車輌用映像表示装置
【課題】立体映像による状況認識性能の向上を図ることが可能な車輌用映像表示装置を提供する。
【解決手段】車輌用映像表示装置10は、自動車1に搭載され、自動車1の周囲を撮像するカメラ21,22と、カメラ21,22により撮像された映像を立体映像として表示する3Dモニタ30と、自動車1の運転シーンを推定するシーン推定部62と、運転シーンに基づいて3Dモニタ30に表示する立体映像の奥行き度を調整する奥行き度調整部63と、を備えている。
【解決手段】車輌用映像表示装置10は、自動車1に搭載され、自動車1の周囲を撮像するカメラ21,22と、カメラ21,22により撮像された映像を立体映像として表示する3Dモニタ30と、自動車1の運転シーンを推定するシーン推定部62と、運転シーンに基づいて3Dモニタ30に表示する立体映像の奥行き度を調整する奥行き度調整部63と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌周囲の映像を立体映像として運転者に表示する車輌用映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の後方或いは側方に設けられた2台のカメラによって撮像した画像を、車室内に設けられた液晶表示画面に立体映像として表示する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/084559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者は運転シーンに応じて注目すべき対象を自然に変えているが、立体映像の中には視差が大き過ぎて融像できない部分も含まれている。上記の技術では、モニタと運転者との位置関係に立体映像の奥行き度を対応させているだけなので、運転シーンによっては注目すべき物体を立体映像から視認できない場合があり、十分な状況認識性能を確保できないおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、立体映像による状況認識性能の向上を図ることが可能な車輌用映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、立体映像表示手段に表示する立体映像の奥行き度を、車輌の運転シーンに基づいて調整することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転シーンに応じて奥行き度が最適化された立体映像を運転者に対して表示することが可能となるので、立体映像による状況認識性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態における車輌用映像表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、左眼用と右眼用の2つの映像間の視差を説明するための図である。
【図3】図3は、立体映像におけるカメラ、近傍面、スクリーン面、及び遠方面の関係を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3の立体映像を示す図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、それぞれの運転シーンにおける最適な提示範囲の例を示す側面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第1の例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第2の例を示す図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第3の例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第4の例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第5の例を示す図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、本発明の実施形態における提示範囲と車速の関係をグラフの一例である。
【図12】図12は、本発明の実施形態において、他車輌の平均距離に基づいて提示範囲を補正したグラフの一例である。
【図13】図13は、自車輌が本線に合流する例における車輌間の位置関係を示す平面図である。
【図14】図14は、車輌後方を表示する立体映像において注目したい他車輌を選択する画面の例を示す図である。
【図15】図15(a)は、本発明に実施形態において立体映像の奥行き度を運転シーンに応じて最適化した画像の例を示す図であり、図15(b)は、立体映像の奥行き度を調整せずに表示した画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本実施形態における車輌用映像表示装置の構成を示すブロック図、図2は2つの映像間の視差を説明するための図、図3は立体映像におけるカメラ、近傍面、スクリーン面、及び遠方面の関係を示す斜視図、図4は図3の例における立体映像を示す図、図5(a)〜図5(c)はそれぞれの運転シーンにおける最適な提示範囲の例を示す側面図である。
【0011】
本実施形態における車輌用映像表示装置1は、自動車1の前方又は後方の映像を立体映像として運転者に表示する装置であり、図1に示すように、2組のカメラ21L/R,22L/Rと、3Dモニタ30と、ナビゲーション装置40と、物体検出センサ50と、映像制御部60と、を備えている。
【0012】
一対の前方カメラ21L,21R(以下単に、前方カメラ21とも称する。)は、CCDイメージセンサ、MOSセンサ、又はCID等の複数の光電変換素子が二次元に配置された光電変換モジュールを備えている。この前方カメラ21は、自動車1の先端に設けられおり、自動車1の前方を撮像することが可能となっている。なお、左側のカメラ21Lが、立体映像を形成するための左眼用の映像を撮像し、右側のカメラ21Rが右眼用の映像を撮像する。
【0013】
なお、いわゆる平行法を採用する場合には、光軸が実質的に平行になるように2つのカメラ20L,20Rを平行に並べて配置する。一方、いわゆる交差法を採用する場合(以下単にカメラ交差法と称する。)には、カメラの光軸が相互に交差するようにカメラ20L,20Rを互いに傾けて設置する。また、それぞれのカメラにおいて撮像素子に対してレンズをずらすことで、カメラの光軸を相互に交差させる場合(以下単にレンズ交差法と称する。図8(a)及び図8(b)参照)には、2つのカメラ20R,20Lを平行に並べて設置する。また、後述する多視点方式を採用する場合には、自動車1の先端や後端に3以上のカメラをそれぞれ設ける。
【0014】
自動車1の後端にも、前方カメラ21と同様の一対の後方カメラ22L,22R(以下単に、後方カメラ22とも称する。)が設けられており、自動車1の後方を撮像することが可能となっている。
【0015】
3Dモニタ30は、自動車1の車室内に設けられ、運転者の左右眼に対して映像を分割して提示することが可能な裸眼型或いはメガネ型の三次元ディスプレイであり、2台のカメラ21(又は22)によって撮像された映像を立体映像として表示することが可能となっている。
【0016】
裸眼型の3Dディスプレイの具体例としては、例えば、パララックスバリア(Parallax Barrier)方式、レンチキュラ(Lenticular)方式、CLD(Chromatic Light Deflector)方式等を例示することができる。また、メガネ型の3Dディスプレイの具体例としては、例えば、液晶シャッタ方式や偏光フィルタ方式等を例示することができる。
【0017】
なお、前方カメラ21によって撮像された映像と、後方カメラ22によって撮像された画像を同時に表示するために3Dモニタ30を複数設けてもよいし、一つの3Dモニタ30に前方及び後方の立体映像を表示してもよい。
【0018】
ナビゲーション装置40は、自車輌1の現在位置やナビゲーション情報に基づいて、運転者に地理的な情報等を提示する装置である。自車輌1の現在位置は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星から受信した位置情報(測位データ)等の情報に基づいて特定される。一方、ナビゲーション情報は、例えば、ナビゲーション装置40と一体化されたハードディスク装置等の記憶装置に格納されている。
【0019】
このナビゲーション情報は、経路検索や経路案内に用いられる情報であり、主に「ノードデータ」と「道路データ」から構成されている。ナビゲーション情報において、各道路は、交差・分岐・合流等の地点に対応するノードによって分割されており、個々のノード間の接続が道路リンクとして規定される。そのため、個々のノードを介して道路リンクを接続することにより、一連の道路形状が規定される。
【0020】
「ノードデータ」は、個々のノード毎に、ノードを識別する識別番号(ノードID)、緯度及び経度を用いた絶対位置情報、ノードに接続する道路リンクの固有番号(リンクID)等が互いに関連付けられたデータである。
【0021】
一方、「道路データ」は、個々の道路リンク毎に、道路リンクを識別する固有番号(リンクID)、道路リンクに該当する道路の長さ、幅、勾配、路面状態、曲率半径、種別(高速道路、自動車専用道路、一般道路)等が関連付けられたデータである。
【0022】
物体検出センサ50は、例えば、レーザレンジファインダや超音波センサから構成されており、自動車1の先端及び後端に配置され、自動車1の前方や後方に存在する他車輌等の物体までの距離等を検出することが可能となっている。なお、ステレオカメラや、他車輌との通信等によって他車輌までの距離を検出してもよい。
【0023】
映像制御装置60は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インタフェース等を備えたコンピュータから構成されており、本実施形態では、キャプチャ部61と、シーン推定部62と、奥行き度調整部63と、変換部64と、を備えている。なお、キャプチャ部61、シーン推定部62、奥行き度調整部63、及びは、変換部64は、映像制御装置60がプログラムを実行することによって、それぞれの機能が実現されている。
【0024】
キャプチャ部61は、前方カメラ21や後方カメラ22によって撮像された映像を映像制御装置60内に取り込む。
【0025】
シーン推定部62は、ナビゲーション装置40、物体検出センサ50、或いは、自動車1の挙動や運転者による自動車1の操作を検出するセンサ等からの情報に基づいて、自動車1の運転シーンを推定する。なお、自動車1の挙動や運転者による自動車1の操作を検出するセンサとしては、車速、加速度、操舵角、アクセルやブレーキの操作量、ウィンカの操作、シフトポジション等を検出するセンサを例示することができる。
【0026】
本実施形態では、運転シーンは、道路の種別と、自動車1の走行状態と、に基づいて設定されている。道路の種別は、例えば、ナビゲーション装置40から提供される情報に基づいて判断することができ、その具体例としては、「高速道路」や「一般道路」等を例示することができる。
【0027】
一方、自動車1の走行状態としては、例えば、「発進」、「停止」、「直進」、「旋回」、「後退」、「合流」、「車線変更」、「追い越し」等を例示することができる。
【0028】
シーン推定部62による具体的な推定方法の一例を示すと、例えば、自動車1の車速が0から増加を開始したら、シーン推定部62は、自動車1が「発進」していると推定する。一方、自動車1の減速度が大きく且つ車速が0に近づいている場合には、シーン推定部62は、自動車1が「停止」していると推定する。
【0029】
また、例えば、自動車1の車速が所定値以上であり、且つ、操舵角がほぼゼロである場合には、シーン推定部62は、自動車1が「直進」していると推定する。一方、自動車1の操舵角がプラス或いはマイナスの値となったら、シーン推定部62は、自動車1が「旋回」していると推定する。また、例えば、自動車1のシフトポジションとしてバックギアを検出すれば、シーン推定部62は、例えば駐車等により自動車1が「後退」していると推定する。
【0030】
さらに、「合流」については、シーン推定部62はナビゲーション装置40から提供される情報に基づいて判断する。また、例えば、ナビゲーション装置40からの情報によると自動車1は複数車線を有する直線路を走行しているにも関わらず、ウィンカの操作を検出した場合には、シーン推定部62は、自動車1が「車線変更」していると推定する。また、例えば、物体検出センサ50等によって他車輌に対する接近を検出し且つウィンカの操作を検出した場合には、シーン推定部62は、自動車1が「追い越し」を行っていると推定する。なお、シーン推定部62による運転シーンの具体的な推定方法は、上記に限定されない。
【0031】
奥行き度調整部63は、シーン推定部62によって推定された運転シーンに基づいて、立体映像の奥行き度を調整する。
【0032】
ところで、人間は、左眼用と右眼用の2つの映像を融像することで一つの立体映像として認識するが、当該映像における視差が許容範囲を超えている部分については、人間は2つの映像を融像することができず、その部分から詳細な情報を入手することができない。
【0033】
例えば、図2に示す例では、物体100を2つのカメラ20L,20Rで撮像した場合、左眼用カメラ20Lでは、レンズ202Lを透過した物体100の像は、撮像素子201Lにおいて中心から左側に距離p1だけ離れた位置に結像される。これに対し、右眼用カメラ20Rでは、レンズ202Rを透過した物体100の像は、撮像素子201Rにおいて中心から右側に距離p2だけ離れた位置に結像される。この際の視差は、下記の(1)式で算出されるΔpを、3Dモニタ30上でのピクセル数に換算することで算出される。
【0034】
Δp=p1−p2 …(1)
【0035】
この視差が許容範囲内である場合には、人間は2つのカメラ20L,20Rによって撮像された2つの映像を融像することができる。これに対し、視差が許容範囲外である場合には、人間は2つの映像を融像することができず、2つの映像は複視されてしまう。
【0036】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、立体映像における飛び出し側の視差(いわゆる負の視差)が最大許容値となる近傍面NPと、引っ込み側の視差(いわゆる正の視差)が最大許容値となる遠方面FPと、を運転シーンに応じて変更することで、立体映像の奥行き度を最適に調節する。この視差の最大許容値は、運転者と3Dモニタ30との位置関係(特に視距離)や、3Dモニタ30の画面サイズ等に基づいて予め設定されている。
【0037】
なお、視差が所定値(例えば、人間の両眼の間隔(瞳孔間隔(IPD)、一般的に60〜65[mm]程度)の所定倍)よりも大きくなると、実際の物体のサイズと、立体映像における当該物体のサイズとの間に違和感が生じる場合があるため、上記の視差の最大許容値の設定の際にはこの違和感も考慮することが好ましい。
【0038】
図3に示す例の場合には、図4に示すように、近傍面NPよりも手前に位置する物体101や、遠方面FPよりも奥に位置する物体106,107は、視野が大き過ぎて融像することができない。これに対し、近傍面NPと遠方面FPとの間に位置する物体102〜105は、視差が許容範囲内であるので融像することができる。なお、図3及び図4における符号SPは、視差が実質的にゼロとなるスクリーン面SP(Screen Plane又はFocal Plane)である。
【0039】
本実施形態では、奥行き度調整部63は、シーン推定部62から運転シーンを受信すると、当該運転シーンに対応した提示範囲PWを下記の表1及び表2から読み込み、当該提示範囲PWが近傍面NPと遠方面FPとの間に包含されるように近傍面NPと遠方面FPを設定する。具体的には、奥行き度調整部63は、提示範囲PWにおける最近値に近傍面NPを設定すると共に、当該提示範囲PWにおける最遠値に遠方面FPを設定する。これにより、スクリーン面SPは、提示範囲PWのほぼ中央に設定される。下記の表1及び2における提示範囲PWは、自車輌1からの距離を示しており、下記の表1は、自動車1の前方側の提示範囲PWを示し、下記の表2は、自動車の後方側の提示範囲PWを示している。なお、表1及び表2における運転シーンやその提示範囲の具体的な数値は一例に過ぎない。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
例えば、運転シーンとして「一般道路/高速道路−発進」(シーンNo.1)が推定された場合には、奥行き度調整部63は、表1及び表2に基づいて、図5(a)に示すように、自車輌1の前方及び後方のいずれの立体映像についても、近傍面NPを10[m]に設定すると共に、遠方面FPを50[m]に設定する。
【0043】
一方、例えば、運転シーンとして「高速道路−直進」(シーンNo.5)が推定された場合には、奥行き度調整部63は、表1に基づいて、図5(b)に示すように、自車輌1の前方の立体映像について、近傍面NPを50[m]に設定すると共に、遠方面FPを150[m]に設定する。なお、この場合には、車輌後方の立体映像は3Dモニタ30に表示されない。
【0044】
また、例えば、運転シーンとして「高速道路−合流」(シーンNo.8)が推定された場合には、奥行き度調整部63は、表2に基づいて、図5(c)に示すように、自車輌1の後方の立体映像について、近傍面NPを100[m]に設定すると共に、遠方面FPを200[m]に設定する。なお、この場合には、車輌前方の立体映像は3Dモニタ30に表示されない。
【0045】
すなわち、本実施形態では、運転者が運転シーンにおいて注目すべき範囲を融像することが可能となるように、近傍面NPと遠方面FPとで規定される提示範囲PWを運転シーンに応じてシフトさせる。なお、いわゆる平行法を採用している場合には、後述の図6の手法によってクロスポイントが移動しない限り、スクリーン面SPが無限遠点となるため、近傍面NPのみを設定すればよい。
【0046】
ここで、近傍面NPと遠方面FPとで規定される提示範囲PWをシフトさせる具体的な手法としては、図6〜図10に示すものを例示することができる。図6〜図10は本実施形態における立体映像の奥行き度の調整方法の具体例を示す図である。
【0047】
例えば、図6に示す例では、左眼映像150Lと右眼用の映像150Rを部分的に表示することで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整する。
【0048】
具体的には、同図に示すように、左眼用の映像150Lの左側の一部151Lを削除すると共に、右眼用の映像150Rの右側一部151Rを削除することで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、左眼用の映像の右側の一部を削除すると共に、右眼用の映像の左側の一部を削除することで、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。
【0049】
こうした画像処理は、映像制御装置60が所定のプログラムを実行することで遂行することができるので、車輌用映像表示装置1の低コスト化を図ることができる。なお、この手法は、平行法、カメラ交差法、及びレンズ交差法のいずれにも採用することができる。
【0050】
一方、図7に示す例では、カメラ20L,20Rの間隔を変更することで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整する。
【0051】
具体的には、同図に示すように、2つのカメラ20L,20Rの間隔を広げることで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、2つのカメラ20L,20Rの間隔を狭めることで、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。なお、カメラ20L,20Rの間隔を変更する具体的な手段としては、例えば、モータにより駆動するボールネジ機構等を例示することができる。
【0052】
この場合には、カメラ20L,20Rの撮像素子の画素数を維持することができるため、運転者に対して繊細な立体映像を呈示することができる。なお、この手法も、平行法、カメラ交差法、及びレンズ交差法のいずれにも採用することができる。
【0053】
また、図8(a)及び図8(b)に示すように、上述のレンズ交差法を採用している場合には、カメラ20L,20Rのレンズ202L,202Rの間隔を変更することで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整してもよい。
【0054】
具体的には、同図に示すように、2つのレンズ202L,202Rの間隔を広げることで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、2つのレンズ202L,202Rの間隔を狭めることで、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。
【0055】
なお、レンズ202L,202Rの間隔を変更する具体的な手段としては、例えば、モータにより駆動するボールネジ機構等を例示することができる。また、レンズ202L,202Rに対して撮像素子201L,201Rを相対移動させることで、提示範囲PWを変更してもよい。
【0056】
図8に示す例の場合には、レンズ202L,202Rの間隔を連続的に変更することができるので、運転者に違和感を与えることなく立体映像の奥行き度を調整することができる。
【0057】
また、3つ以上(図9に示す例では8つ)のカメラ20A〜20Hを用いた多視点(マルチビュー又はインテグラルイメージング)方式を採用している場合には、左眼用のカメラと右眼用のカメラの組合せを切り替えることで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整してもよい。
【0058】
例えば、図9に示すように、中央の2つのカメラ20D,20Eを使用している場合、左眼用のカメラをカメラ20Dからその左隣のカメラ20Cに切り替えると共に、右眼用のカメラをカメラ20Eからその右隣のカメラ20Fに切り替えることで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、外側のカメラから内側のカメラに切り替えるほど、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。
【0059】
この場合には、左眼用映像と右眼映像における視差を制御するための機械的な可動部が存在しないため、立体映像の奥行き度を高速に調整することができる。なお、この多視点方式は、平行法、カメラ交差法、及びレンズ交差法のいずれの場合でも採用することができる。
【0060】
また、図10に示すように、上述のカメラ交差法を採用している場合には、当該カメラ20L、20Rの傾きを変更することで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整してもよい。
【0061】
具体的には、同図に示すように、2つのカメラ20L,20Rの傾きを緩くすることで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、カメラ20L,20Rの傾きを強くすることで、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態では、運転シーンに応じて奥行き度が最適化された立体映像が表示されるので、運転者は運転シーンにおいて重要な範囲を視認することが可能となり、立体映像による状況認識性能の向上を図ることができる。
【0063】
なお、図11(a)及び図11(b)に示すように、運転シーンと自動車1の車速とに応じて、提示範囲PWを設定してもよい。図11(a)は、運転シーンとして「高速道路−直進」(シーンNo.5)が推定された場合の提示範囲PWと車速との関係を示すグラフであり、図11(b)は、運転シーンとして「一般道路/高速道路−発進」(シーンNo.1)が推定された場合の提示範囲PWと車速の関係を示すグラフである。
【0064】
奥行き度調整部63は、図11(a)や図11(b)に示すようなマップを運転シーンに応じて参照して、車速センサ70(図1参照)から得られた車速に応じて、提示範囲PWを補正する。具体的には、図11(a)や図11(b)に示すようなマップに対応した運転シーンの場合には、奥行き度調整部63は、車速が高くなるに従って提示範囲PWを自車輌1から遠ざけるように補正する。このように、運転シーンと自車輌1の車速に基づいて立体映像の奥行き度を調整することで、立体映像の奥行き度が一層最適化されるので、立体映像による状況認識性能がさらに向上する。
【0065】
なお、特に図示しないが、上記の表1及び表2に示す全ての運転シーンに対して、図11(a)や図11(b)に示すようなグラフを設定してもよいし、一部の運転シーンについては車速に対して提示範囲PWを固定してもよい。
【0066】
また、図12に示すように、自車輌1の周囲に存在する複数の他車輌の平均距離に応じて、提示範囲PWを変化させてもよい。図12は、他車輌の平均距離に基づいて提示範囲を補正したグラフである。
【0067】
この自車輌1の周囲に存在する複数の他車輌の平均距離Dは、下記の(2)〜(4)式によって算出され、図12に示すように、現在の車速(図12に示す例では100[km/h])におけるスクリーン面SPが平均距離Dとなるように、その車速付近における提示範囲PWを補正する。
【0068】
D=Σ(dn×wn/W) …(2)
wn=Δvn×1/Δsn …(3)
W=Σwn …(4)
【0069】
但し、上記の(2)〜(4)式において、dnは、自車輌から個々の他車輌までの距離であり、Δvnは、自車輌に対する個々の他車輌の相対速度であり、Δsnは、自車輌に対する個々の他車輌の横変位である。なお、dn,Δvn,Δsnは、物体検出センサ50や車速センサ等の検出信号に基づいて算出される。
【0070】
具体的に図13に示す合流シーンを例にとって平均距離Dの算出方法について説明する。図13は自車輌が本線に合流する例における車輌間の位置関係を示す図である。
【0071】
図13に示す例では、自車輌1が速度v0で走行している車線121の隣の車線122を他車輌111が速度v1で走行し、さらにその隣の車線123を別の他車輌112が速度v2で走行している。このような例では、複数の他車輌111,112の平均距離は、下記の(5)〜(10)によって算出される。
【0072】
Δv1=v1−v0 …(5)式
Δv2=v2−v0 …(6)式
w1=Δv1×1/s1 …(7)式
w2=Δv2×1/s2 …(8)式
W=w1+w2 …(9)式
D=d1×w1/W+d2×w2/W …(10)式
【0073】
但し、上記の(5)〜(10)式において、s1は自車輌1に対する他車輌111のX方向の距離(横変位)であり、s2は自車輌1に対する他車輌112のX方向の距離(横変位)であり、d1は自車輌1に対する他車輌111のY方向の距離であり、d2は自車輌1に対する他車輌112のY方向の距離である。
【0074】
このように、自車輌1に対する他車輌111,112の距離に基づいて、立体映像の奥行き度を補正することで、運転者に対して注意すべき物体を強調することができ、立体映像による状況認識性能がさらに向上する。なお、こうした物体強調は、運転シーンの切替直後に実行することが好ましい。
【0075】
なお、運転者が注目したい車輌を複数の他車輌113,114の中から選択可能としてもよい。図14は車輌後方を表示する立体映像において注目したい他車輌を選択する画面の例を示す図である。この場合には、図14に示すように、例えば、ステアリングホイールやリモコン等に設けられた選択スイッチ80(図1参照)を操作して、3Dモニタ30上でウィンドウ枠141を移動させて注目したい他車輌113を囲むことで、当該他車輌113を選択する。そして、奥行き度調整部63は、特に図示しないが、現在の車速におけるスクリーン面SPが、選択された他車輌113の距離となるように、提示範囲PWを補正する。なお、注目したい他車輌の選択方法は特に上記に限定されない。
【0076】
このように、運転者が選択した物体113の自車輌1に対する距離に基づいて、立体映像の奥行き度を補正することで、複数の物体の中でも特に注意が必要な物体に対する状況認識性能を高めることができる。
【0077】
奥行き度調整部63によって運転シーンに応じて奥行き度が調整された立体映像は、変換部64によって3Dモニタ30に適合した信号パターンに変換された後に3Dモニタ30に出力され、3Dモニタ30はその立体映像を運転者に対して表示する。
【0078】
例えば、3Dモニタが2視点のパララックスバリア方式である場合には、変換部64は、左眼用映像と右眼用映像が垂直1ライン毎に交互に出力されるような信号パターンに変換する。
【0079】
この際、本実施形態では、奥行き度調整部63によって立体映像の奥行き度が運転シーンに応じて最適化されている。例えば、高速道路において直進走行している場合には近傍領域よりも遠方領域の情報が重要であるが、本実施形態では、図15(a)に示すように、遠方に存在する他車輌115,116や案内標識131が融像可能であり、これらから正確に情報を入手することができる。
【0080】
これに対し、奥行き度調整部63によって立体映像の奥行き度を調整しない場合には、図15(b)に示すように、自車輌から近傍領域は融像することができるが、遠方領域については融像することができず複視されてしまい、高速道路の直進走行に重要な情報が十分に入手できない場合がある。
【0081】
なお、図15(a)は本実施形態において立体映像の奥行き度を運転シーンに応じて調整した画像の例を示す図、図15(b)は立体映像の奥行き度を調整せずに表示した画像の例を示す図である。
【0082】
以上のように、本実施形態では、3Dモニタ30に表示される立体映像の奥行き度を、奥行き度調整部63によって運転シーンに基づいて調整する。これにより、運転シーンに応じて奥行き度が最適化された立体映像を運転者に対して表示することが可能となるので、立体映像による状況認識性能を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、「一般道路」や「高速道路」を含む道路種別と、「発進」、「停止」、「直進」、「旋回」、「後退」、「合流」、「車線変更」、及び「追い越し」を含む走行状態と、に基づいて運転シーンを設定している。このため、それぞれのシーンで重要な提示範囲PWを設定することができ、立体映像による状況認識性能を向上させることができる。
【0084】
本実施形態におけるカメラ21,22が本発明における撮像手段の一例に相当し、本実施形態における3Dモニタ30が本発明における立体映像表示手段の一例に相当し、本実施形態におけるシーン推定部62が本発明におけるシーン推定手段の一例に相当し、本実施形態における奥行き度調整部63が本発明における奥行き度調整手段の一例に相当し、本実施形態における物体検出センサ50が本発明における物体検出手段の一例に相当し、本実施形態における選択スイッチ80が本発明における物体選択手段の一例に相当し、本実施形態におけるレンズ202L,202Rが本発明における集光手段の一例に相当する。
【0085】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0086】
1…自動車(自車輌)
10…車輌用映像表示装置
21L,21R,22L,22R…カメラ
30…3Dモニタ
40…ナビゲーション装置
50…物体検出センサ
60…映像制御装置
61…キャプチャ部
62…シーン推定部
63…奥行き度変換部
64…変換部
70…車速センサ
80…選択スイッチ
NP…近傍面
SP…スクリーン面
FP…遠方面
PW…提示範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌周囲の映像を立体映像として運転者に表示する車輌用映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の後方或いは側方に設けられた2台のカメラによって撮像した画像を、車室内に設けられた液晶表示画面に立体映像として表示する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/084559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者は運転シーンに応じて注目すべき対象を自然に変えているが、立体映像の中には視差が大き過ぎて融像できない部分も含まれている。上記の技術では、モニタと運転者との位置関係に立体映像の奥行き度を対応させているだけなので、運転シーンによっては注目すべき物体を立体映像から視認できない場合があり、十分な状況認識性能を確保できないおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、立体映像による状況認識性能の向上を図ることが可能な車輌用映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、立体映像表示手段に表示する立体映像の奥行き度を、車輌の運転シーンに基づいて調整することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転シーンに応じて奥行き度が最適化された立体映像を運転者に対して表示することが可能となるので、立体映像による状況認識性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態における車輌用映像表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、左眼用と右眼用の2つの映像間の視差を説明するための図である。
【図3】図3は、立体映像におけるカメラ、近傍面、スクリーン面、及び遠方面の関係を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3の立体映像を示す図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、それぞれの運転シーンにおける最適な提示範囲の例を示す側面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第1の例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第2の例を示す図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第3の例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第4の例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態における立体映像の奥行き度の調整手法の第5の例を示す図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、本発明の実施形態における提示範囲と車速の関係をグラフの一例である。
【図12】図12は、本発明の実施形態において、他車輌の平均距離に基づいて提示範囲を補正したグラフの一例である。
【図13】図13は、自車輌が本線に合流する例における車輌間の位置関係を示す平面図である。
【図14】図14は、車輌後方を表示する立体映像において注目したい他車輌を選択する画面の例を示す図である。
【図15】図15(a)は、本発明に実施形態において立体映像の奥行き度を運転シーンに応じて最適化した画像の例を示す図であり、図15(b)は、立体映像の奥行き度を調整せずに表示した画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本実施形態における車輌用映像表示装置の構成を示すブロック図、図2は2つの映像間の視差を説明するための図、図3は立体映像におけるカメラ、近傍面、スクリーン面、及び遠方面の関係を示す斜視図、図4は図3の例における立体映像を示す図、図5(a)〜図5(c)はそれぞれの運転シーンにおける最適な提示範囲の例を示す側面図である。
【0011】
本実施形態における車輌用映像表示装置1は、自動車1の前方又は後方の映像を立体映像として運転者に表示する装置であり、図1に示すように、2組のカメラ21L/R,22L/Rと、3Dモニタ30と、ナビゲーション装置40と、物体検出センサ50と、映像制御部60と、を備えている。
【0012】
一対の前方カメラ21L,21R(以下単に、前方カメラ21とも称する。)は、CCDイメージセンサ、MOSセンサ、又はCID等の複数の光電変換素子が二次元に配置された光電変換モジュールを備えている。この前方カメラ21は、自動車1の先端に設けられおり、自動車1の前方を撮像することが可能となっている。なお、左側のカメラ21Lが、立体映像を形成するための左眼用の映像を撮像し、右側のカメラ21Rが右眼用の映像を撮像する。
【0013】
なお、いわゆる平行法を採用する場合には、光軸が実質的に平行になるように2つのカメラ20L,20Rを平行に並べて配置する。一方、いわゆる交差法を採用する場合(以下単にカメラ交差法と称する。)には、カメラの光軸が相互に交差するようにカメラ20L,20Rを互いに傾けて設置する。また、それぞれのカメラにおいて撮像素子に対してレンズをずらすことで、カメラの光軸を相互に交差させる場合(以下単にレンズ交差法と称する。図8(a)及び図8(b)参照)には、2つのカメラ20R,20Lを平行に並べて設置する。また、後述する多視点方式を採用する場合には、自動車1の先端や後端に3以上のカメラをそれぞれ設ける。
【0014】
自動車1の後端にも、前方カメラ21と同様の一対の後方カメラ22L,22R(以下単に、後方カメラ22とも称する。)が設けられており、自動車1の後方を撮像することが可能となっている。
【0015】
3Dモニタ30は、自動車1の車室内に設けられ、運転者の左右眼に対して映像を分割して提示することが可能な裸眼型或いはメガネ型の三次元ディスプレイであり、2台のカメラ21(又は22)によって撮像された映像を立体映像として表示することが可能となっている。
【0016】
裸眼型の3Dディスプレイの具体例としては、例えば、パララックスバリア(Parallax Barrier)方式、レンチキュラ(Lenticular)方式、CLD(Chromatic Light Deflector)方式等を例示することができる。また、メガネ型の3Dディスプレイの具体例としては、例えば、液晶シャッタ方式や偏光フィルタ方式等を例示することができる。
【0017】
なお、前方カメラ21によって撮像された映像と、後方カメラ22によって撮像された画像を同時に表示するために3Dモニタ30を複数設けてもよいし、一つの3Dモニタ30に前方及び後方の立体映像を表示してもよい。
【0018】
ナビゲーション装置40は、自車輌1の現在位置やナビゲーション情報に基づいて、運転者に地理的な情報等を提示する装置である。自車輌1の現在位置は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星から受信した位置情報(測位データ)等の情報に基づいて特定される。一方、ナビゲーション情報は、例えば、ナビゲーション装置40と一体化されたハードディスク装置等の記憶装置に格納されている。
【0019】
このナビゲーション情報は、経路検索や経路案内に用いられる情報であり、主に「ノードデータ」と「道路データ」から構成されている。ナビゲーション情報において、各道路は、交差・分岐・合流等の地点に対応するノードによって分割されており、個々のノード間の接続が道路リンクとして規定される。そのため、個々のノードを介して道路リンクを接続することにより、一連の道路形状が規定される。
【0020】
「ノードデータ」は、個々のノード毎に、ノードを識別する識別番号(ノードID)、緯度及び経度を用いた絶対位置情報、ノードに接続する道路リンクの固有番号(リンクID)等が互いに関連付けられたデータである。
【0021】
一方、「道路データ」は、個々の道路リンク毎に、道路リンクを識別する固有番号(リンクID)、道路リンクに該当する道路の長さ、幅、勾配、路面状態、曲率半径、種別(高速道路、自動車専用道路、一般道路)等が関連付けられたデータである。
【0022】
物体検出センサ50は、例えば、レーザレンジファインダや超音波センサから構成されており、自動車1の先端及び後端に配置され、自動車1の前方や後方に存在する他車輌等の物体までの距離等を検出することが可能となっている。なお、ステレオカメラや、他車輌との通信等によって他車輌までの距離を検出してもよい。
【0023】
映像制御装置60は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インタフェース等を備えたコンピュータから構成されており、本実施形態では、キャプチャ部61と、シーン推定部62と、奥行き度調整部63と、変換部64と、を備えている。なお、キャプチャ部61、シーン推定部62、奥行き度調整部63、及びは、変換部64は、映像制御装置60がプログラムを実行することによって、それぞれの機能が実現されている。
【0024】
キャプチャ部61は、前方カメラ21や後方カメラ22によって撮像された映像を映像制御装置60内に取り込む。
【0025】
シーン推定部62は、ナビゲーション装置40、物体検出センサ50、或いは、自動車1の挙動や運転者による自動車1の操作を検出するセンサ等からの情報に基づいて、自動車1の運転シーンを推定する。なお、自動車1の挙動や運転者による自動車1の操作を検出するセンサとしては、車速、加速度、操舵角、アクセルやブレーキの操作量、ウィンカの操作、シフトポジション等を検出するセンサを例示することができる。
【0026】
本実施形態では、運転シーンは、道路の種別と、自動車1の走行状態と、に基づいて設定されている。道路の種別は、例えば、ナビゲーション装置40から提供される情報に基づいて判断することができ、その具体例としては、「高速道路」や「一般道路」等を例示することができる。
【0027】
一方、自動車1の走行状態としては、例えば、「発進」、「停止」、「直進」、「旋回」、「後退」、「合流」、「車線変更」、「追い越し」等を例示することができる。
【0028】
シーン推定部62による具体的な推定方法の一例を示すと、例えば、自動車1の車速が0から増加を開始したら、シーン推定部62は、自動車1が「発進」していると推定する。一方、自動車1の減速度が大きく且つ車速が0に近づいている場合には、シーン推定部62は、自動車1が「停止」していると推定する。
【0029】
また、例えば、自動車1の車速が所定値以上であり、且つ、操舵角がほぼゼロである場合には、シーン推定部62は、自動車1が「直進」していると推定する。一方、自動車1の操舵角がプラス或いはマイナスの値となったら、シーン推定部62は、自動車1が「旋回」していると推定する。また、例えば、自動車1のシフトポジションとしてバックギアを検出すれば、シーン推定部62は、例えば駐車等により自動車1が「後退」していると推定する。
【0030】
さらに、「合流」については、シーン推定部62はナビゲーション装置40から提供される情報に基づいて判断する。また、例えば、ナビゲーション装置40からの情報によると自動車1は複数車線を有する直線路を走行しているにも関わらず、ウィンカの操作を検出した場合には、シーン推定部62は、自動車1が「車線変更」していると推定する。また、例えば、物体検出センサ50等によって他車輌に対する接近を検出し且つウィンカの操作を検出した場合には、シーン推定部62は、自動車1が「追い越し」を行っていると推定する。なお、シーン推定部62による運転シーンの具体的な推定方法は、上記に限定されない。
【0031】
奥行き度調整部63は、シーン推定部62によって推定された運転シーンに基づいて、立体映像の奥行き度を調整する。
【0032】
ところで、人間は、左眼用と右眼用の2つの映像を融像することで一つの立体映像として認識するが、当該映像における視差が許容範囲を超えている部分については、人間は2つの映像を融像することができず、その部分から詳細な情報を入手することができない。
【0033】
例えば、図2に示す例では、物体100を2つのカメラ20L,20Rで撮像した場合、左眼用カメラ20Lでは、レンズ202Lを透過した物体100の像は、撮像素子201Lにおいて中心から左側に距離p1だけ離れた位置に結像される。これに対し、右眼用カメラ20Rでは、レンズ202Rを透過した物体100の像は、撮像素子201Rにおいて中心から右側に距離p2だけ離れた位置に結像される。この際の視差は、下記の(1)式で算出されるΔpを、3Dモニタ30上でのピクセル数に換算することで算出される。
【0034】
Δp=p1−p2 …(1)
【0035】
この視差が許容範囲内である場合には、人間は2つのカメラ20L,20Rによって撮像された2つの映像を融像することができる。これに対し、視差が許容範囲外である場合には、人間は2つの映像を融像することができず、2つの映像は複視されてしまう。
【0036】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、立体映像における飛び出し側の視差(いわゆる負の視差)が最大許容値となる近傍面NPと、引っ込み側の視差(いわゆる正の視差)が最大許容値となる遠方面FPと、を運転シーンに応じて変更することで、立体映像の奥行き度を最適に調節する。この視差の最大許容値は、運転者と3Dモニタ30との位置関係(特に視距離)や、3Dモニタ30の画面サイズ等に基づいて予め設定されている。
【0037】
なお、視差が所定値(例えば、人間の両眼の間隔(瞳孔間隔(IPD)、一般的に60〜65[mm]程度)の所定倍)よりも大きくなると、実際の物体のサイズと、立体映像における当該物体のサイズとの間に違和感が生じる場合があるため、上記の視差の最大許容値の設定の際にはこの違和感も考慮することが好ましい。
【0038】
図3に示す例の場合には、図4に示すように、近傍面NPよりも手前に位置する物体101や、遠方面FPよりも奥に位置する物体106,107は、視野が大き過ぎて融像することができない。これに対し、近傍面NPと遠方面FPとの間に位置する物体102〜105は、視差が許容範囲内であるので融像することができる。なお、図3及び図4における符号SPは、視差が実質的にゼロとなるスクリーン面SP(Screen Plane又はFocal Plane)である。
【0039】
本実施形態では、奥行き度調整部63は、シーン推定部62から運転シーンを受信すると、当該運転シーンに対応した提示範囲PWを下記の表1及び表2から読み込み、当該提示範囲PWが近傍面NPと遠方面FPとの間に包含されるように近傍面NPと遠方面FPを設定する。具体的には、奥行き度調整部63は、提示範囲PWにおける最近値に近傍面NPを設定すると共に、当該提示範囲PWにおける最遠値に遠方面FPを設定する。これにより、スクリーン面SPは、提示範囲PWのほぼ中央に設定される。下記の表1及び2における提示範囲PWは、自車輌1からの距離を示しており、下記の表1は、自動車1の前方側の提示範囲PWを示し、下記の表2は、自動車の後方側の提示範囲PWを示している。なお、表1及び表2における運転シーンやその提示範囲の具体的な数値は一例に過ぎない。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
例えば、運転シーンとして「一般道路/高速道路−発進」(シーンNo.1)が推定された場合には、奥行き度調整部63は、表1及び表2に基づいて、図5(a)に示すように、自車輌1の前方及び後方のいずれの立体映像についても、近傍面NPを10[m]に設定すると共に、遠方面FPを50[m]に設定する。
【0043】
一方、例えば、運転シーンとして「高速道路−直進」(シーンNo.5)が推定された場合には、奥行き度調整部63は、表1に基づいて、図5(b)に示すように、自車輌1の前方の立体映像について、近傍面NPを50[m]に設定すると共に、遠方面FPを150[m]に設定する。なお、この場合には、車輌後方の立体映像は3Dモニタ30に表示されない。
【0044】
また、例えば、運転シーンとして「高速道路−合流」(シーンNo.8)が推定された場合には、奥行き度調整部63は、表2に基づいて、図5(c)に示すように、自車輌1の後方の立体映像について、近傍面NPを100[m]に設定すると共に、遠方面FPを200[m]に設定する。なお、この場合には、車輌前方の立体映像は3Dモニタ30に表示されない。
【0045】
すなわち、本実施形態では、運転者が運転シーンにおいて注目すべき範囲を融像することが可能となるように、近傍面NPと遠方面FPとで規定される提示範囲PWを運転シーンに応じてシフトさせる。なお、いわゆる平行法を採用している場合には、後述の図6の手法によってクロスポイントが移動しない限り、スクリーン面SPが無限遠点となるため、近傍面NPのみを設定すればよい。
【0046】
ここで、近傍面NPと遠方面FPとで規定される提示範囲PWをシフトさせる具体的な手法としては、図6〜図10に示すものを例示することができる。図6〜図10は本実施形態における立体映像の奥行き度の調整方法の具体例を示す図である。
【0047】
例えば、図6に示す例では、左眼映像150Lと右眼用の映像150Rを部分的に表示することで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整する。
【0048】
具体的には、同図に示すように、左眼用の映像150Lの左側の一部151Lを削除すると共に、右眼用の映像150Rの右側一部151Rを削除することで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、左眼用の映像の右側の一部を削除すると共に、右眼用の映像の左側の一部を削除することで、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。
【0049】
こうした画像処理は、映像制御装置60が所定のプログラムを実行することで遂行することができるので、車輌用映像表示装置1の低コスト化を図ることができる。なお、この手法は、平行法、カメラ交差法、及びレンズ交差法のいずれにも採用することができる。
【0050】
一方、図7に示す例では、カメラ20L,20Rの間隔を変更することで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整する。
【0051】
具体的には、同図に示すように、2つのカメラ20L,20Rの間隔を広げることで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、2つのカメラ20L,20Rの間隔を狭めることで、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。なお、カメラ20L,20Rの間隔を変更する具体的な手段としては、例えば、モータにより駆動するボールネジ機構等を例示することができる。
【0052】
この場合には、カメラ20L,20Rの撮像素子の画素数を維持することができるため、運転者に対して繊細な立体映像を呈示することができる。なお、この手法も、平行法、カメラ交差法、及びレンズ交差法のいずれにも採用することができる。
【0053】
また、図8(a)及び図8(b)に示すように、上述のレンズ交差法を採用している場合には、カメラ20L,20Rのレンズ202L,202Rの間隔を変更することで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整してもよい。
【0054】
具体的には、同図に示すように、2つのレンズ202L,202Rの間隔を広げることで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、2つのレンズ202L,202Rの間隔を狭めることで、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。
【0055】
なお、レンズ202L,202Rの間隔を変更する具体的な手段としては、例えば、モータにより駆動するボールネジ機構等を例示することができる。また、レンズ202L,202Rに対して撮像素子201L,201Rを相対移動させることで、提示範囲PWを変更してもよい。
【0056】
図8に示す例の場合には、レンズ202L,202Rの間隔を連続的に変更することができるので、運転者に違和感を与えることなく立体映像の奥行き度を調整することができる。
【0057】
また、3つ以上(図9に示す例では8つ)のカメラ20A〜20Hを用いた多視点(マルチビュー又はインテグラルイメージング)方式を採用している場合には、左眼用のカメラと右眼用のカメラの組合せを切り替えることで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整してもよい。
【0058】
例えば、図9に示すように、中央の2つのカメラ20D,20Eを使用している場合、左眼用のカメラをカメラ20Dからその左隣のカメラ20Cに切り替えると共に、右眼用のカメラをカメラ20Eからその右隣のカメラ20Fに切り替えることで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、外側のカメラから内側のカメラに切り替えるほど、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。
【0059】
この場合には、左眼用映像と右眼映像における視差を制御するための機械的な可動部が存在しないため、立体映像の奥行き度を高速に調整することができる。なお、この多視点方式は、平行法、カメラ交差法、及びレンズ交差法のいずれの場合でも採用することができる。
【0060】
また、図10に示すように、上述のカメラ交差法を採用している場合には、当該カメラ20L、20Rの傾きを変更することで、左眼用映像と右眼映像における視差を制御して、立体映像の奥行き度を調整してもよい。
【0061】
具体的には、同図に示すように、2つのカメラ20L,20Rの傾きを緩くすることで、提示範囲PWを自車輌1から遠ざけることができる。これに対し、特に図示しないが、カメラ20L,20Rの傾きを強くすることで、提示範囲PWを自車輌1に近づけることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態では、運転シーンに応じて奥行き度が最適化された立体映像が表示されるので、運転者は運転シーンにおいて重要な範囲を視認することが可能となり、立体映像による状況認識性能の向上を図ることができる。
【0063】
なお、図11(a)及び図11(b)に示すように、運転シーンと自動車1の車速とに応じて、提示範囲PWを設定してもよい。図11(a)は、運転シーンとして「高速道路−直進」(シーンNo.5)が推定された場合の提示範囲PWと車速との関係を示すグラフであり、図11(b)は、運転シーンとして「一般道路/高速道路−発進」(シーンNo.1)が推定された場合の提示範囲PWと車速の関係を示すグラフである。
【0064】
奥行き度調整部63は、図11(a)や図11(b)に示すようなマップを運転シーンに応じて参照して、車速センサ70(図1参照)から得られた車速に応じて、提示範囲PWを補正する。具体的には、図11(a)や図11(b)に示すようなマップに対応した運転シーンの場合には、奥行き度調整部63は、車速が高くなるに従って提示範囲PWを自車輌1から遠ざけるように補正する。このように、運転シーンと自車輌1の車速に基づいて立体映像の奥行き度を調整することで、立体映像の奥行き度が一層最適化されるので、立体映像による状況認識性能がさらに向上する。
【0065】
なお、特に図示しないが、上記の表1及び表2に示す全ての運転シーンに対して、図11(a)や図11(b)に示すようなグラフを設定してもよいし、一部の運転シーンについては車速に対して提示範囲PWを固定してもよい。
【0066】
また、図12に示すように、自車輌1の周囲に存在する複数の他車輌の平均距離に応じて、提示範囲PWを変化させてもよい。図12は、他車輌の平均距離に基づいて提示範囲を補正したグラフである。
【0067】
この自車輌1の周囲に存在する複数の他車輌の平均距離Dは、下記の(2)〜(4)式によって算出され、図12に示すように、現在の車速(図12に示す例では100[km/h])におけるスクリーン面SPが平均距離Dとなるように、その車速付近における提示範囲PWを補正する。
【0068】
D=Σ(dn×wn/W) …(2)
wn=Δvn×1/Δsn …(3)
W=Σwn …(4)
【0069】
但し、上記の(2)〜(4)式において、dnは、自車輌から個々の他車輌までの距離であり、Δvnは、自車輌に対する個々の他車輌の相対速度であり、Δsnは、自車輌に対する個々の他車輌の横変位である。なお、dn,Δvn,Δsnは、物体検出センサ50や車速センサ等の検出信号に基づいて算出される。
【0070】
具体的に図13に示す合流シーンを例にとって平均距離Dの算出方法について説明する。図13は自車輌が本線に合流する例における車輌間の位置関係を示す図である。
【0071】
図13に示す例では、自車輌1が速度v0で走行している車線121の隣の車線122を他車輌111が速度v1で走行し、さらにその隣の車線123を別の他車輌112が速度v2で走行している。このような例では、複数の他車輌111,112の平均距離は、下記の(5)〜(10)によって算出される。
【0072】
Δv1=v1−v0 …(5)式
Δv2=v2−v0 …(6)式
w1=Δv1×1/s1 …(7)式
w2=Δv2×1/s2 …(8)式
W=w1+w2 …(9)式
D=d1×w1/W+d2×w2/W …(10)式
【0073】
但し、上記の(5)〜(10)式において、s1は自車輌1に対する他車輌111のX方向の距離(横変位)であり、s2は自車輌1に対する他車輌112のX方向の距離(横変位)であり、d1は自車輌1に対する他車輌111のY方向の距離であり、d2は自車輌1に対する他車輌112のY方向の距離である。
【0074】
このように、自車輌1に対する他車輌111,112の距離に基づいて、立体映像の奥行き度を補正することで、運転者に対して注意すべき物体を強調することができ、立体映像による状況認識性能がさらに向上する。なお、こうした物体強調は、運転シーンの切替直後に実行することが好ましい。
【0075】
なお、運転者が注目したい車輌を複数の他車輌113,114の中から選択可能としてもよい。図14は車輌後方を表示する立体映像において注目したい他車輌を選択する画面の例を示す図である。この場合には、図14に示すように、例えば、ステアリングホイールやリモコン等に設けられた選択スイッチ80(図1参照)を操作して、3Dモニタ30上でウィンドウ枠141を移動させて注目したい他車輌113を囲むことで、当該他車輌113を選択する。そして、奥行き度調整部63は、特に図示しないが、現在の車速におけるスクリーン面SPが、選択された他車輌113の距離となるように、提示範囲PWを補正する。なお、注目したい他車輌の選択方法は特に上記に限定されない。
【0076】
このように、運転者が選択した物体113の自車輌1に対する距離に基づいて、立体映像の奥行き度を補正することで、複数の物体の中でも特に注意が必要な物体に対する状況認識性能を高めることができる。
【0077】
奥行き度調整部63によって運転シーンに応じて奥行き度が調整された立体映像は、変換部64によって3Dモニタ30に適合した信号パターンに変換された後に3Dモニタ30に出力され、3Dモニタ30はその立体映像を運転者に対して表示する。
【0078】
例えば、3Dモニタが2視点のパララックスバリア方式である場合には、変換部64は、左眼用映像と右眼用映像が垂直1ライン毎に交互に出力されるような信号パターンに変換する。
【0079】
この際、本実施形態では、奥行き度調整部63によって立体映像の奥行き度が運転シーンに応じて最適化されている。例えば、高速道路において直進走行している場合には近傍領域よりも遠方領域の情報が重要であるが、本実施形態では、図15(a)に示すように、遠方に存在する他車輌115,116や案内標識131が融像可能であり、これらから正確に情報を入手することができる。
【0080】
これに対し、奥行き度調整部63によって立体映像の奥行き度を調整しない場合には、図15(b)に示すように、自車輌から近傍領域は融像することができるが、遠方領域については融像することができず複視されてしまい、高速道路の直進走行に重要な情報が十分に入手できない場合がある。
【0081】
なお、図15(a)は本実施形態において立体映像の奥行き度を運転シーンに応じて調整した画像の例を示す図、図15(b)は立体映像の奥行き度を調整せずに表示した画像の例を示す図である。
【0082】
以上のように、本実施形態では、3Dモニタ30に表示される立体映像の奥行き度を、奥行き度調整部63によって運転シーンに基づいて調整する。これにより、運転シーンに応じて奥行き度が最適化された立体映像を運転者に対して表示することが可能となるので、立体映像による状況認識性能を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、「一般道路」や「高速道路」を含む道路種別と、「発進」、「停止」、「直進」、「旋回」、「後退」、「合流」、「車線変更」、及び「追い越し」を含む走行状態と、に基づいて運転シーンを設定している。このため、それぞれのシーンで重要な提示範囲PWを設定することができ、立体映像による状況認識性能を向上させることができる。
【0084】
本実施形態におけるカメラ21,22が本発明における撮像手段の一例に相当し、本実施形態における3Dモニタ30が本発明における立体映像表示手段の一例に相当し、本実施形態におけるシーン推定部62が本発明におけるシーン推定手段の一例に相当し、本実施形態における奥行き度調整部63が本発明における奥行き度調整手段の一例に相当し、本実施形態における物体検出センサ50が本発明における物体検出手段の一例に相当し、本実施形態における選択スイッチ80が本発明における物体選択手段の一例に相当し、本実施形態におけるレンズ202L,202Rが本発明における集光手段の一例に相当する。
【0085】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0086】
1…自動車(自車輌)
10…車輌用映像表示装置
21L,21R,22L,22R…カメラ
30…3Dモニタ
40…ナビゲーション装置
50…物体検出センサ
60…映像制御装置
61…キャプチャ部
62…シーン推定部
63…奥行き度変換部
64…変換部
70…車速センサ
80…選択スイッチ
NP…近傍面
SP…スクリーン面
FP…遠方面
PW…提示範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載され、前記車輌の周囲を撮像する少なくとも2つの撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された映像を立体映像として表示する立体映像表示手段と、
前記車輌の運転シーンを推定するシーン推定手段と、
前記運転シーンに基づいて、前記立体映像表示手段に表示する立体映像の奥行き度を調整する奥行き度調整手段と、を備えたことを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車輌用映像表示装置であって、
前記運転シーンは、道路の種別と前記車輌の走行状態とに基づいて設定されており、
前記道路種別は、一般道路、及び高速道路を含み、
前記車輌の走行状態は、発進、停止、直進、旋回、後退、合流、車線変更、及び追い越しを含むことを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、前記運転シーンと前記車輌の速度と、に基づいて、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記車輌の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段を備え、
前記奥行き度調整手段は、前記車両に対する前記物体の距離に基づいて、前記立体映像の奥行き度を補正することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車輌用映像表示装置であって、
前記物体検出手段によって検出された物体の中から一つの物体を選択する物体選択手段を備え、
前記奥行き度調整手段は、前記物体選択手段によって選択された物体の前記車輌に対する距離に基づいて、前記立体映像の奥行き度を補正することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、前記撮像手段から得られた映像を部分的に表示することで、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、2つの前記撮像手段が有する集光手段の間の距離を変更することで、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、3以上の前記撮像手段の中から選択される2つの前記撮像手段の組合せを変更することで、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項9】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、2つの前記撮像手段の間の距離を変更することで、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項1】
車輌に搭載され、前記車輌の周囲を撮像する少なくとも2つの撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された映像を立体映像として表示する立体映像表示手段と、
前記車輌の運転シーンを推定するシーン推定手段と、
前記運転シーンに基づいて、前記立体映像表示手段に表示する立体映像の奥行き度を調整する奥行き度調整手段と、を備えたことを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車輌用映像表示装置であって、
前記運転シーンは、道路の種別と前記車輌の走行状態とに基づいて設定されており、
前記道路種別は、一般道路、及び高速道路を含み、
前記車輌の走行状態は、発進、停止、直進、旋回、後退、合流、車線変更、及び追い越しを含むことを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、前記運転シーンと前記車輌の速度と、に基づいて、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記車輌の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段を備え、
前記奥行き度調整手段は、前記車両に対する前記物体の距離に基づいて、前記立体映像の奥行き度を補正することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車輌用映像表示装置であって、
前記物体検出手段によって検出された物体の中から一つの物体を選択する物体選択手段を備え、
前記奥行き度調整手段は、前記物体選択手段によって選択された物体の前記車輌に対する距離に基づいて、前記立体映像の奥行き度を補正することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、前記撮像手段から得られた映像を部分的に表示することで、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、2つの前記撮像手段が有する集光手段の間の距離を変更することで、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、3以上の前記撮像手段の中から選択される2つの前記撮像手段の組合せを変更することで、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【請求項9】
請求項1〜5の何れかに記載の車輌用映像表示装置であって、
前記奥行き度調整手段は、2つの前記撮像手段の間の距離を変更することで、前記立体映像の奥行き度を調整することを特徴とする車輌用映像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−26770(P2013−26770A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158800(P2011−158800)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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