説明

車載装置とそのバイアス学習方法

【課題】 従来、車載装置では、ジャイロセンサで検出する回転角度から誤差を除去するために、車両が走行を停止したタイミングでバイアス学習処理を実施する。ここで、車輪が回転していないことで車両が停止していると判定することが多い。しかし、かかる技術では、車輪の回転が停止した状況であっても、車両が移動している状況、例えば回転するターンテーブル上で車両が静止している状況等において、誤ったバイアス学習処理を行ってしまう場合がある。本発明の目的は、正確にバイアス学習処理を行う技術を提供することにある。
【解決手段】
本発明の車載装置は、車両の走行の停止を検知し、車両の走行の停止を検知すると、車両が移動しているか否かを推定し、車両が移動していないと推定した場合に、回転検出装置のバイアス学習を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置等の車載装置では、ジャイロセンサにより車両の回転角度を検出して、現在地の推定や車両の向きの推定を行う技術が用いられている。特許文献1には、このようなナビゲーション装置についての技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなナビゲーション装置では、ジャイロセンサで検出する回転角度から誤差を除去するために、車両が走行を停止したタイミングでバイアス学習処理を実施する必要がある。ここで、車両が走行しているか停止しているかの判定は、車輪が回転しているか否かにより判定することが多い。かかる技術では、車輪の回転が停止した状況であっても、車両が移動している状況、例えば回転するターンテーブル上で車両が静止している状況や、車輪の回転の検知漏れが起きた状況等において、誤ったバイアス学習処理を行ってしまう場合がある。
【0005】
本発明の目的は、簡易な方法でより正確にバイアス学習処理を行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る車載装置は、回転検出装置を備える車載装置であって、車両の走行の停止を検知する停止検知手段と、前記停止検知手段により車両の走行の停止を検知すると、車両が移動しているか否かを推定する車両移動推定手段と、前記車両移動推定手段により車両が移動していないと推定した場合に、前記回転検出装置のバイアス学習を行うバイアス学習手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のバイアス学習方法は、車載装置が、回転検出装置を備え、車両の走行の停止を検知する停止検知ステップと、前記停止検知ステップにおいて車両の走行の停止を検知すると、車両が移動しているか否かを推定する車両移動推定ステップと、前記車両移動推定ステップにより車両が移動していないと推定した場合に、前記回転検出装置のバイアス学習を行うバイアス学習ステップと、を実施する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】図2は、リンクテーブルの構成を示す図である。
【図3】図3は、カメラの搭載位置を示す図である。
【図4】図4は、撮影画像を地上面に投影する様子を示す図である。
【図5】図5は、演算処理部の機能構成図である。
【図6】図6は、バイアス学習処理のフロー図である。
【図7】図7は、第二の実施形態におけるナビゲーション装置の概略構成図である。
【図8】図8は、第二の実施形態におけるバイアス学習処理のフロー図である。
【図9】図9は、第三の実施形態におけるバイアス学習処理のフロー図である。
【図10】図10は、第四の実施形態におけるバイアス学習処理のフロー図である。
【図11】図11は、第五の実施形態におけるバイアス学習処理のフロー図である。
【図12】図12は、第五の実施形態におけるSFMの仕組みを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の第一の実施形態を適用した車載装置であるナビゲーション装置100について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に、ナビゲーション装置100の構成図を示す。
【0011】
ナビゲーション装置100は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、記憶装置3と、音声入出力装置4(音声入力装置としてマイクロフォン41、音声出力装置としてスピーカ42を備える)と、入力装置5と、ROM装置6と、車速センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Global Positioning System)受信装置9と、FM多重放送受信装置10と、ビーコン受信装置11と、カメラ12と、を備えている。
【0012】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば各種センサ7,8やGPS受信装置9、FM多重放送受信装置10等から出力される情報を基にして現在地を検出する。また、得られた現在地情報に基づいて、表示に必要な地図データを記憶装置3あるいはROM装置6から読み出す。
【0013】
また、演算処理部1は、読み出した地図データをグラフィックス展開し、そこに現在地を示すマークを重ねてディスプレイ2へ表示する。また、記憶装置3あるいはROM装置6に記憶されている地図データ等を用いて、ユーザから指示された出発地(現在地)と目的地(または、経由地や立ち寄り地)とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索する。また、スピーカ42やディスプレイ2を用いてユーザを誘導する。
【0014】
また、演算処理部1は、ジャイロセンサ8のバイアス学習処理を行う。例えば、ジャイロセンサ8のバイアス補正の学習用のベクトル情報等を生成し、生成したベクトル情報を、バイアスを補正する情報として用いて、バイアス学習処理を行う。
【0015】
ナビゲーション装置100の演算処理部1は、各デバイス間をバス25で接続した構成である。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、記憶装置3から読み出した地図データ、演算データなどを格納するRAM(Random Access Memory)22と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)23と、各種ハードウェアを演算処理部1と接続するためのI/F(インターフェイス)24と、を有する。
【0016】
ディスプレイ2は、演算処理部1等で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。ディスプレイ2は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどで構成される。
【0017】
記憶装置3は、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性メモリカードといった、少なくとも読み書きが可能な記憶媒体で構成される。
【0018】
この記憶媒体には、通常の経路探索装置に必要な地図データ(地図上の道路を構成するリンクのリンクデータを含む)であるリンクテーブル200が記憶されている。
【0019】
図2は、リンクテーブル200の構成を示す図である。リンクテーブル200は、地図上の区画された領域であるメッシュの識別コード(メッシュID)201ごとに、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータ202を含んでいる。
【0020】
リンクデータ202は、リンクの識別子であるリンクID211ごとに、リンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の座標情報222、リンクを含む道路の種別を示す道路種別223、リンクの長さを示すリンク長224、予め記憶されたリンク旅行時間225、当該リンクの開始ノードに接続するリンクである開始接続リンクと、当該リンクの終了ノードに接続するリンクである終了接続リンクと、を特定する開始接続リンク、終了接続リンク226、リンクを含む道路の制限速度を示す制限速度227、などを含んでいる。
【0021】
なお、ここでは、リンクを構成する2つのノードについて開始ノードと終了ノードとを区別することで、同じ道路の上り方向と下り方向とを、それぞれ別のリンクとして管理するようにしている。
【0022】
図1に戻って説明する。音声入出力装置4は、音声入力装置としてマイクロフォン41と、音声出力装置としてスピーカ42と、を備える。マイクロフォン41は、使用者やその他の搭乗者が発した声などのナビゲーション装置100の外部の音声を取得する。
【0023】
スピーカ42は、演算処理部1で生成された使用者へのメッセージを音声信号として出力する。マイクロフォン41とスピーカ42は、車両の所定の部位に、別個に配されている。ただし、一体の筐体に収納されていても良い。ナビゲーション装置100は、マイクロフォン41及びスピーカ42を、それぞれ複数備えることができる。
【0024】
入力装置5は、使用者からの指示を使用者による操作を介して受け付ける装置である。入力装置5は、タッチパネル51と、ダイヤルスイッチ52と、その他のハードスイッチ(図示しない)であるスクロールキー、縮尺変更キーなどで構成される。
【0025】
タッチパネル51は、ディスプレイ2の表示面側に搭載され、表示画面を透視可能である。タッチパネル51は、ディスプレイ2に表示された画像のXY座標と対応したタッチ位置を特定し、タッチ位置を座標に変換して出力する。タッチパネル51は、感圧式または静電式の入力検出素子などにより構成される。
【0026】
ダイヤルスイッチ52は、時計回り及び反時計回りに回転可能に構成され、所定の角度の回転ごとにパルス信号を発生し、演算処理部1に出力する。演算処理部1では、パルス信号の数から、回転角度を求める。
【0027】
ROM装置6は、CD-ROMやDVD-ROM等のROM(Read Only Memory)や、IC(Integrated Circuit)カードといった、少なくとも読み取りが可能な記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、例えば、動画データや、音声データなどが記憶されている。
【0028】
車速センサ7,ジャイロセンサ8およびGPS受信装置9は、ナビゲーション装置100で現在地(自車位置)を検出するために使用されるものである。
【0029】
車速センサ7は、車速を算出するのに用いる値を出力するセンサである。
【0030】
ジャイロセンサ8は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体の回転による角速度を検出するものである。
【0031】
GPS受信装置9は、GPS衛星からの信号を受信し移動体とGPS衛星間の距離と距離の変化率とを3個以上の衛星に対して測定することで移動体の現在地、進行速度および進行方位を測定するものである。
【0032】
FM多重放送受信装置10は、FM多重放送局から送られてくるFM多重放送信号を受信する。FM多重放送には、VICS(Vehicle Information Communication System:登録商標)情報の概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、駐車場情報、天気情報などやFM多重一般情報としてラジオ局が提供する文字情報などがある。
【0033】
ビーコン受信装置11は、VICS情報などの概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、駐車場情報、天気情報や緊急警報などを受信する。例えば、光により通信する光ビーコン、電波により通信する電波ビーコン等の受信装置である。
【0034】
カメラ12は、図3に示すように、車両300の前方にやや下を向いて、路面を撮影できるように取り付けられる。カメラ12は、車両の前方の地上面をCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子を用いて撮影する。また、カメラ12は、撮影した映像を、演算処理部1に受け渡す。
【0035】
図4は、図3のカメラ12にて撮影した映像を用いた地上投影画像の生成方法を説明するための図である。主制御部101は、カメラ12の視点Pの位置(車両内の所定位置を原点とする三次元空間における座標位置)と撮影方向(視線方向)Kを求める。そして、主制御部101は、撮影画像510を、カメラ12の視点Pの位置から撮影方向Kに向けて、地上面520に投影し、地上投影画像530を生成する。なお、撮影方向Kは、撮影画像510の中心と垂直に交わる。また、カメラ12の視点Pから撮影画像510までの距離は、予め定められている。こうして生成される地上投影画像530は、車両の上空から車両周辺を鳥瞰したような画像となる。
【0036】
図5は、演算処理部1の機能ブロック図である。図示するように、演算処理部1は、主制御部101と、入力受付部102と、出力処理部103と、停止判定部104と、バイアス学習処理部105と、計時部106と、を有する。
【0037】
主制御部101は、様々な処理を行う中心的な機能部であり、処理内容に応じて、他の処理部を制御する。また、各種センサ、GPS受信装置9等の情報を取得し、マップマッチング処理等を行って現在地を特定する。また、随時、走行した日付および時刻と、位置と、を対応付けて、リンクごとに走行履歴を記憶装置3に記憶する。さらに、各処理部からの要求に応じて、現在時刻を出力する。また、ユーザから指示された出発地(現在地)と目的地とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索し、推奨経路から逸脱しないよう、スピーカ42やディスプレイ2を用いてユーザを誘導する。
【0038】
入力受付部102は、入力装置5またはマイクロフォン41を介して入力された使用者からの指示を受け付け、その要求内容に対応する処理を実行するように演算処理部1の各部を制御する。例えば、使用者が推奨経路の探索を要求したときは、目的地を設定するため、地図をディスプレイ2に表示する処理を出力処理部103に要求する。
【0039】
出力処理部103は、表示させる画面情報を受け取り、ディスプレイ2に描画するための信号に変換してディスプレイ2に対して描画する指示を行う。
【0040】
停止判定部104は、車速センサ7からの車速パルス情報または主制御部101を介して得たハンドブレーキの状態を示す情報等を受け付けて、車両が走行を停止しているか否かを判定する。具体的には、例えば、停止判定部104は、一定期間(例えば3秒間)、車速パルス情報の発生を検知しない場合に、車両が停止していると判定する。または、停止判定部104は、ハンドブレーキがかけられたことを検知すると、車両が停止していると判定する。あるいは、停止判定部104は、カメラ12により撮影した複数の連続画像に含まれる物体の特徴点の位置が変化しない場合に、車両が停止していると判定する。
【0041】
バイアス学習処理部105は、車両が停止している場合に、ジャイロセンサ8のバイアスを学習(設定)する処理を行う。
【0042】
計時部106は、計時開始を指示された時刻から、計時の停止を指示される時刻までの時間の経過を計測する。なお、計時部106は、時間の経過を計測しつつ、要求に応じて経過した時間を特定する情報を応答する。
【0043】
上記した演算処理部1の各機能部、すなわち主制御部101、入力受付部102、出力処理部103、停止判定部104、バイアス学習処理部105、計時部106は、CPU21が所定のプログラムを読み込み実行することにより構築される。そのため、RAM22には、各機能部の処理を実現するためのプログラムが記憶されている。
【0044】
なお、上記した各構成要素は、ナビゲーション装置100の構成を、理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。そのため、構成要素の分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。ナビゲーション装置100の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0045】
また、各機能部は、ハードウェア(ASIC、GPUなど)により構築されてもよい。また、各機能部の処理が一つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0046】
[動作の説明]
次に、ナビゲーション装置100の動作について説明する。
【0047】
図6は、車両が停止した場合にジャイロセンサのバイアス学習を実施するバイアス学習処理のフロー図である。このフローは、ナビゲーション装置100が稼働している状態において、所定の間隔(例えば3秒間隔)で定期的に開始される。
【0048】
まず、主制御部101は、車速センサ7を介して車速パルス情報を検知する(ステップS001)。
【0049】
当該車速パルス情報は、車速センサ7が車輪(ホイール)の回転を検知した場合に発生させるパルス情報である。そのため、車輪が回転していない状態、すなわち車両が走行していない状況や、車速センサ7が車輪の回転を検知できなかった場合には、主制御部101は、車速パルス情報を検知することができない。
【0050】
次に、主制御部101は、車両が走行(自律的な移動)を行っているか否かを判定する。ここでは、たとえば、所定の時間(例えば2秒間)車速パルスを検知していない状態であるか否かを判定する。具体的には、主制御部101は、ステップS001において所定の時間内に一度もパルスを検出していない場合に、車速パルスを検知していない状態(走行していない状態)であると判定する。
【0051】
所定時間内に車速パルスを検知した場合(ステップS002にて「No」)、計時部106は、計時処理が作動している場合には計時を停止した上で、計時をリセットし、バイアス学習処理を終了させる(ステップS003)。すなわち、ナビゲーション装置100は車両が走行していると判定するため、バイアス学習を実施しないでバイアス学習処理を終了する。
【0052】
所定時間内に車速パルスを検知しない場合(ステップS002にて「Yes」)、停止判定部104は、主制御部101を介して、カメラ12に対して、所定間隔で(例えば1/10秒(100ミリ秒)間隔で)撮影するように指示し、撮影した画像の特徴点の移動を検出する(ステップS004)。具体的には、停止判定部104は、撮影した画像に含まれるエッジ部分等を一つまたは複数の特徴点として検出して、撮影した複数の画像間で移動した特徴点を検出する。
【0053】
そして、停止判定部104は、車両の移動(非自律的な移動、例えば回転する車両設置台(ターンテーブル)による搬送など)が推定されるか否かを判定する(ステップS005)。具体的には、停止判定部104は、当該特徴点のうち所定の割合(例えば8割)の数を占める特徴点の位置が画像上で移動した場合に、車両が移動したものと推定し、そうでない場合には車両は移動していないと推定する。
【0054】
車両の(非自律的な)移動が推定される場合(ステップS005にて「Yes」)、計時部106は、上述したステップS003の処理を行い、バイアス学習処理を終了させる。
【0055】
車両の(非自律的な)移動が推定されない場合(ステップS005にて「No」)、計時部106は、計時処理が作動中であるか否かを判定する(ステップS006)。計時処理が作動中の場合には(ステップS006にて「Yes」)、計時部106は、後述するステップS008を実行する。計時処理が作動中でない場合には、(ステップS006にて「No」)、計時部106は、計時を開始し(ステップS007)、後述するステップS008を実行する。
【0056】
そして、計時部106は、計時開始からの経過時間を取得し、閾値(例えば、15秒)以上経過しているか否かを判定する(ステップS008)。
【0057】
計時開始からの経過時間が閾値以上である場合(ステップS008にて「Yes」)、バイアス学習処理部105は、バイアス学習を実施し(ステップS009)、実施完了後に、バイアス学習処理を終了させる。なお、バイアス学習実施中は、バイアス学習処理部105は、バイアス学習処理のさらなる開始を防ぐことで、二重起動を防止する。
【0058】
計時開始からの経過時間が閾値以上でない場合(ステップS008にて「No」)、バイアス学習処理部105は、バイアス学習を実施しないでバイアス学習処理を終了させる。以上が、バイアス学習処理の処理内容である。
【0059】
上記のバイアス学習処理を行う事によって、ナビゲーション装置100は、一定時間以上走行を停止しており、かつ、車両の移動もない場合に限ってバイアス学習処理を行うことができる。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0061】
本発明の一実施形態によると、ナビゲーション装置100は、車両が走行していない状態を適切に判定してバイアス学習を行うことができる。より具体的には、ナビゲーション装置100は、車両が車輪を回転させて走行していない状態においても、移動している場合には、バイアス学習を行わないことができる。つまり、車両がターンテーブル等による回転力を受ける場合や、船などに車両が搭載され、船が揺れる場合等に、回転力や船の揺れを誤ってバイアス学習してしまうことを避けることができる。
【0062】
本発明は、上記第一の実施形態に制限されない。上記第一の実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、上記第一の実施形態のバイアス学習処理においては、カメラ12を用いて車両の停止を判定していたが、これに限られず、超音波センサを用いて車両の停止を判定するようにしてもよい。具体的には、第二の実施形態として、図7に示すように、ナビゲーション装置100の構成に超音波センサ13を備えるようにして、図8のようにバイアス学習処理を変形することが可能である。
【0063】
図7は、第二の実施形態におけるナビゲーション装置100の構成を示す図である。基本的には、第一の実施形態におけるナビゲーション装置100の構成と同様の構成を備えるが、第二の実施形態では、演算処理部1は、超音波を用いて、所定の方向にある最寄りの物体までの距離を、反射波を検知することで計測する超音波センサ13を備える点で相違する。
【0064】
図8は、第二の実施形態におけるバイアス学習処理の処理フローを示す図である。第二の実施形態におけるバイアス学習処理では、第一の実施形態におけるステップS004、ステップS005に相当する処理に代えて、それぞれ後述するステップS104、ステップS105の処理が実施される。
【0065】
ステップS104では、停止判定部101は、主制御部101を介して、超音波センサ13に対して、所定間隔で(例えば1/10秒(100ミリ秒)間隔で)物体との距離を測定するように指示し、測定した物体との距離を検出する(ステップS104)。具体的には、停止判定部101は、最寄りの物体までの距離を特定して、特定した距離の変化を検出する。
【0066】
そして、停止判定部104は、当該距離に変化があった場合(例えば、距離が短くなった場合)に、車両が移動したものと推定し、そうでない場合には車両は移動していないと推定する。そして、停止判定部104は、車両の移動が推定されるか否かを判定する(ステップS105)。
【0067】
以上が、第二の実施形態におけるバイアス学習処理の内容である。このようにすることで、第二の実施形態においては、ナビゲーション装置100は、夜間などの暗い、あるいは雨天などの視界不良の状況でも、車両の停止を検出することが可能となる。
【0068】
また、上記第一の実施形態のバイアス学習処理においては、カメラ12は車両の周囲を撮影して、周囲の物体の変化から車両の停止を判定していたが、これに限られず、カメラにより撮影された画像に写し込まれた自車の車輪の回転具合に基づいて車両の停止を判定するようにしてもよい。具体的には、第三の実施形態として、図9のようにバイアス学習処理を変形することが可能である。
【0069】
図9は、第三の実施形態におけるバイアス学習処理の処理フローを示す図である。第三の実施形態におけるバイアス学習処理では、第一の実施形態におけるステップS001、ステップS002に相当する処理に代えて、それぞれ後述するステップS201、ステップS202の処理が実施される。
【0070】
ステップS201では、主制御部101は、カメラ12により撮影した画像を用いて車輪のホイールの回転を検知する(ステップS201)。当該ホイールの回転は、停止判定部104が、主制御部101を介して、カメラ12に対して、所定間隔で(例えば1/10秒(100ミリ秒)間隔で)ホイールを撮影するように指示し、撮影した画像の特徴点の移動を検出することで検知する。すなわち、停止判定部104は、撮影した複数の画像を比較してホイールの特徴点の移動を検出すると、車両は停止していないと判定する。
【0071】
次に、主制御部101は、所定の時間(例えば2秒間)ホイールの特徴点の移動を検知していない状態であるか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、主制御部101は、ステップS201において所定の時間内に一度もホイールの特徴点の移動を検知していない場合に、ホイールの回転を検出していないと判定する。
【0072】
以上が、第三の実施形態におけるバイアス学習処理の内容である。このようにすることで、第三の実施形態においては、ナビゲーション装置100は、車輪の低速な回転を検出することが可能となる。すなわち、車速センサ7によって車速パルスを検知するよりも微小な車輪の回転を検出することが可能となるため、微速での車両の走行を検出することが容易となる。
【0073】
また、上記第一の実施形態のバイアス学習処理においては、カメラ12は車両の周囲を撮影して、周囲の物体の変化から車両の停止を判定していたが、これに限られず、カメラにより撮影された画像に写し込まれた画像の変化から、カメラ12自体の位置の変化を推定し、当該カメラの位置の変化を車両の移動として検知し、車両の停止を判定するようにしてもよい。具体的には、第四の実施形態として、図10のようにバイアス学習処理を変形することが可能である。
【0074】
図10は、第四の実施形態におけるバイアス学習処理の処理フローを示す図である。第四の実施形態におけるバイアス学習処理では、第一の実施形態におけるステップS004、ステップS005に相当する処理に代えて、それぞれ後述するステップS304、ステップS305の処理が実施される。
【0075】
ステップS304では、停止判定部104は、主制御部101を介して、カメラ12に対して、所定間隔で(例えば1/10秒(100ミリ秒)間隔で)撮影するように指示し、撮影した画像の特徴点の位置の変化に基づいて、SFM(Structure From Motion)等の方法を用いて、画像情報からカメラ12の位置と姿勢を推定し、当該カメラ12の位置と方向の変化を推定する(ステップS304)。なお、SFMについては、図12を用いて後述する。
【0076】
そして、停止判定部104は、推定される当該カメラ12の位置または方向、あるいはその両方が変化した場合に、車両が移動したものと推定し、そうでない場合には車両は移動していないと推定する。そして、停止判定部104は、車両の移動が推定されるか否かを判定する(ステップS305)。
【0077】
以上が、第四の実施形態におけるバイアス学習処理の内容である。このようにすることで、第四の実施形態においては、ナビゲーション装置100は、カメラの被写体が動く場合(例えば歩行者等が移動した場合等)にも、車両が移動したか否かを正確に検出することが可能となる。
【0078】
または、上記第一の実施形態のバイアス学習処理においては、カメラ12は車両の周囲を撮影して、周囲の物体の変化から車両の停止を判定していたが、これに限られず、カメラにより撮影された画像の変化から、カメラ12自体の位置と方向の変化を推定し、当該カメラの位置を原点(基準)とする座標系における所定の被写体の座標を推定し、当該所定の被写体の位置の変化があれば、車両が移動したものと推定することで、車両の停止を判定するようにしてもよい。具体的には、第五の実施形態として、図11のようにバイアス学習処理を変形することが可能である。
【0079】
図11は、第五の実施形態におけるバイアス学習処理の処理フローを示す図である。第五の実施形態におけるバイアス学習処理では、第一の実施形態におけるステップS004、ステップS005に相当する処理に代えて、それぞれ後述するステップS404、ステップS405の処理が実施される。
【0080】
ステップS404では、停止判定部104は、主制御部101を介して、カメラ12に対して、所定間隔で(例えば1/10秒(100ミリ秒)間隔で)撮影するように指示し、撮影した画像の特徴点の位置の変化に基づいて、SFM(Structure From Motion)等の方法を用いて、画像情報からカメラ12の位置と姿勢を推定し、当該カメラ12の位置と方向の変化を推定する。そして、停止判定部104は、画像情報に含まれる所定の被写体(例えば輝度が最も高い被写体)について、推定したカメラ12の位置を原点(基準)とする座標系における座標値を推定し、当該被写体の座標値の変化を検出する(ステップS404)。なお、SFMについては、図12を用いて後述する。
【0081】
そして、停止判定部104は、推定される当該被写体の座標値が変化した場合に、車両が移動したものと推定し、そうでない場合には車両は移動していないと推定する。そして、停止判定部104は、車両の移動が推定されるか否かを判定する(ステップS405)。
【0082】
以上が、第五の実施形態におけるバイアス学習処理の内容である。このようにすることで、第五の実施形態においては、ナビゲーション装置100は、被写体の座標を正確に算出することが可能となるため、車両が移動したか否かをより正確に検出することが可能となる。
【0083】
次に、第四の実施形態と第五の実施形態におけるバイアス学習処理にて用いるSFMの処理の概要について、図12を用いて説明する。図12(a)は、SFMの原理を説明するためのカメラと被写体との関係を示すモデル図である。図12(b)は、図12(a)における撮影画像の例を示す図である。
【0084】
図12(a)においては、カメラ400と、被写体P1(410)と、被写体P2(420)と、が示されている。カメラ400の位置は、時間の経過に伴って、位置F1から位置F2、位置F2から位置F3へと変化する。また、カメラ400が位置F1から位置F2へ移動する際の運動成分のうち、回転を示す回転行列をR1とし、カメラの位置の移動を示す並進ベクトルをT1とする。また、カメラ400が位置F2から位置F3へ移動する際の運動成分のうち、回転を示す回転行列をR2とし、カメラの位置の移動を示す並進ベクトルをT2とする。なお、回転行列とは、カメラ400の撮影方向の変化を三次元座標上の変換行列によって特定する情報であり、並進ベクトルとは、カメラ400の位置の移動の有無を三次元座標上で特定する情報である。例えば、回転行列R1が[0,0,0]である場合には、カメラ400は回転運動を行っていないことを示し、並進ベクトルT1が[0,0,0]である場合には、カメラ400は移動していないことを示す。また、被写体P1(410)と、被写体P2(420)については、その位置が変化しないものとする。
【0085】
図12(b)には、位置F1において、カメラ400が撮影する画像SCR1(451)に記録された被写体P1の映像(452)と、位置F2においてカメラ400が撮影する画像SCR2(461)に記録された被写体P1の映像(462)と、が示されている。ここで、画像SCR1(451)においては、被写体P1の画像(452)がその中央付近に記録されており、画像SCR2(461)においては、被写体P1の画像(462)が画像SCR1(451)に比べて左寄りに記録されている。
【0086】
ここで、SFMの処理の概要を説明する。まず、停止判定部104は、撮影した画像(SCR1)に含まれる角や点など、エッジや輝度値に特徴がある特徴点を特定し、時系列の画像データ上で当該特徴点の追跡を行う。次に、停止判定部104は、時系列の画像データ間でステレオ計測(weakly calibrated stereo)の原理を用いてカメラ400のF1とF2の間の運動情報を推定する。ここで、運動情報として、回転行列と、並進ベクトルとを用いる。つまり、停止判定部104は、位置F1と位置F2間の運動情報として、回転行列R1と、並進ベクトルT1とを特定する。なお、回転行列は、[Rx,Ry,Rz]の三次元の行列として求められ、並進ベクトルは、[Tx,Ty,Tz]の三次元のベクトルとして求められる。
【0087】
このようにして、停止判定部104は、回転行列R2と並進ベクトルT2とを、位置F2から位置F3への移動時にも算出し、以降のカメラ400の移動についても運動情報を順次求める。そして、停止判定部104は、当該運動情報を参照し、回転行列と並進ベクトルとが、いずれもゼロとなる場合、カメラ400は移動していないと判定する。
【0088】
また、第五の実施形態においては、停止判定部104は、カメラ位置を原点(基準)とするxyz三次元座標上で、被写体P1(410)の座標[Px,Py,Pz]を求め、カメラの位置がF2に移動した場合の被写体P1(410)の座標[Px´,Py´,Pz´]と比較する。そして、停止判定部104は、PxとPx´、PyとPy´、PzとPz´のそれぞれがすべて一致する場合に、カメラ400は移動していないと判定する。これが、SFMを利用した処理の内容である。
【0089】
また、上記の第一の実施形態から第五の実施形態において、停止判定部104は、車速パルス等の検知により、所定の時間、車輪の回転がないことを検知した場合に、カメラ等によって車両の移動を確認しているが、これに限られない。すなわち、車両の状況によって、当該所定の時間を異なる値としてもよい。
【0090】
具体的には、ナビゲーション装置100の記憶装置3またはROM23に、車両の状況に応じた所定の時間を予め格納しておき、停止判定部104は、車両の状況に応じて当該所定の時間を特定するようにしてもよい。例えば、現在地が道路上に属する場合には、当該所定の時間を短い時間(例えば5秒)としてもよいし、現在地が駐車場内に属する場合には、当該所定の時間を長い時間(例えば30秒)としてもよい。このようにすることで、信号待ち等の短めの停車時間において、バイアス学習処理を行うことができる。つまり、細やかにバイアス学習処理を行うことで、ジャイロセンサの検出値を用いて特定する現在地を、正確に特定することができるようになる。また、駐車場内等、正確な現在地の特定の必要性が低い場所においては、バイアス学習処理の頻度を減らして、ナビゲーション装置の消費電力を抑えることが可能となる。
【0091】
さらに、上記第一の実施形態から第五の実施形態のそれぞれの発明技術の全てあるいはいくつかを組み合わせてもよい。例えば、複数の検出手段で車両の移動がないことを検出した場合に、バイアス学習処理部105は、バイアス学習を行うようにしてもよい。
【0092】
以上、本発明について、第一の実施形態から第五の実施形態について説明した。
【0093】
なお、上記の実施形態では、本発明を車載ナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明は車載ナビゲーション装置に限らず、車載装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1・・・演算処理部、2・・・ディスプレイ、3・・・記憶装置、4・・・音声出入力装置、5・・・入力装置、6・・・ROM装置、7・・・車速センサ、8・・・ジャイロセンサ、9・・・GPS受信装置、10・・・FM多重放送受信装置、11・・・ビーコン受信装置、12・・・カメラ、13・・・超音波センサ、21・・・CPU、22・・・RAM、23・・・ROM、24・・・I/F、25・・・バス、41・・・マイクロフォン、42・・・スピーカ、51・・・タッチパネル、52・・・ダイヤルスイッチ、100・・・ナビゲーション装置、101・・・主制御部、102・・・入力受付部、103・・・出力処理部、104・・・停止判定部、105・・・バイアス学習処理部、106・・・計時部、200・・・リンクテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転検出装置を備える車載装置であって、
車両の走行の停止を検知する停止検知手段と、
前記停止検知手段により車両の走行の停止を検知すると、車両が移動しているか否かを推定する車両移動推定手段と、
前記車両移動推定手段により車両が移動していないと推定した場合に、前記回転検出装置のバイアス学習を行うバイアス学習手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載装置であって、
前記車両移動推定手段は、車両の周囲を撮影するカメラ装置によって撮影した画像が、所定の時間変化しないことにより、車両の停止を推定する、
ことを特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載装置であって、
前記車両移動推定手段は、車両の周囲を撮影するカメラ装置によって撮影した画像の変化により前記カメラ装置の位置の変化を特定し、当該カメラ装置の位置が所定の時間変化しないことにより、車両の停止を推定する、
ことを特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載装置であって、
前記車両移動推定手段は、車両の周囲を撮影するカメラ装置によって撮影した画像の変化により前記カメラ装置の回転方向を特定する情報による回転の有無を特定するとともに、前記カメラ装置の移動方向を特定する情報による移動の有無を特定し、所定の時間当該カメラ装置が回転せず、移動していないことにより、車両の停止を推定する、
ことを特徴とする車載装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車載装置であって、
前記車両移動推定手段は、車両の周囲を撮影するカメラ装置によって撮影した画像の変化により前記カメラ装置の位置と回転の変化を特定し、当該カメラ装置の位置を基準とする座標系において、前記画像に含まれる所定の特徴点の座標値が所定の時間変化しないことにより、車両の停止を推定する、
ことを特徴とする車載装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載装置であって、
前記車両移動推定手段は、車両の周囲に発した超音波の反射波により障害物までの距離を推定し、当該距離が所定の時間変化しないことにより、車両の停止を推定する、
ことを特徴とする車載装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車載装置であって、さらに、
前記車両の車輪を撮影する車輪撮影手段を備え、
前記停止検知手段は、前記車輪撮影手段により撮影した画像において、前記車輪の回転が所定の時間停止している場合に、前記車両の停止を検知する、
ことを特徴とする車載装置。
【請求項8】
車載装置のバイアス学習方法であって、
前記車載装置は、
回転検出装置を備え、
車両の走行の停止を検知する停止検知ステップと、
前記停止検知ステップにおいて車両の走行の停止を検知すると、車両が移動しているか否かを推定する車両移動推定ステップと、
前記車両移動推定ステップにより車両が移動していないと推定した場合に、前記回転検出装置のバイアス学習を行うバイアス学習ステップと、
を実施する、ことを特徴とするバイアス学習方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−154669(P2012−154669A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11845(P2011−11845)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】