説明

車載用スピーカシステム

【課題】簡単な構成で、車内の聴取位置で比較的高い音響特性の車載用スピーカシステムを提供すること、車両のセンターからずれた聴取位置であっても比較的高い音響特性を有すること等。
【解決手段】車載用スピーカシステム1は、車両室内に設置されたスピーカユニット10を有し、スピーカユニット10は、水平配置された2つの低音再生用スピーカ11,12と、2つの低音再生用スピーカ11,12の間に配置された高音再生用スピーカ13とを備える。高音再生用および低音再生用スピーカそれぞれは仮想同軸型として音像位置が同一となるように配置されている。スピーカユニット10は、車両室内の前方のダッシュボード51上の左側および右側の一方又は両方に配置されるとともに、音響放射方向(A10)が車両50の長手方向に沿った軸(A50)に対して規定角度(θ1)だけ傾いて配置され、聴取位置近傍に向かって音波を放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用スピーカシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車などの車両の室内に設置される車載用スピーカシステムとしてマルチスピーカシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
一般的な車載用スピーカシステムでは、例えば、車両の左右ドアそれぞれにフロントスピーカが配置され、車内の後方左右にリアスピーカが配置されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−224887号公報(第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両の室内では聴取者が、運転席、助手席、後部座席などに着座しており、聴取位置が車両の長手方向に沿った軸から規定距離だけ左側または右側にずれている。このため、聴取位置から左スピーカおよび右スピーカまでの距離の相違、聴取位置を基準として左右スピーカの音響特性の相違、等により聴取位置では明確な音像定位を得ることができない場合がある。
また、車両の室内は、フロントガラス、ドアガラス、ドア側面、天井、床、等により囲まれた比較的狭い空間である。このため、例えば左右のドアガラス等による反射音成分が、聴取位置での音響特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0005】
ところで、各スピーカに入力される電気信号に、ディレイ、位相制御、等の信号処理を施すことにより、聴取位置での音響特性を補正する技術が知られている。しかし、この技術を単純に車載用スピーカシステムに適用した場合、特定の聴取者の聴取位置では音響特性が改善されるが、それ以外の聴取位置では音響特性が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、簡単な構成で、車内の聴取位置で比較的高い音響特性の車載用スピーカシステムを提供すること、車両のセンターからずれた聴取位置であっても比較的高い音響特性を有すること、運転席や助手席での着座位置での音響特性差が比較的小さいこと、車両室内の両サイドからの反射音成分が比較的小さいこと、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0008】
本発明に係る車載用スピーカシステムは、車両室内に設置されたスピーカユニットを有し、前記スピーカユニットは、水平配置された2つの低音再生用スピーカと、前記2つの低音再生用スピーカの間に配置された高音再生用スピーカとを備え、前記高音再生用スピーカおよび前記2つの低音再生用スピーカそれぞれは仮想同軸型として音像位置が同一となるように配置され、前記スピーカユニットは、車両室内の前方のダッシュボード上の左側および右側の一方又は両方に配置されるとともに、該スピーカユニットの音響放射方向が車両の長手方向に沿った軸に対して規定角度だけ傾いて配置され、聴取位置近傍に向かって音波を放射することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る車載用スピーカシステムは、車両室内に設置されたスピーカユニットを有し、スピーカユニットは、水平配置された2つの低音再生用スピーカと、2つの低音再生用スピーカの間に配置された高音再生用スピーカとを備え、高音再生用スピーカおよび2つの低音再生用スピーカそれぞれは仮想同軸型として音像位置が同一となるように配置され、スピーカユニットは、車両室内の前方のダッシュボード上の左側および右側の一方又は両方に配置されるとともに、該スピーカユニットの音響放射方向が車両の長手方向に沿った軸に対して規定角度だけ傾いて配置され、聴取位置近傍に向かって音波を放射することを特徴とする。
【0010】
上記車載用スピーカシステムは、いわゆる仮想同軸型スピーカユニット、詳細には、水平配置された2つの低音再生用スピーカと、2つの低音再生用スピーカの間に配置された高音再生用スピーカとを備えている。この仮想同軸型のスピーカユニットは、左右方向の指向性が上下方向の指向性より狭く規定されており、その音響放射方向が車両室内の聴取者の聴取位置近傍に向けて規定されているので、聴取位置では、車両の両サイドからの反射音成分が比較的小さく、直接音成分が比較的大きい。このため、本発明に係る車載用スピーカシステムは、車内の聴取位置で比較的高い音響特性を有する。
また、上記仮想同軸型スピーカユニットは、車両のダッシュボード上の左側および右側に配置されるとともに、この仮想同軸型スピーカユニットの左右方向の指向性が上下方向の指向性より狭く規定され、聴取位置近傍に向けて音波を放射する。このため、聴取位置が、例えば運転席、助手席など、車両の長手方向に沿った軸から左側または右側にずれた位置であっても、左右のスピーカユニットからの音波の音響特性差が比較的小さい。つまり、本発明に係る車載用スピーカシステムは、簡単な構成で、例えば車両室内のセンターからずれた聴取位置に比較的高音質の音波を放射することができる。
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る車載用スピーカシステムを、図面を参照しながら説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る車載用スピーカシステム1を説明するための図である。詳細には、図1(A)は車両50の上側から視認した仮想同軸型のスピーカユニット10の配置および信号処理装置2を説明するための図である。例えば信号処理装置2は車両50内に配置されている。図1(B)は図1(A)に示した車両50の横方向から視認したスピーカユニット10の配置を説明するための図である。
【0013】
図2は車載用スピーカシステム1の仮想同軸型スピーカユニット10を説明するための図である。詳細には、図2(A)はスピーカユニット10の上面図であり、図2(B)はスピーカユニット10の正面図であり、図2(C)はスピーカユニット10の側面図である。
【0014】
車両50は、例えば、自動車、電車などである。本実施形態に係る車載用スピーカシステム1は、例えば、自動車に搭載されるスピーカシステムである。
図1(A),図1(B)に示すように車両50には、例えば運転席、助手席などに聴取者(H)が着座している。図1(A)に示すように、車両上側から視認した場合、聴取者(H)による聴取位置は、車両50の室内で、車両50の長手方向に沿った軸A50から車両50の左側または右側に、規定距離だけずれて位置している。
【0015】
図1,図2に示すように、車載用スピーカシステム1は、スピーカユニット10、信号処理装置2を有する。スピーカユニット10は本発明に係るスピーカユニットの一実施形態に相当し、信号処理装置2は本発明に係る信号処理装置2の一実施形態に相当する。
スピーカユニット10は、車両50の室内に設置されており、信号処理装置2から電気信号が入力されると、その電気信号に応じた音波を聴取位置近傍に向かって放射する。
【0016】
詳細には、本実施形態に係るスピーカユニット10は、フロント左スピーカユニット10L、およびフロント右スピーカユニット10Rを有する。スピーカユニット10L,10Rをまとめてスピーカユニット10とも言う。
フロント左スピーカユニット10Lは、例えば、図1(A),図1(B)に示すように、車両50の室内の前方(F)のダッシュボード51上の左側に配置されている。フロント右スピーカユニット10Rは、車両50の室内の前方(F)のダッシュボード51上の右側に配置されている。
【0017】
このスピーカユニット10(10L,10R)の音響放射方向(A10)は、車両50の長手方向に沿った軸(A50)に対して規定角度(θ1)だけ傾いて配置されている。
以下、スピーカユニット10(10L,10R)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[スピーカユニット10(10L,10R)]
図2(A),2(B),2(C)に示すように、本実施形態に係るスピーカユニット10は、2つの低音再生用スピーカ11,12、および高音再生用スピーカ13を有する。2つの低音再生用スピーカ11,12は本発明に係る低音再生用スピーカの一実施形態に相当し、高音再生用スピーカ13は本発明に係る高音再生用スピーカの一実施形態に相当する。
【0019】
図2(A),2(B),2(C)に示すように、2つの低音再生用スピーカ11,12は水平配置されており、その2つの低音再生用スピーカ11,12の間に高音再生用スピーカ13が配置されている。本実施形態では、低音再生用スピーカ11,12,高音再生用スピーカ13が上述したようにキャビネット15に配置されている。
【0020】
低音再生用スピーカ11,12は、いわゆるウーファである。低音再生用スピーカ11,12は、例えばコーン型、平板型、等の規定形状の振動板と、その振動板に接合されたボイスコイルボビン、ボイスコイルボビンに巻回されたボイスコイル、ボイスコイルが遊嵌される磁気ギャップが形成された磁気回路、スピーカフレームなどを有する。磁気回路としては、例えば内磁型磁気回路、外磁型磁気回路などを採用することができる。
【0021】
高音再生用スピーカ13は、いわゆるツイータである。高音再生用スピーカ13は、例えば、ドーム型、コーン型、等の規定形状の振動板と、その振動板に接合されたボイスコイルボビン、ボイスコイルボビンに巻回されたボイスコイル、ボイスコイルが遊嵌される磁気ギャップが形成された磁気回路、スピーカフレームなどを有する。
【0022】
低音再生用スピーカ11,12、高音再生用スピーカ13としては、上記形態に限られるものではなく、規定方式のスピーカを採用してもよい。
【0023】
図2(A),2(B),2(C)に示すように、高音再生用スピーカ13の中心軸A13が、2つの低音用スピーカそれぞれの中心軸A11,A12の中間に位置するように、低音再生用スピーカ11,12および高音再生用スピーカ13が配置されている。つまり、高音再生用スピーカ13および2つの低音再生用スピーカ11,12それぞれは仮想同軸型として、高音再生用スピーカ13の中心軸A13(スピーカユニット10の中心軸A10)上にて、音像位置が同一となるように配置されている。
上記構成のスピーカユニット10は、バーチカルツインと称呼される。また、低音再生用スピーカ11,12,高音再生用スピーカ13が水平配置されているので、スピーカユニット10はホリゾンタルツインとも称呼される。
【0024】
図3は、仮想同軸型スピーカユニット10の指向性を説明ための図である。詳細には、図3(A)はスピーカユニットの左右方向(水平方向)の指向性パターンを説明するための図であり、図3(B)はスピーカユニットの上下方向の指向性パターンを説明するための図である。図3(A),3(B)に示したスピーカユニット10の指向性パターンは一具体例であり、この形態に限られるものではない。
【0025】
図3(A),3(B)に示すように、スピーカユニット10は、左右方向の指向特性が上下方向の指向特性より狭い。詳細には、スピーカユニット10は、図3(A)に示すように、指向性パターンが左右方向で同じ特性且つ比較的狭く、図3(B)に示すように、上下方向で指向特性が比較的広い。このスピーカユニット10を図1(A)に示すように、ダッシュボード51上に配置した場合、聴取者(H)の聴取位置に向かっての直接音成分が比較的大きく、車両50の両サイドからの反射音成分が比較的小さくなる。
【0026】
また、スピーカユニット10の指向性パターンが左右対称であることを利用し、スピーカユニット10を車両のダッシュボード51上に配置し、スピーカ音軸A10を乗車員方向に規定することで、左右の聴取位置での特性差が比較的小さくすることができる。また、上述した配置のスピーカユニット10では、車両サイドによる不要な反射音が、聴取位置にて比較的小さい。上記車載用スピーカシステム1は、簡単な構成で車両内の聴取位置にて高音質の音を提供することができる。
【0027】
図4は、車両内のスピーカユニットの配置を説明するための図であり、詳細には、図4(A)は第1具体例に係るスピーカユニットの配置図であり、図4(B)は第2具体例に係るスピーカユニットの配置図である。
【0028】
図5は、本発明の一実施形態に係る仮想同軸型スピーカユニットを説明するための図である。詳細には、図5は、本発明の一実施形態に係る仮想同軸型スピーカユニットの配置例を説明するための車両室内の斜視図である。
【0029】
図4(A),図5に示すように、例えば低音再生用スピーカ11,12,高音再生用スピーカ13がキャビネット15に備えられたスピーカユニット10を、車両50のダッシュボード51上に配置してもよい。スピーカユニット10は、車両50のダッシュボード51上に配置されており、音響放射方向が聴取位置近傍に向かって配置されているので、直接、音波を聴取位置に向かって放射することができる。
【0030】
また、図1(B),4(A),5に示すように、スピーカユニット10は、車両50のダッシュボード51上に配置されているので、スピーカユニット10から放射された音波が、例えばフロントガラス52などに反射する。このため、上記車両50のダッシュボード51上に配置されたスピーカユニット10は、図1(B)に示すように、聴取位置に向かって鋭い比較的狭い指向性パターンとなる。そのため、車載用スピーカシステム1は、運転席および助手席だけでなく、後部座席での聴取位置でも比較的高い音響特性を提供することができる。
【0031】
スピーカユニット10Aは、図4(B)に示すように、車両50Aのダッシュボード51Aに、直接、低音再生用スピーカ11,12,高音再生用スピーカ13を配置してもよい。こうすることにより、低音域の音響特性が比較的高くなる。
【0032】
上述したように、運転席および助手席それぞれの聴取位置は、図1(A)に示すように、車両50の長手方向に沿った中心軸A50に対して、左側または右側に規定距離だけずれて位置している。
このため、図1(A),図1(B)に示すように、フロント左スピーカユニット10Lおよびフロント右スピーカユニット10Rの音響放射方向が、運転席および助手席それぞれの聴取位置の中間位置に向かって規定されていることが好ましい。
詳細には、スピーカユニット10(10L,10R)の音響放射方向(A10)は、車両上側から視認した場合、車両50の長手方向に沿った軸(A50)に対して規定角度(θ1)だけ傾いて配置されており、車両横方向から視認した場合、水平方向に対して規定角度(θ2)だけ上方に傾いて配置されている。
上記構成の車載用スピーカシステム1では、車両の室内の聴取位置にて、比較的高い音響特性を得ることができる。
【0033】
車載用スピーカシステム1では、スピーカユニット(10L,10R)が、車両50のダッシュボード51上に配置され、上記音響方向に規定されているので、上記聴取位置で、直接音波成分が比較的大きく、かつ車両50の両サイドでの反射音成分が比較的小さい。
【0034】
また、図1(B),図3(B)に示すように、スピーカユニット10は、音響放射方向(A10)が水平方向より規定角度(θ2)だけ上方に傾いて規定され、車内の聴取位置に向かって音波を放射するので、更に直接音波成分が比較的大きく、かつ車両50の両サイドでの反射音成分が比較的小さい。
【0035】
[信号処理装置2]
本実施形態に係る信号処理装置2は、図1(A)に示すように、例えば、ソース(SRC)21、信号処理回路(DSP)22、増幅器(AMP)23、ユーザインタフェース(UI)24、および制御回路(CTR)25を有する。
【0036】
ソース(SRC)21は、例えば、ラジオ放送受信装置、テレビジョン放送受信装置、オーディオディスクプレイヤ、ハードディスクドライブなど、音声信号を含む電気信号を出力する装置であり、音声信号をDSP22に出力する。
信号処理回路(DSP)22は、例えば、ソース21から入力された電気信号に規定の信号処理を施した後、その電気信号をアンプ23に出力する。また、DSP22は、スピーカユニット10に入力される電気信号に、スピーカユニット10と聴取位置との間の距離に応じたディレイ処理を施した後、当該ディレイ処理後の電気信号を出力してもよい。こうすることにより、聴取位置での音響特性が更に高くなる。
増幅器(AMP)23は、DSP22からの電気信号を増幅してスピーカユニット10(10L,10R)に出力する。
ユーザインタフェース(UI)24は、例えば、表示装置や操作入力装置などであり、ユーザと信号処理装置と間のインタフェースである。
制御回路(CTR)25は、統括的に、SRC21、DSP22、AMP23、およびUI24を統括的に制御する。
【0037】
また、例えば、図2(A)に示すように、本実施形態に係るスピーカユニット10は、ネットワーク素子3が設けられていてもよい。信号処理装置2は、ネットワーク素子3を介して電気信号をスピーカユニット10に入力する。ネットワーク素子3は、例えばキャパシタ、コイル、レジスタ、トランジスタ、集積回路、等により構成されている。
【0038】
ネットワーク素子3は、例えば図2(A)に示すように、ローパスフィルタ(LPF)311,312、ハイパスフィルタ(HPF)313を有する。
LPF311は、スピーカユニット10の低音再生用スピーカ11と信号処理装置2の間に電気的に接続されている。LPF312は、スピーカユニット10の低音再生用スピーカ12と信号処理装置2の間に電気的に接続されている。
HPF313は、スピーカユニット10の高音再生用スピーカ13と信号処理装置2との間に電気的に接続されている。
【0039】
上記構成のスピーカユニット10では、信号処理装置2からネットワーク素子3を介して電気信号が入力されると、低音再生用スピーカ11,12,高音再生用スピーカ13それぞれから高音質の音波を放射する。
【0040】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る車載用スピーカシステムを説明するための全体図である。
車載用スピーカシステムは、例えば、フロントセンタースピーカユニット、リア左スピーカユニット、およびリア右スピーカユニットの少なくとも一つを仮想同軸型スピーカユニットとして備えてもよい。
詳細には、図6に示すように、車載用スピーカシステム1Bは、フロント左スピーカユニット(10FL)、フロント右スピーカユニット(10FR)、フロントセンタースピーカユニット(10FC)、リア左スピーカユニット(10RL)、およびリア右スピーカユニット(10RL)を有する。上記スピーカそれぞれは、仮想同軸型スピーカユニットである。
【0041】
リア左スピーカユニット(10RL)、およびリア右スピーカユニット(10RL)は、例えば、図6に示すように、セダンタイプの車両50の場合、車両室内の後側(B)のリアトレイ55に配置してもよいし、RV(Recreational Vehicle),SUV(Sport Utility Vehicle)型の車両の場合、車両後方上部に設置してもよい。
また、スピーカユニット10は、マルチチャンネル用、あるいは音像補正用のセンタースピーカとして使用してもよい。こうすることで、左右席への特性差の少ない音、および不要なサイドでの反射音低減により高音質化が可能である。
【0042】
以上、説明したように、本発明に係る車載用スピーカシステム1は、車両室内に設置されたスピーカユニット10を有し、スピーカユニット10は、水平配置された2つの低音再生用スピーカ11,12と、2つの低音再生用スピーカ11,12の間に配置された高音再生用スピーカ13とを備える。この高音再生用スピーカおよび2つの低音再生用スピーカそれぞれは仮想同軸型として音像位置が同一となるように配置されている。スピーカユニット10は、車両室内の前方のダッシュボード51上の左側および右側の一方又は両方に配置されるとともに、該スピーカユニット10の音響放射方向(A10)が車両50の長手方向に沿った軸(A50)に対して規定角度(θ1)だけ傾いて配置され、聴取位置近傍に向かって音波を放射する。このため、簡単な構成で、車両50の車内での聴取位置で比較的高い音響特性の車載用スピーカシステムを提供することができる。
また、車載用スピーカシステム1は、車両50のセンターからずれた聴取位置であっても比較的高い音響特性を有する。
また、車載用スピーカシステム1は、運転席や助手席での着座位置での音響特性差が比較的小さい。
また、車載用スピーカシステム1は、車両室内の両サイドからの反射音成分が比較的小さい。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、車載用スピーカシステムは、2つの仮想同軸型スピーカユニット(第1実施形態)、5つの仮想同軸型スピーカユニット(第2実施形態)を有していなくともよい。車載用スピーカシステムは、一つの仮想同軸型スピーカユニットのみ有していてもよいし、2個以上の複数の仮想同軸型スピーカユニットを有してもよいし、一般的なスピーカユニットと仮想同軸型スピーカユニットと組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車載用スピーカシステム1を説明するための図である。(A)は車両50の上側から視認した仮想同軸型のスピーカユニット10の配置および信号処理装置2を説明するための図である。(B)は(A)に示した車両50の横方向から視認したスピーカユニット10の配置を説明するための図である。
【図2】車載用スピーカシステム1の仮想同軸型スピーカユニット10を説明するための図である。(A)はスピーカユニット10の上面図であり、(B)はスピーカユニット10の正面図であり、(C)はスピーカユニット10の側面図である。
【図3】仮想同軸型スピーカユニット10の指向性を説明ための図である。(A)はスピーカユニットの左右方向(水平方向)の指向性パターンを説明するための図であり、(B)はスピーカユニットの上下方向の指向性パターンを説明するための図である。
【図4】車両内のスピーカユニットの配置を説明するための図であり、(A)は第1具体例に係るスピーカユニットの配置図であり、(B)は第2具体例に係るスピーカユニットの配置図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る仮想同軸型スピーカユニットを説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る車載用スピーカシステムを説明するための全体図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車載用スピーカシステム
2 信号処理装置
3 ネットワーク素子
10 スピーカユニット
11,12 低音再生用スピーカ
13 高音再生用スピーカ
15 キャビネット
50 車両
51 ダッシュボード
52 フロントガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内に設置されたスピーカユニットを有する車載用スピーカシステムであって、
前記スピーカユニットは、水平配置された2つの低音再生用スピーカと、前記2つの低音再生用スピーカの間に配置された高音再生用スピーカとを備え、前記高音再生用スピーカおよび前記2つの低音再生用スピーカそれぞれは仮想同軸型として音像位置が同一となるように配置され、
前記スピーカユニットは、車両室内の前方のダッシュボード上の左側および右側の一方又は両方に配置されるとともに、該スピーカユニットの音響放射方向が車両の長手方向に沿った軸に対して規定角度だけ傾いて配置され、聴取位置近傍に向かって音波を放射することを特徴とする
車載用スピーカシステム。
【請求項2】
前記スピーカユニットは、前記高音再生用スピーカの中心軸が、前記2つの低音用スピーカそれぞれの中心軸の中間に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車載用スピーカシステム。
【請求項3】
前記スピーカユニットは、左右方向の指向特性が上下方向の指向特性より狭いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載用スピーカシステム。
【請求項4】
少なくともフロント左スピーカユニット、およびフロント右スピーカユニットを前記スピーカユニットとして有し、
前記フロント左スピーカユニットおよびフロント右スピーカユニットの音響放射方向が、前記車両の運転席および助手席それぞれの聴取位置の中間位置に向かって規定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車載用スピーカシステム。
【請求項5】
前記スピーカユニットは、音響放射方向が水平方向より規定角度だけ上方に傾いて規定され、前記聴取位置に向かって音波を放射することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車載用スピーカシステム。
【請求項6】
前記聴取位置は、前記車両の長手方向に沿った軸より左側または右側にずれて位置していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車載用スピーカシステム。
【請求項7】
前記スピーカユニットにネットワーク素子を介して電気信号を入力する信号処理装置を有し、
前記ネットワーク素子は、前記スピーカユニットの高音再生用スピーカと前記信号処理装置との間に電気的に接続されたハイパスフィルタと、
前記スピーカユニットの低音再生用スピーカと前記信号処理装置との間に電気的に接続されたローパスフィルタと
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車載用スピーカシステム。
【請求項8】
前記スピーカユニットに入力される電気信号に、前記スピーカユニットと聴取位置との間の距離に応じたディレイ処理を施した後、当該ディレイ処理後の電気信号を前記スピーカユニットに入力する信号処理装置を有する請求項1から請求項6のいずれかに記載の車載用スピーカシステム。
【請求項9】
前記車載用スピーカシステムは、フロントセンタースピーカユニット、リア左スピーカユニット、およびリア右スピーカユニットの少なくとも一つを仮想同軸型スピーカユニットとして備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車載用スピーカシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−290663(P2009−290663A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142396(P2008−142396)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】