説明

車輪位置検出システムの異常判定方法

【課題】車輪位置検出システムにおける検出結果の正確性を高める技術を提供する。
【解決手段】車輪位置情報を無線で送信する送信機と、受信機12と、トリガ信号発信機8と、受信機12の受信した信号がどの車輪のものであるかを車輪位置情報に基づいて判断する車輪位置検出を実施するTPMS−ECU14と、を備えた車輪位置検出システムの異常判定方法であって、送信機IDを予め定められた車輪順に記憶させて、車輪位置と送信機IDとを対応付けた検査基準を作成し、送信機から送信機IDと車輪位置情報とを送信させ、車輪位置情報に基づいて車輪位置を検出する車輪位置検出を実施し、検出された車輪位置に基づいて送信機IDを車輪順に記憶させて、車輪位置検出の検出結果を作成し、検査基準と検出結果とを比較して車輪位置検出が正常に行われたか否かを判断することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪位置検出システムの異常判定方法に関し、特にタイヤ空気圧監視システムに適用される車輪位置検出システムの異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より安全な車両の走行を実現するために、タイヤの空気圧や温度などの情報を無線で車体側に送信してドライバーに知らせるタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)の開発が進められている。このようなタイヤ空気圧監視システムでは、タイヤ空気圧などの車輪状態を検出する車輪状態検出ユニットが各車輪に対応して設けられる。この車輪状態検出ユニットは、検出した車輪状態に関する情報を無線で車体側に送信する。送信された車輪状態情報は車体側の受信機で受信されてTPMS−ECUに送られ、TPMS−ECUにおいて、受信した車輪状態情報を元にタイヤ空気圧の良否を判定し、判定結果をインストルメントパネルやナビゲーションシステムのディスプレイ等に表示する。
【0003】
このようなタイヤ空気圧監視システムでは、受信した車輪情報がどの車輪に設けられた車輪状態検出ユニットから送信されたものであるか区別可能であることが望まれていた。これに対し、車輪状態検出ユニットから車輪情報とともに各車輪に固有の識別情報が送信され、受信した車輪情報がどの車輪に関するものであるかを当該識別情報に基づいて判別できる車輪位置検出システムが知られている(例えば、特許文献1、3、または4参照)。また、同様の車輪位置検出システムをタイヤローテーション判断装置に適用した例が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−50025号公報
【特許文献2】特開2007−112169号公報
【特許文献3】特開2004−155352号公報
【特許文献4】特開2004−58964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の車輪位置検出システムについては、正確に車輪位置の検出を行いたいという要求が常に存在している。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車輪位置検出システムにおける検出結果の正確性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車輪位置検出システムの異常判定方法である。当該異常判定方法は、複数の車輪のそれぞれに設けられ、車輪位置情報を含む信号を無線で送信する送信機と、車体側に設けられ、前記信号を受信する受信機と、前記送信機に対して前記信号を送信させるトリガ信号を発信するトリガ信号発信機と、トリガ信号発信機を制御して前記送信機に前記信号を送信させ、前記受信機の受信した信号がどの車輪のものであるかを受信した車輪位置情報に基づいて判断する車輪位置検出を実施する制御部と、を備えた車輪位置検出システムの異常判定方法であって、複数の前記送信機のそれぞれが有する識別情報を予め定められた車輪順に記憶させて、車輪位置と識別情報とを対応付けた検査基準を作成するステップと、前記トリガ信号発信機からトリガ信号を発信させ、前記送信機から識別情報と車輪位置情報とを含む信号を送信させ、送信された車輪位置情報に基づいて車輪位置を検出する車輪位置検出を実施し、検出された車輪位置に基づいて送信された識別情報を前記車輪順に記憶させて、車輪位置検出の検出結果を作成するステップと、前記検査基準と前記検出結果とを比較して、前記車輪位置検出が正常に行われたか否かを判断するステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
この態様の車輪位置検出システムの異常判定方法によれば、車輪位置検出システムにおける検出結果の正確性を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車輪位置検出システムにおける検出結果の正確性を高める技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1および2に係る車輪位置検出システムを採用したタイヤ空気圧監視システムを備えた車両の概略構成を示す図である。
【図2】車輪の概略断面図である。
【図3】タイヤ空気圧監視システムの概略構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態1に係る車輪位置検出システムの異常判定方法のフローチャートである。
【図5】実施形態2に係る車輪位置検出システムの異常判定方法のフローチャートである。
【図6】変形例に係る車輪位置検出システムを採用したタイヤ空気圧監視システムを備えた車両の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車輪位置検出システムを採用したタイヤ空気圧監視システムを備えた車両の概略構成を示す図である。図2は、車輪の概略断面図である。図3は、タイヤ空気圧監視システムの概略構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、車両100の車体1には、路面に設置して回転することにより車両100を走行させる4つの走行車輪、左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RL(以下、適宜、「車輪2」と総称する)が設けられている。また、車体1には、車輪2のいずれかに異常が生じたときに備えてスペアタイヤ2SPが搭載されている。スペアタイヤ2SPが搭載される位置は、例えば、車体1の後部ドアや、トランクルーム下方等である。
【0014】
図2に示すように、車輪2は、タイヤ22と、ホイール24とを有する。ホイール24の外周部には円筒状に形成されたホイールリム26が設けられ、このホイールリム26の外周上にタイヤ22が組み付けられる。こうしてタイヤ22の内部とホイールリム26の外周によって囲まれる領域にタイヤ気室が形成される。
【0015】
図1および図3に示すように、タイヤ空気圧監視システム200は、車輪状態検出ユニット6a、6b、6c、6d、6sp(以下、適宜、「車輪状態検出ユニット6」と総称する)と、トリガ信号発信機8a、8b(以下、適宜、「トリガ信号発信機8」と総称する)と、トリガ信号発信機駆動ユニット10と、受信機12と、TPMS−ECU14と、表示部16と、コネクタ部18と、を備える。
【0016】
車輪状態検出ユニット6は、4つの車輪2およびスペアタイヤ2SPのそれぞれに設けられている。具体的には、左前輪2FLには車輪状態検出ユニット6aが、右前輪2FRには車輪状態検出ユニット6bが、右後輪2RRには車輪状態検出ユニット6cが、左後輪2RLには車輪状態検出ユニット6dが、スペアタイヤ2SPには車輪状態検出ユニット6spが、それぞれ取り付けられている。
【0017】
本実施形態の車輪状態検出ユニット6は、図2に示すように、送信部62と、タイヤバルブ部64とが一体となった形状を有する。送信部62は、タイヤバルブ部64の一端に固定される。車輪状態検出ユニット6は、タイヤバルブ部64がホイールリム26に固定されることにより、車輪2に取り付けられている。なお、車輪状態検出ユニット6の構成は特にこれに限定されない。
【0018】
送信部62は、車輪状態としてのタイヤ気室の空気圧(以下、適宜、「タイヤ空気圧」と称する)を検出する空気圧センサや、車輪状態としてのタイヤ気室内温度を検出する温度センサ等の、車輪の状態を検出するセンサ(図示せず)を有する。また、送信部62は、このセンサによって検出された車輪状態を車輪状態情報として無線で送信する送信機(図示せず)を有する。当該送信機は、トリガ信号発信機8から後述するトリガ信号を受けて、車輪状態情報を送信する。また、送信機は、車輪状態情報とともにトリガ信号の受信強度に関する情報(車輪位置情報)を含む信号を無線で送信する。
【0019】
送信機には、各送信機の識別情報(以下、適宜、送信機IDと称する)が付与されており、送信機はこの送信機IDを送信することができる。また、送信部62は、センサの検出値を処理するデータ処理部や、送信部62に含まれる各機器に電力を供給するための電池等を有する。
【0020】
図1および図3に戻って、トリガ信号発信機8は、車体1の所定位置に設けられるとともに、トリガ信号発信機駆動ユニット10に接続されている。トリガ信号発信機8は、車輪状態検出ユニット6に対してトリガ信号をLF(Low Frequency)信号にのせて発信することができる。本実施形態では、2つのトリガ信号発信機8a、8bが車体1に取り付けられ、トリガ信号発信機8aが車輪状態検出ユニット6a、6bにトリガ信号を発信し、トリガ信号発信機8bが車輪状態検出ユニット6c、6dにトリガ信号を発信する。トリガ信号発信機8aは、車輪状態検出ユニット6aまでの距離と車輪状態検出ユニット6bまでの距離とが異なるように車体1に配設され、トリガ信号発信機8bは、車輪状態検出ユニット6cまでの距離と車輪状態検出ユニット6dまでの距離とが異なるように車体1に配設されている。
【0021】
トリガ信号発信機駆動ユニット10は、車体1に設けられるとともに、トリガ信号発信機8およびTPMS−ECU14に接続されている。トリガ信号発信機駆動ユニット10は、TPMS−ECU14からのトリガ信号発信指示に応じてトリガ信号発信機8をON/OFFする。トリガ信号発信機駆動ユニット10がトリガ信号発信機8をONにするとトリガ信号発信機8からトリガ信号が発信され、トリガ信号発信機8をOFFにするとトリガ信号発信機8からのトリガ信号の発信が停止される。
【0022】
受信機12は、車体1に設けられるとともにTPMS−ECU14に接続されている。受信機12は、車輪状態検出ユニット6から送信された信号を受信し、TPMS−ECU14で判読可能なデータに復調してTPMS−ECU14に送信する。
【0023】
TPMS−ECU14(制御部)は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、マイクロコンピュータによる演算を行う演算ユニット、各種の処理プログラムを記憶するROM、一時的にデータやプログラムを記憶してデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、および各種信号の送受信を行うための入出力ポートなどを有する。
【0024】
TPMS−ECU14は、受信機12から受け取ったタイヤ空気圧の値と、記憶部142に保存されている空気圧警告しきい値とを比較演算して、各車輪2のタイヤ空気圧を監視する。また、TPMS−ECU14は、受信機12から受け取った送信機IDおよびトリガ信号の受信強度に関する情報と、予め登録されている送信機IDとを比較演算して、車輪位置検出の異常判定を実施する。TPMS−ECU14はタイヤ空気圧監視モードと送信機ID登録モードとを実行可能であり、TPMS−ECU14は、空気圧監視モードにおいて、トリガ信号発信機駆動ユニット10にトリガ信号発信指示を送ることでトリガ信号発信機8を駆動させて、タイヤ空気圧の監視を任意のタイミングで実施する。また、TPMS−ECU14は、送信機ID登録モードにおいて、上述の車輪位置検出の異常判定を実施する。
【0025】
ここで、送信機ID登録モードとは、自車両の各車輪2に搭載された車輪状態検出ユニット6に含まれる送信機を他車両の送信機と区別するために、自車両の車輪2に搭載された送信機の識別情報をTPMS−ECU14に書き込む作業を行うためのモードである。この送信機ID登録モードは、通常は工場や販売店において専用の登録機器を用いて実行される。
【0026】
表示部16は、車両室内のインストルメントパネル等、運転者によって視認可能な箇所に配置される。表示部16はTPMS−ECU14に接続されており、TPMS−ECU14から出力される表示データに応じて情報を画面に表示する。表示部16は、例えば、警告灯表示16aや、車輪位置別空気圧表示16b等が可能である。
【0027】
コネクタ部18は、送信機IDをTPMS−ECU14に登録する際に、送信機IDをTPMS−ECU14に登録するための機器が接続されるコネクタである。
【0028】
本実施形態に係る車輪位置検出システムは、車輪状態検出ユニット6と、トリガ信号発信機8と、トリガ信号発信機駆動ユニット10と、受信機12と、TPMS−ECU14とを含んで構成される。この車輪位置検出システムは、送信機から受信された車輪位置情報と車輪状態情報とを紐付処理するシステムである。
【0029】
次に、このような構成を備えたタイヤ空気圧監視システム200によるタイヤ空気圧の監視動作について説明する。タイヤ空気圧監視モードに設定されている状態で、TPMS−ECU14は、トリガ信号発信機駆動ユニット10に対してトリガ信号発信指示を送る。トリガ信号発信機駆動ユニット10は、トリガ信号発信指示を受けると、トリガ信号発信機8をONにする。これによりトリガ信号発信機8からトリガ信号が発信される。
【0030】
一方、車輪状態検出ユニット6は、取り付けられた車輪2のタイヤ空気圧やタイヤ気室内温度を検出して車輪状態情報を生成する。そして、車輪状態検出ユニット6は、トリガ信号発信機8からトリガ信号を受信すると、車輪状態情報とトリガ信号の受信強度に関する情報とを発信する。受信機12は、車輪状態検出ユニット6から無線送信されたこれらの信号を受信して所定の処理を実施した後、TPMS−ECU14に送る。
【0031】
TPMS−ECU14は、取得した車輪状態情報に含まれるタイヤ空気圧の値と、記憶部142に保存されている空気圧警告しきい値とを比較演算する。また、TPMS−ECU14は、取得したトリガ信号の受信強度情報から、取得した車輪状態情報がどの車輪2のものであるかを判断する車輪位置検出を実施する。TPMS−ECU14は、車輪2のタイヤ空気圧に異常が認められたときは、表示部16に警告灯表示16aや車輪位置別空気圧表示16bを行って、運転者に警告を発する。
【0032】
続いて、本実施形態に係る車輪位置検出システムの異常判定方法について詳細に説明する。この車輪位置検出システムの異常判定は、例えば、送信機IDの登録モードに設定された状態で実施される。
【0033】
まず、各車輪状態検出ユニット6の送信機のそれぞれが有する送信機IDが、TPMS−ECU14に入力される。例えば、送信機ID登録装置がコネクタ部18に接続され、この送信機ID登録装置によって、送信機IDの入力が実施される。TPMS−ECU14に入力された送信機ID情報は、記憶部142のアドレスA142aに記憶される。このとき、送信機IDは、予め定められた車輪順、本実施形態では左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RLの順で、記憶部142のアドレスA142aに登録される。このように、決められた車輪順で送信機IDが記憶されるため、アドレスA142aに記憶された送信機IDは正しい車輪位置と対応付けられた(紐付けされた)送信機IDであり、本異常判定方法の検査基準として用いられる。
【0034】
続いて、TPMS−ECU14は、トリガ信号発信機8にトリガ信号を発信させる。トリガ信号を受信した車輪状態検出ユニット6は、トリガ信号の受信強度情報と送信機IDとをTPMS−ECU14に送信する。車輪状態検出ユニット6は、送信機ID登録モードのときにトリガ信号を受信すると、トリガ信号の受信強度情報と送信機IDとを送信するように設定されている。車輪状態検出ユニット6から送信されたこれらの情報は受信機12によって受信され、TPMS−ECU14に送られる。
【0035】
TPMS−ECU14は、受信機12で受信したトリガ信号の受信強度情報に基づいてどの車輪からの信号であるかを判断する車輪位置検出を実施する。そして、車輪位置検出によって検出された車輪位置に基づいて、上述の送信機IDの入力時と同じ車輪順、すなわち左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RLの順で、各送信機IDを記憶部142のアドレスB142bに記憶される。このように、車輪位置検出の結果に基づいて送信機IDが決められた車輪順に記憶されるため、アドレスB142bに記憶された送信機IDは、検出された車輪位置と対応付けられた送信機IDであって、車輪位置検出の検出結果として用いられる。
【0036】
そして、TPMS−ECU14は、アドレスA142aおよびアドレスB142bのそれぞれに記憶されている送信機IDについて、記憶された順番が同じもの同士を比較する。検査基準と検出結果とは同じ車輪順で送信機IDが登録されているため、車輪位置検出が正常に行われていれば両者の送信機IDは一致するはずである。そこで、TPMS−ECU14は、比較した結果、送信機IDが一致した場合には車輪位置検出が正常に行われたと判断し、送信機IDが一致しなかった場合には車輪位置検出が正常に行われなかったと判断する。
【0037】
以下に、本実施形態に係る車輪位置検出システムの異常判定方法のフローを説明する。図4は、実施形態1に係る車輪位置検出システムの異常判定方法のフローチャートである。このフローは、TPMS−ECU14により実行され、例えば、送信機ID登録モードに切り換えられたときに開始される。
【0038】
まず、左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RLの順で、各車輪に設けられた車輪状態検出ユニット6の送信機が有する送信機IDがTPMS−ECU14に入力される(ステップ1:以下S1と略記する。他のステップも同様)。続いて、入力された送信機IDが、入力された順に記憶部142のアドレスA142aに記憶される(S2)。これにより、本異常判定方法の検査基準が作成される。
【0039】
続いて、車輪位置検出が実施される(S3)。具体的には、トリガ信号発信機8からトリガ信号が発信され、送信機からトリガ信号の受信強度情報と送信機IDとを含む信号が送信される。TPMS−ECU14は、受信したトリガ信号の受信強度情報から車輪位置を検出する。そして、車輪位置検出によって検出された車輪位置と、対応する送信機IDとが紐付けされ(S4)、検出された車輪位置と紐付けされた送信機IDが、左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RLの順で、記憶部142のアドレスB142bに記憶される(S5)。
【0040】
続いて、アドレスA142aに記憶された送信機IDとアドレスB142bに記憶された送信機IDとが、記憶された順番が同じもの同士で比較される(S6)。そして、アドレスA142aの送信機IDとアドレスB142bの送信機IDとが一致するか否か判断される(S7)。送信機IDが一致した場合には(S7_Yes)、車輪位置検出が正常に行われたと判断され(S8)、本フローが終了する。送信機IDが一致しなかった場合には(S7_No)、車輪位置検出が異常である判断され(S9)、警告灯の点灯等が行われて(S10)、本フローが終了する。
【0041】
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係る車輪位置検出システムの異常判定方法では、送信機IDが予め定められた車輪順に記憶され、車輪位置と送信機IDとを対応付けた検査基準が作成される。また、車輪位置検出で検出された車輪位置に基づいて、同じ車輪順に送信機IDが記憶されて車輪位置検出の検出結果が作成される。そして、検査基準と検出結果とが比較されて、車輪位置検出が正常に行われたか否かが判断される。このように、本実施形態の車輪位置検出システムの異常判定方法では、決められた車輪順に送信機IDが記憶されて検査基準が作成されているため、車輪位置検出システムの異常判定を正確に行うことができる。その結果、車輪位置検出システムにおける検出結果の正確性を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態の異常判定方法を採用する場合、従来も行われていた送信機IDの登録作業において、決められた車輪順に送信機IDの登録を行うという変更が加えられるだけである。そのため、本実施形態の異常判定方法の実施によって増大する作業者の負担は小さく、新たな設備や機器を追加する必要がない。また、タイヤ空気圧監視システム200単独で本実施形態の異常判定方法を実施することができ、本異常判定方法の実施の可否が他の部品の有無等に左右されないため、異常判定作業の自由度を高めることができるとともに、異常判定の作業効率の向上を図ることができる。
【0043】
さらに、本実施形態の異常判定方法によれば、車輪一つ一つの空気圧を所定値に変化させて、表示部に表示される該当車輪の空気圧が同じ値に変化したか否かを目視で確認する従来の異常判定方法に比べて、異常判定にかかる時間の短縮と工数の削減を図ることができる。また、本実施形態の異常判定方法によれば、コンプレッサや空気圧計等の機器を用意する必要がない。また、本実施形態の異常判定方法では、位置検出の際にトリガ信号を発信して送信機に信号の発信を促すことで、任意のタイミングで車輪位置情報を取得することができる。よって、位置検出にかかる時間が短くなり、これにより車輪位置検出システムの異常判定にかかる時間も短くなるため、工場や販売店での作業時間短縮につながる。
【0044】
(実施形態2)
実施形態1では、決められた車輪順に送信機IDを登録することで正確な車輪位置と送信機IDとの紐付けをおこなったが、実施形態2に係る車輪位置検出システムでは、送信機IDを順番を規定せずに登録した後、決められた車輪順に送信機IDを強制的に送信させることで正確な車輪位置と送信機IDとの紐付けを行う点が実施形態1と異なる。以下、本実施形態について説明する。なお、車輪位置検出システムおよびタイヤ空気圧監視システムの構成は実施形態1と基本的に同一である。実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0045】
本実施形態の車両位置検出システムでは、記憶部142が記憶領域として、アドレスA142aと、アドレスB142bと、アドレスC(図示せず)とを有する。そして、アドレスA142aには、各車輪状態検出ユニット6の送信機が有する送信機IDが、順番を規定されずに記憶される。また、車体1に設けられたトリガ信号発信機8とは別の、トリガ信号を発信可能なトリガ機(図示せず)によって、予め定められた車輪順に送信機IDが強制発信させられ、アドレスA142aに記憶された送信機IDがこの車輪順に並べ替えられてアドレスB142bに記憶される。本実施形態では、予め定められた車輪順に送信機IDを強制発信させることで、送信機IDを予め定められた車輪順に記憶させ、これにより正しい車輪位置と送信機IDとを対応付けた(紐付けした)検査基準を作成する。
【0046】
また、車輪位置検出によって検出された車輪位置に基づいて、検査基準の作成時と同じ車輪順、すなわち左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RLの順で、各送信機IDがアドレスCに登録される。
【0047】
そして、TPMS−ECU14は、アドレスB142bおよびアドレスCのそれぞれに記憶されている送信機IDについて、記憶された順番が同じもの同士を比較して、車輪位置検出が正常に行われたか否かを判断する。
【0048】
図5は、実施形態2に係る車輪位置検出システムの異常判定方法のフローチャートである。まず、順番を定めずに、各車輪2に設けられた車輪状態検出ユニット6の送信機が有する送信機IDがTPMS−ECU14に入力される(S21)。続いて、入力された送信機IDが、記憶部142のアドレスA142aに記憶される(S22)。続いて、車輪位置検出が実施される(S23)。そして、車輪位置検出によって検出された車輪位置と、対応する送信機IDとが紐付けされ(S24)、検出された車輪位置と紐付けされた送信機IDが、左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RLの順で、記憶部142のアドレスCに記憶される(S25)。
【0049】
続いて、左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RLの順で、送信機IDの強制発信作業が実施される(S26)。具体的には、車体1に設けられたトリガ信号発信機8とは別の、トリガ信号を発信可能なトリガ機により、決められた車輪順に車輪状態検出ユニット6にトリガ信号が発信され、これにより決められた車輪順に送信機IDが送信される。そして、正しい車輪位置と、対応する送信機IDとが紐付けされ(S27)、正しい車輪位置と紐付けされた送信機IDが、左前輪2FL、右前輪2FR、右後輪2RR、左後輪2RLの順で、記憶部142のアドレスB142bに記憶される(S28)。これにより、本異常判定方法の検査基準が作成される。
【0050】
続いて、アドレスB142bに記憶された送信機IDとアドレスCに記憶された送信機IDとが、記憶された順番が同じもの同士で比較される(S29)。そして、アドレスB142bの送信機IDとアドレスCの送信機IDとが一致するか否か判断される(S30)。送信機IDが一致した場合には(S30_Yes)、車輪位置検出が正常に行われたと判断され(S31)、本フローが終了する。送信機IDが一致しなかった場合には(S30_No)、車輪位置検出が異常である判断され(S32)、警告灯の点灯等が行われて(S33)、本フローが終了する。
【0051】
以上説明した実施形態2に係る車輪位置検出システムの異常判定方法によっても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施の形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0053】
例えば、実施形態1および実施例2では、2つのトリガ信号発信機8a、8bが車体1に取り付けられ、トリガ信号発信機8aが車輪状態検出ユニット6a、6bにトリガ信号を発信し、トリガ信号発信機8bが車輪状態検出ユニット6c、6dにトリガ信号を発信する構成であったが、各車輪状態検出ユニット6に対して一つずつトリガ信号発信機8を設ける構成であってもよい。図6は、変形例に係る車輪位置検出システムを採用したタイヤ空気圧監視システムを備えた車両の概略構成を示す図である。図6に示すように、車体1には、各車輪状態検出ユニット6に対応して4つのトリガ信号発信機8が設けられている。具体的には、車輪状態検出ユニット6aに対してトリガ信号発信機8aが、車輪状態検出ユニット6bに対してトリガ信号発信機8dが、車輪状態検出ユニット6cに対してトリガ信号発信機8cが、車輪状態検出ユニット6dに対してトリガ信号発信機8bが、それぞれ設けられている。図6に示す他の構成については、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0054】
変形例の構成を取ることで、車輪位置検出システムにおける検出結果の正確性をより高めることができる。ただし、実施形態1のように2つのトリガ信号発信機8で所望の正確性が得られる場合には、変形例よりもトリガ信号発信機8の数が少ない実施形態1の方が部品点数を低減でき、また製造コストを低減できるため好ましい。トリガ信号発信機8を設ける数、設置箇所等は、求められる正確性とコストとのバランスで適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 車体、 2 車輪、 6 車輪状態検出ユニット、 8 トリガ信号発信機、 10 トリガ信号発信機駆動ユニット、 12 受信機、 14 TPMS−ECU、 16 表示部、 100 車両、 142 記憶部、 142a アドレスA、 142b アドレスB、 200 タイヤ空気圧監視システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪のそれぞれに設けられ、車輪位置情報を含む信号を無線で送信する送信機と、車体側に設けられ、前記信号を受信する受信機と、前記送信機に対して前記信号を送信させるトリガ信号を発信するトリガ信号発信機と、トリガ信号発信機を制御して前記送信機に前記信号を送信させ、前記受信機の受信した信号がどの車輪のものであるかを受信した車輪位置情報に基づいて判断する車輪位置検出を実施する制御部と、を備えた車輪位置検出システムの異常判定方法であって、
複数の前記送信機のそれぞれが有する識別情報を予め定められた車輪順に記憶させて、車輪位置と識別情報とを対応付けた検査基準を作成するステップと、
前記トリガ信号発信機からトリガ信号を発信させ、前記送信機から識別情報と車輪位置情報とを含む信号を送信させ、送信された車輪位置情報に基づいて車輪位置を検出する車輪位置検出を実施し、検出された車輪位置に基づいて送信された識別情報を前記車輪順に記憶させて、車輪位置検出の検出結果を作成するステップと、
前記検査基準と前記検出結果とを比較して、前記車輪位置検出が正常に行われたか否かを判断するステップと、
を含むことを特徴とする車輪位置検出システムの異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264877(P2010−264877A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117882(P2009−117882)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】