説明

車載運転支援情報表示システム

【課題】手動操作の頻度低減とカメラ映像の視認性向上との両立を損なうことなく、走行安全性の向上が図られる車載運転支援情報表示システムを提供する。
【解決手段】車室に設けられた表示モニタ3に自車周辺の死角となる方向を撮影する車載カメラ2L、2R、2Bのカメラ映像を表示し、表示されるカメラ映像を現状の走行状態に応じて切り替える画像処理回路6を備えた車載運転支援情報表示システムにおいて、バックギヤ信号の入力に応じて表示されるバックギヤ初期画面の表示中に乗員が任意表示可能なバックギヤ選択画面を表示させた場合、バックギヤ信号の入力が解除されても、現状の走行状態に応じた画面を表示することなく前記バックギヤ選択画面を一定時間維持し、一定時間内に再びバックギヤ信号が入力されれば、新たにバックギヤ選択画面が選択されない限り、表示が維持されているバックギヤ選択画面の表示を継続して維持するタイマを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車周辺の死角となる方向を撮影する車載カメラのカメラ映像を車室に設けられた表示モニタに表示する画像処理回路を備えた車載運転支援情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の適所に取り付けられる複数の車載カメラと、これらの車載カメラにより撮影される自車周辺(自車の左側方、右側方、前方、後方等)の複数のカメラ映像を分割画面表示する表示モニタと、この表示モニタの分割画面に表示される映像を切り替える画像処理回路と、を備えた車載運転支援情報表示システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−114048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載されている従来の車載運転支援情報表示システムにあっては、複数のカメラ映像が表示モニタの分割画面に表示されるので、乗員が確認を欲するカメラ映像を表示するための手動操作の頻度低減が図られ、この点において走行安全性に優れる。しかし、走行安全性はこの一点との関係にあるのでなく、例えばカメラ映像の視認性とも関係し、カメラ映像の拡大表示が制限されてカメラ映像が視認しにくくなれば走行安全性が低下する。
【0004】
ここで、車両の現状の走行状態(後退走行、左右旋回走行等)に応じて、その走行状態に適したカメラ映像を表示モニタに自動的に拡大表示させるようにすれば、適切なタイミングで必要なカメラ映像に切り替える手動操作の頻度を低減しつつカメラ映像の視認性を向上させることができ、走行安全性を向上させることができる。
【0005】
ところが、このように現状の走行状態に適したカメラ映像を自動的に拡大表示させるようにすると、乗員が確認を欲するカメラ映像と走行状態に適したカメラ映像とが一致しない場合、乗員は表示モニタに表示されるカメラ映像を選択する必要性が生じる。このため、走行状態が切り替えられる度に、カメラ映像を選択し直す必要が生じ、これでは乗員は運転に集中できず、走行安全性が低下するといった問題を生じる。
【0006】
その一方、走行状態が変更されたときは、前記選択されたカメラ映像の表示はもはや必要なく、現状の走行状態に適したカメラ映像を表示させて、手動操作の頻度を低減しつつカメラ映像の視認性を向上させることによる走行安全性を重視したいという要求もある。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、手動操作の頻度低減とカメラ映像の視認性向上との両立を損なうことなく、走行安全性の向上が図られる車載運転支援情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の特徴部分は、車両の後方を撮影する車載カメラと、車両の左方と右方との少なくとも一方を撮影する車載カメラと、前記各車載カメラにより撮像された画像を表示する表示モニタと、前記各車載カメラからの映像信号が入力されると共にバックギヤ信号とウインカー信号との各信号が入力可能で、バックギヤ信号が入力されたときに前記表示モニタの画面上に三画面分割して前記各車載カメラからの画像をバックギヤ初期画面として表示するように制御する画像処理回路と、前記三画面分割表示された各画像のうちいずれの画像を全画面に拡大して表示するか否かの選択信号を前記画像処理回路に出力する選択手段とを備え、
前記画像処理回路には、前記選択手段により前記分割表示された各画面のうちから画像が選択されかつ前記バックギヤが解除されたときに、前記選択された画面が一定時間保持されるように計時を開始するタイマが設けられ、前記画像処理回路は、一定時間計時後に前記表示モニタに対してバックギヤ信号が入力されないときに表示される通常表示画面を表示するようにしたことである。
【発明の効果】
【0009】
故に、本発明によれば、バックギヤの入力と解除とが頻繁に行なわれても乗員が選択した画面を表示でき、従って、手動操作の頻度低減とカメラ映像の視認性向上との両立を損なうことなく、乗員が確認を欲するカメラ映像については表示を維持することにより、走行安全性の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の車載運転支援情報表示システムを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は実施例1の車載運転支援情報表示システムの全体図(概略図)であり、(a)は平面見取図であり、(b)は斜視図である。図2は実施例1の車載運転支援情報表示システムにおける制御系を示す制御ブロック図である。図3は、表示モニタにおけるカメラ映像の表示例を示す図であり、(a)は分割画面モード、(b)及び(c)は拡大画面モードの画面を示す図である。
【0012】
実施例1の車載運転支援情報表示システム1は、車両(自車)Aに搭載され、図1(a)に示すように、レフトビューカメラ2L、ライトビューカメラ2R、リアビューカメラ2Bから構成された車載カメラ2と、この車載カメラ2のカメラ映像を表示する液晶画面を備えた表示モニタ3と、手動操作によりカメラ映像を切り替える場合に使用される選択手段としてのリモートコントロール装置4と、照明を制御する照明制御系51a及び車速を制御するAT制御系51bと、照明制御系51a及びAT制御系51bに接続された信号回路5a及び5bと、車載カメラ2により撮影され、車載カメラ2の撮影方向により異なる複数のカメラ映像のすべて、或いは、特定のカメラ映像を表示モニタ3に切り替えて表示する画像処理回路6と、を備えている。
【0013】
車載運転支援情報表示システム1における制御系では、図2に示すように、レフトビューカメラ2Lにより生成される自車左側方の画像信号、ライトビューカメラ2Rにより生成される自車右側方の画像信号、リアビューカメラ2Bにより生成される自車後方の画像信号が画像処理回路6に入力され、これらの画像信号が画像処理回路6にて拡大・縮小等要求されるカメラ映像に変換されて表示モニタ3に出力される。これらのカメラ映像は、後述する画像処理回路6の制御処理に基づいて、図3(a)に示すような分割画面により表示され(この場合、車載カメラ2の撮影方向により異なる複数のカメラ映像が表示される。)、或いは、図3(b)或いは(c)に示すような拡大画面により表示される。
【0014】
また、前記画像処理回路6には、乗員の手動操作を受けたリモートコントロール装置4から生成され、表示モニタ3に表示されるカメラ映像を切り替える選択信号、及び、車両Aの左ウインカー信号、右ウインカー信号、バックギヤ信号が入力される。
【0015】
なお、前記左ウインカー信号及び右ウインカー信号は、乗員によるウインカースイッチのON/OFF操作により生成されるもので、信号回路5aにより、ウインカーW(左ウインカーLW、右ウインカーRW)の点灯/消灯を制御する照明制御系51aから取り出される。バックギヤ信号は、乗員によるシフトチェンジにより生成されるもので、信号回路5bにより、車速を制御するAT制御系5bから取り出される。さらに、前記車載カメラ2のうちレフトビューカメラ2L及びライトビューカメラ2Rは、車両左側方の死角を広範囲にカバーすべく広角カメラが用いられ、図1(a)及び(b)に示すように、それぞれ左側ドアミラーLM、右側ドアミラーRMの下部に設けられている(なお、車載カメラは、各ドアミラーに内蔵され(図1(b−1)参照)、或いは、各ドアのステーに設定される(図1(b−2)参照)。)。リアビューカメラ2Bは、車両後方の死角を広範囲にカバーすべく広角カメラが用いられ、車両後部のリヤガーニッシュBGに内蔵されている。
【0016】
図4は実施例1の画像処理回路にて実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。図5は実施例1の画像処理回路にて実行される制御処理の流れを示すフローチャートであり、図4の続きを示す図である。図6は実施例1の画像処理回路にて実行される制御処理のうちバックギヤ初期画面の表示処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。なお、バックギヤ初期画面は、図3に示すように、分割画面モード又は全画面モードの選択が可能である。
【0017】
先ず、バックギヤ初期画面の画面モードの設定処理を説明する。
バックギヤ初期画面は、ステップS1(図4)の処理により表示モニタに表示される画面であり、左(右)ウインカー信号又はリモートコントロール装置4からの選択信号の生成に応じて表示される自車の左(右)側方のカメラ映像を表示する画面と、バックギヤ信号に応じて表示される自車の後方のカメラ映像を表示する画面とから成る。このバックギヤ初期画面は、ステップS01〜ステップS04(図6)の処理に従って設定される。
【0018】
図6に示すように、ステップS01は、分割画面モードが選択されているか否かを判断するステップである。ステップS02は、分割画面モードが選択されている場合に、表示モニタ3の画面を分割画面に設定するステップである。
【0019】
ステップS03は、分割画面モードが選択されていない場合に、拡大画面モードが選択されているか否かを判断するステップである。ステップS04は、拡大画面モードが選択されている場合に、表示モニタ3の画面を拡大画面に設定するステップである。ステップ04で拡大画面モードが選択されていない場合は、ステップS02に移行して表示モニタ3の画面を分割画面に設定する(分割画面がデフォルト画面である。)。
【0020】
前記画面モード切り替え手段(ステップS01〜ステップS04)は、分割画面モードが選択されると、乗員がカメラ映像を通じて自車周辺を直感的に把握し易いよう、表示モニタ3の左上領域にレフトビューカメラ2Lのカメラ映像の100%を表示し、右上領域にライトビューカメラ2Rのカメラ映像の100%を表示し、下領域にリアビューカメラ2Bのカメラ映像の50%を表示する(図3(a))。また、拡大画面モードが選択されると、例えば、表示モニタ3の画面全体に、リアビューカメラ2Bのカメラ映像の100%を表示し(図3(b))、或いは、レフトビューカメラ2Lのカメラ映像の100%を表示する(図3(c))。
【0021】
なお、画像処理回路6は、走行支援マーカー(例えば、自車からの距離、自車の車幅等)を表示することができる。そして、画像処理回路6は、このマーカーを、自車の後方を撮影するリアビューカメラ2Bのカメラ映像を拡大画面モードにより表示する場合にのみ表示するよう制御する。
【0022】
即ち、画像処理回路6は、乗員によるリモートコントロール装置4の操作(以下、「手動操作」と称す。)に応じて(画面切り替え信号を受けて)、前記複数のカメラ映像のうち単一のカメラ映像を表示モニタ3に拡大表示する拡大画面モードと、前記複数のカメラ映像のうち二以上のカメラ映像を表示モニタ3に分割画面表示する分割画面モードとを切り替える画面モード切り替え手段(ステップS01〜ステップS04)を有している。
【0023】
次に、カメラ映像の表示処理を説明する。
ステップS1は、上述の処理(ステップS01〜ステップS04)に従って設定された通常表示画面又はバックギヤ初期画面を表示モニタ3に表示する。なお、バックギヤ初期画面では、分割画面モードが選択されると、リアビューカメラ2Bのカメラ映像がレフトビューカメラ2L及びライトビューカメラ2Rのカメラ映像の下側に表示される(図3(a)参照)。なお、通常表示画面は、図3(a)に示すものと同様の分割画面であるが、リアビューカメラ2Bのカメラ映像がレフトビューカメラ2L及びライトビューカメラ2Rのカメラ映像の上側に表示される。ここで、走行安全性を考慮して、車載運転支援情報表示システム1は、通常表示画面の表示時にはバックギヤ初期画面の表示時に比べて、より遠方を撮像するようリアビューカメラ2Bの撮像範囲を制御するようになっている。
【0024】
ステップS2は、ステップS1に続き、選択信号が入力されたか否か(バックギヤ選択画面が表示されているか否か)を判断するステップであり、選択信号が入力された場合はステップS3に移行し、入力されていない場合はステップS4に移行する。ステップS3は、選択信号が入力された場合に、選択信号に応じた画面(以下、「バックギヤ選択画面」と称す。)を表示するステップである。ステップS4は、バックギヤ信号が解除されたか否かを判断するステップであり、バックギヤ信号が解除された場合はステップS5に移行し、変更されていない場合はステップS2に移行する。
【0025】
ステップS5は、バックギヤ選択画面像優先モードが選択されているか否かを判断するステップである。バックギヤ選択画面像優先モードが、選択されている場合はステップS6に移行し、選択されていない場合はステップS2に移行する。
【0026】
ステップS6は、ステップS5でバックギヤ選択画面像優先モードが選択されている場合に、選択信号が入力されているか否か(ステップS2でYesか否か)を判断するステップである。即ち、選択信号が入力されていない場合はステップS2に移行し、表示されている場合はステップS7に移行する。
【0027】
ステップS7は、選択信号に応じたバックギヤ選択画面の表示を維持するステップである。このステップS7の処理が実行された場合に限り、ステップS8〜ステップS13の処理が実効される。
【0028】
ステップS8は、画像処理回路6に備えられたタイマにより、予め設定された設定時間が計時される(タイマセット)。この設定時間は、任意に設定可能であり、ここでは20秒間に調節されている。ステップS9は、設定時間が経過したか否か、つまり、ステップS7でバックギヤ選択画面の表示が維持された時から20秒間が経過したか否かを判断するステップである。
【0029】
ステップS10では、タイマの計時中にバックギヤ信号が再び入力されたか否かを判断するステップである。タイマの計時中にバックギヤ信号が入力されない場合はステップS8に移行して設定時間のカウントを継続し、バックギヤ信号が再び入力された場合はステップS11に移行する。
【0030】
ステップS11は、タイマの計時中に再びバックギヤ信号が入力された場合に、タイマの計時をリセットする(計時時間を0秒間に戻す)ステップであり、このステップS11の処理が行なわれた後、ステップS3(図4)に移行する。このとき、バックギヤ選択画面が維持されているため(ステップS7)、ステップS3は、この維持されたバックギヤ選択画面をそのまま表示させるステップとなる。
【0031】
一方、ステップS12は、タイマの計時中にバックギヤ信号が入力されない場合に、タイマをリセットするステップであり、このステップS12の処理が行なわれた後、ステップS13に移行する。ステップS13は、ステップS7で表示が維持されているバックギヤ選択画面を解除するステップであり、この処理が行なわれた後、ステップS2に移行する。
【0032】
即ち、前記画像処理回路6は、図4に示すように、バックギヤ信号の入力を受けたときは、前記表示モニタ3に該バックギヤ信号に応じた既定のカメラ映像をバックギヤ初期画面として表示し、該バックギヤ信号の入力中は、該バックギヤ初期画面を保持するバックギヤ信号応答表示手段を有する(ステップS1、ステップS4)。また、前記バックギヤ信号の入力中に、カメラ映像の選択信号の入力を受けたときは、前記表示モニタ3に該選択信号に応じた特定のカメラ映像をバックギヤ選択画面として表示する選択信号応答表示手段(ステップS2、ステップS3)を有する。そして、前記選択信号の入力中に前記バックギヤ信号の入力が解除されたことを条件に、前記バックギヤ選択画面の表示を維持するように計時を開始し、該計時中にバックギヤ信号の入力を受けたときは、該計時をリセットして、前記バックギヤ選択画面の表示を維持するタイマ(ステップS8)を有する。
【0033】
次に、作用を説明する。
【0034】
はじめに画像処理回路6にバックギヤ信号が入力されていること、即ち、通常表示画面にバックギヤ初期画面が表示されていることを前提とする。この場合、バックギヤ選択画面像優先モードが選択されていない場合(ステップS5でNoの場合)であって、選択信号も入力されていない(バックギヤ選択画面が表示されていない)場合は、図4のフローチャートにおいて、ステップS2→ステップS4→ステップS5→ステップS2という流れが繰り返され、バックギヤ初期画面の表示が維持される。
【0035】
このとき、拡大画面モードが設定されている場合(ステップS03でYesの場合)、そのバックギヤ初期画面は、図3(b)に示すように、自車後方を示す撮像が拡大画面により表示され、分割画面モードが選択されている場合は(ステップS01でYesの場合)、図3(a)に示すように、車両の後方撮像を含む分割画面が表示される。従って、手動操作の頻度低減を図りつつ、カメラ映像の拡大表示による視認性を向上させることができる。なお、この表示状態で、例えば、画像処理回路6に左ウインカー信号がされると、左ウインカー信号に応じて走行安全を考慮した左側方のカメラ映像が表示モニタ3の拡大画面に表示された状態となる(ステップS1)。
【0036】
一方、バックギヤ選択画面像優先モードが選択されていない場合に、選択信号が入力された場合は、図4のフローチャートにおいて、ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS2という流れとなり、バックギヤ信号の入力が解除されない限り、この流れが繰り返される(バックギヤ選択画面の表示が維持される。)。従って、バックギヤ初期画面ではなく、乗員が確認を欲するカメラ映像を選択して確認することもできる。但し、バックギヤ信号の入力が解除されれば、バックギヤ選択画面の表示は解除されて、通常表示画面に切り替えられる(ステップS4→ステップS2)。
【0037】
バックギヤ信号の入力が解除された場合、バックギヤ選択画面優先モードが有効であると(ステップS5でYesの場合)、図4及び図5のフローチャートにおいて、ステップS2→ステップS3(或いは、ステップS2→ステップS4)→ステップS5→ステップS6という流れとなり、選択信号が入力されている場合(バックギヤ選択画面が表示されている場合)は、ステップS6に続いてステップS7という流れとなる(選択信号が入力されていなければ、ステップS2〜ステップS6までの流れが繰り返される。)。このとき、バックギヤ信号が再び入力されない限り、タイマによって計時される設定時間(20秒間)を限度にステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS8という流れが繰り返される。これは、設定時間内に再びバックギヤ信号が戻されるか否かの判断時間である。
【0038】
タイマの計時中に再びバックギヤ信号が入力された場合は、ステップS11→ステップS3という流れとなる。即ち、タイマがリセットされ(ステップS11)、再びバックギヤ信号の入力が解除されない限りバックギヤ選択画面の表示が維持されたままの状態となる(ステップS3→ステップS4→ステップ2→ステップS3という流れが繰り返される。)。
【0039】
一方、タイマの計時中にバックギヤ信号が入力されない場合は、計時が完了した時点でバックギヤ選択画面の表示は解除され、通常表示画面左(右)ウインカー信号が入力されれば、自車の左(右)側方のカメラ映像の画面、バックギヤ信号が入力されていれば、バックギヤ初期画面)が表示される(ステップS9→ステップS12→ステップS13→ステップS2→ステップS4→ステップS2)。
【0040】
図7Aは実施例1の車載運転支援情報表示システムの第1の作用説明図である。図7Bは実施例1の車載運転支援情報表示システムの第2の作用説明図である。以下、図7A及び図7Bを参照して説明する。
【0041】
(タイマの計時中に再びバックギヤ信号が入力された場合)
例えば、図7Aに示すように、はじめにバックギヤ信号が入力されている場合であって、自車左側方の映像を表示する左側方バックギヤ選択画面が表示されていた場合(ステップS2でYesの場合)、バックギヤ信号の入力が解除されて左ウインカー信号が入力されても、通常表示画面(自車の右側方を表示する画面)は表示されず、バックギヤ選択画面の表示が維持される(ステップS7)。そして、タイマの計時中に再びバックギヤ信号が入力された場合でも、バックギヤ信号に応じて通常表示画面やバックギヤ初期画面は表示されず、手動操作により選択されていたバックギヤ選択画面の表示が維持されたままとなる(タイマがリセットされ(ステップS11)、ステップS9には移行せず、ステップS3→ステップS4→ステップS2→ステップS3の流れが繰り返される。)。その後、乗員は、再びバックギヤ選択画面(例えば、自車右側方の映像を表示する右側方バックギヤ選択画面)を表示させることもできる。
【0042】
これは、バックギヤ初期画面が表示されている状態でバックギヤ選択画面が表示されるということは、乗員にとって最も走行安全に寄与する映像が表示されたものと推定し、バックギヤの入力とその解除の切り替えが行なわれても通常表示画面やバックギヤ初期画面の表示を禁止してバックギヤ選択画面の表示を優先するという思想に基づく。これにより、バックギヤ信号の入力とその解除の切り替えの度にバックギヤ選択画面が解除されてしまい、また、バックギヤ選択画面の選択をやり直すといった作業が回避され、乗員は安全運転に集中することができるようになる。
【0043】
(タイマの計時中にバックギヤ信号が入力されない場合)
例えば、図7Bに示すように、はじめにバックギヤ信号が入力されている場合であって、自車左側方の映像を表示する左側方バックギヤ選択画面が表示されていた場合(ステップS2でYesの場合)、バックギヤ信号の入力が解除されて右ウインカー信号が入力されても、通常表示画面(自車の右側方を表示する画面)は表示されず、左側方バックギヤ選択画面の表示が維持される(ステップS7)。しかし、タイマの計時中に再びバックギヤ信号が入力されなければ、タイマが計時を完了した時点で、通常表示画面(右ウインカー信号に応じた自車右側方の映像を表示する画面)が表示される(ステップS9→ステップS12→ステップS13→ステップS2→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS2という流れとなる)。なお、タイマが計時を完了した後に、バックギヤ信号が入力された場合は、バックギヤ初期画面が表示される。
【0044】
このようにバックギヤ選択画面の表示を維持する時間を制限することによって、前述した手動操作の頻度低減とカメラ映像の視認性の向上との両立に基づく走行安全性が維持される。
【0045】
次に、効果を説明する。
実施例1の車載運転支援情報表示システムにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0046】
(1) 車室に設けられた表示モニタ3に自車周辺の死角となる方向を撮影する車載カメラ2のカメラ映像を表示し、該表示されるカメラ映像を現状の走行状態に応じて切り替える画像処理回路6を備えた車載運転支援情報表示システム1において、
前記画像処理回路6は、バックギヤ信号の入力を受けたときは、前記表示モニタ3に該バックギヤ信号に応じた既定のカメラ映像をバックギヤ初期画面として表示し、該バックギヤ信号の入力中は、該バックギヤ初期画面を保持するバックギヤ信号応答表示手段(ステップS1、ステップS4)と、前記バックギヤ信号の入力中に、カメラ映像の選択信号の入力を受けたときは、前記表示モニタに該選択信号に応じた特定のカメラ映像をバックギヤ選択画面として表示する選択信号応答表示手段(ステップS2、ステップS3)と、前記選択信号の入力中に前記バックギヤ信号の入力が解除されたことを条件に、前記バックギヤ選択画面の表示を維持するように計時を開始し、該計時中にバックギヤ信号の入力を受けたときは、該計時をリセットして、前記バックギヤ選択画面の表示を維持するタイマ(ステップS8)を有するため、手動操作の頻度低減とカメラ映像の視認性向上との両立を損なうことなく、乗員が確認を欲するカメラ映像については表示を維持でき、走行安全性の向上が図られる。
【0047】
即ち、バックギヤ信号の入力とその解除が頻繁に行なわれる場合であっても、乗員が確認を欲するバックギヤ選択画面は維持(手動操作の頻度が低減)されるので乗員は運転に集中でき、また、バックギヤ選択画面を維持する時間を一定時間に限定できるので、走行状態に応じて切り替えられる通常表示画面の表示機能(手動操作の頻度低減とカメラ映像の視認性向上との両立による走行安全性)を損なうこともない。
【0048】
(2) 前記画像処理回路6は、前記左ウインカー信号が入力されたときは、前記表示モニタに自車の左側方のカメラ映像を通常表示画面として表示し、前記右ウインカー信号が入力されたときは、前記表示モニタに自車の右側方のカメラ映像を通常表示画面とし、バックギヤ信号が入力されたときは、前記表示モニタに自車の後方のカメラ映像を通常表示画面(特に、実施例では、これをバックギヤ初期画面と称している。)として表示するため、車両に通常備わる制御信号(ギヤ位置信号、ウインカー信号)を利用して容易に前記(1)の効果を得ることができる。
【0049】
(3) 前記画像処理回路6は、前記バックギヤ初期画面及び通常表示画面を、画面切り替え信号を受けて、複数のカメラ映像を表示する分割画面と、特定のカメラ映像のみを拡大して表示する拡大画面とに切り替えるため(ステップS01〜ステップS04)、拡大画面による視認性向上を重視するか、分割画面による手動操作の頻度低減を重視するかの選択が可能である。
【0050】
(4) 前記画像処理回路6は、前記タイマ(ステップS8)の有効と無効とを切り替えるバックギヤ選択画面優先表示モード切り替え手段(ステップS5)を有するため、走行環境に併せて、乗員自身が前記(1)の効果を採否できる。
【0051】
[構成の代替]
以上、本発明の車載運転支援情報表示システムを実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0052】
例えば、画像処理回路6は、表示モニタ3に、左旋回のハンドル操作に応じて自車左側方のカメラ映像を通常表示画面として表示し、右旋回のハンドル操作に応じて自車右側方のカメラ映像を通常表示画面として表示するようにしてもよい。
【0053】
また、車載運転支援情報表示システム1は、自車前方の状況を撮影するフロントビューカメラを備え、前記画像処理回路6は、表示モニタ3に、車両の前進走行に応じてフロントビューカメラのカメラ撮影を表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の車載運転支援情報表示システムの全体図(概略図)であり、(a)は平面見取図であり、(b)は斜視図である。
【図2】実施例1の車載運転支援情報表示システムにおける制御系を示す制御ブロック図である。
【図3】表示モニタにおけるカメラ映像の表示例を示す図であり、(a)は分割画面モード、(b)及び(c)は拡大画面モードの画面を示す図である。
【図4】実施例1の画像処理回路にて実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1の画像処理回路にて実行される制御処理の流れを示すフローチャートであり、図4の続きを示す図である。
【図6】実施例1の画像処理回路にて実行される制御処理のうちバックギヤ初期画面の表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図7A】実施例1の車載運転支援情報表示システムの第1の作用説明図である。
【図7B】実施例1の車載運転支援情報表示システムの第2の作用説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 車載運転支援情報表示システム,
2(2L、2R、2B) 車載カメラ,
3 表示モニタ,
4 リモートコントロール装置(選択手段),
6 画像処理回路,
S8 タイマ,
A 車両(自車).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方を撮影する車載カメラと、車両の左方と右方との少なくとも一方を撮影する車載カメラと、前記各車載カメラにより撮像された画像を表示する表示モニタと、前記各車載カメラからの映像信号が入力されると共にバックギヤ信号が入力可能で、バックギヤ信号が入力されたときに前記表示モニタの画面上に三画面分割して前記各車載カメラからの画像をバックギヤ初期画面として表示するように制御する画像処理回路と、前記三画面分割表示された各画像のうちいずれの画像を全画面に拡大して表示するか否かの選択信号を前記画像処理回路に出力する選択手段とを備え、
前記画像処理回路には、前記選択手段により前記分割表示された各画面のうちから画像が選択されかつ前記バックギヤが解除されたときに、前記選択された画面が一定時間保持されるように計時を開始するタイマが設けられ、前記画像処理回路は、一定時間計時後に前記表示モニタに対してバックギヤ信号が入力されないときに表示される通常表示画面を表示することを特徴とする車載運転支援情報表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載した車載運転支援情報表示システムにおいて、
前記タイマは、前記計時中に前記バックギヤ信号が入力されたときにリセットされることを特徴とする車載運転支援情報表示システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか1項に記載した車載運転支援情報表示システムにおいて、
前記画像処理回路は、さらにウインカー信号が入力可能とされ、前記左ウインカー信号が入力されると前記表示モニタの画面に前記車両の左側方を撮影する車載カメラにより撮像された画像が表示画面として表示されるように前記表示モニタを制御し、前記右ウインカー信号が入力されると前記表示モニタの画面に前記車両の右側方を撮影する車載カメラにより撮像された画像が表示画面として表示されるように前記表示モニタを制御することを特徴とする車載運転支援情報表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2009−88811(P2009−88811A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253890(P2007−253890)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】