説明

農作業機

【課題】 農作業機を小型・軽量化し、作業部の手動による移動操作を容易にする。
【解決手段】 溝掘り機1は、走行機体90の後部に装着される装着部10と、これに配設されて走行機体90の側方に移動可能なオフセット機構20と、この後端部に水平回動自在に配設されて溝掘り作業を行なう作業部50を有する。オフセット機構20はヒッチフレーム11、上スイングアーム21、下スイングアーム22、オフセットアーム27、リヤアーム24を有して平行リンク機構を形成する。作業部50はリヤアーム24に取り付けられた支持軸35から横方向へ延びるフレーム部51を備える。上スイングアーム21及びフレーム部51は強度メンバーとして機能し、これらの動力伝達機構部は上スイングアーム21及びフレーム部51と独立して設けられる。オフセット機構20の移動及びフレーム部51の回動によって、作業部50は所望の作業位置に設置可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に装着され、走行機体の走行に応じて進行しながら走行機体から伝達される動力によって作業を行なう農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような農作業機には、溝掘り作業を行う作業部を備えたものがある。この農作業機は、溝掘り作業を行う作業部を走行機体の後方中央作業位置の他に、走行機体の走行位置に対して側方にオフセットした位置に設置して溝掘り作業を行うことができるように、作業部を走行機体に対して左右方向に移動させるオフセット機構を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のオフセット機構は、走行機体(文献ではトラクタ)の後部装着機構(文献では3点リンク機構2)に装着されて走行機体からの動力が入力される入力軸を備えた装着部(文献では固定機枠8)に、一端側が回動自在に取り付けられて走行機体の後方側へ延びて左右方向に揺動自在なオフセットフレーム(文献では可動機枠10)を有し、オフセットフレームの他端側端部には作業部が回動可能に取り付けられている。
【0004】
オフセットフレームは、作業部を保持する強度メンバーとして機能するとともに、入力軸に伝達された動力を作業部側に伝達するための動力伝達機能を備えている。つまり、オフセットフレームには動力伝達機構部が内蔵されている。従って、作業部の重量によってオフセットフレームが変形すると、動力伝達機構部による動力伝達が困難になる虞が生じるため、オフセットフレームは、骨組みを構成する部材の太さや骨組みを覆う板部材の厚さを大きくしたり、リブ等を設けたりして、強固に設計されている。
【0005】
【特許文献1】実開昭57−22557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、オフセットフレームを強固に構成すると、フレーム自体の構造が複雑化するとともに、重量が増大する。その結果、作業部を手動によって移動させる場合の移動操作が重たくて煩わしく、またトラクタとのマッチングバランスが悪くなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、農作業機を小型・軽量化し、作業部の手動による移動操作が容易な農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の農作業機(例えば、実施形態における溝掘り機1)は、走行機体の後部装着機構(例えば、実施形態における三点リンク連結機構91)に装着され、該走行機体からの動力が入力される入力軸を備えた装着部と、該装着部から左右方向に移動可能なオフセット機構と、該オフセット機構の移動端側に水平方向に回動自在に配設されて入力軸から伝達される動力によって作業を行なう作業部とを有し、作業部は、オフセット機構の移動端側に回動支点を設けて該回動支点から所定方向へ延びるフレーム部を備え、該フレーム部とともに回動支点を回動中心として回動可能であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、作業部は、オフセット機構の移動端側に設けられた回動支点から所定方向へ延びるフレーム部を備え、フレーム部とともに回動支点を回動中心として回動可能とすることで、手動操作によってフレーム部を回動したり、オフセット機構を移動したりすることができ、作業部の移動を手動操作によって容易に行うことができる。
【0010】
また本発明は、走行機体の後部装着機構に装着され、該走行機体からの動力が入力される入力軸を備えた装着部と、該装着部から左右方向に移動可能なオフセット機構と、該オフセット機構の移動端側に水平方向に回動自在に配設されて入力軸から伝達される動力によって作業を行なう作業部とを有し、作業部は、オフセット機構の移動端側に回動支点を設けて該回動支点から所定方向へ延びるフレーム部を備え、該フレーム部とともに回動支点を中心として回動可能とし、オフセット機構の移動端側に配設されて該オフセット機構に連動する可動部材(例えば、実施形態におけるリヤアーム24)にフレーム部を固定可能にしたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、作業部は、オフセット機構の移動端側に設けられた回動支点から所定方向へ延びるフレーム部を備え、フレーム部とともに回動支点を回動中心として回動可能とし、オフセット機構の移動端側に配設されてオフセット機構に連動する可動部材にフレーム部を固定可能にすることで、手動操作によってフレーム部を回動したり、オフセット機構を移動したりすることができ、作業部の移動を手動操作によって容易に行うことができる。また、作業部を、フレーム部を介して可動部材に固定することができる。このため、作業部の向きを一定にしたままで、作業部をオフセット移動させることができる。
【0012】
また本発明は、オフセット機構の移動及びフレーム部の回動によって、作業部は、走行機体の片側オフセット作業位置(例えば、実施形態における第1右側オフセット作業位置P1、第2右側オフセット作業位置P2)、走行機体の後方中央作業位置(例えば、実施形態における後方中央作業位置P4)、走行機体の反転された逆側オフセット作業位置(例えば、実施形態における左側オフセット作業位置P5)に設置可能であることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、オフセット機構の移動及びフレーム部の回動によって、作業部を片側オフセット作業位置、後方中央作業位置、逆側オフセット作業位置に設置可能にすることで、作業部を、後方中央作業位置、片側オフセット作業位置から逆側オフセット作業位置、逆側オフセット作業位置から片側オフセット作業位置に設置することができる。従って、作業部の作業位置への設置作業を容易にすることができ、設置作業の作業性を向上させることができる。またオフセット機構の移動及びフレーム部の回動によって、オフセット機構とフレーム部が回動支点で折れた状態で収納できるので、作業部を装着部側に接近した走行機体の後方位置に収納することができ、収納状態にある農作業機の前後方向長さを短くすることができる。
【0014】
さらに本発明は、オフセット機構及びフレーム部における動力伝達機構部が、オフセット機構及びフレーム部のそれぞれの強度メンバーとして機能する支持部材(例えば、実施形態における上スイングアーム21、フレーム部51)と独立していることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、オフセット機構及びフレーム部の動力伝達機構部が支持部材と独立していることにより、支持部材の構成が簡易化され、支持部材の重量を軽量化することができる。このため、農作業機全体の小型化が可能になり、農作業機を小型の走行機体に装着して、農作業の対象範囲を拡大することができる。また農作業機が小型化することで農作業機全体の重量が軽くなるので、手動操作による作業部の移動をより容易に行うことができる。
【0016】
また本発明は、オフセット機構が、平行リンク機構を有して構成され、該平行リンク機構を構成する複数のリンク部材(例えば、実施形態における上スイングアーム21、下スイングアーム22、オフセットアーム27)のいずれかに取り付けられて、後進作業において、取り付けられたリンク部材に隣接する他のリンク部材に当接して、後進作業によって作業部を介して平行リンク機構に作用する力を受ける受け板を有することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、オフセット機構を平行リンク機構で構成し、平行リンク機構を構成する複数のリンク部材のいずれかに受け板を取り付け、後進作業において、受け板がこれを取り付けたリンク部材に隣接する他のリンク部材に当接して後進作業によって平行リンク機構に作用する力を受けることにより、平行リンク機構が所定の長さより短くなる平行リンク機構の縮小動作を規制することができる。このため、平行リンク機構の長さが所望の長さになるように、平行リンク機構の揺動を規制する揺動規制部材が取り付けられている場合、この揺動規制部材やこれを平行リンク機構に取り付けるための固定部材の強度を小さくすることができる。また、受け板を平行リンク機構に設けることにより、平行リンク機構自体の強度が向上するので、平行リンク機構のリンク部材の強度を低くすることができる。このため、オフセット機構を軽量化し、コストを安価にすることができる。
【0018】
また本発明は、作業部が溝掘り体を備えた溝掘り作業部(例えば、実施形態における作業部50)であることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、作業部を溝掘り体を備えた溝掘り作業部とすることで、手動によってフレーム部の回動やオフセット機構の移動が可能であり、作業部のオフセット移動が可能であり、作業部の作業位置への設置作業が容易であり、農作業機全体の小型化が可能であり、手動による作業部の移動操作が容易であるという利点を有した農作業機を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係わる農作業機によれば、作業部はオフセット機構の移動端側に設けた回動支点から延びるフレーム部を備えて、フレーム部とともに回動支点を回動中心として回動可能とし、オフセット機構及びフレーム部の動力伝達機構部が、オフセット機構及びフレーム部のそれぞれの強度メンバーとして機能する支持部材と独立とすることで、農作業機を小型・軽量化し、手動による作業部の移動操作が容易な農作業機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係わる農作業機の好ましい実施の形態を図1から図8に基づいて説明する。本実施の形態は、農作業機の一例である溝掘り機について説明する。なお、説明の都合上、図1(平面図)及び図2(裏面図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
【0022】
溝掘り機1は、図1、図2及び図3(側面図)に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結されて、走行機体90の前進動及び後進動に応じて溝掘り作業を行なうものである。溝掘り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸4aを備えた装着部10と、装着部10に取り付けられて走行機体90の左右方向に移動可能なオフセット機構20と、オフセット機構20の移動端側(後端側)に水平方向に回動自在に配設されて入力軸4aから伝達される動力によって走行機体90の左右両側で溝掘り作業を行なう作業部50とを有してなる。
【0023】
装着部10は、左右方向に延びるヒッチフレーム11と、ヒッチフレーム11の前側に取り付けられて走行機体90に設けられた三点リンク連結機構91に連結可能な連結フレーム13とを有してなる。ヒッチフレーム11の左右方向の中央部にはギアボックス4が設けられている。このギアボックス4は前述した入力軸4aを備え、入力軸4aは、走行機体90のPTO軸(図示せず)から伝動軸(図示せず)を介して動力が伝達されるようになっている。
【0024】
オフセット機構20は、ヒッチフレーム11の中央上部及び中央下部に前端側をリンク支点としてヒッチフレーム11に回動自在に連結されて後方側へ延びる上下一対の上スイングアーム21及び下スイングアーム22と、上スイングアーム21の左側に沿って並設されて前端側がヒッチフレーム11の左側端部に回動自在に連結されて後端側が上スイングアーム21の後端部を回動自在に取り付けたリヤアーム24に繋がるオフセットアーム27とを有してなる。上スイングアーム21、下スイングアーム22及びオフセットアーム27は、作業部50を支持する強度メンバーとしての機能を有するパイプ状部材である。
【0025】
上スイングアーム21及び下スイングアーム22の後端部は、リヤアーム24の中央上部及び中央下部のそれぞれから後方側へ突出した一対のブラケット25に回動自在に取り付けられ、オフセットアーム27の前端部は、ヒッチフレーム11の左側端部に前側に突出して設けられたブラケット12に取り付けられて、オフセット機構20は、ヒッチフレーム11、上スイングアーム21、下スイングアーム22、オフセットアーム27及びリヤアーム24によって平行リンク機構を構成している。
【0026】
上スイングアーム21とオフセットアーム27との間には、オフセット機構20の揺動を規制する揺動規制部材30が取り付けられている。揺動規制部材30は、一端側端部が上スイングアーム21に回動自在に取り付けられ、他端側がロックピン31を介してオフセットアーム27に設けられた連通孔(図示せず)に連結自在に取り付けられる。揺動規制部材30にはロックピン31を挿通するピン孔32が複数設けられている。これらのピン孔32は、作業部50の設置位置に応じて揺動規制部材30の軸方向に所定間隔を有して配置されている。即ち、ピン孔32は、図5(a)及び図5(b)に示すように、溝掘り機1が前進しながら溝掘り作業を可能にする作業部位置(第1右側オフセット作業位置P1、第2右側オフセット作業位置P2)に作業部50を移動させる第1ピン孔32a及び第2ピン孔32b、図1に示すように、作業部50を格納する格納位置P3に作業部50を移動させる第3ピン孔32c、図6(a)に示すように、溝掘り機1が後進しながら溝掘り作業を可能にする作業部位置(左側オフセット作業位置P5)に作業部50を移動させるとともに、図6(b)に示すように、溝掘り機1が前進しながら作業部50が走行機体90の後方中央位置(後方中央作業位置P4)で溝掘り作業を可能にする第4ピン孔32dを有して、これらの孔は揺動規制部材30の左側端部から右側端部側に配置されている。なお、図5(b)に示す第1右側オフセット作業位置P1は、図5(a)に示す第2右側オフセット作業位置P2よりも左右方向外側の位置として設定されている。
【0027】
図1及び図3に示すように、一対のブラケット25間にはこれらを挿通して上下方向に延びる支持軸35が回動自在に取り付けられている。この支持軸35に作業部50の一部を構成するフレーム部51の先端部が挿通された状態で取り付けられて、フレーム部51は支持軸35を回動中心の回動支点として左右方向に回動可能である。つまり、フレーム部51は、リヤアーム24に沿ってフレーム部51の先端部がリヤアーム24の右側端部の近傍位置に移動する右側位置と、リヤアーム24に沿ってフレーム部51の先端部がリヤアーム24の左側端部の近傍位置に移動する左側位置との間を回動可能である。
【0028】
フレーム部51の先端部にはロック装置52が取り付けられている。ロック装置52はフレーム部51にロック部53を備える。ロック部53は、フレーム部51の左右の端部に挿抜自在に取り付けられるピン54と係合すると、フレーム部51がリヤアーム24に沿った状態で、フレーム部51の回動作をロックする。
【0029】
フレーム部51の先端部には作業部50が固定された状態で取り付けられている。つまり、作業部50はフレーム部51とともに支持軸35を回動中心として回動する。作業部50は、フレーム部51の先端部に取り付けられて下方へ延びる本体フレーム57と、本体フレーム57に回転動自在に取り付けられた溝掘り体60とを有して、溝掘り作業部を構成する。溝掘り体60は上下方向に延びる回転軸61を備え、回転軸61の下部には螺旋刃体62が取り付けられ、回転軸61の上部には跳ね出し板63が取り付けられている。本体フレーム57は、その上部に跳ね出し板63によって跳ね飛ばされた排土等を所定の方向に排出するためのカバー部58を有している。このため、螺旋刃体62によって削られた排土等は、螺旋刃体62の回転によって上方に持ち上げられて移動して、跳ね出し板63によって外側方向に飛ばされて、カバー部58に沿って所定方向に排出される。
【0030】
次に、走行機体90からの動力を作業部50に伝達する動力伝達機構部について説明する。動力伝達機構部70は、図3に示すように、上スイングアーム21の上方位置に配設された第1動力伝達機構部71と、フレーム部51の上方位置に配設された第2動力伝達機構部78とを有してなる。第1動力伝達機構部71は、チェーン伝動機構であり、ギアボックス4に設けられて上方へ延びる駆動軸4bに取り付けられた駆動スプロケット72と、支持軸35の上端部に取り付けられた従動スプロケット73と、これらのスプロケット間に掛け回されたチェーン74と、これらの機構部を覆うカバー部75とを有してなる。また、第2動力伝達機構部78は、第1動力伝達機構部71と同様にチェーン伝動機構であり、支持軸35の上端部であって従動スプロケット73の下方の軸部に取り付けられた駆動スプロケット79と、回転軸61の上端部に取り付けられた従動スプロケット80と、これらのスプロケット間に掛け回されたチェーン81と、これらの機構部を覆うカバー部82とを有してなる。
【0031】
このように、第1動力伝達機構部71は上スイングアーム21と独立して設けられ、第2動力伝達機構部78はフレーム部51と独立して設けられている。つまり、上スイングアーム21及びフレーム部51の役割は作業部50を支持するための強度メンバーとしての機能を有ることであるので、上スイングアーム21及びフレーム部51は、第1動力伝達機構部71及び第2動力伝達機構部78と分離されて設けられている。このため、上スイングアーム21及びフレーム部51の各構造は簡易化されている。その結果、上スイングアーム21及びフレーム部51は簡易化して、溝掘り機全体を小型化することができる。また、溝掘り機全体の小型化により溝掘り機1の重量を軽量化することができる。
【0032】
次に、手動操作によって溝掘り機1の作業部50を所望の作業位置に設置する場合の作業部50の移動操作について説明する。作業部50を第1右側オフセット作業位置P1に設置するには、図4(e)に示すように、フレーム部51を右側位置に移動させ、ロック装置52によってフレーム部51をリヤアーム24にロックさせる。そして、オフセットアーム27の連通孔(図示せず)と移動規制部材30の図5(b)に示す第1ピン孔32aとが連通するように、オフセット機構20を揺動させ、連通状態にされたこれらの孔にロックピン31を挿通する。その結果、オフセット機構20は左右方向の揺動が規制され、作業部50は第1右側オフセット作業位置P1に設置される。
【0033】
作業部50を第2右側オフセット作業位置P2に設置する場合には、図4(d)に示すように、フレーム部51を右側位置に移動させ、ロック装置52によってフレーム部51をリヤアーム24にロックする。そして、オフセットアーム27の連通孔と移動規制部材30の図5(a)に示す第2ピン孔32bとが連通するように、オフセット機構20を揺動させ、連通状態にされたこれらの孔にロックピン31を挿通する。その結果、オフセット機構20は左右方向の揺動が規制され、作業部50は第2右側オフセット作業位置P2に設置される。
【0034】
作業部50を格納位置P3に設置する場合には、図4(c)に示すように、フレーム部51を右側位置に移動させ、ロック装置52によってフレーム部51をリヤアーム24にロックする。そして、オフセットアーム27の連通孔と移動規制部材30の図1に示す第3ピン孔32cとが連通するように、オフセット機構20を揺動させ、連通状態にされたこれらの孔にロックピン31を挿通する。その結果、オフセット機構20は左右方向の揺動が規制され、作業部50は格納位置P3に設置される。
【0035】
作業部50を後方中央作業位置P4に設置する場合には、図4(b)に示すように、フレーム部51を右側位置に移動させ、ロック装置52によってフレーム部51をリヤアーム24にロックする。そして、オフセットアーム27の連通孔と移動規制部材30の図6(b)に示す第4ピン孔32dとが連通するように、オフセット機構20を揺動させ、連通状態にされたこれらの孔にロックピン31を挿通する。その結果、オフセット機構20は左右方向の揺動が規制され、作業部50は後方中央作業位置P4に設置される。
【0036】
作業部50を左側オフセット作業位置P5に設置する場合には、図4(a)に示すように、フレーム部51を左側位置に移動させ、ロック装置52によってフレーム部51をリヤアーム24にロックする。そして、オフセットアーム27の連通孔と移動規制部材30の図6(a)に示す第4ピン孔32dとが連通するようにオフセット機構20を揺動させ、連通状態にされたこれらの孔にロックピン31を挿通する。その結果、オフセット機構20は左右方向の揺動が規制され、作業部50は左側オフセット作業位置P5に設置される。
【0037】
このように、フレーム部51の回動操作、オフセット機構20の揺動操作及びロックピン31の挿抜操作のみで、作業部50を所望の作業位置に設置することができる。またオフセット機構20を構成する上スイングアーム21や作業部50の一部であるフレーム部51は軽量化されているので、作業部50の移動操作を容易に行うことができる。
【0038】
さて、図7(斜視図)に示すように、平行リンク機構を構成する上スイングアーム21及び下スイングアーム22の間に配置されてこれらのアーム21,22の先端側に受け板85を設けてもよい。この受け板85は、基端部側がこれらのアーム21,22に固着されて先端側が前側に屈曲して延びる。受け板85の先端側はリヤアーム24の前側面24aに当接可能な当接面85aを有して形成される。受け板85は、作業部50が左側オフセット作業位置P5に移動すると、受け板85の当接面85aがリヤアーム24の前側面24aに当接するように上スイングアーム21及び下スイングアーム22に取り付けられている。
【0039】
このため、図8(平面図)に示すように、作業部50が左側オフセット作業位置P5に移動して揺動規制部材30によって平行リンク機構の揺動が規制された状態で溝掘り機1が矢印A方向に進みながら後進作業を行うと、作業部50を介して平行リンク機構に作用する前側に向く力Fは、平行リンク機構を圧縮する方向に作用する。このため、リヤアーム24は前側に移動する。これと同時に、受け板85がリヤアーム24に接近する方向に移動して、受け板85の当接面85aがリヤアーム24の前側面24aに当接する。その結果、平行リンク機構の圧縮動が規制されて、作業部50は左側オフセット作業位置P5に維持される。
【0040】
このため、揺動規制部材30やこれを平行リンク機構に取り付けるためのロックピン31に作用する力を小さくすることができ、その結果として揺動規制部材30やロックピン31の強度を小さくすることができる。また、受け板85を平行リンク機構に設けることにより、平行リンク機構自体の強度が向上するので、平行リンク機構を構成するオフセットアーム27、上スイングアーム21及び下スイングアーム22の強度を低くすることができる。このため、オフセット機構20を軽量化し、コストを安価にすることができる。
【0041】
なお、前述した実施例では、受け板85を上スイングアーム21及び下スイングアーム22の先端側に取り付けた例を示したが、受け板85の取り付け位置はこれに限るものはなく、上スイングアーム21及び下スイングアーム22の基部側、オフセットアーム27の先端側又は基部側に取り付けてもよい。受け板85を、上スイングアーム21及び下スイングアーム22の基部側、又はオフセットアーム27の基部側に取り付けた場合には、受け板85の当接面85aはヒッチフレーム11の後側面11aに当接する。また受け板85を、オフセットアーム27の先端側に取り付けた場合には、受け板85の当接面85aはリヤアーム24の前側面24aに当接する。このように構成することで、受け板85を上スイングアーム21及び下スイングアーム22の先端側に取り付けた場合と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また前述した実施の形態では、農作業機として溝掘り機1を例にして説明したが、農作業機として畦塗り作業を行う畦塗り機でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる溝掘り機の平面図を示す。
【図2】溝掘り機の裏面図を示す。
【図3】溝掘り機の側面図を示す。
【図4】溝掘り機の作業部が設置可能な設置位置を示した平面図である。
【図5】作業部の設置位置を示した平面図であり、同図(a)は第2右側オフセット作業位置を示し、同図(b)は第1右側オフセット作業位置を示す。
【図6】作業部の設置位置を示した平面図であり、同図(a)は左側オフセット作業位置を示し、同図(b)は後方中央作業位置を示す。
【図7】受け板を設けたオフセット機構の模式後方側斜視図を示す。
【図8】受け板の動作を説明するためのオフセット機構の模式平面図を示す。
【符号の説明】
【0044】
1 溝掘り機(農作業機)
4a 入力軸
10 装着部
20 オフセット機構
21 上スイングアーム(支持部材、リンク部材)
22 下スイングアーム(リンク部材)
24 リヤアーム(可動部材、リンク部材)
27 オフセットアーム(リンク部材)
50 作業部(溝掘り作業部)
51 フレーム部(支持部材)
60 溝掘り体
71 第1動力伝達機構部(動力伝達機構部)
78 第2動力伝達機構部(動力伝達機構部)
90 走行機体
91 三点リンク連結機構(後部装着機構)
P1 第1右側オフセット作業位置(片側オフセット作業位置)
P2 第2右側オフセット作業位置(片側オフセット作業位置)
P4 後方中央作業位置
P5 左側オフセット作業位置(逆側オフセット作業位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部装着機構に装着され、該走行機体からの動力が入力される入力軸を備えた装着部と、該装着部から左右方向に移動可能なオフセット機構と、該オフセット機構の移動端側に水平方向に回動自在に配設されて前記入力軸から伝達される動力によって作業を行なう作業部とを有し、
前記作業部は、前記オフセット機構の移動端側に回動支点を設けて該回動支点から所定方向へ延びるフレーム部を備え、該フレーム部とともに前記回動支点を回動中心として回動可能であることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
走行機体の後部装着機構に装着され、該走行機体からの動力が入力される入力軸を備えた装着部と、該装着部から左右方向に移動可能なオフセット機構と、該オフセット機構の移動端側に水平方向に回動自在に配設されて前記入力軸から伝達される動力によって作業を行なう作業部とを有し、
前記作業部は、前記オフセット機構の移動端側に回動支点を設けて該回動支点から所定方向へ延びるフレーム部を備え、該フレーム部とともに前記回動支点を中心として回動可能とし、前記オフセット機構の移動端側に配設されて該オフセット機構に連動する可動部材に前記フレーム部を固定可能にしたことを特徴とする農作業機。
【請求項3】
前記オフセット機構の移動及び前記フレーム部の回動によって、前記作業部は、前記走行機体の片側オフセット作業位置、前記走行機体の後方中央作業位置、前記走行機体の反転された逆側オフセット作業位置に設置可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記オフセット機構及び前記フレーム部における動力伝達機構部は、前記オフセット機構及び前記フレーム部のそれぞれの強度メンバーとして機能する支持部材と独立していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の農作業機。
【請求項5】
前記オフセット機構は、平行リンク機構を有して構成され、
該平行リンク機構を構成する複数のリンク部材のいずれかに取り付けられて、後進作業において、前記取り付けられたリンク部材に隣接する他のリンク部材に当接して、後進作業によって前記作業部を介して前記平行リンク機構に作用する力を受ける受け板を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の農作業機。
【請求項6】
前記作業部は、溝掘り体を備えた溝掘り作業部であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の農作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−61151(P2006−61151A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112380(P2005−112380)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】