説明

軸受装置

【課題】連続鋳造設備のロールの固定側端部を支持する為に用いることが出来、摩耗や剥離などを抑えた軸受装置を提供する。
【解決手段】正面組み合わせ円錐ころ軸受により、ある程度ロールの傾きを許容することができるので、アキシャル荷重を支持するという本来の機能を発揮することで、ロールの固定側端部を支持することができ、それにより調心輪付き円錐ころ軸受を用いる場合に比べ、負荷容量を増大させることができ、また自動調心ころ軸受を用いる場合に比べ、摩耗や剥離などを有効に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に関し、特に鉄鋼設備の圧延ローラなどを支承するのに好適な軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所において、精練を終了した鋼は鋳造プロセスに送られる。溶鋼から直接鋼片をつくる連続鋳造機においてスラブ、ブルーム、ビレットなどが鋳造されることが多い。連続鋳造設備の概略は次のようなものである。まず、取鍋からタンディッシュに溶鋼が注がれ、最上部から鋳型に注がれる。そして鋳片表面には冷却水がスプレーされており、表層部が次第に凝固しながら鋳型の下方に向かって連続的に配置した複数のガイドロールによって後方に順次送り出されてゆく。その後、切断装置で所定の長さに切断され所定の製品サイズとなり次工程に搬送される。
【0003】
上記のような連続鋳造設備において用いられるロールは、鋳片から過大なラジアル荷重を受けて撓むので、かかるロールの端部を支持する軸受装置としては、調心性を有する自動調心ころ軸受が用いられることが多い。
【0004】
加えて、熱い鋳片からロールが加熱されることに起因して生じるロールの熱膨張への対応ならびにロールの軸方向の位置決めのため、ロールの一端を保持する軸受装置は固定状態(固定側)として用いるようにし、ロールの他端を支持する軸受装置は、ロールと外輪との軸線方向の相対変位を許容すべく、いわゆる自由状態(自由側)として用いる構造が一般的である。
【0005】
特許文献1に示すごとき自動調心ころ軸受は、重荷重を支持しつつ、高い調心性とスラスト荷重を支持する機能を併せ持つため、固定側及び自由側を問わず鉄鋼設備用ロールの支持として広く用いられている。
【特許文献1】特開2002−5156号公報
【特許文献2】特開平10−220467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ガイドロール用軸受には、鋳片からロールを介して過酷な荷重が負荷されるばかりでなく、周囲の環境は、赤熱した鋳片に冷却水がスプレーされるため水蒸気に覆われた高温多湿環境にある。そのため軸箱に備わるシールの劣化等も進行し、シールを通過して軸受内部へ水が侵入することもしばしば起こる。このため軸受内部が潤滑不良となりやすい。
【0007】
そのような過酷な使用条件下で広く採用されてきている自動調心ころ軸受は、差動すべりやスピンすべりと呼ばれる軸受内で幾何学的に発生する微小なすべりが生じるため、特に潤滑状態が悪い場合、異常摩耗が進行し、その後はく離が早期に生じる問題がしばしば起こる。
【0008】
特許文献1に示すごとき自動調心ころ軸受は、傾きを許容する大きな特徴を有する反面、上述した軸受損傷の問題を抱えている。一方、一般的な円筒ころ軸受は、自動調心ころ軸受よりも負荷容量を大きな設計ができ、差動すべりやスピンすべりがないため摩耗による問題はないが、調心性がほとんどないため、撓み量が大きなロールを支持することができないという問題がある。
【0009】
これに対し、特許文献2に示すように、円筒ころ軸受の外輪とハウジングとの間に調心輪を配置して、ロールの撓みに応じてハウジングに対して外輪を傾けることができる軸受装置が開発されている。
【0010】
しかしながら、特許文献2に示す軸受装置では、内輪ところとが軸線方向に任意に相対変位できるので、スラスト荷重を受けることができず、ロールの固定側に用いることができないという問題がある。よって、特許文献2に示すような軸受装置は自由側に用いたとしても、固定側には自動調心ころ軸受を用いざるを得ず、上述した問題が残存することとなっている。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、連続鋳造設備のロールの固定側端部を支持する為に用いることが出来、摩耗や剥離などを抑えた軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の軸受装置は、連続鋳造設備において、ハウジングに対してロールの固定側端部を回転自在に支持するために、前記ハウジングに取り付けられた外輪と、前記ロールに取り付けられた内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置された複数のころとからなる正面組み合わせ円錐ころ軸受を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
例えば、連続鋳造機においては、1本のロールを複数本で構成されたロールユニットが古くより知られているが、そのロールを2分割以上とし、鋳片に対して軸方向に配置し、鋳片製品精度を向上させる分割ロール構造が多くなっている。本発明者らは、鋭意研究の結果、これら分割ロールにおいてはロール長が短いため、撓みが1本ロールと比較して小さく抑えられ、固定側に正面組合せの円錐ころ軸受を適用できることを見出した。以下、具体的に説明する。
【0014】
図1を参照すると、正面組み合わせ円錐ころ軸受の一対のころRLの作用線(ころの中央から軸線に直交して延在する線)L1、L2が、正面組み合わせ円錐ころ軸受の軸線Xと交わる点をP1,P2としたときに、点P1,P2の距離Δが、正面組み合わせ円錐ころ軸受のおおよそ幅B/2未満であれば、正面組み合わせ円錐ころ軸受が支持するロール(不図示)が傾いたときに、円筒ころ軸受に比較すれば、ころRLのモーメントに対する支持力が減少するので、ロールの撓み(傾き)をある程度許容することできるようになる。本発明者らは、特に、前記作用点P1,P2の位置を、B/4の範囲に抑えた設計によって、上述した連続鋳造機における分割ロールにおいて撓みを許容できることを見出した。
【0015】
即ち、正面組み合わせ円錐ころ軸受により、ある程度ロールの傾きを許容することができることが判明したので、アキシャル荷重を支持するという円錐ころ軸受、本来の機能を発揮することで、ロールの固定側端部を支持することができ、また調心輪付き円錐ころ軸受のように軸受外輪の外径面に備わる調心座等が備わらないため、負荷容量を増大させることができ、また自動調心ころ軸受を用いる場合に比べ、摩耗や剥離などを有効に抑制できる。尚、ロールの自由側端部は、特許文献2に示すごとき調心輪付き円筒ころ軸受で支持すると好ましいが、自動調心ころ軸受でも支持しても良い。
【0016】
請求項2に記載の軸受装置において、前記ロールは分割ロールであると、ロールの撓みが更に抑制されるので、正面組み合わせ円錐ころ軸受を用いるのに好適である。但し、撓みが許容できる範囲であれば一本ロールの支持に正面組み合わせ円錐ころ軸受を用いることも出来る。ここで、「分割ロール」とは、鋳片の幅方向に沿って複数のロールで支持する場合における1つのロールをいい、「一本ロール」とは、鋳片の幅方向に沿って一本のロールで支持する場合におけるそのロールをいう。
【0017】
請求項3に記載の軸受装置において、前記正面組み合わせ円錐ころ軸受のころに、クラウニングを形成すると、更に調心性を確保できるので好ましい。
【0018】
請求項4に記載の軸受装置において、前記正面組み合わせ円錐ころ軸受の外輪及び内輪のうち少なくとも一方に、クラウニングを形成すると、更に調心性を確保できるので好ましい。
【0019】
請求項5に記載の軸受装置において、前記正面組み合わせ円錐ころ軸受の断面において、前記正面組み合わせ円錐ころ軸受の幅をBとしたときに、軸線方向両側のころの作用線が、軸受の軸線とそれぞれ交わる2点間の距離Δは、B/4より小さいと、更に調心性を確保できるので好ましい。さらに2点間の距離ΔがB/4内であれば、軸線方向両側のころの作用線は軸受の軸線と交差するようにしてもよい。
【0020】
請求項6に記載の軸受装置において、前記正面組み合わせ円錐ころ軸受の内輪と、外輪との温度差が10℃生じても軸受内部隙間が存在するような、軸受内部すきま寸法を有していることにより、ロール回転時の熱で、ころ、内輪と外輪に、ころが円周に亘って挟まれてラジアル方向に予圧荷重が作用することにより、前記請求項5の作用を妨げないように調心性が確保される。
【0021】
請求項7に記載の軸受装置において、前記正面組み合わせ円錐ころ軸受は、総ころタイプであると、更に負荷容量を高めることができるので好ましい。但し、保持器を有するタイプであっても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図2は、本実施の形態にかかる軸受装置を用いた連続鋳造設備の概略を示す斜視図である。図2に示す連続鋳造設備においては、図3A〜5に示すように杵型(縮径部を挟んで大径部がある形状)のロール形状を有した1本ロール(図3A,3B)、2分割ロールで構成したもの(図4)、3分割ロールで構成したもの(図5)、あるいはそれ以上の複数のロール本数で構成したロールユニットが用いられている。但し配置される各ロールの配列や本数は様々である。尚、ここで図1に示すロールにおいては、図6に示す杵形形状を有する1本で形成されたロールの配置を例示的に示している。
【0023】
図2において、溶融した鋳片FEが上部の導入部1から供給され、二列になった排出部2より鉛直方向可能に向かって板状に排出されるようになっている。板状の鋳片FEは、対向して配置されたローラユニット3の間を通過し、ローラにより徐々に板厚を調整され且つ徐々に水平になるよう方向付けされる。鋳片FEの両側に配置されたローラユニット3は、点線で概略図示されるようにチャンバ9により遮蔽されており、その内部は鋳片FEの高温と冷却用の水とに曝された劣悪な環境条件となっている。
【0024】
図3Aに示すローラユニット3Aは、鋳片FEの圧延用の一本ローラ(ガイドロールともいう)4Aと、一本ローラ4Aの固定側端部を支持する軸受装置10Aと、一本ローラ4Aの自由側端部を支持する軸受装置10Bと、一本ローラ4Aの中間部4fを支持する2つの軸受装置10C,10Dとを含み、5〜8本程度のローラ4Aが、鋳造片の流れ方向に並べて配置される。そのうちの数本のロールが鋳片FEを押し出すための駆動用ロールとして駆動装置と連結されている。尚、ローラユニット3Aに示したロール形状の例としては、図3Bに示すようなものもあるが、軸受装置10C,10Dで支持する位置を変えて圧延部4aの長さを長、中、短としただけであるので、ここでは説明を省略する。
【0025】
図6は、図3Aの構成において代表されるロール形状をVI-VI線で切断して矢印方向に見た図である。図6において、一本ローラ4Aは、鋳片FEを圧延する3つの圧延部4aを有し、これらは互いに小径部4eにより同軸に連結されている。図6で左方の圧延部4aの左側には、圧延部4aより小径であって同軸に配置された第1円筒部4bと、第2円筒部4cと、第3円筒部4dとを、この順序で圧延部4a側から設けており、右方の圧延部4aの右側には、圧延部4aより小径であって同軸に配置された第1円筒部4bと、第2円筒部4cと、第3円筒部4dとを、この順序で圧延部4a側から設けている。尚、必ずしも円筒部4b、4c、4dを全て設ける必要はなく、仕様に応じてローラ4Aの端部形状を変更できることはいうまでもない。
【0026】
図6において、下面を固定されたハウジング本体11の内部には、円筒部11aとシール保持部11bとが同軸に形成されている。円筒部11a内には、円筒ころ軸受12が配置されている。シール保持部11bには、シール13が配置されており、そのリップは第1円筒部4bに嵌合したラビリンス環14の外周に当接して密封している。ラビリンス環14は、周方向断面が略コ字状であって、対応する形状のハウジング本体11と微小隙間を持って組み合わせることで、非接触シールとしてのラビリンスシールを形成している。但しシール構造はこれに限定されるものではない。
【0027】
図7は、一本ローラ4Aの固定側端部を支持する正面組み合わせ円錐ころ軸受12を拡大して示す図である。図4において、正面組み合わせ円錐ころ軸受12は、ハウジング本体11の内周に嵌合した一対の外輪12a、12aと、ローラ4Aの第2円筒部4cにルーズフィットで嵌合した内輪12bと、外輪12a、12aと内輪12bとの間に複列に配置された複数の円筒ころ12c、12cと、円筒ころ12c、12cを保持する保持器12d、12dとからなる。外輪12a、12aは、内側に向かうにつれて拡径したテーパ状の軌道面をそれぞれ有し、内輪12bは、内側に向かうにつれて拡径した一対のテーパ状の軌道面を有する。軌道面に沿って転動するころ12c、12cの作用線(図1参照)は、ほぼ正面組み合わせ円錐ころ軸受12の軸線上で交わるようになっている。
【0028】
ころ12cの両端には、端部に向かってわずかな量だけ縮径するようなクラウニングが形成されていると、エッジロードが緩和されるので好ましい。ころ12cの長さは、ころ径より大きいと、ころの転倒防止を図れるので好ましい。又、外輪12a、と内輪12bも、ころ12cの端部側に向かってわずかな量だけ拡径するようなクラウニングが形成されていると、ロールの撓みにより、傾きを受けた際にエッジロードが緩和されるのでより好ましい。
【0029】
図7において、外輪12a、12a同士を突合せた構造にあり、その中央には間座を有せず軸受内部のすきまが調整されるようになっている。また、その外輪12a、12aの突き合わせ端面には、ハウジング側から潤滑油が供給できるように半径方向に延在する油溝12h、12hが円周に複数形成されている。この構造においては、中央にすきまを調整する間座(図9を参照して後述)を有していないため、ハウジング側の油溝の幅寸法の制約を受けずに使用できるメリットがある。すなわちハウジング側の油溝幅が広くとも間座を設けていないため、間座が油溝に落下するような心配がない。
【0030】
更に、内輪12bの軸線方向端部には、後述する環状部材15が当接する端面に半径方向に延在する油溝12gが円周に複数形成されており、環状部材15が当接しても外部より内輪12bの内径側に潤滑油を供給でき、ローラ4Aと内輪12bの内径面のはめあい面に、潤滑剤(油・グリース)が流入できるようになっている。これにより、はめあい面の潤滑不足が緩和され、ローラ4Aと内輪12bの内径面のはめあい面に生じるクリープに伴う摩耗やかじりといった損傷を防ぐことも可能となる。また内輪12bの内径面には、スパイラル状の溝を設けて、さらに端面側からの潤滑剤を保持させ、長期的なはめあい面の耐久性を向上させる仕様とすることもある。又、点線で示すように、内輪12bの中央に半径方向に貫通する油溝を設けることもできる。さらに内輪12bの内周面には、潤滑性被膜が形成されているとより好ましい。潤滑性被膜としては、例えばリン酸マンガン被膜、錫亜鉛合金被膜、黒染め被膜などがある。
【0031】
図6において、左側のハウジング本体11の第3円筒部4dの外周には、第2円筒部4cの端面に突き当てるようにして、環状部材15が嵌合配置され、ボルトBにより固定されている。但し、固定方法はこれに限定されるものではなく、軸ナットによる固定する方法も取られる。正面組み合わせ円錐ころ軸受12の内輪12bは、第1円筒部4bの端面と、環状部材15とにより挟持されるローラ4Aに対して一体的に回転するように押え込んで固定される場合もあるが、一般的には内輪12bの内径面とローラ4Aはルーズフィットのため、クリープによる環状部材15と内輪12bの端面との間に滑りが生じわずかな摩耗をさせる場合があるため、環状部材15と内輪12bの端面にすきまを与えてセットされる。これらのセット状態は、ローラ4Aの構造によって様々であるため、内輪12bの端面の油溝によって環状部材15と内輪12bのセット状態に左右されず、前記内輪12bの端面に油溝12gを設けることが望ましい。
【0032】
ハウジング本体11に、ボルトBを用いてドーナツ板状の蓋部材16が取り付けられ外輪12aを固定している。蓋部材16の中央開口16aに配置されたシール17が、環状部材15に当接して密封している。ハウジング本体11と蓋部材16とで、ハウジングを構成する。尚、図示していないが、潤滑はグリースを給脂して使用する場合が多いがオイルエア潤滑装置から配管を介して、ハウジング内に潤滑油を含んだ適量の潤滑油が圧送され、ころ12c、12cを潤滑する場合がある。
【0033】
図8は、一本ローラ4Aの自由側端部を支持する調心輪112fを備えた円筒ころ軸受112を拡大して示す図である。図8において、円筒ころ軸受112は、ハウジング本体11の内周に嵌合した外輪112aと、ローラ4Aの第2円筒部4cに嵌合した内輪112bと、外輪112aと内輪112bとの間に配置された複数の円筒ころ112cとからなる。外輪112aは、円筒ころ112cを間に挟むようにして、半径方向内方に延在する鍔部112d、112dを軸線方向両端に一体的に形成してなる。
【0034】
図6において、右側のハウジング本体11の第3円筒部4dの外周には、第2円筒部4cの端面に突き当てるようにして、環状部材15が嵌合配置され、ボルトBにより固定されている。但し、固定方法はこれに限定されるものではなく、軸ナットによる固定する方法も取られる。円筒ころ軸受112の内輪112bは、第1円筒部4bの端面と、環状部材15とにより挟持されるローラ4Aに対して一体的に回転するように抑え込んで固定されている。
【0035】
尚、ハウジングの取り付け精度の関係でわずかに環状部材15と内輪112bの端面にすきまを与える構造をとることもある。内輪112bは、第1円筒部4bの端面と、環状部材15とにより挟持されるローラ4Aに対して一体的に回転するように押え込んで固定される場合もあるが、一般的には内輪112bの内径面と軸はルーズフィットのため、クリープによる環状部材15と内輪112bの端面との間に滑りが生じわずかな摩耗をさせる場合があるため、環状部材15と内輪112bの端面にすきまを、与えてセットされる。これらのセット状態は、ロールの構造によって様々であるため内輪112bの端面の油溝によって環状部材15と内輪112bのセット状態に左右されず、前記固定側の円錐ころ軸受12と同様に、内輪112bの端面には半径方向に油溝を設ける方が望ましい。
【0036】
ハウジング本体11に、ボルトBを用いてドーナツ板状の蓋部材16が取り付けられ外輪12aを固定している。蓋部材16の中央開口16aに配置されたシール17が、環状部材15に当接して密封している。ハウジング本体11と蓋部材16とで、ハウジングを構成する。尚、図示していないが、潤滑はグリースを給脂して使用する場合が多いがオイルエア潤滑装置から配管を介して、ハウジング内に潤滑油を含んだ適量の潤滑油が圧送され、円筒ころ12cを潤滑することもある。
【0037】
尚、一本ローラ4Aの中間部4fをハウジングに対して支持する軸受装置10C、10Dの円筒ころ軸受12Cは、一本ローラ4Aの相対変位を可能に支持すれば良く一般的なもので足りるため、ここでは詳細を説明しない。
【0038】
図9は、一本ローラ4Aの固定側端部を支持する正面組み合わせ円錐ころ軸受12’の変形例を拡大して示す図である。図9に示す変形例においては、図7の実施の形態に対して、一対の外輪12a、12aの間に間座12fを形成している点が異なる。
【0039】
図10は、一本ローラ4Aの固定側端部を支持する正面組み合わせ円錐ころ軸受12”の別な変形例を拡大して示す図である。図10に示す変形例においては、図7の実施の形態に対して、内輪12bを軸線方向に二分割して形成している点が異なる。尚、前記ローラ4Aと内輪12bの内径面のはめあい面に生じるクリープに伴う摩耗やかじりといった損傷を防ぐため、内輪12bの二分割面から油を内輪12b内径面に導入易いように、突き合わせ端面に半径方向に延在する油溝(点線で図示)を円周に複数形成することもできる。
【0040】
図11は、一本ローラ4Aの固定側端部を支持する正面組み合わせ円錐ころ軸受12”’の変形例を拡大して示す図である。図11に示す変形例においては、図7の実施の形態に対して、一対の外輪12a、12aの間に間座12fを形成し、且つ内輪12bを軸線方向に二分割して形成している点が異なる。また、図10同様に、内輪12bの二分割面から油を内輪12bの内径面に導入し易いように端面に、突き合わせ端面に半径方向に延在する油溝(点線で図示)を円周に複数形成することもできる。
【0041】
次に、図4に示すローラユニット3Bにおいては、鋳片の幅より全長が短く2本で構成した分割ロール4B、4Cを用いている。全長の長い分割ロール4Bと、全長の短い分割ロール4Cは、図4に示すように、鋳片の流れ方向において交互に配置されるのが望ましい。ここで、同軸に並んだ分割ロール4B、4Cの支持端は4つあるが、かかる場合端部の組み合わせは、
(4B左側端−4B右側端、4C左側端−4C右側端)=
(自由端−固定端、固定端−自由端)、
(自由端−固定端、自由端−固定端)、
(固定端−自由端、固定端−自由端)、
(固定端−自由端、自由端−固定端)の4通り存在するが、いずれのロール配置の固定端に本請求項における軸受装置を配置しても構わない。
【0042】
図12は、図4の構成において代表されるロール形状(ここでは分割ローラ4B)をXII-XII線で切断して矢印方向に見た図である。図12において、分割ローラ4Bは、鋳片FEを圧延する圧延部4aを有している。圧延部4aの両側には、圧延部4aより小径であって同軸に配置された第1円筒部4bと、第2円筒部4cと、第3円筒部4dとを、この順序で圧延部4a側から設けている。尚、必ずしも円筒部4b、4c、4dを全て設ける必要はなく、仕様に応じてローラ4Bの端部形状を変更できることはいうまでもない。
【0043】
図12において、下面を固定されたハウジング本体11の内部には、円筒部11aとシール保持部11bとが同軸に形成されている。円筒部11a内には、円筒ころ軸受12が配置されている。シール保持部11bには、シール13が配置されており、そのリップは第1円筒部4bに嵌合したラビリンス環14の外周に当接して密封している。ラビリンス環14は、周方向断面が略コ字状であって、対応する形状のハウジング本体11と微小隙間を持って組み合わせることで、非接触シールとしてのラビリンスシールを形成している。但しシール構造はこれに限定されるものではない。図12で左側のハウジング本体11には正面組み合わせ円錐ころ軸受12が取り付けられ、右側のハウジング本体11には円筒ころ軸受112が取り付けられており、これらは図7,8に示すものと同様であるため説明を省略する。
【0044】
図12において、左側のハウジング本体11の第3円筒部4dの外周には、第2円筒部4cの端面に突き当てるようにして、環状部材15が嵌合配置され、ボルトBにより固定されている。但し、固定方法はこれに限定されるものではなく、軸ナットによる固定する方法も取られる。正面組み合わせ円錐ころ軸受12の内輪12bは、第1円筒部4bの端面と、環状部材15とにより挟持されるローラ4Bに対して一体的に回転するように押え込んで固定される場合もあるが、一般的には内輪12bの内径面とローラ4Bはルーズフィットのため、クリープによる環状部材15と内輪12bの端面との間に滑りが生じわずかな摩耗をさせる場合があるため、環状部材15と内輪12bの端面にすきまを与えてセットされる。これらのセット状態は、ローラ4Bの構造によって様々であるため、内輪12bの端面の油溝によって環状部材15と内輪12bのセット状態に左右されず、前記内輪12bの端面に油溝12gを設けることが望ましい。
【0045】
ハウジング本体11に、ボルトBを用いてドーナツ板状の蓋部材16が取り付けられ外輪12aを固定している。蓋部材16の中央開口16aに配置されたシール17が、環状部材15に当接して密封している。ハウジング本体11と蓋部材16とで、ハウジングを構成する。尚、図示していないが、潤滑はグリースを給脂して使用する場合が多いがオイルエア潤滑装置から配管を介して、ハウジング内に潤滑油を含んだ適量の潤滑油が圧送され、ころ12c、12cを潤滑する場合がある。
【0046】
次に、図5に示すローラユニット3Cにおいては、鋳片の幅より全長が短く3本で構成した分割ロール4D、4E、4Fを用いている。全長の最も長い分割ロール4Dと、中間長さの分割ロール4Eと、全長の最も短いロール4Fは、鋳片の流れ方向において、この順序と、逆の順序とで交互に配置されるのが望ましい(図5参照)とされている。ここで、同軸に並んだ分割ロール4D、4E、4Fの支持端は6つあるが、かかる場合端部の組み合わせは、
(4D左側端−4D右側端、4E左側端−4E右側端、4F左側端−4F右側端)=(自由端−固定端、固定端−自由端、固定端−自由端)、
(固定端−自由端、自由端−固定端、自由端−固定端)、
(自由端−固定端、固定端−自由端、自由端−固定端)、
(固定端−自由端、固定端−自由端、固定端−自由端)の4通り
となるがいずれのロール配置の固定端に本請求項における軸受装置を配置しても構わない。
【0047】
分割ロール4D、4E、4Fを支持する一方のハウジング本体11には正面組み合わせ円錐ころ軸受12が取り付けられ、他方のハウジング本体11には円筒ころ軸受112が取り付けられており、これらは図7,8に示すものと同様であるため説明を省略する。
【0048】
本実施の形態の動作について説明する。図2に示す連続鋳造設備において、鋳片FEの供給に応じて、ローラ4A〜4Fが毎分1〜5回転程度の極低速で回転する。ローラユニット3A〜3Cに設けられた軸受装置10は、ハウジング本体11に対して正面組み合わせ円錐ころ軸受12及び円筒ころ軸受12がローラ4A〜4Fを回転自在に支持する。
【0049】
特に分割ローラ4B〜4Fの全長は、鋳片FEの幅よりも短いので撓み量が少なくなっており、その固定側端部を正面組み合わせ円錐ころ軸受12により支持するのに好適である。一方、鋳片FEからローラ4に、例えばスラスト荷重が付与された場合には、正面組み合わせ円錐ころ軸受12が、かかるスラスト荷重を支持するので、ローラ4A〜4Fの軸線方向変位を制限できる。更に、鋳片FEによりローラ4A〜4Fが加熱されて熱膨張が生じた場合には、一方の円筒ころ軸受12の内輪12bのフランジ部12eは、互いに離れる方向に変位することとなり、よってローラ4A〜4Fの熱膨張を逃がすことができる。
【0050】
以上、本発明を実施例を参照して説明してきたが、本発明は上記実施例に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば正面組み合わせ円錐ころ軸受形式としては、いわゆる総ころタイプや保持器を備えた軸受のいずれでもよい。又、ローラの自由側端部は、自動調心ころ軸受で支持しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】正面組み合わせ円錐ころ軸受の作用線を説明するための図である。
【図2】本実施の形態にかかる軸受装置を用いた連続鋳造設備の概略を示す斜視図である。
【図3A】鋳片の移動方向に直交する方向に見たロールの配置例を示す図であり、一本ロールにおける配置例を示している。
【図3B】鋳片の移動方向に直交する方向に見たロールの配置例を示す図であり、一本ロールにおける配置例を示している。
【図4】鋳片の移動方向に直交する方向に見たロールの配置例を示す図であり、2本の分割ロールにおける配置例を示している。
【図5】鋳片の移動方向に直交する方向に見たロールの配置例を示す図であり3本の分割ロールにおける配置例を示している。
【図6】図3Aの構成をVI-VI線で切断して矢印方向に見た図である。
【図7】正面組み合わせ円錐ころ軸受12を拡大して示す図である。
【図8】円筒ころ軸受112を拡大して示す図である。
【図9】変形例にかかる正面組み合わせ円錐ころ軸受を拡大して示す図である。
【図10】変形例にかかる正面組み合わせ円錐ころ軸受を拡大して示す図である。
【図11】変形例にかかる正面組み合わせ円錐ころ軸受を拡大して示す図である。
【図12】図4の構成をXII-XII線で切断して矢印方向に見た図である。
【符号の説明】
【0052】
1 導入部
2 排出部
3A〜3C ローラユニット
4A〜4F ローラ
4a 圧延部
4b 第1円筒部
4c 第2円筒部
4d 第3円筒部
10A、10B、10C 軸受装置
11 ハウジング本体
11a 円筒部
11b シール保持部
12 正面組み合わせ円錐ころ軸受
12a 外輪
12b 内輪
12c ころ
12d 保持器
12e 間座
112 円筒ころ軸受
112a 外輪
112b 内輪
112c ころ
112d 鍔部
112e 鍔部
112f 調心輪
13 シール
14 ラビリンス環
15 環状部材
16 蓋部材弁
17 シール
FE 鋳片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備において、ハウジングに対してロールの固定側端部を回転自在に支持するために、前記ハウジングに取り付けられた外輪と、前記ロールに取り付けられた内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置された複数のころとからなる正面組み合わせ円錐ころ軸受を用いたことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記ロールは分割ロールであることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記正面組み合わせ円錐ころ軸受のころに、クラウニングを形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記正面組み合わせ円錐ころ軸受の外輪及び内輪のうち少なくとも一方に、クラウニングを形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項5】
前記正面組み合わせ円錐ころ軸受の断面において、前記正面組み合わせ円錐ころ軸受の幅をBとしたときに、軸線方向両側のころの作用線が、軸受の軸線とそれぞれ交わる2点間の距離Δは、B/4より小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項6】
前記正面組み合わせ円錐ころ軸受の内輪と外輪との温度差が10℃となった場合にも、軸受内部に隙間が残存するような軸受内部すきまを有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項7】
前記正面組み合わせ円錐ころ軸受は、総ころタイプであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−236278(P2009−236278A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86000(P2008−86000)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】