説明

車内情報伝達システム

【課題】 公共交通機関の車内において、乗客に通知手段として提供されている車内放送や、電光掲示板による掲示が、混雑の為に聞き逃しまたは見逃したり、眠っていたために情報を聞き漏らしたりする事により発生する、乗り過ごしや乗り間違いといった問題を未然に防ぐ。
【解決手段】 音声放送や電光掲示板に表示している内容を3種類にわけ、車両案内放送機器(10)着駅案内放送機器(11)緊急案内放送機器(12)を介してデジタル放送形式で、各車両単位に個別に放送を行い、乗客は個別に個人用の携帯端末(1)で受信する。受信した情報を画面に表示する事で、乗客は任意のタイミングで望んだ情報を提供する環境を得る。また、受信情報が着駅通知または緊急案内など通知が必要な物であった場合は、携帯端末を介して、通知を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通機関内での車内情報伝達システムに関し、特に、乗客毎又は乗客のグループ毎に特化された情報を伝達できる情報伝達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道・バスなどの公共交通機関を利用する場合、乗客は車外の風景を見たり駅の看板を見ることにより目的地への到着を知ることができる。また、車内放送による音声の案内で列車の行先・停車駅・設備などの情報と、目的地への到着に関する情報を知ることができる。さらに、最近では、発光ダイオードなどを用いた着駅案内掲示表示機器によって車内放送に準じた情報を知ることができるようになってきている。
【0003】
また、上記の手段以外にも、乗客の多くが所持する携帯端末を用いた乗り過ごし防止技術・運行情報取得技術として、例えば、下記特許文献1及び特許文献2に記載の技術が知られている。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、降車すべき駅、停留所等を事前に携帯端末に登録しておき、次駅情報発信機から発信される信号を携帯端末により受けたり降車駅の接近通知を受けたりすることにより乗り過ごしの防止に役立たせるものである。
【0005】
また、下記特許文献2に記載の降車駅案内システムは、輸送手段が位置情報を取得するシステムを有し、狭域無線通信手段により乗客が所持する携帯端末に向けて降車駅の接近を通知するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2002−67959号公報
【特許文献2】特開2003−179542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車外風景や駅の看板などに頼る方法では、混雑時などで車外の様子を確認することができない場合や、初めて乗車する列車である場合、眠ってしまった場合に、乗り過ごしてしまう場合がある。また、車内放送による確認方法は、周りの騒音が大きい場合や眠ってしまっていた場合に聞き逃す可能性がある。また、車内掲示は設置数も少なく、混雑時に座席に座っている場合に立っている乗客により死角に入ってしまうことがあり、情報を確認することができない場合も多い。
【0008】
上記特許文献1に記載の技術においては、降車駅直前の駅情報と降車駅の情報提供のみであり、駅到着の直前の警報として機能するが、誤って乗車した場合は、いつまでも到着駅に着くことができないため警報がならない、ということも起きうる。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術は、位置情報を取得するために現在位置を検知する方法により行先を誤って乗車することは防止できるが、降車駅を通過する優等列車(例えば特急列車など)に乗車した場合は、降車駅が接近したことは分かっても、駅に停車しないのでは結局乗り過ごしが発生してしまう。また、サーバ・クライアント方式の双方向通信による方法も考えられるが、接続するサーバ機器を呼び出し所定のダウンロード操作を行う必要がある。特に需要の多くなる混雑時には接続数が増大することも予測される。また、GPSなどにより位置情報を取得する場合にも、位置取得ができないトンネルなどでは役立たない。BlueToothによる位置情報取得を行うことも可能であるが、インフラの問題から現状では難しい上に、機器の保守が必要となるという問題も発生する。
本発明は、すでにあるインフラを利用しつつ、確かな情報を乗客に対して与えることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る情報伝達システムは、交通機関の車内放送により既に多岐にわたる情報が提供されている点に着目し、この情報を誤りなく伝達し有効に活用することを特徴とする。例えば、車内放送をデジタル化し、各車両単位に車内放送を行い、この放送される情報を、乗客が所持する携帯端末に対して送信する。これにより、携帯端末により受信された情報は、携帯端末で解析又は取捨選択し、利用者が携帯端末によって必要情報を効率よく参照できる環境を提供できる。
【0011】
そのために、車内放送を、例えば「列車案内」、「着駅通知」、「緊急放送」のように内容別に3つのカテゴリにわける。3つのカテゴリに分けられた情報のデジタル放送を各車両個別に行うこともできる。デジタル放送の内容は、例えばタグ形式のデータ構造により提供され、解析性を持たせることができる。また、放送を受信した携帯端末には、受信情報を蓄積・解析する機能が設けられている。該受信情報の解析結果は、画面表示・音声通知・振動通知などの手段により利用者に確実に通知される。また、携帯端末が備える目的地情報の入力・検索機能を、上記デジタル放送により受信した結果と関連させることにより、誤乗防止や乗り過ごし防止しやすくなる。
【0012】
また、アナログの車内放送を行う車内放送装置と、該車内放送装置からの車内放送を受信する携帯通信端末であって、アナログ放送用チューナと、受信した前記アナログの車内放送に含まれるアナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換器と、前記デジタルデータの内容を解析する解析装置と、該解析装置により解析された解析情報を記録する解析情報記録装置と、予め設定した要取得情報を記録する要取得情報記録装置と、前記要取得情報と関連する前記解析情報を前記解析情報記録装置から取得して報知する報知手段とを備えた携帯通信端末とを有する車内案内システムが提供される。
【0013】
上記携帯通信端末は、A/D変換器により車内アナログ放送をデジタルデータに変換する。変換されたデジタルデータのうち、下記の第1の実施の形態で説明する情報登録装置に登録した情報と関連するデジタルデータを、LCD表示装置又はイヤホンによる音声情報又はその他の出力形態により出力する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車内放送に基づいて乗客の携帯通信端末に対して列車案内情報、例えば列車種別情報・号車情報・行先情報・停車駅情報が提供される。乗客は上記各種情報を受信することができるため、誤乗防止・列車設備(お手洗・指定席車両・自由席車両・身障者用設備設置車両・各車両の乗車率・分割列車の号車単位の行先表示等)を知ることができ誤乗防止、混雑解消に役立つ。
【0015】
また、車内放送による着駅通知により現在位置が把握できるため、例えば目的地を事前に携帯通信端末に登録しておくことにより、目的降車駅に接近した旨の車内放送に基づいて携帯通信端末によりその旨の情報を取得でき、登録情報と取得情報とにより降車駅に接近している旨を知ることができ、乗り過ごしを防止できる。
【0016】
降車駅の登録は頻繁に使う最寄り駅の登録だけでなく、乗換実施駅を指定することも可能となる。この際、列車案内放送による到着駅情報を用いて、乗換実施が必要な駅を経路探索プログラムと組み合わせることで、間違えることなく半自動的に登録することが可能となる。
【0017】
また、車内放送による緊急放送に基づいて得られた受信情報を記録し、画面・音声によって任意再生を行うことができる機能を提供することにより、混雑時車内における情報の錯綜、誤伝達によるパニック状態発生の防止に役立たせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態による車内情報伝達システムについて図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本実施の形態における車内情報伝達システムの構成例を示す図である。図2(A)から(C)までは、本実施の形態による車内情報伝達システムにおいて利用される情報ソースであるデジタル車内放送の内容を具体的なデータ構成として列挙した図である。図3は、本実施の形態における携帯通信端末の構成例を示す図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態による車内情報伝達システムは、交通機関車両(40)に設けられた車両の行先・種別・停車駅・設備・混雑度などを放送する車両案内放送機器(10)と、次駅に接近した場合に放送を行う着駅案内放送機器(11)と、事故などの緊急連絡事項を放送する緊急案内放送機器(12)と、を搭載する。これらは、一体に構成されていても良い。車両案内放送機器(10)と着駅案内放送機器(11)と緊急案内放送機器(12)とは、列車の運行を管理する中央運行管理システム(30)との間で後述する図4の(ステップ101、111、121、131)に示す情報交換を行う。
【0020】
尚、交通機関車両(40)とは、不特定多数の乗客が乗車する乗合型の鉄道、バス、モノレールなどの交通機関における車両であるが、必ずしも複数の車体を有していなくても良い。また航空機などのように、車両という名称では呼ばれない交通機関も含まれる。
【0021】
また、中央運行管理システム(30)と車両案内放送機器(10)との間における情報伝達手段は、列車運行前に確定している用件(行先・列車種別・停車駅など)については、通信による伝達に限定されるものではなく、現行運用されているカード型記録媒体を用いた伝達手段も含まれる。
【0022】
車内案内情報は、一般的にはアナログ放送として乗客に一律に提供される。本実施の形態によるシステムでは、この車内アナログ放送とともに又は車内アナログ放送に代えて、中央運行管理システム30により管理され、例えば車内アナログ放送をデジタル化した情報を取り扱う。図2に示すように、車両案内情報(80)、着駅案内情報(81)、緊急案内情報(82)は、駅のコードなど一意性のある規約に基づいたデータ形式を持つ。例えば、図2に示すようにXML形式で記載される。
【0023】
図3は、乗客の所持する携帯通信端末の一構成例を示す図である。図3に示すように、本実施の形態による携帯通信端末(1)は、アンテナATと、放送を受信可能なチューナ装置(2a)を含む受信装置(2)と、解析装置(3)と、解析情報記録装置(4)と、登録情報記録装置(5)と、画面表示装置(6)と、振動発生装置(7)と、音声読み上げ装置(8)と、情報登録装置(9)と、を有している。受信装置(2)に設けられるチューナ(2a)は、例えば、ラジオやテレビ放送受信用のチューナ(2a)であり、車内放送は、携帯通信端末が備える一般的なチューナにより選局可能な周波数帯で放送される。チューナ(2a)はオートチューニング機能を有しているのが好ましい。乗車時のその車両のチャネル情報を取得し、そのチャネルに選局しておくことも可能である。解析装置(3)は、図2に示すデジタル車内放送の内容を解析する。解析情報記録装置(4)は解析された情報を記録する。登録情報記録装置(5)は、例えば乗客が乗車前に予め設定しておいた情報であって、乗客が取得したいと思っている情報を記録する。画面表示装置(6)と、振動発生装置(7)と、音声読み上げ装置(8)と、はそれぞれの手段により乗客に情報に関する報知を行う手段である。情報登録装置(9)は、乗客が情報を登録するための装置であり、例えば携帯通信端末の操作キーなどができる。
【0024】
携帯通信端末(1)は、個別車両情報装置(20)からの放送を受信し、解析装置(3)により受信情報を解析する。解析された情報は、解析情報記録装置(4)に蓄積される。情報は、必要に応じて上書き更新される。解析情報記録装置(4)に蓄積された情報と、情報登録装置(9)による操作に基づいて記録された乗客が取得したいと考える情報との関連性が高い場合には、関連性の高い情報を、画面表示装置(6)又は音声読上げ装置(8)により再生することで参照することができる。
【0025】
解析装置(3)により解析された結果、その情報が着駅案内情報(81)に関する情報であった場合は、情報登録装置(9)によって予め登録情報記録装置(5)に記録され着駅情報として登録されている降車駅情報と着駅案内情報(81)による着駅情報とを比較し、これらが一致した場合に、画面表示装置(6)、振動発生装置(7)、音声読み上げ装置(8)などの報知(通知)手段により降車駅の接近を乗客に知らせる。
【0026】
情報登録装置(9)によって着駅情報の登録を行う方法は、手入力によるコード入力に限定されるものではない。情報登録装置(9)は、解析情報記録装置(4)に蓄積された車両案内情報(80)の停車駅情報から降車駅情報を選択し登録する手段を提供することができる。この機能により、停車駅入力による誤入力を回避することができる。また、情報登録装置(9)は、既存のアプリケーションソフトウェアにより動作する経路探索システムなどと連動させることにより、目的の降車駅を選択により登録する機能を有していても良い。また、登録情報記録装置(5)は、情報登録装置(9)により予め利用頻度の高い駅コードを複数登録する複数登録機能を有していても良い。複数登録機能により、例えば自宅と会社とのそれぞれの最寄駅を登録しておくことも可能である。尚、複数登録機能を一時的に無効化できるようにすれば、いずれか一方のみを通知するので通過時の「誤報」などを防ぐことができる。
【0027】
上記「誤報」とは、例えば、会社の最寄駅を登録しておいた場合において、休日であって会社に行く用は無いが、たまたま同じ電車に乗って会社の最寄駅に来た場合に、降車通知により混乱する場合を想定した表現である。このような「誤報」を防止するため、その日に限っては、必要の無い当該駅の接近通知がなされないようにする必要がある。しかしながら、登録自体を削除してしまうと、次の出勤日には当該駅の再登録をしなくてはならず手間がかかる。そこで、一時的に接近通知を促す仕組みを無効化する手段を設けておく。
【0028】
解析装置(3)による解析の結果、情報が緊急案内情報(82)であると判断された場合は、情報登録装置(9)によって予め登録情報記録装置(5)に設定されている通知レベル(緊急度と重要度などにより決めることができる)と比較し、上記緊急案内情報(82)が通知する必要のある情報であると判断された場合は、車内放送に基づいて通知を行う。一方で、緊急案内情報(82)の内容が、例えば緊急事態が収束する方向である旨を知らせる情報であった場合は、解析情報記録装置(4)に記録されている緊急案内情報を削除・更新する。尚、音声読み上げ装置(8)は、例えば視覚障害者など画面表示装置(6)による情報伝達では伝達力が不十分であることが想定される乗客に対して伝達される。従来の車内放送に代わるシステムとして周囲に対する騒音防止という観点から、スピーカによる通知よりはむしろ音漏れ防止機能付きのイヤホンなどによる再生が好ましい。
【0029】
車両案内放送機器(10)は、ある間隔で繰り返し交通機関車両(40)の車両案内情報を、例えば各車両単位に設けられた個別車両情報放送機器(デジタルデータ放送の発信機など)(20)に向けて発信する(図4のステップ102,106)。図2に示すように、車両案内情報(80)は、具体的には、列車の行先、停車駅名、駅コード、到着予定時刻、列車設備(御手洗/売店/公衆電話/身障者用設備など)の設置箇所、各車両単位の行先(途中分割する列車などを想定)、各車両単位の混雑度、自由席/指定席の区分などが含まれる。途中分割する列車の場合は、どの号車に乗車しているかに依存して行く先が異なることから、乗車している号車の番号を知ることは特に重要である。
【0030】
加えて、各駅毎に固有の情報も車両案内放送機器から提供される情報に含まれる。駅に停車する際にドアが開く方向(左右)、停車位置情報とその号車位置に対応した改札・階段・身障者向け施設(たとえばエレベータなど)の設置位置、乗換・接続列車に関する情報などが対象となる。個別車両情報放送機器(20)は、上記車内案内放送機器(10)からの車両案内情報(80)を受けた場合に、装置の取り付けられた号車番号を付加して当該車両毎に車両案内放送を行う。
【0031】
放送された情報は、乗客の持つ携帯通信端末(1)により受信される(ステップ103,107)。放送の内容が更新されている場合は携帯通信端末(1)への情報も更新される。乗客は携帯通信端末の表示画面から列車情報を確認することができる(ステップ104)。例えば、図5の符号(61)で示される画面が表示される。また、降車駅の登録を行うことができる(ステップ105)。例えば、図5の符号(62)で示される画面が表示される。
【0032】
着駅案内放送機器(11)は、次の停車駅に列車が近づくと、図2の着駅案内情報(81)に示すように、音声車内放送と合わせて停車駅名および全駅に個別に割り当てられた駅コードを個別車両情報放送機器(20)に向けて発信する(ステップ112)。着駅案内情報(81)は停車駅接近を検知して発信するために、現在の自動車内放送のシステムと連動するようにするのが望ましいが、バスなどの交通機関では完全自動放送ではなく、運転手・車掌などの操作により再生される再生型車内放送と連動する方法でも良い。
【0033】
個別車両情報放送機器(20)は、着駅案内放送機器(11)からの着駅案内情報(81)を受信した場合は、そのまま車内に向けて情報を放送する(ステップ113)。放送されたこの情報は、乗客の持つ携帯通信端末(1)によりチューナ(1a)を介して受信される(ステップ113)。携帯通信端末(1)では(ステップ105)で登録した降車駅に着いたか否かに関する判定を行い(ステップ114)、降車駅であれば通知を行う。例えば、図5の画面63が表示される。画面63には、列車がまもなく盛岡駅に到着する旨と、のりかえ情報と、到着番線と、出口情報と、号車番号と階段位置との対応関係など乗客が降車する際に知っておくと便利な情報と、が示される。
【0034】
緊急案内放送機器(12)は、事故などの突発的な事態が発生した場合に、図2の緊急案内情報(82)に示すように、発生した緊急事態の詳細情報を個別車両情報放送機器(20)に向けて例えば一定の間隔毎に繰り返し発信される。列車遅延による行先変更や停車駅変更など車両案内情報(80)の情報更新が必要になる場合にも緊急案内情報(82)を発信し乗客へ報知する。また、緊急事態が収束した場合も、緊急事態でなくなった旨を通知するために、緊急案内放送機器(12)は緊急案内情報(82)を個別車両情報放送機器(20)に向けて発信する(ステップ122)。また、個別車両情報放送機器(20)は上記緊急案内放送機器(12)からの緊急案内情報(82)を受けた場合は、そのまま車内にむけ情報を放送する。
【0035】
この放送された情報は、乗客の持つ携帯通信端末(1)によりチューナを介して受信される(ステップ123)。携帯情報端末(1)では、緊急案内を乗客に通知し(ステップ124)、乗客は案内の内容を画面で確認する(ステップ125)。例えば図5の符号(64)で示される画面が表示される。緊急案内情報は、事故情報や復旧の見込み、振り替え輸送に関する案内情報など乗客の利便性を考慮した情報である。緊急事態発生時は、行先変更など列車情報に変更がかかることが想定される。この場合は、列車情報が更新されるが、乗車時と同じ方式で乗客は列車情報を確認できる(ステップ131、132、133、134)。
【0036】
ここで、車両案内放送機器(10)・着駅案内放送機器(11)・緊急案内放送機器(12)と個別車両情報放送機器(20)との間は、同時に複数の情報が交信されるのが好ましい。尚、上記個別車両情報放送機器(20)から放送された情報は、乗客の持つ携帯端末(1)により受信されるが、この際、上記3種類の情報は同時に発信される事が想定されるため、AM/FM輻射放送などの機器を拡張して個別車両情報放送機器(20)として使用する場合は、別個の周波数帯を使用するなどにより混信を避ける必要がある。そのためには、上記のように放送周波数帯(すなわちチャネル)を変えて複数の情報を通知する方法のほかに、情報を多重化して送信する方法、異なる報知方法例えば画面表示と音声などにより知らせる方法、時間的に差を持たせて周期的に送信する方法などを用いることができる。このような情報処理をする場合に、予め放送をデジタル化しておくことが好ましい。
【0037】
また、個別車両情報放送機器(20)は交通機関車両(40)の個別車両単位に設置されているのが好ましく、個別の車両内を放送範囲とすることができる。これにより、乗客は現在自分の乗車している車両の号車番号を特定することが可能となる。例えば、終点までに至る経路の途中で枝分かれ(分割)する列車の場合において、乗客が現在乗車している車両が、自分の目的地に向かい、かつ、目的とする駅に停車するか否かを確認することができる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施の形態による車内情報伝達システムについて説明を行う。本実施の形態による車内情報伝達システムは、一般的な車内放送を行う車内放送装置と、車内放送装置からの車内放送であるアナログ放送を受信する携帯通信端末であって、アナログ放送用チューナと、受信したアナログ放送に含まれるアナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換器と、を備えた携帯通信端末を有している。携帯通信端末は、A/D変換器により車内アナログ放送をデジタルデータに変換する。変換されたデジタルデータのうち、第1の実施の形態で説明した情報登録装置に登録した情報と関連するデジタルデータを、LCD表示装置又はイヤホンによる音声情報又はその他の出力形態により出力する。この場合には、車内放送側には特別の仕組みを設けなくて良いため、汎用性が高まるという利点がある。
【0039】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、車内放送をデジタル化して乗客に通知する列車案内において、列車種別情報・号車情報・行先情報・停車駅情報などが常時放送されるため、乗客は自分が乗車した時に上記の情報を受信することが可能となる。これにより、誤乗防止・列車設備(御手洗・指定席車両・自由席車両・身障者用設備設置車両・各車両の乗車率・分割列車の号車単位の行先表示等)を知ることができ、誤乗防止、混雑解消に役立つ。
【0040】
また、車内放送による着駅通知により現在位置の把握が可能となる。目的地を事前登録することにより、目的降車駅の接近通知を行うことによる乗り過ごし防止としても役立つ。降車駅の登録は頻繁に使う最寄り駅の登録だけでなく、乗換実施駅を指定することも可能となる。この際、前記列車案内放送による到着駅情報を用いて、乗換実施が必要な駅を経路探索プログラムと組み合わせることで間違えることなく、半自動的に登録することが可能となる。
【0041】
また、車内放送による緊急放送により受信した情報を記録し、画面・音声にて任意再生を行うことができる機能を提供することにより、混雑時車内における情報の錯綜、誤伝達によるパニック状態発生の防止に役立たせることができる。放送を音声による車内放送からデジタル放送に変更することにより、情報量を格段に増やすことができる。
【0042】
さらに、放送された情報を携帯端末に保存できるため、一旦保存した情報の事後確認が可能となり、情報の誤伝達防止に役立つ。これは混雑時・混乱時のパニック発生を防止効果が期待できる。また、音声放送を排除することにより、騒音を排除したサイレントカーにも、より一層の充実した情報提供が可能となる。
【0043】
加えて、情報の一方向性から双方向通信を必要としないため、放送のような片方向の通信方法を利用することができる。これにより、既に一部鉄道車両で実施されている、AM/FM放送の車内輻射放送機器という実績のある機器での利用が可能となる。
【0044】
さらに、放送という手段を採用することにより、緊急事態の場合、双方向通信では、各端末から送信装置への問い合わせが多発し接続不可状態になるケースが想定されるが、本発明においては、一方向性の放送という手段を用いるため、受信不可能状態が発生する問題を回避することができる。
【0045】
原則として交通機関の車両内にある機器を利用して放送を行うことができるため、外部施設の設置を必ずしも必要としない。現在の車内放送自動化で確立している手段をそのまま応用する事で、新たな外部投資を防ぐ事が可能となる。目的駅接近情報をGPSなどに頼る必要は無い。車掌の手動による車内放送にも適用することが可能である。既存のアナログ放送に対応することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車内放送をより充実したものとすることができる。広告情報の提供手段としても適用可能である。携帯通信端末としては、携帯電話機のほかに通信カード付きの端末(PDAなど)を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態における個人向け車内放送システムの構成を示す概念図である。
【図2】本発明におけるデジタル車内放送内容を列挙した説明図である。
【図3】本発明の実施の形態における携帯端末の構成を示す概念図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるデータフローのシーケンスを示す概念図である。
【図5】本発明の実施の形態における携帯端末の画面イメージ図である。
【符号の説明】
【0048】
1…携帯端末、2…受信装置、3…解析装置、4…解析情報記録装置、5…登録情報記録装置、6…画面表示装置、7…振動発生装置、8…音声読上げ装置、9…情報登録装置、10…車両案内放送機器、11…着駅案内放送機器、12…緊急案内放送機器、20…個別車両放送機器、30…中央運行管理システム、40…交通機関車両、50…乗客、61…携帯端末車両案内情報表示画面イメージ、62…携帯端末降車駅指定画面イメージ、63…携帯端末着駅案内情報表示画面イメージ、64…携帯端末緊急案内情報表示画面イメージ、80…車両案内放送、81…着駅案内放送、82…緊急案内放送、101…列車情報登録ステップ、102…車両案内放送ステップ、103…車両案内放送(号車情報付加)ステップ、104…列車情報確認ステップ、105…降車駅登録ステップ、106…車両案内放送再放送ステップ、107…車両案内放送(号車情報付加)再放送ステップ、111…着駅接近通知ステップ、112…着駅案内放送ステップ、113…着駅案内放送(号車単位)ステップ、114…登録降車駅比較ステップ、115…降車駅通知ステップ、121…緊急情報登録ステップ、122…緊急案内放送ステップ、123…緊急案内放送(号車単位)ステップ、124…緊急案内通知ステップ、125…緊急情報内容確認ステップ、131…(緊急事態発生後)列車情報登録ステップ、132…(緊急事態発生後)車両案内放送ステップ、133…(緊急事態発生後)車両案内放送(号車情報付加)ステップ、134…(緊急事態発生後)列車情報確認ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両を有する交通機関における車内放送をデジタル化して集中管理する中央運行管理システムと、
該中央運行管理システムにより提供されたデジタルデータを内容別に分別する放送機器と、
前記放送機器により分別された前記デジタルデータを、それぞれの車両に関連する内容毎に割り当てて提供する個別車両情報放送機器と
を有することを特徴とする車両案内システム。
【請求項2】
デジタル化されたデジタル車内放送を受信するチューナと、
前記デジタル車内放送の内容を解析する解析装置と、
該解析装置により解析された解析情報を記録する解析情報記録装置と、
予め設定した要取得情報を記録する要取得情報記録装置と、
前記要取得情報と関連する前記解析情報を前記解析情報記録装置から取得して報知する報知手段と
を有する携帯通信端末。
【請求項3】
アナログの車内放送を行う車内放送装置と、
該車内放送装置からの車内放送を受信する携帯通信端末であって、アナログ放送用チューナと、受信した前記アナログの車内放送に含まれるアナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換器と、前記デジタルデータの内容を解析する解析装置と、該解析装置により解析された解析情報を記録する解析情報記録装置と、予め設定した要取得情報を記録する要取得情報記録装置と、前記要取得情報と関連する前記解析情報を前記解析情報記録装置から取得して報知する報知手段とを備えた携帯通信端末と
を有する車内案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−7873(P2006−7873A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185291(P2004−185291)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】