説明

車体骨格構造

【課題】マウント取付部を有するクロスメンバの剛性を向上することができる車体骨格構造を得る。
【解決手段】車体骨格構造10は、車幅方向に長手とされ該長手方向の中央部にマウント取付部24Aが設けられたクロスメンバ24と、クロスメンバ24におけるマウント取付部24Aに対する車幅方向外側部分が結合された一対の第1高剛性部30と、クロスメンバ24における各第1高剛性部30との結合部に対する車幅方向外側部分が結合された一対の第2高剛性部32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンマウント等のマウント取付部を有するクロスメンバが含まれた車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーユニットを搭載するサブフレームを平面視枠状(井桁状)に形成し、該サブフレームにおける車幅方向に沿って延在する後側骨格であるリヤフレームを、ダッシュクロスメンバにボルトにて締結した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−161031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の技術では、サブフレームの後部はダッシュクロスへの締結部位だけが車体に対する固定部位であるため、換言すれば、サブフレームを構成するサイドフレームの後端が自由端(低剛性)であるため、リヤフレームにエンジンマウント等を設けた場合に該リヤフレームの剛性が不足することが懸念される。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、マウント取付部を有するクロスメンバの剛性を向上することができる車体骨格構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車体骨格構造は、車幅方向に長手とされ、該長手方向の中央部にマウント取付部が設けられたクロスメンバと、前記クロスメンバにおける前記マウント取付部に対する車幅方向外側部分が結合された第1の高剛性部と、前記クロスメンバにおける前記第1の高剛性部との結合部に対する車幅方向外側部分が結合された第2の高剛性部と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車体骨格構造では、車幅方向に長手とされると共に第1の高剛性部及び第2の高剛性部に結合されて車幅方向の異なる位置が支持されたクロスメンバは、車幅方向の支持スパンが短いため、車体前後方向及び上下方向の剛性が向上する。また、車幅方向の複数箇所が高剛性部に結合(支持)されたクロスメンバは、マウントからの入力に対する捩り剛性が向上する。
【0007】
このように、請求項1記載の車体骨格構造では、マウント取付部を有するクロスメンバの剛性を向上することができる。
【0008】
請求項2記載の発明に係る車体骨格構造は、請求項1記載の車体骨格構造において、前記第1の高剛性部は、車体ダッシュ部又はフロア部の車幅方向中央部に形成されたトンネル部における車体上下方向に沿う縦壁を含んで構成されている。
【0009】
請求項2記載の車体骨格構造では、第1の高剛性部がトンネル部の縦壁を含むため、クロスメンバにおけるマウント取付部から近接した位置を第1の高剛性部にて支持することができる。すなわち、支持スパンを短くして車体上下方向、前後方向の剛性向上に寄与する。
【0010】
請求項3記載の発明に係る車体骨格構造は、請求項1記載の車体骨格構造において、前記第1の高剛性部は、車幅方向に沿って配設された他のクロスメンバを含んで構成されている。
【0011】
請求項3記載の車体骨格構造では、第1の高剛性部が他のクロスメンバを含むため、車幅方向における結合位置の自由度が高い。
【0012】
請求項4記載の発明に係る車体骨格構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体骨格構造において、前記第2の高剛性部は、車体前後方向に沿って配設されると共に前端側及び後端側がそれぞれ他の骨格部材に結合された縦骨格部材を含んで構成されている。
【0013】
請求項4記載の車体骨格構造では、前端側及び後端側が共に他の骨格部材に結合された縦骨格部材が第2の高剛性部であるため、クロスメンバは、主に第2の高剛性部との結合によって所要の捩り剛性を確保することができる。このため、第1の高剛性部は主に支持スパンの短縮による車体前後方向及び上下方向の剛性向上に寄与すれば足り、設計の自由度が向上する。なお、縦骨格部材の前端側が結合された他の骨格部材と、縦骨格部材の前端側が結合された他の骨格部材とは、同じ部材であっても異なる部材であっても良い。
【0014】
請求項5記載の発明に係る車体骨格構造は、請求項4記載の車体骨格構造において、前記縦骨格部材は、一対設けられて車幅方向に並列すると共に前端側が横骨格部材にて架け渡され、かつそれぞれサスペンションアームが取り付けられており、前記クロスメンバは、前記一対の縦骨格部材の後端側を架け渡している。
【0015】
請求項5記載の車体骨格構造では、サスペンションを支持するための一対の縦骨格部材と、横骨格部材と、クロスメンバとが平面視で略矩形枠(を含む部分)を形成している。このため、縦骨格部材の剛性が高く、マウントからの入力に対するクロスメンバの捩り剛性が一層向上する。また、サスペンションアームの取り付け部に対してはクロスメンバが補強として機能するため、サスペンション(車輪)からの入力に対する車体剛性の向上も図られる。
【0016】
請求項6記載の発明に係る車体骨格構造は、請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の車体骨格構造において、前記第2の高剛性部は、車体前後方向に沿って配設され車幅方向に並列して配置された一対のフロントサイドメンバを含んで構成されている。
【0017】
請求項6記載の車体骨格構造では、第2の高剛性部が車体の主骨格を構成するフロントサイドメンバを含むため、クロスメンバは、主に第2の高剛性部との結合によって所要の捩り剛性を確保することができる。このため、第1の高剛性部は主に支持スパンの短縮による車体前後方向及び上下方向の剛性向上に寄与すれば足り、設計の自由度が向上する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明に係る車体骨格構造は、マウント取付部を有するクロスメンバの剛性を向上することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る車体骨格構造としての車体骨格構造10について、図1乃至図6に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印OUTは、それぞれ車体骨格構造10が適用された車体としての自動車の前方向(進行方向)、上方向、及び車幅方向外側を示している。
【0020】
図1には、車体骨格構造10の概略全体構成が模式図にて示されている。この図に示される如く、車体骨格構造10は、それぞれ車体前後方向に長手とされ車幅方向中央に対し対称に配設された左右一対のフロントサイドメンバ12を備えている。左右一対のフロントサイドメンバ12は、それぞれの前部12Aにおける前端が図示しないバンパ骨格部材としてのバンパリインフォースメントにて架け渡されている。
【0021】
また、各フロントサイドメンバ12は、それぞれの長手方向中間部がダッシュパネル14(図3参照)に沿って後方に向けて下側に傾斜したキック部12Bとされており、それぞれのキック部12Bよりも後方に位置する後部12Cがフロアパネル16(図3参照)の下面に接合されている。
【0022】
また、図1に示される如く、車体骨格構造10では、フロントサイドメンバ12の前部12A、キック部12Bの下方に配設されたサブフレーム(サスペンションメンバ)18を備えている。サブフレーム18は、それぞれ車体前後方向に長手とされ車幅方向中央に対し対称に配設された左右一対のサイドレール20と、車幅方向に長手とされサイドレール20の前部間を架け渡したフロントクロスメンバ22と、車幅方向に長手とされサイドレール20の後部間を架け渡したリヤクロスメンバ24とを主要構成要素として構成されている。
【0023】
すなわち、サブフレーム18は、平面視で矩形枠状に形成された部分を含む所謂井型形状とされている。このサブフレーム18は、各サイドレール20の後端側に位置する後側結合部20Aにおいて車幅方向の同じ側に位置するフロントサイドメンバ12のキック部12Bに結合されると共に、各サイドレール20の前端側に位置する前側結合部20Bにおいて車幅方向の同じ側に位置するフロントサイドメンバ12の前部12Aに結合されている。
【0024】
リヤクロスメンバ24は、本発明におけるクロスメンバに相当し、その車幅方向中央部に設けられたマウント取付部24Aには、エンジン又は変速機を弾性的に支持するためのエンジンマウント26が取り付けられている。また、左右のサイドレール20には、それぞれフロントサスペンションを構成するロアアーム28が取り付けられている。
【0025】
この実施形態では、左右のサイドレール20が本発明における縦骨格部材に相当し、フロントクロスメンバ22が横骨格部材に相当する。
【0026】
したがって、サブフレーム18は、左右のサイドレール20とフロントクロスメンバ22とで後向きに開口すると共に開口端(後側結合部20A)がフロントサイドメンバ12に結合される略「コ」字状に形成されたサスペンションメンバにおいて、左右のサイドレール20の後端部間が駆動系(エンジン又は変速機)支持用のリヤクロスメンバ24にて架け渡された構造として把握することも可能である。
【0027】
そして、図1に示される如く車体骨格構造10では、リヤクロスメンバ24におけるマウント取付部24Aに対し車幅方向の両外側に位置する第1固定部24Bが、それぞれ第1高剛性部30に結合されると共に、各第1固定部24Bのさらに車幅方向外側に離間して位置する第2固定部24Cが、それぞれ第2高剛性部32に結合されている。
【0028】
後に詳述するが、この実施形態では、第1高剛性部30は、フロアトンネル34の縦壁部34Aの根元部分を含んで構成されており、第2高剛性部32は、サイドレール20におけるフロントサイドメンバ12に結合された後側結合部20Aを含んで構成されている。以下、具体的に説明する。
【0029】
図2には、サブフレーム18が斜視図にて示されている。この図に示される如く、サブフレーム18を構成する各サイドレール20は、長手方向中間部がキック部20Cとされており、キック部20Cよりも前側部分が後側部分よりも高位とされている。各前側結合部20Bは、対応するサイドレール20におけるキック部20Cの前端部分に設けられている。
【0030】
また、フロントクロスメンバ22は、左右のサイドレール20における各キック部20C(前側結合部20B)よりも前側部分を架け渡して(連結して)いる。ロアアーム28の前側の取付部28Aは、フロントクロスメンバ22における各サイドレール20との結合部分に形成されており、後側の取付部28Bは、サイドレール20におけるキック部20Cの後方に形成されている。したがって、この実施形態では、後側の取付部28Bに対して、フロントサイドメンバ12に結合される前側結合部20Bが車体上下方向にオフセットしている構成になっている。
【0031】
リヤクロスメンバ24は、車体上下方向において左右のサイドレール20の後側結合部20A間に入り込んだ状態で、車幅方向端部である第2固定部24Cが対応するサイドレール20の後側結合部20A(第2高剛性部32)に溶接にて接合されている。すなわち、リヤクロスメンバ24は、サイドレール20の後側結合部20Aと車体上下方向の同じ高さに位置して(上下方向にオーバラップして)いる。
【0032】
各サイドレール20の後側結合部20Aには、それぞれ締結部であるボルト貫通孔36が形成されている。また、各前側結合部20Bは、それぞれブラケット状に形成されており、下面側からアクセス可能な上壁部分にボルト貫通孔38が形成されている。図示は省略するが、各前側結合部20Bは、下側から38を貫通したボルトによってフロントサイドメンバ12の前部12Aに締結にて結合(固定)されている。
【0033】
さらに、リヤクロスメンバ24のマウント取付部24Aは、複数(この実施形態では4つ)のボルト貫通孔39が形成されて構成されている。図示は省略するがマウント取付部24Aには、4本のボルトによってエンジンマウント26が締結固定されるようになっている。また、リヤクロスメンバ24の各第1固定部24Bは、締結部であるボルト貫通孔40が形成されて構成されている。
【0034】
図3には、車体骨格構造10の後部を構成するフロア下部が底面側から見た斜視図にて示されている。この図に示される如く、ダッシュパネル14の後端部とフロアパネル16の前端部とは、それぞれの車幅方向中央部に形成されたトンネル部14A、16Aを含んで車幅方向略全長に亘り(部分的に)接合されている。主にトンネル部14Aとトンネル部16Aとでフロアトンネル34が構成されている。
【0035】
ダッシュパネル14とフロアパネル16との接合部の下面側には、フロントサイドメンバ12におけるキック部12Bと後部12Cとの間を横切るようにダッシュクロスメンバ42が設けられている。ダッシュクロスメンバ42は、フロアトンネル34を挟んで車幅方向に分離している。換言すれば、フロアトンネル34の下方にはダッシュクロスメンバ42が存在しない。
【0036】
第1高剛性部30は、フロアトンネル34の縦壁部34Aに沿った縦壁30Aを有する一対のブラケットとして構成されており、それぞれの下壁30Bがダッシュクロスメンバ42の下壁42Aと略面一とされている。各第1高剛性部30は、それぞれの下壁30Bにボルト貫通孔44が形成されている。
【0037】
リヤクロスメンバ24の第1固定部24Bは、対応する第1高剛性部30の下壁30Bの下面側に重ね合わされた状態で、ボルト貫通孔40、44を貫通したボルトが下壁30Bの上面側に固着された図示しないウェルドナットに螺合することで、該第1高剛性部30に締結により結合(固定)されている。
【0038】
また、図3に示される如く、フロントサイドメンバ12(におけるフロア骨格を構成する部分)とダッシュクロスメンバ42との交差部分には、ブラケット46が固定的に取り付けられている。ブラケット46は、フロントサイドメンバ12の車幅方向内側でダッシュクロスメンバ42の前側に固着され、後部12Cの後端と略同じ高さの水平面とされた下壁46Aを有する。下壁46Aには、ボルト貫通孔48が形成されている。
【0039】
サブフレーム18の各サイドレール20は、対応するブラケット46の下壁46Aの下面側に重ね合わされた状態で、ボルト貫通孔36、48を貫通したボルトが下壁46Aの上面側に固着された図示しないウェルドナットに螺合することで、該ブラケット46すなわちフロントサイドメンバ12に締結により結合(固定)されている。
【0040】
したがって、この実施形態において、リヤクロスメンバ24の第2固定部24Cが結合される第2高剛性部32は、ブラケット46すなわちフロントサイドメンバ12を含んで構成されていると把握することも可能である。
【0041】
以上説明したリヤクロスメンバ24のマウント取付部24Aに取り付けられたエンジンマウント26は、車体上下方向において一対の第1高剛性部30間、左右のフロントサイドメンバ12(ブラケット46)間に位置するようになっている。
【0042】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0043】
上記構成の車体骨格構造10では、エンジン又は変速機を弾性的に支持するためのエンジンマウント26が取り付けられたリヤクロスメンバ24は、それぞれマウント取付部24Aに対し車幅方向の両側に設けられた第1高剛性部30、第2高剛性部32にて車体骨格に結合されているため、剛性が高い。
【0044】
具体的には、車体骨格構造10では、リヤクロスメンバ24の第1固定部24Bが、エンジン等の駆動系からの荷重入力部であるマウント取付部24Aに近接する位置で第1高剛性部30に結合されており、荷重入力部に対しリヤクロスメンバ24の支持スパンが短い。そして、第1高剛性部30を構成するフロアトンネル34の縦壁部34A(縦壁30A)は、主に車体上下方向及び前後方向に延在するため、リヤクロスメンバ24の車体上下方向及び前後方向の剛性が向上し、所要の剛性を確保することができる。
【0045】
また、長手方向の異なる位置である後側結合部20A及び前側結合部20Bにおいて、車体の主骨格部材であるフロントサイドメンバ12に結合されたサイドレール20における上記後側結合部20Aが、リヤクロスメンバ24の第2固定部24Cが結合された第2高剛性部32であるため、リヤクロスメンバ24の車幅(長手)方向に沿った軸廻りの捩り剛性が向上する。これにより、車体骨格構造10では、駆動系からの荷重入力部位であるエンジンマウント26の設置位置が、第1固定部24Bと第1高剛性部30との結合位置及び第2固定部24Cと第2高剛性部32との結合位置に対し上方にオフセットしている構成において、所要の捩り剛性を確保することができた。
【0046】
以下、上記した車体骨格構造10の作用効果を、図9に示す比較例に係る車体骨格構造100との数値解析結果の比較を参照しつつさらに説明する。ここで、車体骨格構造100は、リヤクロスメンバ24を備えず、エンジンマウント26が取り付けられたマウント支持部材102が第1高剛性部30においてのみ車体に結合されている。マウント支持部材102は、中央が凹んだ板状に形成されており、車幅方向両端が前後2点ずつボルトにて第1高剛性部30に締結されている。また、車体骨格構造100では、上記前後2点の締結部位の中央部に対し、エンジンマウント26の前後位置がオフセットしている点で、前後方向にオフセットのない車体骨格構造10とは異なる。なお、車体骨格構造100における第1高剛性部30へのマウント支持部材102の締結部位に対するエンジンマウント26の上下方向のオフセット量は、車体骨格構造10と同じである。
【0047】
図4(A)は、第1の実施形態におけるサイドレール20を数値解析用にモデル化した解析(FEM)モデルであり、図4(B)は、比較例におけるトンネル部(前後2点締結用)を数値解析用にモデル化した解析(FEM)モデルである。このモデルを用いた解析結果では、サイドレール20における第2高剛性部32(後側結合部20A)の車幅方向に沿う軸廻りの捩り剛性K2(=1.18×10N・m/rad)は、第1高剛性部30における車幅方向に沿う軸廻りの捩り剛性K1(=1.57×10N・m/rad)の略7.5倍であることがわかった。
【0048】
これにより、リヤクロスメンバ24の両端を第2高剛性部32に結合することで、マウント支持部材102を第2高剛性部32に結合しない比較例と比較して、該リヤクロスメンバ24の車幅方向に沿った軸廻りの捩り剛性を大幅に向上させることができることが確かめられた。すなわち、比較例に係る車体骨格構造100では、マウント支持部材102を第1高剛性部30に結合することで、上下方向及び前後方向の剛性を確保し得るが、車体前方側に開口したフロアトンネル34に設けた第1高剛性部30では、捩り剛性が不足する。したがって、本実施形態に係る車体骨格構造10の如く、第1固定部24Bを第1高剛性部30に結合したリヤクロスメンバ24の第2固定部24Cを、さらに第2高剛性部32に結合することは有効である。しかも、車体骨格構造10では、別部材としての補強を設けることなく、捩り剛性を確保することができる。
【0049】
また、車体骨格構造10では、第1高剛性部30は、主にリヤクロスメンバ24の上下方向及び前後方向の剛性向上に寄与すれば良いため、設置自由度が高い。このため、本実施形態では、第1高剛性部30をブラケット状に構成して、車幅方向に沿って直線状に形成されたリヤクロスメンバ24の第1固定部24Bに結合されるように構成することで、第2高剛性部32に対するエンジンマウント26(マウント取付部24A)の前後方向のオフセットが生じない構成が実現されている。これにより、上記の通り前後方向にオフセットした車体骨格構造100と比較して、駆動系からの入力に対するモーメントアームが短くなり、リヤクロスメンバ24の捩れ(角変位)が一層生じ難い構成が実現されている。
【0050】
図5(A)及び図5(B)は、車体骨格構造10において車体骨格構造100との比較で駆動からの入力に起因する低周波騒音が低減されることを示す線図であり、それぞれ横軸に周波数をとり、縦軸には図5(A)で車体上下方向の加振点イナータンス、図5(B)で車体前後方向の加振点イナータンスをとっている。これらの図から、車体骨格構造10では、騒音が問題となる(車室内に伝達されて音となりやすい)250Hz以下の領域で著しくイナータンスが抑えられることがわかる。また、低周波側でイナータンスが低減され、強度上も信頼性が向上することがわかる。
【0051】
このように、第1の実施形態に係る車体骨格構造10では、マウント取付部24Aを有するリヤクロスメンバ24の上下、前後、及び車幅方向に沿う軸周りの各方向における剛性を向上することができる。これにより、エンジン等の駆動系からの入力に対し十分な剛性が確保され、強度・静粛性が向上する。特に、250Hz以下の低周波帯域での改善効果が著しい。
【0052】
またここで、車体骨格構造10では、それぞれロアアーム28が取り付けられたサイドレール20の後端である後側結合部20Aがリヤクロスメンバ24にて架け渡されているため、換言すれば、サスペンション側からの観点では、サスペンションメンバ(サブフレーム18)がリヤクロスメンバ24及び第1高剛性部30にて補強されているため、ロアアーム28における車幅方向の剛性が向上する。これにより、車体骨格構造10が適用された自動車では、操縦安定性(運動性能)が向上する。
【0053】
図6(A)は、ロアアーム28を車幅(左右)方向に加振した場合の加振点での周波数応答を示す線図であって、横軸に周波数、縦軸にイナータンスをとってある。実線が本実施形態に係る車体骨格構造10の解析結果、一点鎖線がリヤクロスメンバ24を備えない第2比較例に係る構成の解析結果、破線が第1固定部24Bと第1高剛性部30との結合がない第3比較例に係る構成の解析結果を示している。第3比較例を基準(50Hzから250Hzにおけるカーブフィット剛性値で8350N/mm)にすると、第2比較例ではロアアーム28の車幅方向の剛性(同9760N/mm)が17%向上し、本実施形態ではロアアーム28の車幅方向の剛性(同10290N/mm)が23%向上することが確認された。
【0054】
図6(B)は、ロアアーム28を車幅(左右)方向に加振した場合のボディの周波数応答を示す線図であって、横軸に周波数、縦軸にイナータンス(ボディへの振動伝達)をとってある。一点鎖線がリヤクロスメンバ24を備えない第2比較例に係る構成の解析結果、破線が第1固定部24Bと第1高剛性部30との結合がない第3比較例に係る構成の解析結果を示している。この図から、騒音源として問題となる250Hz前後の周波数帯域でボディ感度が低減(改善)されていることがわかる。
【0055】
このように、車体骨格構造100のようにエンジンマウント26取付用のマウント支持部材102を有する構成と比較して、左右のサイドレール20を架け渡すリヤクロスメンバ24を備えた車体骨格構造10は、サスペンションすなわち車輪からの入力に対しても十分な剛性が確保され、操縦安定性・静粛性が向上する。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品・部分については上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図7には、本発明に第2の実施形態に係る車体骨格構造60の概略全体構成が模式図にて示されている。この図に示される如く、車体骨格構造60は、フロアトンネル34の縦壁部34Aを含んで構成された第1高剛性部30に代えて、ダッシュクロスメンバ62のを含んで構成された第1高剛性部64を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0058】
図8にも示される如く、車体骨格構造60では、ダッシュパネル14及びフロアパネル16にフロアトンネル34が形成されず、又はフロアトンネル34が小さく(プロペラシャフトを通す機能を有せず)、ダッシュクロスメンバ62は左右のフロントサイドメンバ12におけるキック部12Bの後端部分を車幅方向に沿う一直線状に架け渡している。ダッシュクロスメンバ62は、左右に分離されたダッシュクロスメンバ42を連結した如く構成されている。
【0059】
一対の第1高剛性部64は、ブラケット状に形成され、ダッシュクロスメンバ62とフロアパネル16とを跨ぐようにしてこれらに固着されている。各第1高剛性部64におけるダッシュクロスメンバ62の下壁62Aと略面一とされた下壁64Aには、ボルト貫通孔448が形成されている。
【0060】
そして、図7に示される如く、サブフレーム18を構成(補強)するリヤクロスメンバ24は、その第1固定部24Bにおいてボルト貫通孔40、44を貫通したボルトが下壁64Aの上面側に固着された図示しないウェルドナットに螺合することで、該第1高剛性部64に締結により結合(固定)されている。車体骨格構造60の他の構成は、車体骨格構造10の対応する構成と同じである。
【0061】
したがって、第2の実施形態に係る60によっても第1の実施形態地同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0062】
補足すると、フロアパネル16とダッシュクロスメンバ62とに跨って設けられた第1高剛性部64は、リヤクロスメンバ24のマウント取付部24Aに支持されたエンジンマウント26をダッシュクロスメンバ62に対し前方にオフセットして位置させる。このため、リヤクロスメンバ24は、第1高剛性部64との結合によって十分な捩り剛性を得るためには別に補強等を要するが、第2固定部24Cを第2高剛性部32(後側結合部20A)に結合することで、補強等を設けることなく十分な捩り剛性を得ることができる。
【0063】
なお、上記各実施形態では、サブフレーム18がフロントクロスメンバ22を有する例を示したが、本発明はこれに限定されず、フロントクロスメンバ22の有無や形状等を適宜選択可能であることはいうまでもない。
【0064】
また、上記実施形態では、リヤクロスメンバ24の第2固定部24Cがサイドレール20を介してフロントサイドメンバ12(第2高剛性部32)に結合された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第2固定部24Cがフロントサイドメンバ12に対し直接的に結合されるようにしても良い。
【0065】
さらに、上記実施形態では、リヤクロスメンバ24が1つのマウント取付部24Aを有する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、リヤクロスメンバ24が2つ以上のマウント取付部24Aを有する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体骨格構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体骨格構造を構成するサイドフレームの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車体骨格構造を構成するフロア下部を示す下側から見た斜視図である。
【図4】(A)は本発明の第1の実施形態に係る車体骨格構造の解析対象部の解析モデルであり、(B)は比較例に係る解析対象部の解析モデルである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車体骨格構造の周波数に対するエンジン入力部のイナータンスを示す図であって、(A)は車体前後方向のイナータンスを示す線図、(B)は車体上下方向のイナータンスを示す線図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る車体骨格構造の周波数に対するサスペンション入力に対する周波数応答を示す図であって、(A)は加振点のイナータンスを示す線図、(B)はボディへの伝達イナータンスを示す線図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車体骨格構造を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る車体骨格構造を構成するフロア下部を示す下側から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施形態との比較例に係る車体骨格構造を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10 車体骨格構造
12 フロントサイドメンバ(他の骨格部材、第2の高剛性部)
20 サイドレール(縦骨格部材)
22 フロントクロスメンバ(横骨格部材)
24 リヤクロスメンバ(クロスメンバ)
24A マウント取付部
28 ロアアーム(サスペンションアーム)
30 第1高剛性部(第1の高剛性部)
32 第2高剛性部(第2の高剛性部)
34 フロアトンネル(トンネル部)
34A 縦壁部
60 車体骨格構造
62 ダッシュクロスメンバ(他のクロスメンバ)
64 第1高剛性部(第1の高剛性部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に長手とされ、該長手方向の中央部にマウント取付部が設けられたクロスメンバと、
前記クロスメンバにおける前記マウント取付部に対する車幅方向外側部分が結合された第1の高剛性部と、
前記クロスメンバにおける前記第1の高剛性部との結合部に対する車幅方向外側部分が結合された第2の高剛性部と、
を備えた車体骨格構造。
【請求項2】
前記第1の高剛性部は、車体ダッシュ部又はフロア部の車幅方向中央部に形成されたトンネル部における車体上下方向に沿う縦壁を含んで構成されている請求項1記載の車体骨格構造。
【請求項3】
前記第1の高剛性部は、車幅方向に沿って配設された他のクロスメンバを含んで構成されている請求項1記載の車体骨格構造。
【請求項4】
前記第2の高剛性部は、車体前後方向に沿って配設されると共に前端側及び後端側がそれぞれ他の骨格部材に結合された縦骨格部材を含んで構成されている請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体骨格構造。
【請求項5】
前記縦骨格部材は、一対設けられて車幅方向に並列すると共に前端側が横骨格部材にて架け渡され、かつそれぞれサスペンションアームが取り付けられており、
前記クロスメンバは、前記一対の縦骨格部材の後端側を架け渡している請求項4記載の車体骨格構造。
【請求項6】
前記第2の高剛性部は、車体前後方向に沿って配設され車幅方向に並列して配置された一対のフロントサイドメンバを含んで構成されている請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の車体骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−160967(P2007−160967A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356227(P2005−356227)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】