説明

軸受センサの取付構造および軸受センサの取付方法

【課題】ネジの脱落を防止するのに好適な軸受センサの取付構造を提供する。
【解決手段】軸受センサ20は、車両の軸受装置1の状態を検出するセンサ回路基板22と、センサ回路基板22を収容する筐体21と、筐体21の開口部を被覆する筐体カバー40とを備え、筐体21および筐体カバー40を筐体21側からネジ27によりネジ止めしてなる。そして、筐体21側を軸受装置1の外周面2aに向けて軸受センサ20を外周面2aに取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に軸受センサを取り付ける構造に係り、特に、ネジの脱落を防止するのに好適な軸受センサの取付構造および軸受センサの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両や自動車等の車両では、保全のため、温度センサや振動センサ等の軸受センサを車両の軸受装置に取り付け、軸受センサからの検出信号に基づいて車両の運転状態を監視している。
図3は、従来の軸受装置および軸受センサの径方向の断面図である。
軸受装置1は、図3に示すように、転がり軸受10と、転がり軸受10を収容するハウジング2とで構成されている。
転がり軸受10は、内輪11と、外輪12と、内輪11および外輪12の間で転動自在に配設された複数のボール13とを備え、内輪11が車両の車軸3を回転可能に支持し、外輪12がハウジング2に固定されている。
ハウジング2の外周面2aには、軸受センサ80が取り付けられている。
【0003】
図4は、軸受センサ80の断面図である。
図4において、筐体81の内底面には、センサ回路基板82がネジ83によりネジ止めされている。
センサ回路基板82には、振動センサ84および温度センサ85が実装されている。センサ回路基板82には、筐体81の外側面を介してケーブル86が接続され、ケーブル86の端部は、ケーブルグランド87により筐体81の外側面に固定されている。
【0004】
筐体81の上端には、筐体カバー88がネジ89によりネジ止めされている。これにより、筐体81の開口部が筐体カバー88により被覆される。
筐体81の底部にはフランジ90が設けられ、フランジ90には、ボルト91を通過させるためのボルト穴92が形成されている。外周面2aには、ボルト穴92の位置に合せてネジ穴93が形成されている。軸受センサ80は、ボルト穴92を介してボルト91をネジ穴93に螺合することにより外周面2aに取り付けられている。
【0005】
なお、このような取付構造としては、例えば、特許文献1記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開2003−42835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の取付構造にあっては、筐体カバー88を外側に向けて取り付けているため、車両の振動によってネジ89が緩んだ場合は、ネジ89が抜けて脱落する可能性があるという問題があった。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、ネジの脱落を防止するのに好適な軸受センサの取付構造および軸受センサの取付方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の軸受センサの取付構造は、軸受装置に軸受センサを取り付けた軸受センサの取付構造であって、前記軸受センサは、前記軸受装置の状態を検出するセンサ回路基板と、開口部を有し前記センサ回路基板を収容する筐体と、前記開口部を被覆する筐体カバーとを備え、前記筐体および前記筐体カバーをネジ止めしてなり、前記筐体および前記筐体カバーのうちネジ止めされた側を前記軸受装置の外周面に向けて前記軸受センサを前記外周面に取り付けた。
【0008】
このような構成であれば、筐体および筐体カバーのうちネジ止めされた側を軸受装置の外周面に向けて軸受センサが取り付けられているので、筐体または筐体カバーと外周面の間でネジの移動が制限される。したがって、振動等によりネジが緩んでも脱落しない。
ここで、軸受センサは、筐体および筐体カバーのうちネジ止めされた側を軸受装置の外周面に向けて取り付けられていればよく、筐体および筐体カバーを筐体側からネジ止めした構造であってもよいし、筐体および筐体カバーを筐体カバー側からネジ止めした構造であってもよい。前者の場合は、筐体側を軸受装置の外周面に向けて軸受センサを取り付け、後者の場合は、筐体カバー側を軸受装置の外周面に向けて軸受センサを取り付ければよい。以下、発明5の軸受センサの取付方法において同じである。
【0009】
〔発明2〕 さらに、発明2の軸受センサの取付構造は、発明1の軸受センサの取付構造において、前記軸受センサは、前記筐体および前記筐体カバーを前記筐体側からネジ止めしてなり、前記筐体側を前記外周面に向けて前記軸受センサを前記外周面に取り付けた。
このような構成であれば、ネジ止めされた側である筐体側を軸受装置の外周面に向けて軸受センサが取り付けられているので、筐体カバーと外周面の間でネジの移動が制限される。したがって、振動等によりネジが緩んでも脱落しない。
【0010】
〔発明3〕 さらに、発明3の軸受センサの取付構造は、発明2の軸受センサの取付構造において、前記筐体をネジ止めしたネジの頭部から前記外周面までの高さを、前記筐体カバーと前記ネジの結合部の深さよりも小さくした。
このような構成であれば、ネジの頭部から外周面までの高さが、筐体カバーとネジの結合部の深さよりも小さいので、振動等によりネジが緩んでもネジの移動範囲が結合部の深さより大きくならない。したがって、ネジがさらに脱落しない。
【0011】
〔発明4〕 さらに、発明4の軸受センサの取付構造は、発明2および3のいずれか1の軸受センサの取付構造において、前記筐体の下体を嵌合するための嵌合穴を前記外周面に形成し、前記筐体の下体を前記嵌合穴に嵌合させて前記軸受センサを前記外周面に取り付けた。
このような構成であれば、筐体の下体を嵌合穴に嵌合させて軸受センサが軸受装置の外周面に取り付けられているので、軸受センサの移動が拘束される。したがって、軸受センサが軸受装置から脱落しにくい。
【0012】
〔発明5〕 一方、上記目的を達成するために、発明5の軸受センサの取付方法は、軸受装置に軸受センサを取り付ける軸受センサの取付方法であって、前記軸受装置の状態を検出するセンサ回路基板を前記軸受センサの筐体に収容する収容ステップと、前記筐体の開口部を筐体カバーで被覆する被覆ステップと、前記筐体および前記筐体カバーをネジ止めするネジ止めステップと、前記筐体および前記筐体カバーのうちネジ止めされた側を前記軸受装置の外周面に向けて前記軸受センサを前記外周面に取り付ける取付ステップとを含む。
【0013】
〔発明6〕 さらに、発明6の軸受センサの取付方法は、発明5の軸受センサの取付方法において、前記ネジ止めステップは、前記筐体および前記筐体カバーを前記筐体側からネジ止めし、前記取付ステップは、前記筐体側を前記外周面に向けて前記軸受センサを前記外周面に取り付ける。
〔発明7〕 さらに、発明7の軸受センサの取付方法は、発明6の軸受センサの取付方法において、前記取付ステップは、前記外周面に形成された嵌合穴に前記筐体の下体を嵌合させて前記軸受センサを前記外周面に取り付ける。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、発明1の軸受センサの取付構造、または発明5の軸受センサの取付方法によれば、筐体または筐体カバーと軸受装置の外周面の間でネジの移動が制限されるので、従来に比して、ネジが脱落しないという効果が得られる。
さらに、発明3の軸受センサの取付構造によれば、ネジがネジ穴から外れないという効果が得られる。
さらに、発明4の軸受センサの取付構造、または発明7の軸受センサの取付方法によれば、軸受センサが軸受装置から脱落する可能性を低減することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明に係る軸受センサの取付構造および軸受センサの取付方法の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、本発明に係る軸受センサの取付構造および軸受センサの取付方法を、図1に示すように、鉄道車両や自動車等の車両の軸受装置1に軸受センサ20を取り付ける場合について適用したものである。
【0016】
まず、軸受センサの取付構造を説明する。
図1は、本実施の形態に係る軸受装置および軸受センサの径方向の断面図である。
軸受装置1は、図1に示すように、転がり軸受10と、転がり軸受10を収容するハウジング2とで構成されている。
転がり軸受10は、内輪11と、外輪12と、内輪11および外輪12の間で転動自在に配設された複数のボール13とを備え、内輪11が車両の車軸3を回転可能に支持し、外輪12がハウジング2に固定されている。なお、図示しないが、転がり軸受10は、車軸3の軸方向に少なくとも2つ設けられ、車軸3は、複数の転がり軸受10により回転可能に支持されている。
ハウジング2の外周面2aには、軸受センサ20が取り付けられている。
【0017】
図2は、軸受センサ20の断面図である。
図2において、筐体21の内底面には、センサ回路基板22がネジ23によりネジ止めされている。センサ回路基板22には、振動センサ24および温度センサ25が実装されている。
筐体カバー40の底部にはフランジ41が設けられている。フランジ41は、筐体カバー40の底面より突出して設けられ、筐体カバー40の底面およびフランジ41の内周面により、筐体21の上体を嵌合するための嵌合穴42が形成されている。
【0018】
筐体21の上端にはフランジ26が設けられ、フランジ26には、ネジ27を通過させるための透穴28が形成されている。嵌合穴42の底面には、透穴28の位置に合せてネジ穴43が形成されている。筐体21および筐体カバー40は、筐体21の上体を嵌合穴42に嵌合させ、透穴28を介してネジ27をネジ穴43に螺合することによりネジ止めされている。これにより、筐体21の開口部が筐体カバー40により被覆される。
【0019】
フランジ41には、ボルト44を通過させるためのボルト穴45が形成されている。外周面2aには、ボルト穴45の位置に合せてネジ穴50が形成されているとともに、筐体21の下体を嵌合するための嵌合穴51が形成されている。軸受センサ20は、筐体21の下体を嵌合穴51に嵌合させ、ボルト穴45を介してボルト44をネジ穴50に螺合することにより外周面2aに取り付けられている。このとき、ネジ27の頭部から外周面2aまでの高さは、ネジ27とネジ穴43の螺合部の深さよりも小さくなっている。
センサ回路基板22には、筐体カバー40の外側面を介してケーブル46が接続され、ケーブル46の端部は、ケーブルグランド47により筐体カバー40の外側面に固定されている。
【0020】
次に、軸受センサ20の取付方法を説明する。
まず、筐体21の内部にセンサ回路基板22を収容し、センサ回路基板22を筐体21の内底面にネジ23によりネジ止めする。次いで、筐体21の上体を嵌合穴42に嵌合させ、透穴28を介してネジ27をネジ穴43に螺合することにより筐体21および筐体カバー40をネジ止めする。次いで、筐体21の下体を嵌合穴51に嵌合させ、ボルト穴45を介してボルト44をネジ穴50に螺合することにより軸受センサ20を外周面2aに取り付ける。そして、筐体カバー40の外側面を介してセンサ回路基板22にケーブル46を接続し、ケーブル46の端部をケーブルグランド47により筐体カバー40の外側面に固定する。
【0021】
このようにして、本実施の形態では、筐体21および筐体カバー40を筐体21側からネジ27によりネジ止めし、筐体21側を外周面2aに向けて軸受センサ20を外周面2aに取り付けた。
これにより、筐体カバー40と外周面2aの間でネジ27の移動が制限されるので、車両の振動によりネジ27が緩んでも脱落しない。したがって、従来に比して、ネジ27が脱落する可能性を低減することができる。
さらに、本実施の形態では、ネジ27の頭部から外周面2aまでの高さを、ネジ27とネジ穴43の螺合部の深さよりも小さくした。
【0022】
これにより、車両の振動によりネジ27が緩んでもネジ27の移動範囲が螺合部の深さより大きくならないので、ネジ27がネジ穴から脱落する可能性をなくすことができる。
さらに、本実施の形態では、筐体21の下体を嵌合穴51に嵌合させて軸受センサ20を外周面2aに取り付けた。
これにより、軸受センサ20の移動が拘束されるので、軸受センサ20が軸受装置1から脱落する可能性を低減することができる。
なお、上記実施の形態においては、筐体21および筐体カバー40を筐体21側からネジ27によりネジ止めし、筐体21側を外周面2aに向けて軸受センサ20を外周面2aに取り付けたが、これに限らず、筐体21および筐体カバー40を筐体カバー40側からネジ止めし、筐体カバー40側を外周面2aに向けて軸受センサ20を外周面2aに取り付けてもよい。
【0023】
また、上記実施の形態においては、振動センサ24および温度センサ25をセンサ回路基板22に実装したが、これに加えて、車軸3の回転を検出する回転速度センサを実装してもよい。
また、上記実施の形態においては、本発明に係る軸受センサの取付構造および軸受センサの取付方法を、鉄道車両や自動車等の車両の軸受装置1に軸受センサ20を取り付ける場合について適用したが、これに限らず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態に係る軸受装置および軸受センサの径方向の断面図である。
【図2】軸受センサ20の断面図である。
【図3】従来の軸受装置および軸受センサの径方向の断面図である。
【図4】軸受センサ80の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 軸受装置
2 ハウジング
2a 外周面
20、80 軸受センサ
10 転がり軸受
21、81 筐体
22、82 センサ回路基板
23、27、83、89 ネジ
24、84 振動センサ
25、85 温度センサ
26、41、90 フランジ
28 透穴
40、88 筐体カバー
42、51 嵌合穴
43、50、93 ネジ穴
44、91 ボルト
45、92 ボルト穴
46、86 ケーブル
47、87 ケーブルグランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受装置に軸受センサを取り付けた軸受センサの取付構造であって、
前記軸受センサは、前記軸受装置の状態を検出するセンサ回路基板と、開口部を有し前記センサ回路基板を収容する筐体と、前記開口部を被覆する筐体カバーとを備え、前記筐体および前記筐体カバーをネジ止めしてなり、
前記筐体および前記筐体カバーのうちネジ止めされた側を前記軸受装置の外周面に向けて前記軸受センサを前記外周面に取り付けたことを特徴とする軸受センサの取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記軸受センサは、前記筐体および前記筐体カバーを前記筐体側からネジ止めしてなり、
前記筐体側を前記外周面に向けて前記軸受センサを前記外周面に取り付けたことを特徴とする軸受センサの取付構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記筐体をネジ止めしたネジの頭部から前記外周面までの高さを、前記筐体カバーと前記ネジの結合部の深さよりも小さくしたことを特徴とする軸受センサの取付構造。
【請求項4】
請求項2および3のいずれか1項において、
前記筐体の下体を嵌合するための嵌合穴を前記外周面に形成し、前記筐体の下体を前記嵌合穴に嵌合させて前記軸受センサを前記外周面に取り付けたことを特徴とする軸受センサの取付構造。
【請求項5】
軸受装置に軸受センサを取り付ける軸受センサの取付方法であって、
前記軸受装置の状態を検出するセンサ回路基板を前記軸受センサの筐体に収容する収容ステップと、前記筐体の開口部を筐体カバーで被覆する被覆ステップと、前記筐体および前記筐体カバーをネジ止めするネジ止めステップと、前記筐体および前記筐体カバーのうちネジ止めされた側を前記軸受装置の外周面に向けて前記軸受センサを前記外周面に取り付ける取付ステップとを含むことを特徴とする軸受センサの取付方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記ネジ止めステップは、前記筐体および前記筐体カバーを前記筐体側からネジ止めし、
前記取付ステップは、前記筐体側を前記外周面に向けて前記軸受センサを前記外周面に取り付けることを特徴とする軸受センサの取付方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記取付ステップは、前記外周面に形成された嵌合穴に前記筐体の下体を嵌合させて前記軸受センサを前記外周面に取り付けることを特徴とする軸受センサの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2883(P2008−2883A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171274(P2006−171274)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】