説明

車輪関連情報取得装置および車輪

【課題】特定の車輪を識別するための情報を、他の車輪を識別するための情報と混同せずに車体側に簡便に取得させる。
【解決手段】車輪14に搭載される空気圧検出ユニット22は車輪側通信装置104および車輪関連情報検出装置107を含む。ドラムテスタ52により特定の車輪14が回転すると、車輪関連情報検出装置107は加速度を検出し、その検出結果に基づいて回転動作を検出する。その回転動作が車輪側通信装置104にあらかじめ記憶されている特定の回転のパターンと合致したとき、車輪側通信装置104はトリガ信号発信装置42から発信されるトリガ信号を受信する。トリガ信号を受信すると車輪側通信装置104は車輪を識別するための情報を車体側通信装置32に送信する。ECU34は受信した車輪を識別するための情報を車輪の位置と対応づけて取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に関連する情報を車体側で取得する車輪関連情報取得装置および車輪に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪に設けられた通信手段が、トリガ信号発信手段から送信されたトリガ信号を受信したときに、各車輪を識別するための車輪固有の情報および車輪の状態に関する情報を含む信号を車体側に無線送信する車輪状態監視装置が知られている(特許文献1、2、3および4)。特定の車輪の固有の情報を他の車輪の固有の情報と混同せずに車体側で取得させるためには、このような車輪状態監視装置は、特定の車輪に設けられた通信手段に対してのみトリガ信号を受信させた状態で使用する必要がある。例えば、特許文献1、2および3には、トリガ信号発信手段の送信部を特定の車輪に設けられた通信手段に接近させることにより、その特定の車輪にトリガ信号を受信させる技術が開示されている。また、特許文献4には、トリガ信号発信手段が、各車輪に設けられた通信手段に対応したそれぞれ異なるコード信号をトリガ信号として送信する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−242585号公報
【特許文献2】特開2004−114898号公報
【特許文献3】特開2003−223692号公報
【特許文献4】特開2004−161245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、トリガ信号発信手段の送信部を各車輪に順次接近させる必要があり、作業が煩雑である。また、各車輪に設けられた通信手段に対応したそれぞれ異なるコード信号をトリガ信号として送信するには比較的煩雑な制御が必要となり、更に車輪の個数分のトリガ信号の送信アンテナも必要となるので、その分コストが増大する。
【0004】
本発明は上述の事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、特定の車輪を識別するための情報を、他の車輪を識別するための情報と混同せずに車体側に簡便に取得させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は車輪関連情報取得装置に関する。この車輪関連情報取得装置は、車輪に設けられ、その車輪に対応付けられた識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、前記車輪に設けられ、前記車輪の状態に関する情報を検出する車輪関連情報検出手段と、前記車輪に設けられ、前記車輪関連情報検出手段の検出結果により前記車輪が特定の状態にあると判定したときに前記識別情報を送信する車輪側通信手段と、車体に設けられ、前記車輪側通信手段から前記識別情報を受信する車体側通信手段と、前記車体に設けられ、前記受信された識別情報を前記車体に取り付けられている車輪の識別情報として保存する識別情報保存手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この車輪関連情報取得装置によれば、車輪関連情報検出手段の検出結果により車輪が特定の状態にあると車輪側通信手段が判定したときに車輪側通信手段が車輪識別情報を送信するので、特定の車輪を識別するための情報を、他の車輪を識別するための情報と混同することなく車体側に簡便に取得させることができる。また、オペレータは車輪の外部から信号を送信させるための操作をすることなく車輪側通信手段から車輪識別情報を車体側通信手段に送信させることができる。ここでいう「車輪識別情報」とは、各車輪を識別するために各車輪にあらかじめ付された車輪固有の情報であってもよい。ここでいう「車輪に関連する情報」とは、加速度、空気圧の絶対値、空気圧の急加減圧、タイヤ内の温度のうちいずれかであってもよい。
【0007】
前記車輪側通信手段は、前記車輪関連情報検出手段の検出結果により前記車輪が特定の状態にあると判定したとき、所定のトリガ信号の受信を待機する状態へ移行するとともに、前記待機する状態にて外部から前記トリガ信号を受信したときに前記識別情報を送信してもよい。この車輪関連情報取得装置によれば、特定の状態にあると判定された車輪のみがトリガ信号を受信するので、トリガ信号発信手段の送信部を各車輪の車輪側通信手段に順次接近させる煩雑な作業を省略することができる。
【0008】
前記トリガ信号を発信する手段が前記車体に設けられていてもよい。これによって、検査設備においてトリガ信号発信手段を用意する必要がなくなる。また、トリガ信号を発信する手段に設けられるアンテナは1つでよいので、コストの増大を抑制することができる。
【0009】
前記車輪関連情報検出手段は、前記車輪の回転動作を検出する加速度センサであり、前記車輪側通信手段は、前記車輪が特定のパターンに合致する動作にて回転したことが前記車輪関連情報検出手段によって検出されたときに前記識別情報を送信してもよい。これによって、特定のパターンに合致するように車輪を駆動することで、特定の車輪の車輪識別情報を他の車輪の車輪識別情報と混同することなく取得させることができる。ここでいう「加速度」は、車輪回転方向への加速度や車輪回転時の遠心力作用方向への加速度等を含む概念であってもよい。
【0010】
前記車輪側通信手段は、通常の走行状態では発生頻度が低い動作が定義されたパターンを前記特定のパターンとしてあらかじめ記憶してもよい。これによって、車体側通信手段が走行中に車輪識別情報を取得してしまうことを抑制することができる。
【0011】
本発明の別の態様は車輪に関する。当該車輪は、当該車輪に対応付けられた識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、当該車輪の状態に関する情報を検出する車輪関連情報検出手段と、前記車輪関連情報検出手段の検出結果により当該車輪が特定の状態にあると判定したときに前記識別情報を送信する車輪側通信手段と、を備えることを特徴とする。この車輪によれば、車輪関連情報検出手段の検出結果により車輪が特定の状態にあると車輪側通信手段が判定したときに車輪側通信手段が車輪識別情報を送信するので、特定の車輪の車輪識別情報を他の車輪の車輪識別情報と混同することなく車体側に簡便に取得させることができる。また、オペレータは車輪の外部から信号を送信させるための操作をすることなく車輪側通信手段から車輪識別情報を車体側通信手段に送信させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車輪関連情報取得装置によれば、各車輪を識別するための各車輪固有の情報を車体側に簡便に取得させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
車輪の状態に関する情報を取得するシステムにおいて、車体に設けられた電子制御装置(「ECU」とも表記する)は車輪の状態に関する情報とともに車輪識別情報を各車輪から取得する。車体に設けられたECUは車輪識別情報に基づいて、取得した車輪の状態に関する情報がどの車輪から送信された情報であるかを識別する。車体に設けられたECUは特定の車輪の状態に関する情報を他の車輪の状態に関する情報と混同せずに取得することができる。そのためには、車体に新たに車輪を取り付ける際に車体に設けられたECUは各車輪の車輪識別情報を各車輪の位置と対応させて登録する必要がある。
本実施の形態では、タイヤ空気圧監視システムに本発明の車輪情報取得装置を用いて車輪識別情報および空気圧に関連する情報を取得する例を説明する。
本実施の形態では、工場で新たに車輪を取り付けたときに、各車輪に特定の動作をさせ、その車輪から車輪識別情報を車体側に送信する。車体に設けられたECUは車輪識別情報を車輪の位置と対応させて登録する。同様に各車輪について特定の動作をさせることにより、ECUはすべての車輪識別情報を各々の車輪の位置と対応させて登録する。
走行中に空気圧の状態に関連する情報を取得する場合は、車輪に設けられた通信装置(「車輪側通信装置」とも表記する)は車輪識別情報およびタイヤの空気圧に関連する情報を車体に設けられた通信装置(「車体側通信装置」とも表記する)に送信する。車体に設けられたECUは、工場で車輪を取り付けた際に登録した車輪識別情報と車輪の位置の対応関係に基づいて、車体側で受信した空気圧の状態に関連する情報がどの車輪に関連する情報であるかを識別する。
ここでいう「タイヤ空気圧監視システム」とは、車輪に設けられた空気圧センサにより各タイヤの空気圧を検出し、この空気圧が一定の範囲から外れた場合に警報装置によりドライバに異常を通知するシステムをいう。
【0014】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、工場で車輪を取り付けた際、ドラムテスタより回転させられた車輪に設けられた加速度センサが検出した加速度に基づいて検出された車輪の回転動作が特定のパターンに合致したときに、車輪側通信装置がトリガ信号の受信を待機する状態(「受信待機状態」とも表記する)に移行する。そして、車輪側通信装置がトリガ信号を受信したときに車輪識別情報を車輪側通信装置に送信し、車体に設けられたECUが車輪識別情報を登録する。
【0015】
図1は、本実施の形態の車輪関連情報取得装置における空気圧関連情報取得装置38および車輪14の構成を示す図である。図1には左前輪が図示されている。なお、他の右前輪、右後輪、および左後輪に関しても図1に示された左前輪と同様の構成を有する。
【0016】
車輪14は、タイヤ16と、タイヤ16を支持するホイール18とを含んで構成され、ホイール18を貫通するタイヤ空気注入部24が設けられている。タイヤ空気注入部24は、タイヤ16とホイール18によって形成されるタイヤ空気室に空気を注入するための箇所であり、タイヤ空気注入部24の先端には図2において後述する空気圧検出ユニット22が一体的に取り付けられている。この空気圧検出ユニット22は、タイヤ空気室内のホイールリム部19の近傍に配置され、相互に近接して配置される後述の車輪関連情報検出装置107、空気圧センサ103および車輪側通信装置104を含む。車輪14には、空気圧検出ユニット22を構成する車輪関連情報検出装置107、空気圧センサ103、車輪側通信装置104などの機器類のエネルギー源となるバッテリー(図示せず)が搭載されている。
【0017】
ドラムテスタ52は回転することにより車輪14を回転させる。ドラムテスタ制御装置54はドラムテスタ52の回転を制御する。トリガ信号発信装置42はトリガ信号を車輪側通信装置104に対して送信する。
【0018】
車体12には、空気圧関連情報取得装置38が搭載されている。空気圧関連情報取得装置38は、ECU34と、このECU34に接続された車体側通信装置32と、警報装置36を有する。車体側通信装置32は、工場でECU34に車輪識別情報を登録させるときには車輪側通信装置104が送信する車輪識別情報を、走行時には車輪側通信装置104が送信する後述の空気圧フレームを受信してECU34に送信する。ECU34は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、マイクロコンピュータによる演算を行う演算ユニット、各種の処理プログラムを記憶するROM、一時的にデータやプログラムを記憶してデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、データを記憶するハードディスク等の記憶装置および各種信号の送受信を行うための入出力ポートなどを有する。このECU34は、送られてくる各種データ等に基づいて各種車両装置類に制御信号を送り車両を制御する制御部である。ECU34の機能構成については図3において後述する。
【0019】
図2は、空気圧検出ユニット22の構成を示す図である。車輪関連情報検出装置107は、加速度センサ102(「Gセンサ102」とも表記する)および回転動作検出部109を含む。Gセンサ102は、ドラムテスタ52により回転させられる車輪14の加速度を検出する。ここでGセンサ102は、設置箇所の遠心力作用方向への加速度を検出して、近似的に空気圧検出ユニット22の遠心力作用方向への加速度を検出する。なお、「遠心力作用方向」は車輪14や空気圧検出ユニット22の回転半径方向と一致する。回転動作検出部109は、Gセンサ102により検出された加速度に基づいて車輪14の回転動作を検出する。空気圧センサ103はタイヤ16の空気圧を検出する。回転動作検出部109の検出結果および空気圧センサ103の検出結果は車輪側通信装置104に送信される。車輪側通信装置104は、車体側通信装置32との間で通信システムを構築する。
【0020】
車輪側通信装置104は、図2で示す識別情報記憶部105、パターン判定部106、受信部108、送信部101およびパターン記憶部110を有する。
【0021】
工場において車輪識別情報を車体側で登録させるとき(「識別情報登録時」とも表記する)、受信部108はトリガ信号発信装置42からトリガ信号を受信する。パターン記憶部110は車輪14の特定の回転のパターン(「特定のパターン」とも表記する)をあらかじめ記憶している。ここで、パターン記憶部110に記憶される特定のパターンとして通常の走行状態では発生頻度が低い回転動作が定義されている。例えば、前回転3回、後回転2回とするようなパターンである。パターン判定部106は、回転動作検出部109が検出した回転動作がパターン記憶部110に記憶されている特定パターンと合致するか否かを判定する。回転動作検出部109が検出した回転動作がパターン記憶部110に記憶されている特定パターンと合致するか否の判定の結果に基づいて、パターン判定部106は受信部108を制御する。パターン判定部106の制御により受信部108が受信待機状態となりトリガ信号を受信した場合には、パターン判定部106は送信部101を制御する。識別情報記憶部105は車輪識別情報をあらかじめ記憶している。送信部101はパターン判定部106に制御されて、識別情報記憶部105に記憶されている車輪識別情報を車体側通信装置32に対して送信する。車輪識別情報として、例えば8桁の英数字からなるコードを設定できる。
【0022】
一方、走行時では、送信部101はパターン判定部106に制御されて、車輪識別情報と空気圧に関する情報からなる1つのフレーム(「空気圧フレーム」とも表記する)を車体側通信装置32に対して送信する。
【0023】
図3は、ECU34が有する機能のうち車輪識別情報の取得に関連する機能構成を示す機能ブロック図である。ECU34は、対応関係登録部122、車輪判定部124、空気圧状態判定部126および車輪動作記憶部128を有する。
車輪動作記憶部128は、車輪側通信装置104が車輪識別情報を送信する車輪14の順序をあらかじめ記憶している。対応関係登録部122は、車輪動作記憶部128に記憶された、車輪側通信装置104が車輪識別情報を送信する車輪14の順序を参照し、各車輪から順に送信される車輪識別情報を車輪14の位置と対応付けて登録する。
走行時には車輪判定部124は、車体側通信装置32が受信した空気圧フレームに含まれる車輪識別情報と、対応関係登録部122に登録されている車輪識別情報と車輪14の位置との対応関係に基づいて、その空気圧フレームに含まれる空気圧に関連する情報はどの車輪に関連する情報であるかを判定する。空気圧状態判定部126は、車体側通信装置32が受信した空気圧フレームに含まれる空気圧に関連する情報に基づいて、車輪14の空気圧状態を判定する。その空気圧状態が異常である場合には、空気圧状態判定部126は警報装置36を制御する。例えば、車輪14の空気圧が所定値を下回った場合に、空気圧状態判定部126は、警報装置36において警告ブザーを鳴らさせたり、警告ランプを点灯させたりすることによりドライバに異常を通知する。
【0024】
次に本実施の形態の作用について説明する。なお以下の各処理は原則としてすべての車輪14に関し実施される。
【0025】
本実施の形態における識別情報登録時の作用について説明する。
まず、車輪側での作用を説明する。図4は、第1の実施の形態における車輪識別情報の送信に関するフローチャートである。Gセンサ102は加速度を検出する(S11)。回転動作検出部109は、Gセンサから検出結果を受信すると車輪14の回転動作を検出する(S12)。パターン判定部106は、その回転動作がパターン記憶部110にあらかじめ記憶されている特定のパターンと合致するか否かを判定する(S13)。車輪14の回転動作が特定のパターンと合致しないと判断した場合(S13のN)、パターン判定部106は、受信部108を受信待機状態へ移行させない。一方、車輪14の回転動作が特定のパターンと合致すると判定した場合(S13のY)、パターン判定部106は受信部108を受信待機状態に移行させるために受信部108を制御する。受信部108はパターン判定部106に制御されると受信待機状態に移行する(S14)。パターン判定部106が受信部108が受信待機状態に移行してから所定時間が経過する前であって(S15のN)、受信部108がトリガ信号を受信していない場合(S16のN)、パターン判定部106は、所定時間が経過するまで受信部108に受信待機状態を維持させる。パターン判定部106が受信部108が受信待機状態に移行してから、トリガ信号を受信することなく所定時間が経過したとき(S15のY)、パターン判定部106は受信部108の受信待機状態を解除する(S18)。パターン判定部106が受信部108が受信待機状態に移行してから所定時間が経過する前に(S15のN)、受信部108がトリガ信号を受信したとき(S16のY)、パターン判定部106は、車輪識別情報を車体側通信装置32に送信するために送信部101を制御する。送信部101は、パターン判定部に制御されると車輪識別情報を車体側通信装置32に送信する(S17)。送信部101が車輪識別情報を送信すると、パターン判定部106は受信部108の受信待機状態を解除する(S18)。
【0026】
一方、車体側では、車輪動作記憶部128が記憶している順序にしたがって各車輪14を回転させ、対応関係登録部122は車輪識別情報をその回転させた車輪14の位置と対応させて登録する。例えば、右前輪、左前輪、右後輪、左後輪の順に各車輪を回転させることが車輪動作記憶部128が記憶されている場合には、その順に各車輪を回転させ、対応関係登録部122はその車輪14の車輪識別情報をその回転させた車輪14の位置と対応させて登録する。
【0027】
本実施の形態における走行時の作用について説明する。
まず、車輪側での作用を説明する。走行時はドライバが、送信部101が空気圧フレームを送信するよう制御するためにパターン判定部106に対する操作をすることにより、送信部101が車体側通信装置32に対して空気圧フレームを送信する。
【0028】
車体側での作用を説明する。図5は、第1の実施の形態における車輪識別情報および空気圧に関連する情報の取得に関するフローチャートである。車体側通信装置32は空気圧フレームを受信する(S21)。車輪判定部124は、空気圧フレームに含まれる車輪識別情報が、対応関係登録部122に登録された車輪識別情報のいずれかと一致するか否かを判定する(S22)。空気圧フレームに含まれる車輪識別情報が対応関係登録部122に登録された車輪識別情報のいずれとも一致しないと判定した場合(S22のN)、車輪判定部124は、空気圧フレームに含まれる車輪識別情報と対応する車輪14の位置を特定しない。一方、空気圧フレームに含まれる情報が対応関係登録部122に登録された車輪識別情報のいずれかと一致すると判定した場合(S22のY)、車輪判定部124は、対応関係登録部122に登録された対応関係に基づいて、空気圧フレームに含まれる車輪識別情報と対応する車輪14の位置を特定する(S23)。空気圧状態判定部126は、空気圧フレームに含まれる空気圧に関連する情報に基づいて、空気圧の状態が異常であるか否かを判定する(S24)。空気圧の状態が異常ではないと判定した場合(S24のN)、空気圧状態判定部126は警報装置36を制御しない。一方、空気圧の状態が異常であると判定した場合(S24のY)、空気圧状態判定部126は警報装置36を制御し、警報ブザーを鳴らさせたり、警報ランプを点灯させたりすることによりドライバに異常を通知する(S25)。
【0029】
以上説明したように本実施の形態によれば、ドラムテスタ52により特定のパターンと合致する回転動作をさせられた車輪14のみが受信待機状態となる。したがって、その受信待機状態となった車輪14のみが、トリガ信号を受信すると車輪識別情報を送信するので、他の車輪の車輪識別情報と混同することなく車輪識別情報を車体側で取得させることができる。また、トリガ信号発信装置を各車輪の車輪側通信手段に順次接近させる煩雑な作業を省略することができる。さらに、複数のトリガ信号を用いる必要もないため、複数のトリガ信号発信装置は不要となりコストを低く抑えることができる。
【0030】
本実施形態では、Gセンサ102が加速度を検出し、回転動作検出部109がそれに基づいて回転動作を検出することとしたので、車輪の駆動のみで車輪識別情報を車体側で取得させることができる。
【0031】
本実施形態では、パターン記憶部110に記憶される特定のパターンとして通常の走行状態では発生しないような動作が定義されているので、車体側通信手段が走行中に車輪識別情報を取得してしまうことを回避することができる。
【0032】
本実施形態では、従来から工場でのテストに用いられているドラムテスタによって車輪を回転させることができるので、新たな設備を必要とせず、車輪識別情報を簡便に車体側に取得させることができる。
【0033】
本実施形態では、車輪識別情報を車輪14の位置と対応させて対応関係登録部122に登録するために、車輪識別情報を取得する前にあらかじめ定めた順に各車輪14を回転させた。したがって、1種類の回転のパターンで各車輪14を回転させることができるため、各車輪14をそれぞれ異なるパターンで回転させる必要がなくなる。
【0034】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、タイヤ空気圧監視システムにおいて、工場で車輪を新たに取り付けた際、トリガ信号を用いることなく車輪に設けられた加速度センサが検出した加速度から検出された車輪の回転動作が特定のパターンに合致したとき、車輪に設けられた通信装置が車輪識別情報を送信することでトリガ信号発信装置の用意を不要とする例について説明する。本実施の形態において上述の第1の実施の形態と同一の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
図6は、第2の実施の形態の車輪関連情報取得装置における空気圧関連情報取得装置38および車輪14の構成を示す図である。本実施の形態ではトリガ信号は用いられないため、図1にいうトリガ信号発信装置42は用意されない。
【0036】
図7は、空気圧検出ユニット22の構成を示す図である。空気圧検出ユニット22は車輪関連情報検出装置107、空気圧センサ103および車輪側通信装置104を含む。車輪側通信装置104は、識別情報記憶部105、パターン判定部106、送信部101およびパターン記憶部110を有する。本実施の形態ではトリガ信号は用いられないため、車輪側通信装置104はトリガ信号を受信するための受信部を有しない。識別情報登録時、パターン記憶部110には、送信部101が空気圧フレームを車体側通信装置32に対して送信するか否かを決定するための車輪14の回転の特定のパターンが記憶されている。回転動作検出部109はGセンサ102が検出した加速度から車輪14の回転動作を検出する。パターン判定部106は、検出された回転動作がパターン記憶部110に記憶されている特定パターンと合致するか否かを判定する。その判定の結果に基づいて、パターン判定部106は送信部101を制御する。識別情報記憶部105は車輪識別情報をあらかじめ記憶している。送信部101はパターン判定部106に制御されて車体側通信装置32に対して車輪識別情報を送信する。他の構成は、上述の第1の実施形態と同様の構成とすることができる。
【0037】
次に本実施の形態の作用について説明する。なお、以下の各処理は原則としてすべての車輪14に関し実施される。
【0038】
図8は第2の実施の形態における車輪側通信装置104による車輪識別情報の送信に関するフローチャートである。Gセンサ102は加速度を検出する(S31)。回転動作検出部109は、Gセンサから検出結果を受信すると、車輪14の回転動作を検出する(S32)。パターン判定部106は、車輪14の回転動作がパターン記憶部110にあらかじめ記憶されている特定のパターンと合致するか否かを判定する(S33)。車輪14の回転動作が特定のパターンと合致しないと判断した場合(S33のN)、パターン判定部106は車輪識別情報を車体側通信装置32に送信させない。一方、車輪14の回転動作が特定のパターンと合致すると判定した場合(S33のY)、パターン判定部106は、車輪識別情報を車体側通信装置32に送信するために送信部101を制御する。送信部101はパターン判定部106に制御されて車輪識別情報を車体側通信装置32に送信する(S34)。
【0039】
本実施の形態によれば、ドラムテスタ52により特定のパターンと合致する回転動作をさせられた車輪14のみが車輪識別情報を車体側通信装置32に送信する。したがって、車輪の外部からトリガ信号を送信するための操作をすることなく、車体側に車輪に関する情報を簡便に取得させることができる。第1の実施の形態の、トリガ信号発信装置を各車輪の車輪側通信手段にかわるがわる接近させる煩雑な作業が省略されるという効果と比較して、本実施の形態の効果は、トリガ信号発信装置の用意をも必要としない点で異なる。本実施の形態によれば、第1の実施の形態におけるその他の効果と同様の効果も得られる。
【0040】
また、トリガ信号発信装置の用意が不要であるため、車輪識別情報を車体側に取得させる際に、工場等の設備でのトリガ信号発信装置の用意が不要となる。
【0041】
(変形例)
第1実施形態では、トリガ信号発信装置は車体および車輪の外部に存在していたが、トリガ信号発信装置を車体に搭載させることもできる。これによって、車輪識別情報を車体側に取得させる際に、工場等の設備でのトリガ信号発信装置の用意が不要となる。
【0042】
第1実施形態および第2実施形態では、工場で車輪識別情報を車輪14の位置と対応させて対応関係登録部122に登録させるために、各車輪を順番に回転させることを挙げたが、車輪固有の回転のパターンにより各車輪を回転させることもできる。例えば、右前輪は前回転2回と後回転2回、左前輪は前回転2回と後回転3回、右後輪は前回転3回と後回転2回、左後輪は前回転3回と後回転3回、のように車輪固有の回転のパターンを決定しておく。そして、これらのパターンで各車輪を回転させ、その回転させた車輪の位置と対応させてその車輪の車輪識別情報を対応関係登録部122に登録させることができる。本変形例によれば、車輪を回転させる順番を決定する必要がなくなる。
【0043】
第1実施形態および第2実施形態では、車輪識別情報を車輪14の位置と対応させて対応関係登録部122に登録させるために、各車輪を順番に回転させることを挙げたが、各車輪の回転をGセンサ102に感知させることにより、車輪識別情報を車輪14の位置対応させて対応関係登録部122に登録させることもできる。例えば、オペレータがドラムテスタ52を操作することにより右前輪のみを回転させ、その回転を右前輪に設けられたGセンサ102に感知させることにより、「右前輪」という車輪の位置と右前輪の車輪識別情報を対応づけて対応関係登録部122に登録させる。そして、すべての車輪について同様の手順により対応関係を登録させることができる。本変形例では、オペレータが回転させる車輪を決定することができるため、ECU34に図3にいう車輪動作記憶部128を設ける必要がなくなる。
【0044】
第1実施形態および第2実施形態では、工場で車輪識別情報を車輪14の位置と対応させて対応関係登録部122に登録させるとき、車輪側通信装置104から車輪識別情報のみを送信したが、空気圧フレームを送信してもよい。本変形例によれば、識別情報登録時と走行時のどちらの場合にも車輪側通信装置104は空気圧フレームを送信する。したがって、識別情報登録時と走行時とで車輪側通信装置104が送信する信号を変更する必要がなくなる。
【0045】
第1実施形態および第2実施形態では、Gセンサを用いて検出される車輪の回転パターンが特定のパターンに一致した場合に車輪識別情報が車体側に送信されたが、これに限られるものではない。例えば、各車輪の空気圧を順番に変化させ、空気圧センサにより検出される空気圧の絶対値や空気圧の変化勾配が所定値を上回ったり、下回ったりした場合に車輪識別情報が車体側に送信されてもよい。また、各車輪のタイヤ内の温度を順番に変化させ、車輪の温度センサにより検出されるタイヤ内の温度が所定値を上回ったり、下回ったりした場合に車輪識別情報が車体側に送信されてもよい。
【0046】
第1実施形態および第2実施形態では、車体側で取得したタイヤ16の空気圧に関連する情報に基づいて空気圧状態判定部126が、警報装置36に警告ブザーを鳴らさせたり、警報ランプを点灯させる例について説明したが、例えば、車体側で取得したタイヤ16の空気圧に関連する情報を用いてタイヤ空気圧監視装置が空気圧の調整等を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施の形態における空気圧関連情報取得装置および車輪の構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態における空気圧検出ユニットの構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態におけるECUが有する機能のうち車輪識別情報および空気圧に関連する情報の取得に関連する機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】第1の実施の形態における車輪識別情報の送信に関するフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態における車輪識別情報および空気圧の状態に関連するの取得に関するフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態における空気圧関連情報取得装置および車輪の構成を示す図である。
【図7】第2の実施の形態における空気圧検出ユニットの構成を示す図である。
【図8】第2の実施の形態における車輪識別情報の送信に関するフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
12 車体、 14 車輪、 16 タイヤ、 18 ホイール、 19 ホイールリム部、 22 空気圧検出ユニット、 24 タイヤ空気注入部、 32 車体側通信装置、 34 ECU、 36 警報装置、 38 空気圧関連情報取得装置、 42 トリガ信号発信装置、 52 ドラムテスタ、 54 ドラムテスタ制御装置、 101 送信部、 102 Gセンサ、 103 空気圧センサ、 104 車輪側通信装置、 105 識別情報記憶部、 106 パターン判定部、 107 車輪関連情報検出装置、 108 受信部、 109 回転動作検出部、 110 パターン記憶部、 122 対応関係登録部、 124 車輪判定部、 126 空気圧状態判定部、 128 車輪動作記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に設けられ、その車輪に対応付けられた識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、
前記車輪に設けられ、前記車輪の状態に関する情報を検出する車輪関連情報検出手段と、
前記車輪に設けられ、前記車輪関連情報検出手段の検出結果により前記車輪が特定の状態にあると判定したときに前記識別情報を送信する車輪側通信手段と、
車体に設けられ、前記車輪側通信手段から前記識別情報を受信する車体側通信手段と、
前記車体に設けられ、前記受信された識別情報を前記車体に取り付けられている車輪の識別情報として保存する識別情報保存手段と、
を備えることを特徴とする車輪関連情報取得装置。
【請求項2】
前記車輪側通信手段は、前記車輪関連情報検出手段の検出結果により前記車輪が特定の状態にあると判定したとき、所定のトリガ信号の受信を待機する状態へ移行するとともに、前記待機する状態にて外部から前記トリガ信号を受信したときに前記識別情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の車輪関連情報取得装置。
【請求項3】
前記トリガ信号を発信する手段が前記車体に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車輪関連情報取得装置。
【請求項4】
前記車輪関連情報検出手段は、加速度センサを含み、当該加速度センサにより検出された加速度を用いて前記車輪の回転動作を検出し、
前記車輪側通信手段は、前記車輪が特定のパターンに合致する動作にて回転したことが前記車輪関連情報検出手段によって検出されたときに前記識別情報を送信することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車輪関連情報取得装置。
【請求項5】
前記車輪側通信手段は、通常の走行状態では発生頻度が低い動作が定義されたパターンを前記特定のパターンとしてあらかじめ記憶することを特徴とする請求項4に記載の車輪関連情報取得装置。
【請求項6】
車両に取り付けられた車輪であって、
当該車輪に対応付けられた識別情報を記憶する識別情報記憶手段と、
当該車輪の状態に関する情報を検出する車輪関連情報検出手段と、
前記車輪関連情報検出手段の検出結果により当該車輪が特定の状態にあると判定したときに前記識別情報を送信する車輪側通信手段と、
を備えることを特徴とする車輪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−240347(P2006−240347A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55531(P2005−55531)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】