説明

車体構造

【課題】質量が増加するのを抑制しつつ、部位によって異なるモーメントの方向に対応した強度を確保する。
【解決手段】車体フレーム100を構成するサイドフレーム200は、前端部202は車両前後方向を強軸Kとして配置されることで強度が確保されている。車両後後方側に向かうに従って軸心G回りに捩じれ徐々に強軸Kが回転する。そして、車両前後方向の中央部付近では車両幅方向が強軸Kとなることで、強度が確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドガードを支持するフロントピラーが後方に向かって傾斜する状態に設けられた産業車両において、両フロントピラーが前方に凸に湾曲する形状に形成され、また、外側に位置する面が湾曲面、内側に位置する面が平面となる非対称な断面形状の柱材で形成されている産業車両が記載されている(特許文献1を参照)。
【0003】
このようなフロントピラーでは、モーメントの方向の断面を大きくすることで、強度が確保される。しかし、部位によってモーメントの方向が異なる場合、全ての部位の強度を確保しようとすると、一様に大きな断面が必要となり、その結果、フロントピラーの質量が増加することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−124288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記を考慮し、質量が増加するのを抑制しつつ、部位によって異なるモーメントの方向に対応した強度を確保することができる車体骨格部材を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の車体構造は、車両前後方向に沿って配置されると共に車両前後方向の前端部から中央部に向かうに従って上側に凸状になるように湾曲され、更に断面主軸の強軸が前記前端部では車両前後方向に沿って配置され前記中央部では車両幅方向に沿って配置された車体骨格部材が、車両の両側部側に配置されたている。
【0007】
請求項1の車体構造では、前端部では車両前後方向に沿って配置された断面主軸の強軸が、中央部では車両幅方向に沿って配置されている。前面衝突時は車体骨格部材の前端部に作用する車両幅方向の軸心回りのモーメントで強度が決定されるので、車体骨格部材の前端部の強軸を車両前後方向とすることで強度が確保される。側面衝突時は車体骨格部材の中央部に作用する車両前後方向の軸心回りのモーメントで強度が決定されるので、車体骨格部材の中央部の強軸を車両前後方向とすることで強度が確保される。
よって、車体骨格部材の質量が増加するのを抑制しつつ、車両前後方向の前端部と中央部とで異なるモーメントの方向に対応した強度が確保される。
【0008】
請求項2の車体構造は、前記車体骨格部材は、前記前端部から前記中央部に向かうに従って軸心回りに捩じられて構成されている。
【0009】
請求項2の車体構造では、車体骨格部材を前端部から中央部に向かうに従って軸心回りに捩じられることで、断面主軸の強軸を回転させて前端部と後端部とで強軸の向きを容易に変えている。
【0010】
請求項3の車体構造は、前記車体骨格部材は、運転者の視界の高さ近傍では、前記視線と前記強軸とが一致又は略一致するように構成されている。
【0011】
請求項3の車体構造では、運転者の視界の高さ近傍では、車体骨格部材の強軸が視線と一致又は略一致するように構成されている。よって、車体骨格部材によって遮られる視界の領域が小さくなる。
【0012】
請求項4の車体構造は、前記車体骨格部材は、前記前端部から前記中央部にかけて一様断面で構成されている。
【0013】
請求項4の車体構造では、車体骨格部材は前端部から中央部にかけて一様断面で構成されているので、質量の増加が確実に抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、本発明が適用されていない構造と比較し、車体骨格部材の質量が増加するのを抑制しつつ、車両前後方向の前端部と中央部とで異なるモーメントの方向に対応した強度を確保することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、車体骨格部材の断面主軸の強軸を前端部と後端部とで強軸の向きを容易に変えることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、車体骨格部材の強軸が視線と一致していない構造と比較し、車体骨格部材によって遮られる視界の領域を小さくすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、車体骨格部材が一様断面でない構造と比較し、質量の増加が確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車両骨格部材を備える車両を模式的に示す車両幅方向左外側から見た側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両骨格部材を備える車両を構成する車体フレームを模式的に示す斜視図である。
【図3】車体フレームを構成する左側のサイドフレームの軸心と直交する断面を示す、(A)は前端部(図1のA−A線)の軸直角断面図であり、(B)は中央部(図1のB−B線)の軸直角断面図であり、(C)は後端部(図1のC−C線)の軸直角断面図である。
【図4】図1のD−D線に沿った水平断面図である。
【図5】(A)は前面衝突時における車体フレームに作用する車両幅方向の軸心回りのモーメントの分布を模式的に示す図であり、(B)は側面衝突時における車体フレームに作用する車両上下方向の軸心回りモーメントの分布を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例のサイドフレームを示す(A)は図3(A)に対応する軸直角断面図であり、(B)は図3(B)に対応する軸直角断面図であり、(C)は図3(C)に対応する軸直角断面図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例のサイドフレームの図4に対応する水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図5を用いて、本発明の実施形態に係る車体骨格部材について説明する。なお、車両前後方向前方側を矢印FRで示し、車両幅方向外側を矢印OUTで示し、車両上下方向上側を矢印UPで示す。また、車両前方側に向かって車両幅方向左側の部材には符号の後にLを付し、車両前方側に向かって車両幅方向右側の部材には符号の後にRを付す。しかし、左右を区別して説明する必要が無い等の場合は、L及びRを省略する。
【0020】
<全体構成>
まず、本発明の本実施形態に係る車体骨格部材を備える車両10の全体構成について説明する。
【0021】
図1と図2とに示すように、車両10は、一人又は二人乗り(本実施形態では一例として一人乗りとされている)の小型(軽量ボデー構造)のコミュータとされている。車両10を構成する車体フレーム100は、車両幅方向の左右の側部に車両前後方向に沿って配置されたサイドフレーム110L,110Rと、車体骨格部材の一例としてのサイドフレーム200L,200Rとを有している。
【0022】
サイドフレーム110L,110Rは、車両底部に配置されている。一方、サイドフレーム200L,200Rは、サイドフレーム110L,110Rの上側に配置され、半円形に湾曲した形状とされている。また、サイドフレーム200の前端部202はサイドフレーム110の前端部112付近に接合され、サイドフレーム200の後端部204はサイドフレーム110の後端部114に接合されている。なお、上側のサイドフレーム200についての詳細は後述する。
【0023】
下側のサイドフレーム110L,110Rと上側のサイドフレーム200L,200Rとの間は、車両前後方向の略中央部に車両上下方向に沿って配置されたセンターフレーム120L,120Rで接合されている。
【0024】
上側の左右のサイドフレーム200L,200Rにおけるセンターフレーム120の上部122が接合された中央部206L,206R間には、車両幅方向に沿って配置されたクロスフレーム130(図2参照)が接合されている。また、下側の左右のサイドフレーム110L,110Rにおけるセンターフレーム120L,120Rの下部124L,124Rが接合された中央部116L,116R間には、車両幅方向に沿って配置されたクロスフレーム140(図2参照)が接合されている。
【0025】
また、下側のサイドフレーム110の後端部114とサイドフレーム200の後端部204とが接合された部位間には、車両幅方向に沿って配置されたクロスフレーム150が接合されている。更にサイドフレーム110L,110Rの車両前後方向の前端部112L,112R間に、車両幅方向に沿って配置されたバンパリインフォース160が接合されている。
【0026】
図1に示すように、このような車体フレーム100で囲まれた空間が、運転者20が運転を行うための運転者用空間30となっている。
【0027】
運転者用空間30におけるサイドフレーム110の車両前後方向の中央部の凹部の上側に、運転者20が着座するシート40が設けられている。シート40の前方には、ハンドル42やアクセルペダル(図示略)、ブレーキペダル(図示略)など、運転操作に必要な装置や機構が配置されている。
【0028】
また、本実施形態においては、運転者用空間30の前面にはフロントパネル(図示略)が設けられ、運転者用空間30の上面にはルーフパネル(図示略)が設け、更に後方にはリアパネル(図示略)がそれぞれ設けられている。なお、運転者20が前方と後方とを視認するため、フロントパネルとリアパネルの一部には、透明な樹脂やガラス等で構成されたウインドシールド(図示略)が設けられている。
【0029】
本実施形態では、運転者用空間30の両側面は、左右両側のいずれの方向からも運転者20が乗降できるように、開放されている。なお、運転者用空間30の左右両側面に、乗降用のドア等が設けられていてもよい。
【0030】
また、車両10には、動力源(駆動源)(例えば、電気モータやエンジン等)や動力伝達機構などが搭載されている。また、前端部付近と後端付近とには、それぞれ左右一対の前輪16と後輪18とが設けられており、前述の動力源や動力伝達機構によって回転駆動するように構成されている。
【0031】
<サイドフレームの構造の詳細>
つぎに、車体骨格部材の一例としての上側のサイドフレーム200L,200Rの詳細について説明する。
【0032】
図1と図2とに示され、サイドフレーム200は、サイドフレーム110の上側に配置され、側面視における形状は、上側に凸の略半円状に湾曲した形状とされている。より詳しく説明すると、サイドフレーム200は、前端部202から車両後方側に向かって斜め上方に傾斜したのち、中央部206付近では略水平方向(車両前後方向)に延在し、その後、後端部204(車両後方側)に向かって斜め下方に傾斜している。
【0033】
図3と図4とに示すように、サイドフレーム200は、軸心Gと直交する断面(軸直角断面)が楕円形状の中空のパイプとされている。楕円の長軸が強軸Kとされ、楕円の短軸が弱軸Jとされている。また、楕円の長軸方向の長さを縦幅A1とし、短軸方向の長さを横幅A2とする。
【0034】
なお、強軸Kとは軸心Gと直交する断面(軸直角断面)における断面二次モーメントが最大になる断面主軸とされ、弱軸Jとは断面二次モーメントが最小となる断面主軸とされる。また、断面主軸とは、断面の図心を通る直交する二つの軸のうち、その軸に対する断面2次モーメントが最大(強軸)・最小(弱軸)となる組の軸とされる。
【0035】
図3(A)に示すように、左側のサイドフレーム200の前端部202Lは、強軸Kが車両前後方向に沿って配置され、弱軸Jが車両幅方向に沿って配置されている。
【0036】
図3(B)に示すように、サイドフレーム200Lは、車両後方側に向かうに従って軸心G回りに反時計回りに捩じれ、徐々に強軸Kが回転する。そして、図3(C)に示すように、車両前後方向の中央部206Lでは強軸Kが車両幅方向に沿った配置となり、弱軸Jが車両上下方向に沿った配置となる。
【0037】
更に、車両後方側に向かうに従って軸心G回りに、反時計回りに捩じれ、後端部204L(図1と図2参照)では強軸Kが車両前後方向に沿った配置となり、弱軸Jが車両幅方向に沿った配置となる(図3(A)と同じ配置)。
【0038】
右側のサイドフレーム200Rも同様に、前端部202R(図2参照)は、強軸Kが車両前後方向に沿った配置され、弱軸Jが車両幅方向に沿った配置とされている。そして、車両後方側に向かうに従って軸心G回りに時計回りに捩じれ、徐々に強軸Kが回転し(図4参照)、車両前後方向の中央部206R(図2参照)では強軸Kが車両幅方向に沿った配置となり弱軸Jが車両上下方向に沿った配置となり、更に後端部204R(図2参照)では強軸Kが車両前後方向に沿った配置となり弱軸Jが車両幅方向に沿った配置となる。つまり、図3(B)が左右対称以外は図3と同様の図となる。
【0039】
また、図4に示すように、運転者20の目(視界)24の高さ近傍では、視線Sと強軸Kとが一致又は略一致するように設定されている。
【0040】
このように、本実施形態のサイドフレーム200は、軸心Gと直交する断面(軸直角断面)は一様断面であるが、車両後方側に向かうに従って軸心G回りに捩じれ強軸Kが回転し向きが変化する捩じれ構造のパイプとなっている。また、このような捩じれ構造のサイドフレーム200は、例えば、ハイドロフォーム成形によって成型することができる。
【0041】
<作用及び効果>
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
ここで図5(A)は、車両10の前面衝突時における車体フレーム100に作用する車両幅方向の軸回りのモーメントの分布を模式的に図示している。また、図5(B)は、車両10の側面衝突時(この図では車両左側への衝突)における車体フレーム100に作用する車両上下方向の軸回りモーメントの分布を模式的に図示している。なお、図示おいて、線Mが長いほどモーメントが大きいことを表している。
【0043】
図5(A)に示されているように、車両10の前面衝突時においては、車両前端部のバンパリインフォース160に荷重Fが入力される。よって、サイドフレーム200の前端部202には車両幅方向の軸回りのモーメントが生じる。また、このモーメントは車両後方側に向かうに従って小さくなる。
【0044】
図5(B)に示されているように、車両10の側面衝突時においては、車両側部のセンターフレーム120に荷重Fが入力される。よって、サイドフレーム200の中央部206には車両前後方向の軸回りのモーメントが生じる。また、このモーメントは車両前方側及び後方側に向かうに従って小さくなる
【0045】
図3と図4とに示すように、本実施形態の車両10のサイドフレーム200は、前端部202は車両前後方向を強軸Kとして配置されている(図3(A)を参照)。サイドフレーム200の前端部202は、車両幅方向の軸回りのモーメントで強度が決定されるので、前端部202の強軸K(断面係数が大きくなる方向)を車両前後方向とすることで強度が確保されている。
【0046】
サイドフレーム200は、車両後後方側に向かうに従って軸心G回りに捩じれ徐々に強軸Kが回転する。そして、車両前後方向の中央部付近では車両幅方向が強軸Kとなる。サイドフレーム200の中央部206は、車両前後方向の軸回りのモーメントで強度が決定されるので、中央部206の強軸K(断面係数が大きくなる方向)を車両前後方向とすることで強度が確保されている。
【0047】
なお、図示は省略するが、車両10の後前面衝突時においては、前面衝突時と同様にサイドフレーム200の後端部204には、車両前端部のクロスフレーム150に荷重Fが入力され、サイドフレーム200の後端部204には車両幅方向の軸回りのモーメントが生じる。よって、サイドフレーム200の後端部204は、車両幅方向の軸回りのモーメントで強度が決定されるので、後端部204の強軸K(断面係数が大きくなる方向)を車両前後方向とすることで強度が確保されている。
【0048】
このようにサイドフレーム200は、軸心Gと直交する断面は一様断面である(図3、図4を参照)。しかし、サイドフレーム200を車両後方側に向かうに従って軸心G回りに捩じれ強軸Kが回転し向きが変化する捩じれ構造とすることで、サイドフレーム200の質量(軸直角断面の面積や肉厚)が増加するのを抑制しつつ、前端部202及び中央部206、更に後端部204で異なるモーメントの方向に対応した強度を確保することができる。
【0049】
また、図4に示すように、運転者20の目(視界)24の高さ近傍では(図3も参照)、視線Sと強軸Kとが一致又は略一致するように設定されている。よって、例えば、視線Sと強軸Kとが一致又は略一致してない場合と比較し、運転者20の視界を遮る領域が狭くなる。
【0050】
<変形例>
つぎに本実施形態のサイドフレームの変形例について、図6と図7とを用いて説明する。なお、上記実施形態の上側のサイドフレーム200L,200R(図2参照)が、変形例ではサイドフレーム300L,300Rとされている。また、後述するように、変形例のサイドフレーム300L,300Rは、サイドフレーム200L,200Rと断面形状が異なるだけで、側面視における全体形状等は、サイドフレーム200L,200Rと同様の構成とされている。
【0051】
車体骨格部材の一例としてのサイドフレーム300L,300Rは、軸心Gと直交する断面(軸直角断面)が略台形状の中空のパイプとされている。また、台形の高さである縦幅A1は、台形の横幅A2(下底303と略一致)よりも長い。よって、強軸Kは台形の高さ方向と一致し、弱軸Jは、下底303及び上底305に沿った方向と一致する。
【0052】
図6(A)に示すように、左側のサイドフレーム300Lの前端部302Lでは、下底303L側が車両前方側を向き、強軸Kは車両前後方向とされ弱軸Jは車両幅方向とされている。図6(B)に示すように、サイドフレーム300Lは、車両後方側に向かうに従って、軸心G回りに反時計回りに捩じれ、徐々に強軸Kが回転する。
【0053】
そして、図6(C)に示すように、車両前後方向の中央部306Lでは、下底303L側が車両幅方向左外側を向き強軸Kは車両幅方向となり弱軸Jは車両上下方向となる。更に、車両後方側に向かうに従って軸心G回りに反時計回りに捩じれ、後端部では下底303側が車両後方側を向き、強軸Kは車両前後方向となり弱軸Jは車両幅方向となる(図6(A)と上下逆方向となった配置)。
【0054】
右側のサイドフレーム300R(図7参照)も同様に前端部では、下底303側が車両前方側を向き、強軸Kは車両前後方向とされ弱軸Jは車両幅方向とされている。そして、車両後方側に向かうに従って軸心G回りに時計回りに捩じれ、徐々に強軸Kが回転し(図4参照)、車両前後方向の中央部では下底303側が車両幅方向右外側に向き強軸Kは車両幅方向となり弱軸Jは車両上下方向となる(図6(B)が左右対称以外は図6と同様の図となる)。更に、車両後方側に向かうに従って軸心G回りに時計回りに捩じれ、後端部では下底303側が車両後方側を向き、強軸Kは車両前後方向となり弱軸Jは車両幅方向となる。
【0055】
また、図7に示すように、運転者20の目(視界)24の高さ近傍では、視線Sと強軸Kとが一致又は略一致するように設定されている。また、台形の下底303側が外側(運転者20から遠い側)に向いた配置とされている。
【0056】
なお、このように、サイドフレーム300は、軸心Gと直交する断面は一様断面であるが、車両後方側に向かうに従って軸心G回りに捩じれ、強軸Kが回転し向きが変化する捩じれ構造のパイプとなっている。また、このような捩じれ構造のサイドフレーム300も同様に、ハイドロフォーム成形等によって成型することができる。
【0057】
<作用及び効果>
つぎに変形例のサイドフレーム300の作用及び効果について説明する。
【0058】
サイドフレーム300は、軸心Gと直交する断面(軸直角断面)は一様断面である(図6、図7を参照)。しかし、サイドフレーム300を、車両後方側に向かうに従って軸回りに捩じれ強軸Kが回転し向きが変化する捩じれ構造とすることで、サイドフレーム300の質量(軸直角断面の面積や肉厚)が増加するのを抑制しつつ、前端部302及び中央部306、更に後端部で異なるモーメントの方向に対応した強度を確保することができる。
【0059】
また、図7に示すように、運転者20の目(視界)24の高さ近傍では(図3も参照)、視線Sと強軸Kとが一致又は略一致するように設定されている。そして、このとき、運転者20の視界を遮る最大幅が横幅A2(下底303)となるように、上底305の幅が設定されている。このように視線を遮る弱軸J方向の横幅A2が運転者20から遠くなる位置となるようにするとで、例えば、下底303が手前側にある構成と比較し、運転者20の視界を遮る領域が狭くなる。
【0060】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0061】
例えば、上記実施形態及び変形例では、車体骨格部材の一例としてのサイドフレームは、軸直角断面が略楕円又は略台形状の中空のパイプであったが、これに限定されない。中実の棒状のフレームでもよい。また、軸直角断面が略矩形形状や略三角形状であってもよい。或いは、断面H形状や断面C形状であってもよい。要は、軸直角断面が強軸と弱軸とを有する一様断面の車体骨格部材であればよい。
【0062】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、左右のサイドフレームは、クロスフレームを介して連結されていたが、これに限定されない。例えば、サイドフレームの後端や前端を車両幅方向の内側に絞り、端部同士を接合してもよい。
【0063】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、車両10は、一人又は二人乗り(本実施形態では一人乗り)の小型のコミュータとされていたが、これに限定されない。パーソナルモビリティ、マイクロカー(ミニカー)、ゴルフ用等の乗用カート、屋根付原動機付自転車、軽車両等にも本発明を適用することができる。
【0064】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
10 車両
100 車体フレーム
200L サイドフレーム(車体骨格部材)
200R サイドフレーム(車体骨格部材)
202L 前端部
202R 前端部
204L 後端部
204R 後端部
206L 中央部
206R 中央部
300L サイドフレーム(車体骨格部材)
300R サイドフレーム(車体骨格部材)
302L 前端部
306L 中央部
G 軸心
K 強軸
J 弱軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に沿って配置されると共に車両前後方向の前端部から中央部に向かうに従って上側に凸状になるように湾曲され、更に断面主軸の強軸が前記前端部では車両前後方向に沿って配置され前記中央部では車両幅方向に沿って配置された車体骨格部材が、車両の両側部側に配置された車体構造。
【請求項2】
前記車体骨格部材は、前記前端部から前記中央部に向かうに従って軸心回りに捩じられて構成されている請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記車体骨格部材は、運転者の視界の高さ近傍では、前記視線と前記強軸とが一致又は略一致するように構成されている請求項1又は請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記車体骨格部材は、前記前端部から前記中央部にかけて一様断面で構成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171483(P2012−171483A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35044(P2011−35044)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】