説明

車高調整式サスペンションの車高調整制御装置

【課題】サスペンションの車高調整用アクチュエータの油圧制御に必要としていたバルブを廃止する。
【解決手段】車高調整用アクチュエータ12L,Rの油圧制御用ピストンポンプ21を、シリンダー23L,R内にピストン24L,Rをスプライン係合により軸方向移動可能に回り止めし、ピストンが直進移動することによりピストンとシリンダーで形成される作動液室26L,Rと車高調整用アクチュエータとの間で作動液をオイルライン15L,Rを介して移動させるポンプ本体と、モータ駆動のウォームギヤ32によりウォームホイール29を回転し、ウォームホイール29と一体に回転し、ピストンの内径部にねじ係合するねじ軸27と、を有し、モータMの回転によりウォームホイール29を回転し、ねじ軸27の回転によりピストンを螺進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高調整機能付のサスペンションを備えた乗用車などの車両において、サスペンションの車高調整用アクチュエータに作動液を給・排出して車高を調整するための車高調整制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車高調整機能付のサスペンションを備えた乗用車において、走行路面の状況に応じてサスペンションの全長を調整し、車高を調整するようにしている(特許文献1)。
【0003】
このような車高調整機能付のサスペンションとしては、例えば油圧を利用してサスペンションの全長を調整できるアクチュエータを備えており、油圧制御装置により該アクチュエータに対する作動液の給・排出を制御することでアクチュエータをサスペンションの上下方向に伸縮させ、サスペンションを所望長さに調整して車高を調整する。
【0004】
前記油圧制御装置としては、アキュムレータなどを備えた油圧源とサスペンションに設けたアクチュエータとのオイルラインの途中に電磁駆動される種々のバルブを設け、これらのバルブを切り替えることにより、該アクチュエータに対する作動液の供給と排出を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−71115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の油圧制御装置は、オイルラインに対する作動液の給・排出を電磁駆動されるバルブを用いて制御するため、バルブ制御のための制御回路が複雑化し、またバルブの故障は車両の走行に支障を招きかねない。
【0007】
例えば、一つの液圧源に対して左右のショックアブソーバに設けている車高調整用アクチュエータにそれぞれオイルラインを接続して作動液を分配する方式の場合、互いのオイルライン内の作動液が移動しないようにバルブを設けているが、このバルブが故障して作動液の移動が生じると、車高の調整位置が固定状態から可変状態となり、サスペンションを構成しているショックアブソーバが事実上機能しなくなる。
【0008】
また、一方のオイルラインに設けた作動液の移動を阻止するバルブが故障して作動液が外部に漏出すると、一つの液圧源に蓄えている作動液が全て漏出する結果、左右の車高調整用アクチュエータが同時にダウンし、完全に車高が落ちて走行不能に陥ることが懸念される。
【0009】
本発明の第1の目的は、このような従来の問題に鑑み為されたもので、サスペンションの車高調整用アクチュエータに対する作動液の移動を阻止し、且つ給・排出制御を選択的に行うにバルブを不要とする車高調整式サスペンションの車高調整制御装置を提供しようとするものである。
【0010】
本発明の第2の目的は、上記した第1の目的に加え、複数の車高調整用アクチュエータに対する作動液の給・排出制御を一つの駆動機構により同時に行うが個々のオイルライン相互間での作動液の移動が生じない車高調整式サスペンションの車高調整制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の目的を実現する構成は、請求項1に記載のように、車両用サスペンションに設けた車高調整用アクチュエータに対してオイルラインを介して接続されたモータ駆動されるピストン式油圧ポンプを有する車高調整式サスペンションの車高調整制御装置において、前記ピストン式油圧ポンプは、モータにより回転されるウォームギヤまたはねじギヤにより回転されるウォームホイールと、シリンダーに内挿されるピストンをスプライン係合により軸方向移動可能で、軸回りの回転を不能とし、前記ピストンが直進移動することにより前記ピストンと前記シリンダーで形成される作動液室と前記車高調整用アクチュエータとの間で作動液を前記オイルラインを介して移動させるポンプ本体と、前記ウォームホイールと一体に回転し、前記ピストンの内径部にねじ係合するねじ軸と、を有し、前記モータの回転により前記ウォームホイールを回転し、前記ねじ軸の回転により前記ピストンを螺進させることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の目的を実現する第1の構成は、請求項2に記載のように、車両用サスペンションの2基にそれぞれ設けた車高調整用アクチュエータに対しそれぞれオイルラインを介して接続されたモータ駆動されるピストン式油圧ポンプを有する車高調整式サスペンションの車高調整制御装置において、前記ピストン式油圧ポンプは、一対のピストンをそれぞれシリンダーに内挿して対向配置し、前記シリンダーに内挿されるピストンをスプライン係合により軸方向移動可能で、軸回りの回転を不能とするポンプ本体と、前記一対のピストンの内径部に右ねじ回りおよび左ねじ回りにねじ係合するねじ軸と、前記ねじ軸と一体に回転するウォームホイールと、モータにより回転され、前記ウォームホイールを回転させるウォームギヤまたはねじギヤと、を有し、前記モータの回転により前記ウォームホイールを回転し、前記ねじ軸の回転により前記ピストンを螺進させることにより前記各ピストンと前記各シリンダーで形成される各作動液室と前記各車高調整用アクチュエータとの間で作動液を前記各オイルラインを介して移動させることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の目的を実現する第2の構成は、請求項3に記載のように、車両用サスペンションの複数基にそれぞれ設けた車高調整用アクチュエータに対しそれぞれオイルラインを介して接続されたモータ駆動されるピストン式油圧ポンプを有する車高調整式サスペンションの車高調整制御装置において、前記ピストン式油圧ポンプは、シリンダーに内挿される複数のピストンを並列配置し、前記各ピストンを前記各シリンダーにスプライン係合により軸方向移動可能で、軸回りの回転を不能とするポンプ本体と、前記各ピストンの内径部にそれぞれねじ係合するねじ軸と、前記各ねじ軸とそれぞれ一体に回転するウォームホイールと、モータにより回転され、前記各ウォームホイールを回転させるウォームギヤまたはねじギヤと、を有し、前記モータの回転により前記各ウォームホイールを回転し、前記各ねじ軸の回転により前記各ピストンを螺進させることにより前記各ピストンと前記各シリンダーで形成される各作動液室と前記各車高調整用アクチュエータとの間で作動液を前記各オイルラインを介して移動させることを特徴とする。
【0014】
また、上記した各構成において、前記ピストンの位置を検知するセンサーを設け、該センサーが検知した位置情報に基づいて前記モータに対する通電制御を行うコントローラを設けた構成とすることで、車高調整操作を車両内で行うことができる。
【0015】
さらに、上記の構成において、前記センサーの検知情報に基づいて車高位置を表示する表示手段を設けることにより、現在の車高位置を車室内で確認することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モータ駆動によりピストンの直進移動は行なえるが、ウォームギヤまたはねじギヤとウォームホイールとの噛み合いにより作動液室内の油圧によるピストンの移動が阻止されるため、車高調整用アクチュエータと作動液室との間での作動液の移動を阻止するバルブ類が不要となり、装置の簡素化と部品点数の削減による信頼性を向上させることができる。
【0017】
また、2系統、あるいは複数系統のオイルラインを介したサスペンションに対する車高調整も1台のモータで駆動することができ、各系統のいずれか一つに作動液の漏出があっても他の系統に対して作動液の移動という影響を及ぼすことが無く、当該系統のダウンのみで済み、車高が完全に落ちるというトラブルの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す車高調整式サスペンションの車高調整制御装置の断面図。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す車高調整式サスペンションの車高調整制御装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
第1の実施の形態
図1は本発明による車高調整式サスペンションの車高調整制御装置の第1の実施の形態を示す。
【0021】
図1に示す車高調整式サスペンションの車高調整制御装置は、乗用車などの車両の左右前輪用サスペンション11L、11Rに設けた車高調整用アクチュエータ12L、12Rに対し、オイルライン15L、15Rを通して一台の油圧ポンプ21により作動油を給・排出する。
【0022】
左右のサスペンション11L、11Rは同タイプのものが使用され、図1では2タイプのものを示すために左右のサスペンションを異なるタイプで示しており、例えば、サスペンション11Lに設けた車高調整用アクチュエータ12Lは、ショックアブソーバのピストンロッド上端部13Lと車体側との間に取り付けられ、またサスペンション11Rに設けた車高調整用アクチュエータ12Rは、ショックアブソーバのピストンロッド上端部13Rと懸架ばね14Rの上端との間に取り付けられる。
【0023】
油圧ポンプ21と左右の車高調整用アクチュエータ12L、12Rとは作動油が給排出されるオイルライン15L,15Rで接続されている。
【0024】
左側のサスペンション11Lに設けられた車高調整用アクチュエータ12Lに作動油が供給されると、ピストンロッド上端部13Lと車体との間の上下方向の高さが伸びで車高を高くし、車高調整用アクチュエータ12L内の作動油を排出すると、車高が低くなる。また右側のサスペンション11Rはスプリング14Rによりに車高を保持しており、このサスペンション11Rに設けられた車高調整用アクチュエータ12Rに作動油を供給することで車高調整を行う。
【0025】
油圧ポンプ21は、図1中左右対称のボディ部22L、22Rに2分割構成されたポンプボディ22に設けた対向する一対のシリンダー23L、23R内に、それぞれピストン24L、24Rを対向配置した対向ピストン構造とし、シリンダー23Lとシリンダー23Rの外端にねじ締め固定されたキャップ25L、25Rにより作動液室26L、26Rが形成され、上記の左右のオイルライン15L、15Rを作動液室26L、26Rに通じるように接続している。
【0026】
ピストン24L、24Rは、ピストンヘッドをそれぞれキャップ25L、25Rに対向するようにしてシリンダー23L、23Rに装入されており、ピストン24L、24R外周面とシリンダー23L、23Rの内周面とは軸方向に延びるスプライン36L、36Rによって係合し、ピストン24L、24Rの軸方向移動を許容するが軸回りの回転を不能としている。
【0027】
一方、ポンプボディ22内には、対向配置したピストン24L、24Rの内径部にそれぞれねじ係合するねじ軸27が配置されており、各シリンダー23L、23Rの内端部外周に形成した各段部にそれぞれ軸受部材28L、28Rが固定されている。そして、ねじ軸27をこの軸受部材28L、28Rに嵌合固定し、軸周りに回転可能とするが軸方向へ移動不能としている。
【0028】
図中、ねじ軸27の左端部27Lは右ねじ、右端部27Rは左ねじに形成され、ねじ軸27を時計回り方向(以下正転方向と称す)に回転させると、対向する両ピストン24L、24Rは回転が規制されているので外側に向けて互いが離れる方向に直進移動し、逆に反時計回り方向(以下逆転方向と称す)に回転させると対向する両ピストン24L、24Rが内側に向けて互いに近づく方向に直進移動する。
【0029】
すなわち、ねじ軸27を正転方向に回転すると、作動液室26L、26Rの容積が減少し、作動液室26L、26R内の作動液がそれぞれ車高調整用アクチュエータ12L、12Rに供給されて車高を高くする。またねじ軸27を逆転方向に回転すると、作動液室26L、26Rの容積が増し、車高調整用アクチュエータ12L、12R内の作動液が作動液室26L、26R内にそれぞれ排出されて車高を低くする。
【0030】
本実施の形態において、ねじ軸27の長さ方向中央部には、ウォームホイール29が固定され、ポンプボディ22に固定されたモータ30の出力軸31に固定されたウォームギヤ(またはねじ歯車)32がこのウォームホイール29に噛み合う。
【0031】
車両室内に設置したコントローラ33の車高操作部材をドライバーが操作することにより、モータ30に正転または逆転方向の通電がなされると、ウォームギヤ32が正転または逆転方向に回転し、ウォームホイール29が正転または逆転する。この場合、車高を高くする操作が行われたとすると、ねじ軸27が正転し、その際ピストン24L、24Rの位置を例えば摺動抵抗などを用いた位置センサー34により検知し、この位置センサー34で検知した位置情報をコントローラ33およびコントローラ33に設けた表示器35に出力する。
【0032】
コントローラ33による車高調整は、高低といった予め設定した位置センサーを備える方式、任意の高さに調整する制御方式等が提案でき、例えば任意の高さに調整する制御方式では、コントローラ33の車高操作部材により所望する高さ位置を設定すると、位置センサー34で検知した現在の高さと、設定高さ位置とを比較し、現在の高さが低ければ高くする方向に、逆であれば低くする方向にモータ30に対する通電方向を設定し、通電を開始する。そして、位置センサー34の検知情報が設定高さ位置に達すると、モータへの通電を停止する。
【0033】
この場合、ねじ軸27を回転させて、同時に2つのピストン24L、24Rを強制的に駆動するため、例えば車両の左右前輪用サスペンションに対して同時に車高調整が開始される。しかし、ピストン24L、24Rを駆動する機構が個々に独立して設けられている場合には、個々の駆動機構が同じように作動するとは限らず、作動時に一方のピストンが他方のピストンよりもスムーズに動くと、両方の車高調整用アクチュエータ12L、12Rに圧力差が生じて車高調整が開始され、同時に駆動を停止すると、左右のサスペンションの高さに差が生じるが、本実施の形態ではこのようなことがない。
【0034】
位置センサー34として摺動抵抗を用いた方式としては、ねじ軸27を中空に形成し、ねじ軸27の内径部に摺動抵抗器を配置し、該摺動抵抗器の抵抗部34aを一方のピストン24Lに伸縮しない支持棒34bを介して固定連結し、該摺動抵抗器のスライダ34cを他方のピストン24Rに伸縮しない支持棒34dを介して固定連結した構成とすることができる。そして、両方のピストン24L、24Rが軸方向に移動する際の相対的移動距離に応じて抵抗部34aに対するスライダ34cの接触位置が変わり抵抗値が変化するので、この抵抗値から両方のピストン24L、24Rの位置を読取る。
【0035】
スライダ34cと抵抗部34aから引出したリード線は、例えば他方のピストン24Rの側壁面に径方向に沿って貫通したリード線孔を通して他方のシリンダー23Rとピストン24Rの外周面との間のスペースに引き出し、さらに軸受部材28R側に向けて該リード線を引き出す。その際、ピストン24Rとシリンダー23Rとをスプライン係合させるスプライン36L、36Rは周方向の複数箇所のみに設けられているので、スプライン36Rを避けて軸受部材28R側に向けて該リード線を引き出すことができる。引き出したリード線は、さらにポンプボディ21を貫通して外部まで引き出せばよい。そして、この外部に引き出したリード線をコントローラ33及び表示器35に出力する。
【0036】
モータ30の非回転状態において、作動液室26L、26Rはオイルライン15L、15Rを通して車高調整用アクチュエータ12L、12Rに連通しており、車高調整用アクチュエータ12L、12R内の作動液が作動液室26L、26Rに向けて移動するのを阻止する逆止弁などのバルブ類は途中に設けられていない。
【0037】
しかし、本実施の形態では、ピストン24L、24Rの駆動機構は、ウォームホイール29をねじ軸27と直交する方向に回転軸心を有するウォームギヤ(ねじ歯車)32に噛み合わせ、このウォームギヤ32の回転を大幅に減速してねじ軸27を回転させる構成としているので、作動液室26L、26R内の作動液の圧力がピストン24L、24Rに作用しても、ウォームギヤ(ねじ歯車)32がストッパーとして作用し、ピストン24L、24Rが移動することがない。
【0038】
このため、逆止弁などのバルブを用いることなく車高調整用アクチュエータ12L、12R内を設定高さに応じた圧力に維持することができ、車高調整式サスペンションの車高調整制御装置の構成が簡単化する。
【0039】
また、ねじ軸27は軸心の周りを回転するが軸方向へは移動できないので、例えば一方の作動液室26L内の圧力が他方の作動液室26Rよりも低くなっても、一方の作動液室26Lと他方の作動液室26Rとの圧力が等しくなるように軸方向に移動することがない。
【0040】
このため、例えば車両がカーブ走行の際に横Gを受けて左右のサスペンションに荷重差が発生しても、車高調整用アクチュエータ12Lと車高調整用アクチュエータ12Rは相手側のアクチュエータに対して圧力変動を生じさせず、車両が不用意にロールすることがない。
【0041】
また、いずれか一方のオイルラインに液漏れなどが発生しても、液漏れのないいずれか他方のオイルラインには影響が及ばないので、完全に左右の車高が落ちてしまうことがない。
【0042】
第2の実施の形態
図2は本発明の第2の実施の形態を示す。
【0043】
本実施の形態では、2個のピストン24A、24Bを並列に配置し、各ピストン24A、24Bがシリンダー23A、23Bに対し、ねじ軸27A、27Bの回転により直進移動する構成は第1の実施の形態と同様であるが、両ピストン24A、24Bとねじ軸27A、27Bとは共に同じ右ねじにより螺合しており、ねじ軸26A、26Bの後端部に固定しているウォームホイール29A、29Bを同じ方向に回転させることにより、作動液室26A、26B内の作動液をアクチュエータ12L、12Rに供給し、また左右のアクチュエータ12L、12R内の作動液を作動液室26A、26B内に排出させることができる。
【0044】
ウォームホイール29A、29Bに対する駆動は、回転軸37に2つのウォームギヤ(又はねじ歯車)32A、32Bを設け、ウォームホイール29Aにウォームギヤ32Aを噛み合わせ、またウォームホイール29Bにウォームギヤ32Bを噛み合わせさせる。
【0045】
したがって、回転軸37をモータ30により回転させると、2つのウォームホイール29A、29Bが同時に同方向に回転を始め、正転または逆転方向の回転により、左右のアキュムレータ12L、12Rを同時に車高調整のために駆動する。
【0046】
なお、4個のピストンを並列に配置し、1本の回転軸37に4個のウォームギヤを設けることにより、前後左右の4つのサスペンションに対する車高調整のための作動液の給排出を行えるようにしても良い。
【0047】
また、本第2の実施の形態は並列配置した複数のピストンを、1台のモータで回転駆動される複数のウォームギヤと、この複数のウォームギヤに噛み合うウォームホイールで構成される動力伝達機構により駆動するようにしているが、駆動するピストンの個数が増えるとモータも大型化する。そこで、1個のピストンを1台のモータでウォームギヤとウォームホイールで構成される動力伝達機構を介して駆動することも可能である。この場合、モータの小型化が図れると共に、ウォームギヤとウォームホイールで構成される動力伝達機構を用いているので、上記の各実施の形態と同様に、車高調整用アキュムレータ内の作動液の移動を阻止するための逆止弁等のバルブが不要である。
【0048】
なお、上記した各実施の形態において、回転を規制して直進のみの移動を可能とするピストンとねじ軸とをねじ結合し、ねじ軸の回転でピストンを直進移動させるようにしているが、カム機構によりピストンを直進移動させるようにしても良い。例えば、ウォームホイールと固定されて一体に回転する回転軸にカムピンを設け、回転を規制して直進のみの移動を可能とするピストンの内周に該カムピンと係合するカム溝を設け、該回転軸を回転させることによりピストンを直進移動させる。
【0049】
また、この第2の実施の形態の説明では、ピストンの位置を検知するセンサーについては、例えば第1の実施の形態のように摺動抵抗器を用いてピストンの絶対位置を検出することができ、この位置情報を第1の実施の形態ど同様にコントローラ33、表示器35に出力し、車高調整を車室内から制御することができる。
【符号の説明】
【0050】
11L、11R 前輪用サスペンション
12L、12R 車高調整用アクチュエータ
13L、13R ピストンロッド上端部
14R 懸架ばね
15L、15R オイルライン
21 油圧ポンプ
22 ポンプボディ
22L、22R ボディ部
23L、23R、23A、23B シリンダー
24L、24R、24A、24B ピストン
25L、25R キャップ
26L、26R、26A,26B 作動液室
27、27A,27B ねじ軸
27L 左端部 27R 右端部
28L、28R 軸受部材
29、29A、29B ウォームホイール
30 モータ 31 出力軸
32、32A,32B ウォームギヤ(またはねじ歯車)
33 コントローラ
34 位置センサー
34a 抵抗部 34b、d 支持棒 34c スライダ
35 表示器
36L、36R スプライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用サスペンションに設けた車高調整用アクチュエータに対してオイルラインを介して接続されたモータ駆動されるピストン式油圧ポンプを有する車高調整式サスペンションの車高調整制御装置において、
前記ピストン式油圧ポンプは、
モータにより回転されるウォームギヤまたはねじギヤにより回転されるウォームホイールと、
シリンダーに内挿されるピストンをスプライン係合により軸方向移動可能で、軸回りの回転を不能とし、前記ピストンが直進移動することにより前記ピストンと前記シリンダーで形成される作動液室と前記車高調整用アクチュエータとの間で作動液を前記オイルラインを介して移動させるポンプ本体と、
前記ウォームホイールと一体に回転し、前記ピストンの内径部にねじ係合するねじ軸と、
を有し、
前記モータの回転により前記ウォームホイールを回転し、前記ねじ軸の回転により前記ピストンを螺進させることを特徴とする車高調整式サスペンションの車高調整制御装置。
【請求項2】
車両用サスペンションの2基にそれぞれ設けた車高調整用アクチュエータに対しそれぞれオイルラインを介して接続されたモータ駆動されるピストン式油圧ポンプを有する車高調整式サスペンションの車高調整制御装置において、
前記ピストン式油圧ポンプは、
一対のピストンをそれぞれシリンダーに内挿して対向配置し、前記シリンダーに内挿されるピストンをスプライン係合により軸方向移動可能で、軸回りの回転を不能とするポンプ本体と、
前記一対のピストンの内径部に右ねじ回りおよび左ねじ回りにねじ係合するねじ軸と、
前記ねじ軸と一体に回転するウォームホイールと、
モータにより回転され、前記ウォームホイールを回転させるウォームギヤまたはねじギヤと、
を有し、
前記モータの回転により前記ウォームホイールを回転し、前記ねじ軸の回転により前記ピストンを螺進させることにより前記各ピストンと前記各シリンダーで形成される各作動液室と前記各車高調整用アクチュエータとの間で作動液を前記各オイルラインを介して移動させることを特徴とする車高調整式サスペンションの車高調整制御装置。
【請求項3】
車両用サスペンションの複数基にそれぞれ設けた車高調整用アクチュエータに対しそれぞれオイルラインを介して接続されたモータ駆動されるピストン式油圧ポンプを有する車高調整式サスペンションの車高調整制御装置において、
前記ピストン式油圧ポンプは、
シリンダーに内挿される複数のピストンを並列配置し、前記各ピストンを前記各シリンダーにスプライン係合により軸方向移動可能で、軸回りの回転を不能とするポンプ本体と、
前記各ピストンの内径部にそれぞれねじ係合するねじ軸と、
前記各ねじ軸とそれぞれ一体に回転するウォームホイールと、
モータにより回転され、前記各ウォームホイールを回転させるウォームギヤまたはねじギヤと、
を有し、
前記モータの回転により前記各ウォームホイールを回転し、前記各ねじ軸の回転により前記各ピストンを螺進させることにより前記各ピストンと前記各シリンダーで形成される各作動液室と前記各車高調整用アクチュエータとの間で作動液を前記各オイルラインを介して移動させることを特徴とする車高調整式サスペンションの車高調整制御装置。
【請求項4】
前記ピストンの位置を検知するセンサーを設け、該センサーが検知した位置情報に基づいて前記モータに対する通電制御を行うコントローラを有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車高調整式サスペンションの車高調整制御装置。
【請求項5】
前記センサーの検知情報に基づいて車高位置を表示する表示手段を有することを特徴とする請求項4に記載の車高調整式サスペンションの車高調整制御装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−131501(P2012−131501A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17968(P2012−17968)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【分割の表示】特願2006−26567(P2006−26567)の分割
【原出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(394016106)株式会社キャロッセ (18)
【Fターム(参考)】