説明

車載型映像記録装置

【課題】複数のカメラからの映像データを小規模のメモリカードに記録することができるとともにコストが安い車載型映像記録装置を提供する。
【解決手段】車載型映像記録装置は、複数のカメラが撮影した映像信号をそれぞれデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路と、上記映像信号A/D回路から出力される上記映像データをそれぞれフレーム単位で記憶するフレームメモリ回路と、上記フレームメモリ回路のいずれかを制御して上記フレームメモリ回路から上記映像データを時系列に前後して出力するように制御する制御部と、上記フレームメモリ回路のいずれかから出力されるフレーム単位の映像データを圧縮する映像データ圧縮回路と、上記圧縮された映像データをメモリカードに記録するデジタル記録部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載される車載型映像記録装置に関し、特に捜査警備用車両に搭載される車載型映像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車載型映像記録装置では、CCDカメラからの映像信号は画像信号処理部に入力される。画像信号処理部は、デジタル映像信号を不揮発画像メモリに出力するとともに、作動モードによっては不揮発画像メモリ内のデータを入力し映像出力信号として外部表示機器に出力する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−154095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パトカーなど捜査警備用車両には現場の証拠として周囲の状況を多方面から撮影し記録するために、複数台のカメラを備え、各カメラが撮影した映像データを記録する車載型映像記録装置が求められている。しかし、各カメラが撮影した映像をそのまま不揮発画像メモリに記録しようとすると不揮発画像メモリの容量が膨大になってしまう。そこで、映像データを圧縮してからメモリカードに記録しようとすると圧縮する映像データの量が多くて圧縮する機能を実行するコンピュータの処理能力を高速しなければならずコストが高くなってしまうという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、複数のカメラからの映像データを小規模のメモリカードに記録することができるとともにコストが安い車載型映像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車載型映像記録装置は、複数のカメラが撮影した映像信号をそれぞれデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路と、上記映像信号A/D回路から出力される上記映像データをそれぞれフレーム単位で記憶するフレームメモリ回路と、上記フレームメモリ回路のいずれかを制御して上記フレームメモリ回路から上記映像データを時系列に前後して出力するように制御する制御部と、上記フレームメモリ回路のいずれかから出力されるフレーム単位の映像データを圧縮する映像データ圧縮回路と、上記圧縮された映像データをメモリカードに記録するデジタル記録部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る車載型映像記録装置の効果は、車両に搭載される複数のカメラが撮影した映像から所望のフレームレートになるように間引いてから圧縮し且つ書庫化してメモリカードに記録するので、圧縮を実行するコンピュータの処理能力が低くても良く、且つメモリカードとしては記憶容量の小さなものであっても良いということである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置が搭載されたパトカーの様子を示す図である。図2は、この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置の構成を示す構成図である。
この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置1が搭載されたパトカーには、図1に示すように、4台のカメラ2a、2b、2c、2dがフロントガラスの内側からパトカーの進行方向に向けられている。なお、このパトカーには4台のカメラ2a、2b、2c、2dが搭載されたとして説明するが、複数のカメラが搭載されていれば本発明を適用することができる。
この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置1は、4台のカメラ2a、2b、2c、2dが撮影した映像信号をそれぞれ取り込み、デジタルの映像データに変換する4つの映像信号A/D回路3a、3b、3c、3d、各映像信号A/D回路3a、3b、3c、3dから出力されるデジタルの映像データをフレーム単位で記憶する4つのフレームメモリ回路4a、4b、4c、4d、4つのフレームメモリ回路4a、4b、4c、4dのいずれかから出力されるフレーム単位のデジタルの映像データを圧縮する映像データ圧縮回路5、コンパクトフラッシュ(登録商標)の規格のメモリカード6のインターフェースを有するとともにメモリカード6が挿入されたときメモリカード6に記録されているフレームレートを設定するための設定値を読み出し且つ映像データ圧縮回路5から出力される圧縮されたフレーム単位の映像データをメモリカード6に記録するデジタル記録部7、デジタル記録部7で読み取った設定値に基づいて各フレームメモリ回路4a、4b、4c、4dから出力するフレームレートを設定する記録フレームレート設定部8、および、設定されたフレームレートに従ってフレームメモリ回路4a、4b、4c、4dを制御する制御部9を有する。
【0009】
次に、具体的な例を示して車載型映像記録装置1の動作について説明する。
例えばパトカーのエンジンが駆動されているときまたはパトライトが点灯しているとき各カメラ2a、2b、2c、2dからは1秒間に30フレームのアナログの映像信号が入力されている。
各映像信号A/D回路3a、3b、3c、3dでは、アナログの映像信号をデジタルの映像信号に変換する。すなわち、図3に示すように、1秒/30フレーム=0.033秒周期でフレーム単位でのデジタルの映像データが出力される。
各フレームメモリ回路4a、4b、4c、4dでは、デジタルの映像信号をフレーム単位で一旦記憶する。すなわち、0.033秒周期で各フレームメモリ回路4a、4b、4c、4dに記憶されているフレーム単位のデジタルの映像データが更新されていく。
【0010】
メモリカード6には設定値として数値7.5が記録されている。そして、メモリカード6をデジタル記録部7の図示しないスロットに挿入すると、デジタル記録部7はメモリカード6から設定値7.5を読み出し、記録フレームレート設定部8に設定値7.5を送る。
記録フレームレート設定部8は、設定値7.5に基づき各フレームメモリ回路4a、4b、4c、4dからフレームレート7.5fpsで出力するように制御部9に指令する。
制御部9は、各フレームメモリ回路4a、4b、4c、4dからのデジタルの映像データが重畳しないように、図4に示すように、0.033秒ずつ出力するタイミングをずらして各フレームメモリ回路4a、4b、4c、4dにトリガーを入力する。すると、フレームメモリ回路4a、4b、4c、4dから制御部9からのトリガーにより記憶してあるデジタルの映像信号をフレーム単位で図5に示すように出力する。
【0011】
このフレーム単位のデジタルの映像データa、b、c、d、・・・は、JPEG2000という方式で圧縮されてJPEG2000ファイルa.jp2、b.jp2、c.jp2、d.jp2、・・・に変換される。このJPEG2000ファイルa.jp2、b.jp2、c.jp2、d.jp2、・・・は、デジタル記録部7に送られる。
デジタル記録部7では、このJPEG2000ファイルa.jp2、b.jp2、c.jp2、d.jp2、・・・から同時刻の映像とみなすJPEG2000ファイルに対して書庫を生成してメタデータを付加してメモリカード6に図7のように記録する。なお、この実施の形態1においては、4つのフレームメモリ回路4a、4b、4c、4dから順に映像データa、b、c、d、・・・を映像データ圧縮回路5に送り出すので、各フレームメモリ回路4a、4b、4c、4dから送り出される1つずつの映像データを同時刻の映像とみなす。例えばa、b、c、dを同時刻の映像、a、b、c、dを同時刻の映像とみなす。
そして、映像データa、b、c、dが記録された書庫のメタデータとして、JPEG2000ファイルa.jp2が作成された時刻で何番目のフレームであるかをメタデータとする。例えば2007年1月10日午前1時20分15秒の1番目のフレームであれば、2007年1月10日午前1時20分15秒の1番目のデータをこの書庫のメタデータとして記録する。そのため、映像データa、b、c、dは2007年1月10日午前1時20分15秒の1番目の映像データであるとみなす。
メモリカード6に新たに書庫を生成できなくなったときには、最初に生成した書庫にJPEG2000ファイルを記録する。
【0012】
次に、このように映像データが記録されたメモリカード6を車載型映像記録装置1から抜き取り、メモリカード6に記録された映像データを再生するアプリケーションが実装されたパソコン11で映像を確認する手順について説明する。
パソコン11に実装されているアプリケーションでは、図示しないPCカードスロットにメモリカード6を挿入すると、メモリカード6に記録されている書庫のメタデータを読み出し、図示しないモニタに表示する。図示しないマウスを操作してカーソルを所望の書庫のメタデータに合わせてクリックすると、当該書庫に記録されている4つのJPEG2000ファイルに展開される。そして、展開された4つのJPEG2000ファイルをそれぞれ解凍して4個の映像データに復元する。そして、4つの映像データを用いてモニタ上に4つの映像が並べられて再生される。
【0013】
この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置1では、車両に搭載される4つのカメラ2a、2b、2c、2dが撮影した映像から所望のフレームレートになるように間引いてから圧縮し且つ書庫化してメモリカード6に記録するので、圧縮を実行するコンピュータの処理能力が低くても良く、且つメモリカード6としては記憶容量の小さなものであっても良い。
また、同時刻とみなせる4つのカメラ2a、2b、2c、2dが撮影した映像を書庫化してメモリカード6に記録するので、個々の映像が撮影された時刻などを調べなくとも時刻を特定することができ、再生の手順が簡略となる。
また、メモリカード6に予め所望のフレームレートになるようにするための設定値が記録され、メモリカード6をデジタル記録部7に挿入されたときその設定値が読み取られて使用されるので、車載型映像記録装置1から操作ボタンを省略することができる。
【0014】
なお、この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置では、4つのカメラ2a、2b、2c、2dからの映像信号に対応することができるような構成となっているが、複数のカメラに対応するものであれば、カメラの数には限りがない。
また、デジタルの映像データをJPEG2000という方式で圧縮しているが、必ずしもこの方式に限るものではなく、JPEG、GIFなどいずれの方式も適用できる。但し、JPEG2000という方式を用いると高い圧縮率にも関わらず比較的復元画像が良好である。
また、カメラ2a、2b、2c、2dがNTSC方式の映像信号を発生しているが、必ずしもこれに限るものではなく、PAL方式の映像信号などであっても良い。
【0015】
また、メモリカード6としてコンパクトフラッシュ(登録商標)の規格のメモリカード6に記録する例を説明したが、必ずしもこの規格のメモリカード6に限るものではなく、SDメモリカード(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、メモリスティック(登録商標)などいずれの規格のメモリカード6を適用しても良い。
【0016】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2に係る車載型映像記録装置の構成を示す構成図である。
この発明の実施の形態2に係る車載型映像記録装置1Bは、図9に示すように、この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置1に暗号化回路12を追加したことが異なり、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
暗号化回路12は、映像データ圧縮回路5から出力されるJPEG2000ファイルを例えば暗号アルゴリズムMISTYで暗号化して暗号化JPEG2000ファイルをデジタル記録部7に出力する。デジタル記録部7は、この発明の実施の形態1に係るデジタル記録部7と同様に、同時刻の映像とみなせる4つの暗号化JPEG2000ファイルを書庫化してメモリカード6に記録する。
【0017】
次に、このように暗号化JPEG2000ファイルが記録されたメモリカード6を車載型映像記録装置1Bから抜き取り、メモリカード6に記録された映像データを再生するアプリケーションが実装されたパソコン11で映像を確認する手順について説明する。
パソコン11に実装されているアプリケーションでは、図示しないPCカードスロットにメモリカード6を挿入すると、メモリカード6に記録されている書庫のメタデータを読み出し、図示しないモニタに表示する。図示しないマウスを操作してカーソルを所望の書庫のメタデータに合わせてクリックすると、当該書庫に記録されている4つの暗号化JPEG2000ファイルに展開される。そして、展開された4つの暗号化JPEG2000ファイルを復号化して4つのJPEG2000ファイルを得る。それから、JPEG2000ファイルをそれぞれ解凍して4個の映像データに復元する。そして、4つの映像データを用いてモニタ上に4つの映像が並べられて再生される。
【0018】
このようにJPEG2000ファイルを暗号化してからメモリカード6に記録されるので、記録されたJPEG2000ファイルの証拠能力が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置が搭載されたパトカーの様子を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る車載型映像記録装置の構成を示す構成図である。
【図3】カメラから入力される映像信号列である。
【図4】フレームメモリ回路に入力されるトリガーの時系列データである。
【図5】映像データ圧縮回路に入力される映像データ列である。
【図6】映像データ圧縮回路から出力されるJPEG2000ファイル列である。
【図7】メモリカードに設けられた書庫の様子を示す図である。
【図8】4つのカメラが撮影した映像が並列に表示されたパソコンのモニタ画面である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る車載型映像記録装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0020】
1、1B 車載型映像記録装置、2a〜2d カメラ、3a〜3d 映像信号A/D回路、4a〜4d フレームメモリ回路、5 映像データ圧縮回路、6 メモリカード、7 デジタル記録部、8 記録フレームレート設定部、9 制御部、11 パソコン、12 暗号化回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカメラが撮影した映像信号をそれぞれデジタルの映像データに変換する映像信号A/D回路と、
上記映像信号A/D回路から出力される上記映像データをそれぞれフレーム単位で記憶するフレームメモリ回路と、
上記フレームメモリ回路のいずれかを制御して上記フレームメモリ回路から上記映像データを時系列に前後して出力するように制御する制御部と、
上記フレームメモリ回路のいずれかから出力されるフレーム単位の映像データを圧縮する映像データ圧縮回路と、
上記圧縮された映像データをメモリカードに記録するデジタル記録部と、
を備えることを特徴とする車載型映像記録装置。
【請求項2】
上記デジタル記録部は、同時刻とみなす上記圧縮された映像データを書庫化して上記メモリカードに記録することを特徴とする請求項1に記載の車載型映像記録装置。
【請求項3】
予め定めた設定値に基づいて各上記フレームメモリ回路から出力するフレームレートを設定する記録フレームレート設定部を備え、
上記制御部は、上記フレームレートに従って各上記フレームメモリ回路から上記映像データを時系列に前後して出力するように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車載型映像記録装置。
【請求項4】
上記デジタル記録部は、上記メモリカードに記録されているフレームレートを設定するための設定値を読み出して上記記録フレームレート設定部に送ることを特徴とする請求項3に記載の車載型映像記録装置。
【請求項5】
上記デジタル記録部は、上記圧縮された映像データを暗号化して上記メモリカードに記録することを特徴とする請求項1に記載の車載型映像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−302621(P2009−302621A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151536(P2008−151536)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】