車体構造
【課題】 センタピラー自体の強度、ならびにセンタピラーとサイドシルとの接合強度を一層向上させた車体構造を提供する。
【解決手段】 センタピラー11は、内壁部11c、前壁部11d、および後壁部11eで構成されるセンタピラーインナ11を備える。センタピラーインナ11の下端は、センタピラーインナ内壁部11cがサイドシル内壁部21cに略沿うようにサイドシル2内に進入する。サイドシル2内に配設される補強部材3の内端31a、32aは、センタピラーインナ前壁部11dおよび後壁部11eの車外側端部に接続される。
【解決手段】 センタピラー11は、内壁部11c、前壁部11d、および後壁部11eで構成されるセンタピラーインナ11を備える。センタピラーインナ11の下端は、センタピラーインナ内壁部11cがサイドシル内壁部21cに略沿うようにサイドシル2内に進入する。サイドシル2内に配設される補強部材3の内端31a、32aは、センタピラーインナ前壁部11dおよび後壁部11eの車外側端部に接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体構造に関し、特に、センタピラーとサイドシルとの結合部に補強部材を備える車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
センタピラーは乗員のほぼ真横の位置に立設されている骨格部材であり、側面衝突時などに車室内に倒れるような変形を極力抑える必要がある。このため、サイドシルに結合されるセンタピラーの下端部は骨太な形状とされるなどの工夫がなされている。このような形状自体の工夫に加えてさらに、センタピラーとサイドシルとの結合部において、サイドシル内断面内のリブ壁(いわゆる節部材)として機能する補強部材を配設することも行われている。
【0003】
このような補強部材の構造例が、特開2003−252237号公報(特許文献1)に開示されている。図12および図13にそれぞれ、同文献に記載された図3および図4を再掲する(ただし、参照番号は変更した。)。図12は、センタピラーとサイドシル(ロッカ)との結合部の、車体前後方向における縦断面図、図13は、図12の4−4断面図である。
【0004】
図13に示されるように、センタピラー200は、センタピラーアウタ220とセンタピラーインナ200とを有し、両者によって閉断面260を構成している。このセンタピラー200の車幅方向外側にはキャブサイドアウタパネル(サイメンアウタ)110が配される。また、サイドシル100は、サイドシルレインフォースメント120とサイドシルインナ140とを有し、両者によって閉断面160を構成している。
【0005】
さて、図12に示されるように、サイドシル100の閉断面部160内におけるセンタピラー200の下方位置には、補強部材としてのブラケット300が配設される。このブラケット300は、側面視で下方に開口部を向けたコ字状とされている。具体的には、ブラケット300は、前壁部300Bと、後壁部300Dと、前壁部300Bと後壁部300Dとを連結する上壁部300Aとを有する構造である。前壁部300Bおよび後壁部300Dはサイドシル100の閉断面部160を閉塞しており、サイドシル100の車両前後方向の断面を横切る節部材として機能している。この場合、図13に示されるように、センタピラーインナ240の下端部240Cは、サイドシルレインフォースメント120の上部フランジ120Bとサイドシルインナ140の上部フランジ140Bとの間に溶着されている。
【0006】
同文献に記載された発明は、このような構成によって、センタピラー200とサイドシル100との結合部の剛性を高めるとともに、溶接の作業性をも改善している点で優れている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−252237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、センタピラーとサイドシルとの結合部の構造を改良するものであり、たとえば、センタピラー自体の強度、ならびにセンタピラーとサイドシルとの接合強度を一層向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、センタピラーと、センタピラーの下端と接続されるサイドシルと、センタピラー前後端下方のサイドシル内に、サイドシルの車体前後方向における断面を横切るように配設される補強部材とを備える車体構造に係り、前記センタピラーは、内壁部、前壁部、および後壁部で構成されるセンタピラーインナを備え、前記センタピラーインナの下端は、センタピラーインナ内壁部がサイドシル内壁部に略沿うようにサイドシル内に進入し、前記補強部材の車幅方向内側端部は、センタピラーインナ前壁部および後壁部の車幅方向外側端部に接続されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、センタピラーインナはサイドシルの内壁に沿って進入するので、そのセンタピラーインナの下端をサイドシルの下端にまで延ばして接続することが可能になる。そうすると、このセンタピラーインナは、サイドシルの閉断面を縦断する、サイドシルレインフォースメントとしても機能することになる。これにより、センタピラー自体の強度およびサイドシルに対する接続強度の向上を図ることができる。しかもこれと同時に、補強部材は、センタピラーインナの前壁部および後壁部を利用して、サイドシルの車体前後方向における断面を横切る節部材として効果的に構成されている。
【0011】
なお、図13を参照すると分かるように、上記の特許文献1に開示されたブラケット300の構成では、前壁部300Bと後壁部300Dとを連結する上壁部300Aがサイドシル100の上面を閉塞しており、これが障害となってセンタピラーインナ240の下端部240Cをサイドシル100内に進入させることはできない。したがって、同文献に記載された構成では、センタピラーインナを、サイドシルの閉断面を縦断するサイドシルレインフォースメントとしても機能させることは困難である。よって、本発明の上記構成によれば、センタピラー自体の強度ならびにセンタピラーとサイドシルとの接合強度を一層向上させることができるといえる。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、前記サイドシルは、車幅方向内側に膨出するサイドシルインナと、車幅方向外側に膨出し、サイドシルインナと上下端で接合されるサイドシルレインフォースメントとを備え、前記サイドシル内のセンタピラーインナの前壁部および後壁部はそれぞれ、下方に向かうほど内壁部側に後退し、その下端は、前記サイドシルインナと前記サイドシルレインフォースメントとの接合部で接合されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、サイドシル内のセンタピラーインナの前後壁部は、下端にかけて形状が徐々に後退するように連続的に構成されるので、前後壁部の剛性を向上させることができ、対側面衝突性能を向上させることができる。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、前記サイドシルレインフォースメントは、上壁部、外壁部、および下壁部を有する高張力鋼板で形成され、前記サイドシルインナは、上壁部、内壁部、および下壁部で構成され、前記サイドシルインナの上壁部には、前記センタピラーインナを進入させるための凹部が形成される一方、前記補強部材は、上壁部から前記凹部を覆うように車内側に延び前記センタピラーインナの内壁部に接続される延出部を有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、前後に間隔をおいた補強部材を一体的に構成することにより補強部材の剛性を向上させることができ、また、延出部を設けることにより、センタピラー接続部におけるサイドシルインナ上壁部の凹部形成による剛性低下を抑制することができる。また、上記構成によれば、補強部材の延出部は、センタピラーインナの内壁部に接続される。延出部は補強部材と一体成形されるものであるため、高張力鋼板からなるサイドシルレインフォースメントに延出部を接続する場合に比べ、コスト面の悪化および加工性能の悪化を抑制することができる。
【0016】
本発明の別の側面は、センタピラーと、センタピラーの下端と接続されるサイドシルと、センタピラー前後端下方のサイドシル内を、サイドシルの車体前後方向における断面を横切るように配設される補強部材とを備える車体構造に係り、前記センタピラーは、内壁部、前壁部、および後壁部で構成されるセンタピラーインナを備え、前記サイドシルは、上壁部、内壁部、および下壁部を形成して車幅方向内側に膨出するサイドシルインナと、車幅方向外側に膨出するように上壁部、外壁部、および下壁部を有する高張力鋼板で形成され、サイドシルインナと上下端で接合されるサイドシルレインフォースメントとを備え、前記サイドシルインナの上壁部には、前記センタピラーインナを進入させるための凹部が形成され、前記センタピラーインナの下端は、前記凹部からサイドシル内に進入し、前記補強部材は、その車幅方向内側端部がセンタピラーインナ前壁部および後壁部の車幅方向外側端部に接続されるとともに、上壁部から前記凹部を覆うように車内側に延び前記センタピラーインナの内壁部に接続される延出部を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、センタピラーとサイドシルとの接続強度の向上を図りつつ、補強部材に設けられた延出部によって、センタピラー接続部におけるサイドシルインナ上壁部の凹部形成による剛性低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、センタピラー自体の強度、ならびにセンタピラーとサイドシルとの接合強度を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決手段として必須のものであるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態における車体左側面のサイドメンバの外観を示す図である。図示のように、センタピラー1は車体前後方向の中央部付近で立設され、その上端はルーフサイドレール40と連結され、下端はサイドシル2と連結されている。同図におけるセンタピラー1は外皮であるキャブサイドアウタパネル50で覆われた状態である。22は、サイドシル2の一構成部材であるサイドシルレインフォースメント22である。なお、キャブサイドアウタパネル50のサイドシル部分はサイドシルアウタとなる。
【0021】
以下、センタピラー1およびサイドシル2それぞれの具体的構成、ならびに、センタピラー1とサイドシル2との接合部における具体的構造を、詳しく説明していく。これらの構造は左右両側とも同様のものであるから、ここでは代表的に車体左側の構成についてのみ説明する。
【0022】
図2は、図1のA−A断面図であり、センタピラー1の車体上方から見た断面形状を示している。同図に示されるように、センタピラー1は基本的に、前後端部にフランジが形成され中央部が車内側に膨出するハット状のセンタピラーインナ11と、前後端部にフランジが形成され中央部が車外側に膨出するハット状のセンタピラーアウタ12とを備え、両者によって閉断面13が構成されている。具体的には、センタピラーインナ11は、前端に形成されたフランジ11aと、後端に形成されたフランジ11bと、両フランジ11a、11bよりも車内側に位置する内壁部11cと、フランジ11a後端と内壁部11c前端とを連結する前壁部11dと、フランジ11b前端と内壁部11c後端とを連結する後壁部11eとを有する構成である。また、センタピラーアウタ12は、前端に形成されたフランジ12aと、後端に形成されたフランジ12bと、両フランジ12a、12bよりも車外側に位置する外壁部12cと、フランジ12a後端と外壁部12c前端とを連結する前壁部12dと、フランジ12b前端と外壁部12c後端とを連結する後壁部12eとを有する構成である。
【0023】
この部分のキャブサイドアウタパネル50は、センタピラーアウタ12と概ね同様の形状をなし、センタピラーアウタ12の車外側を覆うように配設され、キャブサイドアウタパネル50の前後端部はそれぞれ、センタピラーアウタ12のフランジ12a、12bに接合されている。
【0024】
図3は、図1のB−B断面図であり、サイドシル2の車体後方から見た断面形状を示している。同図に示されるように、サイドシル2は基本的に、上下端部にフランジが形成され中央部が車内側に膨出するハット状のサイドシルインナ21と、上下端部にフランジが形成され中央部が車外側に膨出するハット状のサイドシルレインフォースメント22とを備え、両者によって閉断面23が構成されている。具体的には、サイドシルインナ21は、上端に形成されたフランジ21aと、下端に形成されたフランジ21bと、両フランジ21a、21bよりも車内側に位置する内壁部21cと、フランジ21a下端と内壁部21c上端とを連結する上壁部21dと、フランジ21b上端と内壁部21c下端とを連結する下壁部21eとを有する構成である。また、サイドシルレインフォースメント22は、上端に形成されたフランジ22aと、下端に形成されたフランジ22bと、両フランジ22a、22bよりも車外側に位置する外壁部22cと、フランジ22a下端と外壁部22c上端とを連結する上壁部22dと、フランジ22b上端と外壁部22c下端とを連結する下壁部22eとを有する構成である。本実施形態では、サイドシルレインフォースメント22にはサイドシルインナ21に比べ高張力の鋼板が使用される。
【0025】
この部分のキャブサイドアウタパネル50は、サイドシルレインフォースメント22の上壁部22dを覆うように配設され、キャブサイドアウタパネル50の両端部はそれぞれ、サイドシルレインフォースメント22の外壁部22cとフランジ22aに接合されている。
【0026】
以上が、センタピラー1およびサイドシル2の通常部分の構造である。これに対し、センタピラー1とサイドシル2との接合部では、この接合部の剛性強化を図るべく特徴的な構造を備えている。以下、この接合部の構造を詳しく説明する。
【0027】
図4は、図1に示した状態からキャブサイドアウタパネル50を取り外し、さらに、センタピラーアウタ12およびサイドシルレインフォースメント22を取り外した状態を示している。この状態で、センタピラー1とサイドシル2との接合部の構造が露見する。図示のように、この接合部においては、センタピラーインナ11の下端部はサイドシル2内に進入しており、このセンタピラーインナ11の下端部における車外方向外側に、補強部材3が配設されている。
【0028】
この補強部材3の構造ならびにセンタピラーインナ11の下端部の構造は、本実施形態の車体構造に係り重要な特徴をなす部分である。そこで、この補強部材3の構造例を、図5〜7を参照して詳しく説明し、センタピラーインナ11の下端部の構造および補強部材3の配設例を、図8〜11を参照して詳しく説明する。
【0029】
図5は補強部材3を車体左斜め前方から見た斜視図である。図6は補強部材3を車体左側方から見た側面図で、図4に示された補強部材3の拡大図に相当する。図7は補強部材3を車体後方から見た背面図である。補強部材3は、サイドシル2の閉断面23に沿って立設される前壁部31と、その前壁部31の後方に所定の間隔をおいて前壁部31と同様に立設される後壁部32と、前壁部31の上端と後壁部32の上端とを連結する上壁部33とを備えている。したがって、前壁部31と後壁部32はそれぞれ、サイドシル2の車体前後方向における断面を横切る節部材として機能する。
【0030】
前壁部31および後壁部32はそれぞれ、略台形状に形成された部材であり、車外側上縁部から車外側下縁部にかけては車体上下方向に沿って形成され、車外側下縁部から車内側下縁部に亘る底辺部は車幅方向に沿って形成される一方、車内側上縁部から車内側下縁部にかけては車内側斜め下方に向かう傾斜が設けられている。また、前壁部31の、車内側端部(斜辺)には車体前方に向かうフランジ31aが形成され、車外側端部には車体後方に向かうフランジ31bが形成され、底辺部には車体後方に向かうフランジ31cが形成されている。一方、後壁部32の、車内側端部(斜辺)には車体後方に向かうフランジ32aが形成され、車外側端部には車体前方に向かうフランジ32bが形成され、底辺部には車体前方に向かうフランジ32cが形成されている。さらに本実施形態では、上壁部33の車内側端部には、車内側に延びる延出部34が形成されるとともに、その延出部34の車内側端部には上方に向かうフランジ35が形成されている。
【0031】
図8は、図4に示したセンタピラー1とサイドシル2との接合部を、車外左斜め後方から見た要部斜視図である。また、図9は、センタピラー1とサイドシル2との接合部の分解図である。図示のように、センタピラーインナ11は、サイドシルインナ21の上端部付近で車内側への膨出量が、他の箇所に比べ大きく設定されている。また、その下部では、前壁部11dおよび後壁部11eはそれぞれ、下方に向かうほど内壁部11c側へと後退する後退部15および16が形成されている。サイドシルインナ21には、このセンタピラーインナ11の車内側への膨出量に応じた凹部24が形成されており、ここからセンタピラーインナ11がサイドシル2内に進入することになる。
【0032】
このように、本実施形態におけるセンタピラーインナ11の前壁部11dおよび後壁部11eは、サイドシル2内においては、下端にかけて形状が徐々に後退するように連続的に構成されるため、前壁部11dおよび後壁部11eの剛性を向上させることができる。このため、対側面衝突性能を向上させることができる。
【0033】
さて、図8に示すように、補強部材3の車内側端部をなすフランジ31aおよび32aはそれぞれ、センタピラーインナ11に形成された上記後退部15,16の車外側端部に接合される。したがって、後退部15,16の傾斜度合は、フランジ31aおよび32a傾斜度合と略同一とされている。また、延出部34の車内側端部に形成されたフランジ35は、センタピラー内壁部11cに接合される。こうして、図9に示すように、センタピラーインナ11は補強部材3を介在させてセンタピラーアウタ12と接合され、サイドシルレインフォースメント22は、センタピラーアウタ12およびサイドシルインナ21と接合される。
【0034】
図10は、図8のC−C断面図である。この部分では図3とは対照的に、サイドシルインナ21の上壁部21dとサイドシルレインフォースメント22の上壁部22dとは接合されず、凹部24が形成されている。センタピラーインナ内壁部11cは、この凹部24から、サイドシル内壁部21cに略沿うようにサイドシル2内に進入し、センタピラーインナ内壁部11cの下端は、サイドシルインナ21下端のフランジ21bとサイドシルレインフォースメント22下端のフランジ22bとの間に挟まれて接合される。
【0035】
また、補強部材3の上壁部33はサイドシルレインフォースメント22の上壁部22dの下面と接合されるともに、延出部34が凹部24を覆うように車内側に延び、そして、フランジ35がセンタピラーインナ内壁部11cに接合される。こうして凹部24は補強部材3によって閉塞され、このセンタピラー1とサイドシル2との接合部においてもサイドシルの閉断面23が維持される。このように延出部34によって凹部24の形成による剛性低下を抑制することができる。
【0036】
図11は、図8のD−D断面図である。図示のように、センタピラーインナ11とサイドシルレインフォースメント22とは、補強部材3の前壁部31および後壁部32によって接続されており、センタピラー1とサイドシル2との接合部においてもセンタピラーの閉断面13(図2参照)が維持されていることが理解されよう。
【0037】
かかる構成において、サイドシル2内のセンタピラーインナ内壁部21cは、サイドシル2の閉断面23を縦断するサイドシルレインフォースメントとしても機能することになる。これにより、センタピラー1自体の強度およびサイドシル2に対する接続強度の大幅な向上が図られる。
【0038】
以上のような構成の補強部材をセンタピラーインナに接続する構成とするかわりに、たとえばサイドシルレインフォースメント22自体に上記のような構成の補強部材を設けることも考えられる。しかし、先述したように、サイドシルレインフォースメント22には高張力鋼板が使用される。高張力鋼板としては、通常の鋼板に比してカーボンの含有量を多くしたものがよく知られており、通常の鋼板より引っ張り強度が強く、これを車体部材として用いれば高い車体剛性が得られる。その一方で、通常の鋼板よりはコストが高い。また、高強度であることから通常の鋼板よりは加工性がよくなく、一般にはプレス加工で成形される前後方向に長く延びるサイドシルレインフォースメントの一部に延出部が設けられるような構成には適さない。これに対し、上述の実施形態における延出部は補強部材と一体成形されるので、高張力鋼板からなるサイドシルレインフォースメントに延出部を設ける場合に比べ、コスト面の悪化および加工性能の悪化を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明した。この実施形態によれば、補強部材の新規な構成によって、センタピラーとサイドシルとの接合部の剛性を高めるべく、センタピラーをサイドシル内を縦断するように進入させることが可能になる。しかもこれと同時に、サイドシルに対する節部材も効果的に実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態における車体左側面のサイドメンバの外観を示す図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1の状態からキャブサイドアウタパネル、センタピラーアウタ、およびサイドシルレインフォースメントを取り外した状態を示す図である。
【図5】実施形態における補強部材を車体左斜め前方から見た斜視図である。
【図6】実施形態における補強部材を車体左側方から見た側面図である。
【図7】実施形態における補強部材を車体後方から見た背面図である。
【図8】図4に示したセンタピラーとサイドシルとの接合部を、車外左斜め後方から見た要部斜視図である。
【図9】実施形態におけるセンタピラーとサイドシルとの接合部の分解図である。
【図10】図8のC−C断面図である。
【図11】図8のD−D断面図である。
【図12】従来のセンタピラーとサイドシル(ロッカ)との結合部の、車体前後方向における縦断面図である。
【図13】図12の4−4断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:センタピラー
2:サイドシル
3:補強部材
11:センタピラーインナ
12:センタピラーアウタ
21:サイドシルインナ
22:サイドシルレインフォースメント
31:補強部材の前壁部
32:補強部材の後壁部
33:補強部材の上壁部
34:補強部材の延出部
【技術分野】
【0001】
本発明は車体構造に関し、特に、センタピラーとサイドシルとの結合部に補強部材を備える車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
センタピラーは乗員のほぼ真横の位置に立設されている骨格部材であり、側面衝突時などに車室内に倒れるような変形を極力抑える必要がある。このため、サイドシルに結合されるセンタピラーの下端部は骨太な形状とされるなどの工夫がなされている。このような形状自体の工夫に加えてさらに、センタピラーとサイドシルとの結合部において、サイドシル内断面内のリブ壁(いわゆる節部材)として機能する補強部材を配設することも行われている。
【0003】
このような補強部材の構造例が、特開2003−252237号公報(特許文献1)に開示されている。図12および図13にそれぞれ、同文献に記載された図3および図4を再掲する(ただし、参照番号は変更した。)。図12は、センタピラーとサイドシル(ロッカ)との結合部の、車体前後方向における縦断面図、図13は、図12の4−4断面図である。
【0004】
図13に示されるように、センタピラー200は、センタピラーアウタ220とセンタピラーインナ200とを有し、両者によって閉断面260を構成している。このセンタピラー200の車幅方向外側にはキャブサイドアウタパネル(サイメンアウタ)110が配される。また、サイドシル100は、サイドシルレインフォースメント120とサイドシルインナ140とを有し、両者によって閉断面160を構成している。
【0005】
さて、図12に示されるように、サイドシル100の閉断面部160内におけるセンタピラー200の下方位置には、補強部材としてのブラケット300が配設される。このブラケット300は、側面視で下方に開口部を向けたコ字状とされている。具体的には、ブラケット300は、前壁部300Bと、後壁部300Dと、前壁部300Bと後壁部300Dとを連結する上壁部300Aとを有する構造である。前壁部300Bおよび後壁部300Dはサイドシル100の閉断面部160を閉塞しており、サイドシル100の車両前後方向の断面を横切る節部材として機能している。この場合、図13に示されるように、センタピラーインナ240の下端部240Cは、サイドシルレインフォースメント120の上部フランジ120Bとサイドシルインナ140の上部フランジ140Bとの間に溶着されている。
【0006】
同文献に記載された発明は、このような構成によって、センタピラー200とサイドシル100との結合部の剛性を高めるとともに、溶接の作業性をも改善している点で優れている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−252237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、センタピラーとサイドシルとの結合部の構造を改良するものであり、たとえば、センタピラー自体の強度、ならびにセンタピラーとサイドシルとの接合強度を一層向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、センタピラーと、センタピラーの下端と接続されるサイドシルと、センタピラー前後端下方のサイドシル内に、サイドシルの車体前後方向における断面を横切るように配設される補強部材とを備える車体構造に係り、前記センタピラーは、内壁部、前壁部、および後壁部で構成されるセンタピラーインナを備え、前記センタピラーインナの下端は、センタピラーインナ内壁部がサイドシル内壁部に略沿うようにサイドシル内に進入し、前記補強部材の車幅方向内側端部は、センタピラーインナ前壁部および後壁部の車幅方向外側端部に接続されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、センタピラーインナはサイドシルの内壁に沿って進入するので、そのセンタピラーインナの下端をサイドシルの下端にまで延ばして接続することが可能になる。そうすると、このセンタピラーインナは、サイドシルの閉断面を縦断する、サイドシルレインフォースメントとしても機能することになる。これにより、センタピラー自体の強度およびサイドシルに対する接続強度の向上を図ることができる。しかもこれと同時に、補強部材は、センタピラーインナの前壁部および後壁部を利用して、サイドシルの車体前後方向における断面を横切る節部材として効果的に構成されている。
【0011】
なお、図13を参照すると分かるように、上記の特許文献1に開示されたブラケット300の構成では、前壁部300Bと後壁部300Dとを連結する上壁部300Aがサイドシル100の上面を閉塞しており、これが障害となってセンタピラーインナ240の下端部240Cをサイドシル100内に進入させることはできない。したがって、同文献に記載された構成では、センタピラーインナを、サイドシルの閉断面を縦断するサイドシルレインフォースメントとしても機能させることは困難である。よって、本発明の上記構成によれば、センタピラー自体の強度ならびにセンタピラーとサイドシルとの接合強度を一層向上させることができるといえる。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、前記サイドシルは、車幅方向内側に膨出するサイドシルインナと、車幅方向外側に膨出し、サイドシルインナと上下端で接合されるサイドシルレインフォースメントとを備え、前記サイドシル内のセンタピラーインナの前壁部および後壁部はそれぞれ、下方に向かうほど内壁部側に後退し、その下端は、前記サイドシルインナと前記サイドシルレインフォースメントとの接合部で接合されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、サイドシル内のセンタピラーインナの前後壁部は、下端にかけて形状が徐々に後退するように連続的に構成されるので、前後壁部の剛性を向上させることができ、対側面衝突性能を向上させることができる。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、前記サイドシルレインフォースメントは、上壁部、外壁部、および下壁部を有する高張力鋼板で形成され、前記サイドシルインナは、上壁部、内壁部、および下壁部で構成され、前記サイドシルインナの上壁部には、前記センタピラーインナを進入させるための凹部が形成される一方、前記補強部材は、上壁部から前記凹部を覆うように車内側に延び前記センタピラーインナの内壁部に接続される延出部を有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、前後に間隔をおいた補強部材を一体的に構成することにより補強部材の剛性を向上させることができ、また、延出部を設けることにより、センタピラー接続部におけるサイドシルインナ上壁部の凹部形成による剛性低下を抑制することができる。また、上記構成によれば、補強部材の延出部は、センタピラーインナの内壁部に接続される。延出部は補強部材と一体成形されるものであるため、高張力鋼板からなるサイドシルレインフォースメントに延出部を接続する場合に比べ、コスト面の悪化および加工性能の悪化を抑制することができる。
【0016】
本発明の別の側面は、センタピラーと、センタピラーの下端と接続されるサイドシルと、センタピラー前後端下方のサイドシル内を、サイドシルの車体前後方向における断面を横切るように配設される補強部材とを備える車体構造に係り、前記センタピラーは、内壁部、前壁部、および後壁部で構成されるセンタピラーインナを備え、前記サイドシルは、上壁部、内壁部、および下壁部を形成して車幅方向内側に膨出するサイドシルインナと、車幅方向外側に膨出するように上壁部、外壁部、および下壁部を有する高張力鋼板で形成され、サイドシルインナと上下端で接合されるサイドシルレインフォースメントとを備え、前記サイドシルインナの上壁部には、前記センタピラーインナを進入させるための凹部が形成され、前記センタピラーインナの下端は、前記凹部からサイドシル内に進入し、前記補強部材は、その車幅方向内側端部がセンタピラーインナ前壁部および後壁部の車幅方向外側端部に接続されるとともに、上壁部から前記凹部を覆うように車内側に延び前記センタピラーインナの内壁部に接続される延出部を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、センタピラーとサイドシルとの接続強度の向上を図りつつ、補強部材に設けられた延出部によって、センタピラー接続部におけるサイドシルインナ上壁部の凹部形成による剛性低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、センタピラー自体の強度、ならびにセンタピラーとサイドシルとの接合強度を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決手段として必須のものであるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態における車体左側面のサイドメンバの外観を示す図である。図示のように、センタピラー1は車体前後方向の中央部付近で立設され、その上端はルーフサイドレール40と連結され、下端はサイドシル2と連結されている。同図におけるセンタピラー1は外皮であるキャブサイドアウタパネル50で覆われた状態である。22は、サイドシル2の一構成部材であるサイドシルレインフォースメント22である。なお、キャブサイドアウタパネル50のサイドシル部分はサイドシルアウタとなる。
【0021】
以下、センタピラー1およびサイドシル2それぞれの具体的構成、ならびに、センタピラー1とサイドシル2との接合部における具体的構造を、詳しく説明していく。これらの構造は左右両側とも同様のものであるから、ここでは代表的に車体左側の構成についてのみ説明する。
【0022】
図2は、図1のA−A断面図であり、センタピラー1の車体上方から見た断面形状を示している。同図に示されるように、センタピラー1は基本的に、前後端部にフランジが形成され中央部が車内側に膨出するハット状のセンタピラーインナ11と、前後端部にフランジが形成され中央部が車外側に膨出するハット状のセンタピラーアウタ12とを備え、両者によって閉断面13が構成されている。具体的には、センタピラーインナ11は、前端に形成されたフランジ11aと、後端に形成されたフランジ11bと、両フランジ11a、11bよりも車内側に位置する内壁部11cと、フランジ11a後端と内壁部11c前端とを連結する前壁部11dと、フランジ11b前端と内壁部11c後端とを連結する後壁部11eとを有する構成である。また、センタピラーアウタ12は、前端に形成されたフランジ12aと、後端に形成されたフランジ12bと、両フランジ12a、12bよりも車外側に位置する外壁部12cと、フランジ12a後端と外壁部12c前端とを連結する前壁部12dと、フランジ12b前端と外壁部12c後端とを連結する後壁部12eとを有する構成である。
【0023】
この部分のキャブサイドアウタパネル50は、センタピラーアウタ12と概ね同様の形状をなし、センタピラーアウタ12の車外側を覆うように配設され、キャブサイドアウタパネル50の前後端部はそれぞれ、センタピラーアウタ12のフランジ12a、12bに接合されている。
【0024】
図3は、図1のB−B断面図であり、サイドシル2の車体後方から見た断面形状を示している。同図に示されるように、サイドシル2は基本的に、上下端部にフランジが形成され中央部が車内側に膨出するハット状のサイドシルインナ21と、上下端部にフランジが形成され中央部が車外側に膨出するハット状のサイドシルレインフォースメント22とを備え、両者によって閉断面23が構成されている。具体的には、サイドシルインナ21は、上端に形成されたフランジ21aと、下端に形成されたフランジ21bと、両フランジ21a、21bよりも車内側に位置する内壁部21cと、フランジ21a下端と内壁部21c上端とを連結する上壁部21dと、フランジ21b上端と内壁部21c下端とを連結する下壁部21eとを有する構成である。また、サイドシルレインフォースメント22は、上端に形成されたフランジ22aと、下端に形成されたフランジ22bと、両フランジ22a、22bよりも車外側に位置する外壁部22cと、フランジ22a下端と外壁部22c上端とを連結する上壁部22dと、フランジ22b上端と外壁部22c下端とを連結する下壁部22eとを有する構成である。本実施形態では、サイドシルレインフォースメント22にはサイドシルインナ21に比べ高張力の鋼板が使用される。
【0025】
この部分のキャブサイドアウタパネル50は、サイドシルレインフォースメント22の上壁部22dを覆うように配設され、キャブサイドアウタパネル50の両端部はそれぞれ、サイドシルレインフォースメント22の外壁部22cとフランジ22aに接合されている。
【0026】
以上が、センタピラー1およびサイドシル2の通常部分の構造である。これに対し、センタピラー1とサイドシル2との接合部では、この接合部の剛性強化を図るべく特徴的な構造を備えている。以下、この接合部の構造を詳しく説明する。
【0027】
図4は、図1に示した状態からキャブサイドアウタパネル50を取り外し、さらに、センタピラーアウタ12およびサイドシルレインフォースメント22を取り外した状態を示している。この状態で、センタピラー1とサイドシル2との接合部の構造が露見する。図示のように、この接合部においては、センタピラーインナ11の下端部はサイドシル2内に進入しており、このセンタピラーインナ11の下端部における車外方向外側に、補強部材3が配設されている。
【0028】
この補強部材3の構造ならびにセンタピラーインナ11の下端部の構造は、本実施形態の車体構造に係り重要な特徴をなす部分である。そこで、この補強部材3の構造例を、図5〜7を参照して詳しく説明し、センタピラーインナ11の下端部の構造および補強部材3の配設例を、図8〜11を参照して詳しく説明する。
【0029】
図5は補強部材3を車体左斜め前方から見た斜視図である。図6は補強部材3を車体左側方から見た側面図で、図4に示された補強部材3の拡大図に相当する。図7は補強部材3を車体後方から見た背面図である。補強部材3は、サイドシル2の閉断面23に沿って立設される前壁部31と、その前壁部31の後方に所定の間隔をおいて前壁部31と同様に立設される後壁部32と、前壁部31の上端と後壁部32の上端とを連結する上壁部33とを備えている。したがって、前壁部31と後壁部32はそれぞれ、サイドシル2の車体前後方向における断面を横切る節部材として機能する。
【0030】
前壁部31および後壁部32はそれぞれ、略台形状に形成された部材であり、車外側上縁部から車外側下縁部にかけては車体上下方向に沿って形成され、車外側下縁部から車内側下縁部に亘る底辺部は車幅方向に沿って形成される一方、車内側上縁部から車内側下縁部にかけては車内側斜め下方に向かう傾斜が設けられている。また、前壁部31の、車内側端部(斜辺)には車体前方に向かうフランジ31aが形成され、車外側端部には車体後方に向かうフランジ31bが形成され、底辺部には車体後方に向かうフランジ31cが形成されている。一方、後壁部32の、車内側端部(斜辺)には車体後方に向かうフランジ32aが形成され、車外側端部には車体前方に向かうフランジ32bが形成され、底辺部には車体前方に向かうフランジ32cが形成されている。さらに本実施形態では、上壁部33の車内側端部には、車内側に延びる延出部34が形成されるとともに、その延出部34の車内側端部には上方に向かうフランジ35が形成されている。
【0031】
図8は、図4に示したセンタピラー1とサイドシル2との接合部を、車外左斜め後方から見た要部斜視図である。また、図9は、センタピラー1とサイドシル2との接合部の分解図である。図示のように、センタピラーインナ11は、サイドシルインナ21の上端部付近で車内側への膨出量が、他の箇所に比べ大きく設定されている。また、その下部では、前壁部11dおよび後壁部11eはそれぞれ、下方に向かうほど内壁部11c側へと後退する後退部15および16が形成されている。サイドシルインナ21には、このセンタピラーインナ11の車内側への膨出量に応じた凹部24が形成されており、ここからセンタピラーインナ11がサイドシル2内に進入することになる。
【0032】
このように、本実施形態におけるセンタピラーインナ11の前壁部11dおよび後壁部11eは、サイドシル2内においては、下端にかけて形状が徐々に後退するように連続的に構成されるため、前壁部11dおよび後壁部11eの剛性を向上させることができる。このため、対側面衝突性能を向上させることができる。
【0033】
さて、図8に示すように、補強部材3の車内側端部をなすフランジ31aおよび32aはそれぞれ、センタピラーインナ11に形成された上記後退部15,16の車外側端部に接合される。したがって、後退部15,16の傾斜度合は、フランジ31aおよび32a傾斜度合と略同一とされている。また、延出部34の車内側端部に形成されたフランジ35は、センタピラー内壁部11cに接合される。こうして、図9に示すように、センタピラーインナ11は補強部材3を介在させてセンタピラーアウタ12と接合され、サイドシルレインフォースメント22は、センタピラーアウタ12およびサイドシルインナ21と接合される。
【0034】
図10は、図8のC−C断面図である。この部分では図3とは対照的に、サイドシルインナ21の上壁部21dとサイドシルレインフォースメント22の上壁部22dとは接合されず、凹部24が形成されている。センタピラーインナ内壁部11cは、この凹部24から、サイドシル内壁部21cに略沿うようにサイドシル2内に進入し、センタピラーインナ内壁部11cの下端は、サイドシルインナ21下端のフランジ21bとサイドシルレインフォースメント22下端のフランジ22bとの間に挟まれて接合される。
【0035】
また、補強部材3の上壁部33はサイドシルレインフォースメント22の上壁部22dの下面と接合されるともに、延出部34が凹部24を覆うように車内側に延び、そして、フランジ35がセンタピラーインナ内壁部11cに接合される。こうして凹部24は補強部材3によって閉塞され、このセンタピラー1とサイドシル2との接合部においてもサイドシルの閉断面23が維持される。このように延出部34によって凹部24の形成による剛性低下を抑制することができる。
【0036】
図11は、図8のD−D断面図である。図示のように、センタピラーインナ11とサイドシルレインフォースメント22とは、補強部材3の前壁部31および後壁部32によって接続されており、センタピラー1とサイドシル2との接合部においてもセンタピラーの閉断面13(図2参照)が維持されていることが理解されよう。
【0037】
かかる構成において、サイドシル2内のセンタピラーインナ内壁部21cは、サイドシル2の閉断面23を縦断するサイドシルレインフォースメントとしても機能することになる。これにより、センタピラー1自体の強度およびサイドシル2に対する接続強度の大幅な向上が図られる。
【0038】
以上のような構成の補強部材をセンタピラーインナに接続する構成とするかわりに、たとえばサイドシルレインフォースメント22自体に上記のような構成の補強部材を設けることも考えられる。しかし、先述したように、サイドシルレインフォースメント22には高張力鋼板が使用される。高張力鋼板としては、通常の鋼板に比してカーボンの含有量を多くしたものがよく知られており、通常の鋼板より引っ張り強度が強く、これを車体部材として用いれば高い車体剛性が得られる。その一方で、通常の鋼板よりはコストが高い。また、高強度であることから通常の鋼板よりは加工性がよくなく、一般にはプレス加工で成形される前後方向に長く延びるサイドシルレインフォースメントの一部に延出部が設けられるような構成には適さない。これに対し、上述の実施形態における延出部は補強部材と一体成形されるので、高張力鋼板からなるサイドシルレインフォースメントに延出部を設ける場合に比べ、コスト面の悪化および加工性能の悪化を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明した。この実施形態によれば、補強部材の新規な構成によって、センタピラーとサイドシルとの接合部の剛性を高めるべく、センタピラーをサイドシル内を縦断するように進入させることが可能になる。しかもこれと同時に、サイドシルに対する節部材も効果的に実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態における車体左側面のサイドメンバの外観を示す図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1の状態からキャブサイドアウタパネル、センタピラーアウタ、およびサイドシルレインフォースメントを取り外した状態を示す図である。
【図5】実施形態における補強部材を車体左斜め前方から見た斜視図である。
【図6】実施形態における補強部材を車体左側方から見た側面図である。
【図7】実施形態における補強部材を車体後方から見た背面図である。
【図8】図4に示したセンタピラーとサイドシルとの接合部を、車外左斜め後方から見た要部斜視図である。
【図9】実施形態におけるセンタピラーとサイドシルとの接合部の分解図である。
【図10】図8のC−C断面図である。
【図11】図8のD−D断面図である。
【図12】従来のセンタピラーとサイドシル(ロッカ)との結合部の、車体前後方向における縦断面図である。
【図13】図12の4−4断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:センタピラー
2:サイドシル
3:補強部材
11:センタピラーインナ
12:センタピラーアウタ
21:サイドシルインナ
22:サイドシルレインフォースメント
31:補強部材の前壁部
32:補強部材の後壁部
33:補強部材の上壁部
34:補強部材の延出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタピラーと、
センタピラーの下端と接続されるサイドシルと、
センタピラー前後端下方のサイドシル内に、サイドシルの車体前後方向における断面を横切るように配設される補強部材と、
を備える車体構造であって、
前記センタピラーは、内壁部、前壁部、および後壁部で構成されるセンタピラーインナを備え、
前記センタピラーインナの下端は、センタピラーインナ内壁部がサイドシル内壁部に略沿うようにサイドシル内に進入し、
前記補強部材の車幅方向内側端部は、センタピラーインナ前壁部および後壁部の車幅方向外側端部に接続される
ことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記サイドシルは、
車幅方向内側に膨出するサイドシルインナと、
車幅方向外側に膨出し、サイドシルインナと上下端で接合されるサイドシルレインフォースメントと、
を備え、
前記サイドシル内のセンタピラーインナの前壁部および後壁部はそれぞれ、下方に向かうほど内壁部側に後退し、その下端は、前記サイドシルインナと前記サイドシルレインフォースメントとの接合部で接合される
ことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記サイドシルレインフォースメントは、上壁部、外壁部、および下壁部を有する高張力鋼板で形成され、
前記サイドシルインナは、上壁部、内壁部、および下壁部で構成され、
前記サイドシルインナの上壁部には、前記センタピラーインナを進入させるための凹部が形成される一方、
前記補強部材は、上壁部から前記凹部を覆うように車内側に延び前記センタピラーインナの内壁部に接続される延出部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
センタピラーと、
センタピラーの下端と接続されるサイドシルと、
センタピラー前後端下方のサイドシル内に、サイドシルの車体前後方向における断面を横切るように配設される補強部材と、
を備える車体構造であって、
前記センタピラーは、内壁部、前壁部、および後壁部で構成されるセンタピラーインナを備え、
前記サイドシルは、
上壁部、内壁部、および下壁部を形成して車幅方向内側に膨出するサイドシルインナと、
車幅方向外側に膨出するように上壁部、外壁部、および下壁部を有する高張力鋼板で形成され、サイドシルインナと上下端で接合されるサイドシルレインフォースメントと、
を備え、
前記サイドシルインナの上壁部には、前記センタピラーインナを進入させるための凹部が形成され、
前記センタピラーインナの下端は、前記凹部からサイドシル内に進入し、
前記補強部材は、その車幅方向内側端部がセンタピラーインナ前壁部および後壁部の車幅方向外側端部に接続されるとともに、上壁部から前記凹部を覆うように車内側に延び前記センタピラーインナの内壁部に接続される延出部を有する
ことを特徴とする車体構造。
【請求項1】
センタピラーと、
センタピラーの下端と接続されるサイドシルと、
センタピラー前後端下方のサイドシル内に、サイドシルの車体前後方向における断面を横切るように配設される補強部材と、
を備える車体構造であって、
前記センタピラーは、内壁部、前壁部、および後壁部で構成されるセンタピラーインナを備え、
前記センタピラーインナの下端は、センタピラーインナ内壁部がサイドシル内壁部に略沿うようにサイドシル内に進入し、
前記補強部材の車幅方向内側端部は、センタピラーインナ前壁部および後壁部の車幅方向外側端部に接続される
ことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記サイドシルは、
車幅方向内側に膨出するサイドシルインナと、
車幅方向外側に膨出し、サイドシルインナと上下端で接合されるサイドシルレインフォースメントと、
を備え、
前記サイドシル内のセンタピラーインナの前壁部および後壁部はそれぞれ、下方に向かうほど内壁部側に後退し、その下端は、前記サイドシルインナと前記サイドシルレインフォースメントとの接合部で接合される
ことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記サイドシルレインフォースメントは、上壁部、外壁部、および下壁部を有する高張力鋼板で形成され、
前記サイドシルインナは、上壁部、内壁部、および下壁部で構成され、
前記サイドシルインナの上壁部には、前記センタピラーインナを進入させるための凹部が形成される一方、
前記補強部材は、上壁部から前記凹部を覆うように車内側に延び前記センタピラーインナの内壁部に接続される延出部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
センタピラーと、
センタピラーの下端と接続されるサイドシルと、
センタピラー前後端下方のサイドシル内に、サイドシルの車体前後方向における断面を横切るように配設される補強部材と、
を備える車体構造であって、
前記センタピラーは、内壁部、前壁部、および後壁部で構成されるセンタピラーインナを備え、
前記サイドシルは、
上壁部、内壁部、および下壁部を形成して車幅方向内側に膨出するサイドシルインナと、
車幅方向外側に膨出するように上壁部、外壁部、および下壁部を有する高張力鋼板で形成され、サイドシルインナと上下端で接合されるサイドシルレインフォースメントと、
を備え、
前記サイドシルインナの上壁部には、前記センタピラーインナを進入させるための凹部が形成され、
前記センタピラーインナの下端は、前記凹部からサイドシル内に進入し、
前記補強部材は、その車幅方向内側端部がセンタピラーインナ前壁部および後壁部の車幅方向外側端部に接続されるとともに、上壁部から前記凹部を覆うように車内側に延び前記センタピラーインナの内壁部に接続される延出部を有する
ことを特徴とする車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−98982(P2007−98982A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287958(P2005−287958)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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