説明

車載システムおよび車載装置

【課題】第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することを課題とする。
【解決手段】車載システムにおける車載装置は、所定の情報を移動体通信装置に送信する場合にのみ、移動体通信装置の方向に感度特性が良くなるようにアンテナの指向性を変更する。そして、車載装置は、変更されたアンテナの指向性を用いて、所定の情報を移動体通信装置に送信し、所定の情報を送信した後、アンテナの指向性を元に戻す。同様に、移動体通信装置は、所定の情報を車載装置に送信する場合にのみ、車載装置の方向に感度特性が良くなるようにアンテナの指向性を変更し、変更されたアンテナの指向性を用いて、所定の情報を車載装置に送信し、所定の情報を送信した後、アンテナの指向性を元に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載装置と移動体通信装置との間で無線通信を行う車載システムおよび車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カーナビなどを搭載する車載装置と、車両に乗車した乗員が所持する携帯端末などの移動体通信機器との間で、各種情報をやり取りすることで、車両内で情報を共有する通信技術が開示されている。
【0003】
このような通信技術では、車載装置と移動体通信機器との間において、無線通信により通信を行っている。例えば、GPS(Global Positioning System)情報やコンテンツ情報などを車載装置から移動体通信装置に送信する際に無線で送信したり、車載装置と移動体通信装置との間で通信を行うための初期設定(例えば、ペアリング処理など)についても無線通信でやり取りしている。
【0004】
このような無線通信は、車載装置だけでなく様々な分野で用いられており、無線(電波)によって通信が行われるという特性上、悪意のある第三者により傍受される危険性が高い。そのため、個人情報などの重要な情報について無線でやり取りすることは好ましくない。
【0005】
そこで、WEP(Wired Equivalent Privacy)、WPA(Wi-Fi Protected Access)やIEEE802.11シリーズなどの暗号化手法を用いて無線通信を行う技術が用いられるようになり、これらの機能を備えた車載装置や移動体通信装置なども普及している。ところが、近年の技術進歩においては、暗号化だけではセキュリティが十分に確保できているとは言い難い。そのため、暗号化されたデータを送信する場合には送信パワー(出力)を高くし、暗号化されたデータを解読するためのデータを送信する場合には出力を低くする、すなわち、傍受されたくないデータを送信する場合に出力を低くして、近距離でしか受信できないようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−114050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の技術は、受信側が上手く受信できない事象が発生することがあり、受信側が確実に情報を受信できないという課題があった。具体的には、送信側の装置は、第三者に傍受されたくない重要なデータを送信する場合に、送信パワーを低くして送信するので、受信側と送信側との位置関係によっては、データが受信側まで届かないことがある。
【0008】
車両内を例にして説明すると、車両前方の車載装置(送信側装置)から送信パワーを低くしてデータを送信し、受信側装置が三列目のシートにいる場合、受信側装置と送信側装置との間の二列目に乗員がいるとその乗員が障害物となり、送信されたデータが受信側装置まで届かない。このように、受信側と送信側との位置関係によっては、データが受信側まで届かないことがあり、受信側が確実に情報を受信できない。
【0009】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することが可能である車載システムおよび車載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、車載装置と移動体通信装置との間で無線通信を行う車載システムであって、前記車載装置と移動体通信装置の少なくとも一方は、情報を送信するアンテナを備え、所定の情報を送信する場合に、受信側の感度特性が良くなるように前記アンテナの指向性を変更する変更手段と、前記変更手段により変更されたアンテナの指向性を用いて、前記所定の情報を送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することが可能である。また、盗聴・傍受されにくく、指向性や電力を制御することによる省電力化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1に係る車載システムの概要を説明するための図である。
【図2】図2は、実施例1に係る車載システムにおける車載装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、情報設定DBに記憶される情報の例を示す図である。
【図4−1】図4−1は、通常時のアンテナ指向性を示した図である。
【図4−2】図4−2は、前後で最大感度となる感度特性を持つアンテナ指向性を示した図である。
【図4−3】図4−3は、特定の方向のみが最大感度となる感度特性を持つアンテナ指向性を示した図である。
【図5】図5は、実施例1に係る車載システムにおける携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、情報設定DBに記憶される情報の例を示す図である。
【図7】図7は、実施例1に係る車載システムの初期化処理の流れを示すシーケンス図である。
【図8】図8は、実施例1に係る車載装置の初期化後の情報送信処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施例1に係る携帯端末の初期化後の情報送信処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る車載システムおよび車載装置の実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本実施例に係る車載システムの概要、車載システムの構成および処理の流れを順に説明し、最後に本実施例に対する種々の変形例を説明する。この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
[車載システムの概要]
最初に、図1を用いて、実施例1に係る車載システムの概要を説明する。図1は、実施例1に係る車載システムの概要を説明するための図である。
【0015】
この車載システムは、車両の各種センサ(例えば、車速センサ、ウインカーセンサなど)やカーナビゲーション装置、オーディオ装置などと接続される車載装置と、車両に乗車した乗員が所持する携帯端末やノートパソコンなどの移動体通信端末とから構成される。この車載システムにおける車載装置と移動体通信端末は、BlueTooth(登録商標)などの無線機能や赤外線通信機能などを備えている。
【0016】
このような車載システムは、車載装置と移動体通信装置との間で無線通信を行うことを概要とするものであり、特に、第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することが可能である。
【0017】
具体的には、実施例1に係る車載システムにおける車載装置または移動体通信端末は、所定の情報を送信する場合に、受信側の感度特性が良くなるようにアンテナの指向性を変更し、変更されたアンテナの指向性を用いて、所定の情報を送信し、所定の情報を送信した後、アンテナの指向性を元に戻す。
【0018】
例えば、図1に示すように、後部座席の乗員が所持する携帯端末が車載装置に所定の情報を送信する場合を例にして説明する。この場合、携帯端末と車載装置とがペアリング処理を実施して既に通信が確立されていると、携帯端末は、ユーザにより選択された所定の情報(例えば、アドレス帳や機器情報などの重要情報)を送信するのに際して、通常のアンテナ指向性(図1の(a))から車載装置側に感度特性が良くなるような指向性(図1の(b))に変更して、当該所定の情報を送信する。
【0019】
また、携帯端末と車載装置との間でペアリング処理を未実施の場合、携帯端末は、ユーザにより選択された送信先や無線機能の自動探索機能により探索された送信先などにより送信先の方向を特定し、特定した送信先の方向に感度特性が良くなるように指向性を変更して、当該所定の情報を送信する。
【0020】
なお、ここでは、携帯端末から車載装置に情報を送信する場合に、アンテナの指向性を変更する例について説明したが、これに限定されるものでなく、車載装置から携帯端末に情報を送信する場合であっても、上記した手法と同様に実施することができる。
【0021】
このように、実施例1に係る車載システムは、受信側の方向にだけ感度特性を良くするようにアンテナの指向性を変更して情報を送信することができる結果、第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することが可能である。
【0022】
[車載システムの構成]
次に、図2〜図6を用いて、図1に示した車載システムの構成を説明する。図2は、実施例1に係る車載システムにおける車載装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
(車載装置の構成)
図2に示すように、車載装置10は、人体通信部11と、走行状態検出部12と、アンテナ13と、無線通信部14と、情報設定DB15と、データ送受信部16と、相手先特定部17と、指向性変更部18とを有する。
【0024】
人体通信部11は、車両内の各シートの備え付けられるセンサを介して、人体に電流を流してデータの送受信を行う。
【0025】
走行状態検出部12は、指向性変更部18と接続され、GPS通信部12aと、車速センサ12bと、ブレーキセンサ12cと、回転数センサ12dと、カーナビ12eとを有し、これらによって車載装置10が搭載される車両の走行状態を検出する。
【0026】
GPS通信部12aは、GPS(Global Positioning System)人工衛星と通信して特定した自車両の位置を指向性変更部18に出力する装置であり、車速センサ12bは、車両のスピードメータなどに接続され、車両のスピード(車速)を検知して指向性変更部18に出力する装置である。
【0027】
ブレーキセンサ12cは、車両のブレーキペダルに接続され、運転者によるブレーキ操作を検出して指向性変更部18に出力する装置であり、回転数センサ12dは、車両のトルク回転数を検出して指向性変更部18に出力する装置であり、カーナビ12eは、ディスプレイなどを有して高精度地図を表示するとともに道路の登坂状態や交通渋滞情報、車両の走行位置を検出して指向性変更部18に出力する装置である。
【0028】
アンテナ13は、無線通信部14や指向性変更部18と接続され、携帯端末などの他の装置と無線通信をするために電波を放射あるいは電波を受信する指向性(電波の放射方向と放射強度)が可変な装置である。具体的には、アンテナ13は、後述する指向性変更部18の指示により、指向性や送信パワー(電波放射パワー)を変更し、データ送受信部16から無線通信部14を介して入力されたデータを送信先に送信する。
【0029】
無線通信部14は、Bluetooth(登録商標)などの無線機能を有するとともに、復調部14aと、変調部14bと、暗号化/復号化部14cとを有し、これらによって、無線通信を実行する。復調部14aは、アンテナ13により受信された情報(データ)を復調して暗号化/復号化部14cに出力し、変調部14bは、データ送受信部16から入力されたデータを変調して暗号化/復号化部14cに出力する。
【0030】
暗号化/復号化部14cは、復調部14aから入力された復調されたデータを復号してデータ送受信部16に出力し、変調部14bから入力された変調されたデータを暗号化した暗号化データを生成し、アンテナ13を介して、生成した暗号化データを送信先に送信する。
【0031】
情報設定DB15は、車載装置10に保持されている情報に対応付けて、それぞれの情報が第三者に傍受されたくない重要な情報であるか否かを記憶するデータベースである。具体的には、情報設定DB15は、図3に示すように、第三者に傍受されたくない重要な情報であるか否かを示す「重要」と、情報の種別を示す「情報の種類」とを対応付けて記憶する。
【0032】
図3の場合、情報設定DB15は、車載装置10が他の装置と接続するための情報を示す「装置情報(例えば、暗号化情報やPINコードなど)」と車載装置10が無線通信を確立した他の装置から受信した「接続機器情報(例えば、暗号化情報やPINコードなど)」とが重要な情報であると記憶している。また、ここで記憶される情報は、ユーザにより任意に設定することができる。なお、図3は、情報設定DBに記憶される情報の例を示す図である。
【0033】
データ送受信部16は、無線通信部14や情報設定DB15と接続され、ユーザにより選択されたデータを車載装置10のメモリなどから取得して送信する。具体的には、データ送受信部16は、ユーザにより選択されたデータを車載装置10のメモリなどから取得し、情報設定DB15を参照して、当該データが重要な情報であるか否かを特定し、特定した結果を指向性変更部18に出力する。また、データ送受信部16は、車載装置10のメモリなどから取得され、ユーザにより選択されたデータを無線通信部14に出力する。また、データ送受信部16は、ユーザにより送信先が指定されている場合には、当該送信先の情報(アドレス情報や通信情報など)を相手先特定部17に出力する。
【0034】
例えば、データ送受信部16は、所定の距離に電波などを発信して、存在する装置を探索する自動探索により新たに探索された携帯端末に対してペアリング処理を実施する場合、新たに探索された携帯端末に対して、無線通信を行うための初期化情報(例えば、暗号化情報やPINコードなど)を送信するとともに、新たに探索された携帯端末から初期化情報を受信する。すると、データ送受信部16は、新たに探索された携帯端末と交換したお互いの初期化情報を用いて、無線通信を確立することにより、以後、無線通信を実施することができる。
【0035】
一方、データ送受信部16は、ペアリング処理などでやり取りされる初期化情報以外の情報を受信した場合、車載装置10のメモリなどに受信した情報を格納する。また、データ送受信部16は、走行状態検出部12により検出された車両の走行状態(例えば、時速など)を無線通信が確立されている携帯端末に所定の契機(例えば、10分に1回)で送信する。これにより、車両内の装置間で、車両の走行状態を共有することができる。また、データ送受信部16は、人体通信部11を介してデータを送信することもできる。
【0036】
相手先特定部17は、無線通信部14や指向性変更部18と接続され、送信先の装置を特定し、特定した装置の方向を指向性変更部18に出力する。具体的には、相手先特定部17は、上記した無線機能の自動探索機能により送信先の方向が特定できた場合には、特定した方向を指向性変更部18に出力し、特定できない場合には、車載装置10の前方が送信先方向であると推定し、推定した方向を指向性変更部18に出力する。
【0037】
指向性変更部18は、所定の情報を送信する場合に、受信側の感度特性が良くなるようにアンテナ13の指向性を変更する。具体的には、指向性変更部18は、相手先特定部17により特定された方向の感度特性が良くなるようにアンテナ13の指向性を変更する。例えば、指向性変更部18は、通常のアンテナ指向性(図1の(a)参照)から車載装置10側に感度特性が良くなるような指向性(図1の(b)参照)に変更して、当該所定の情報を送信する。
【0038】
また、指向性変更部18は、走行状態検出部12により検出された走行状態に応じて、アンテナ13の指向性を変更することもできる。例えば、指向性変更部18は、走行状態検出部12により検出された走行状態が高速走行時(例えば、時速80Km以上)である場合には、盗聴・傍受されにくいことから、図4−1に示すように全方位均一な感度特性を持つ指向性に変更する。また、指向性変更部18は、走行状態検出部12により検出された走行状態が低速走行時(例えば、時速30Km以下)である場合には、盗聴・傍受され易いことから、図4−2に示すように前後で最大感度となる感度特性を持つ指向性に変更する。
【0039】
また、指向性変更部18は、相手先特定部17により送信先の方向が特定された場合には、図4−3に示すように、特定の方向のみが最大感度となる感度特性を持つ指向性に変更することもできる。また、指向性変更部18は、アンテナ13の指向性を変更して、情報(データ)が送信された後は、もとの指向性(図4−1に示すように全方位均一な感度特性を持つ指向性)に変更するようにしてもよい。なお、図4−1は、通常時のアンテナ指向性を示した図であり、図4−2は、前後で最大感度となる感度特性を持つアンテナ指向性を示した図であり、図4−3は、特定の方向のみが最大感度となる感度特性を持つアンテナ指向性を示した図である。
【0040】
(携帯端末の構成)
図5は、実施例1に係る車載システムにおける携帯端末の構成を示すブロック図である。図5に示すように、携帯端末30は、人体通信部31と、アンテナ33と、無線通信部34と、情報設定DB35と、データ送受信部36と、相手先特定部37と、指向性変更部38とを有する。人体通信部31は、携帯端末30内に埋め込まれたセンサを介して、人体に電流を流してデータの送受信を行う。なお、ここで示した各機能部は、図2で説明した車載装置10の各機能部と同様の構成を有するので、詳細な説明は省略する。
【0041】
アンテナ33は、無線通信部34や指向性変更部38と接続され、車載装置10などの他の装置と無線通信をするために電波を放射あるいは受信する指向性(電波の放射方向と放射強度)が可変な装置である。具体的には、アンテナ33は、後述する指向性変更部38の指示により、指向性や送信パワー(電波放射パワー)を変更し、データ送受信部36から無線通信部34を介して入力されたデータを送信先に送信する。
【0042】
無線通信部34は、Bluetooth(登録商標)などの無線機能を有するとともに、復調部34aと、変調部34bと、暗号化/復号化部34cとを有し、これらによって、無線通信を実行する。復調部34aは、アンテナ33により受信された情報(データ)を復調して暗号化/復号化部34cに出力し、変調部34bは、データ送受信部36から入力されたデータを変調して暗号化/復号化部34cに出力する。
【0043】
暗号化/復号化部34cは、復調部34aから入力された復調されたデータを復号してデータ送受信部36に出力し、変調部34bから入力された変調されたデータを暗号化した暗号化データを生成し、アンテナ33を介して、生成した暗号化データを送信先に送信する。
【0044】
情報設定DB35は、携帯端末30に保持されている情報に対応付けて、それぞれの情報が第三者に傍受されたくない重要な情報であるか否かを記憶するデータベースである。具体的には、情報設定DB35は、図6に示すように、第三者に傍受されたくない重要な情報であるか否かを示す「重要」と、情報の種別を示す「情報の種類」とを対応付けて記憶する。
【0045】
図6の場合、情報設定DB35は、携帯端末30が他の装置と接続するための情報を示す「装置情報(例えば、暗号化情報やPINコードなど)」と携帯端末30に記憶されるメールなどの「アドレス情報」とが重要な情報であると記憶している。また、ここで記憶される情報は、ユーザにより任意に設定することができる。なお、図6は、情報設定DBに記憶される情報の例を示す図である。
【0046】
データ送受信部36は、無線通信部34や情報設定DB35と接続され、ユーザにより選択されたデータをメモリなどから取得して送信する。具体的には、データ送受信部36は、ユーザにより選択されたデータをメモリなどから取得し、当該データが重要な情報であるか否かを情報設定DB35を参照して特定し、特定した結果を指向性変更部38に出力する。また、データ送受信部36は、ユーザに選択されたデータを携帯端末30のメモリなどから取得して無線通信部34に出力する。また、データ送受信部36は、ユーザにより送信先が指定されている場合には、当該送信先の情報(アドレス情報や通信情報など)を相手先特定部37に出力する。
【0047】
例えば、データ送受信部36は、自動探索により新たに探索された車載装置10などの他の装置に対してペアリング処理を実施する場合、新たに探索された他の装置に対して、無線通信を行うための初期化情報(例えば、暗号化情報やPINコードなど)を送信するとともに、新たに探索された他の装置から初期化情報を受信する。すると、データ送受信部36は、新たに探索された他の装置と交換したお互いの初期化情報を用いて、無線通信を確立することができる。
【0048】
一方、データ送受信部36は、ペアリング処理などでやり取りされる初期化情報以外の情報を受信した場合、メモリなどに受信した情報を格納する。また、データ送受信部36は、車載装置10から車両の走行状態(例えば、時速など)を所定の契機(例えば、10分に1回)で受信し、受信した情報を指向性変更部38に出力する。また、データ送受信部36は、人体通信部31を介してデータを送信することもできる。
【0049】
相手先特定部37は、無線通信部34や指向性変更部38と接続され、送信先の装置を特定し、特定した装置の方向を指向性変更部38に出力する。具体的には、相手先特定部37は、無線機能の自動探索機能により送信先の方向が特定できた場合には、特定した方向を指向性変更部38に出力し、特定できない場合には、携帯端末30の前方(例えば、ユーザが携帯端末30を持った場合は、携帯端末の後ろ側)が送信先方向であると推定し、推定した方向を指向性変更部38に出力する。
【0050】
指向性変更部38は、所定の情報を送信する場合にのみ、受信側の感度特性が良くなるようにアンテナ33の指向性を変更する。具体的には、指向性変更部38は、相手先特定部37により特定された方向の感度特性が良くなるようにアンテナ13の指向性を変更する。なお、指向性の変更例としては、車載装置10の指向性変更部18と同様、図4に示すように、全方位均一な感度特性を持つ指向性に変更したり、前後で最大感度となる感度特性を持つ指向性に変更したり、特定の方向のみが最大感度となる感度特性を持つ指向性に変更したりすることができる。また、指向性変更部38は、アンテナ33の指向性を変更して、情報(データ)が送信された後は、もとの指向性に変更するようにしてもよい。
【0051】
[車載システムによる処理]
次に、図7〜図9を用いて、車載システムによる処理を説明する。図7は、実施例1に係る車載システムの初期化処理の流れを示すシーケンス図であり、図8は、実施例1に係る車載装置の初期化後の情報送信処理の流れを示すフローチャートであり、図9は、実施例1に係る携帯端末の初期化後の情報送信処理の流れを示すフローチャートである。
【0052】
(車載システムの初期化処理の流れ)
図7に示すように、携帯端末30は、通信モジュールを起動すると(ステップS101)、車載装置10では、新たな接続対象機器を検出する(ステップS102)。
【0053】
車載装置10は、検出した装置情報などから新たな接続対象装置や方向を特定し(ステップS103)、自装置の初期化情報を生成する(ステップS104)。
【0054】
その後、車載装置10は、車両の走行状態を検出し(ステップS105)、検出した走行状態およびステップS103で検出した方向に基づいて、アンテナ13の指向性および送信パワーを制御して、生成した自装置の初期化情報を送信する(ステップS106)。なお、車載装置10は、初期化情報送信後、指向性および送信パワーを元に戻す。
【0055】
そして、携帯端末30は、車載装置10の初期化情報を取得して自装置内に登録・格納し(ステップS107)、車載装置10を特定・認識する(ステップS108)。続いて、携帯端末30は、自装置の初期化情報を生成して(ステップS109)、特定した車載装置の方向の感度特性が良くなるように、アンテナ33の指向性および送信パワーを制御して、生成した自装置の初期化情報を送信する(ステップS110)。なお、携帯端末30は、初期化情報送信後、指向性および送信パワーを元に戻す。
【0056】
その後、車載装置10は、携帯端末30の初期化情報を取得して自装置内に登録・格納する(ステップS111)。こうすることにより、車載装置10は携帯端末30を特定・認識する。この結果、車載装置10と携帯端末30との間で、お互いの初期化情報が交換され、無線通信が確立する(ステップS112とステップS113)。
【0057】
(車載装置の初期化後の情報送信処理の流れ)
図8に示すように、車載装置10は、ユーザによりデータ送信処理開始が指示されると(ステップS201肯定)、送信対象データが重要データであるか否かを情報設定DB15を参照して判定する(ステップS202)。
【0058】
そして、車載装置10は、送信対象データが重要データである場合(ステップS202肯定)、ユーザの指示や自動探索により送信先を特定し(ステップS203)、車両の走行状態を検出する(ステップS204)。
【0059】
その後、車載装置10は、特定した送信先と検出した走行状態に基づいて、アンテナ13の指向性および送信パワーを制御して(ステップS205)、送信対象データを送信先に送信する(ステップS206)。
【0060】
そして、車載装置10は、ユーザにより指定されたデータが送信完了するまで(ステップS207否定)、ステップS206とステップS207を繰り返し、ユーザにより指定されたデータが送信完了すると(ステップS207肯定)、アンテナ13の指向性および送信パワーを元に戻して処理を終了する(ステップS208)。
【0061】
一方、送信対象データが重要データでない場合(ステップS202否定)、車載装置10は、アンテナ13の指向性および送信パワーを変更することなく、現状の状態で送信対象データを送信先に送信する(ステップS209)。
【0062】
(携帯端末の初期化後の情報送信処理の流れ)
図9に示すように、携帯端末30は、ユーザによりデータ送信処理開始が指示されると(ステップS301肯定)、送信対象データが重要データであるか否かを情報設定DB35を参照して判定する(ステップS302)。
【0063】
そして、携帯端末30は、送信対象データが重要データである場合(ステップS302肯定)、ユーザの指示や自動探索により送信先を特定する(ステップS303)。
【0064】
続いて、携帯端末30は、車載装置10から車両の走行状態を受信している場合には(ステップS304肯定)、特定した送信先と検出した走行状態に基づいて、アンテナ33の指向性および送信パワーを制御して(ステップS305)、送信対象データを送信先に送信する(ステップS307)。
【0065】
一方、携帯端末30は、車載装置10から車両の走行状態を受信していない場合には(ステップS304否定)、特定した送信先の方向のみに基づいて、アンテナ33の指向性および送信パワーを制御して(ステップS306)、送信対象データを送信先に送信する(ステップS307)。
【0066】
そして、携帯端末30は、ユーザにより指定されたデータが送信完了するまで(ステップS308否定)、ステップS307とステップS308を繰り返し、ユーザにより指定されたデータが送信完了すると(ステップS308肯定)、アンテナ33の指向性および送信パワーを元に戻して処理を終了する(ステップS309)。
【0067】
一方、送信対象データが重要データでない場合(ステップS302否定)、携帯端末30は、アンテナ33の指向性および送信パワーを変更することなく、現状の状態で送信対象データを送信先に送信する(ステップS310)。
【0068】
[実施例1による効果]
このように、実施例1によれば、所定の情報(初期化情報や重要と指定された情報など)を送信する場合に、受信側の感度特性が良くなるようにアンテナの指向性を変更し、変更されたアンテナの指向性を用いて、所定の情報を送信することができる。その結果、第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することが可能である。また、盗聴・傍受されにくく、指向性や電力を制御することによる省電力化が期待できる。
【0069】
また、実施例1によれば、検出された走行状態に応じて、アンテナの指向性を変更することができる。その結果、高速走行時と低速走行時とで傍受の危険性がない手法でデータを送信することができる。また、高速道路を走行している間など、頻繁に指向性を変更するための制御を実施することがなく、省電力化が期待できる。
【0070】
また、実施例1によれば、検出された走行状態に応じて、所定の情報を送信する送信出力を変更することができる。その結果、傍受の危険が高い低速走行時には送信パワーを抑えて送信するので、第三者による傍受を防止しつつ、より省電力化が期待できる。
【実施例2】
【0071】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下に示すように、(1)通信手法、(2)伝送速度、(3)システム構成等、(4)プログラムにそれぞれ区分けして異なる実施例を説明する。
【0072】
(1)通信手法
例えば、実施例1では、BlueTooth(登録商標)などの無線通信におけるアンテナの指向性を変更する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、赤外線や非接触型ICカードにも本願が開示する手法を適用することができる。
【0073】
具体的には、赤外線に適用した場合、車両が低速走行していると赤外線の放射範囲を狭く、また、赤外線の受信範囲を狭くすることで、近距離同士の赤外線通信を行うこととなり、第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することが可能である。また、非接触型ICカードでも同様に、車両が低速走行していると電磁誘導の放射範囲を狭く、また、電磁誘導の受信範囲を狭くすることで、近距離同士の通信を行うこととなり、第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することが可能である。
【0074】
(2)伝送速度
また、実施例1では、車両の走行状態に応じて、アンテナの指向性や送信パワーを制御する場合について説明したが、検出された走行状態に応じて、伝送速度を変更することもできる。例えば、高速走行時は、盗聴・傍受されにくいので、送信パワーを大きくし、SN比は劣るが高速伝送が可能なQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)でデータを送信する。また、低速走行時は、盗聴・傍受され易いので、送信パワーを小さくし、SN比の良い低速なBPSK(Binary Phase Shift Keying)でデータを送信する。このようにすることで、SN比を考慮しつつ、安全にデータを送信することができる。
【0075】
また、車載装置10は、カーナビ12eやGPS通信部12a等での相手先の装置の位置を取得し、相手先の位置と自装置との距離に応じて、指向性、送信パワー、伝送速度を変更するようにしてもよい。
【0076】
(3)システム構成等
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報(例えば、図3や図6など)については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0077】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合(例えば、車載装置のデータ送信部と相手先特定部とを統合するなど)して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0078】
(4)プログラム
なお、本実施例で説明した無線通信方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明に係る車載システムおよび車載装置は、車載装置と移動体通信装置との間で無線通信を行うことに有用であり、特に、第三者による傍受を防止しつつ、受信側が確実にデータを受信することに適する。
【符号の説明】
【0080】
10 車載装置
11 人体通信部
12 走行状態検出部
12a GPS通信部
12b 車速センサ
12c ブレーキセンサ
12d 回転数センサ
12e カーナビ
13 アンテナ
14 無線通信部
14a 復調部
14b 変調部
14c 暗号化/復号化部
15 情報設定DB
16 データ送受信部
17 相手先特定部
18 指向性変更部
30 携帯端末
31 人体通信部
33 アンテナ
34 無線通信部
34a 復調部
34b 変調部
34c 暗号化/復号化部
35 情報設定DB
36 データ送受信部
37 相手先特定部
38 指向性変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置と移動体通信装置との間で無線通信を行う車載システムであって、
前記車載装置と移動体通信装置の少なくとも一方は、情報を送信するアンテナを備え、
所定の情報を送信する場合に、受信側の感度特性が良くなるように前記アンテナの指向性を変更する変更手段と、
前記変更手段により変更されたアンテナの指向性を用いて、前記所定の情報を送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とする車載システム。
【請求項2】
当該車載システムが搭載された車両の走行状態を検出する走行状態検出手段をさらに備え、
前記変更手段は、前記走行状態検出手段により検出された走行状態に応じて、前記アンテナの指向性を変更することを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項3】
前記変更手段は、前記走行状態検出手段により検出された走行状態に応じて、前記所定の情報を送信する送信出力、または、前記所定の情報を送信する伝送速度を変更することを特徴とする請求項2に記載の車載システム。
【請求項4】
移動体通信装置との間で無線通信を行う車載装置であって、
前記移動体通信装置に情報を送信するアンテナを備え、
所定の情報を前記移動体通信装置に送信する場合にのみ、前記移動体通信装置の方向に感度特性が良くなるようにアンテナの指向性を変更する変更手段と、
前記変更手段により変更されたアンテナの指向性を用いて、前記所定の情報を移動体通信装置に送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−212776(P2010−212776A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53789(P2009−53789)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】