説明

車体後部構造

【課題】リヤピラーの下端部をホイルハウス上部まで延設する車体後部構造において、ショックアブソーバからの入力荷重をリヤピラーにより効率良く吸収させることが可能な構造を得る。
【解決手段】車室内側に開口するハット状断面を有して略上下方向に伸びる外側部材としてのリヤピラーアウタレインフォース3Bと、車室外側に開口するハット状断面を有して略上下方向に伸びる内側部材としてのリヤピラーインナレインフォース3Cおよびインナエクステンション3Dとを有するリヤピラー3を備えた車体後部構造において、リヤピラーアウタレインフォース3Bの下部をリヤピラーインナレインフォース3Cの下部より後方にずらして配置し、リヤピラーアウタレインフォース3Bの前側部分とリヤピラーインナレインフォース3Cの後側部分とを相互に接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車体後部構造として、リヤピラーの下端部をホイルハウス上部近傍まで延設した構造が知られている(例えば、特許文献1)。かかる車体後部構造では、ブレース部材やレインフォース部材を用いて補強することで、ショックアブソーバからの入力荷重の吸収効率を高めてある。
【特許文献1】特許第3659077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、リヤピラー(車室外側のレインフォース部材)の前側には、リヤドア用のドアロック装置が隣接配置されるため、当該レインフォース部材の閉断面を大きくとり難く、入力荷重の吸収効率を高めるのを阻害する一因となっていた。また、かかるドアロック装置に限らず、リヤピラー近傍に他の部品が存在する等、リヤピラーについてレイアウト上の制約がある場合には、同様の問題が生じ得る。
【0004】
そこで、本発明は、リヤピラーの下端部をホイルハウス上部まで延設する車体後部構造において、ショックアブソーバからの入力荷重をより効率良くリヤピラーに吸収させることが可能な構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、車室内側に開口するハット状断面を有して略上下方向に伸びる外側部材と、車室外側に開口するハット状断面を有して略上下方向に伸びる内側部材とを有するリヤピラーを備えた車体後部構造において、前記外側部材の下部および内側部材の下部のうちいずれか一方を他方より後方にずらして配置し、当該一方の前側部分と他方の後側部分とを突き合わせて接合したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外側部材の下部と内側部材の下部とを前後にずらして配置し、それらのうち後側に配置される部材の前側部分と前側に配置される部材の後側部分とを突き合わせて接合することで、リヤピラーの剛性および強度を確保しながら、後側に配置される部材の前方および前側に配置される部材の後方に、部品等を配置する領域を確保することができる。したがって、近傍に何らかの部品等が配置される状況下においても、リヤピラーの剛性および強度を確保しやすくなり、ショックアブソーバからの入力荷重をより効率良くリヤピラーに吸収させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる車両後部構造を車室外側から見た側面図、図2は、車両後部構造の分解斜視図、図3は、車両後部構造を車両前方側から見た正面図(一部断面図)、図4は、図1のIV−IV断面図である。なお、図中、FRは車両前後方向前方を、INは、車幅方向車室内側を、UPは上方を示す。
【0008】
図1および図2に示すように、本実施形態にかかる車体後部構造1は、ホイルハウス2の上部にリヤピラー3を設けたものであり、ホイルハウス2を構成するホイルハウスアウタ2Aおよびホイルハウスインナ2Bと、リヤピラー3を構成するリヤピラーインナ3A、リヤピラーアウタレインフォース3B、リヤピラーインナレインフォース3C、およびインナエクステンション3Dとを備えている。
【0009】
ホイルハウス2は、ホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2aとホイルハウスインナ2Bの接合フランジ部2bとを相互に突き当てて溶接することで構成されており、断面アーチ状となるカバー部2c,2dによってリヤタイヤ(図示せず)の上方を覆っている。
【0010】
また、ホイルハウスインナ2Bの前後方向略中央部は、車室内側に膨出成形され、リヤサスペンション機構のショックアブソーバ(図示せず)の上部を支持するショックアブソーバ上方支持部4が形成されている。本実施形態では、ショックアブソーバ上方支持部4の上壁部4aには、取付穴4bが形成されており、ショックアブソーバの上部が、この取付穴4bを貫通させたボルト等を用いて上壁部4aに固定されるようになっている。
【0011】
一方、リヤピラーインナ3Aは、Cピラーの上側をなす部分と、車両側面後端の上側をなす部分(Dピラーを含む)とを一体的に備えており、側面視で略D字状に形成されている。前方かつ上方から後方かつ下方に向けて斜めに伸びる前縁部3aは、車室内側に膨出形成されて車室外側に開口するハット状断面を有しており、リヤピラー3(Cピラー)を補強する断面内レインフォース部材として機能する。
【0012】
リヤピラーアウタレインフォース3Bは、前後方向に伸びる上縁部3bと、当該上縁部3bの略中央部から下方かつ後方に向けて斜めに伸びる垂下部3cとを備え、側面視で略T字状に形成されている。垂下部3cは、車室外側に膨出形成されて車室内側に開口するハット状断面を有しており、リヤピラー3(Cピラー)の外側部材として機能する。また、垂下部3cの両側縁には接合フランジ部3d,3dが設けられている。
【0013】
リヤピラーインナレインフォース3Cは、車室内側に膨出形成されて車室外側に開口するハット状断面を有しており、リヤピラー3(Cピラー)の内側部材として機能する。両側縁には接合フランジ部3f,3fが設けられている。
【0014】
また、図1に示すように、このリヤピラーインナレインフォース3Cは、上端部から中央部までは、リヤピラーインナ3Aの前縁部3aや、リヤピラーアウタレインフォース3Bの垂下部3cと車幅方向に重なりあって、上方かつ前方から下方かつ後方に向けて斜めに伸びているが、中央部を起点に前方に向けて湾曲しており、当該中央部から下端部にかけては略上下方向に伸びている。
【0015】
この上端部から中央部にかけての上側部分では、リヤピラーインナ3Aを間に挟む状態で、リヤピラーアウタレインフォース3Bの接合フランジ部3d,3dとリヤピラーインナレインフォース3Cの接合フランジ部3f,3fとが相互に接合されて、リヤピラー3(Cピラー)の閉断面を形成している。
【0016】
一方、図1、図3に示す区間Hでは、リヤピラーインナレインフォース3Cの後側部分と、リヤピラーアウタレインフォース3Bの前側部分とが車幅方向に重なり合っており、また、図4に示すように、リヤピラーインナレインフォース3Cの後側の接合フランジ部3fとリヤピラーアウタレインフォース3Bの前側の接合フランジ部3dとがスポット溶接によって相互に突き合わせて接合されている(図4中の太線矢印)。
【0017】
この区間Hでは、リヤピラーアウタレインフォース3Bおよびリヤピラーインナレインフォース3Cは、いずれも、ホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2a(の上側に張り出す部分)に接合されており、前後方向にずれて互い違いに配置された閉断面を形成している。
【0018】
このため、リヤピラーインナレインフォース3Cの後側の接合フランジ部3fとリヤピラーアウタレインフォース3Bの前側の接合フランジ部3dとが突き合わせて接合される部分では、これら接合フランジ部3dと接合フランジ部3fとによってホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2aが挟み込まれた状態で、これら三つの部材が共にスポット溶接によって接合されている。
【0019】
インナエクステンション3Dは、車室内側に膨出形成されて車室外側に開口するハット状断面を有しており、リヤピラー3(Cピラー)の内側部材として機能する。両側縁には接合フランジ部3h,3hが設けられている。このインナエクステンション3Dは、ホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2aおよびホイルハウスインナ2Bのカバー部2dに沿って車幅方向に湾曲形成され、接合フランジ部3h,3hが接合フランジ部2aおよびカバー部2dに接合されて、閉断面を形成している。
【0020】
このインナエクステンション3Dの上端部は、リヤピラーインナレインフォース3Cの下端部に接続される一方、インナエクステンション3Dの下端部は、ホイルハウスインナ2Bに形成されたショックアブソーバ上方支持部4の上壁部4aに接続されている。すなわち、本実施形態では、リヤピラーインナレインフォース3Cとインナエクステンション3Dとが上下に接続されて、リヤピラー3の内側部材が構成されている。
【0021】
そして、図1に示すように、ホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2aのリヤピラーアウタレインフォース3Bより前方側の領域には、ドアロック装置6(例えばストライカ等)が設けられる一方、接合フランジ部2aのリヤピラーインナレインフォース3Cより後方側の領域には、略矩形状の開口部2eが形成され、この開口部2e内に収容される状態でシートベルトリトラクタ5が取り付けられている。このとき、開口部2eはリヤピラーアウタレインフォース3Bと車幅方向に重なり合うように配置されており、当該開口部2eはリヤピラーアウタレインフォース3Bの垂下部3cによって車室外側から覆われている。なお、ドアロック装置6は、接合フランジ部2aを切り起こして形成したブラケット2f(図2)に固定されている。
【0022】
以上の本実施形態によれば、車室内側に開口するハット状断面を有して略上下方向に伸びる外側部材としてのリヤピラーアウタレインフォース3Bと、車室外側に開口するハット状断面を有して略上下方向に伸びる内側部材としてのリヤピラーインナレインフォース3Cおよびインナエクステンション3Dとを有するリヤピラー3を備えた車体後部構造において、リヤピラーアウタレインフォース3Bの下部をリヤピラーインナレインフォース3Cの下部より後方にずらして配置し、リヤピラーアウタレインフォース3Bの前側部分とリヤピラーインナレインフォース3Cの後側部分とを突き合わせて接合したため、リヤピラー3の剛性および強度を確保しながら、リヤピラーアウタレインフォース3Bの前方およびリヤピラーインナレインフォース3Cの後方に、部品等を配置する領域を確保することができる。したがって、近傍にシートベルトリトラクタ5やドアロック装置6等の部品が配置される状況下においても、リヤピラー3の剛性および強度を確保しやすくなり、ショックアブソーバからの入力荷重をリヤピラー3により効率良く吸収させることが可能となる。
【0023】
そして、上記構成により、リヤピラー3の下部が前後方向に拡幅されることになるため、車体後部の上下剛性やねじり剛性が向上するとともに、乗り心地(ダンピング感)が向上するという利点もある。
【0024】
また、リヤピラーアウタレインフォース3Bの前側の接合フランジ部3dと、リヤピラーインナレインフォース3Cの後側の接合フランジ部3fとを車幅方向に重ね合わせて突き合わせて接合するようにしたため、リヤピラーアウタレインフォース3Bの下部とリヤピラーインナレインフォース3Cの下部とが前後にずれた部分の接合を、容易に行うことができる。
【0025】
さらに、このとき、リヤピラーアウタレインフォース3Bおよびリヤピラーインナレインフォース3Cの下部(図1,3,4中の区間H)では、接合フランジ部3d,3fをホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2aに接合することで、リヤピラー3の内側および外側でそれぞれ容易に閉断面を形成するとともに、リヤピラー3とホイルハウス2との接続剛性および強度を高めることができる。
【0026】
そして、特に、接合フランジ部3d,3f同士が重なり合う部分では、これら接合フランジ部3d,3fによって、ホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2aを挟み込む状態で、これら三つの接合フランジ部3d,3f,2aを共に溶接することで、溶接作業の回数を減らして、製造時間の短縮ならびに製造コストの削減を図ることができる。
【0027】
また、本実施形態では、前方側に湾曲させて中央部より下側を略上下方向に伸ばした内側部材としてのインナエクステンション3Dの下端を、ホイルハウスインナ2Bに設けたショックアブソーバ上方支持部4に接続したため、ショックアブソーバからの入力荷重をこの内側部材に対してより効率良く吸収させることが可能となる上、リヤピラー3としての剛性および強度をより確実に確保することができる。
【0028】
また、本実施形態では、ホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2aを、リヤピラーアウタレインフォース3Bおよびリヤピラーインナレインフォース3Cの下部と重ね合わせることで、リヤピラーアウタレインフォース3Bおよびリヤピラーインナレインフォース3Cの下部のそれぞれについて閉断面を形成して、剛性および強度を確保するとともに、接合フランジ部2aのリヤピラーアウタレインフォース3Bの下部より前方となる領域に、ドアロック装置6を設けたため、リヤピラー3の剛性および強度を確保しながら、ドアロック装置6を適切な位置に配置することができる。
【0029】
さらに、接合フランジ部2aのリヤピラーインナレインフォース3Cの下部より後方となる領域に開口部2eを設け、シートベルトリトラクタ5を当該開口部2e内に収めた状態で設けたため、リヤピラー3の剛性および強度を確保しながら、シートベルトリトラクタ5を適切な位置に配置することができる。
【0030】
このとき、開口部2eに収めた状態で設けたシートベルトリトラクタ5を、リヤピラーアウタレインフォース3Bによって車室外側から覆うようにしたため、シートベルトリトラクタ5の開口部2eを介して車室外の騒音が車室内に進入するのを抑制することができる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、内側部材としてのリヤピラーインナレインフォース3Cの下部をリヤピラーアウタレインフォース3Bの下部より前に配置したが、これとは逆に、すなわち、リヤピラーアウタレインフォース3Bの下部をリヤピラーインナレインフォース3Cの下部より前に配置してもよい。
【0032】
さらに、上記実施形態では、ホイルハウスアウタ2Aの接合フランジ部2aを上方に伸ばして、リヤピラーアウタレインフォース3Bの下部とリヤピラーインナレインフォース3Cの下部とを接合したが、ホイルハウスインナ2Bの接合フランジ部2bを上方に伸ばして、リヤピラーアウタレインフォース3Bの下部とリヤピラーインナレインフォース3Cの下部とを接合してもよいし、接合フランジ部2a,2bを双方とも上方に伸ばして、リヤピラーアウタレインフォース3Bの下部とリヤピラーインナレインフォース3Cの下部とを接合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両後部構造を車室外側から見た側面図。
【図2】本発明の実施形態にかかる車両後部構造の分解斜視図。
【図3】本発明の実施形態にかかる車両後部構造を車両前方側から見た正面図(一部断面図)。
【図4】図1のIV−IV断面図。
【符号の説明】
【0034】
1 車体後部構造
2A ホイルハウスアウタ
2B ホイルハウスインナ
2a 接合フランジ部
3 リヤピラー(Cピラー)
3B リヤピラーアウタレインフォース(外側部材)
3C リヤピラーインナレインフォース(内側部材)
3D インナエクステンション(内側部材)
3d,3f 接合フランジ部
4 ショックアブソーバ上方支持部
5 シートベルトリトラクタ
6 ドアロック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側に開口するハット状断面を有して略上下方向に伸びる外側部材と、車室外側に開口するハット状断面を有して略上下方向に伸びる内側部材とを有するリヤピラーを備えた車体後部構造において、
前記外側部材の下部および内側部材の下部のうちいずれか一方を他方より後方にずらして配置し、当該一方の前側部分と他方の後側部分とを突き合わせて接合したことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記外側部材の下部を内側部材の下部より後方にずらして配置し、当該外側部材の下部の前側部分と内側部材の下部の後側部分とを突き合わせて接合したことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記前側部分としての前側の接合フランジ部と前記後側部分としての後側の接合フランジ部とを突き合わせて接合したことを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記内側部材の下端をホイルハウスインナに設けたショックアブソーバ上方支持部に接続したことを特徴とする請求項2または3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
ホイルハウスアウタおよびホイルハウスインナのうち少なくともいずれか一方の接合フランジ部を、前記外側部材および内側部材の下部と重ね合わせ、当該接合フランジ部の外側部材より前方となる領域にドアロック装置を設けたことを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか一つに記載の車体後部構造。
【請求項6】
ホイルハウスアウタおよびホイルハウスインナのうち少なくともいずれか一方の接合フランジ部を、前記外側部材および内側部材の下部と重ね合わせ、当該接合フランジ部の内側部材より後方となる領域に開口部を設け、シートベルトリトラクタを当該開口部内に収めた状態で設けたことを特徴とする請求項2〜5のうちいずれか一つに記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記開口部に収めた状態で設けたシートベルトリトラクタを、前記外側部材によって車室外側から覆うようにしたことを特徴とする請求項6に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−18750(P2008−18750A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189758(P2006−189758)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】