説明

車輌の揺動アーム取付構造

【課題】車輌のフレーム部材に、サスペンションアーム等の揺動アームを取り付ける構造において、取付強度を維持しつつ、組み付け作業を容易できるようにすることを目的としている。
【解決手段】揺動アーム、たとえばサスペンションアーム26の基端部34には揺動支軸37を相対回転自在に備え、揺動支軸37に取付ボス部83を設けると共に、該取付ボス部83には、揺動支軸37と略直交する方向にボルト80が挿通可能なボルト挿通孔84を設ける。前部フレーム部材43に設けられたアーム取付部40に、上記取付ボス部83に挿通したボルト80により揺動支軸37を締着する。好ましくは、取付ボス部83は、揺動支軸37と一体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を支持するサスペンションアーム等のように、車輌の車体フレーム部材に上下揺動自在に取り付けられる揺動アームの取付構造に関に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪の懸架装置として用いられるサスペンションアーム(揺動アーム)は、一般に、車体フレーム部材に設けられたアーム取付部に、揺動支軸を介して上下揺動自在に取り付けられている。
【0003】
図17は、従来の鞍乗型四輪走行車のサスペンションアーム302の取付構造を示す平面図であり、図18は図17のアーム取付ブラケット303の形状を明確に示す左側面図である。図17において、車幅の中央に配置された車体フレーム部材301の左右両側面には、それぞれ前後一対の前記アーム取付ブラケット303が溶接により固着されている。左右のサスペンションアーム302は平面視でA形(V形)に形成されており、前後のアーム部材302a、302bの基端には筒形基端部310が溶接により固着され、各筒形基端部310は、軸受311及び揺動支軸305を介して前記アーム取付ブラケット303に回動自在に取り付けられている。
【0004】
前側のアーム部材302aの基端部310内に配置された軸受311は、ニードル軸受であり、該ニードル軸受311の内輪320は揺動支軸305に嵌合すると共に、前後方向のスペーサの役目も兼ねている。後側のアーム部材302bの基端部310内に配置された軸受311はピローボール式軸受である。
【0005】
前記各取付ブラケット303は、図18に示すように、側面視でハット形に形成されると共に車体フレーム部材301の側面に溶接により固着されており、前後の壁303a、303bに、揺動支軸305挿通用の挿通孔304がそれぞれ形成されている。
【0006】
図17において、各揺動支軸305は、頭部305aと先端おねじ部を有する軸ボルトであり、取付ブラケット303の前後壁303a、303bの挿通孔304に、前方から挿入され、後端部に螺着されたナット306とボルト頭部305aの間で、揺動支軸305を前後方向に締結している。
【0007】
なお、先行技術文献としては、特許文献1等がある。
【特許文献1】特公平06−86230号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図17のようなアーム取付構造では、組付時、まず、サスペンションアーム302の各基端部310を取付ブラケット303内に左右側方あるいは上方から挿入し、次に、揺動支軸305を、前方から、取付ブラケット303の挿通孔304及び軸受311内に挿入し、そして、後方からナット306を螺着して締め付けることになる。
【0009】
このように揺動支軸305を前方から挿入してサスペンションアーム32を組み付ける作業は、取付ブラケット303の前方に広い作業スペースが必要となるが、各種車輌用部品が配置されるために、広い作業スペースを確保することが困難であり、そのため、サスペンションアームの組付作業に手間がかかる。すなわち、組付性がよくない。また、揺動支軸305を挿通孔304及び軸受311内に挿通する時には、基端部310と取付ブラケット303の挿通孔304との位置を、正確に合わせた状態に維持しておかなければならず、この点においても、組付性がよくない。
【0010】
さらに、サスペンションアーム302には、上下揺動時、大きな引っ張り荷重がかかるため、取付ブラケット303は、溶接により強固に車体フレーム部材301の側面に固着しておかなければならない。特に、車輌軽量化のために、アルミ等の軽合金製のフレーム部材301を用いる場合には、図18のように、車体フレーム部材302との当接面が長くなる形状に取付ブラケット303を形成し、これにより長い溶接長を確保して、強度を向上させる必要があり、重量増加の原因にもなる。
【0011】
本願発明は、サスペンションアーム等の取付強度又は支持強度を高く維持しつつ、組付作業を容易にし、組付性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本願請求項1記載の発明は、車輪を支持する揺動アームを、車体フレーム部材に上下揺動自在に取り付ける車輌の揺動アーム取付構造において、前記揺動アームの基端部には揺動支軸を相対回転自在に備え、該揺動支軸に取付ボス部を設け、該取付ボス部には、揺動支軸と略直交する方向にボルトが挿通可能な挿通孔又は切欠きを設け、前記車体フレーム部材に設けられたアーム取付部に、前記取付ボス部の挿通孔又は切欠きに挿通したボルトにより、前記揺動支軸を締着している。
【0013】
上記構成によると、サスペンションアーム等の揺動アームの組付時、ボルトも、揺動アームの組付方向と同じ方向から組み付け、締結作業を行うことができる。たとえば、前後方向に延びる車体フレーム部材に設けられたアーム取付部に対し、ボルトを車輌の左右方向の一方から組み付け、揺動アームの基端部を左右方向に締結することにより、揺動アームを上下揺動自在に取り付けることができるので、組付作業用に広い作業スペースを確保し易く、サスペンションアーム等の揺動アームの組付作業が容易になり、組付性が向上する。
【0014】
また、揺動支軸と略直交する方向にボルトを挿入して、車体フレーム部材のアーム取付部に固着するので、図17のようにボルト兼揺動支軸を前方から挿入する従来構造に比べ、引っ張り荷重に対して強固にフレーム部材に固着することができる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車輌の揺動アーム取付構造において、前記取付ボス部は、前記揺動支軸と一体に形成されている。
【0016】
上記構成により、部品点数を削減できると共に、揺動支軸の支持強度も高く維持できる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の車輌の揺動アーム取付構造において、前記アーム取付部は、前記車体フレーム部材を横断すると共に両端部が前記車体フレーム部材の両側面から突出するように前記車体フレーム部材に固着され、前記筒形のアーム取付部の両端面に、それぞれ前記揺動アームの基端部の前記揺動支軸を取り付けている。
【0018】
上記構成により、左右の揺動アームに引っ張り荷重かかかった場合、その引っ張り荷重は左右共通のアーム取付部を介して互いに相殺し、車体フレーム部材への影響を少なくすることができる。これにより、車体フレーム部材自体にかかる荷重を軽減でき、フレーム部材自体の強度を高くすることなく、大きな荷重に耐える取付構造を提供することができる。特に、車体フレーム部材をアルミ等の軽合金で製造する場合には、フレーム部材の肉厚を大きくしたり、断面を大きくしたりすることなく、強度を維持することができ、重量軽減に寄与することができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の車輌の揺動アーム取付構造において、前記揺動アームの基端部と前記揺動支軸との間に軸受を介装し、前記揺動支軸の外周面が、前記軸受の内輪を兼ねている。
【0020】
上記構成より、軸受を介して、揺動アームを上下に円滑に揺動させることができると共に、軸受の内輪を省略することにより、部品点数の削減ができる。
【発明の効果】
【0021】
要するに本発明によると、サスペンションアーム等の揺動アームの取付部の支持強度を高く維持しつつ、組み付け作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[車輌の概要]
図1〜図12は本発明の第1の実施の形態であり、スポーツタイプの不整地用鞍乗型四輪走行車に適用した例を示している。図1は前記四輪走行車の斜視図であり、車体フレーム1内に、エンジン2、変速機ケース3及びクラッチ等からなるパワーユニット5を収納し、複数のエンジンブラケット60、61、62を介して前記パワーユニット5を車体フレーム1に支持している。車体フーム1の前部に左右一対の前車輪7を備え、車体フレーム1の後方に左右一対の後車輪8を備え、車体フレーム1の上側に、鞍型のシート10、燃料タンク11及び操舵ハンドル12等を備え、前車輪7及び後車輪8の上方にそれぞれフェンダー14等を備えている。操舵ハンドル12は、下方に延びる操舵軸13の上端部に固着されている。
【0023】
後車輪8はスイングアーム15の後端部に支持され、スイングアーム15の前端部は車体フレーム1のスイングアーム支持部18に上下揺動自在に支持されている。スイングアーム15の途中部分には、リヤショックアブソーバ19の下端部がリンク機構(図示せず)を介して連結されている。エンジン2の動力は、前記変速機ケース3内の変速機構及びクラッチ等を介して出力スプロケット16に伝達され、該出力スプロケット16から駆動チェーン17等を介して後車輪8に伝達される。
【0024】
車体フレーム1は、主たる構成部材として、左右1対の上部フレーム部材41と、左右1対の下部フレーム部材42と、下部フレーム部材42の前端と上部フレーム部材41の前端(前下端)を連結する一本の前部フレーム部材43と、各上部フレーム部材41の後端と各下部フレーム部材42の後端とを連結する左右一対のブラケット部材44と、該左右一対のブラケット部材44の上端同士並びに下端同士をそれぞれ連結する上下のクロス部材等を有している。車体フレーム1は、たとえばアルミニウム等の軽合金で製造されている。
【0025】
図2は四輪走行車の正面図であり、左右の前車輪7は、該実施の形態ではダブルウィッシュボーン式サスペンションにより左右独立に車体フレーム1に懸架されている。すなわち、左右の前車輪7は、それぞれ上下一対のA形のサスペンションアーム25、26により、上下揺動自在に車体フレーム1に支持されており、左右の下側サスペンションアーム26の途中部分に設けられたブラケット30には、フロントショックアブソーバ28の下端部がそれぞれ連結している。また、左右の前車輪7は、タイロッド27等を介して左右操舵可能に前記操舵軸13に連動連結している。
【0026】
図3は車体フレーム1の前端部の拡大斜視図であり、前部フレーム部材43は、断面が上下方向に長い矩形のパイプ状に形成されており、車幅の略中央部に前後方向に延びるように一本だけ配置され、わずかに前上がりに傾斜している。前部フレーム部材43の上面には、操舵軸13の下端を支持する断面コの字形の軸支持部67が溶接により固着(接合)されている。
【0027】
前部フレーム部材43の上方には、左右一対のセンターフレーム部材48が、前記前部フレーム部材43と略平行になるように、少し前上がりに傾斜して配置されており、前端と後端が、上部フレーム部材41の前端部41cと中間ステー部材47にそれぞれ溶接により接合されている。両センターフレーム部材48間には上側サスペンションアーム支持用の支持ブラケット70が架設されている。該支持ブラケット70は、センターフレーム部材48の断面形状に対応する切欠きを左右一対有しており、各切欠きを左右のセンターフレーム部材48に上方から嵌め、嵌合部分を溶接により接合している。前記支持ブラケット70の左右両端部には軸支持孔71が形成され、該軸支持孔71に、図1のように上側サスペンションアーム25の基端部が、揺動支軸31を介して上下方向揺動自在に支持されている。
【0028】
[下側サスペンションアームの構造]
図4は下側サスペンションアーム26の平面図であり、下側サスペンションアーム26は、前述のように、いわゆる「Aアーム」であるので、前後一対のアーム部材26a、26bが、車幅中央側に向かってV形に開くように配置され、両アーム部材26a、26bの中間部同士は結合板32を介して溶接により結合され、先端部同士はキングピン支持部33を介して溶接により結合されている。各アーム部材26a、26bの基端には筒形の基端部(スリーブ)34がそれぞれ溶接により固着されており、各筒形の基端部34内には、軸受35、36を介して揺動支軸37、38がそれぞれ相対回転可能に支持されている。揺動支軸37、38は、後で詳しく説明するが、前部フレーム部材43の左右両側に設けられたアーム取付部材40の端面40aに、ボルト80及びナット81により左右方向から締着されている。
【0029】
図5は、下側サスペンションアーム26の左側面図であり、前記結合板32の上面に、前記フロントショックアブソーバ支持用のブラケット30が立設されている。
【0030】
図7は、前側アーム部材26aの基端部34の水平断面拡大図であり、筒形の基端部34内に、前記揺動支軸37が同軸芯O2上に挿入されており、基端部34の内周面と揺動支軸37の外周面との間に、多数のニードル(ころがり部材)85を揺動軸芯O2と略平行に配置することにより、ニードル軸受35を構成している。基端部34の前後端部の内周面と揺動支軸37の外周面との間には、それぞれ環状の回転シール86が装着されている。
【0031】
図9は前記前側の揺動支軸37の側面図、図10は図9のX矢視図(前面図)であり、揺動支軸37の前後両端部には、図10のように、径方向の両側を互いに略平行な平面で切り取ることにより、厚肉平板状の取付ボス部83がそれぞれ一体に形成されており、図9において、各取付ボス部83には揺動軸芯O2と略直交するように貫通するボルト挿通孔84がそれぞれ形成されている。
【0032】
図8は、下側サスペンションアーム26の後側アーム部材26bの基端部34の水平断面拡大図であり、前記軸受36として、筒形の基端部34の内周面と揺動支軸38の外周面の間に、ピローボール式軸受を介装している。該ピローボール式軸受36は、揺動支軸38の前後方向の中央部に一体に形成された球形のピローボール部88と、該ピローボール部88の外周面に嵌合する球状凹面を有する外輪90とから構成されている。外輪90は、基端部34の内周面に嵌着されると共に、前後端面がスナップリング91により係止されている。また、基端部34の前後端部の内周面と揺動支軸38の外周面の間にはそれぞれ環状の回転シール86が装着されている。
【0033】
図11は図8の後側の揺動支軸38の側面図、図12は図11のXII矢視図(前面図)であり、図12のように、揺動支軸38の前後両端部には、径方向の両側を互いに略平行な平面で切り取ることにより、厚肉平板状の取付ボス部83がそれぞれ一体に形成されており、図11において、各取付ボス部83には揺動軸芯O2と略直交するボルト挿通孔84がそれぞれ形成されている。
【0034】
[下側サスペンションアームの取付構造]
図6は下側サスペンションアーム26の分解平面図であり、この図6において、前部フレーム部材43には、下側サスペンションアーム26の各基端部34を取り付ける箇所に、前記アーム取付部40として、左右共用のカラーが固着されている。各アーム取付部(カラー)40は、車幅中心線O1と略直交し、左右水平方向に延びるように前部フレーム部材43を貫通しており、左右共用であるので、アーム取付部40の左右両端部が前部フレーム部材43の左右側面からそれぞれ均一長さだけ左右に突出している。アーム取付部40は、溶接Vにより前部フレーム部材43に固着されている。
【0035】
各アーム取付部40の左右両端面40aに、各揺動支軸37、38の取付ボス部83の端面がそれぞれ重ね合わせられ、そして、各取付ボス部83のボルト挿通孔84及びアーム取付部40の内周孔40bに、たとえば左方からそれぞれボルト80が挿通され、図4のようにボルト80の先端部にナット81を螺合することにより、左右の揺動支軸37、38を、ボルト80の頭部とナット81の間で一緒に締結している。
【0036】
[組立作業]
(1)図7及び図8のように、下側サスペンションアーム26の各基端部34には、予め、ニードル軸受35及びピローボール式軸受36並びに揺動支軸37、38をそれぞれ組み込んでおき、上記組み込んだ状態で、図6のように、各基端部34を前部フレーム部材43の左右側方からアーム取付部(カラー)40の左右端面40aに接近させ、各取付ボス部83をアーム取付部40の端面(取付面)40aにそれぞれ押し当てる。
【0037】
(2)左右共用の前記ボルト80を、左方から、左側の基端部34の取付ボス部83のボルト挿通孔84、アーム取付部40の内周孔40b及び右側の基端部34の取付ボス部83のボルト挿通孔84に順に挿通し、ボルト80の先端部にナット81を螺合し、左右の揺動支軸37、38を、ボルト80の頭部とナット81により同時にアーム取付部40の左右端面40aに締着する。
【0038】
[実施の形態の効果]
(1)図6に示すように、筒形のアーム取付部40の左右端面40aに、下側サスペンションアーム26の各基端部34の取付ボス部83左右方向から接近させて重ね合わせ、しかも、各ボルト80も左右方向から取付ボス部83のボルト挿通孔84及びアーム取付部40の内周孔40bに挿通し、ボルト80の頭部とナット81により、左右方向から取付ボス部83をアーム取付部40に締結することにより、左右の下側サスペンションアーム26を前部フレーム部材43に上下揺動自在に取り付けるようにしているので、図17に示す従来の取付構造のように、揺動支軸305を前後方向からブラケット303及び軸受311内に挿入して、前後方向に締結する構造に比べ、組付作業スペースを十分に確保でき、下側サスペンションアーム26の組付作業が容易になり、組付性が向上する。
【0039】
(2)図4に示すように、一本の前部フレーム部材43の左右両側に配置された揺動支軸37、38を、前部フレーム部材43を左右に貫通するアーム取付部(カラー)40の左右両端面40aに、ボルト80及びナット81により締結しているので、アーム取付部40は左右共用となり、アーム取付部用の部品点数を削減できる。また、下側サスペンションアーム26にかかる左右方向の引っ張り荷重又は圧縮荷重の殆どを、アーム取付部40のみで受けることができ、前部フレーム部材43を補強しなくとも、前記引っ張り荷重等に耐える構造とすることができる。これにより、車体フレーム1の軽量化も達成できる。
【0040】
(3)図2に示すように、車幅中央に配置された一本の前部フレーム部材43の左右両側に、左右の下側サスペンションアーム26を支持していることにより、左右の前車輪7の間隔を広げることなく、下側サスペンションアーム26を長くすることができ、それにより、下側サスペンションアーム26の揺動半径が長くなり、サスペンション機能を向上させることができる。
【0041】
(4)図9及び図11に示すように、取付ボス部83を揺動支軸37、38と一体に形成しているので、部品点数を削減することができる。
【0042】
(5)図3に示すように、左右のセンターフレーム部材48間に上側サスペンションアーム支持用の支持ブラケット70を架設していることにより、該支持ブラケット70がクロス部材としての役目を果たし、左右のセンターフレーム部材48の剛性を高めることができる。また、支持ブラケット70は左右共用であるので、上側サスペンションアーム支持用の部品点数を削減できると共に、取付作業も容易になる。
【0043】
(6)図4に示すように、下側サスペンションアーム26の基端部34内に配置される一部の軸受を、ピローボール式軸受36としていることにより、下側サスペンションアーム26にかかる前後方向の荷重あるいは捩れに対して、下側サスペンションアーム26の変形を防止することができる。
【0044】
(7)図8に示すように、前記ピローボール式軸受36のピローボール部88を、揺動支軸38と一体に形成していることにより、基端部34内の構造を簡素化すると共に、ピローボール式軸受用の部品点数を削減することができる。
【0045】
(8)図7に示すように、揺動軸37の外周面をニードル軸受35の内輪として利用し、筒形の基端部34の内周面をニードル軸受35の外輪として利用していることにより、基端部34内の構造を簡素化すると共に、ニードル軸受35用の部品点数を削減することができる。
【0046】
[その他の実施の形態]
(1)図13は、本発明の第2の実施の形態であり、左右分割形のアーム取付部140を設けた例である。左右のアーム取付部140はそれぞれ外周面に環状段面140aを有しており、左側のアーム取付部140は前部フレーム部材43に形成された取付孔141に左方から挿入され、右側のアーム取付部140は前記取付孔141に右方から挿入され、それぞれ環状段面149aが前部フレーム部材43の左右の側面に当接し、溶接によりフレーム部材43に固着されている。その他の構造は、図4及び図6の構造と同じであり、同じ部品等には同じ符号を付している。
【0047】
(2)図14は、本発明の第3の実施の形態であり、前部フレーム部材43は左右一対配置されており、左側の前部フレーム部材43の左側面に左側の下側サスペンションアーム26の基端部34を取り付け、右側の前部フレーム部材43の右側面に右側の下側サスペンションアーム26の基端部34を取り付けている。
【0048】
基端部34毎に、前後一対のアーム取付部(カラー)40と、前後一対のボルト80及び前後一対のナット81を用いており、その他の構造は、図4及び図6の構造と同じであり、同じ部品等には同じ符号を付している。
【0049】
(3)図15及び図16は、本発明の第4の実施の形態であり、図15のように揺動支軸37の前後の取付ボス部83の一方、たとえば前端の取付ボス部83の挿通孔84の前端に開口84aを形成し、前側のアーム取付部144として、カラーの代わりに、中実の軸状の部材を用い、該中実軸状のアーム取付部144の外周面に環状溝144aを形成している。図16に示すように、前記環状溝144aに前端取付ボス部83の前端開口状の挿通孔84を係合し、後端取付ボス部83のみを、ボルト80等で左右から締結している。この構造によると、ボルト及びナット等の締付部品を節約でき、部品点数を削減できる。
【0050】
(4)図14に示す構造において、筒形のアーム取付部40の内周孔にめねじを形成し、該めねじにボルト80を螺着する構造とすることにより、ナット81を省くことも可能である。
【0051】
(5)前記いずれの実施の形態も、前輪用のサスペンションアーム26に適用して例である、後車輪が独立懸架方式の場合は、後車輪用のサスペンションアームにも適用可能であり、また、スイングアーム等の揺動アームにも適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による揺動アーム取付構造を備えた不整地用鞍乗型四輪走行車の斜視図である。
【図2】図1の四輪走行車の正面図である。
【図3】図1の四輪走行車の車体フレームの前端部の拡大斜視図である。
【図4】図1の下側サスペンションアームの平面図である。
【図5】図1の下側サスペンションアームの左側面図である。
【図6】図1の下側サスペンションアームの分解平面図である。
【図7】下側サスペンションアームの前側の基端部の水平断面拡大図(図5のVII-VII断面拡大図)である。
【図8】下側サスペンションアームの後側の基端部の水平断面拡大図(図5のVIII-VIII断面拡大図)である。
【図9】前側のニードル軸受を備えた揺動支軸の左側面図である。
【図10】図9のX矢視図である。
【図11】後側のピローボール式軸受を備えた揺動支軸の左側面図である。
【図12】図11のXII-XII矢視図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態を、一部水平断面で示す分解平面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態を示す平面図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に用いる揺動支軸の側面図である。
【図16】図15の揺動支軸を備えたアーム取付部の水平断面拡大図である。
【図17】従来例の平面図である。
【図18】図17のアーム取付部の左側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 車体フレーム
7 前車輪
25 上側サスペンションアーム
26 下側サスペンションアーム
28 フロントショックアブソーバ
35 ニードル軸受
36 ピローボール式軸受
37、38 揺動支軸
40 アーム取付部(カラー)
40a アーム取付部の端面(アーム取付面)
43 前部フレーム部材
80 ボルト
81 ナット
83 取付ボス部
84 ボルト挿通孔
88 ピローボール部
140 アーム取付部の別の例
141 アーム取付部の別の例
37、38

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を支持する揺動アームを、車体フレーム部材に上下揺動自在に取り付ける車輌の揺動アーム取付構造において、
前記揺動アームの基端部には揺動支軸を相対回転自在に備え、
該揺動支軸に取付ボス部を設け、該取付ボス部には、揺動支軸と略直交する方向にボルトが挿通可能な挿通孔又は切欠きを設け、
前記車体フレーム部材に設けられたアーム取付部に、前記取付ボス部の挿通孔又は切欠きに挿通したボルトにより、前記揺動支軸を締着していることを特徴とする車輌の揺動アーム取付構造。
【請求項2】
前記取付ボス部は、前記揺動支軸と一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の車輌の揺動アーム取付構造。
【請求項3】
前記アーム取付部は、前記車体フレーム部材を横断すると共に両端部が前記車体フレーム部材の両側面から突出するように前記車体フレーム部材に固着され、
前記筒形のアーム取付部の両端面に、それぞれ前記揺動アームの基端部の前記揺動支軸を取り付けていることを特徴とする請求項1又は2記載の車輌の揺動アーム取付構造。
【請求項4】
前記揺動アームの基端部と前記揺動支軸との間に軸受を介装し、
前記揺動支軸の外周面が、前記軸受の内輪を兼ねていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車輌の揺動アーム取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−22389(P2007−22389A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208849(P2005−208849)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】