説明

車載機器自動調整システム

【課題】外部環境に応じた調整がなされる車載機器を、その外部環境に応じた調整を自動的に行うことができる車載機器自動調整システムを提供する。
【解決手段】車両の外部環境の事象を検出する雨滴センサ4と、ユーザの操作によってワイパ装置3の運転の調整が行われたとき、その調整内容と雨滴センサ4により検出された雨量とを関連付けてデータベース5に記憶しておき、データベース5の記憶内容に基づき、雨滴センサ4により検出された雨量に応じたワイパ装置3の運転内容をECU1により演算し、その演算された運転内容となるようにワイパ装置3を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンなどの車載機器の運転調整が車両の外部環境に応じて自動的になされるようにした車載機器自動調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載機器自動調整システムとしては、特許文献1に示されたものがある。これは、ユーザの身体的特徴に基づいて設定が行われる機器、例えばシートにおいて、ユーザがシート位置を設定すると、そのシートの設定情報を車両の車種情報と共にデータセンタに送信する。データセンタでは、受信した設定情報と当該車種の構造情報に基づき、設定されたシート位置を、アクセルペダルの位置を基準にした3次元座標軸の座標データに変換して記憶する。ユーザが他の種類の車両に乗る場合、当該車両の車種情報をデータセンタに送信すると、データセンタでは、今回乗車する車種の構造情報に基づいた3次元座標軸の座標位置を調べ、記憶したシートの座標位置に最も一致度合いの高い座標位置を送信する。これにより、車種が違っても、シート位置がユーザの好みの位置に自動調整される、というものである。
【特許文献1】特開2000−22599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両には、外部環境に応じた調整を必要とする機器が搭載されている。例えばエアコンにあっては、気温、湿度、晴れか曇りかの別、日射量などに応じて設定温度や吹き出し風量などを調整する必要がある。このように気温などの外部環境に応じた調整を必要とする車載機器にあって、その自動調整については、上記特許文献1に開示された技術で対応することはできない。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、外部環境に応じた調整がなされるべき車載機器に対し、その外部環境に応じた調整を自動的に行うことができる車載機器自動調整システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の車載機器自動調整システムでは、車両の外部環境の事象を検出するセンサと、ユーザの操作によって車載機器の調整が行われたとき、その調整内容とセンサにより検出された外部環境の事象とを関連付けて記憶するデータベースとを設け、そして、外部環境の事象をセンサにより検出した外部環境の事象に応じた車載機器の調整内容を、車載機器の自動調整を行う場合、センサによって検出した外部環境の事象に応じた車載機器の調整内容を、前記データベースの記憶内容に基づいて求め、その求めた調整内容となるように車載機器を制御する。このため、車載機器を外部環境に適した状態に自動調整することが可能となる。
【0006】
請求項3記載の車載機器自動調整システムでは、データベースが車両の外部のデータセンタに設けられているので、データセンタから調整内容の情報を取得することによって、車両が違っても車載機器の調整を自動的に行うことができる。
請求項5記載の車載機器自動調整システムでは、データベースの記憶内容と、センサにより検出された外部環境の事象とに基づいて車載機器の調整内容を演算する演算手段がデータセンタに設けられているので、データセンタから車両へ送信すべきデータ量が少なくて済む。
【0007】
請求項2,4,6記載の車載機器自動調整システムでは、車両には、運転者を識別する運転者識別手段が設けられ、データベースには、運転者と車載機器の調整内容と外部環境の事象とが関連付けて記憶されているので、車載機器を、運転者と外部環境の事象の両方に適した状態に自動調整することができる。従って、1台の車両を複数人で使用する場合に、それぞれの運転者に適した調整内容に車載機器を制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、本発明を車両のウインドシールドワイパの動作を自動調整する場合に適用した一実施形態につき図1および図2を参照しながら説明する。図1に示すように、車両には、ECU(Electronic Control Unit)1に操作手段としての操作部2、車載機器としてのワイパ装置3、センサとしての雨滴センサ4、データベース5を接続してなるワイパ動作自動調整システム6が設けられている。
【0009】
上記ECU1は、マイクロコンピュータを主体に構成され、車載機器自動調整システムとしてのワイパ動作自動調整システム6の全体を統括制御する。操作部2は、メカニカルスイッチなどから構成され、運転するユーザのID番号の入力、ワイパ装置3の間欠運転および連続運転の選択、間欠運転の場合のインターバル時間の調整、連続運転の場合のワイパ速度の調整といったワイパ動作の調整などを手動にて行うためのものである。
【0010】
ワイパ装置3は、ウインドシールド(フロントウインドウガラス)を清掃するワイパブレード(図示せず)を動作させるための電動源としてのワイパモータ7、このワイパモータ7を制御する電動制御手段としてのモータ制御部8から構成されている。雨滴センサ4は、車両の外部環境の事象のうち雨滴を検出するもので、雨滴検出により、雨天であることに併せて、雨量も検出できるようになっている。データベース5は、運転者のID番号(運転者情報)、雨量、設定されたワイパ動作調整内容を互いに関連付けて記憶する。
【0011】
次に上記のように構成されたワイパ動作自動調整システム6の作用を図2に示すフローチャートをも参照しながら説明する。車両のエンジンを始動させるために、図示しないロータリ式キーシリンダスイッチ装置を操作すると、スタートスイッチがオンされてエンジンが始動すると共に、アクセサリ(Acc)スイッチがオンされてワイパ動作自動調整システム6に電源が投入される。この電源投入により、ワイパ動作自動調整システム6のECU1が図2のフローチャートを実行し始める。
【0012】
Accスイッチがオンされた後、運転者が操作部2を操作して自身のID番号を入力する。すると、ECU1は、そのID番号を取得する(ステップS1:運転者識別手段)。次に、ECU1は、雨滴センサ4の検出出力を取得して降雨の有無を判断する(ステップS2、S3)。降雨があったとすると、ECU1は、ステップS3で「YES」と判断し、操作部2によってワイパ動作を調整する操作が行われたか否かを判断する(ステップS4)。
【0013】
車両を購入後、間もない時期では、データベース5に格納されているデータがなく、或いはあってもその量が少ないため、ECU1によるワイパ動作の自動調整は困難である。このようなときには、ワイパ動作の自動調整は行われない(ステップS4で「NO」、ステップS9、ステップS10で「NO」、ステップS8で「NO」、ステップS2、ステップS3で「YES」の繰り返し)。
【0014】
そこで、車両購入当初は、運転者が操作部2を操作してワイパ動作の調整を行う。すると、ECU1は、その操作部2により設定されたワイパ動作の調整内容を取得し、当該調整内容をワイパ装置3のモータ制御部8に運転指令として送る(ステップS4で「YES」、ステップS5)。これにより、ワイパモータ7の運転がモータ制御部8によって制御され、ワイパ装置3が操作部2により設定された調整内容の通りに運転される(ステップS6)。次いで、ECU1は、操作部2によるワイパ動作の調整内容を、ステップS1で取得した運転者ID番号およびステップS2で取得した雨滴センサ4の検出値(雨量)と関連付けてデータベース5に格納する(ステップS7)。
【0015】
以上のような手動操作によるワイパ動作の調整が行われると、その都度、その調整内容、雨滴センサ4の検出値および運転者ID番号が関連付けられてデータベース5に格納される。そして、データベース5のデータ蓄積量がある程度多くなると、ワイパ動作を自動で調整することが可能となる。もちろん、ワイパ動作の自動調整が可能になった後であっても、操作部2による手動調整が行われると、その都度、その自動調整の内容が運転者ID番号および雨滴センサ4の検出値と共にデータベース5に格納される。
【0016】
さて、雨が降り出したことが雨滴センサ4により検出されたとき、操作部2による操作がなければ、ECU1は、ステップS3で「YES」、ステップS4で「NO」と判断してステップS9に移行する。ステップS9において、ECU1は、データベース5に記憶されているデータのうち、現在の運転者のID番号に関連付けられて記憶されている雨滴センサ4の検出値(以下、単に雨量という場合がある。)とワイパ動作調整内容のデータをダウンロードする。そして、ダウンロードするデータがなく、あっても少ないときには、ECU1は、前述のようにステップS10で「NO」となってステップS2に戻る。
【0017】
データベース5にある程度のデータが蓄積されていれば、ECU1は、ステップS10で「YES」と判断してステップS11に移行し、ステップS9でデータベース5からダウンロードした現在の運転者についてのデータから、ステップS2で取得した雨量に対応するワイパ動作の調整内容を選択し(調整内容設定手段)、この動作調整内容をワイパ制御部8に送る。これにより、ワイパモータ7の運転が調整制御手段としてのモータ制御部8により制御されてワイパ装置3がECU1により自動設定された通りの調整内容にて動作する(ステップS12)。そして、このワイパ装置3の運転中に雨量が変化すれば、その雨量を雨滴センサ4が検出し、この雨量に応じたワイパ装置3の動作調整内容をECU1が自動的に設定してその調整内容によりワイパ装置3が運転されるものである。
【0018】
なお、データベース5に格納されたデータは、ある雨量のときある動作調整内容という関係で格納されているので、必ずしも雨滴センサ4により検出された雨量に対応する調整内容がデータベース5に存在するとは限らない。このときには、ECU1は、データベース5に格納されている雨量のうち、雨滴センサ4により検出された雨量の前後の雨量を選択し、その選択した2つの雨量に対応する2つの調整内容に基づいて、雨滴センサ4により検出された雨量に対応する調整内容を比例配分の演算によって求めるように構成されている。
【0019】
このように本実施形態によれば、操作部2によってワイパ装置3の動作が調整されると、その都度、雨量とワイパ動作の調整内容との関係をデータベース5に記憶させるので、車両を運転すればするほど、雨量とワイパ動作の調整内容との関係のデータがより細かく記憶されるようになる。このため、どのような雨量のとき、どのような動作内容でワイパ装置3が運転されるかを統計的にまとめてゆくことが可能で、換言すれば、運転者の一人一人について、雨量に応じた好みのワイパ動作を学習してゆくようになるので、運転者にとって快適と感ずる調整内容にてワイパ装置3を動作させることができるようになる。
【0020】
(第2の実施形態)
図3および図4は本発明の第2の実施形態を示す。この実施形態が前述の第1の実施形態と異なるところは、ワイパ装置3の動作の調整内容を自動的に設定するためのデータを車両ではなく、外部のデータセンタに格納するようにしたところにある。
即ち、図3に示すように、車両のECU1には、車両側通信手段としての移動通信機9が搭載されている。この移動通信機9は、無線により通信ネットワーク10に接続可能で、その通信ネットワーク10を介してデータセンタ11に接続可能となっている。データセンタ11には、センタ側通信手段としての通信装置12、データベース13およびデータセンタ11全体を統括制御する制御装置14が設けられている。
【0021】
この第2の実施形態の作用を図4のフローチャーに基づいて説明する。
図示しないロータリ式キーシリンダスイッチ装置の操作によりワイパ動作自動調整システム6に電源が投入されると、ワイパ動作自動調整システム6のECU1が図4のフローチャートを実行し始める。
【0022】
ワイパ動作自動調整システム6の電源投入後、運転者が操作部2を操作して自身のID番号を入力すると、ECU1は、そのID番号を取得する(ステップA1)。次に、ECU1は、雨滴センサ4の検出値を取得して雨滴(降雨)の有無を判断する(ステップA2、A3)。降雨があったとすると、ECU1は、ステップA3で「YES」と判断してステップA4に移行し、操作部2によってワイパ動作を調整する操作が行われたか否かを判断する。
【0023】
運転者が操作部2を操作してワイパ動作の調整操作を行うと(ステップA4で「YES」)、ECU1は、その操作部2により手動設定されたワイパ動作調整内容を取得する(ステップA5)。そして、ECU1は、手動操作によるワイパ動作調整内容をワイパ装置3のモータ制御部8に運転指令として送り、これによりワイパモータ7の運転がモータ制御部8により制御されてワイパ装置3が操作部2により設定された内容の通りに調整内容にて動作する(ステップA6)。次に、ECU1は、手動操作によるワイパ動作調整内容を、ステップA1で取得した運転者ID番号、ステップA2で取得した雨滴センサ4の検出値(雨量)と共に移動通信機9からデータセンタ11に送信する(ステップA7)。
【0024】
すると、データセンタ11の通信装置12がワイパ動作の調整内容を運転者ID番号および雨量と共に受信するので、制御装置12は、ステップB1で「YES」と判断し、次に受信したデータが運転者ID番号のみであるか否かを判断するステップB2で「NO」となってステップB3に移行し、受信したワイパ動作調整内容、雨量および運転者ID番号を互いに関連付けてデータベース13に記憶する(ステップB3)。
このように、手動操作によってワイパ動作の調整が行われると、その都度、その調整内容、雨量および運転者ID番号が関連付けてデータベース13に格納される。そして、ある程度のデータがデータベース13に蓄積されると、そのデータによってワイパ動作の調整内容を自動的に設定することが可能となる。
【0025】
さて、降雨が雨滴センサ4により検出されたとき、操作部2によるワイパ動作の調整操作がなければ、ECU1は、ステップA4で「NO」と判断してステップA8に移行し、ここで、現在の運転者についての雨量とワイパ動作調整内容との関連データを受信済みであるか否かを判断する。雨量とワイパ動作調整内容との関連データを受信していない場合には、ECU1は、ステップA8で「NO」と判断してステップA9に移行し、ステップA1で取得した運転者ID番号をデータセンタ11へ送信する。
【0026】
運転者ID番号を受信すると、データセンタ13の制御装置14は、受信データの内容を判断するステップB2で「YES」と判断してステップB4に移行し、受信した運転者ID番号に関連付けてデータベース11に記憶されている雨量とワイパ動作調整内容との関連データをダウンロードする動作を行う。次に、制御装置14は、ダウンロード動作によって実際に取得したデータがあるか否かを判断し(ステップB5)、なければ「データ送信付加」を車両に送信する(ステップB6)。また、ダウンロードしたデータがあれば、制御装置14は、そのデータを車両に送信する(ステップB7)。
【0027】
車両のECU1は、データセンタ11から送信されたデータを受信すると(ステップA10で「YES」)、その受信内容が「データ送信不可」であるか否かを判断する(ステップA11)。受信内容が「データ送信付加」であった場合、ECU1は、ステップA11で「YES」と判断し、ステップA2に戻る。受信内容が「データ送信付加」でなく、現在の運転者についての雨量とワイパ動作調整内容との関連データであった場合、ECU1は、ステップA11で「NO」と判断する。そして、ECU1は、ステップA12に移行して受信データを図示しないRAMに記憶し、ステップA13に移行する。
【0028】
一方、既に現在の運転者についての雨量とワイパ動作調整内容との関連データを受信済みであった場合には、ECU1は、ステップA8から直接ステップA13に移行する。そして、ECU1は、ステップA13において、データセンタ11から送信されてきた雨量とワイパ動作調整内容との関連データに基づいて、ステップA2で取得した雨量に応じた調整内容に設定する。そして、ECU1は、設定したワイパ動作調整内容をワイパ装置3のモータ制御部8に運転指令として送り、これによりワイパモータ7の運転がモータ制御部8により制御されてワイパ装置3を調整内容の通りに動作させる(ステップA14)。
【0029】
このように本実施形態では、運転者毎の雨量とワイパ動作調整内容との関連データをデータセンタ11のデータベース13に記憶させるので、その運転者が運転する車両を違えても、その雨量とワイパ動作調整内容との関連データを利用することが可能となる。
【0030】
(第3の実施形態)
図5および図6は本発明の第3の実施形態を示す。この実施形態は、車載機器としてのエアコンデショナ(以下、単にエアコンと言う。)の運転内容の調整およびウインドガラスの開度調整を自動的に行う車内環境自動調整システムに適用したものである。
図5に示すようには、ECU1に、外部環境の事象を検出するためのセンサとして、雨滴センサ4の他に、気温センサ15、日射センサ16、排ガス濃度センサ17が接続されている。また、ECU1には、車載機器としてウインドガラスの窓開閉装置18、同じく車載機器としてエアコン19が接続され、更に、位置検出手段としての位置検出装置20が接続されている。上記気温センサ15は車外の気温を検出するもの、日射センサ16は日射量を検出するもの、排ガス濃度センサ17は車外の排気ガスの濃度を検出するものである。位置検出装置20は、GPSなどから構成され、車両の現在位置を検出する。
【0031】
ウインドガラスの窓開閉装置18は、図示しないウインドガラスを電動源としてのモータによって開閉するパワーウインド21、このパワーウインド21を制御する開閉制御部22、ウインドガラスの開度を検出する開度センサ23を備えている。開度センサ23は、ウインドガラスの開度を検出してECU1および開閉制御部22に出力する。開閉制御部22は、ウインドガラスの開度を調節するために操作部2を手動操作すると、ECU1から開閉指令を受け、そして開度センサ23の検出値をフィードバック信号として受けてECU1からの指令通りとなるようにパワーウインド21を制御し、ウインドガラスの開度を調整する。このような窓開閉装置18は、運転者が気温、日射量、風速、風向などに応じて外気を適当量車内に取り入れる場合などに操作される。このとき、ウインドガラスの開度は、車外の排ガス濃度の影響や風速などによっても変えられ、排ガス濃度が高いときや風速が早いとき、或いは風向きによっては、ウインドガラスは閉じる方向に調整される。
【0032】
エアコン19は、コンプレッサ24、エアミックスダンパ25、ファン装置26、室温センサ27、制御部28を備えて構成されている。コンプレッサ24は、冷媒を圧縮して冷凍サイクルを構成するコンデンサで凝縮させ、エバポレータ(いずれも図示せず)で蒸発させてファン装置26により車室内に送風される空気を冷却する。エアミックスダンパ25は、ファン装置26により車室内に送風される空気をエバポレータとエンジン冷却水が通るヒートコアとに流す割合を制御するためのものである。このエバポレータとヒートコアとに流す空気の割合を変えることによって、車室内へ送風する空気の温度が変化するようになっている。室温センサ27は、車両の室内温度を検出するためのもので、その検出値はエアコン19の制御部28に入力される他、ECU1にも入力される。制御部28は、室温センサ27により検出される車内温度が設定された温度となるようにコンプレッサ24、エアミックスダンパ25、ファン装置26を制御する。
【0033】
以上のようにして、車内の温度調節や窓からの空気の取り入れなどによって車内の環境を調整する車内環境自動調整システム29が構成されている。
一方、データセンタ11の通信装置12は、通信ネットワーク10を介して気象情報センタ30に接続され、この気象情報センタ30から定期的に各地の気象情報を取得してデータベース13に格納するようになっている。
【0034】
次に上記のように構成されたエアコン自動調整システムの作用を図6のフローチャートをも参照しながら説明する。
図示しないロータリ式キーシリンダスイッチ装置の操作によりワイパ動作自動調整システム6に電源が投入され、運転者が操作部2を操作して自身のID番号を入力すると、ECU1は、そのID番号を取得する(ステップD1)。その後、ECU1は、操作部2によってエアコン19の運転開始操作または窓開閉装置18の開度調整の開始操作(エアコン調整モードまた窓開度調整モードの設定)が行われことを検出すると(ステップD2)、次に、操作部2によってエアコン19に対する運転調整操作、または窓開閉装置18に対するウインド開度調整操作がなされたか否かを判断する(ステップD3)。
【0035】
エアコン19に対する運転調整操作、または窓開閉装置18に対するウインド開度調整操作が行われると、ECU1は、ステップD2で「YES」と判断してステップD4に移行し、ここで手動操作により設定された調整内容を取得する。そして、ECU1は、手動操作による調整内容をエアコン19の制御部28または窓開閉装置18の開閉制御部22に運転指令として送り、これにより手動設定の調整内容の通りにエアコン19の運転またはウインドガラスの開度が制御される(ステップD5)。次に、ECU1は、雨滴センサ4、気温センサ15、日射センサ16、排ガス濃度センサ17、位置検出装置20、窓開度センサ23、室温センサ27などの各種センサの検出値を取得し(ステップD6)、この各種センサの検出値を、運転者ID番号、手動操作によるエアコン19または窓開閉装置18の調整内容と共にデータセンタ11に送信する(ステップD7)。
【0036】
すると、データセンタ11の通信装置12がエアコン19の運転設定内容を運転者ID番号および各種センサ4,15,16,17,20,23,27の検出値と共に受信するので、制御装置12は、ステップE1で「YES」と判断し、次のステップE2で受信したデータがエアコン19または窓開閉装置18に対する調整データの要求であるか否かを判断する(ステップE2)。ここでは、調整データの要求ではないので、制御装置14は、ステップE2で「NO」となってステップE3に移行し、ここで、気象情報センタ30から車両の現在位置の天気、風速、風向などの気象事象を取得する。そして、制御装置14は、エアコン19または窓開閉装置18の調整内容を運転者ID番号、各種センサ4,15,16,17,20,23,27の検出値、運転者ID番号および気象情報センタ30から取得した天気、風速、風向などと関連付けてデータベース13に記憶する(ステップE4)。
【0037】
このように、手動操作によってエアコン19または窓開閉装置18の調整内容が設定されると、その都度、そのエアコン19または窓開閉装置18の調整内容、運転者ID番号、各種センサ4,15,16,17,20,23,27の検出値、運転者ID番号および気象情報センタ30から取得した天気、風速、風向などが互いに関連付けてデータベース13に記憶される。そして、ある程度のデータがデータベース13に蓄積されると、そのデータによってエアコン19または窓開閉装置18の調整内容を自動的に設定することが可能となる。
【0038】
さて、エアコン19または窓開閉装置18の調整開始操作が行われた後、運転内容の設定操作が行われなかった場合、ECU1は、ステップD2で「YES」、ステップD3で「NO」となってステップD8に移行し、ここで各種センサ4,15,16,17,20,23,27の検出値を取得する。そして、ECU1は、取得した各種センサ4,15,16,17,20,23,27の検出値を運転者ID番号と共に、エアコン19または窓開閉装置18の調整内容の要求情報をデータセンタ11に送信する(ステップD9)。
【0039】
このエアコン19または窓開閉装置18の調整内容の要求情報を受信したデータセンタ11の制御装置14は、ステップE1で「YES」、ステップE2で「YES」と判断してステップE5に移行し、ここで、データベース11から運転者ID番号に関連付けて記憶されたエアコン19または窓開閉装置18の調整内容、各種センサ4,15,16,17,20,23,27の検出値および気象情報センタ30から取得した天気、風速、風向などをダウンロードする動作を行う。次に、制御装置14は、ダウンロードしたデータ中に、受信した運転者ID番号に関連付けられたデータがあるか否かを判断し(ステップE6)、なければ「データ送信付加」を車両へ送信する(ステップE7)。
【0040】
また、ダウンロードしたデータ中に、受信した運転者ID番号に関連付けられたデータがあった場合、制御装置14は、ステップE6で「YES」と判断してステップE8に移行し、ここで気象情報センタ30から車両の現在地の天気、風速、風向などを取得する。そして、制御装置14は、データベース11からダウンロードしたデータに基づいて、車両から送信されてきた各種センサ4,15,16,16,20,23の検出値および気象情報センタ30から取得した天気、風速、風向などから、それらに応じたエアコン19または窓開閉装置18の調整内容を取得し(ステップE9:調整内容設定手段)、その調整内容を車両に送信する(ステップE10)。
【0041】
車両のECU1は、データセンタ11から送信されたデータを受信すると(ステップD10で「YES」)、その受信内容が「データ送信不可」であるか否かを判断する(ステップD11)。受信内容が「データ送信付加」であった場合、ECU1は、ステップD11で「YES」と判断し、ステップD3に戻る。受信内容が「データ送信付加」でなくエアコン19または窓開閉装置18の調整内容であった場合、ECU1は、ステップD11で「NO」と判断し、次のステップD12でエアコン19または窓開閉装置18の調整内容をデータセンタ11から送信されて来た調整内容に設定する。すると、エアコン19または窓開閉装置18がECU1により設定された調整内容にて運転される(ステップD13)。
【0042】
その後、ECU1は、定期的に上述のステップD8〜ステップD13を実行するので、外部環境が変化したりした場合には、ウインドガラスの開度を変化させ、或いはエアコン19の設定温度や送風量などが変えられるので、運転者は常に快適な状態で車両を運転することが可能となる。
【0043】
このように本実施形態によれば、データセンタ11においてエアコン19または窓開閉装置18の調整内容を設定するので、車両のECU1としては、運転内容を設定するための処理を行わずとも済み、負担が軽減される。また、データセンタ11によって車両では検出し難い外部環境の事象、例えば風速、風向などを取得することができる。
【0044】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような変更或いは拡張が可能である。
車両の外部環境に応じた調整がなされる車載機器としては、ワイパ装置3、窓開閉装置18、エアコン19に限られない。
運転者識別手段としては、ID番号の入力に限られず、ID情報を記録した記録媒体を読み取り器に読み取らせたり、指紋により識別したりする構成のものであっても良い。
外部環境の事象を検出するセンサとしては、車外の湿度を検出する湿度センサなど、他に種々考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図
【図2】フローチャート
【図3】本発明の第2の実施形態を示すブロック図
【図4】フローチャート
【図5】本発明の第3の実施形態を示すブロック図
【図6】フローチャート
【符号の説明】
【0046】
図面中、1はECU(調整内容設定手段、運転者識別手段)、2は操作部、3はワイパ装置(車載機器)、4は雨滴センサ、5はデータベース、6はワイパ動作自動調整システム、8はモータ制御部(調整内容制御部)、9は移動通信機(車両側通信手段)、11はデータセンタ、12は通信装置(センタ側通信手段)、13はデータベース、14は制御装置(調整内容設定手段)、15は気温センサ、16は日射センサ、17は排ガス濃度センサ、19は窓開閉装置(車載機器)、19はエアコン(車載機器)、20は位置検出装置、23は開度センサである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両の外部環境に応じた調整がなされる車載機器と、
前記車両の前記外部環境の事象を検出するセンサと、
ユーザの操作によって前記車載機器の調整が行われたとき、その調整内容と前記センサにより検出された前記外部環境の事象とを関連付けて記憶するデータベースと、
前記データベースの記憶内容に基づき、前記センサにより検出された前記外部環境の事象に応じた前記車載機器の調整内容を求める調整内容設定手段と、
前記調整内容設定手段により求められた前記調整内容となるように前記車載機器の調整を制御する調整制御手段と
を具備してなる車載機器自動調整システム。
【請求項2】
請求項1記載の車載機器自動調整システムにおいて、
前記車両には、運転者を識別する運転者識別手段が設けられ、
前記データベースは、前記運転者と前記調整内容と前記外部環境の事象とを関連付けて記憶し、
前記調整内容設定手段は、前記データベースの記憶内容に基づき、前記運転者識別手段により識別された運転者と前記センサにより検出された前記外部環境の事象とに応じた前記車載機器の調整内容を求めること
を特徴とする車載機器自動調整システム。
【請求項3】
車両に搭載され、当該車両の外部環境に応じた調整がなされる車載機器と、
前記車両の前記外部環境の事象を検出するセンサと、
ユーザの操作によって前記車載機器の調整が行われたとき、その調整内容と前記センサにより検出された前記外部環境の事象とをデータセンタへ送信する車両側通信手段と、
前記データセンタに設けられ、前記車両側通信手段から送信されてきた前記車載機器の調整内容と前記外部環境の事象とを関連付けて記憶するデータベースと、
前記データベースに記憶された前記車載機器の調整内容と前記外部環境の事象との関連データを前記車両に送信するセンタ側通信手段と、
前記車両に設けられ、前記データセンタから送信されてきた前記車載機器の調整内容と前記外部環境の事象との関連データに基づいて、前記センサにより検出された前記外部環境の事象に応じた前記車載機器の調整内容を求める調整内容設定手段と、
前記車両に設けられ、前記調整内容設定手段により求められた前記調整内容となるように前記車載機器の調整を制御する調整制御手段と
を具備してなる車載機器自動調整システム。
【請求項4】
請求項3記載の車載機器自動調整システムにおいて、
前記車両には、運転者を識別する運転者識別手段が設けられ、
前記車両側通信手段は、前記車載機器の調整内容と前記外部環境の事象と共に前記運転者識別手段により識別された運転者情報を送信し、
前記データベースは、前記運転者と前記外部環境の事象と前記車載機器の調整内容とを関連付けて記憶し、
前記調整内容設定手段は、前記データセンタから送信されてきた前記運転者と前記調整内容と前記外部環境の事象との関連データに基づいて、前記運転者識別手段により識別された運転者と前記センサにより検出された前記外部環境の事象とに応じた前記車載機器の調整内容を求めること
を特徴とする車載機器自動調整システム。
【請求項5】
車両に搭載され、当該車両の外部環境に応じた調整がなされる車載機器と、
前記車両の前記外部環境の事象を検出するセンサと、
ユーザの操作によって前記車載機器の調整が行われたとき、その調整内容と前記センサにより検出された前記外部環境の事象とをデータセンタへ送信する車両側通信手段と、
前記データセンタに設けられ、前記車両側通信手段から送信されてきた前記車載機器の調整内容と前記外部環境の事象とを関連付けて記憶するデータベースと、
前記データセンタに設けられ、前記データベースに記憶されている前記車載機器の調整内容と前記外部環境の事象とに基づいて、前記センサにより検出されて前記車両側通信手段から送信されてくる前記外部環境の事象に応じた前記車載機器の調整内容を求める調整内容設定手段と、
前記データセンタに設けられ、前記調整内容設定手段により求められた前記車載機器の調整内容を送信するセンタ側通信手段と、
前記車両に設けられ、前記センタ側通信手段により送信されてきた前記調整内容となるように前記車載機器の調整を制御する調整制御手段と
を具備してなる車載機器自動調整システム。
【請求項6】
請求項5記載の車載機器自動調整システムにおいて、
前記車両には、運転者を識別する運転者識別手段が設けられ、
前記車両側通信手段は、ユーザの操作によって前記車載機器の調整が行われたとき、その調整内容と前記外部環境の事象と共に前記運転者識別手段により識別された運転者情報を送信し、
前記データベースは、前記運転者と前記外部環境の事象と前記車載機器の調整内容とを関連付けて記憶し、
前記調整内容設定手段は、前記データベースに記憶された前記車載機器の調整内容と前記外部環境の事象と前記運転者との関連データに基づいて、前記センサにより検出されて前記車両側通信手段により送信されてくる前記外部環境の事象に応じた前記車載機器の調整内容を求めること
を特徴とする車載機器自動調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−182139(P2007−182139A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1554(P2006−1554)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】