説明

軽量モルタルの施工方法、及び軽量モルタル

【課題】 本発明は、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルを速やかに硬化させる施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 A液収容器21に収容した、セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部と水とを含有するA液と、B液収容器22に収容した急結剤を含有するB液と以下の手順で壁面50に吹き付ける。まず、管11にA液を送り込み、同時に管12にB液を送り込み、更にコンプレッサー33からは管34に空気を送りこむ。まず、管12に管34が合流し、次に管12と管11と合流してA液とB液とが混合され、混合物23は吹付けノズル14から壁面50に向かって吹き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等に施工されるセメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルの施工方法に関する。また、その施工方法によって得られる軽量モルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルは、建築物に断熱材として用いられている。例えば、特許文献1には、セメント、シラスバルーン、及び発泡ウレタン又は発泡ポリスチレン等を含有する断熱材が記載されている。
【0003】
しかし、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルの硬化性については、十分な検討はされていなかった。
【0004】
一方、セメントを結合材とするモルタルやコンクリートを速やかに硬化させる方法として、モルタルやコンクリートの施工直前に、それらと液体急結剤とを混合する方法があった(例えば、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−281051号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2002−129895号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルは、施工時には軽量モルタルに含まれるセメントに対して1倍〜数倍程度の水を含んでおり、また、断熱材として施工される場合には施工厚みが厚いことによって、硬化するのに時間を要した。そのため、建物の壁面や天井面に施工した場合、硬化するまでの間に自重で垂れ易い等の問題があった。特に、吹き付けによって施工する場合には、吹き付け用の塗装機への材料の適性を考慮して、軽量モルタルへの加水量を多くして粘度を低く設定することが多く、このような問題が顕著であった。
【0007】
また、セメントを結合材とするモルタルやコンクリート等を素早く硬化させる方法は検討されていたが、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルを素早く硬化させる方法については十分な検討はされていなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルを速やかに硬化させる施工方法を提供することを目的としている。
【0009】
また、速やかに硬化させて得られた軽量モルタルであって、断熱性に優れた軽量モルタルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する方法として、請求項1に記載の発明は、セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部と、急結剤とを含有する軽量モルタルの施工方法であって、セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材及び水を含有するA液と、急結剤を含有するB液とを施工前に混合することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の軽量モルタルの施工方法において、前記無機質軽量骨材の全量中の60〜100質量%が、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の軽量モルタルの施工方法において、前記B液中に占める急結剤の固形分が20〜60質量%であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の軽量モルタルの施工方法において、前記急結剤がケイ酸塩であって、A液中のセメント100質量部に対して、B液中の急結剤の固形分が10〜40質量部となるようにA液とB液とを混合することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部と、急結剤と、水とを含有する混合物を硬化させて得られる軽量モルタルである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の軽量モルタルの施工方法によれば、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルを速やかに硬化させることができる。
【0016】
請求項2〜4に記載の軽量モルタルの施工方法によれば、請求項1の効果に加え、更に速やかに軽量モルタルを硬化させることができる。
【0017】
請求項5に記載の軽量モルタルは、断熱性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、セメント100質量部、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜10質量部、及び急結剤を含有する軽量モルタルの施工方法であって、セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材及び水を含有するA液と、急結剤を含有するB液とを施工直前に混合する。前記A液とB液とを施工前に混合することによって、施工された混合物が速やかに硬化する。
【0019】
前記軽量モルタルは、好ましくは見かけ比重0.1〜1.0(特に好ましくは、0.2〜0.5)のものであって、セメントと樹脂発泡体と無機質軽量骨材とを前記の混合割合で用いれば容易に製造することができる。軽量モルタルは、主に建築物等の断熱材として用いられる。見かけ比重が小さすぎるものは、強度(圧縮強度、曲げ強度など)が弱く形状が崩れやすく、見かけ比重が大きすぎるものは、熱伝導率が大きく十分な断熱性が得られない。樹脂発泡体と無機質軽量骨材とを前記の混合割合で用いることで、強度及び断熱性に優れた軽量モルタルを得ることができる。
【0020】
前記A液は、セメント、水、樹脂発泡体、無機質軽量骨材、及びその他の添加剤等を混合して得られる流動体である。従って、A液の性状は流動性があるものであれば特に限定しない。例えば、高粘度の流体や、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタルのような性状であってもよい。
なお、水の含有量は好ましくはセメント100質量部に対して80〜250質量部程度である。セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材の含有量が上記の範囲であって水の含有量がこの範囲であれば、混合が容易で施工作業性にも優れる。
【0021】
前記セメントは、水硬性のセメントであれば特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、白色ポルトランドセメント、超微粒子セメント、高ビーライト系セメント、超速硬セメント、アルミナセメント、エコセメント等の各種セメントを用いることができる。
【0022】
前記樹脂発泡体は、合成樹脂を発泡させて得られる多孔質体である。例えば、発泡ポリスチレン、発泡ウレタン、発泡フェノール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンなどを用いることができる。これらの樹脂発泡体が単位容積質量0.1kg/L(リットル)以下(より好ましくは0.05kg/L以下、特に好ましくは0.03以下)のものであれば、比重0.1〜1.0で、断熱性及び強度に優れた軽量モルタルを容易に得ることができる。単位容積質量0.1kg/Lを超える樹脂発泡体は、軽量モルタル中に占める樹脂発泡体の容積を多くする必要があり、軽量モルタルの断熱性を効率よく上昇ささることができない。また、軽量モルタル中に占める樹脂発泡体の容積が多くなると軽量モルタルの曲げ強度が低下する。
なお、単位容積質量は、JIS A1104(2006)に準じて測定すればよい。
【0023】
樹脂発泡体の単位容積質量の下限値は特に限定されないが、0.005kg/L以上であることが好ましい。それによって、強度に優れた軽量モルタルが得やすくなる。単位容積質量が小さすぎる樹脂発泡体は強度が弱く、セメント等と混ぜる際に破損したり変形したりしやすい。また、強度が弱い樹脂発泡体を含むことで軽量モルタルの強度も弱くなる。
【0024】
なお、樹脂発泡体の発泡手段、成形方法等は特に限定されない。例えば、発泡ポリスチレンであれば、ビーズ法発泡ポリスチレン(EPS)、押出発泡ポリスチレン(XPS)等を用いることができる。これらは所定の粒子径にするために、成型体を破砕して用いても良いし、成型前の予備発泡ビーズを用いても良い。
【0025】
樹脂発泡体は、粒子径が10mm以下(好ましくは8mm以下)であることが好ましい。樹脂発泡体は、軽量モルタルの結合材となるセメントとの密着性がよくないので、軽量モルタル中に粒子径の細かいものを分散させる方が好ましい。それによって、強度に優れた軽量モルタルを得ることができる。粒子径が大き過ぎると、軽量モルタルの曲げ強度が弱くなる傾向がある。また、大きい粒子径のものが含まれると、軽量モルタルの表面を平滑にすることが困難になるなど、軽量モルタルの成形時の作業性や軽量モルタルの仕上がりに不具合が生じやすい。
なお、粒子径10mm以下とは目開き10mmの篩を通過可能な粒子の大きさである。
【0026】
樹脂発泡体の粒子径の下限値は特に限定されないが、0.3mm(好ましくは0.5mm、特に好ましくは1mm)を超える大きさのであることが好ましい。それによって、硬化性に優れた軽量モルタルを得やすくなる。粒子径が小さいものを多く使用すると、A液への加水量が多くなり、そのため、硬化に時間がかかる傾向がある。
なお、粒子径0.5mmを超える大きさとは目開き0.5mmの篩を通過しない粒子の大きさである。
【0027】
樹脂発泡体の含有量は、セメント100部に対して1〜20質量部(より好ましくは1〜10質量部、特に好ましくは1〜4質量部)が好ましい。含有量がこの範囲にあれば、比重0.1〜1.0で、断熱性及び強度に優れる軽量モルタルを得ることができる。
【0028】
前記無機質軽量骨材は、単位容積質量0.6kg/L以下で無機質なものであれば使用可能であり、その形状、組成などは特に限定されない。例えば、パーライト、バーミキュライト、シラスバルーン、ガラス発泡体、珪藻土等を用いることができる。単位容積質量0.6kg/L以下のものを使用することによって、比重0.1〜1.0で、断熱性及び強度に優れた軽量モルタルを容易に得ることができる。単位容積質量0.6kg/Lを超える無機質軽量骨材は、軽量モルタル中に占める無機質軽量骨材の容積を多くする必要があり、軽量モルタルの断熱性を効率よく上昇ささることができない。
なお、単位容積質量は、JIS A1104(2006)に準じて測定すればよい。
【0029】
無機質軽量骨材の単位容積質量の下限値は特に限定されないが、0.03kg/L以上であることが好ましい。それによって、断熱性及び強度に優れた軽量モルタルが得やすくなる。単位容積質量が小さすぎるものは強度が弱く、セメント等と混ぜる際に破損したり変形したりしやすい。軽量骨材が破損・変形をすると軽量モルタルの断熱性を効率よく上昇させられない場合がある。また、強度が弱い無機質軽量骨材を含むことで軽量モルタルの強度も弱くなる。
【0030】
無機質軽量骨材の全量中の60〜100質量%(より好ましくは70〜100質量%)が、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材であることが好ましい。吸水率の小さいものを用いれば、A液への加水量を少なくすることができるため、急結剤を含有するB液を混合したときに硬化しやすくなり、軽量モルタルの硬化・乾燥にかかる時間が短縮される。また、セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材及び水を混合したA液は、通常のモルタルのように、混合後にしまりが生じて流動性が低下するが、吸水率の小さい無機質軽量骨材を用いることで流動性の低下を低減でき、施工性に優れたA液を得ることができる。吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材としてはガラス粉末を造粒焼成して得られる多孔質なガラス発泡体などが挙げられる。このような多孔質なガラス発泡体の中でも、独立気孔を多く有するものであれば吸水率は小さくなる。一方、パーライト、バーミキュライト、シラスバルーン、珪藻土などは、ほとんどの場合、吸水率が10質量%を超える。
なお、無機質軽量骨材の吸水率は、JIS A1134(2006)に準じて測定すればよい。
【0031】
なお、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材として単位容積質量0.1kg/L以上のものを用いれば、軽量モルタルの強度をより強くすることができる。吸水率10質量%以下、且つ単位容積質量0.1〜0.6kg/Lの無機質軽量骨材としては、ガラス粉末を造粒焼成して得られる多孔質なガラス発泡体などが挙げられる。
【0032】
無機質軽量骨材は、粒子径が8mm以下(より好ましくは5mm以下、特に好ましくは3mm以下)であることが好ましい。それによって、断熱性及び強度に優れた軽量モルタルが得やすくなる。粒子径が大きい無機質軽量骨材は、セメント等と混ぜる際に破損・変形しやすく、軽量モルタルの断熱性を効率よく上昇させられない場合がある。また、大きい粒子径のものが含まれると、軽量モルタルの表面を平滑にすることが困難になるなど、軽量モルタルの成形時の作業性や軽量モルタルの仕上がりに不具合が生じやすい。
なお、粒子径8mm以下とは目開き8mmの篩を通過可能な粒子の大きさである。
【0033】
無機質軽量骨材の粒子径の下限値は特に限定されず、平均粒子径が0.1mm以上(より好ましくは、0.5mm以上)であればよい。それによって、硬化性に優れた軽量モルタルを得やすくなる。平均粒子径が小さすぎるものは、軽量骨材の比表面積が大きくなって骨材が吸水しやすいので、A液への加水量が多くなり、そのため、硬化に時間がかかる傾向がある。
なお、ここでいう平均粒子径とは、JIS Z8801−1(2006)に規定された金属製網篩を用いて篩分けを行った結果より求められる、粒度分布の平均となる粒子の径である。即ち、それより上と下にはそれぞれ50質量%の粒子が存在する粒径である。
【0034】
無機質軽量骨材の含有量は、セメント100部に対して10〜100質量部(より好ましくは15〜50質量部)が好ましい。含有量がこの範囲にあれば、比重0.1〜1.0で、断熱性及び強度に優れる軽量モルタルを得ることができる。
【0035】
なお、前記A液には、配合物として、セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材、水以外にも、充填材や添加剤を本発明の要旨を損なわない範囲において含有させてもよい。充填材や添加剤としては、通常のモルタル、軽量モルタルに用いるものを適宜で用いればよい。
【0036】
前記充填材としては、例えば、川砂、珪砂、寒水砂、陶磁器粉砕物、ガラス粉砕物、炭酸カルシウム等の無機粉粒体(前記無機質軽量骨材には該当しないもの)、樹脂粒子、中空樹脂粒子等の有機充填材、ロックウール、スラグウール、ガラス繊維等の無機繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維を適宜で用いることができる。
【0037】
前記添加剤としては、例えば、結合材となる合成樹脂(合成樹脂エマルション、再乳化型粉末樹脂等)、増粘剤、吸水防止剤、撥水剤、減水剤、流動化剤、保水剤等を適宜で用いることができる。
【0038】
前記B液は、水と急結剤を含有する流動体である。
急結剤とは、B液としてA液に混合することによって、A液中のセメントと反応して、B液とA液との混合物の流動性をなくし、B液とA液との混合物を硬化(偽凝結)させる物質である。具体的には、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウムなどのアルミン酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩、CaO・Al23、12CaO・7Al23、CaO・2Al23、3CaO・Al23、3CaO・3Al23・CaF2、11CaO・7Al23・CaF2などのカルシウムアルミネート類、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどのカルシウム塩、またはコロイダルシリカが好ましく使用される。これらは、単独で用いても、2種類以上を併用して用いてもよい。また、これらをB液に含有させる際には、これらを直接添加してもよく、これらの水溶液等を添加してもよい。
【0039】
これらの急結剤のなかでも、ケイ酸塩を用いることで、B液とA液との混合物の硬化を特に早くできるので、急結剤としてケイ酸塩を用いることが好ましい。
【0040】
セメントに対する急結剤の混合量は、急結剤の種類によって適宜決定される。例えば、急結剤がケイ酸塩である場合には、A液中のセメント100質量部に対して、B液中の急結剤の固形分が10〜40質量部となるようにA液とB液とを混合することが好ましい。この混合割合であれば、B液とA液との混合物を速やかに硬化させることができる。急結剤が少ないとB液とA液との混合物が十分に硬化しない恐れがある。逆に、急結剤が多すぎると、施工した後のA液とB液との混合物から余剰な急結剤が水と共に染み出し、軽量モルタルの表面に急結剤の層ができてしまう場合がある。
なお、ケイ酸塩の急結剤の固形分は、二酸化珪素の含有量と、金属酸化物の含有量との和とする。例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液中の急結剤の固形分は、JIS K1408に準じて求めた二酸化珪素の含有率と、酸化ナトリウムの含有率とを合計したものを、ケイ酸ナトリウム水溶液の質量に乗じて求める。
【0041】
また、前記B液には、配合物として、前記急結剤以外にも添加剤を含有してもよい。
【0042】
なお、B液中に占める急結剤の固形分は、20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。それによって、A液とB液の混合物の硬化性をより向上させることができる。急結剤の含有量が少なすぎると、A液とB液との混合物の硬化性を十分に向上させることができず、混合物の硬化に時間がかかってしまう。逆に、含有量が多すぎると、A液とB液との混合中に急激に硬化が進んでしまい、A液とB液を十分に混合できない場合がある。また、硬化が早すぎるために混合後に施工するまでの十分な可使時間が得られない。
【0043】
前記A液とB液とを混合する方法としては、A液とB液とを同じ容器に投入して攪拌する方法がある。攪拌する方法としては、例えば、モルタルミキサー等の攪拌機を用いる方法がある。
【0044】
また、A液とB液とを別々の管で圧送し、A液を圧送する管とB液を圧送する管とを合流させることによってA液とB液とを混合する方法を用いることもできる。この方法では、合流したA液とB液とを混合するため、圧送する量を調整することによって、A液とB液とを必要な量のみ混合することができる。また、A液とB液を圧送する速度を調整すれば、必要な量を随時混合することもできる。更に、A液を圧送する管とB液を圧送する管とを合流させた管の出口に吹付けノズルを取り付けて、A液とB液との混合物を吹き付け施工することもできる。この方法によれば、A液とB液とを混合した後にそれらの混合物は直ぐに吹付け施工されるため、A液とB液との混合物を混合後に短時間で施工することができる。なお、この方法を採用する場合は、管の出口の直前でA液を圧送する管とB液を圧送する管とを合流させることがより好ましい。A液とB液は、混合された時点から硬化が開始されるため、混合後直ぐに施工できるこのような方法を用いることが好ましい。
【0045】
A液を圧送する管とB液を圧送する管とを合流させたものとしては、例えば、図1(a)や図1(b)に示すものが挙げられる。
【0046】
図1(a)、図1(b)の管では、A液を圧送する管11とB液を圧送する管12とが合流し、合流後の管13の部分でA液とB液が混合され、管13の出口からはA液とB液との混合物が排出される。更に、管13の出口に吹付け装置を取り付けて、A液とB液との混合物を混合直後に吹き付け施工することもできる。
【0047】
A液とB液との混合物を建築物の壁面や天井等に対して施工する方法としては、吹き付けによる施工に限定されるものではなく、ローラーや籠手等の施工用具を用いて塗り付ける方法などを採用することができる。
【0048】
また、この施工方法は、建築物に直接施工する場合に限らず、建築物に取り付ける前の建材等の基材に断熱層を形成する場合や、軽量モルタルからなる断熱材を成形する場合にも利用することができる。
【0049】
なお、本発明の軽量モルタルの施工方法を用いることによって、以下の問題点を解決し、以下の効果を得ることもできる。
【0050】
通常、セメントと樹脂発泡体と無機質軽量骨材と水とを含有する混合物を硬化させて軽量モルタルを得る際には、硬化する過程における材料の収縮が問題となる。即ち、硬化前の混合物の容積〔V〕、混合物が硬化した軽量モルタルの容積〔V〕としたときの収縮率〔(V1−V2)/V〕が大きく、乾燥時の環境(気温、湿度、風速など)によって収縮率にばらつきが生じるため、所定の厚みの軽量モルタルを施工するのが困難であった。また、収縮することによって、得られる軽量モルタルの断熱性が損なわれる場合があった。
【0051】
本発明の施工方法によって軽量モルタルを施工すると、軽量モルタルを速やかに硬化させることによって、上記の収縮率を小さくすることができ、所定の厚みの軽量モルタルを容易に得ることができる。また、収縮を抑えることによって、断熱性に優れた軽量モルタルを得ることができる。
【実施例】
【0052】
図2に概要を示す装置を用いて、軽量モルタルを施工した。
図2は、A液収容器21に収容したA液と、B液収容器22に収容したB液とを混合してコンクリート壁面50に吹き付ける装置の概要を示したものである。
施工する際には、A液圧送用のポンプ31によってA液圧送用の管11にA液を送り込み、同時にB液圧送用のポンプ32によってB液圧送用の管12にB液を送り込み、更にコンプレッサー33からは空気用の管34に吹付けノズル14からA液とB液の混合物を噴出すための空気を送りこむ。
そうすることによって、まず管12に管34が合流してB液と空気とが混ざりあい、それが管11と合流してA液とB液とが混合される。以上のように得られたA液とB液との混合物23は、管の出口に取り付けられた吹付けノズル14から壁面50に向かって噴射される。
この際、ポンプ31やポンプ32を調節することによって、A液とB液が圧送される量を調整することもできる。また、コンプレッサー33により圧縮される空気の圧力は、吹付ける材料の性状に合わせて調整することができる。
【0053】
この装置を用いての軽量モルタルの施工を以下の手順で行った。
【0054】
(実施例1)
まず、各材料を下記の配合割合で混合したA液を製造して、A液収容器21にA液を収容した。
A液の配合:普通ポルトランドセメント100質量部、パーライト(粒子径0.5〜3mm、単位容積質量0.16kg/L)5質量部、ガラス発泡体(多孔質な略球形粒子、粒子径1〜2mm、単位容積質量0.35kg/L、吸水率7質量%)15質量部、再乳化型アクリル樹脂粉末5質量部、ビニロン繊維2質量部、発泡ポリスチレン(粒子径3〜6mm、単位容積質量0.01kg/L)3.8質量部、水120質量部。
【0055】
次に、急結剤としてケイ酸ナトリウムを含有したB液を製造した。ケイ酸ナトリウムとして珪酸ソーダ3号(固形分40質量%)を使用し、これに水を加えてケイ酸ナトリウムの固形分を37質量%に調整したものをB液とし、B液収容器22に収容した。
【0056】
次に、ポンプ31、ポンプ32を調節して、A液の単位時間当たりの圧送量とB液の単位時間当たりの圧送量とを調整し、A液中のセメント100質量部に対して、B液中のケイ酸ナトリウム(固形分)30質量%が混合されるようにした。
【0057】
次に、ポンプ31、ポンプ32、及びコンプレッサー33を稼動して、A液とB液とを圧送し、A液とB液とを合流させて混合して、その混合物23を吹付けノズル14から壁面50に約4cmの厚みで吹付けた。
【0058】
吹付けられた混合物23は、吹き付け後、約2分で硬化(偽凝結)した。混合物23が素早く硬化(偽凝結)したことによって、壁面50に吹付けられた混合物23には自重による垂れ等の不具合は見られなかった。
更に、温度23℃、湿度60%の環境下で14日間養生して混合物23を乾燥硬化させて、軽量モルタルを得た。
【0059】
(実施例2)
まず、各材料を下記の配合割合で混合したA液を製造して、A液収容器21にA液を収容した。
A液の配合:普通ポルトランドセメント100質量部、ガラス発泡体(多孔質な略球形粒子、粒子径1〜2mm、単位容積質量0.35kg/L、吸水率7質量%)26質量部、再乳化型アクリル樹脂粉末5質量部、ビニロン繊維2質量部、発泡ポリスチレン(粒子径3〜6mm、単位容積質量0.01kg/L)3.8質量部、水105質量部。
【0060】
B液は、実施例1と同じものを使用し、ポンプ31、ポンプ32を調節して、A液の単位時間当たりの圧送量とB液の単位時間当たりの圧送量とを調整し、A液中のセメント100質量部に対して、B液中のケイ酸ナトリウム(固形分)25質量%が混合されるようにした。
【0061】
次に、ポンプ31、ポンプ32、及びコンプレッサー33を稼動して、A液とB液とを圧送し、A液とB液とを合流させて混合して、その混合物23を吹付けノズル14から壁面50に約4cmの厚みで吹付けた。
【0062】
吹付けられた混合物23は、吹き付け後、約2分で硬化(偽凝結)した。混合物23が素早く硬化(偽凝結)したことによって、壁面50に吹付けられた混合物23には自重による垂れ等の不具合は見られなかった。
更に、温度23℃、湿度60%の環境下で14日間養生して混合物23を乾燥硬化させて、軽量モルタルを得た。
【0063】
(比較例1)
まず、実施例1で用いたものと同じ、A液収容器21にA液を収容した。
次に、B液収容器22に水を収容した。
【0064】
次に、ポンプ31、ポンプ32を調節して、A液の単位時間当たりの圧送量と水の単位時間当たりの圧送量とを調整し、A液中のセメント100質量部に対して、水60質量%が混合されるようにした。
【0065】
そして、ポンプ31、ポンプ32、及びコンプレッサー33を稼動して、A液と水とを圧送し、A液と水とを合流させて混合して、その混合物23を吹付けノズル14から壁面50に約4cmの厚みで吹付けた。
【0066】
吹付けられた混合物23は6時間を経過しても十分に硬化せず、壁面50に吹付けられた混合物23には自重による垂れ見られ、更に自重によって壁面50の下方向に十数センチずれ落ちた。
更に、温度23℃、湿度60%の環境下で14日間養生して混合物23を乾燥硬化させて、軽量モルタルを得た。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】A液とB液とを混合する管の概略を示す断面図
【図2】軽量モルタルの施工に用いる吹き付ける装置の概要を示す概略模式図
【符号の説明】
【0068】
11 A液を圧送する管
12 B液を圧送する管
13 A液を圧送する管とB液を圧送する管とが合流した管
14 吹付けノズル
21 A液収容器
22 B液収容器
23 A液とB液との混合物
31 A液圧送用のポンプ
32 B液圧送用のポンプ
33 コンプレッサー
34 空気管
50 壁面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部と、急結剤とを含有する軽量モルタルの施工方法であって、セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材及び水を含有するA液と、急結剤を含有するB液とを施工前に混合することを特徴とする軽量モルタルの施工方法。
【請求項2】
前記無機質軽量骨材の全量中の60〜100質量%が、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材であることを特徴とする請求項1に記載の軽量モルタルの施工方法。
【請求項3】
前記B液中に占める急結剤の固形分が20〜60質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軽量モルタルの施工方法。
【請求項4】
前記急結剤がケイ酸塩であって、A液中のセメント100質量部に対して、B液中の急結剤の固形分が10〜40質量部となるようにA液とB液とを混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軽量モルタルの施工方法。
【請求項5】
セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部と、急結剤と、水とを含有する混合物を硬化させて得られる軽量モルタル。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−184127(P2012−184127A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47535(P2011−47535)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】