説明

輸送機器用骨格構造

【課題】容器を取り付ける際に、粉粒体の重量で容器が変形することを防ぎ、かつ、容器を短い時間で軟化させることができる輸送機器用骨格構造を提供する。
【解決手段】輸送機器用骨格構造10は、骨格部材12内に中空部33が形成され、中空部33の少なくとも一部33aに粉粒体23…が充填され、粉粒体23…の両端をそれぞれ前後の隔壁26,27で支えるものである。この輸送機器用骨格構造10は骨格部材12を左右側の部材31,32の複数個の部材で構成し、左側部材31に取り付け可能で、かつ粉粒体23…を収納可能な容器13を備え、容器13の少なくとも一部が、60〜80℃で軟化する材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨格部材内に粉粒体を充填した輸送機器用骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの輸送機器は、剛性を確保するために、中空状の骨格部材を備えている。この中空状の骨格部材のなかには、例えば、内部(すなわち、中空部)に粉粒体を充填させた輸送機器用骨格構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−193649公報
【0003】
特許文献1の輸送機器用骨格構造は、骨格部材の中空部に粉粒体を充填し、両端を平板状のフランジ(以下、「隔壁」という)で閉じたものである。これにより、衝突時の吸収エネルギー量を増加させるとともに、骨格部材の強度・剛性を高めることができる。
ところで、骨格部材は、例えば、断面略コ字状の2部材をスポット溶接などで接合して中空状の筒体に組み付けられている。
このため、骨格部材を組み付けた後に、骨格部材内に複数個の粉粒体を充填させることは困難である。
【0004】
そこで、骨格部材を2部材で組み立てる前に、2部材のうちの一方の部材に複数個の粉粒体を配置し、その後、一方の部材に他方の部材を接合することで、骨格部材内に複数個の粉粒体を充填させている。
ここで、2部材のうちの一方の部材に複数個の粉粒体を配置するために、複数個の粉粒体を予め容器に収納して一体にまとめている。
【0005】
この容器は、骨格部材内に収納した際に、骨格部材の内周面に馴染ませる必要がある。しかし、容器を軟らかい材料で形成すると、容器を骨格部材の一方の部材に取り付けたとき、粉粒体の重量で容器が変形してしまうことが考えられる。
このため、骨格部材の一方の部材に他方の部材を接合するとき、変形した容器が邪魔になる。
【0006】
この対策として、容器として、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの120℃程度の温度で軟化する熱可塑性樹脂で形成したものを用いることが知られている。
熱可塑性樹脂の容器を用いることで、容器を骨格部材の一方の部材に取り付けたとき、粉粒体の重量で容器が変形することを防ぐ。
【0007】
そして、骨格部材を一体に組み付けて、容器を骨格部材内に収納した後、容器を120℃程度まで加熱して変形させて骨格部材の内周面に馴染ませる。
容器を骨格部材の内周面に馴染ませることで、複数個の粉粒体を骨格部材内の全域に均等に充填する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、容器内には粉粒体が充填されているため、容器の外側から加熱された熱が、粉粒体に吸収されてしまい、容器を120℃程度まで高め難い。
このため、容器を熱で変形させて骨格部材の内周面に馴染ませるまでに多くの時間を要し、そのことが生産性を高める妨げになっていた。
【0009】
特に、骨格部材の内周面に塗料を塗布する場合、塗料を乾燥する熱を利用して、容器を軟化させることが好ましい。
しかし、塗料を乾燥する熱(乾燥温度170〜180℃)では、容器を軟化させるまでに多くの時間(20〜30分間)を要する。
このため、塗料を乾燥する熱(乾燥温度170〜180℃)で、容器を短い時間で軟化させることができる技術の実用化が望まれていた。
【0010】
本発明は、容器を取り付ける際に、粉粒体の重量で容器が変形することを防ぎ、かつ、容器を短い時間で軟化させることができる輸送機器用骨格構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、輸送機器に用いられる骨格部材内に中空部が形成され、前記中空部の少なくとも一部に複数個の粉粒体が充填され、充填された粉粒体の両端をそれぞれ隔壁で支える輸送機器用骨格構造において、前記骨格部材を複数個の部材で構成し、前記複数個の部材のうち、1個の部材に取り付け可能で、かつ前記複数個の粉粒体を収納可能な容器を備え、前記容器の少なくとも一部が、60〜80℃で軟化する材料で形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項2において、前記容器は、この容器を補強する部位となる枠部と、この枠部に設けられたフィルムで形成された壁部と、を有し、前記枠部および前記壁部の少なくとも一方が、60〜80℃で軟化する材料で形成され、前記壁部の厚さ寸法が前記枠部の厚さ寸法より小さく設定されたことを特徴とする。
【0013】
請求項3において、前記容器は、クリップを介して前記骨格部材に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、容器のうち、少なくとも一部を、60〜80℃で軟化する材料で形成した。
60〜80℃で軟化する材料とは、例えば、熱可塑性ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などが該当する。
このように、容器のうち、少なくとも一部を、60〜80℃で軟化する材料で形成することで、60〜80℃より低い環境温度において、容器の剛性を確保することができる。
【0015】
よって、60〜80℃より低い環境温度において、骨格部材を構成する部材に、容器を取り付けた際に、容器が粉粒体の重量で変形することを阻止できる。
これにより、骨格部材を構成する複数個の部材を組み付けて一体化する際に、容器が邪魔になることを防ぐことができるという利点がある。
【0016】
加えて、容器のうち、少なくとも一部を、60〜80℃で軟化する材料で形成することで、容器が軟化する温度を低く抑えることができる。
このように、容器が軟化する温度を低く抑えることで、容器を短い時間で軟化させることが可能になり、生産性の向上を図ることができるという利点がある。
【0017】
請求項2に係る発明では、容器を補強する部位となる枠部、および、枠部に設けられたフィルムで形成された壁部の少なくとも一方を、60〜80℃で軟化する材料で形成した。
そして、壁部の厚さ寸法を、枠部の厚さ寸法より小さく設定した。
枠部の厚さ寸法を大きく確保することで、60〜80℃より低い環境温度において枠部の剛性を高め、容器の剛性を確保することができる。
【0018】
一方、枠部を60〜80℃に加熱することで、容器の補強部となる枠部を短い時間で軟化することができる。
また、壁部を厚さ寸法の小さいフィルムとすることで、60〜80℃で加熱した際に、壁部をすみやかに軟化させることができる。
このように、容器の補強部となる枠部を短い時間で軟化させ、かつ、壁部をすみやかに軟化させることで、容器を短い時間で軟化させることができ、生産性の向上を図ることができるという利点がある。
【0019】
請求項3に係る発明では、容器を骨格部材に取り付ける部材としてクリップを用いた。クリップは、例えば、自動車などの生産工程で通常用いられる既存の部材である。
これにより、保持部材を容易に入手することができるので、輸送機器用骨格構造のコストを抑えることができるという利点がある。
さらに、容器を骨格部材に取り付ける部材としてクリップを用いることで、容器を骨格部材に手間をかけないで簡単に取り付けることができる。
これにより、輸送機器用骨格構造の生産性を高めることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る輸送機器用骨格構造(第1実施の形態)を示す断面図、図2は第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造を示す分解斜視図である。
輸送機器用骨格構造10は、輸送機器11としての自動車に用いられる骨格部材12と、骨格部材12内に設けられた容器13と、容器13の前壁14に設けられた前発泡材21と、容器13の後壁15に設けられた後発泡材22と、容器13内に充填された複数個の粉粒体23と、前発泡材21の前面に対向させて設けられた前隔壁(隔壁)26と、後発泡材22の後面に対向させて設けられた後隔壁(隔壁)27とを備える。
【0021】
骨格部材12は、左半分を構成する左側部材(複数個の部材のうち、1個の部材)31と、右半分を構成する右側部材32とを接合することで矩形状の筒体に形成された部材である。
すなわち、骨格部材12は、左側部材31および右側部材32の2部材(複数個の部材)で構成されている。
【0022】
左側部材31は、断面略コ字状に形成され、上側に張り出した上左フランジ31aと、下側に張り出した下左フランジ31bとを有する。
右側部材32は、断面略コ字状に形成され、上側に張り出した上右フランジ32aと、下側に張り出した下右フランジ32bとを有する。
【0023】
左側部材31の上左フランジ31aと、右側部材32の上右フランジ32aとが、例えば、スポット溶接で接合されている。
同様に、左側部材31の下左フランジ31bと、右側部材32の下右フランジ32bとが、例えば、スポット溶接で接合されている。
【0024】
上左フランジ31aと上右フランジ32aとを接合するとともに、下左フランジ31bと下右フランジ32bとを接合することで、左側部材31および右側部材32が一体に連結されて骨格部材12が形成される。
骨格部材12は、断面略矩形状に形成され、内周面12aで中空部33が形成された筒状の部材である。
【0025】
図3は第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の容器を示す断面図である。
容器13は、容器13の骨格を形成する枠部34と、枠部34に設けられることで壁を形成する複数の壁部35とを有する。
枠部34および壁部35…は、60〜80℃の熱で軟化する材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)など)で形成(成形)されている。
【0026】
枠部34は、容器13の骨格を形成する部位で、断面角状に形成された樹脂製の部位である。枠部34は、厚さ寸法T1に形成されている。
複数の壁部35は、4辺を枠部34に設けることで容器13の壁を形成する部位で、略矩形状に形成された樹脂製のフィルムである。壁部35は、厚さ寸法T2に形成されている。
枠部34の厚さ寸法T1と壁部35の厚さ寸法T2との関係は、T1>T2が成立する。
枠部34を断面角状に形成し、かつ厚さ寸法T1を大きく確保することで、60〜80℃より低い環境温度において枠部34の剛性を高めことができる。
【0027】
一方、枠部34を60〜80℃に加熱することで、容器13の補強部となる枠部34を短い時間で軟化することができる。
また、複数の壁部35を厚さT2の小さいフィルムとすることで、60〜80℃で加熱した際に、複数の壁部35をすみやかに軟化させることができる。
このように、容器13の補強部となる枠部34を短い時間で軟化させ、かつ、複数の壁部35をすみやかに軟化させることで、容器13を短い時間で軟化させることができる。
【0028】
容器13は、全体が略矩形体に形成され、上側に段部36が備えられ、内部に収納空間37が形成されている。収納空間37に複数個の粉粒体23が収納される。
容器13は、例えば、接着剤などの係止手段を用いて左側部材31内に片持ち支持の状態で取り付けられる。
【0029】
容器13によれば、枠部34および複数の壁部35を60〜80℃の温度で軟化する材料で形成(成形)することで、60〜80℃より低い環境温度において、容器13を左側部材31内に片持ち支持の状態で取り付けた際に、容器13が粉粒体23の重量で変形することを阻止することができる。
【0030】
加えて、容器13を60〜80℃の熱で軟化する材料で形成することで、容器13を軟化させる温度を、従来技術で説明した120℃程度より低く抑えることができる。
このように、容器13が軟化する温度を低くすることで、容器13を短い時間で軟化させることができる。
【0031】
図1戻って、複数個の粉粒体23は、中空部33の少なくとも一部33a(図2参照)にブロック状に充填されたものである。
複数個の粉粒体23がブロック状に充填されることで、粉粒体ブロック24が形成される。
【0032】
粉粒体23…は、骨格部材12に荷重が作用して骨格部材12が変形したとき、粉粒体23内部に高い圧力を発生させ、骨格部材12の内部容積の減少を少なくさせて荷重(衝撃エネルギー)を吸収するものである。
さらに、粉粒体23は、骨格部材12に充填されることで、骨格部材12の強度・剛性を高めるものである。
【0033】
粉粒体23としては、例えば、二酸化けい素(SiO)、酸化アルミニウム(Al:アルミナ)、シリカアルミナ、樹脂、ガラス、陶磁器が好適である。
【0034】
図2戻って、容器13内の前壁(壁部)14と前隔壁26との間に前発泡材21が設けられている。
前発泡材21は、内部に略球形の独立した多数の気泡が存在する多孔材料である。前発泡材21を加熱(温度変化)することで、気泡が膨張(発泡)して前発泡材21の体積が増加する。
【0035】
容器13内の後壁(壁部)15と後隔壁27と間に後発泡材22が設けられている。
後発泡材22は、前発泡材21と同様に、内部に略球形の独立した多数の気泡が存在する多孔材料である。後発泡材22を加熱(温度変化)することで、気泡が膨張(発泡)して後発泡材22の体積が増加する。
【0036】
前後の発泡材21,22を発泡させることで、骨格部材12に荷重が作用する前段階において、粉粒体23…に押付力(すなわち、初期圧)を作用させることができる。
これにより、骨格部材内に充填した粉粒体で、輸送機器用骨格構造の強度・剛性を高めることができる。
【0037】
前発泡材21の前面に隣接させて前隔壁26が設けられている。
前隔壁26は、前発泡材21に対向する平坦部41と、平坦部41の周縁に設けられた取付片42…とを有する。
前隔壁26は、取付片42…を内周面12aにスポット溶接などで接合することで、骨格部材12に取り付けられている。
【0038】
容器13の後壁15に隣接させて後隔壁27が設けられている。
後隔壁27は、前隔壁26と同じ部材なので、各構成部に前隔壁26と同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
前発泡材21の前面に隣接させて前隔壁26を設けることで、前隔壁26で前発泡材21を支えることができる。
後発泡材22の後面に隣接させて後隔壁27を設けることで、後隔壁27で後発泡材22を支えることができる。
【0040】
よって、複数個の粉粒体23を、前後の発泡材21,22を介して前後の隔壁26,27で支えることができる。
これにより、骨格部材12に荷重が作用したとき、粉粒体23…を前後の隔壁26,27で密閉状態に保持することができる。したがって、粉粒体23内部に高い圧力を発生させることにより吸収エネルギーを高めることができる。
【0041】
以上説明したように、輸送機器用骨格構造10は、輸送機器11に用いられる骨格部材12内に中空部33が形成され、中空部33の少なくとも一部33aに複数個の粉粒体23がブロック状に充填され、粉粒体ブロック24の前端を前発泡材21および前隔壁26で支えるとともに、粉粒体ブロック24の後端を後発泡材22および後隔壁27で支えるように構成されている。
【0042】
これにより、前後の発泡材21,22を発泡させることで、骨格部材12に荷重が作用する前段階において、粉粒体23…に押付力(初期圧)を良好に発生させた状態を保つことが可能である。
したがって、骨格部材12内に充填した粉粒体23…で、輸送機器用骨格構造10の強度・剛性を高めることができる。
【0043】
加えて、前後の発泡材21,22を発泡させることで、例えば、輸送機器用骨格構造10に荷重が矢印(図1参照)の方向に作用した場合、骨格部材12内に充填した粉粒体23…を前後の発泡材21,22で密閉状態に保持することができる。
粉粒体23…を密閉状態に保持することで、粉粒体23内部に発生する圧力により、衝撃を良好に吸収することができる。
【0044】
つぎに、輸送機器用骨格構造10を組み付ける工程を図4〜図5に基づいて説明する。
図4(a),(b)は第1実施の形態に係る骨格部材の左側部材に粉粒体を取り付ける工程を説明する図である。
(a)において、容器13内に粉粒体23…を粗の状態で収納する。骨格部材12の左半分を構成する左側部材31の側壁部31cに、容器13の左壁(壁部)35を接着剤で取り付ける。容器13は、左壁(壁部)35が側壁部31cに片持ち支持される。
容器13の右半分13aが左側部材31から右方向に突出する。
【0045】
ここで、容器13の枠部34および複数の壁部35は、60〜80℃の熱で軟化する材料で形成されている。
一方、輸送機器用骨格構造10を組み付ける製造ラインは、環境温度が60〜80℃より低い。よって、容器13は軟化しない状態に保たれるので、容器13の右半分13a側が粉粒体23…の重量で下向きに変形することを阻止できる。
【0046】
これにより、左側部材31に、骨格部材の右側部材32を組み付ける際に、容器13の右半分13a側が邪魔になることはない。
左側部材31および右側部材32を接合することで骨格部材12が形成され、骨格部材12内に容器13が収納される。
容器13と骨格部材12との間に、図示しない空間が形成される。この空間に塗料を導くことで、骨格部材12の内周面12aに塗料が塗布される。
【0047】
なお、図2に示すように、容器13内の前側に前発泡材21が設けられ、前発泡材21の前側に前隔壁26が設けられている。
また、容器13内の後側に後発泡材22が設けられ、後発泡材22の後側に後隔壁27が設けられている。
【0048】
(b)において、内周面12aに塗布した塗料を乾燥熱(乾燥温度170〜180℃)で乾燥する際に、乾燥熱で前後の発泡材21,22(図2参照)を膨張させる。
乾燥温度(乾燥温度170〜180℃)は、容器13を軟化させる温度(60〜80℃)より高いので、容器13を短い時間で軟化させることができる。
【0049】
ここで、容器13は、枠部34および複数の壁部35が比較的低い温度(60〜80℃)で軟化する材料で形成されている。
加えて、複数の壁部35が、肉厚T2の小さいフィルムで形成されている。
よって、枠部34および複数の壁部35を短い時間で軟化させることができる。
これにより、乾燥温度(乾燥温度170〜180℃)の熱で塗料を乾燥する時間内で、容器13を軟化させることが可能になり、生産性を高めることができる。
【0050】
図5は第1実施の形態に係る骨格部材内に粉粒体を充填する工程を説明する図である。
乾燥熱で前後の発泡材21,22を膨張させるとともに、容器13を軟化させることで、容器13を骨格部材12の内周面12aに馴染ませて、粉粒体23を中空部33の少なくとも一部33a(図4(b)参照)の全域に良好に充填させることができる。
これにより、輸送機器用骨格構造10を組み付ける工程が完了する。
【0051】
以下、第2〜第4の実施の形態の輸送機器用骨格構造を図6〜図8に基づいて説明する。なお、第2〜第4の実施の形態の輸送機器用骨格構造において第1実施の形態の部材と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
(第2実施の形態)
図6は本発明に係る容器(第2実施の形態)を示す断面図である。
第2実施の形態の容器50は、容器50の少なくとも一部である左右の側壁部(壁部)51,52が60〜80℃の熱で軟化する材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)など)で形成(成形)され、上下の壁部(壁部)53,54がポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性樹脂で形成されたものである。
PPやPETなどの熱可塑性樹脂は、120℃程度の温度で軟化する樹脂である。
【0053】
第2実施の形態の容器50によれば、骨格部材12の内周面12aのうち、所望の方向のみに容器50を馴染ませることが可能であり、用途に応じて第1実施の形態や第2実施の形態を適宜選択することができる。
加えて、第2実施の形態の容器50によれば、第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(第3実施の形態)
図7は本発明に係る容器(第3実施の形態)を示す断面図である。
第3実施の形態の容器60は、容器60の少なくとも一部である枠部61が60〜80℃の熱で軟化する材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)など)で形成(成形)され、複数の壁部62がポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性樹脂で形成されたものである。
【0055】
PPやPETなど熱可塑性樹脂は、前述したように、120℃程度の温度で軟化する樹脂である。
枠部61は、容器60の骨格を形成する部位である。複数の壁部62は、枠部61に設けられて壁を形成する部位である。
【0056】
枠部61は容器60の角部を構成する断面略く字状の部材である。一方、壁部62は平坦な部材である。このため、枠部61は壁部62を比較して剛性の高い部位になる。
そこで、枠部61を60〜80℃の熱で軟化する材料で形成し、壁部62を120℃程度の温度で軟化する樹脂で形成することにした。
剛性の高い部位となる枠部61に、60〜80℃の熱で軟化する材料を使用することで複雑な形状の容器60でも骨格部材12の内周面12aに良好に馴染ませることができる。
加えて、第3実施の形態の容器60によれば、第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第4実施の形態)
図8は本発明に係る容器(第4実施の形態)を示す断面図である。
第4実施の形態の容器70は、クリップ71を備えたもので、その他の構成は第1実施の形態の容器13と同じである。
クリップ71は、容器70の左壁部35に設けられている。容器70に係止手段としてクリップ71を設けることで、左側部材31の側壁部31cに簡単に取り付けることができる。
このクリップ71は、例えば、自動車などの生産工程で通常用いられる既存の樹脂製クリップが用いられる。
【0058】
具体的には、クリップ71は、一例として、容器70の左壁部35に設けられた頭部73と、頭部73から左方向に延びた係止軸74と、係止軸74の途中に設けられた拡径部75と、係止軸74の先端部に設けられた係止爪76とを有する。
【0059】
側壁部31cの取付孔78に係止爪76を係止させることで、係止爪76および拡径部75でクリップ71が側壁部31cに取り付けられる。この状態で、拡径部75は側壁部31cの内周面12aに当接している。
ここで、容器70は、60〜80℃の熱で軟化する材料で形成されている。よって、図2に示す前後の発泡材21,22を膨張させるとともに容器70を加熱することで、容器70の左壁部35が拡径部75に倣って変形して側壁部31cの内周面12aに当接される。
【0060】
第4実施の形態の容器70によれば、クリップ71は、自動車などの生産工程で通常用いられる既存の樹脂製クリップを用いることで、保持部材を容易に入手することができ、輸送機器用骨格構造のコストを抑えることができる。
さらに、容器70を骨格部材12に取り付ける部材としてクリップ71を用いることで、容器70を骨格部材12に手間をかけないで簡単に取り付けることができる。
加えて、第4実施の形態の容器70によれば、第1実施の形態の輸送機器用骨格構造10と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、前記第1実施の形態では、輸送機器用骨格構造10を適用する輸送機器11として自動車を例示したが、これに限らないで、輸送機器用骨格構造10を鉄道、船舶、航空機、オートバイなどの他の輸送機器に適用することも可能である。
【0062】
また、前記第1実施の形態では、前後の発泡材21,22を加熱(温度変化)により膨張(発泡)する部材として説明したが、これに限らないで、マイクロウエーブや化学反応などで膨張(発泡)する発泡材を用いることも可能である。
【0063】
さらに、前記第1実施の形態では、骨格部材12を構成する複数個の部材として、左側部材31および右側部材32の2部材を例示したが、これに限らないで、骨格部材12を3部材などの他の複数個の部材で構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、骨格部材内に粉粒体を充填した輸送機器用骨格構造を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る輸送機器用骨格構造(第1実施の形態)を示す断面図である。
【図2】第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造を示す分解斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る輸送機器用骨格構造の容器を示す断面図である。
【図4】第1実施の形態に係る骨格部材の左側部材に粉粒体を取り付ける工程を説明する図である。
【図5】第1実施の形態に係る骨格部材内に粉粒体を充填する工程を説明する図である。
【図6】本発明に係る容器(第2実施の形態)を示す断面図である。
【図7】本発明に係る容器(第3実施の形態)を示す断面図である。
【図8】本発明に係る容器(第4実施の形態)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10…輸送機器用骨格構造、11…輸送機器、12…骨格部材、13,50,60,70…容器、21…前発泡材、22…後発泡材、23…粉粒体、26…前隔壁(隔壁)、27…後隔壁(隔壁)、31…左側部材(複数個の部材のうち、1個の部材)、32…右側部材(複数個の部材のうち、1個の部材)、33…中空部、33a…中空部の少なくとも一部、34,61…枠部、35,62…壁部、51,52…左右の側壁部(壁部)、53,54…上下の壁部(壁部)、71…クリップ、T1…枠部の厚さ寸法、T2…壁部の厚さ寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機器に用いられる骨格部材内に中空部が形成され、前記中空部の少なくとも一部に複数個の粉粒体が充填され、充填された粉粒体の両端をそれぞれ隔壁で支える輸送機器用骨格構造において、
前記骨格部材を複数個の部材で構成し、
前記複数個の部材のうち、1個の部材に取り付け可能で、かつ前記複数個の粉粒体を収納可能な容器を備え、
前記容器の少なくとも一部が、60〜80℃で軟化する材料で形成されたことを特徴とする輸送機器用骨格構造。
【請求項2】
前記容器は、この容器を補強する部位となる枠部と、この枠部に設けられたフィルムで形成された壁部と、を有し、
前記枠部および前記壁部の少なくとも一方が、60〜80℃で軟化する材料で形成され、
前記壁部の厚さ寸法が前記枠部の厚さ寸法より小さく設定されたことを特徴とする請求項1記載の輸送機器用骨格構造。
【請求項3】
前記容器は、クリップを介して前記骨格部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の輸送機器用骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−230284(P2008−230284A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68786(P2007−68786)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】