説明

軸部材と管材との接続構造

【課題】
例えば自動車用ルーフレールの脚とルーフレール本体との接続に好適で、圧入強度を強化し、硬度の異なる軸部材と管材とを確実かつ強固に接続するとともに、圧入力を軽減して別仕様のルーフレールの圧入機の利用を図れ、圧入機の合理的な利用を図れる、軸部材と管材との接続構造を提供すること。
【解決手段】
周面に複数の凸部を軸方向に突設した軸部材2を管材1に圧入する。
前記軸部材2と管材1との間に接着剤15を介在して接続する。
前記軸部材2の周面の複数位置に、尖端部9aを有する複数の係止凸部9を圧入方向に離間して配置する。
前記軸部材2の圧入時、前記尖端部9aを管材1内面に食い込ませて摩滅可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用ルーフレールの脚とルーフレール本体との接続に好適で、圧入強度を強化し、硬度の異なる軸部材と管材とを確実かつ強固に接続するとともに、圧入力を軽減して別仕様のルーフレールの圧入機の利用を図れ、圧入機の合理的な利用を図れる、軸部材と管材との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用ルーフレールの脚とルーフレール本体との接続手段として、ボルト・ナットやビスを使用する代わりに、脚をルーフレール本体に嵌合し、それらに接着剤を介在して接続したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記接続法は、接着剤の硬化過程で、脚とルーフレール本体との接続部を無負荷状態に養生させて置く必要があり、そのためルーフレール本体を横置きに並べて養生させていたが、ルーフレールは比較的長尺なため、広い養生スペ−スを要するという問題があった。
【0004】
そこで、前記問題を解決するために、脚の接続端部にビ−ド状の複数の凸部を設け、この凸部をルーフレール本体に圧入し、接着剤の硬化前に脚をルーフレール本体に所定強度で接続することによって、脚とルーフレール本体を縦置きまたは宙吊り状態で養生させ、養生スペ−スのコンパクト化するようにしていた(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このような接続方法は、合成樹脂製の脚をアルミニウム製のルーフレール本体に圧入する場合を対象にし、圧入時に凸部が所定量弾性変形することで実現し得るものであった。
しかし、例えばルーフレールの強度を強化するため、脚を合成樹脂よりも硬質部材で構成する場合は、凸部に前述と同程度の弾性変形を得られなくなるため、脚をルーフレール本体に圧入することができず、前述の接続方法は採用できなくなる。
しかも、凸部を硬質部材で構成する場合は、一定の弾性変形を得るための加工精度を要し、これを機械加工に依る場合は加工コストが高くなって、生産性が低下するため、これらを解決する接続方法の改良が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2587183号公報
【特許文献2】特開2007−62558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題を解決し、例えば自動車用ルーフレールの脚とルーフレール本体との接続に好適で、圧入強度を強化し、硬度の異なる軸部材と管材とを確実かつ強固に接続するとともに、圧入力を軽減して別仕様のルーフレールの圧入機の利用を図れ、圧入機の合理的な利用を図れる、軸部材と管材との接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、周面に複数の凸部を軸方向に突設した軸部材を管材に圧入するとともに、前記軸部材と管材との間に接着剤を介在して接続する軸部材と管材との接続構造において、前記軸部材の周面の複数位置に、尖端部を有する複数の係止凸部を圧入方向に離間して配置し、前記軸部材の圧入時、前記尖端部を管材内面に食い込ませて摩滅可能にし、管材内面に摩滅した尖端部を配置して係止凸部を定着させ、圧入強度を強化し、軸部材と管材とを確実かつ強固に接続するとともに、前記尖端部の摩滅によって圧入力の軽減を図れ、軟質材用の圧入機の使用を図れるようにしている。
【0009】
請求項2の発明は、前記係止凸部の圧入方向と直交する断面を略三角形に形成し、尖端部を有する係止凸部を容易に得られるとともに、単一の尖端部の形成によって、圧入力の軽減を促すようにしている。
請求項3の発明は、前記軸部材の硬度が管材よりも高硬度で、軸部材の圧入強度を向上し、軸部材と管材とを確実かつ強固に接続し得るようにしている。
請求項4の発明は、前記軸部材のテ−パ面の先端部に凸部を設け、該凸部を周囲の接着剤に没入可能にし、軸部材の圧入時、前記凸部を接着剤に係留させて軸部材の捩れや変位を防止し、正確に圧入し得るようにしている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、前記軸部材の周面の複数位置に、尖端部を有する複数の係止凸部を圧入方向に離間して配置し、前記軸部材の圧入時、前記尖端部を管材内面に食い込ませて摩滅可能にしたから、管材内面に摩滅した尖端部を配置して係止凸部を定着させ、圧入強度を強化し、軸部材と管材とを確実かつ強固に接続するとともに、前記尖端部の摩滅によって圧入力の軽減を図れ、軟質材用の圧入機の使用を図れる効果がある。
請求項2の発明は、前記係止凸部の圧入方向と直交する断面を略三角形に形成したから、尖端部を有する係止凸部を容易に得られるとともに、単一の尖端部の形成によって、圧入力の軽減を促すことができる。
【0011】
請求項3の発明は、前記軸部材の硬度が管材よりも高硬度であるから、軸部材の圧入強度を向上し、軸部材と管材とを確実かつ強固に接続することができる。
請求項4の発明は、前記軸部材のテ−パ面の先端部に凸部を設け、該凸部を周囲の接着剤に没入可能にしたから、軸部材の圧入時、前記凸部を接着剤に係留させて軸部材の捩れや変位を防止し、正確に圧入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を自動車用ルーフレールの脚とルーフレール本体との接続に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図5において1はルーフレールを構成する管材である左右一対のアルミニウム管製のルーフレール本体で、肉厚のアルミニウムを押し出しまたは引き出し加工し、これを三次元方向に湾曲して成形され、その断面形状を図5のように異形の三角形または台形状に形成している。
【0013】
前記ルーフレール本体1,1は、自動車のルーフ(図示略)上に左右に離間して前後方向に配置され、その前後端部の開口縁部に大きな面取部(図示略)が形成され、その開口端部に軸部材であるアルミニウムダイカスト製の脚2の接続端部2aが取り付けられている。
図示の実施形態では、ルーフ(図示略)の左側に配置するルーフレール本体1と、その前側に取り付ける前側脚2を図示しているが、その後側脚、または右側のルーフレール本体1の前後側脚についても、本発明が適用されている。
【0014】
前記脚2は、ルーフ(図示略)に取り付け可能な略細長板状に成形され、その前後位置にボルト挿通孔3,3が設けられ、それらの間に位置決めピン4が下向きに突設されている。
前記脚2の一側に補強片5を介して略翼形のプレートフィン6が突設され、該プレートフィン6上にキャップ(図示略)が取り付けられている。
【0015】
前記脚2の接続端部2aは、図5のように異形の台形状に成形され、その先端側周面は先細の緩やかなテーパ状に成形され、該テーパ面の上部側に二つの係止ガイド7が軸方向に突設されている。
前記接続端部2aの先端部の下部中央に、略半球面状の凸部8が突設され、該凸部8を後述する硬化前の接着剤に没入させ、圧入位置の正確性と安定化を図るようにしている。
【0016】
前記係止ガイド7は、図4のように先端側に漸次縮径する三角錐状ないしテーパ状に成形され、該係止ガイド7より後方の接続端部2aの周面は略直軸状に成形され、該周面に複数の係止凸部9が間隔を置いて突出成形され、前記係止ガイド7と同軸線上に配置されている。
【0017】
前記係止凸部9の圧入方向と直交する断面形状は、図4のように尖端部9aを有する三角形状に形成され、その尖端部9aは実施形態では微小な曲面部に形成され、該尖端部9aをルーフレール本体1の内面に圧接し食い込ませて圧入している。
前記係止凸部9の周方向の長さは、係止ガイド7の基部の幅と略同幅に成形され、その厚さは互いの間隔と略同幅に形成されている。
このようにして、前記圧入時における前記尖端部9aの摩滅ないし磨耗を促し、円滑な圧入と圧入力の軽減を図るようにして、後述する合成樹脂製の脚2の圧入機(図示略)を共用可能にしている。
【0018】
図中、10は接続端部2aの後端側下面に形成した凹孔で、ルーフレール本体1に接続端部2aを挿入時、該レール本体1に形成した水抜き若しくは排気用の通孔11に連通可能にされている。
12は前記凹孔10の開口部の両側に突設した凸部で、ルーフレール本体1の内面に係合可能にされ、13は接続端部2aの側面に突設された幅広な凸部で、ルーフレール本体1の内面に係合可能にされ、前記凸部12と凸部13によって、接続端部2aの圧入時の安定化を図っている。
【0019】
そして、前記係止凸部9,9と凸部12,12および凸部13を介して、接続端部2aとルーフレール本体1の内面との間の全域に一様な間隙14を形成し、該間隙14に所定温度に加温した接着剤15を充填している。
前記接着剤15は、水分と反応して接着力を増強し、固化後は適宜な柔軟性と可撓性を有する、例えば反応性のホットメルトが使用される。この他、16は接続端部2aの外側の上部に開口した凹孔である。
【0020】
前記ルーフレール本体1に対する接続端部2aの接続は、例えばエアーシリンダー等のアクチェータを駆使した圧入機(図示略)を介して行なわれる。
前記圧入機は、対向配置された一対の脚ホルダ−と、ルーフパネル(図示略)と同一の湾曲面に形成したセット面とを有し、該セット面に前後側脚の下面を密着後、それらの接続端部2a,2aの間に接着剤15を内部に塗布したルーフレール本体1を挿入し、前記一対の脚ホルダーをアクチェータを介して近接離反動させ、ルーフレール本体1の両端部に前後側脚2,2を圧入可能にしている。
実施形態の圧入機は、アルミニウム製のルーフレール本体1に、別仕様の合成樹脂製の前後側脚2,2を圧入する圧入機を共用し、その合理化を図っている。
【0021】
このように構成した軸部材と管材との接続構造は、軸部材として自動車用ルーフレールのアルミニウムダイカスト製の脚2に適用し、管材として前記脚2よりも若干軟質のアルミニウム製のルーフレール本体1に適用している。
そして、前記脚2の接続端部2aのテーパ面側に、先端側に漸次縮径するテーパ状の係止ガイド7を突設し、その同軸線上の接続端部2aの直軸側周面に、複数の係止凸部9を間隔を置いて突設し、前記ルーフレール本体1は若干肉厚のものを使用している。
前記係止ガイド7や係止凸部9、凸部8,12,13はダイカスト成形によって均質かつ正確に成形可能であり、またルーフレール本体1も均質かつ正確に成形し得る。
【0022】
次に、前記製作した脚2をルーフレール本体1に接続する場合は、一対の前後側脚2,2と所定のルーフレール本体1を用意し、このうち前後側脚2,2を圧入機(図示略)の脚ホルダーに装着し、その下面を前記セット面に密着して、接続端部2a,2aを対向配置する。
この後、ルーフレール本体1の両端部内面に、所定温度に加温したゲル状の接着剤15を適宜手段で塗布し、その内側に接続端部2a,2aを挿入する。
【0023】
こうして、前記圧入機を作動し、前記接続端部2a,2aをルーフレール本体1の開口端部に圧入する。
このようにすると、ルーフレール本体1内部の空気は通孔11を介して外部へ押し出され、前記接続端部2a,2aの圧入が容易かつ速やかに行なわれる。
【0024】
前記圧入は、先ず係止ガイド7がルーフレール本体1内に挿入され、次いで係止凸部9が順次ルーフレール本体1内に挿入される。
その際、係止ガイド7は先細のテ−パ状に成形されているから、接着剤15を掻き分けて速やかに移動し、その掻き分けた通路を係止凸部9が移動し、その尖端部9aがルーフレール本体1の内面に食い込んで押し進む。
【0025】
前記接続端部2aの挿入時は、その中期から後期に亘って、凸部13がルーフレール本体1内面の側部に係合し、後期には凸部12,12がルーフレール本体1内面の下面に係合し、これらの係合によって接続端部2aが略中央に位置付けられ、その周囲に一様な空隙14が形成される。したがって、接着剤15が一様に分布し、正確かつ確実な圧入と良好な接着状態を形成する。
その際、接続端部2aの先端側の下面に設けた凸部8は、硬化前の接着剤15に没入して、ルーフレール本体1内における接続端部2aの捩れや動揺を抑制し、安定した圧入を促す。この状況は図3のようである。
【0026】
こうして係止凸部9がルーフレール本体1内に挿入されると、該レール本体1の内面に微小な研削溝ないし擦過溝が形成され、この研削溝を後続の係止凸部9が移動して掻き進む。
前記研削によって前記尖端部9aが摩滅ないし磨耗し、ルーフレール本体1の内面に対する接触面積が増加して、係止凸部9の安定性が向上するとともに、この係止凸部9の間に接着剤15が移動して硬化する。
【0027】
このように係止凸部9は、尖端部9aを有するとともに、圧入方向に断続して配置され、結果的に薄厚板状に形成されているから、これが半球断面で連続してビ−ド状に形成されたものに比べて、尖端部9aの摩滅ないし磨耗が促進され、円滑に圧入されるとともに、その分圧入力が軽減される。
それゆえ、従来よりも硬質の係止凸部9の圧入にも拘わらず、合成樹脂製の脚2の圧入機(図示略)の使用が可能になり、圧入機(図示略)の合理的な使用を図れる。
【0028】
この後、前記圧入機を解除作動し、前後に脚2,2を接続したルーフレール本体1を取り外し、これを所定の養生スペ−スに移動する。
この場合、接着剤15は徐々に冷却する一次硬化途中で、充分な接着強度を形成していないが、複数の係止凸部9がルーフレール本体1の内面に食い込んで圧入し、前後の脚2,2を所定の強度で接続しているから、圧入状態の変化や接続位置の狂いを生じない。
それゆえ、前記接続後にルーフレール本体1を速やかに取り外して移動することができる。
【0029】
したがって、従来のように接着剤15が一次硬化するまで、前後の脚2,2を接続したルーフレール本体1を圧入機に保持させて置く必要がなく、その分圧入機の使用が可能になって、ルーフレールの生産性が向上する。
【0030】
しかも、ルーフレール本体1は前記圧入によって、前後の脚2,2を所定強度で接続しているから、縦置き状態や宙吊り状態で養生させることができ、その分養生スペースのコンパクト化を図れる。
そして、そのようにしても前後の脚2,2またはルーフレール本体1が重力作用で移動したり、接着剤15から剥離することがなく、接着強度の低下や接合部の体裁の低下を防止し得る。
【0031】
前記接着剤15の硬化後、前後の脚2,2にキャップ(図示略)を取り付け、ボルト・ナットやビスを介して前後の脚2,2を自動車のル−フパネル上に取り付ければ、ルーフレールの所望の利用が可能になる。
【0032】
この場合、前述のように接着剤15は、硬化後に適当な柔軟性と可撓性を有するから、ルーフレール上の荷物の重量や振動が吸収されて前後の脚2,2に伝わり、ルーフレール本体1と前後の脚2,2との接合部の負担を軽減し、接合部の変形や破損を防止する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
このように本発明の軸部材と管材との接続構造は、圧入強度を強化し、硬度の異なる軸部材と管材とを確実かつ強固に接続するとともに、圧入力を軽減して別仕様のルーフレールの圧入機の利用を図れ、圧入機の合理的な利用を図れるから、例えば自動車用ルーフレールの脚とルーフレール本体との接続に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した自動車用ルーフレールの脚とルーフレール本体との接続状況を示す斜視図で、左側に配置するルーフレール本体と、その前部側の脚を示している。
【図2】図1の正面図で、一部を断面図示している。
【図3】図2の要部を拡大して示す断面図で、脚の接続端部とルーフレール本体との接続状況を示している。
【図4】図1の要部を拡大して示す斜視図で、脚の接続端部の係止ガイドと係止凸部を示している。
【図5】図3のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 管材(ルーフレール本体)
2 軸部材(脚)
2a 接続端部
8 凸部
9 係止凸部
9a 尖端部
15 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に複数の凸部を軸方向に突設した軸部材を管材に圧入するとともに、前記軸部材と管材との間に接着剤を介在して接続する軸部材と管材との接続構造において、前記軸部材の周面の複数位置に、尖端部を有する複数の係止凸部を圧入方向に離間して配置し、前記軸部材の圧入時、前記尖端部を管材内面に食い込ませて摩滅可能にしたことを特徴とする軸部材と管材との接続構造。
【請求項2】
前記係止凸部の圧入方向と直交する断面を略三角形に形成した請求項1記載の軸部材と管材との接続構造。
【請求項3】
前記軸部材の硬度が管材よりも高硬度である請求項1記載の軸部材と管材との接続構造
【請求項4】
前記軸部材のテ−パ面の先端部に凸部を設け、該凸部を周囲の接着剤に没入可能にした請求項1記載の軸部材と管材との接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−48319(P2010−48319A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212425(P2008−212425)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(592049564)理研精工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】