説明

転写装置及び画像形成装置

【課題】二次転写部に被転写材が進入することで生じる一次転写部における転写ベルトの振動を抑制することができる転写装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】転写装置30は、外周面でトナー画像を保持する無端状の中間転写ベルト34と、二次転写部T2でシート部材Pにトナー画像を転写する二次転写ロール62と、コイルばね53及び張力付与ロール41を有する張力付与ユニット50と、張力付与ロール41が中間転写ベルト34を付勢する方向及びその逆方向の何れか一方に移動するときに、張力付与ロール41に減衰力を作用させる減衰部材59と、を有している。ここで、二次転写部T2にシート部材Pが進入して、中間転写ベルト34が振動するとき、減衰部材59が張力付与ロール41に減衰力を作用させる。これにより、一次転写部T1における中間転写部材34の振動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のニップ幅調整手段は、記録材の厚さによる中間転写体への振動の影響をなくすために、トナー像を厚紙に二次転写するとき、それに先立ってニップ幅(中間転写ベルトと二次転写ベルトとの当接により画定される)を減少させておき、振動の発生を軽減している。
【0003】
また特許文献2には、感光体駆動用のタイミングベルトへ初期張力を付与するアイドラプーリを、弾性部材を介して筐体等へ固定する構成として、駆動系内で感光体以外の被駆動部分での負荷変動、振動等が発生した場合に、これが感光体へと伝達する伝達経路中で弾性部材をダンパとして機能させ、負荷変動、振動等を緩衝させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−316320号公報
【特許文献2】特開2003−195596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、二次転写部に被転写材が進入することで生じる一次転写部における転写ベルトの振動を抑制することができる転写装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る転写装置は、外周面に現像剤像が転写される一次転写部と該現像剤像が被転写部材へ転写される二次転写部とを有し、前記一次転写部から前記二次転写部へ向けて移動する無端状の転写ベルトと、前記二次転写部において前記転写ベルトとの間で前記被転写部材を挟むと共に該被転写部材に現像剤像を転写する転写部材と、弾性部材と、該弾性部材の弾性力により前記転写ベルトを付勢して張力を付与する張力付与部材と、を有する張力付与手段と、前記張力付与部材が前記転写ベルトを付勢する方向及びその逆方向の何れか一方に移動するときに、該張力付与部材に減衰力を作用させる減衰部材と、を備えている。
【0007】
本発明の請求項2に係る転写装置は、前記減衰部材は、前記張力付与部材が前記転写ベルトを付勢する方向に移動するときに、当該張力付与部材に減衰力を作用させるように設けられている。
【0008】
本発明の請求項3に係る転写装置は、前記減衰部材は、反発弾性が10%未満となっている。
【0009】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転写装置と、前記転写ベルトに転写される現像剤像を形成する現像剤像形成手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、張力付与部材が転写ベルトを付勢する方向またはその逆方向に移動する際に、そのいずれの方向に移動しているときでも減衰力を作用させる場合と比べて、二次転写部に被転写材が進入することで生じる一次転写部における中間転写ベルトの振動を抑制することができる。
【0011】
請求項2の発明は、張力付与部材が転写ベルトを付勢する方向とは逆方向に移動しているときのみ張力付与部材に減衰力を作用させる構成に比べて、二次転写部に被転写材が進入することで生じる一次転写部における転写ベルトの振動を抑制することができる。
【0012】
請求項3の発明は、減衰部材の反発弾性が10%以上である場合と比べて、二次転写部に被転写材が進入することで生じる一次転写部における中間転写ベルトの振動を抑制することができる。
【0013】
請求項4の発明は、張力付与部材が転写ベルトを付勢する方向またはその逆方向に移動する際に、そのいずれの方向に移動しているときでも減衰力を作用させる場合と比べて、画像の画質欠陥を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成ユニットの構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る張力付与ユニットの一部を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る張力付与ユニットの分解状態を示す斜視図である。
【図5】(a)、(b)本発明の実施形態に係る二次転写部に記録用紙が進入したときの中間転写ベルトの形状変化を示す模式図である。
【図6】(a)、(b)本発明の実施形態に係る張力付与ユニットの一部が減衰部材と接触する状態を示す断面図である。
【図7】(a)本発明の実施形態に係る張力付与ロールの時間に対する位置変化を示すグラフである。(b)本発明の実施形態に係る張力付与ロールの位置変化の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る転写装置及び画像形成装置の一例について説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置10は、カラー画像又は白黒画像を形成するものであり、正面視で左側に配置された第1処理部10Aと、第1処理部10Aと着脱可能とされ右側に配置された第2処理部10Bとを有している。第1処理部10A及び第2処理部10Bの筐体は、複数のフレーム材で構成されている。
【0017】
第2処理部10Bの内部であって鉛直方向(矢印Z方向)上側には、コンピュータから送られてくる画像データに画像処理を施す画像信号処理部を含み、画像形成装置10の各部の駆動制御を行う制御部13が設けられている。また、制御部13の下側には、電源ユニット230が設けられている。電源ユニット230は、外部から取り込んだ交流電流を直流電流に変えて、画像形成装置10の各部へ給電を行っている。
【0018】
一方、第1処理部10Aの内部であって鉛直方向上側には、第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各トナー(現像剤)を収容するトナーカートリッジ14V、14W、14Y、14M、14C、14Kが水平方向に並んで交換可能に設けられている。なお、第1特別色及び第2特別色には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外の特別色(透明を含む)から選択される。また、以後の説明では、V、W、Y、M、C、Kを区別する場合は、数字の後にV、W、Y、M、C、Kのいずれかの英字を付して説明し、V、W、Y、M、C、Kを区別しない場合は、V、W、Y、M、C、Kを省略する。
【0019】
トナーカートリッジ14の下側には、各色のトナーに対応する現像剤像形成手段の一例としての6つの画像形成ユニット16が、各トナーカートリッジ14と対応して水平方向に並んで設けられている。また、各トナーカートリッジ14の下側には、画像形成ユニット16毎に現像剤像形成手段の一例としての露光ユニット40が設けられている。露光ユニット40は、前述した制御部13から画像処理を施された画像データを受け取り、半導体レーザ(図示省略)を色材階調データに応じて変調して、これらの半導体レーザから露光光Lを出射するように構成されている。詳細には、後述する感光体18(図2参照)の表面に各色に対応した露光光Lを照射して感光体18上に静電潜像を形成するようになっている。
【0020】
図2に示すように、画像形成ユニット16は、矢印A(図2の時計回り)方向に回転駆動される感光体18を備えている。そして、感光体18の周囲には、感光体18を帯電するコロナ放電方式(非接触帯電方式)のスコロトロン帯電器20と、露光ユニット40によって出射された露光光Lにより感光体18上に形成された静電潜像を各色の現像剤(トナー)で現像する現像装置22と、転写後の感光体18の表面をクリーニングするクリーニングブレード24と、転写後の感光体18の表面に光を照射して除電を行うイレーズランプ26とが設けられている。そして、スコロトロン帯電器20、現像装置22、クリーニングブレード24、イレーズランプ26は、感光体18の表面と対向して、感光体18の回転方向上流側から下流側へ向けてこの順番で配置されている。
【0021】
また、現像装置22は、画像形成ユニット16の側方(本実施形態では紙面右側)に配置され、トナーを含んだ現像剤Gが充填された現像剤収容部材22Aと、現像剤収容部材22Aに充填されたトナーを感光体18の表面に移動させる現像ロール22Bとを含んで構成されている。そして、現像剤収容部材22Aは、トナーカートリッジ14(図1参照)とトナー供給路(図示省略)を通して接続されており、トナーカートリッジ14からトナーが供給されるようになっている。
【0022】
図1に示すように、各画像形成ユニット16の下側には、転写装置30が設けられている。なお、転写装置30の詳細については後述する。一方、転写装置30の下方で第1処理部10Aの下側には、被転写部材の一例としてのシート部材Pが収納される大型の給紙カセット48が水平方向(矢印X方向)に並んで2個設けられており、シート部材Pが大量に収納可能とされている。なお、2個の給紙カセット48は、同様の構成とされているため、一方の給紙カセット48について説明し、他方の給紙カセット48については説明を省略する。
【0023】
給紙カセット48は、第1処理部10Aから引き出し自在とされており、給紙カセット48を第1処理部10Aから引き出すと、給紙カセット48内に設けられシート部材Pが載せられるボトムプレート51が、図示せぬ制御手段の指示によって下降するようになっている。ボトムプレート51が下降することで、ユーザーがシート部材Pを補充可能となっている。また、給紙カセット48を第1処理部10Aに取り付けると、ボトムプレート51が、制御手段の指示によって上昇する。給紙カセット48の一端側の上方には、給紙カセット48からシート部材Pを搬送経路60へ送り出す送出ロール52が設けられており、上昇するボトムプレート51に載せられた最上位のシート部材Pと送出ロール52が接触するようになっている。さらに、送出ロール52のシート部材P搬送方向下流側(以下単に「下流側」という)には、シート部材Pの重送を防止する分離ロール56が設けられ、分離ロール56の下流側には、シート部材Pを下流側に搬送する複数個の搬送ロール54が設けられている。
【0024】
給紙カセット48の上側に設けられる搬送経路60は、給紙カセット48から送出されたシート部材Pを第1折返部60Aで反対側(図示の左側)に折り返し、さらに、第2折返部60Bで反対側(図示の右側)に折り返して、後述する二次転写ロール62と支持ロール42とで挟まれた二次転写部T2に向けて延びるようになっている。
【0025】
第2折返部60Bと二次転写部T2とで挟まれる部位には、搬送されるシート部材Pの傾き等を修正するアライナー(図示省略)が設けられており、このアライナーと二次転写部T2とで挟まれる部位には、中間転写ベルト34上のトナー画像の移動タイミングとシート部材Pの搬送タイミングとを合わせるための位置合せロール64が設けられている。
【0026】
また、搬送経路60の第2折返部60Bへ合流するように、第1処理部10Aの側面から延びる予備経路66が設けられており、第1処理部10Aに隣接して配置された外付けの大容量集積部(図示省略)から送出されたシート部材Pが、予備経路66を通って搬送経路60に入り込めるようになっている。
【0027】
一方、二次転写部T2の下流側には、トナー画像が転写されたシート部材Pを第2処理部10Bに向けて搬送する複数個の搬送部70が設けられている。搬送部70は、図示しない駆動ロール及び従動ロールに巻き掛けられる複数本のベルト部材が備えられており、駆動ロールを回転駆動させてベルト部材を回転させることで、シート部材Pを下流側に向けて搬送するようになっている。
【0028】
搬送部70の下流側は、第1処理部10Aから第2処理部10Bへ延びており、搬送部70によって送り出されたシート部材Pが、第2処理部10Bに設けられた搬送装置80によって受取られ、さらに下流側に搬送されるようになっている。また、搬送装置80の下流側には、シート部材Pの表面に転写されたトナー画像をシート部材Pに熱と圧力で定着させる定着ユニット82が設けられている。
【0029】
定着ユニット82の下流側には、定着ユニット82から送出されたシート部材Pを下流側へ搬送する搬送部108が設けられ、搬送部108の下流側には、定着ユニット82によって加熱されたシート部材Pを冷却する冷却ユニット110が設けられている。冷却ユニット110は、シート部材Pの搬送経路60を挟んで上側に設けられた上側搬送ユニット112と、下側に設けられた下側搬送ユニット114と、搬送されるシート部材Pを冷却するヒートシンクからなる冷却部120とを有している。
【0030】
上側搬送ユニット112は、シート部材Pの画像形成面と接触してシート部材Pの熱を吸収するとともにシート部材Pを搬送する無端状の受熱ベルト116と、受熱ベルト116の内周面に接触して受熱ベルト116を駆動又は支持する複数本のロール部材118と、を含んで構成されている。ここで、受熱ベルト116は、図1の反時計回り方向に循環移動可能となっている。
【0031】
下側搬送ユニット114は、外周面が受熱ベルト116と対向するように配置され、シート部材Pの下面と接触してシート部材Pを受熱ベルト116に押し付けるとともにシート部材Pを搬送する無端状の搬送ベルト130と、搬送ベルト130の内周面に接触して搬送ベルト130を駆動又は支持する複数本のロール部材132と、を含んで構成されている。ここで、搬送ベルト130は、図1の時計回り方向に循環移動可能となっている。
【0032】
一方、冷却ユニット110の下流側には、シート部材Pの反りを矯正するデカール処理ユニット140が設けられている。そして、デカール処理ユニット140の下流には、片面に画像が形成されたシート部材Pを第2処理部10Bの側面に取り付けられた排出部196に排出する排出ロール198が設けられている。ここで、シート部材Pの両面に画像を形成させる場合は、デカール処理ユニット140の下流に設けられた反転ユニット200へシート部材Pが搬送される。
【0033】
反転ユニット200には、反転経路202が設けられている。反転経路202には、搬送経路60から分岐する分岐パス202Aと、分岐パス202Aに沿って搬送されるシート部材Pを第1処理部10A側に向けて搬送する用紙搬送パス202Bと、用紙搬送パス202Bに沿って搬送されるシート部材Pを逆方向に向けて折返してスイッチバック搬送させ表裏を反転させる反転パス202Cとが設けられている。この構成により、反転パス202Cでスイッチバック搬送されたシート部材Pは、第1処理部10Aに向けて搬送され、さらに、給紙カセット48の上方に設けられた搬送経路60に入り込み、第2転写部T2へ再度送り込まれるようになっている。
【0034】
次に、転写装置30について説明する。
【0035】
図1に示すように、転写装置30は、各感光体18(図2参照)と接触する無端状の転写ベルトの一例としての中間転写ベルト34と、中間転写ベルト34の内側に配置され各感光体18上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト34に多重転写させる6つの一次転写ロール36と、図示しないモータで駆動される駆動ロール38と、中間転写ベルト34に張力を付与する張力付与手段の一例としての張力付与ユニット50を構成する張力付与ロール41と、後述する転写部材の一例としての二次転写ロール62と中間転写ベルト34を挟んで対向配置された支持ロール42と、複数個の支持ロール44と、張力付与ユニット50に減衰力を作用させる後述する減衰部材59(図3参照)とを含んで構成されている。
【0036】
中間転写ベルト34は、無端状の部材であり、6つの一次転写ロール36、駆動ロール38、張力付与ロール41、支持ロール42、及び複数個の支持ロール44に巻き掛けられている。また、中間転写ベルト34は、各一次転写ロール36によって感光体18からトナー画像(現像剤像)が転写される6つの一次転写部T1と、一次転写されたトナー画像が二次転写ロール62によってシート部材Pへ転写される二次転写部T2とを有しており、外周面でトナー画像を保持すると共に、駆動ロール38により一次転写部T1から二次転写部T2へ向けて矢印B方向(図示の反時計回り方向)に循環移動するようになっている。
【0037】
各一次転写ロール36は、中間転写ベルト34を挟んでそれぞれの各画像形成ユニット16の感光体18と対向配置されている。また、一次転写ロール36は、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性の一次転写バイアス電圧が印加されるようになっている。この構成により、感光体18上に形成されたトナー画像が中間転写ベルト34の一次転写部T1に一次転写されるようになっている。また、駆動ロール38と中間転写ベルト34を挟んで反対側には、先端部が中間転写ベルト34と接触するクリーニングブレード46が設けられおり、このクリーニングブレード46は、循環移動する中間転写ベルト34上の残留トナーや紙粉等を除去するようになっている。
【0038】
二次転写ロール62は、給電ユニット(図示省略)によって、トナー極性とは逆極性の二次転写バイアス電圧が印加されるようになっており、二次転写部T2において中間転写ベルト34とでシート部材Pを挟むと共に、シート部材P材にトナー画像を転写する。この構成により、中間転写ベルト34上に多重転写された各色のトナー画像が、搬送経路60に沿って搬送されてきたシート部材Pに二次転写ロール62によって二次転写されるようになっている。
【0039】
次に、張力付与ユニット50及び減衰部材59について説明する。
【0040】
図3に示すように、張力付与ユニット50は、中間転写ベルト34の内側に設けられており、中間転写ベルト34の内周面に接触する張力付与部材の一例としての張力付与ロール41と、張力付与ロール41の一端側に設けられた弾性部材の一例としてのコイルばね53と、張力付与ロール41の一端を支持するとともに、コイルばね53の弾性力により中間転写ベルト34を矢印−X方向に付勢して張力を付与する張力付与部材の一例としての支持ブラケット55と、張力付与ロール41の他端側に設けられ張力付与ロール41の他端を支持するブラケット及びコイルばね(図示省略)とを有している。
【0041】
詳細には、図4に示すように、張力付与ユニット50は、矢印X方向を長手方向とする第1ブラケット57を有している。第1ブラケット57は、矢印X方向中央付近の上部に矢印Y方向(中間転写ベルト34の移動方向と直交する幅方向)に突出した円柱状の支軸部57Aが設けられており、この支軸部57Aが、ベアリング61を介して図示しない本体に支持されることで、第1ブラケット57が支軸部57Aの軸を中心として揺動可能となっている。なお、以後の説明では、張力付与ロール41が中間転写ベルト34(図3参照)をコイルばね53の付勢力により付勢する方向を−X方向、張力付与ロール41が中間転写ベルト34により押し戻される方向を+X方向とする。
【0042】
第1ブラケット57の+X方向の端部近くの下部には、第1ブラケット57の+X方向の端部を下方側へ向けて引っ張るコイルばね71の一端が取り付けられている。コイルばね71の他端は、底板(図示省略)に取り付けられている。
【0043】
また、第1ブラケット57の+X方向の端部には、ロール63が回転可能に設けられている。ロール63は、コイルばね71の付勢力により第1ブラケット57の外側に設けられたカム65Aと接触しており、カム65Aは、回転可能に設けられた中継ギヤ65Bと一体で回転可能となっている。そして、中継ギヤ65Bは、駆動用のモータ67に設けられた駆動ギヤ67Aと噛み合っている。これにより、第1ブラケット57は、モータ67が動作すると支軸部57Aの軸を中心としてX−Z面内で揺動するようになっている。そして、張力付与ロール41の反対側に設けられたブラケット(図示省略)は、揺動しないようになっている。ここで、中間転写ベルト34が軸方向(矢印Y方向)の一方に偏ってきたときには、モータ67が駆動されカム65Aによって第1ブラケット57が揺動することにより、張力付与ロール41がX−Y面内で移動して、中間転写ベルト34を反対側へ戻すようになっている。
【0044】
第1ブラケット57の+X方向の端部(張力付与ロール41とは反対側)近くの上部には、矢印Y方向を長手方向として他方の端部の張力付与ユニット50まで延びる円柱状のシャフト69が設けられている。シャフト69の端部は、第1ブラケット57よりも外側へ突出されている。さらに、シャフト69の端部は、矢印X方向を長手方向として第1ブラケット57に隣接して設けられた第2ブラケット73の長孔73Aに通されており、シャフト69の端部には、円筒状の支持部材75が外挿されると共に、張力付与ロール41を退避させるためのカム部材77が取り付けられている。中間転写ベルト34を交換する際には張力付与ロール41を退避させる必要がある。このときにカム部材77を手で回転させて張力付与ロール41を退避位置に動かして保持する機能を持つ。なお、長孔73Aは、矢印X方向を長手方向としている。
【0045】
第2ブラケット73は、長孔73Aが形成されると共に第1ブラケット57と平行に配置された第1側壁部73Bと、第1側壁部73Bの端部で矢印Y方向とは反対側に直角に折り曲げられた第2側壁部73Cと、を含んで構成されている。そして、第2ブラケット73は、第1ブラケット57に対して矢印X方向に相対移動しないようになっている。
【0046】
また、第2ブラケット73に対する−X方向側には、矢印X方向を長手方向とする第3ブラケット85が設けられている。第3ブラケット85は、第1ブラケット57と平行に配置された第1側壁部85Aと、第1側壁部85Aの上端で矢印Y方向とは逆方向に直角に折り曲げられた上壁部85Bと、上壁部85Bの+X方向の端部で矢印Z方向と反対側(下側)に折り曲げられた取付部85Cとを含んで構成されている。そして、取付部85Cの上部には、コイルばね53の+X方向の端部が固定される貫通孔85Dが形成されている。なお、コイルばね53の−X方向の端部は、第1ブラケット57の−X方向の端部に設けられた固定部57Bに固定されるようになっている。
【0047】
一方、第1ブラケット57、第2ブラケット73の第2側壁部73C、及び第3ブラケット85の第1側壁部85Aで囲まれた領域には、スライド部材75が設けられている。スライド部材75は、Y−Z面での断面がコ字状でネジ81により第1ブラケット57に固定される固定部75Aと、矢印X方向を長手方向として固定部75Aで保持されると共に+X方向又は−X方向に移動可能とされたスライド部75Bとで構成されている。
【0048】
スライド部75Bの中央よりも+X方向側には、ネジ81により第3ブラケット85の第1側壁部85Aが固定されている。また、スライド部75Bの中央よりも−X方向側には、ネジ81により支持ブラケット55が固定されている。支持ブラケット55は、端部に張力付与ロール41の回転軸であるシャフト41Aが通される貫通孔55Aが形成されており、シャフト41Aにベアリング83を外挿すると共に貫通孔55Aにシャフト41を通し、さらにベアリング83を保持することで、張力付与ロール41を回転可能に支持している。そして、張力付与ロール41には、引っ張り状態とされた(自由長よりも伸長された)コイルばね53が縮もうとする力により−X方向の付勢力が作用している。
【0049】
第3ブラケット85の取付部85Cの貫通孔85Dよりも下側で且つ取付部85Cよりも−X方向側には、減衰部材59が設けられている。減衰部材59は、直方体状に形成されており、JISK6255で規定された反発弾性が10%未満の材料で構成されている。減衰部材59の一例としては、内外ゴム株式会社のハネナイト(登録商標)が挙げられる。
【0050】
図6(a)に示すように、減衰部材59は、第2ブラケット73の第2側壁部73Cと、第3ブラケット85の取付部85Cとで挟まれており、抜けないようになっている。なお、減衰部材59は、第2側壁部73C又は取付部85Cに固定してもよい。そして、減衰部材59は、張力付与ロール41(図3参照)が中間転写ベルト34(図3参照)を付勢する方向(−X方向)に移動するのに伴って、第2側壁部73Cと取付部85Cとで圧縮され、張力付与ロール41と一体に変位する第3ブラケット85に減衰力を作用させるようになっている。
【0051】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0052】
まず、画像形成装置10の画像形成工程について説明する。
【0053】
図1に示すように、画像形成装置10の各ユニットが作動状態になると、制御部13で画像処理が施された画像データは、各色の色材階調データに変換され、露光ユニット40に順次出力される。各露光ユニット40では、各色の色材階調データに応じて各露光光Lを出射して、スコロトロン帯電器20(図2参照)によって帯電した各感光体18に走査露光を行い、静電潜像が形成される。そして、感光体18(図2参照)上に形成された静電潜像は、現像装置22によってそれぞれ第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像として顕在化され現像が行われる。
【0054】
続いて、各画像形成ユニット16V、16W、16Y、16M、16C、16Kの感光体18上に形成された各色のトナー画像は、6つの一次転写ロール36V、36W、36Y、36M、36C、36Kによって中間転写ベルト34上に順次多重転写される。そして、中間転写ベルト34上に多重転写された各色のトナー画像は、二次転写ロール62によって、給紙カセット48から搬送されてきたシート部材P上に二次転写される。トナー画像が転写されたシート部材Pは、搬送部70によって第2処理部10Bの内部に設けられた定着ユニット82に向けて搬送される。
【0055】
続いて、シート部材P上の各色のトナー画像が定着ユニット82により加熱、加圧されることでシート部材Pに定着される。トナー画像が定着されたシート部材Pは、冷却ユニット110を通過する。冷却ユニット110では、シート部材Pが受熱ベルト116と搬送ベルト130とで挟まれながら搬送されており、冷却部120によってシート部材Pの冷却が行われる。冷却されたシート部材Pは、デカール処理ユニット140に送り込まれ、シート部材Pに生じた反りが矯正される。そして、反りが矯正されたシート部材Pは、排出ロール198によって排出部196に排出される。
【0056】
一方、画像が形成されていない非画像面に画像を形成させる場合(両面印刷の場合)は、切替部材(図示省略)によってシート部材Pを反転ユニット200に送り出す。反転ユニット200へ送り出されたシート部材Pは、反転経路202を通過して反転され、給紙カセット48の上方に設けられた搬送経路60に送り込まれて、前述した手順で裏面にトナー画像が形成される。
【0057】
次に、転写装置30における減衰部材59の作用について説明する。
【0058】
図5(a)に示すように、二次転写部T2にシート部材Pの先端が進入(突入)したとき、中間転写ベルト34は、シート部材Pの進入による負荷を受けて二次転写部T2での移動速度が低下する。これにより、張力付与ロール41から支持ロール42までの中間転写ベルト34は、元の張られた状態(破線34Aで表示)から緩んだ状態(実線34Bで表示)となる。そして、図5(b)に示すように、張力付与ロール41が、中間転写ベルト34の張る方向(−X方向)にずれようとする。
【0059】
このとき、図6(b)に示すように、第3ブラケット85が第2ブラケット73に対して−X方向に相対的に移動するため、減衰部材59が第2側壁部73Cと取付部85Cとで圧縮され、第3ブラケット85に減衰力が作用する。そして、図5(b)に示すように、第3ブラケット85と一体に変位する張力付与ロール41は、−X方向の変位(オーバーシュート)が抑制されつつ中間転写ベルト34と接触し追従する。これにより、中間転写ベルト34は、一次転写部T1での位置ずれが小さくなる。
【0060】
図7(a)には、本実施形態(グラフG3)と、比較例として減衰部材59を中間転写ベルト34及び張力付与ロール41の振動の+X方向、−X方向の両側に配置した場合(グラフG1)と、減衰部材59を配置しない場合(グラフG2)とにおいて、時間と張力付与ロール41の矢印X方向の位置との関係が示されている。Δt1は1枚目のシート部材Pが二次転写部T2に進入している期間、Δt2は二次転写部T2にシート部材Pが無い期間、Δt3は2枚目のシート部材Pが二次転写部T2に進入している期間を表している。また、tAは1枚目のシート部材Pの後端が二次転写部T2を抜けた時間であり、tBは2枚目のシート部材Pの先端が二次転写部T2に進入した時間を表している。さらに、W1はグラフG1におけるシート部材Pの有無による張力付与ロール41の位置の差(変位量)であり、W2はグラフG2におけるシート部材Pの有無による張力付与ロール41の変位量、W3はグラフG3におけるシート部材Pの有無による張力付与ロール41の変位量を表している。なお、グラフG1、G2、G3は、原点をずらして表示している。また、張力付与ロール41の位置の測定は、図7(b)に示すように、張力付与ロール41の矢印−X、+X方向の変位をレーザ変位計87にて測定することで行っている。
【0061】
図7(a)に示すように、比較例として減衰部材59を中間転写ベルト34及び張力付与ロール41の振動の+X方向、−X方向の両側に配置した場合のグラフG1では、シート部材Pの有無による張力付与ロール41の変位量W1が、減衰部材59を配置しない場合の変位量W2、又は減衰部材59を片側に配置した場合の本実施形態の変位量W3に比べてかなり小さくなっていることが分かる。これにより、グラフG1の比較例の構成を用いた場合は、シート部材Pの先端が二次転写部T2に進入して中間転写ベルト34が緩んだときに、張力付与ロール41が中間転写ベルト34に追従しきれず、中間転写ベルト34が緩んだままとなって、シート部材Pに転写されるトナー画像が乱れる原因になる。さらに、グラフG1の比較例の構成では、中間転写ベルト34の振動が小さいものの、中間転写ベルト34の緩みによるばたつきなどの二次障害が大きくなってしまう。逆に言えば、本実施形態では、変位量W3が比較例の変位量W1よりも大きいことから、中間転写ベルト34が緩んだときの中間転写ベルト34に対する張力付与ロール41の追従性が高いことが分かる。
【0062】
また、図7(a)において、比較例であるグラフG2(減衰部材59配置無し)と本実施形態のグラフG3とを比較すると、特に枠F1で囲んだ範囲(シート部材Pの先端の二次転写部T2への進入直後)において、両者ともシート部材Pの先端進入時の最初の衝撃は吸収しきれていないものの、その後の振動では、比較例であるグラフG2の方が本実施形態のグラフG3に比べて振幅が大きくなることが分かる。逆に言えば、本実施形態では、比較例のグラフG2に比べて振幅が小さくなっており、減衰部材59による振動の減衰効果が得られることが分かる。なお、本実施形態の減衰部材59による振動の減衰効果は、枠F2で囲んだ範囲(シート部材Pの後端が二次転写部T2から排出されたとき)においても得られていることが図7(a)から分かる。
【0063】
このように、本実施形態では、中間転写ベルト34及び張力付与ロール41の振動方向の片側のみ減衰部材59を配置して振動を減衰するようにしたので、張力付与ロール41の変位の拘束が低減され、減衰部材59は、張力付与ロール41に減衰力を付与しつつ中間転写ベルト34の変位に追従することになり、二次転写部T2から一次転写部T1への振動伝播が小さくなる。
【0064】
また、本実施形態では、シート部材Pの進入(ステップ入力)に伴い、最初に中間転写ベルト34及び張力付与ロール41が移動する方向(−X方向)に減衰部材59が設けられているため、中間転写ベルト34及び張力付与ロール41の振動発生から最初の半周期の間に減衰力を作用させることができる。これにより、その反対方向(+X方向)に減衰部材59を設ける場合(振動発生から半周期分の時間経過後に振動減衰をさせる場合)よりも早い時期から減衰が開始されるので、より早い段階で一次転写部T1における中間転写ベルト34の振動が抑えられる。
【0065】
なお、図3において、張力付与ユニット50では、中間転写ベルト34が軸方向(矢印Y方向)の一方に偏ってきたときには、モータ67が駆動されカム65Aにより第1ブラケット57が揺動して中間転写ベルト34を反対側へ戻すが、中間転写ベルト34が揺動しても張力付与ロール41と減衰部材59との位置関係が変わらないので、減衰効果は変わらない。
【0066】
本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0067】
一次転写部T1は、6箇所だけでなく、1箇所又は2箇所以上の複数箇所(6箇所を除く)であってもよい。また、張力付与ユニット50は、モータ67による第1ブラケット57の揺動機構を有していないものであってもよい。さらに、減衰部材59は、第2ブラケット73の取付部73Fに対して、矢印+X方向側のみに設けてもよい。そして、減衰部材59の形状は直方体状に限らず、湾曲面を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 画像形成装置
16 画像形成ユニット(現像剤像形成手段)
30 転写装置
34 中間転写ベルト(転写ベルト)
40 露光ユニット(現像剤像形成手段)
41 張力付与ロール(張力付与部材)
50 張力付与ユニット(張力付与手段)
53 コイルばね(弾性部材)
59 減衰部材
62 二次転写ロール(転写部材)
P シート部材(被転写部材)
T1 一次転写部
T2 二次転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に現像剤像が転写される一次転写部と該現像剤像が被転写部材へ転写される二次転写部とを有し、前記一次転写部から前記二次転写部へ向けて移動する無端状の転写ベルトと、
前記二次転写部において前記転写ベルトとの間で前記被転写部材を挟むと共に該被転写部材に現像剤像を転写する転写部材と、
弾性部材と、該弾性部材の弾性力により前記転写ベルトを付勢して張力を付与する張力付与部材と、を有する張力付与手段と、
前記張力付与部材が前記転写ベルトを付勢する方向及びその逆方向の何れか一方に移動するときに、該張力付与部材に減衰力を作用させる減衰部材と、
を備えた転写装置。
【請求項2】
前記減衰部材は、前記張力付与部材が前記転写ベルトを付勢する方向に移動するときに、当該張力付与部材に減衰力を作用させるように設けられている請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記減衰部材は、反発弾性が10%未満となっている請求項1又は請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転写装置と、
前記転写ベルトに転写される現像剤像を形成する現像剤像形成手段と、
を有する画像形成装置。


























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−158648(P2011−158648A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19294(P2010−19294)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】