説明

農作業機の対地作業機自動ローリング制御装置

【課題】凹凸が多くて左右に傾き易い圃場でも安定して作業機の水平維持が行われるようにする。
【解決手段】傾斜センサ14の検出に基づく絶対傾斜角θsを基準に対地作業機18のローリング制御を行うか、角速度センサ16の検出に基づく相対傾斜角θk又は前記絶対傾斜角θsに角速度センサ16の相対傾斜角θkを加味した作業機傾斜目標角θtを基準に対地作業機18のローリング制御を行うかを判定する手段を設け、前記判定手段の判定結果にもとづき、走行機体の傾き検出時に角速度センサ16の傾斜検出値に基づいてローリングシリンダ9に作動パルス信号を出力してローリング制御を行い、傾斜センサ14の傾斜検出値でローリングシリンダ9に作動パルス信号を続けて出力してローリング制御を行うよう構成し、角速度センサ16の制御時の出力パルスのオン時間を傾斜センサ14の制御時のオン時間よりも長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用トラクタ等の農作業機に装着するロータリ耕耘機や畦塗機や薬剤散布機等の対地作業機を水平に維持する自動ローリング制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作業機に装着した対地作業機を農作業機が傾いても自動的に水平に維持するローリング制御技術として、走行機体もしくは作業機の左右傾斜角度を検出する傾斜センサと走行機体の左右方向への傾斜角速度または角加速度を検出する角速度センサの二つのセンサが検出する傾斜信号で、走行機体に対して対地作業機を自動的にローリング駆動して、対地作業機の地面に対する左右方向の対地姿勢を水平に維持する技術が有る。
【0003】
例えば、特許第3568597号公報には、ジャイロ(角速度センサ)が出力した角速度または角加速度が安定状態である場合に、重力式傾斜センサの検出角を最終的な検出角とし、かつ重力式傾斜センサの検出角を基準値として格納する安定時検出手段と、ジャイロが出力する角加速度または角加速度が変動状態である場合に、前記基準値にジャイロが出力する角速度または角加速度に基づいて演算される相対傾斜角を加算して最終的な検出角とする変動時検出手段とを設けた移動農機の傾斜検出装置が記載されている。
【0004】
また、特許第3763835号公報には、ジャイロが検出した角速度が略「0」である状態が安定状態であるとし、ジャイロが検出した角速度が略「0」でない状態を変動状態であるとして前記処理を行う移動農機の傾斜検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3568597号公報
【特許文献2】特許第3763835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の移動農機の傾斜検出装置を用いた自動ローリング制御は、機体の傾斜角度を検出してその傾斜角度と逆方向へ作業機を傾けることで作業機を水平にしようとする自動制御であるために、機体の傾斜角度の演算に時間を要して頻繁に左右傾斜角が変動する場合には、応答遅れとなって安定した作業機の水平制御が行われない。
【0007】
そこで、本発明は、機体の左右傾きを検出すると素早く水平制御を働かせて作業機を水平方向にローリングして、凹凸が多くて左右に傾き易い圃場でも安定して作業機の水平維持が行われるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、対地作業機18をローリングシリンダ9の作動でローリング可能に農作業機1に装着すると共に農作業機1の走行機体に傾斜センサ14と角速度センサ16を設け、前記傾斜センサ14の検出に基づく絶対傾斜角θsを基準に対地作業機18のローリング制御を行うか、角速度センサ16の検出に基づく傾斜角度θk又は前記絶対傾斜角θsに角速度センサ16の相対傾斜角θkを加味した作業機傾斜目標角θtを基準に対地作業機18のローリング制御を行うかを判定する手段を設け、前記判定手段の判定結果にもとづき、走行機体の傾き検出時に角速度センサ16の傾斜検出値に基づいてローリングシリンダ9に作動パルス信号を出力してローリング制御を行い、傾斜センサ14の傾斜検出値でローリングシリンダ9に作動パルス信号を続けて出力してローリング制御を行うよう構成すると共に、角速度センサ16の制御時の出力パルスのオン時間を傾斜センサ14の制御時の出力パルスのオン時間よりも長くしたことを特徴とする農作業機の対地作業機自動ローリング制御装置とした。
【0009】
この構成で、走行機体が傾いた際に重量式傾斜センサ14が慣性力で検出する逆傾斜方向の誤信号を出している間は角速度センサ16の正確な傾斜検出値でローリング制御を行い、又は正確に検出した傾斜センサ14の傾斜検出値でローリング制御を行うことで、逆傾斜誤信号を除いて正確な傾斜角による作業機のローリング(水平)制御が行われると共に、角速度センサ16による制御出力パルスのオン時間を長くすることでローリングシリンダ9の動作を素早く開始し傾斜センサ14による制御出力パルスのオン時間を短くすることでローリングシリンダの動きをゆっくりしたものとして傾斜修正の行き過ぎによるハンチングを防ぐことになる。
【発明の効果】
【0010】
角速度センサ16の素早く正確な傾斜方向検出信号によってローリングシリンダ9を傾斜修正方向へ素早く作動を開始させ、傾斜センサ14の正確な傾斜角検出に基づいてローリングシリンダ9の駆動をゆっくりと行って過剰な傾き修正を防いで作業機の姿勢修正を素早く正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例のトラクタの全体側面図である。
【図2】制御のブロック図である。
【図3】制御のフローチャート図である。
【図4】制御のフローチャート図である。
【図5】制御のフローチャート図である。
【図6】制御のフローチャート図である。
【図7】制御のフローチャート図である。
【図8】角速度センサの傾斜検出値の変化状態を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
農作業機の実施例はトラクタ1であって、機体前部のボンネット17内にエンジン2を搭載し、このエンジン2の回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪5と後輪6とに伝えるようにしている。ミッションケース3の後上部には油圧シリンダケース7が搭載され、この油圧シリンダケース7の左右両側にリフトアーム8,8を回動自由に枢着している。油圧シリンダケース7内の昇降シリンダ9内に作動油が供給されるとリフトアーム8,8が上昇回動し、反対に作動油が排出されるとリフトアーム8,8は下降するように構成している。
【0013】
さらに、リフトアーム8,8と左右のロワーリンク10,10とはリフトロッド12とローリングシリンダ11で相互に連結している。このローリングシリンダ11の横にはシリンダ長さを検出するストロークセンサ13が固着されている。14はトラクタ1の左右方向の傾斜角度を検出する傾斜センサで、16はトラクタ1の左右方向への傾き速度を検出する角速度センサで、それぞれ油圧シリンダケース7の横側に取り付けられ、後述するようにこの傾斜センサ14と角速度センサ16の検出値と前記ストロークセンサ13の検出値と傾き調整ダイヤル15の設定値とから作業機の傾斜制御量が算出され、コントローラ30からの制御信号により作業機18を設定された左右傾斜角度に維持するようにしている。
【0014】
なお、この実施例では、作業機18としてロータリ耕耘機を例に挙げているが、ロータリ耕耘機以外の、例えば畦塗機や薬剤散布機等の農作業機であってもよい。前記ロータリ耕耘機は耕耘爪20とこの耕耘爪20の上方を覆うロータリカバー22と、ロータリカバー22の後部に枢着されたリヤカバー23等からなり、トラクタ1側のPTO軸から動力を受けて耕耘軸19を回転させ、耕耘軸19に取り付けられた複数個の耕耘爪20によって土壌を耕起する。
【0015】
ロータリ耕耘機18のロータリカバー22の後上部左右には耕深を検出するポテンショ式の左右デプスセンサ37,38が設けられ、トラクタ1の操縦席24側に設けられたダイヤル調整式の耕深設定器25によって設定された耕深となるようにリフトアーム8,8が回動操作されてロータリ耕耘機18全体が昇降し、設定耕深を維持するようにしている。
【0016】
ポジション設定器26は油圧操作レバー28の回動基部に取り付けられ、リフトアーム角センサ27はリフトアーム8の回動基部に取り付けられる。
次に、図2に示す制御ブロック図について説明する。作業機18の昇降制御、及び傾斜制御を司るコントローラ30の入力側には、前記ポジション設定器26とリフトアーム角センサ27が接続され、前記左右デプスセンサ37,38、耕深設定器25もコントローラ30に接続され、耕深制御時に耕深設定器25で設定した耕深設定値と左右デプスセンサ37,38が検出した値が一致するように耕深制御がなされる。
【0017】
作業機18の左右ローリングモードを種々設定する傾斜モード切換スイッチ29、傾き調整ダイヤル15、傾斜センサ14、ストロークセンサ13、角速度センサ16、後述するローリング制御方法を変更する制御選択スイッチ36もコントローラ30に接続される。
【0018】
さらに、ローリングシリンダ11を手動で伸縮させる水平手動スイッチ35と、後述する耕耘深さ制御を変更する耕深制御センサ選択スイッチ39をコントローラ30の入力側に接続している。
【0019】
コントローラ30の出力側には、リフトアーム8を昇降させる昇降シリンダ9を伸縮させる上昇ソレノイド31と下降ソレノイド32、ローリングシリンダ11を伸縮させる伸長ソレノイド33と短縮ソレノイド34を接続している。
【0020】
傾斜モード切換スイッチ29を「平行」位置にセットすると本機に対する作業機18の左右姿勢が平行状態となり、すなわち、左右のリフトロッド12とローリングシリンダ11の長さが一致する状態となる。「平行」位置は更に2位置の設定が可能で「固定位置」にすると作業機18は本機に対して常に平行になり、「揺動」の位置にすると平行状態を維持するように傾斜センサ14と角速度センサ16の検出値に応じてローリング制御が加わるようにしている。
【0021】
このローリング制御は、機体が傾いたときに作業機18も同じ方向に傾こうとするのを阻止すべく、傾斜方向とは逆の方向の出力をローリングシリンダ11に与えるものであり、後述するようにコントローラ30で自動制御する。
【0022】
水平手動スイッチ35を「手動」位置にセットすると、自動のローリング制御はカットされ、水平手動スイッチ35を「水平」位置にセットしたときだけローリングシリンダ11が伸縮制御される。このような構成において、ロータリ耕耘作業を行なう場合、通常は傾斜モード切換スイッチ29を「揺動」の位置にセットして耕耘作業を行なう。このモードに設定すると、トラクタ1が左右方向に小刻みに揺動してもその後方のロータリ耕耘機18は常に水平となるように制御され、この結果、ロータリ耕耘機18に畦立器を装着して畦立作業を行なうと上面が水平な畦が形成されることになる。
【0023】
また、走行機体に作業機18を装着して、平行制御で作業を行なう場合、例えば畦塗り作業を行なう場合には、前記傾斜モード切換スイッチ29を「揺動」位置にセットする。この状態で走行機体を前進させると、走行機体が傾いた方向に作業機18も傾くが、その変化が速い場合、言い換えると変化速度が設定された値よりも大きいときには角速度センサ16がそれを検知し、変化量分を作業機傾斜角度に換算する。そして、作業機姿勢を算出された傾斜分だけ逆方向側に修正し、本機といっしょに傾こうとしている作業機18の変化を抑える。
【0024】
この平行制御で、トラクタ1の後輪6が凹凸部に入り込んでも作業機18側の方の姿勢変化は少なくなり、耕耘畦立作業にあっては畦上面が水平で滑らかに形成され、畦塗作業にあっては変化の前後で畦上面に段差が生じたり、亀裂が入ったりすることがなく、美麗な畦が形成できるものである。
【0025】
なお、この実施例においては、作業機18傾斜変更後の走行機体平行復帰出力は、角速度センサ16の変化検出値が一定以下になったときに行なうようにしている。このように構成すれば、走行機体姿勢が安定した後、作業機18を走行機体と平行に復帰させることができ作業跡が滑らかになるものである。この場合において、平行復帰出力は作業姿勢変更出力よりも遅くするようにした。即ち、走行機体が左右方向に傾いたために作業機18の姿勢が大きく変わる際には昇降シリンダ9に対して速い制御出力を出すが、作業機18を元の対走行機体平行位置に復帰させる場合にはやや遅めの制御出力を出すようにした。また、この場合において、平行に戻すときの復帰出力はトラクタ1の速度に応じて変えてもよい。車速が速いときには平行復帰出力を速めに出し、車速が遅いときには平行復帰出力を遅めに出すようにすれば作業跡が不揃いとなることがない。
【0026】
図3に基づき、傾斜センサ14と角速度センサ16との連繋による作業機ローリング制御の一例について説明する。ステップS101で傾斜センサ14の絶対傾斜角θsと角速度センサ16による相対傾斜角θkをコントローラ30に読み込み、ステップS102で傾斜角θkが所定傾斜角θaより小さいか否かを判定する。そして、ステップS102の判定がNOならば、ステップS104で現在の絶対傾斜角θsに角速度センサ16の傾斜角θkを加算して新たな作業機傾斜目標角θtとしてリターンし、ステップS102の判定がYESならば、ステップS103で傾斜センサ14の絶対傾斜角θsを作業機傾斜目標角θtとしてリターンする。なお、ステップS104で作業機傾斜目標角θtが零ならば、傾斜角θkが新たな作業機傾斜目標角θtになる。また、角速度センサ16の検出に基づく相対傾斜角θkは例えば検出値の積分処理により算出する。
【0027】
上記のように、角速度センサ16の検出に基づく傾斜角θkが所定傾斜角θaに対してこれよりも大きいときはトラクタ機体側に急な角度変化を生じたものと推定し、絶対傾斜角θsにこの傾斜角θkを加えた新たな作業機傾斜目標角θtとしてコントローラ30に記憶し、この目標角θtを基準にローリング制御される。一方前記傾斜角θkが所定傾斜角θaに対してこれよりも小さいときは、トラクタ機体側に急な角度変化が無いものと推定し、絶対傾斜角θsを基準にローリング制御するものである。なお、角速度センサ16による相対傾斜角θkを加算する上記方法に代替して異なる方法でもよい。
【0028】
上記の角速度センサ16の検出出力による基本的なローリング制御を踏まえ、図4に、傾斜モード切換スイッチ29を「揺動」にしてローリング制御を行う際の制御フローチャートを示している。
【0029】
ステップS1で傾斜センサ14や角速度センサ16及びストロークセンサ13の検出値を読み込み、ステップS2で、水平手動スイッチ35や傾斜モード切換スイッチ29の選択操作等に基づき、作業機18の水平制御中であるかの判定を行い、YESであれば次のステップS3に移り、NOであればリターンする。ステップS3では、前記絶対傾斜角θs又は作業機傾斜目標角θtに基づく自動制御出力を行わせるか否か、即ち水平出力要求の有無を判定し、YESであれば次のステップS4に移り、NOであればリターンする。ステップS4では角速度センサ16の傾斜検出値が所定値以上で水平出力要求が出ているかの判定を行う。ステップS4でYESのときは、前記作業機傾斜目標角θtに基づく制御要求と判定し、同じくNOのときは、前記絶対傾斜角θsに基づく制御要求が出力されていると判定する。
【0030】
ステップS4でYESであればステップS5に移り、NOであればステップS6に移る。ステップS5で作業機18の機体に対する傾斜量すなわち傾斜修正角度が±mの範囲(例えば、m±1°)であるかの判定を行い、YESであればステップS7で出力時間A(例えば40msなどの長パルス出力)で出力し、NOであればステップS8で連続出力する。
【0031】
ステップS4でNOの判定のとき、つまり絶対傾斜角θs目標のとき、ステップS6で傾斜修正角度が±nの範囲(例えば、±3°。ここでm<n)であるかの判定を行い、YESであればステップS9で出力時間B(例えば30msなどの短パルス出力)で出力してリターンし、NOであればステップS8で連続出力してリターンする。
【0032】
上記ステップS5、及びステップS6のように構成することにより、トラクタ機体が急な角度変化を伴なって、角速度センサ16による傾斜角θkを勘案した作業機傾斜目標角θtとして制御目標を設定するときは、作業機18の機体に対する傾斜量である傾斜修正角度が前記のように小さくとも(±mの範囲)、これを実行して、迅速な姿勢制御を行わせるものである。一方、トラクタ機体が緩慢の角度変化であり、角速度センサ16による傾斜角θkを勘案せず絶対傾斜角θsを制御目標を設定するときは、作業機18の機体に対する傾斜量である傾斜修正角度が前記の場合よりもやや大きくし(±nの範囲)、これを実行して、標準の姿勢制御を行わせるものである。
【0033】
そして、ステップS5の範囲を逸脱するときは、連続出力(ステップS8)にて制御を実行し、パルス信号による場合に比較して迅速に復帰作動させるものである。ステップS6の範囲を逸脱するときも同様に連続出力にて実行される。
【0034】
図5に、作業機18の昇降制御における不感帯とローリング制御との関連制御のフローチャートを示している。
ステップS10で傾斜センサ14や角速度センサ16とストロークセンサ13と左右デプスセンサ37,38等の検出値を読み込み、ステップS11で作業機18の水平制御中であるかの判定を行い、YESであれば次のステップS12に移る。ステップS12では水平出力要求を判定し、YESであれば次のステップS13に移る。
【0035】
ステップS13では角速度センサ16の傾斜検出値が所定値以上で水平出力要求が出ているかの判定を行う。ここで、YESであればステップS14に移り、角速度センサ16の傾斜検出値が大であれば、ステップS15で不感帯タイムカウントを長時間(1.0秒)に設定し、角速度センサ16の傾斜検出値が大でなければ、ステップS16で不感帯タイムカウントを短時間(0.1秒)に設定し、ステップS17でオート昇降(前記左右デプスセンサによる耕深制御による作業機昇降制御)の不感帯を「小」(±1cm)にセットしてリターンする。
【0036】
ステップS11とステップS12とステップS13の判定でいずれかがNOであれば、ステップS18で不感帯タイムカウント終了を判定し、終了していれば、ステップS19でオート昇降の不感帯を「標準」(±2cm)にセットしてリターンし、終了していなければそのままでリターンする。
【0037】
この制御は、角速度センサによるローリング制御中は、作業機18の昇降制御も敏感にして深く耕耘する枕地耕耘においてもロータリ作業の整地性を良くする。
図6に、作業機18の昇降制御における上昇速度とローリング制御との関連制御のフローチャートを示している。
【0038】
ステップS20で傾斜センサ14や角速度センサ16とストロークセンサ13と左右デプスセンサ37,38等の検出値を読み込み、ステップS21で作業機18の水平制御中であるかの判定を行い、YESであれば次のステップS22に移る。ステップS22では水平出力要求を判定し、YESであれば次のステップS23に移る。
【0039】
ステップS23では角速度センサ16の傾斜検出値が所定値以上で水平出力要求が出ているかの判定を行う。ここで、YESであればステップS24に移る。
ステップS24では、オート昇降の上昇速度を「小」にセットしてリターンする。
【0040】
ステップS21とステップS22とステップS23の判定でいずれかががNOであれば、ステップS25でオート昇降の上昇速度を「標準」にセットしてリターンする。
この制御は、角速度センサによるローリング制御中は、作業機18の上昇速度を遅くして耕耘跡に凹みが生じないようにする。
【0041】
図7は、前記図5と同じく、作業機18の昇降制御における不感帯とローリング制御との関連制御のフローチャートで、ステップS30で傾斜センサ14や角速度センサ16とストロークセンサ13と左右デプスセンサ37,38等の検出値を読み込み、ステップS31で作業機18の水平制御中であるかの判定を行い、YESであれば次のステップS32に移る。
【0042】
ステップS32では水平出力要求を判定し、YESであれば次のステップS33に移り、ステップS33で角速度センサ16の傾斜検出値が所定値以上で水平出力要求が出ているかの判定を行う。ここの判定がYESであればステップS34に移り、角速度センサ16の傾斜検出値が大であれば、ステップS35でオート昇降の不感帯を「小」(±1cm)にセットしてリターンする。
【0043】
ステップS31とステップS32とステップS33とステップS34の判定でいずれかがNOであれば、ステップS36でオート昇降の不感帯を「標準」(±2cm)にセットしてリターンする。
【0044】
この制御は、角速度センサによるローリング制御中は、圃場面の凹凸が大きい場合には作業機18の昇降制御も敏感にし、圃場面の凹凸が小きい場合には作業機18の昇降制御を通常にしてロータリ作業の整地性を良くする。
【0045】
なお、この制御で、昇降シリンダ9の縮み出力を判定して、縮み出力の場合にオート昇降の不感帯を「小」にするようにしても良い。
また、ローリング制御の場合には、常に下げ出力の不感帯を「小」にするようにしても良い。
【0046】
さらに、ローリング制御の場合の上げ出力は、角速度センサ16による出力要求の場合のみに不感帯を「小」にするようにしても良い。
前記オート昇降の不感帯や昇降速度の変更は、最初の耕耘開始時や旋回後の耕耘開始時を作業機18昇降操作によって判断し、この耕耘開始から一定時間(約5秒)間或は通常の上昇出力が2、3回実施されるまで、リヤカバー23の変化が大きいために、行わない。
【0047】
また、耕深設定器25で耕耘深さを浅く設定した場合には、オート昇降の下降速度を遅く制御することによって、ハンチングを防止して整地性を良くする。
図8は、角速度センサ16の傾き検出信号の変化を表わし、通常はエンジン振動を除くために不感帯を超えた信号を傾斜信号としているが、傾斜角を演算するデータとして不感帯に達するまでのデータAも演算に使用する。
【0048】
なお、トラクタ1が路上走行する場合にはローリング制御が行われると危険であるために制御を切るが、忘れたときのために、走行速度が7km/hを超えると自動的に、或は作業切換ダイヤルを「走行」或いは「ローダ」「ドラフト」(スキ作業)にすると、制御を切るようにする。
【0049】
なお、ロータリ耕耘機をコントロールレバーで昇降しながら耕耘作業を行う場合には、コントロールレバーの高・中・低の位置によってローリングシリンダ11に出力する制御信号のパルス幅を大・中・小に設定し、ローリング制御の不感帯を大・中・小に設定して制御による動きを順次遅くすることで作業機18のローリングによる危険を防ぐ。
【0050】
さらに、リヤカバー23が垂れ下がったり上げロックしたりしている場合は、作業機18を吊って走行している場合が多いので、制御出力のパルス幅を広くしたり不感帯を広げて作業機18が急激に動かないようにしている。
【符号の説明】
【0051】
1 農作業機(トラクタ)
9 ローリングシリンダ
14 傾斜センサ
16 角速度センサ
18 対地作業機(ロータリ耕耘機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対地作業機(18)をローリングシリンダ(9)の作動でローリング可能に農作業機(1)に装着すると共に農作業機(1)の走行機体に傾斜センサ(14)と角速度センサ(16)を設け、前記傾斜センサ(14)の検出に基づく絶対傾斜角(θs)を基準に対地作業機(18)のローリング制御を行うか、角速度センサ(16)の検出に基づく相対傾斜角(θk)又は前記絶対傾斜角(θs)に角速度センサ(16)の相対傾斜角(θk)を加味した作業機傾斜目標角(θt)を基準に対地作業機(18)のローリング制御を行うかを判定する手段を設け、前記判定手段の判定結果にもとづき、走行機体の傾き検出時に角速度センサ(16)の傾斜検出値に基づいてローリングシリンダ(9)に作動パルス信号を出力してローリング制御を行い、傾斜センサ(14)の傾斜検出値でローリングシリンダ(9)に作動パルス信号を続けて出力してローリング制御を行うよう構成すると共に、角速度センサ(16)の制御時の出力パルスのオン時間を傾斜センサ(14)の制御時の出力パルスのオン時間よりも長くしたことを特徴とする農作業機の対地作業機自動ローリング制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−30464(P2011−30464A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178033(P2009−178033)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】