説明

転写装置及び画像形成装置

【課題】直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを用いて記録材上にトナー像を転写する転写装置において、安定して転写ムラのない転写をおこなう。
【解決手段】中間転写ベルト31に当接する2次転写ローラ36と2次転写裏面ローラ33とにより転写ニップを形成し、直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを2次転写バイアス電源39より2次転写裏面ローラを介して転写バイアスを転写ニップに印加する。2次転写裏面ローラに対向して転写ニップに印加される転写バイアスの交流成分の振幅量を検知する振幅量検知手段303と、振幅量検知手段303により検知された交流成分の振幅量と、2次転写バイアス電源が出力するよう設定された交流成分の振幅量とを比較してその差に基づき、2次転写バイアス電源39から出力する交流成分の振幅量をフィードバック制御するバイアス電源制御手段300とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像担持体上のトナー像を記録材に転写する転写装置、及び、これを用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の転写装置として、トナー像担持体に当接するニップ形成部材により転写ニップを形成して記録材を挟み込むとともに、転写バイアス電源より出力した転写バイアスを転写ニップに印加して、トナー像担持体上のトナー像を記録材に転写するものが知られている。その一例として、複数のドラム状感光体上に形成したトナー像を中間転写ベルト上に順次1次転写した重合わせトナー像を記録材に2次転写する2次転写装置が知られている。
【0003】
2次転写装置では、ニップ形成部材として、トナー像担持体としての中間転写ベルト表面に当接する転写ローラと、転写ローラと対向して中間転写ベルト裏面に当接する転写裏面ローラとを設け、転写ローラと転写裏面ローラとの間に中間転写ベルトを挟み込んで転写ニップを形成する。この転写裏面ローラまたは転写ローラの何れか一方を転写バイアス電源に接続して出力された直流電圧からなる転写バイアスを印加し、他方をアースを接続することで、転写裏面ローラと転写ローラとの間にトナー像を転写裏面ローラ側から転写ローラ側に静電移動させる転写電界を形成する。そして、中間転写ベルト上のトナー像に同期させるタイミングで転写ニップ内に送り込んだ記録材に対して、上記転写電界の作用により、中間転写ベルト上のトナー像を2次転写する。
【0004】
このような転写装置では、転写バイアスの電源から出力される電流または電圧が所望の値になるように定電流電源または定電圧電源を用いて、安定した転写特性を得るようにすることが知られている。また、環境、記録材種等に応じて、電源から出力される電流または電圧を可変として、安定した転写特性を得るようにすることも知られている。
【0005】
しかし、かかる構成において、記録材として、表面凹凸に富んだものを用いると、凹部は凸部に比べてトナーが転写しにくく、凹部に良好にトナーが転写されずに、転写ムラが発生するという不具合があった。この不具合は、電源から出力される転写バイアスの電流または電圧を可変としても、解決することは困難であった。
【0006】
特許文献1には、転写バイアスとして直流電圧ではなく、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する転写装置が記載されている。この装置では、転写バイアスの交流成分により転写ニップ内でトナーを振動させて、凹部にも転写させやすくすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを印加する転写装置で、転写ニップ内でトナーを振動させて良好に凹部に転写させるには、交流成分の振幅に適正な範囲がある。振幅が小さすぎると転写ムラを防止できず、振幅が大きすぎると異常放電画像が発生してしまう。このため、電源から出力される交流成分が安定するように電源を制御して、安定して転写ムラの問題を抑制することが望まれる。
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、電源を制御して、交流成分の出力を安定させたとしても、実際に転写ニップ内に流れる交流成分の振幅が不安定になっていることがわかった。これは、交流成分は、直流成分に較べて、電源基板、導電接点部、バイアス印加部材である転写裏面ローラまたは転写ローラの電極芯金等の様々な箇所から近傍の静電容量の大きい部材に漏洩しやすい。特に、転写ニップ内でトナーを振動させて凹部に転写させるような大きい振幅では漏洩も大きくなる。直流成分は、漏洩の可能性のある周辺部の絶縁性を良好にすることで抑制することは可能であるが、上記交流成分で絶縁性を良好にすることのみで漏洩を抑制することは、実用上困難である。このため、転写ニップ内では、トナーを振動させて良好に凹部に転写させる適正な振幅の交流成分が安定して得られなくなり、安定して転写ムラの問題を抑制することができない。
【0009】
なお、トナー像担持体として中間転写ベルトを用いる2次転写装置を用いて、上記問題を説明したが、これに限られるものではない。例えば、トナー像担持体として感光体ベルトを用い、ニップ形成部材である転写裏面ローラまたは転写ローラの何れか一方を転写バイアス電源に接続して出力された直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを印加するものでも、同様の問題が発生する。さらに、感光体ドラムや中間転写ドラムのようなドラム状のトナー像担持体を用い、ドラム表面に当接するニップ形成部材を転写バイアス電源に接続して出力された直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを印加するものでも、同様の問題が発生する。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを用いて記録材上にトナー像を転写する転写装置において、安定して転写ムラのない転写をおこなえる転写装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、トナー像担持体に当接して転写ニップを形成するためのニップ形成部材と、直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを出力する転写バイアス電源とを備え、該トナー像担持体表面と接するように記録材を該転写ニップ内に挟み込むとともに、該転写バイアス電源より該ニップ形成部材を介して転写バイアスを転写ニップに印加することで該トナー像担持体上のトナー像を記録材に転写する転写装置において、上記ニップ形成部材を介して上記転写ニップに印加される転写バイアスの交流成分の振幅量を検知する振幅量検知手段と、該振幅量検知手段により検知された交流成分の振幅量と、上記転写バイアス電源が出力するよう設定された交流成分の振幅量とを比較してその差に基づき、該転写バイアス電源から出力する交流成分の振幅量をフィードバック制御するバイアス電源制御手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の転写装置において、上記振幅量検知手段は上記転写バイアスを印加するニップ形成部材に非接触で対向する検知電極と、該検知電極で検知された電圧より振幅量を検出する検出回路とを有することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の転写装置において、上記振幅量検知手段の検知電極は上記転写バイアスを印加するニップ形成部材に上記転写ニップより上流側で対向することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1の転写装置において、上記転写ニップ位置よりも下流側で上記記録材を除電するために除電電圧を印加する除電電極を備え、上記振幅量検知手段の検知電極として該除電電極を用いることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の転写装置において、上記転写ニップ内に記録材を挾持している間は上記除電電極を除電電圧出力する電源に接続して除電電圧を印加し、それ以外は該除電電極を上記振幅量検知手段の検出回路に接続して振幅量を検知可能とすることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5の何れかの転写装置において、上記トナー像担持体は中間転写ベルトであり、上記ニップ形成部材は該中間転写ベルト表面に接触する転写ローラと、該転写ローラと該中間転写ベルトを挟んで対向する転写裏面ローラからなり、該転写ローラまたは該転写裏面ローラの何れか一方を該転写バイアス電源に接続して出力された転写バイアスを印加し、他方をアースを接続することで、該転写ニップにトナー像を該転写裏面ローラ側から該転写ローラ側に静電移動させる転写電界を形成することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、トナー像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、該トナー像担持体上のトナー像を記録材に転写する転写手段を備えた画像形成装置において、上記転写手段として請求項1乃至6の転写装置を用いることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、振幅量検知手段により検知されたニップ形成部材を介して上記転写ニップに印加される転写バイアスの交流成分の振幅量と、転写バイアス電源から出力するように設定された交流成分の振幅量とを比較してその差に基づき、転写バイアス電源から出力する交流成分の振幅量をフィードバック制御する。これにより、転写バイアス電源から出力された交流成分が漏洩していても、転写バイアス電源側で出力する交流成分の振幅量を制御して、転写ニップ内に流れる交流成分の振幅量が、予め設定された所望の交流成分の振幅量に近づくように補償することができる。よって、転写ニップ内では、トナーを振動させて良好に凹部に転写させる適正な振幅の交流成分が得られるようになり、安定して転写ムラを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直流成分に交流成分を重畳した転写バイアスを用いて記録材上にトナー像を転写する転写装置において、安定して転写ムラのない転写をおこなえるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図2】同プリンタにおけるK用の画像形成ユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図3】同プリンタの2次転写バイアス電源から出力される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形を示す波形図。
【図4】振幅量検知手段とバイアス電源制御手段を設けた転写ユニットの概略構成図。
【図5】振幅量検知手段の説明図。
【図6】振幅数検知手段の検知電極を接触させた場合の説明図。
【図7】振幅数検知手段の検知電極が非接触の場合に転写ニップに流れる転写バイアスの説明図。
【図8】除電電極を用いた振幅量検知手段の説明図。
【図9】除電電極を用いた振幅量検知手段のフロー説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101とを備えている。
【0016】
4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
【0017】
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
【0018】
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
【0019】
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
【0020】
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0021】
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
【0022】
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
【0023】
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
【0024】
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
【0025】
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
【0026】
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
【0027】
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
【0028】
先に示した図1において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
【0029】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0030】
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、2次転写ローラ36、ベルトクリーニング装置37、電位センサ38などを有している。
【0031】
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、厚みは20[μm]〜200[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂等を用いることができる。ポリイミド樹脂は耐久性が高く、光沢度が高くセンサを使いやすいなどのメリットを有する。
【0032】
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0033】
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなる。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0034】
中間転写ベルト31のループ内側に配設された2次転写裏面ローラ33に対向するように、中間転写ベルト31の表面に2次転写ローラ36が当接している。2次転写ローラ35は、2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31の表面と、2次転写ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ36を接地されているのに対して、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39より2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33と2次転写ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側から転写ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。すなわち、図1では、2次転写裏面ローラ33を転写バイアス印加部材とし、2次転写ローラ36をニップ形成部材として用いている。
【0035】
転写ユニット30の下方には、記録材としての記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、2次転写ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
【0036】
2次転写裏面ローラ33は、芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆され田茂のであり、その抵抗Rは10e8[Ω]〜1e10[Ω]である。また、2次転写ローラ36は、芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは10e8[Ω]〜1e10[Ω]である。抵抗の測定方法は、何れも、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、2次転写裏面ローラ33または2次転写ローラ36の心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したものである。
【0037】
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。2次転写バイアス電源39の出力端子は、2次転写裏面ローラ33の芯金に接続されている。また、2次転写36については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、2次転写ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスを2次転写ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合は、2次転写ローラ36を転写バイアス印加部材とし、2次転写裏面ローラ33をニップ形成部材として用いており、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つ2次転写ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスを2次転写ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。
【0038】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0039】
電位センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して対向している。そして、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。
【0040】
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
【0041】
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを、感光体2Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
【0042】
図3は、2次転写バイアス電源39から出力される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形を示す波形図である。同図において、2次転写バイアスは、上述したように、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加される。また、上述したように、2次転写裏面ローラ33の芯金に2次転写バイアスが印加されると、2次転写裏面ローラ33の芯金と、転写ローラ36の芯金との間に、電位差が発生する。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位から、2次転写ローラ36の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、本実施形態のように、トナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、2次転写ローラ36の電位を2次転写裏面ローラ33の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることになる。よって、トナーを2次転写裏面ローラ側から2次転写ローラ36側に静電移動させることになる。
【0043】
同図において、オフセット電圧Voffは、2次転写バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。本実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、本実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加し、且つ2次転写ローラ36の芯金を接地している(0V)。よって、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分(Eoff)と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分(Epp)とから構成される。
【0044】
同図に示すように、本実施形態に係るプリンタでは、オフセット電圧Voffとして、マイナス極性のものを採用している。2次転写裏面ローラ33に印加される2次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側から2次転写ローラ36側に相対的に押し出すことが可能になる。2次転写バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側から2次転写ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、2次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。但し、2次転写バイアスの時間平均値(本例ではオフセット電圧Voffと同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは2次転写裏面ローラ33側から2次転写ローラ36側に静電的に押し出されるのである。なお、同図において、戻り電位ピーク値Vrは、トナーとは逆極性であるプラス側のピーク値を示している。
【0045】
次に、本発明者らが行った実験と、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成とについて説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて各種のプリントテストを行った。中間転写ベルト31の線速であるプロセス線速については、176[mm/s]に設定した。また、2次転写バイアスの交流成分の周波数fについては周波数を250〜1000[Hz]に設定した。また、記録紙Pとしては、特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名) 175kg紙を使用した。レザック66は、紙表面の凹凸の度合いが大きく、紙表面の凹部の深さは最大で100[μm]程度である。Mベタ画像とCベタ画像との重ね合わせによる青ベタ画像を、2次転写バイアス電源39の出力電圧で、オフセット電圧Voffを0[kV]〜−4[kV]、ピークツウピーク電圧Vppを4.0[kV]〜12.0[kV]の間の様々な2次転写バイアスの条件でそれぞれレザック66に出力した。そして、紙の平滑な所および最大凹部に転写された、青ベタ画像のM成分の画像濃度(ID)と、C成分の画像濃度(ID)とを、それぞれX−Rite社製 X−Rite938によって測定した。そして、それら2つの画像濃度の和を、青色の画像濃度として求めた。この結果、2次転写バイアスの交流成分が、周波数を500[Hz]、オフセット電圧Voffが−1[kV]〜−2[kV]、ピークツウピーク電圧Vppが8[kV]の時、平滑部と最大凹部の濃度差が少なく、且つ、濃度を最も高くすることができた。
【0046】
さらに、本実施形態のプリンタでは、このような条件の転写バイアスが転写ニップ内で安定して得られるように、印加される転写バイアスの交流成分の振幅量を検知する振幅量検知手段303を設ける。そして、振幅量検知手段303により検知された交流成分の振幅量と、2次転写バイアス電源39が出力するよう設定された交流成分の振幅量とを比較してその差に基づき、2次転写バイアス電源39から出力する交流成分の振幅量をフィードバック制御するバイアス電源制御手段300を設ける。
【0047】
図4は、振幅量検知手段とバイアス電源制御手段を設けた転写ユニットの概略構成図である。上述のように、2次転写裏面ローラ33は転写バイアス印加部材であり、直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを出力する2次転写バイアス電源39が接続されている。2次転写バイアス電源39は、出力する転写バイアスの直流成分、交流成分の条件をバイアス電源制御手段300よりPWMやデジタル量などで指示されて個別に制御される。転写バイアスの交流成分の振幅量を検知する振幅量検知手段303としては、2次転写裏面ローラ33に対向配置しインピーダンスZinを介して接地した検知電極301と、検知電極301で検知された交流成分の電圧Vから振幅量を検出する検出回路(整流回路)302を備える。
【0048】
図5は、本実施形態の振幅量検知手段の説明図である。検知電極301は、2次転写裏面ローラ33とを予め定められたギャップgを有して対向配置される。このように2次転写裏面ローラ33と検知電極301は、空中ギャップがあるため、2次転写裏面ローラ33の交流成分のみが空中距離分を伝播し、対向する検知電極301に伝播する(図中点線矢印参照)。検知電極301で検知される電圧値Vは、ギャップg[mm]、2次転写裏面ローラ33の径D[mm]、検知電極301の径d[mm]、幅L[mm]、周波数f[Hz]、検知電極301と接地間のインピーダンスZin[Ω]などにより、以下のようにして求められる。
線材−線材間の静電容量C[pF]で導かれ、数式1のようになる。
【0049】
【数1】

ここで、εは真空中の比誘電定数である。また、検知電極301の径dと2次転写裏面ローラ33の径Dとは対称形ではない。ここで、ギャップ部のインピーダンスZairは、数式2のようになる。
【0050】
【数2】

また、上記回路において、検知電極301の入力インピーダンスZinは、数式3のように分圧される。
【0051】
【数3】

このため、Vを測定すれば、2次転写裏面ローラ33表面の交流成分が得られる。また、得られたVを整流する検出回路(整流回路)302を設ける。検出回路(整流回路)302は、検知電極301により2次転写裏面ローラ33表面の交流成分は整流し、直流成分に変えて、バイアス電源制御手段300に入力する。検出回路(整流回路)302では、図5のように適当な時定数のフィルターを作ることで、簡単に直流化が可能になる。
【0052】
具体的には、転写バイアス電圧の交流成分は、上述の実験で求められた周波数を500[Hz]、ピークツウピーク電圧Vppが8[kV]まで、対応しようとすると、ギャップgが小さすぎて2次転写裏面ローラ33からリークしないように、ギャップgを6mm以上とることが好ましい。これは、交流1kVrms当り1mmという経験的な交流リーク則から決定される。ここでは、ギャップgは20[mm]としている。また、2次転写裏面ローラ33の径Dは20〜30[mm]、検知電極301の径dは3〜10[mm]、幅Lは330[mm]、検知電極301と接地間の入力インピーダンスZinは1〜1000[MΩ]とする。このような構成の振幅量検知手段303により、2次転写裏面ローラ33表面の交流成分を検知することができる。なお、このような回路では、振幅量検知手段303に流れる交流成分の電流量は10〜50[μA]であり、転写ニップ内に流れる交流成分の電流量は5[mA]程度である。
【0053】
バイアス電源制御手段300は、振幅量検知手段により検知された転写バイアス印加部材から印加される転写バイアスの交流成分の振幅量と、2次転写バイアス電源39から出力するように設定された交流成分の振幅量とを比較してその差に基づき、2次転写バイアス電源39から出力する交流成分の振幅量をフィードバック制御する。これにより、バイアス電源から出力された交流成分が漏洩していても、2次転写バイアス電源39側で出力する交流成分の振幅量を制御して、転写ニップ内に流れる交流成分の振幅量が、予め設定された所望の交流成分の振幅数に近づくように補償することができる。よって、転写ニップ内では、トナーを振動させて良好に凹部に転写させる適正な振幅の交流成分が得られるようになり、安定して転写ムラが抑制できる。
【0054】
上述したように、図5の構成では、検知電極301は、ギャップgは20[mm]程度の間隙を有して2次転写裏面ローラ33表面に対向しているため、転写バイアスのうちの直流成分に対しての良好な空間絶縁性を有しており、直流成分を検知することはできない。このため、振幅数検知手段には、直流成分が雑音として混入することがなくなり、交流成分の計測が安定し、検知精度向上が向上する。なお、転写バイアスの直流成分は、2次転写バイアス電源39内で出力を平均化することなどにより、容易に測定できる。ここでは、直流成分として数10μA程度が流れている。
【0055】
図6は、振幅数検知手段の検知電極を接触させた場合の説明図である。図6のように、検知電極304を2次転写裏面ローラ33表面に接触させると、直流成分などの精緻な測定が可能にはなるが、直流成分のノイズなども回路に入力されるため、交流成分以外をフィルターなどにより取り除かなくてはならない。これはハードウェアとしてはコスト高となるため、上述のように直流成分は別の電源側の計測回路で測定することが好ましい。このようなことから、図7に示すように、振幅量検知手段303の検知電極301を非接触で設け、転写ニップに安定して直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを流すことが好ましい。
【0056】
また、振幅量検知手段303の検知電極301は、バイアス印加部材である2次転写裏面ローラ33の転写ニップよりも上流側で対向することが望ましい。これは、転写ニップ下流側では、記録紙Pの分離時には放電ノイズが恒常的に発生する。この放電ノイズは、高周波ノイズを多く含むため、振幅量検知手段303の計測ノイズとなる。このため、検知電極301を転写ニップよりも上流側に配置することにより、計測を安定させることができる。
【0057】
図8は、振幅量検知手段の他の例の説明図である。図8に示すように、転写ニップよりも下流側で記録紙Pを除電するために除電電圧を印加する除電電極305を備えた構成のものでは、除電電極305を振幅量検知手段の検知電極として用いることができる。除電電極305は、除電バイアス電源310に接続され、転写ニップ通過後の記録紙Pに対して非接触で除電バイアスを印加することで、中間転写ベルト31から分離しやすくする。この間は、除電電極305を振幅量検知手段の検知電極として用いることはできない。除電電極305の切替え回路311を設け、記録紙Pの通過時は除電バイアス電源310に接続し、それ以外は振幅量検知手段303の検出回路302に接続するよう切替る。これにより、記録材Pに対しては除電電極305から除電電圧を印加し、それ以外は除電電極305で転写ニップ近傍の交流成分の振幅量を検知可能とする。このように、検知電極として、除電電極305を用いることで、別途検知電極を設けることなく、振幅量を検知でき、省スペース化が図れる。なお、振幅量検知手段として計測ノイズを少なくするためには、記録紙Pの分離時の検知は避けることが好ましい。
【0058】
図9は、図8の振幅量検知手段を用いたときのフローの説明図である。画像形成プロセスが始まった直後、転写紙の通過が無いとき、切替回路311により除電電極305を振幅量検知手段303の検出回路302側に接続し、転写バイアスの交流成分の振幅量を検知する。検知された値を、バイアス電源制御手段300に入力して、2次転写バイアス電源39から出力するように設定された交流成分の振幅量とを比較してその差に基づき、2次転写バイアス電源39から出力する交流成分の振幅量をフィードバック制御する。これを差が、決められた範囲内になるまで、繰り返す。そして、転写ニップ内に流れる交流成分の振幅量が、予め設定された所望の交流成分の振幅数に近づくように補償する。転写時には,この補償された電圧を2次転写バイアス電源39から出力するようにする。記録紙Pの進入時には、切替回路311により、除電電極305に除電バイアスを作動させる。この時、除電バイアスは転写紙の分離動作のために使用される。具体的には、転写紙通過時は3KVppを与える。このように、画像形成プロセスが始まった直後、紙の通過が無く、かつ、除電バイアスがオフされている時に、AC成分の検出を行うようにすることで、検知の精度を上げ、フィードバック制御の精度を上げることができる。
【0059】
以上、本実施形態では、トナー像担持体として中間転写ベルト31を用いた2次転写装置を用いて、本発明を説明したが、これに限られるものではない。例えば、トナー像担持体として感光体ベルトを用い、ニップ形成部材である転写裏面ローラまたは転写ローラの何れか一方を転写バイアス電源に接続して出力された直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを印加するものでも、適用可能であり、同様の効果が得られる。さらに、感光体ドラムや中間転写ドラムのようなドラム状のトナー像担持体を用い、ドラム表面に当接するニップ形成部材を転写バイアス電源に接続して出力された直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを印加するものでも、適用可能であり、同様の効果が得られる。
【0060】
以上、本実施形態によれば、トナー像担持体としての中間転写ベルト31に当接して転写ニップを形成するためのニップ形成部材としての2次転写ローラ36と2次転写裏面ローラ33と、直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを出力する2次転写バイアス電源39とを備えた2次転写装置を有する。この2次転写装置で、中間転写ベルト31表面と接するように記録材Pを転写ニップ内に挟み込むとともに、2次転写バイアス電源39より2次転写裏面ローラ33を介して転写バイアスを転写ニップに印加することで中間転写ベルト31上のトナー像を記録紙Pに転写する。さらに、2次転写裏面ローラ33を介して転写ニップに印加される転写バイアスの交流成分の振幅量を検知する振幅量検知手段303と、振幅量検知手段303により検知された交流成分の振幅量と、2次転写バイアス電源39が出力するよう設定された交流成分の振幅量とを比較してその差に基づき、2次転写バイアス電源39から出力する交流成分の振幅量をフィードバック制御するバイアス電源制御手段300とを設ける。これにより、2次転写バイアス電源39から出力された交流成分が漏洩していても、転写バイアス電源側で出力する交流成分の振幅量を制御して、転写ニップ内に流れる交流成分の振幅量が、予め設定された所望の交流成分の振幅量に近づくように補償することができる。よって、転写ニップ内では、トナーを振動させて良好に凹部に転写させる適正な振幅の交流成分が得られるようになり、安定して転写ムラを抑制できる。
また、本実施形態によれば、振幅量検知手段303は2次転写裏面ローラ33に非接触で対向する検知電極301と、検知電極301で検知された電圧より振幅量を検出する検出回路302とを有する。検知電極301は、2次転写裏面ローラ33とを予め定められたギャップgを有して対向配置される。このように2次転写裏面ローラ33と検知電極301は、空中ギャップがあるため、2次転写裏面ローラ33の交流成分のみが空中距離分を伝播し、対向する検知電極301に伝播する。伝播した交流電圧を検出回路302で直流化して、バイアス電源制御手段300に入力することで、上記制御が行える。また、検知電極301は、ギャップgを有して2次転写裏面ローラ33表面に対向しているため、転写バイアスのうちの直流成分に対しての良好な空間絶縁性を有しており、直流成分を検知することはできない。このため、振幅数検知手段には、直流成分が雑音として混入することがなくなり、交流成分の計測が安定し、検知精度向上が向上する。
また、本実施形態によれば、検知電極301は2次転写裏面ローラ33の転写ニップよりも上流側で対向する。これは、転写ニップ下流側では、記録紙Pの分離時には放電ノイズが恒常的に発生する。この放電ノイズは、高周波ノイズを多く含むため、振幅量検知手段303の計測ノイズとなる。このため、検知電極301を転写ニップよりも上流側に配置することにより、計測を安定させることができる。
また、本実施形態によれば、転写ニップ位置よりも下流側で記録紙Pを除電するために除電電圧を印加する除電電極305を備え、振幅量検知手段の検知電極として除電電極305を用いる。別途検知電極を設けることなく、振幅量を検知でき、転写ニップ近傍で振幅量検知手段の省スペース化が図れる。
また、本実施形態によれば、振幅量検知手段の検知電極として除電電極305を用いる構成において、転写ニップ内に記録紙Pを挾持している間は除電電極305を除電電圧出力する電源310に接続して除電電圧を印加し、それ以外は除電電極305を振幅量検知手段303の検出回路302に接続して振幅量を検知可能とする。
また、本実施形態によれば、中間転写ベルトを用いた2次転写装置に採用することで、重ね合わせトナー像をムラ無く安定して凹凸紙にも転写することができる。
【符号の説明】
【0061】
1Y,M,C,K 画像形成ユニット
2Y,M,C,K 感光体
3 ドラムクリーニング装置
4 クリーニングブラシローラ
5 クリーニングブレード
6 帯電装置
7 帯電ローラ
8 現像装置
9 現像ロール
30 転写ユニット
31 中間転写ベルト
32 駆動ローラ
33 2次転写裏面ローラ
34 クリーニングバックアップローラ
35Y,M,C,K 一次転写ローラ
36 2次転写ローラ
39 2次転写バイアス電源
90 定着装置
100 給紙カセット
300 バイアス電源制御手段
301 検知電極(非接触)
302 検出回路
303 振幅量検知手段
304 検知電極(接触)
305 除電電極
310 除電バイアス電源
311 切替回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2006−267486号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像担持体に当接して転写ニップを形成するためのニップ形成部材と、直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスを出力する転写バイアス電源とを備え、該トナー像担持体表面と接するように記録材を該転写ニップ内に挟み込むとともに、該転写バイアス電源より該ニップ形成部材を介して転写バイアスを転写ニップに印加することで該トナー像担持体上のトナー像を記録材に転写する転写装置において、
上記ニップ形成部材を介して上記転写ニップに印加される転写バイアスの交流成分の振幅量を検知する振幅量検知手段と、該振幅量検知手段により検知された交流成分の振幅量と、上記転写バイアス電源が出力するよう設定された交流成分の振幅量とを比較してその差に基づき、該転写バイアス電源から出力する交流成分の振幅量をフィードバック制御するバイアス電源制御手段とを設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1の転写装置において、上記振幅量検知手段は上記転写バイアスを印加するニップ形成部材に非接触で対向する検知電極と、該検知電極で検知された電圧より振幅量を検出する検出回路とを有することを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2の転写装置において、上記振幅量検知手段の検知電極は上記転写バイアスを印加するニップ形成部材に上記転写ニップより上流側で対向することを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1の転写装置において、上記転写ニップ位置よりも下流側で上記記録材を除電するために除電電圧を印加する除電電極を備え、上記振幅量検知手段の検知電極として該除電電極を用いることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項4の転写装置において、上記転写ニップ内に記録材を挾持している間は上記除電電極を除電電圧出力する電源に接続して除電電圧を印加し、それ以外は該除電電極を上記振幅量検知手段の検出回路に接続して振幅量を検知可能とすることを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5の何れかの転写装置において、上記トナー像担持体は中間転写ベルトであり、上記ニップ形成部材は該中間転写ベルト表面に接触する転写ローラと、該転写ローラと該中間転写ベルトを挟んで対向する転写裏面ローラからなり、該転写ローラまたは該転写裏面ローラの何れか一方を該転写バイアス電源に接続して出力された転写バイアスを印加し、他方をアースを接続することで、該転写ニップにトナー像を該転写裏面ローラ側から該転写ローラ側に静電移動させる転写電界を形成することを特徴とする転写装置。
【請求項7】
トナー像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、該トナー像担持体上のトナー像を記録材に転写する転写手段を備えた画像形成装置において、上記転写手段として請求項1乃至6の転写装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−118401(P2012−118401A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269657(P2010−269657)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】