説明

転圧車両におけるボンネットの開閉構造

【課題】簡易な構造で製作コストが抑えられ、ボンネット内に搭載された装置のメンテナンス作業等を容易に行い得る転圧車両におけるボンネットの開閉構造を提供する。
【解決手段】車体連結軸12に連結される第1連結部材13と、ボンネット連結軸14に連結され、かつ第1連結部材13と連結される第2連結部材15と、を備え、閉状態にあるボンネット7を第1の開放固定位置P1まで開く過程においては、車体連結軸12は基点位置Q1に位置し、第1の開放固定位置P1からさらにボンネット7を開く過程においては、車体連結軸12が直線移動して所定の移動位置Q2で位置決めされることにより、ボンネット7が第2の開放固定位置P2で維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧ローラ等、地盤や路面の締固め施工に使用される転圧車両に関するものであり、具体的にはそのボンネットの開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6(a)は鉄輪タイプの転圧ローラの一例を示す側面図である。転圧ローラRは、前部ロール1を軸支する前部車体3と、後部ロール2を軸支する後部車体4とが連結部5によりアーティキュレート式に接続されている。前部車体3の上部には運転席6が形成されている。後部車体4は主にエンジンルームを構成する筐体として形成され、後部車体4の内部には、走行駆動源であるエンジンE、このエンジンEにより駆動され、前部ロール1および後部ロール2に内装された油圧モータ(図示せず)に圧油を供給するための油圧ポンプ(図示せず)、圧油の貯留タンクT、バッテリBなどが搭載されている。後部車体4の上部には、回動開閉式のボンネット7が取り付けられており、所定の位置で開いた状態が維持されるようになっている(その位置を以降、開放固定位置という)。
【0003】
エンジンEを始業点検する場合などには、図6(b)に示すように、作業者がボンネット7の先端部を持って開放固定位置まで上方に向けて回動させる。ここで、転圧ローラRなどの転圧車両は一般に大型の車両であることから、ボンネット7の地上からの取り付け位置も高くなりやすい。したがって、使い勝手を考慮してボンネット7の開放固定位置を作業者の手が届く範囲に限定した場合には、閉時のボンネット7の位置がもともと高いことから、開いた際の開口面積が小さくなりやすいという問題がある。
【0004】
従来では、エンジンEの始業点検など比較的軽度の作業については、この限られた開口面積でもさほど問題とはならなかったものの、バッテリBの交換作業などある程度の労力を伴うメンテナンス作業ではボンネット7が邪魔になりやすい傾向にあった。また、後部車体4内に搭載される各装置は、自ずと、限られた開口面積でもメンテナンス作業を行えるということを条件にレイアウトされることとなり、各装置のレイアウト設計の制約を受けやすいという問題もある。
【0005】
一方、従来の転圧車両には、開口面積を大きく確保するため、ボンネットを上方に回動させるのではなく、横にスライド開閉させるタイプのものが存在する。また、特許文献1には、メンテナンス作業の効率化を図るため、回動開閉するボンネットの上面に補助点検用扉を別途に設ける技術が開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第2567711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者のボンネットを横にスライド開閉させる構造の場合、開閉の機構が複雑になりやすいため、組み付け性が悪く、製作コストが高くなりやすいという問題がある。また、後者の補助点検用扉をボンネットの上面に設ける技術においては、作業者が補助点検用扉に臨めるように昇降用のステップを車体に取り付ける必要があるため、やはり製作コストが高くなりやすいという問題があり、また、作業者はこのステップに足を掛けた状態でメンテナンス作業を行う必要があるため、作業姿勢が不安定になりやすいという問題もある。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するために創案されたものであり、簡易な構造で製作コストが抑えられ、ボンネット内に搭載された装置のメンテナンス作業等を容易に行い得る転圧車両におけるボンネットの開閉構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、転圧車両において支軸回りに回動するボンネットの開閉構造に関し、車体側に設けられた車体連結軸回りに一端側が回転可能に連結される第1連結部材と、ボンネット側に設けられたボンネット連結軸回りに一端側が回転可能に連結され、他端側がリンク連結軸を介して前記第1連結部材の他端側と相対回転可能に連結される第2連結部材と、を備え、両連結部材の内のどちらか一方に、他方の連結部材に当接可能なストッパーが形成され、ボンネットの開時において、車体連結軸に対するボンネット連結軸の移動位置が限界点に達した時点でボンネットから手を離すと、両連結部材の自重によりリンク連結軸が一方向に変位し、前記ストッパーが他方の連結部材に当接することにより両連結部材の回転が規制され、ボンネットの開放固定位置が維持されるボンネットの開閉構造であって、前記車体連結軸を、そのボンネットの閉時における位置を基点位置として直線移動可能に構成するとともに、この車体連結軸を所定の移動位置において位置決め固定する位置決め手段を備える構成とし、閉状態にあるボンネットを第1の開放固定位置まで開く過程においては、前記車体連結軸は基点位置に位置し、第1の開放固定位置からさらにボンネットを開く過程においては、前記車体連結軸が直線移動して所定の移動位置で前記位置決め手段によって位置決めされることにより、ボンネットが第1の開放固定位置よりも開放度の大きい第2の開放固定位置で維持されることを特徴とする転圧車両におけるボンネットの開閉構造とした。
【0009】
この開閉構造によれば、例えば第1の開放固定位置を、地上に立った作業者の手がボンネットの先端に届く範囲内で設定し、第2の開放固定位置を、手の届かない範囲、すなわち大きな開口面積となる位置で設定できる。したがって、エンジンの始業点検等、日常的な作業については、ボンネットを第1の開放固定位置にして行い、バッテリの交換等、頻度の低いメンテナンス作業については、ボンネットを第2の開放固定位置にして行えばよい。バッテリの交換時等にあっても、ボンネットは大きく開いているので作業の邪魔になることはない。また、ボンネットが大きく開くため、メンテナンス作業を考慮した内部装置のレイアウト設計も制約を受けにくくなる。さらに、簡易な構造でボンネットの開放固定位置を2段階に設定できるため、開閉機構の製作コストが抑えられる。
【0010】
また、本発明は、前記位置決め手段は、係脱自在な係合ピンを介して前記第1連結部材が車体側に固定される構成としたことを特徴とする転圧車両におけるボンネットの開閉構造とした。
【0011】
この開閉構造によれば、簡易な構造で、操作性に優れた位置決め手段を実現できる。
【0012】
また、本発明は、車体側に固定され、前記車体連結軸の直線移動をガイドする長孔が形成されるとともに、前記係合ピンが係合する係合孔が形成された支持ブラケットを設けたことを特徴とする転圧車両におけるボンネットの開閉構造とした。
【0013】
この開閉構造によれば、部品点数が少なく、組み付け性に優れたボンネットの開閉構造となる。また、車体連結軸が長孔の端部に位置したときに、例えば第1連結部材側に設けた係合ピン用の孔と支持ブラケットに形成した係合孔とが重なり合うように構成することで、係合ピンを容易にこれらの孔に挿し込むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構造であって、製作コストが抑えられ、ボンネット内に搭載された装置のメンテナンス作業等を容易に行い得るボンネットの開閉構造となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図6に示した転圧ローラRのボンネット7に本発明を適用した場合について説明する。図1、図2はそれぞれ後部車体4の側面説明図、外観斜視図である。後部車体4は前記したようにエンジンルームを構成する筐体として形成され、その内部には、図2に示すように、エンジンE、油圧モータ(図示せず)の作動油となる圧油の貯留タンクT、バッテリB、エアクリーナF、ラジエータRA等が搭載されている。後部車体4の上部には、水平方向(車幅方向)を軸方向とする支軸11(図1)回りに回動自在となるようにボンネット7が取り付けられている。ボンネット7を開いた際の作業者に近い側にエンジンE、ラジエータRAなどの点検頻度の高い装置がレイアウトされ、作業者から遠い側(支軸11に近い側)に貯留タンクT、バッテリBなどの点検頻度の低い装置がレイアウトされている。なお、ボンネット7には、持ち上げて開く際の労力を軽減させるために適宜にガスダンパー(図示せず)が取り付けられる。
【0016】
後部車体4における一方の側板4aの内側上部近傍には、前記支軸11(図1)の軸方向と平行な車体連結軸12が設けられており、この車体連結軸12には、第1連結部材13の一端側が車体連結軸12回りに回転可能に連結されている。ボンネット7における一方の側板7aの内側には図示しないブラケットが取り付けられており、このブラケットにおいて、支軸11(図1)の軸方向と平行なボンネット連結軸14が設けられている。このボンネット連結軸14には、第2連結部材15の一端側がボンネット連結軸14回りに回転可能に連結されている。第2連結部材15の他端側は、支軸11の軸方向と平行なリンク連結軸16を介して、第1連結部材13の他端側と相対回転可能に連結される。
【0017】
図3は第1連結部材13や第2連結部材15周りの構造を示す分解斜視図である。第1連結部材13、第2連結部材15は共に、直線状に延設された平板部材からなる。第1連結部材13の他端側は屈曲形成されており、その屈曲部13aにおける第2連結部材15に対向する側面側には、第2連結部材15の縁部に当接可能となる円柱状のストッパー17が形成されている。このストッパー17の作用は後にも詳述するが、作業者がボンネット7(図1)を所定位置まで開いて手を離すと、第1連結部材13や第2連結部材15の自重によりリンク連結軸16が一方向に変位し、ストッパー17が第2連結部材15の上縁部に当接することにより、ボンネット7(図1)の開放固定位置が維持されるようになっている。
【0018】
本発明の主な特徴部は、図1に示すように、車体連結軸12を、そのボンネット7の閉時における位置を基点位置Q1として直線移動可能に構成するとともに、この車体連結軸12を所定の移動位置Q2において位置決め固定する位置決め手段18を備える構成とし、閉状態にあるボンネット7を第1の開放固定位置P1まで開く過程においては、車体連結軸12は基点位置Q1に位置し、第1の開放固定位置P1からさらにボンネット7を開く過程においては、車体連結軸12が直線移動して所定の移動位置Q2で位置決め手段18によって位置決めされることにより、ボンネット7が第1の開放固定位置P1よりも開放度の大きい第2の開放固定位置P2で維持されるようにしたことにある。
【0019】
本実施形態では、位置決め手段18として、係脱自在な係合ピン19を介して第1連結部材13を後部車体4に対して固定する構成としている。また、図3に示すように、車体連結軸12周りの構造として支持ブラケット20を設けている。この支持ブラケット20には、車体連結軸12の直線移動をガイドする長孔20aが形成されるとともに、前記係合ピン19が係合する係合孔20bが形成されている。支持ブラケット20は後部車体4(図1)に固定される部材であり、本実施形態では側板4a側に固定されている。具体的には、支持ブラケット20は断面L字形状を呈した長尺部材であり、車両前後方向に沿ってその一面側の端部が側板4a側に溶接等により固定され、立設した他面側に図3に示した長孔20aや係合孔20bが形成されている。
【0020】
図3において、第1連結部材13には係合ピン19が係合する係合孔13bが穿設されている。また、第1連結部材13の一端側には車体連結軸用孔13cが穿設されており、この車体連結軸用孔13cと支持ブラケット20の長孔20aとを重ね合わせ、ボルト21を挿通して抜け止めのナット22を取り付けた構成としている。つまり、ボルト21は、長孔20a内を直線移動する車体連結軸12として構成される。ナット22は例えば緩み止めナットが使用される。係合ピン19は例えば係合孔13b、係合孔20bに挿通された後、抜け止めピン19aがピン孔19bに差し込まれる。抜け止めピン19aは公知のスナップピンなどである。また、支持ブラケット20には基点位置Q1(図1)を中心とした円弧状の長孔20cが形成されている。この長孔20cにも前記係合ピン19が差し込まれるようになっている。
【0021】
以上のように、車体連結軸12の移動を長孔20aにガイドさせる構造とすれば、係合ピン19を係合孔20bや長孔20cに挿し込みやすくなる。つまり、車体連結軸12を長孔20aにガイドさせない場合を想定すると、係合ピン19を抜いた場合、第1連結部材13と第2連結部材15とが上下方向に全く拘束を受けなくなるため、再度係合ピン19を挿し込もうとしたときには、第1連結部材13の係合孔13bを係合孔20bや長孔20cに重ね合わせることが困難となるのに対し、本実施形態のように車体連結軸12の移動を長孔20aにガイドさせる構造においては、車体連結軸12が長孔20aのいずれか一方の端部(基点位置Q1、所定の移動位置Q2)に位置しさえすれば、その位置は第1連結部材13の係合孔13bが係合孔20bや長孔20cに重なり合う位置であるから、作業員は何ら神経を使うことなく係合ピン19を容易に挿し込むことができる。
【0022】
本発明の作用について図4および図5を参照して説明する。図4は閉状態にあるボンネット7を第1の開放固定位置P1まで開く過程を示す側面作用説明図、図5はボンネット7をさらに第2の開放固定位置P2まで開く過程を示す側面作用説明図である。
【0023】
図4において(a)はボンネット7が閉まった状態を示している。このとき、車体連結軸12は長孔20aの一端に位置している。この位置が基点位置Q1である。係合ピン19は、第1連結部材13の係合孔13bと支持ブラケット20の長孔20cとに係合した状態となっている。
【0024】
作業者がボンネット7を開いていく過程では、(b)に示すように、ボンネット連結軸14は支軸11回りに回転移動し、リンク連結軸16は基点位置Q1に位置した車体連結軸12回りに回転移動する。係合ピン19の車体連結軸12回りの回転移動は、円弧状に形成された長孔20cにより許容されている。ボンネット7をさらに開いていくと、(c)に示すように、第1連結部材13と第2連結部材15とが直線状に位置する。この状態は、「車体連結軸12に対するボンネット連結軸14の移動位置が限界点に達した状態」である。この(c)の状態では、ストッパー17は未だ第2連結部材15に接触していない。
【0025】
(c)の状態において作業者がボンネット7から手を離すと、(d)に示すように、第1連結部材13および第2連結部材15の自重により、リンク連結軸16が、車体連結軸12とボンネット連結軸14とを結ぶ線分に対して一方向(本実施形態では下方向)に若干変位し、ストッパー17が第2連結部材15に当接する。これにより第1連結部材13および第2連結部材15の回転が規制され、ボンネット7の第1の開放固定位置P1が維持される。
【0026】
図1に示すように、第1の開放固定位置P1は、例えば地上に立った作業者がボンネット7の先端周りに手が届く範囲で設定される。エンジンEの始業点検等、日常的な作業については、ボンネット7がこの第1の開放固定位置P1にある状態で行われる。ボンネット7を閉じる際には、図4において、作業者はボンネット7の先端を一方の手で持ち上げて(c)の状態を維持させ、他方の手で第1連結部材13或いは第2連結部材15を上方に押すことによって、リンク連結軸16を、車体連結軸12とボンネット連結軸14とを結ぶ線分に対して他方向(本実施形態では上方向)に若干変位させる。これにより、(b)の状態を介してボンネット7が閉じることとなる。
【0027】
なお、図4の(a)〜(d)の全過程において車体連結軸12を基点位置Q1に位置させるに当たっては、係合ピン19の存否は問われない。なぜなら、係合ピン19が無い場合であっても、第1連結部材13の自重等によって車体連結軸12を長孔20aの一端側(本実施形態では前端側)の内周壁に押圧させておくことができるからである。しかし、がたつきの少ないスムーズな開閉性という点を考慮すると、本実施形態のように、係合ピン19を、第1連結部材13の係合孔13bと支持ブラケット20の円弧状の長孔20cとに係合させることにより、車体連結軸12を基点位置Q1に位置決めさせる構成とすることが望ましい。また、本実施形態において、この係合ピン19は第2の開放固定位置P2(図1)での位置決めとして使用される部材であるから、ボンネット7が閉まっている際の収納場所という観点からも、第1連結部材13の係合孔13bと支持ブラケット20の円弧状の長孔20cとに係合させておくことが望ましい。
【0028】
次にボンネット7をさらに第2の開放固定位置P2まで開く場合について説明する。図4(b)〜(d)のいずれかの状態で、第1連結部材13の係合孔13bと支持ブラケット20の長孔20cとに係合している係合ピン19を外したうえで、ボンネット7を図4(c)の状態からさらに持ち上げていくと、図5(a)に示すように、ボンネット連結軸14の回転移動に伴い、基点位置Q1(図4)にあった車体連結軸12が支軸11側に引き寄せられるかたちで長孔20aにガイドされて後方に直線移動する。
【0029】
そして、図5(b)に示すように、車体連結軸12が長孔20aの他端側(本実施形態では後端側)に達した時点で、作業者は係合ピン19を第1連結部材13の係合孔13bおよび支持ブラケット20の係合孔20bに係合させる。これにより、車体連結軸12は所定の移動位置Q2に位置決めされる。なお、図5(a)、(b)の状態は、第1連結部材13と第2連結部材15とが直線状に位置した状態であり、「車体連結軸12に対するボンネット連結軸14の移動位置が限界点に達した状態」である。
【0030】
図5(b)の状態では、ストッパー17は第2連結部材15に接触しておらず、図5(b)の状態において作業者がボンネット7から手を離すと、図5(c)に示すように、第1連結部材13および第2連結部材15の自重により、リンク連結軸16が、車体連結軸12とボンネット連結軸14とを結ぶ線分に対して一方向(本実施形態では後方向)に若干変位し、ストッパー17が第2連結部材15に当接する。これにより第1連結部材13および第2連結部材15の回転が規制され、ボンネット7の第2の開放固定位置P2が維持される。
【0031】
本実施形態においては、開口面積を大きくとるべく、第2の開放固定位置P2は、図1から判るように基本的に地上に立った作業者からはボンネット7の先端周りに手が届かない範囲に設定されており、作業者が連結部5(図6)や専用台等に載ることで手がボンネット7の先端周りに届く位置となっている。貯留タンクTの油補充やバッテリBの交換等、頻度の低いメンテナンス作業については、ボンネット7がこの第2の開放固定位置P2にある状態で行われる。
【0032】
ボンネット7を閉じる際には、図5において、作業者は係合ピン19を外して車体連結軸12の位置決めを解き、ボンネット7の先端を一方の手で少し持ち上げて図5(b)の状態を維持させ、他方の手で第1連結部材13或いは第2連結部材15を前方に押すことによって、リンク連結軸16を、車体連結軸12とボンネット連結軸14とを結ぶ線分に対して他方向(本実施形態では前方向)に若干変位させる。これにより、図5(a)→図4(c)→図4(b)→図4(a)の状態を経由してボンネット7が閉じる。なお、図4(c)→図4(b)→図4(a)の過程の途中で、作業者は係合ピン19を第1連結部材13の係合孔13bと支持ブラケット20の円弧状の長孔20cとに係合させる。
【0033】
以上のように、後部車体4側に設けられた車体連結軸12回りに一端側が回転可能に連結される第1連結部材13と、ボンネット7側に設けられたボンネット連結軸14回りに一端側が回転可能に連結され、他端側がリンク連結軸16を介して第1連結部材13の他端側と相対回転可能に連結される第2連結部材15と、を備え、第1連結部材13、第2連結部材15のどちらか一方に、他方の連結部材に当接可能なストッパー17が形成され、ボンネット7の開時において、車体連結軸12に対するボンネット連結軸14の移動位置が限界点に達した時点でボンネット7から手を離すと、第1連結部材13、第2連結部材15の自重によりリンク連結軸16が一方向に変位し、ストッパー17が他方の連結部材に当接することにより第1連結部材13、第2連結部材15の回転が規制され、ボンネット7の開放固定位置が維持される構造としたうえで、車体連結軸12を、そのボンネット7の閉時における位置を基点位置Q1として直線移動可能に構成するとともに、この車体連結軸12を所定の移動位置Q2において位置決め固定する位置決め手段18を備える構成とし、閉状態にあるボンネット7を第1の開放固定位置P1まで開く過程においては、車体連結軸12は基点位置Q1に位置し、第1の開放固定位置P1からさらにボンネット7を開く過程においては、車体連結軸12が直線移動して所定の移動位置Q2で位置決め手段18によって位置決めされることにより、ボンネット7が第1の開放固定位置P1よりも開放度の大きい第2の開放固定位置P2で維持される構成とすれば、次のような効果が奏される。
【0034】
(1)ボンネット7の開放固定位置を2段階に設定したことで、例えば第1の開放固定位置P1を、地上に立った作業者の手がボンネット7の先端に届く範囲内で設定し、第2の開放固定位置P2を、手の届かない範囲、すなわち大きな開口面積となる位置で設定できる。したがって、エンジンEの始業点検等、日常的な作業については、ボンネット7を第1の開放固定位置P1にして行い、貯留タンクTの油補充やバッテリBの交換等、頻度の低いメンテナンス作業については、ボンネット7を第2の開放固定位置P2にして行えばよい。バッテリBの交換時等にあっては、ボンネット7は大きく開いているので作業の邪魔になることはない。また、ボンネット7が大きく開くため、メンテナンス作業を考慮した内部装置のレイアウト設計も制約を受けにくくなる。日常的な作業については、容易に手が届く第1の開放固定位置P1にて行えばよいので、ボンネット7の開閉操作の使い勝手が悪くなることもない。
【0035】
(2)車体連結軸12を、そのボンネット7の閉時における位置を基点位置Q1として直線移動可能に構成するとともに、この車体連結軸12を所定の移動位置Q2において位置決め固定する位置決め手段18を備える構成としたことにより、簡易な構造でボンネット7の開放固定位置を2段階に設定でき、開閉機構の製作コストが抑えられる。
【0036】
(3)ボンネット7側と後部車体4側とを連結する部材を単体から構成するのではなく、第1連結部材13と第2連結部材15とに分割して設けたことにより、車体連結軸12の直線移動ストロークを短くできる。したがって、限られた車体内部のスペースにも容易に対応できる。また、ストッパー17を設けたことで、第1連結部材13と第2連結部材15との互いの相対回転を容易に規制できる。
【0037】
さらに、本実施形態のように、位置決め手段18として、係脱自在な係合ピン19を介して第1連結部材13を後部車体4側に固定する構成とすれば、簡易な構造で、操作性に優れた位置決め手段18となる。
【0038】
また、後部車体4側に固定され、車体連結軸12の直線移動をガイドする長孔20aが形成されるとともに、係合ピン19が係合する係合孔20bが形成された支持ブラケット20を設ける構成とすれば、部品点数が少なく、より一層簡易なボンネット7の開閉構造となる。
【0039】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。ボンネット7の開放固定位置は3段階以上に設定することも可能であり、この場合においても、その内の2段階が本発明の構成を満たすものであれば、本発明に包含される。また、係合ピン19の構造についても図面に記載したものに限定されるものではない。また、ストッパー17は第2連結部材15側に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】転圧ローラの後部車体の側面説明図である。
【図2】転圧ローラの後部車体の外観斜視図である。
【図3】第1連結部材、第2連結部材周りの構造を示す分解斜視図である。
【図4】閉状態にあるボンネットを第1の開放固定位置まで開く過程を示す側面作用説明図である。
【図5】ボンネットを第2の開放固定位置まで開く過程を示す側面作用説明図である。
【図6】転圧ローラの一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0041】
4 後部車体(車体)
7 ボンネット
11 支軸
12 車体連結軸
13 第1連結部材
14 ボンネット連結軸
15 第2連結部材
16 リンク連結軸
17 ストッパー
18 位置決め手段
19 係合ピン
20 支持ブラケット
20a 長孔
20b 係合孔
R 転圧ローラ(転圧車両)
P1 第1の開放固定位置
P2 第2の開放固定位置
Q1 基点位置
Q2 所定の移動位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転圧車両において支軸回りに回動するボンネットの開閉構造に関し、
車体側に設けられた車体連結軸回りに一端側が回転可能に連結される第1連結部材と、ボンネット側に設けられたボンネット連結軸回りに一端側が回転可能に連結され、他端側がリンク連結軸を介して前記第1連結部材の他端側と相対回転可能に連結される第2連結部材と、を備え、両連結部材の内のどちらか一方に、他方の連結部材に当接可能なストッパーが形成され、
ボンネットの開時において、車体連結軸に対するボンネット連結軸の移動位置が限界点に達した時点でボンネットから手を離すと、両連結部材の自重によりリンク連結軸が一方向に変位し、前記ストッパーが他方の連結部材に当接することにより両連結部材の回転が規制され、ボンネットの開放固定位置が維持されるボンネットの開閉構造であって、
前記車体連結軸を、そのボンネットの閉時における位置を基点位置として直線移動可能に構成するとともに、この車体連結軸を所定の移動位置において位置決め固定する位置決め手段を備える構成とし、
閉状態にあるボンネットを第1の開放固定位置まで開く過程においては、前記車体連結軸は基点位置に位置し、
第1の開放固定位置からさらにボンネットを開く過程においては、前記車体連結軸が直線移動して所定の移動位置で前記位置決め手段によって位置決めされることにより、ボンネットが第1の開放固定位置よりも開放度の大きい第2の開放固定位置で維持されることを特徴とする転圧車両におけるボンネットの開閉構造。
【請求項2】
前記位置決め手段は、係脱自在な係合ピンを介して前記第1連結部材が車体側に固定される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の転圧車両におけるボンネットの開閉構造。
【請求項3】
車体側に固定され、前記車体連結軸の直線移動をガイドする長孔が形成されるとともに、前記係合ピンが係合する係合孔が形成された支持ブラケットを設けたことを特徴とする請求項2に記載の転圧車両におけるボンネットの開閉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−152999(P2007−152999A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347451(P2005−347451)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000182384)酒井重工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】