説明

転写材および積層体

【課題】 表面硬度が高く、帯電防止機能を有する積層板を低コストで得られる転写材を提供する。
【解決手段】 離型層を有するベースフィルム上に、帯電防止性ハードコート層および接着層を少なくとも含む転写層が、離型層と帯電防止性ハードコート層とが接触するように設けられてなる転写材において、離型層と帯電防止性ハードコート層との間の接着強度が帯電防止性ハードコート層と接着層との間の接着強度よりも低くなるように、帯電防止性ハードコート層に、成分(a)として炭素数8以上30以下の直鎖炭化水素基を有する界面活性剤を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型層を有するベースフィルムとその上に設けられた転写層とを有する転写材に関し、より詳しくは帯電防止性ハードコート層を備えた転写層を有する転写材に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材などに用いる樹脂板の表面には、通常、ハードコート層が形成される。このようなハードコート層は、ロールコート法やディッピング法により樹脂板にハードコート層用硬化性組成物を塗工し硬化させることにより形成されているが、これらの方法はバッチ式のため生産効率が低いという問題がある。そこで、ハードコート層とその上に形成された接着層とを含む転写層が、離型層を有するベースフィルムの当該離型層上に、ハードコート層が離型層と接触するように形成された転写材を用いて、その転写層を樹脂板に転写する方法が用いられるようになってきている。
【0003】
ところで、このようなハードコート層が設けられた樹脂板に対しては、埃などがその表面に付着することを防止するために、帯電防止機能が求められることが多い。一般に、樹脂層に帯電防止機能を付与する手法としては、樹脂層に比較的低コストの界面活性剤、あるいはそれよりも高コストの帯電防止性粒子を配合することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
従って、転写材の転写層を構成するハードコート層に低コストで帯電防止機能を付与する一つの方法は、ハードコート層形成用樹脂組成物に界面活性剤を添加することである。しかし、界面活性剤が添加されたハードコート層形成用樹脂組成物を転写材用ベースフィルムの離型層上に塗工した場合、界面活性剤が、硬化性組成物の膜の離型層側界面ではなく、空気界面側に遍在する傾向があるため、ハードコート層と接着層との間の密着強度が離型層とハードコート層との間の密着強度よりも低下し、転写層が意図したように転写しない場合がある。また、仮に転写したとしても、転写物のハードコート層表面の帯電防止能が十分ではないという問題がある。これは、離型層に接していたハードコート層表面の界面活性剤の濃度が十分でないためと考えられる。
【0005】
このため、従来より、転写材の転写層を構成するハードコート層に帯電防止機能を付与するためには、ハードコート層形成用樹脂組成物に導電性微粒子を添加することで達成していたのが現状である(特許文献1および2)。
【0006】
【非特許文献1】プラスチックス Vol.49,No.10 pp34−40(1998)
【特許文献1】特開平7−175220号公報
【特許文献2】特開2003−231200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ハードコート層形成用樹脂組成物に導電性微粒子を添加する方法においては、転写材の転写層に高性能の帯電防止性能を付与できる反面、導電性微粒子を比較的多量に添加する必要があるため、転写材の製造コストの低コスト化が困難であるという問題があった。このように、低コストでかつ表面硬度が高く、帯電防止機能を有するハードコート層を転写できる転写材が望まれていた。
【0008】
本発明は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、表面硬度が高く、帯電防止機能を有する積層板を低コストで得られる転写材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、転写材の転写層を構成するハードコート層に低コストで帯電防止能を付与することを目的に、従来、利用が見送られていた界面活性剤を利用するために、離型層がポリオレフィン樹脂やシリコーン樹脂であることを考慮して、それらに親和性を有する特定の置換基を有する界面活性剤を使用することにより、上述の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、離型層を有するベースフィルム上に、帯電防止性ハードコート層および接着層を少なくとも含む転写層が、該離型層と該帯電防止性ハードコート層とが接触するように設けられてなる転写材において、該離型層と該帯電防止性ハードコート層との間の接着強度が帯電防止性ハードコート層と接着層との間の接着強度よりも低くなるように、帯電防止性ハードコート層が、成分(a)として炭素数8以上30以下の直鎖炭化水素基を有する界面活性剤を含有する転写材を提供する。
【0011】
また、本発明は、被転写体の表面に、上述の転写材の転写層が転写されてなる積層体であって、転写層の表面の鉛筆硬度が3H以上であり、かつ表面抵抗率が1.0×1014Ω/□以下である積層体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の転写材においては、その転写層の帯電防止性ハードコート層を形成するためのハードコート層形成用樹脂組成物に、ポリオレフィン樹脂やシリコーン樹脂などからなる離型層に親和性を示す特定の置換基を有する界面活性剤を配合している。従って、ハードコート層形成用樹脂組成物を離型層上に塗工したときにハードコート層形成用樹脂組成物の膜と離型層との界面におけるその界面活性剤の存在割合を高め、離型層と該帯電防止性ハードコート層との間の接着強度を帯電防止性ハードコート層と接着層との間の接着強度よりも低くなるようにし且つ転写後の転写層のハードコート層表面に良好な帯電防止能を付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、離型層を有するベースフィルム上に、帯電防止性ハードコート層および接着層を少なくとも含む転写層が、該離型層と該帯電防止性ハードコート層とが接触するように設けられてなる転写材であり、該離型層と該帯電防止性ハードコート層との間の接着強度が帯電防止性ハードコート層と接着層との間の接着強度よりも低くなるように、帯電防止性ハードコート層が、成分(a)として炭素数8以上30以下の直鎖炭化水素基を有する界面活性剤を含有する。ここで、「該離型層と該帯電防止性ハードコート層との間の接着強度が帯電防止性ハードコート層と接着層との間の接着強度よりも低くなる」とは、具体的には、転写材の転写層を被転写体に転写させたときに、該離型層と該帯電防止性ハードコート層との間で剥離し、転写層がきれいに被転写体に転写されることを意味する。このような状態であれば、必然的に、転写後の帯電防止性ハードコート層表面に界面活性剤の存在量が相対的に増大していることを示しており、その結果、転写後の帯電防止性ハードコート層表面の表面抵抗値が減少することになる。
【0014】
本発明の転写材の転写層を構成する帯電防止性ハードコート層は、被転写体に本発明の転写材の転写層を転写した際には、最外面に位置することになる層であり、通常、成分(a)の界面活性剤を、熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂を主成分とするハードコート層形成用樹脂組成物に混合して成膜し硬化したものである。
【0015】
成分(a)の界面活性剤における「炭素数8以上30以下の直鎖炭化水素基」の具体例としては、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、エイコセニル基、ペンタコセニル基、トリアコンタニル基等の飽和直鎖炭化水素基;9−オクタデセニル基、9,12−オクタジエノイル基、9,12,15−オクタトリエノイル基、11−エイコセニル基、5,8,11,14−エイコサテトラエノイル基、5,8,11,14,17−エイコサペンタエノイル基、13−ドコセニル基、5,8,11,14−ドコサヘキサエノイル基等の不飽和直鎖炭化水素基等が挙げられる。中でも炭素数10以上30以下の不飽和炭化水素基が好ましく、具体例としては9−オクタデセニル基、9,12−オクタジエノイル基、9,12,15−オクタトリエノイル基、11−エイコセニル基、5,8,11,14−エイコサテトラエノイル基、5,8,11,14,17−エイコサペンタエノイル基、13−ドコセニル基、5,8,11,14−ドコサヘキサエノイル基などが挙げられ、9−オクタデセニル基がより好ましい。
【0016】
成分(a)の界面活性剤としては、炭素数8以上30以下の直鎖炭化水素基を有している公知の界面活性剤であれば特に制限はないが、例えば、硫酸塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル型、スルホサクシネート型、カルボン酸型、硫酸エステル型などの陰イオン性界面活性剤;4級カチオン型、アミンオキサイド型、ピリジニウム塩、アミン塩などの陽イオン性界面活性剤;アルキルエーテル型、アルキルフェノール型、エステル型、エーテルエステル型、モノオールポリエーテル型、アマイド型などの非イオン性界面活性剤;ベタイン型、エーテルアミンオキシド型、グリシン型、アラニン型などの両性界面活性剤が挙げられ、なかでも陰イオン系界面活性剤が特に好ましく、陰イオン系界面活性剤の中でもカルボン酸型、スルホサクシネート型が特に好ましい。
【0017】
スルホサクシネート型の界面活性剤の具体例としては、モノアルキルスルホサクシネートまたはジアルキルスルホサクシネートのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、中でもモノアルキルスルホサクシネートのナトリウム塩がより好ましい。
【0018】
また、成分(a)の界面活性剤は、エチレン系不飽和結合などのラジカル重合性基を有していてもよい。このような界面活性剤の使用により、耐久性向上という効果が得られる。
【0019】
成分(a)の界面活性剤のハードコート層形成用樹脂組成物中の含有量は、好ましくは0.01質量%以上5質量%、より好ましくは0.1質量%以上5質量%である。
【0020】
また、帯電防止性ハードコート層を形成するためのハードコート層形成用樹脂組成物には、成分(a)の界面活性剤の他に、熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂を主成分として含有し、更に、その塗工性を向上させるために通常は希釈剤も含有する。
【0021】
このような熱硬化性樹脂の具体例としては、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられ、一方、光硬化性樹脂の具体例としては、ウレタンアクリレート樹脂、アクリ樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、比較的硬度が高くかつ生産性の高いウレタンアクリレート樹脂、アクリル系光硬化性樹脂がより好ましい。
【0022】
希釈剤としては、一般の樹脂塗料に用いられている希釈剤であれば特に制限はないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチルなどのエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族化合物;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン系炭化水素;メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどのアルコール化合物、水などを挙げることができる。このような希釈剤の使用量は、帯電防止性ハードコート層の層厚等に応じて適宜決定することができる。
【0023】
また、離型層を有するベースフィルムの転写層側の表面形状としては、帯電防止性ハードコート層の離型層側表面に、防眩機能を発揮させるために凹凸形状としてもよい。凹凸形状とする方法としては、ハードコート層形成用樹脂組成物を塗工する対象であるベースフィルム面をサンドブラスト加工しておくこと等が挙げられる。
【0024】
帯電防止性ハードコート層は、本発明の転写材の転写層が被転写体に転写された場合には、最外層に位置する層であるので、ガラス上に膜厚5μmで塗工した際の鉛筆硬度が3H以上であればより好ましい。また、表面抵抗値が1.0×1014Ω/□以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の転写材の転写層を構成する接着層は、転写層を被転写体に熱転写可能なものであることが必要であり、好ましくは以下の成分(b)〜(d)を含む硬化性樹脂組成物からなる熱接着性硬化樹脂層から構成される。
(b)熱接着性重合体;
(c)活性エネルギー線により重合可能なエチレン性不飽和化合物;及び
(d)重合開始剤
この硬化性樹脂組成物は、成分(b)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(c)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)の関係を満足する硬化性樹脂組成物であることが好ましく、更に、本発明の転写材を用いた積層体の力学的性質を向上させる観点から、下記式(1a)及び(2a)の関係を満足することがより好ましい。
【0026】
【数1】

【0027】
上述の式において、「(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}」の数値が0.1未満であると、硬化性樹脂組成物を硬化したときに得られる接着層(即ち、熱接着性硬化樹脂層)の接着力が不十分となり、一方、0.6を超えると相対的に成分(c)のエチレン性不飽和化合物の含有量が減少し、接着層の力学物性が低下する恐れがある。また、「(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}」の数値が0.4未満であると、成分(c)のエチレン性不飽和化合物の含有量が減少し、接着層の力学物性が低下する恐れがある。
【0028】
また、上記硬化性樹脂組成物は、熱接着性および硬度を良好なものにするという観点から、成分(b)及び成分(c)の架橋密度の平均をv(mol/リットル(L))としたときに、さらに下記式(3)の関係を満足することが好ましく、該架橋密度の平均(v)の値が1〜4.5の間にあることがより好ましい。なお、該架橋密度の平均(v)の値は、特許文献:特開2004−2824号(段落0029〜0034)の記載に準じて算出することができる。

【0029】
【数2】

【0030】
さらに、本発明における硬化性樹脂組成物は、メタクリル樹脂などからなる被転写体との密着性を向上させる観点から、成分(b)及び成分(c)の溶解度パラメータ(sp値)の平均値をδとしたときに下記式(4)の関係を満足することが好ましく、溶解度パラメータ(sp値)の平均値(δ)が、9.5〜10.5の範囲であることがより好ましい。なお、溶解度パラメータ(sp値)の平均値(δ)は、特許文献:特開2004−2824号(段落0040〜0061)の記載に準じて算出することができる。
【0031】
【数3】

【0032】
本発明の転写材を構成する転写層の接着層に使用する成分(b)の熱接着性重合体は、硬化性樹脂組成物に熱接着性を付与するための成分である。このような熱接着性重合体としては、硬化樹脂層に熱接着性を付与できるものであれば特に制限されないが、熱接着性に優れ、後述する成分(c)のエチレン性不飽和化合物との相溶性に優れるという観点から、ガラス転移温度(複数のガラス転移温度を持つ場合は、少なくとも一つ)が60℃以上180℃以下である熱可塑性重合体であることが好ましく、80℃以上140℃以下である熱可塑性重合体であることがより好ましい。また、上記熱可塑性重合体は、成分(c)のエチレン不飽和化合物との相溶性を向上させる観点から、非水溶性の熱可塑性重合体であることがより好ましい。
【0033】
このような成分(b)の熱接着性重合体の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロライド、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルおよびロジン系重合体、並びにこれらの重合体単位を含むブロック共重合体およびグラフト共重合体などが挙げられる。これらのうち1種類のみを用いてもよいし、複数種併用してもよい。成分(b)の熱接着性重合体の選択の基準としては、被転写体の材質と親和性を有するものを選択することが好ましい。例えば、転写層をメタクリル樹脂板に転写させる場合には、メタクリル酸メチル単位を主成分とする重合体を使用することが好ましく、更に、メタクリル樹脂板への密着性をより改善するという観点から、水酸基を含む(メタ)アクリル系重合体であることがより好ましい。
【0034】
本発明の転写材の転写層を構成する接着層を形成する硬化性樹脂組成物の成分(c)、即ち、活性エネルギー線により重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、該硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層が熱接着性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、分子内に少なくとも2個のエチレン性二重結合を有する化合物を含有し、重合開始剤の存在下において活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、エックス線等)の照射により重合可能な化合物を挙げることができる。ここで、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリレート基又はメタクリレート基を(メタ)アクリレート基と、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸とそれぞれ略記することがある。
【0035】
上記成分(c)の重合可能なエチレン性不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、フェニルエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド−1−エン、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド−4−エン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルチリメトキシシラン等の単官能性(メタ)アクリレート系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニル系モノマー;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ビスフェノール−A−ジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリルチオフェニル)スルフィドなどの2官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホルマール、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−ヒドラジン、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートなどの3官能以上の多官能性モノマー;ウレタンアクリレート、エステルアクリレートなどのオリゴアクリレートが挙げられる。これらのうち2官能以上の多官能性モノマーが好ましく用いられる。また、これらのエチレン性不飽和化合物は単独または2種以上で用いることができる。
【0036】
成分(c)の重合可能なエチレン性不飽和化合物と共に、必要に応じて、更に、触媒系化合物の存在下又は不存在下においてカチオン重合可能なビニルエーテル系、エポキシ系またはオキセタン系の化合物等を併用することもできる。
【0037】
ビニルエーテル系化合物の具体例としては、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−A−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−F−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性カテコールジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性レゾルシノールジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性−1,3,5,ベンゼントリオールトリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
上記エポキシ系化合物の具体例としては、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラックのグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
また、オキセタン化合物の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。
【0040】
また、本発明の転写材の転写層を構成する接着層を形成する硬化性樹脂組成物の成分(d)の重合開始剤としては、硬化手段である活性エネルギー線の種類(紫外線、可視光、電子線等)に応じて適宜選択することができる。また、光重合を行う場合には、光重合開始剤を使用し、その他に光増感剤、光促進剤などから選ばれる1種類以上の公知の光触媒化合物を併用することが望ましい。
【0041】
光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−オキサントン、カンファーキノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等が挙げられる。また、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合開始剤も用いることができる。
【0042】
光重合開始剤の硬化性樹脂組成物中の含有量は、希釈剤を除いた固形分(硬化後に固形化する成分も含む)中に好ましくは0.1重量%以上10重量%以下、より好ましくは3重量%以上5重量%以下である。
【0043】
硬化性樹脂組成物には、光重合を促進させるために光重合開始剤と共に光増感剤を配合してもよい。光増感剤の具体例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等を挙げることができる。また、本発明においては、光重合を促進させるために光重合開始剤と共に光促進剤を使用してもよい。光促進剤の具体例としては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチルなどを挙げることができる。
【0044】
また、本発明の転写材の転写層を構成する接着層を形成する際、硬化性樹脂組成物を、帯電性バードコート層上に薄膜で塗工するためには、硬化性樹脂組成物には希釈剤を加えることができる。その際、希釈剤の添加量は、目的とする接着層の層厚等に応じて適宜決定することができる。
【0045】
接着層を形成するための硬化性樹脂組成物に使用できる希釈剤としては、一般の樹脂塗料に用いられている希釈剤であれば特に制限はないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチルなどのエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族化合物;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン系炭化水素;メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどのアルコール化合物、水などを挙げることができる。
【0046】
接着層を形成するための硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、更に、無機フィラー、重合禁止剤、着色顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、分散剤、光拡散剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、非反応性ポリマー、近赤外線吸収材等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0047】
また、接着層を形成する硬化性樹脂組成物は、以上説明した成分(b)〜(d)と、必要に応じて配合される他の成分とを、常法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0048】
本発明の転写材を構成する離型層を有するベースフィルムとしては、フィルム状のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)などを使用することができる。また、ベースフィルムに設ける離型層としては、離型層として広く利用されているシリコーン樹脂層、ポリオレフィン樹脂層、中でもポリオレフィン樹脂層、例えば、低密度ポリエチレン層を好ましく挙げることができる。
【0049】
本発明の転写材は、離型層を有するベースフィルムの当該離型層上に転写層が積層されたものであり、該転写層は帯電電防止性ハードコート層と接着層とを少なくとも含む転写層であれば特に制限はないが、更に反射防止層、防眩層、印刷層、着色層等の装飾層、金属または金属化合物からなる蒸着層(導電層)、プライマー層、中間層、抗菌層などを含む3層以上の多層構造でもよい。
【0050】
かかる転写層の層構成の具体例としては、ハードコート層/接着層、ハードコート層/中間層/接着層、ハードコート層/絵柄層/接着層、着色層/ハードコート層/接着層、反射防止層/ハードコート層/接着層等が挙げられる。
【0051】
上記ハードコート層、接着層の膜厚は、特に制限はないが、通常0.5〜50μm程度の範囲から適宜選択される。また、他の層の膜厚においても、特に制限はないが、通常0.1〜50μm程度の範囲から適宜選択される。
【0052】
本発明の転写材は、以下の工程(A)〜(D)を含む製造方法に従って製造することができる。
【0053】
工程(A)
離型層を有するベースフィルムの当該離型層上に、ハードコート層形成用樹脂組成物の膜を、含浸法、凸版印刷法、平板印刷法、凹版印刷などで用いられるロールを用いた塗工法、基材に噴霧するようなスプレー法、カーテンフローコートなどにより形成する。
【0054】
なお、ハードコート層形成用樹脂組成物に希釈剤(溶剤)が含まれている場合、希釈剤を、後述する工程(B)を実施する前に予め除去することが好ましい。この場合、通常は加熱により蒸発させる。その方法としては加熱炉、遠赤外炉または超遠赤外路などを用いることができる。
【0055】
工程(B)
工程(A)で得られたハードコート層形成用樹脂組成物からなる膜に対し、硬化成分が活性エネルギー線硬化性である場合には、活性エネルギー線を照射することにより硬化させて帯電防止性ハードコート層を形成する。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、レーザー、電子線、エックス線などの広範囲のものを使用することができるが、これらの中でも紫外線を用いることが実用面からは好ましい。具体的な紫外線発生源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。また、硬化成分が熱硬化性である場合には、加熱炉、遠赤外炉または超遠赤外炉などを用いて硬化温度以上に加熱することにより帯電防止性ハードコート層を形成する。
【0056】
工程(C)
帯電防止性ハードコート層上に、接着層を形成するための硬化性樹脂組成物の膜を、含浸法、凸版印刷法、平板印刷法、凹版印刷などで用いられるロールを用いた塗工法、基材に噴霧するようなスプレー法、カーテンフローコートなどにより形成する。
【0057】
なお、接着層を形成するための硬化性樹脂組成物に希釈剤(溶剤)が含まれている場合、希釈剤を、後述する工程(D)を実施する前に予め除去することが好ましい。この場合、通常は加熱により蒸発させる。その方法としては加熱炉、遠赤外炉または超遠赤外炉などを用いることができる。
【0058】
工程(D)
工程(C)で得られた硬化性樹脂組成物からなる膜に対し、工程(B)と同様の操作で活性エネルギー線を照射することにより硬化させて接着層を形成する。これにより、離型層を有するベースフィルムの当該離型層上に、離型層側から帯電防止性ハードコート層および接着層からなる転写層が形成された転写材が得られる。
【0059】
以上説明した本発明の転写材は、転写材のベースフィルムの離型層と転写層の帯電防止性ハードコート層との界面に、特定の界面活性剤が存在するので、離型層と帯電防止性ハードコート層との間の接着強度が帯電防止性ハードコート層と接着層との間の接着強度よりも低くなっている。従って、転写操作の際にベースフィルムの離型層と転写層の帯電防止性ハードコート層との間で良好に剥離させることができる。しかも、転写後に最外面となる帯電防止性ハードコート層を設けることができるので、帯電防止性ハードコート層を表面に有する積層体を転写法にて製造する際の材料として有利に利用することができる。このような積層体の好ましい構造は、プラスチック材料、ガラス材料、金属材料、木製材料などの被転写体の表面に、本発明の転写材の転写層の接着層側から転写した構造となっている。このような積層体は、本発明の転写材の転写層の接着層を、被転写体に密着させ、公知の熱プレス装置や熱ロールラミネート装置を使用して熱圧着することにより転写させることにより製造できる。ここで、転写時の加熱温度は、転写材及び被転写体の種類等によって最適条件は異なるが、例えば転写材のベースフィルムがポリエチレンテレフタレートの場合は80℃〜180℃が好ましく、120℃〜170℃がより好ましい。更に、被転写体を加熱しながら密着させることも好ましく、例えば、被転写体がアクリル樹脂の場合には被転写体を50℃〜100℃に加熱することが好ましく、60〜90℃に加熱することがより好ましい。転写時の圧力は、線圧が100g/cm以上が好ましく、1000g/cm以上がより好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
参考例1(帯電防止性ハードコート層を形成するためのベース樹脂組成物の調製)
ハードコート層形成用樹脂組成物として、ウレタンアクリレート(商品名 ダイヤビームUK−6074 三菱レイヨン社製)26.1質量部、PMMA(商品名 パラペットHR−L クラレ社製)2.9質量部、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184 日本チバガイギー社製)0.7質量部、メチルエチルケトン52.5質量部、およびn−ヘキサン17.5質量部を均一に混合することにより、ハードコート層を形成するための光硬化性ベース樹脂組成物を調整した。
【0062】
参考例2(接着層形成用硬化性樹脂組成物の調製)
接着層形成用硬化性樹脂組成物として、エポキシエステル(商品名 M−600A 共栄社化学社製)8.6質量部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 KBM5103 信越化学工業社製)5.7質量部、エポキシ変性ビスフェノールAジアクリレート(商品名 ビスコート#540 大阪有機化学工業社製)5.7質量部、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(商品名 アロニックスM−315 東亞合成社製)2.9質量部、アクリルポリオール(商品名 アクリディックA−814 大日本インキ化学工業社製)5.8質量部、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184 日本チバガイギー社製)1.4質量部、メチルエチルケトン52.4質量部、およびイソプロピルアルコール17.5質量部を均一混合することにより、接着層用光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0063】
なお、得られた接着層用光硬化性樹脂組成物において、成分(b)に属する成分はアクリルポリオールであり、成分(c)に属する成分はエポキシエステル、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシ変性ビスフェノールAジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートであり、成分(b)及び成分(c)に関して前者の配合量(質量部)を(Awt)とし、後者の配合量(質量部)を(Bwt)としたときの「(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}」の値は0.20であり、「(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}」の値は0.80であり、平均架橋密度(v)は1.70であり、溶解度パラメータ(sp値)の平均値(δ)は10.3であった。
【0064】
実施例1〜4、比較例1〜3
参考例1で得られた光硬化性のベース樹脂組成物に、表1に示す界面活性剤を添加してハードコート層形成用樹脂組成物を調製した。得られたハードコート層形成用樹脂組成物を、離型処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名 エステルフィルム、東洋紡社製)上に乾燥厚が5μm厚となるように塗布し、80℃で30秒乾燥した後、得られた塗布膜に紫外線照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機社製)を2回行って硬化させ、帯電防止性ハードコート層を形成した。
【0065】
得られた帯電防止性ハードコート層上に、参考例2で得られた接着層用光硬化性樹脂組成物を乾燥厚で5μm厚となるように塗布し、80℃で30秒乾燥した後、得られた塗布膜に紫外線照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機社製)を2回行って硬化させ、接着層を形成し、これにより転写材を得た。
【0066】
得られた転写材を、その転写層側から2mm厚のポリメタクリル酸メチル板に重ね、それらを加熱加圧(条件: 板温80℃、ロール速度1m/min、ロール温度160℃)し、転写材のベースフィルムを剥離することにより、ポリメタクリル酸メチル板上に転写層が転写した積層体を得た。
【0067】
得られた転写材または積層体について、以下の試験項目について試験評価した。得られた結果を結果を表1に示す。
【0068】
密着性: 得られた積層体上に、1mm間隔の格子状にカッターで切り込みを入れた後、JIS K5400に準じて評価した。なお、比較例にて剥離した部分は光学顕微鏡で観察したところ、帯電防止性ハードコート層と接着層との間で剥離が生じていた。
【0069】
鉛筆硬度: 鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(東洋精機社製)を用いてJIS K5600−5−4に準じて評価した。
【0070】
表面抵抗率: 積層板を25℃50%RHの条件にて1週間保存後、デジタルエレクトロメータ(超高抵抗微少電流計R8340(アドバンテスト社製))を用いて、JIS K−6911に準じて評価した。
【0071】
【表1】

【0072】
表1注
*1: 該組成物の固形分に対する質量比を表す
*2: 和光純薬工業社製
*3: 商品名 アデカコールEC−4500 旭電化工業社製
*4: 商品名アントックスMS−2N、日本乳化剤社製
*5: 平均分子量400 和光純薬工業社製
【0073】
表1の結果から、帯電防止性ハードコート層に炭素数17または18の不飽和直鎖炭化水素基や炭素数8の飽和直鎖炭化水素基を有する界面活性剤を使用した実施例1〜4の転写材もしくは積層体の場合、良好な密着性、良好な鉛筆硬度、良好な表面抵抗率を示していることがわかる。特に、密着性の評価から、離型層と帯電防止性ハードコート層との間の接着強度が、帯電防止性ハードコート層と接着層との間の接着強度よりも低くなっていることがわかる。一方、炭素数8以上30以下の直鎖炭化水素基を有する界面活性剤以外の界面活性剤を使用した比較例1〜3の場合には、密着性、鉛筆硬度、表面抵抗値とも、不十分な結果であることがわかる。
【0074】
実施例5〜9
表2に示す組成物28.6質量部に対し、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184 日本チバガイギー社製)1.4質量部、メチルエチルケトン52.4質量部、イソプロピルアルコール17.5質量部を加え混合することにより接着層用光硬化性樹脂組成物を調製した。また、表2に、「(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}」および「(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}」の数値、接着層用光硬化性樹脂組成物の架橋密度(v(mol/L))、熱接着性重合体と重合可能なエチレン系不飽和化合物との溶解度パラメータ(sp値)の平均値δを示す。
【0075】
実施例2で得られたハードコート層形成用樹脂組成物を、離型処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名 エステルフィルム、東洋紡社製)上に乾燥厚が5μm厚となるように塗布し、80℃で30秒乾燥した後、得られた塗布膜に紫外線照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機社製)を2回行って硬化させ、帯電防止性ハードコート層を形成した。
【0076】
得られた帯電防止性ハードコート層上に、上記接着層用光硬化性樹脂組成物を乾燥厚が厚5μm厚となるように塗布し、80℃で30秒乾燥した後、得られた塗布膜に紫外線照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機社製)を2回行って硬化させ、接着層を形成し、これにより転写材を得た。
【0077】
得られた転写材を使用して、実施例1と同様にポリメタクリル酸メチル板上に転写層が転写された積層体を得た。得られた転写材、積層体について、実施例1と同様に試験し、表した。得られた結果を表2に示す。なお、表2に示したそれぞれの重合体のガラス転移温度(Tg)はメトラー社製TA 4000によって測定した値である。
【0078】
比較例4
ウレタンアクリレート(商品名 UK−3320HC、根上工業社製)30質量部、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184 日本チバガイギー社製)1.5質量部およびメチルエチルケトン68.5質量部からなる硬化性樹脂組成物を離型処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名 エステルフィルム、東洋紡社製)上に乾燥厚が5μm厚となるように塗布し、80℃で30秒乾燥した後、得られた塗布膜に紫外線照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機社製)を2回行って硬化させ、転写材を得た。
【0079】
得られた転写材を、その転写層側から2mm厚のポリメタクリル酸メチル板に重ね、それらを加熱加圧(条件: 板温80℃、ロール速度1m/min、ロール温度160℃)し、転写材のベースフィルムを剥離することにより、ポリメタクリル酸メチル板上に転写層が転写した積層体を得ようとしたところ、ポリメタクリル酸メチル板上に転写層が転写しなかった。そこで、別途、ポリメタクリル酸メチル板上に上述の樹脂組成物を固形分膜厚が5μm厚となるように塗布し、80℃で30秒乾燥した後、得られた塗布膜に紫外線照射(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm、ウシオ電機社製)を2回行って硬化させ、積層体を得た。
【0080】
得られた転写材または積層体について、実施例5〜10と同様の試験項目について試験評価した。得られた結果を表2に示す。



【0081】
【表2】

【0082】
表2注:
*6:商品名 パラペットHR−Lクラレ社製
*7:商品名 アクリディックA−814 大日本インキ化学工業社製
*8:商品名 Poly−Pale イーストマンケミカル社製
*9:エポキシ変性ビスフェノール−A−ジアクリレート、商品名 ビスコート#540、大阪有機化学工業社製
*10:商品名 M315、東亜合成社製
*11:エポキシ変性フェノキシアクリレート、商品名 M600A、共栄社化学社製
*12:γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、商品名 KBM5103、信越化学工業社製
*13:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名 DPHA、日本化薬社製
*14:商品名 UN−3320HC、根上工業社製
*15:転写できず。値はアクリル板上に積層して測定した値。
【0083】
表2の結果から、本発明の要件をすべて満たしている実施例5〜9の場合には、本発明の要件をいずれも満たしていない比較例4の場合に比べ、表面硬度が高く、帯電防止性や密着性に優れていることがわかる。なお、(b)熱接着性重合体および(c)活性エネルギー線により重合可能なエチレン性不飽和化合物の配合割合が、本発明の好ましい範囲に含まれていない実施例10の場合には、表面硬度や帯電防止性の点で実施例5〜9と同程度に優れているものの、密着性の点でそれらよりも劣っていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の転写材によれば、被転写体の表面に、表面硬度が高く、帯電防止機能を有する帯電防止性ハードコート層を含む転写層を、容易に転写することができる。従って、その転写層が転写された積層体は、その最外面に帯電防止性ハードコート層が設けられているので、銘板やディスプレイの前面板等の光学部材に有利に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層を有するベースフィルム上に、帯電防止性ハードコート層および接着層を少なくとも含む転写層が、該離型層と該帯電防止性ハードコート層とが接触するように設けられてなる転写材において、該離型層と該帯電防止性ハードコート層との間の接着強度が帯電防止性ハードコート層と接着層との間の接着強度よりも低くなるように、帯電防止性ハードコート層が、成分(a)として炭素数8以上30以下の直鎖炭化水素基を有する界面活性剤を含有する転写材。
【請求項2】
該接着層が、以下の成分(b)〜(d):
(b)熱接着性重合体;
(c)活性エネルギー線により重合可能なエチレン性不飽和化合物; 及び
(d)重合開始剤
を含み、成分(b)の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(c)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)
【数1】


の関係を満足する硬化性樹脂組成物からなる熱接着性硬化樹脂層である請求項1記載の転写材。
【請求項3】
成分(b)熱接着性重合体が、水酸基を含む(メタ)アクリル系重合体である請求項2記載の転写材。
【請求項4】
被転写体の表面に、請求項1〜3のいずれかに記載の転写材の転写層が転写されてなる積層体であって、転写層の表面の帯電防止性ハードコート層の鉛筆硬度が3H以上であり、かつ表面抵抗率が1.0×1014Ω/□以下である積層体。

【公開番号】特開2006−181791(P2006−181791A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376114(P2004−376114)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】