤの左右の端部の間に張力維持機構を介装すると共にバンパーレインフォースメントの車幅方向中央部分をワイヤに連結する構成が採用されている。この構成によれば、前面衝突時の荷重は、左右のフロントサイドフレームと共にパンパーレインフォースメントの中央部分からワイヤに入力される。
【0007】
【特許文献1】特開2005−262951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の発明は、当該特許文献1に記載のとおり、車両の前面衝突に対して効率良く荷重分散やエネルギ吸収を行うことを目的とするものであるが、圧縮バネを使った張力維持機構を配設した構成から考えて、車速十数Km/h以下でのいわゆる軽衝突時に有効であると考えられる。
【0009】
本発明の目的は、ポールのように車幅方向に広がりを備えていない障害物に対して車幅方向中央部分が激突したときに左右のフロントサイドフレームに衝突荷重を分散させると共にパワープラントの後退を抑えることのできる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
エンジンルームに搭載したパワープラントに係合して該パワープラントから左右に且つ前方に延びる可撓性張力材を備え、
該可撓性張力材は、その前端が、夫々、左右のフロントサイドフレームの前端部に締結されていると共に、側面視したときに、前記可撓性張力材が、車体前後方向に延びる前記左右のフロントサイドフレームの軸線と平行に延びていることを特徴とする車体前部構造を提供することにより達成される。
【0011】
図1〜図4は本発明の基本的概念を説明するための図である。図1〜図4において、参照符号1は車体前部に位置するエンジンルームである。エンジンルーム201はダッシュパネル202によって車室203と区画されている。
【0012】
エンジンルーム201には、多気筒往復動エンジン205、自動変速機206、デファレンシャルギア207を含むパワープラント208が配設されており、パワープラント208の出力がデファレンシャルギア207を介して左右の前輪209に分配される。
【0013】
なお、これら図面には、他起動往復動エンジン205の出力軸205aを車幅方向に向けた所謂「横置き」エンジン方式を採用した例を例示しているが、エンジン出力軸205aを車体前後方向に向けた所謂「縦置き」エンジン方式に対しても本発明を適用してもよい。
【0014】
エンジンルーム201には、その左右の側部に、車体前後方向に延びる閉断面構造のフロントサイドフレーム210を有し、この左右のフロントサイドフレーム210に直接又は間接的にパワープラント208が搭載される。左右のフロントサイドフレーム210の前端にはクラッシュカン211を介してバンパーレインフォースメント212が取り付けられており、バンパーレインフォースメント212は、既知のように、車体前端において車幅方向に延在している。
【0015】
左右のフロントサイドフレーム210には、その前端部に、可撓性張力材の典型例であるワイヤ215の端が固定されており、ワイヤ215はパワープラント208に係合されている。換言すると、パワープラント208に係合したワイヤ215は、平面視したときに、パワープラント208から左右に且つ前方に延びており、左右のワイヤ215の前端が、対応する左右のフロントサイドフレーム210の前端部に締結されている。ここに、本発明にいう「フロントサイドフレームの前端部」という意味は、パワープラント208の前方且つフロントサイドフレーム210が前面衝突(フルオーバーラップ衝突、オフセット衝突)の際に軸線方向への潰れが十分にとれる前方位置という技術的意味であり、必ずしもフロントサイドフレーム210の前端近傍に限定したものでないことは言うまでもない。
【0016】
ワイヤ215は、左右のフロントサイドフレーム210の間に亘って連続して延びる1本のワイヤをパワープラント208の後面に掛け渡してもよいし(図1)、図2及び図3に図示のように、第1、第2の分割ワイヤ215a、215bを用意し、一方のワイヤ215aをパワープラント208の右側に配設し、他方のワイヤ215bをパワープラント208の左側に配設するようにしてもよい。第1、第2のワイヤ215a、215bは、その後端をパワープラント208に締結したアイボルトやパワープラント208に一体成形した固定部材などの固定要素216に締結してよいし、パワープラント208をフロントサイドフレーム210に直接に搭載するマウント部材217に締結してもよい。勿論、第1、第2の分割ワイヤ215a、215bのいずれか一方をパワープラント208の固定要素216に締結し、他方をマウント部材217に締結するようにしてもよい。
【0017】
ワイヤ215は図4に示すように上下に離置する少なくとも2組のワイヤ215A、215Bを用意してもよい。この点については後に説明するが、1組のワイヤ215又は複数組のワイヤ215A、215Bの場合のいずれであっても、側面視したときに、少なくとも一組のワイヤ215が車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム210の軸線と平行であるのがよい。
【0018】
上記の複数の例示のように、パワープラント208と係合してパワープラント208の左右から前方に延びるワイヤ215のような可撓性の張力材の前端を左右のフロントサイドフレーム210に締結したことによって、前面衝突の際に、特に、ポールPのように車幅方向に大きな幅を有していない障害物に対して車幅方向中央部分が激突したときに、このポールPがエンジンルーム201内に侵入し、そしてパワープラント208と干渉してパワープラント208の後退が発生したときには、衝突荷重を、ワイヤ215を介して、左右のフロントサイドフレーム210に分散することができる。前述したように、左右のフロントサイドフレーム210への衝突荷重の入力がフロントサイドフレーム210の軸線方向の潰れを大きくとれる位置であって且つパワープラント208よりも前方位置であるため、フロントサイドフレーム210が有している衝撃吸収機能を発揮させることができる。また、パワープラント208はワイヤ215によって過度に後退するのが抑制されるため、パワープラント208が車室203内まで侵入するのを抑止することができる。
【0019】
図4を再び参照して、前述したように、ワイヤ215を上下に離置した少なくとも2組用意した場合、上方ワイヤ215A及び下方ワイヤ215Bとパワープラント208との係合の仕方は図1〜図3に開示の態様から任意に選択可能であるが、上方のワイヤ215A又は下方のワイヤ215Bの少なくとも一方を、側面視したときにフロントサイドフレーム210の軸線と平行に配置するのがよい。ここに、本発明に言う「可撓性張力材がフロントサイドフレームの軸線に平行に延びている」という意味は、上方ワイヤ215A及び/又は下方ワイヤ215Bからの衝突荷重が、フロントサイドフレームの設計上の潰れ方向に入力されるという技術的意味を有するのであり、従ってフロントサイドフレームの設計上の潰れ方向に衝突荷重が入力される範囲で「平行」の意味を把握されたい。換言すれば、「平行」という意味を幾何学上の意味に限定して解釈すべきではない。フロントサイドフレームのなかには、その軸線が側面視で緩やかな曲線を描くフロントサイドフレームも存在しているが、この場合には、エネルギ吸収量が大きくなる効率的なフロントサイドフレームの潰れ方向に、衝突時に緊張した上方ワイヤ215A及び/又は下方ワイヤ215Bの延び方向が側面視で略一致する態様は本発明の「平行」に含まれることになる。
【0020】
また、上方のワイヤ215Aをエンジン出力軸205aよりも上方に位置するのがよい。これにより後退するポールPがパワープラント208と干渉したときに、パワープラント208の上端部が後方に転倒する動作を抑制することができる。
【0021】
また、下方のワイヤ215Bに関しては、好ましくは、エンジン出力軸205aよりも下方位置又はパワープラント208の下面に係合させるのがよい。これにより、後退するポールPがパワープラント208と干渉したときに、パワープラント208の下端部が上端部よりも後方に回転する動作を抑制することができる。
【0022】
下方ワイヤ215Bをエンジン出力軸205aよりも下方に位置させるために、必要であれば、閉断面構造のフロントサイドフレーム210を縦方向に貫通するロングボルト218のような固定具を使用すると共に、フロントサイドフレーム210の下端面に延長部材220を設けて、下方ワイヤ215Bの前端の取付位置を下方に変位させることで、この下方ワイヤ215Bを側面視したときに、フロントサイドフレーム210の軸線と平行になるようしてもよい。上下に延びるロングボルト218を設けたときには、このロングボルト218の上部に上方ワイヤ215Aの前端を連結し、ロングボルト218の下部に下方ワイヤ215Bの前端を連結するのがよい。
【0023】
ワイヤ215のような可撓性張力材を追加することで、既存の車体の基本構造を大きく変更することなく、ポールPのような障害物に対して車幅方向中央部分が衝突する前面衝突に関する安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0025】
第1実施例(図5〜図11):
図5、図6を参照して、参照符号1はダッシュパネルを示し、ダッシュパネル1によって車室2とエンジンルーム3とが区画されている。車室2には、インスツルメントパネル4、ブレーキペダル5やアクセルペダル等が設けられている。参照符号6はフロントウインドウである。
【0026】
図5はエンジンルーム3を斜め前方から図であり、図6はエンジンルーム3を側方から見た図である。エンジンルーム3の下方域には、車体前後方向にエンジンルーム3の全域に亘って延在する左右のフロントサイドフレーム10が配設されており、フロントサイドフレーム10は、矩形の閉断面構造を有している。既知のように、左右のフロントサイドフレーム10の前端には、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント12がクラッシュカン14を介して連結されている。なお、図5では、バンパーレインフォースメント12及びクラッシュカン14を省いてエンジンルーム3を描いてある。エンジンルーム3の下方域には、更に、フロントサイドフレーム10よりも下方に位置するサブフレーム16が配設されている。参照符号18は前輪である。
【0027】
エンジン20は、水冷式の直列四気筒エンジンであり、エンジン出力軸を車幅方向に向けてエンジンルーム3内に搭載されている(図5)。すなわち、エンジン20は横置きのレシプロエンジンであり、エンジン20の後端にはトランスアクスル22が連結されており、エンジン20とトランスアクスル22は車幅方向に並んで配設され、エンジン出力は、トランスアクスル22に内蔵されたデファレンシャルギア24を介して左右の前輪18に分配される。この自動車は前輪駆動形式の車両であるが、4輪駆動形式の車両に対しても本発明を適用することができる。
【0028】
エンジン20は水冷式の4気筒エンジンであり、このエンジン20の冷却水は、フロントサイドフレーム10の前端部の間のシュラウドパネル26に固設されたラジエータ(図示せず)によって冷却される。
【0029】
横置きのエンジン20は、その前面20aから吸気され、後面20bから排気される。すなわち、エンジン20は前方吸気、後方排気の形式が採用されており(図6)、エンジン20のシリンダヘッド28には、その前面に吸気管30が連結され、後面に排気管32が連結されている。
【0030】
サブフレーム16は、左右のフロントサイドフレーム10の前端部及び後端部の間を車幅方向に延びる前方及び後方部分16a、16bと、各フロントサイドフレーム10に沿って延びる左右の側方部分16cと、を有する平面視略四角形の形状のペリメーターフレームで構成されている。
【0031】
図6を参照して、左右のフロントサイドフレーム10の前端部には、下方に延びるペリメーターフレーム用ブラケット34が設けられ、このペリメーターフレーム用ブラケット34の下端にサブフレーム16がロングボルト36(図5、図7)を使って固定されている。
【0032】
エンジン20及びトランスアクスル22を含むパワープラント40は、サブフレーム16の後方部分16bとデファレンシャルギア24のケース42の下面との間の第1マウント部材44と、一方のフロントサイドフレーム10の上面とシリンダブロック46との間の第2マウント部材48と、他方のフロントサイドフレーム10の上面とトランスアクスル22の変速機ケース50の上面との間の第3マウント部材52とでエンジンルーム3に搭載されている。
【0033】
パワープラント40は、上下に離置した2組のワイヤ60、62によって左右のフロントサイドフレーム10の前端部に係止されており、この実施例では、上方ワイヤ60及び下方ワイヤ62は共に夫々1本のワイヤで構成されている。上方ワイヤ60は、エンジン20のシリンダブロック46つまりクランクケース64とシリンダヘッド28との間を通過して前方に延び、上方ワイヤ60の左右の前端が左右のフロントサイドフレーム10を上下に貫通して延びるロングボルト36の上端部に締結されている。
【0034】
下方ワイヤ62は、クランクケース54とデファレンシャルギアケース42と変速機ケース50を通過して前方に延び、下方ワイヤ62の前端が左右のロングボルト36の下端部に締結されている。すなわち、上方及び下方ワイヤ60、62の前端は、サブフレーム16を左右のフロントサイドフレーム10に締結するためのロングボルト36を利用して、フロントサイドフレーム10の前端部に締結されている。ここに、好ましくは、フロントサイドフレーム10の前端部をレインフォースメントで補強するのがよい。
【0035】
図7は、上方及び下方ワイヤ60、62の前端をフロントサイドフレーム10に締結する具体例の詳細図である。フロントサイドフレーム10は、アウタ10aとインナ10bとで縦長の閉断面構造を有しており、この閉断面構造の内部に断面コ字状のレインフォースメント10cが添設されており、フロントサイドフレーム10の上下の壁及びこれに添設したレインフォースメント10cには、ボルト挿入孔70が形成され、このボルト挿入孔70にロングボルト36が挿入される。また、フロントサイドフレーム10の前端部には、前述したように、下方に延びるブラケット34が溶接されており、このブラケット34の下端面にサブフレーム16が配設されており、サブフレーム16をフロントサイドフレーム10に締結するためのロングボルト36は上下に延びている。
【0036】
ロングボルト36は、ボルトヘッド36aと、下端部に第1、第2の2つの雄ねじ部36b、36cを有している。他方、フロントサイドフレーム10には上下に貫通するボルト挿通孔が形成されており、また、ブラケット34にはロングボルト36の第1ねじ部36bが螺合する雌ねじ部34aが形成されている。他方、サブフレーム16には、ゴムブッシュ72を備えたマウント部材74が固設されており、このマウント部材74は、上下に延びる中心スリーブ76を有している。
【0037】
図7から分かるように、上方ワイヤ60、下方ワイヤ62の前端は共にシングルロック80の端末を有し、このシングルロック80のアイ80aにロングボルト36を挿入して、大径ワッシャ77を介在させた状態でナット78をロングボルト36に螺着させることにより、上方ワイヤ60及び下方ワイヤ62が左右のフロントサイドフレーム10に締結される。ここに、上方ワイヤ60の前端はフロントサイドフレーム10の上面に配設され、下方ワイヤ62の前端はブラケット34とサブフレーム16との間に配設される。
【0038】
上下のワイヤ60、62から衝突荷重がフロントサイドフレーム10に入力されると、このフロントサイドフレーム10に衝突荷重が入力される部位がレインフォースメント10cによって補強されているため、このレインフォースメント10cによってフロントサイドフレーム10の閉断面矩形の4辺のうち3辺に衝突荷重が分散させつつフロントサイドフレーム10に衝突荷重が入力される。したがって、ロングボルト36を介在した衝突荷重の入力によってフロントサイドフレーム10は、効果的な潰れが生じ、これによりフロントサイドフレーム10が本来的に有している衝撃吸収機能を発揮させることができる。また、縦長の矩形の閉断面構造のフロントサイドフレーム10に対して上下に貫通するロングボルト36を介在して上下のワイヤ60、62から衝突荷重が入力されるため、換言すれば、ロングボルト36を横方向(水平方向)にフロントサイドフレーム10を貫通させた場合に対比して、ボルト挿入孔70とフロントサイドフレーム10の角部とが接近しているため、ボルト挿入孔70の近傍が裂けるなどの問題を誘発する可能性を低減することができ、ロングボルト36から衝突荷重を的確にフロントサイドフレーム10に伝達することができる。
【0039】
上方ワイヤ60、下方ワイヤ62の配索は、図8から分かるように、ガイド部材82によって位置決めされる。ガイド部材82は2つの壁82aを有し、この2つの壁82aの間に上方ワイヤ60、62が位置決めされるが、本体82bと壁82aとを一体成形した成型品であってもよいし、図9に示すように、本体82bと壁82aとが別体品であってもよい。ガイド部材82はボルト84を使ってパワープラント40に締結される。また、ガイド部材82は、好ましくは上方ワイヤ60、下方ワイヤ62を設置した後にキャップ86(図10)で覆うのがよい。これにより、パワープラント40が動作することに伴って上下のワイヤ60、62がガイド部材82から離脱するのを防止することができる。
【0040】
上方ワイヤ60は、エンジン20のシリンダブロック46の上端部に掛け渡されて、一方の端部がエンジン20の前端面つまりトランスアクスル22とは反対側の端面に沿って前方に延び、他方の端部がトランスアクスル22の上方を通って前方に延び、そして上方ワイヤ60の左右の先端部が左右のフロントサイドフレーム10の前端部に連結されている。そして、上方ワイヤ60は、図6から分かるように、フロントサイドフレーム10の軸線とほぼ平行に位置している。
【0041】
下方ワイヤ62は、トランスアクスル22及びクランクケー64に掛け渡されて前方に延び、その左右の先端が、フロントサイドフレーム10の前端部のブラケット34とサブフレーム16との間に固定されている。そして、下方ワイヤ62は、エンジン出力軸20c(図6)よりも下方域を通過するように位置決めされている。
【0042】
前面衝突において、バンパーレインフォースメント12の車幅方向中央部分にポールなどが激突してバンパーレインフォースメント12が車幅方向中央部分で屈曲し、そしてエンジンルーム3内に侵入してパワープラント40と干渉したときには、この衝突荷重を上方及び下方のワイヤ60、62によってフロントサイドフレーム10の前端部に分散することができる。フロントサイドフレーム10は前面衝突の衝撃を緩和する機能を有しているのは従来と同様であり、このことから車幅方向中央部分がポールなどに激突するような前面衝突に対してもフロントサイドフレーム10によって衝突エネルギを吸収することができる。
【0043】
また、フロントサイドフレーム10の前端部に固定されたワイヤ60、62をパワープラント40に掛け渡すことにより、このワイヤ60、62によってパワープラント40の後退を抑制することができる。
【0044】
勿論のことであるが、フルラップ前面衝突、オフセット前面衝突に対する衝突エネルギを吸収する基本構造に大きな変更を必要とせずに、上方ワイヤ60、下方ワイヤ62を追加するだけで車幅方向中央部分がポールなどの障害物に衝突した場合にも上記基本構造によって衝突エネルギを吸収することができる。
【0045】
上下に離間した上方ワイヤ60と下方ワイヤ62によって、後退するパワープラント40を受け止めることで、側面視でパワープラント40の回転を抑制することができ、これにより上下のワイヤ60、62によって左右のフロントサイドフレーム10へ早期に衝突荷重を入力することができる。
【0046】
また、フロントサイドフレーム10を上下に貫通してサブフレーム16を締結するためのロングボルト36を使って上方ワイヤ60及び下方ワイヤ62をフロントサイドフレーム10に締結してあるため、上方ワイヤ60及び下方ワイヤ62の前端をフロントサイドフレーム10に固定するための部材を別途用意する必要がないだけでなく、衝突荷重をフロントサイドフレーム10だけでなくサブフレーム16にも分散することができる。
【0047】
また、閉断面構造のフロントサイドフレーム10を貫通する部材(ロングボルト36)によってワイヤ60、62をフロントサイドフレーム10に固定する構造を採用することにより、ワイヤ60、62から入力される衝突荷重をフロントサイドフレーム10の互いに対抗する面に分散することができ、フロントサイドフレーム10の局部破壊やワイヤ60、62からの入力に伴うフロントサイドフレーム10の前端部の予期しない変形を抑制することができ、これによりフロントサイドフレーム10の本来の変形を伴う衝突エネルギ吸収機能を発揮させることができる。
【0048】
また、フロントサイドフレーム10の前端部から下方から延びるブラケット34とサブフレーム16との間に下方ワイヤ62の前端を締結することで、下方ワイヤ62をエンジン出力軸20cよりも下方に位置させるのが容易であり、また、下方ワイヤ62をフロントサイドフレーム10の軸線とほぼ平行に配置させることができる。これにより、下方ワイヤ62からフロントサイドフレーム10への衝突荷重の力方向をフロントサイドフレームフレーム10とほぼ平行にできるため、換言すると、フロントサイドフレーム10に衝突荷重の分力が作用してフロントサイドフレーム10に予期しない変形が発生するのを抑制することができ、これによりフロントサイドフレーム10の本来の変形を伴う衝突エネルギ吸収機能を発揮させることができる。
【0049】
勿論、シリンダブロック46の上端部に上方ワイヤ60を掛け渡すことでフロントサイドフレーム10への入力方向がフロントサイドフレームフレーム10と平行となることから、フロントサイドフレーム10の本来の変形を伴う衝突エネルギ吸収機能を発揮させることができる。
【0050】
また、上下のワイヤ60、62の前端が、側方に突出する部材を備えていないシングルロック80の端末を有していることから、ワイヤ60、62の端部がフロントサイドフレーム10と干渉する虞がない。
【0051】
以下の他の実施例でも同様であるが、上方ワイヤ60と下方ワイヤ62を用意することは必須ではない。少なくともいずれか一方のワイヤ60(62)だけであってもよい。
【0052】
図11は、第1実施例の変形例を示す。この図11から分かるように、下方ワイヤ62を左右のフロントサイドフレーム10の軸線と平行になるように配索するようにしてもよいのは勿論である。
【0053】
第2実施例(図12〜図14):
この第2実施例では、上方ワイヤ60を第1実施例と同様に一本のワイヤで構成すると共にフロントサイドフレーム10の軸線と平行になるように配索されているが、下方ワイヤ62に関しては、この下方ワイヤ62を第1、第2の分割下方ワイヤ94、96で構成してある。そして、この第1、第2の分割下方ワイヤ94、96の後端が第1マウント部材44に締結され(図14)、この第1マウント部材44を介してパワープラント40に係止されている。この第2実施例では、図14から分かるように、第1、第2の分割下方ワイヤ94、96が共にパワープラント40の下面に沿って配索されているが、第1、第2の分割下方ワイヤ94、96をパワープラント40の側面に沿って配索するようにしてもよい。
【0054】
変形例として、図示を省略したが、第1、第2の分割下方ワイヤ94、96と同様に、上方ワイヤ60を第1、第2の分割上方ワイヤで構成し、この第1、第2の分割上方ワイヤを第2、第3のマウント部材48、52に締結して、この第2、第3のマウント部材48、52を介してパワープラント40に係止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の基本概念に含まれる一例を示す図である。
【図2】本発明の基本概念に含まれる他の例を示す図である。
【図3】本発明の基本概念に含まれる更なる例を示す図である。
【図4】本発明の基本概念に含まれる上下に複数組のワイヤ(可撓性張力材)を配設する例を示す図である。
【図5】第1実施例に関し、エンジンルームを斜め上方から見た図である。
【図6】第1実施例に関し、エンジンルームを側方から見た図である。
【図7】第1実施例に関し、ワイヤの前端がシングルロックの端末を備え、サブフレームをフロントサイドフレームに締結するロングボルトを使ってワイヤの前端をフロントサイドフレームに固定する例を説明するための斜視図である。
【図8】第1実施例に関し、上方ワイヤ、下方ワイヤを配索するのに使用するガイド部材を説明するためにパワープラントを後方から見た図である。
【図9】第1実施例に関し、ガイド部材の一例を説明するための図である。
【図10】第1実施例に関し、ガイド部材の他の例を説明するための図である。
【図11】第1実施例の変形例を示す側面図であり、上方ワイヤ及び下方ワイヤが共にフロントサイドフレームの軸線と平行に配索した例を示す図である。
【図12】第2実施例に関し、エンジンルームを上方から見た図である。
【図13】第2実施例に関し、エンジンルームを斜め後方から見た図である。
【図14】第2実施例に関し、エンジンルームを斜め下方から見た図である。
【符号の説明】
【0056】
201 エンジンルーム
205 多気筒往復動エンジン
205a エンジン出力軸
208 パワープラント
210 フロントサイドフレーム
212 バンパーレインフォースメント
215 ワイヤ(可撓性張力材)
215a 分割ワイヤ
215b 分割ワイヤ
215A 上方ワイヤ
215B 下方ワイヤ
218 マウント部材
P ポール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームに搭載したパワープラントに係合して該パワープラントから左右に且つ前方に延びる可撓性張力材を備え、
該可撓性張力材は、その前端が、夫々、左右のフロントサイドフレームの前端部に締結されていると共に、側面視したときに、前記可撓性張力材が、車体前後方向に延びる前記左右のフロントサイドフレームの軸線と平行に延びていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記可撓性張力材が一方の前端から他方の前端まで連続している、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記可撓性張力材が第1、第2の左右に分割された分割張力材で構成され、第1、第2の分割張力材の後端が、夫々、前記パワープラントに締結されている、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記可撓性張力材が第1、第2の左右に分割された分割張力材で構成され、第1、第2の分割張力材の後端が、前記パワープラントを前記フロントサイドフレームに搭載するためのマウント部材に締結されている、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記可撓性張力材が第1、第2の左右に分割された分割張力材で構成され、第1、第2の分割張力材の後端が、第1の分割張力材の後端が前記パワープラントに締結され、第2の分割張力材の後端が、前記パワープラントを前記フロントサイドフレームに搭載するためのマウント部材に締結されている、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記可撓性張力材が、上下に離置する少なくとも2組の可撓性張力材で構成され、上方に位置する上方張力材又は下方に位置する下方張力材の少なくともいずれか一方の張力材が、車体前後方向に延びる前記左右のフロントサイドフレームの軸線と平行に延びている、請求項2〜5のいずれか一項に記載の車体前部構造。
【請求項1】
エンジンルームに搭載したパワープラントに係合して該パワープラントから左右に且つ前方に延びる可撓性張力材を備え、
該可撓性張力材は、その前端が、夫々、左右のフロントサイドフレームの前端部に締結されていると共に、側面視したときに、前記可撓性張力材が、車体前後方向に延びる前記左右のフロントサイドフレームの軸線と平行に延びていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記可撓性張力材が一方の前端から他方の前端まで連続している、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記可撓性張力材が第1、第2の左右に分割された分割張力材で構成され、第1、第2の分割張力材の後端が、夫々、前記パワープラントに締結されている、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記可撓性張力材が第1、第2の左右に分割された分割張力材で構成され、第1、第2の分割張力材の後端が、前記パワープラントを前記フロントサイドフレームに搭載するためのマウント部材に締結されている、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記可撓性張力材が第1、第2の左右に分割された分割張力材で構成され、第1、第2の分割張力材の後端が、第1の分割張力材の後端が前記パワープラントに締結され、第2の分割張力材の後端が、前記パワープラントを前記フロントサイドフレームに搭載するためのマウント部材に締結されている、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記可撓性張力材が、上下に離置する少なくとも2組の可撓性張力材で構成され、上方に位置する上方張力材又は下方に位置する下方張力材の少なくともいずれか一方の張力材が、車体前後方向に延びる前記左右のフロントサイドフレームの軸線と平行に延びている、請求項2〜5のいずれか一項に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−6220(P2010−6220A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167287(P2008−167287)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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