説明

近接場光発生装置、近接場光ヘッドおよび近接場発生装置の製造方法

【課題】 光導波路の媒体対向面に近接場光発生素子が容易かつ高精度に成形可能な熱アシスト磁気記録方式の近接場光発生装置、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 第1導波路と、第1導波路の光軸上に備えられた第2導波路とを備える。次に、第1導波路と第2導波路との境界において、第2導波路の断面のうち、第1導波路の断面に相当する部分以外の露出部分に犠牲膜を形成し、犠牲膜をマスクとして第1導波路を除去する。次に、犠牲膜の第1導波路の除去された部分に金属膜を形成する。これにより、金属膜は、第2導波路の光軸上に近接場光発生素子として形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光発生装置、近接場光ヘッドおよび近接場光発生装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスク等の容量増加に伴い、単一記録面内における情報の記録密度が増加している。例えば、磁気ディスクの単位面積当たりの記録容量を多くするためには、面記録密度を高くする必要がある。ところが、記録密度が高くなるにつれて、記録媒体上で1ビット当たりの占める記録面積が小さくなっている。このビットサイズが小さくなると、1ビットの情報が持つエネルギーが、室温の熱エネルギーに近くなり、記録した情報が熱揺らぎ等のために反転したり、消えてしまったりする等の熱減磁の問題が生じてしまう。
【0003】
一般的に用いられてきた面内記録方式では、磁化の方向が記録媒体の面内方向に向くように磁気を記録する方式であるが、この方式では上述した熱減磁による記録情報の消失等が起こり易い。そこで、このような不具合を解消するために、近年では記録媒体に対して垂直な方向に磁化信号を記録する垂直記録方式が採用されている。この方式は、記録媒体に対して、単磁極を近づける原理で磁気情報を記録する方式である。この方式によれば、記録磁界が記録膜に対してほぼ垂直な方向を向く。垂直な磁界で記録された情報は、記録膜面内においてN極とS極とがループを作り難いため、エネルギー的に安定を保ち易い。そのため、この垂直記録方式は、面内記録方式に対して熱減磁に強くなっている。
【0004】
しかしながら、近年の記録媒体は、より大量且つ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものが記録媒体として採用され始めている。そのため、上述した垂直記録方式であっても、記録媒体に情報を記録することが困難になっていた。
【0005】
そこで、上述した不具合を解消するために、近接場光を利用して情報を記録する磁区を局所的に加熱し、一時的に保磁力を低下させ、その間に記録媒体への書き込みを行う熱アシスト磁気記録方式の情報記録再生装置が考案され開発が進められている。
【0006】
このような情報記録再生装置の記録再生ヘッドのうち、近接場光を利用した記録再生ヘッド(以下、近接場光ヘッドという)には、例えば特許文献1に示されるように、スライダ底面に近接場光を発生させるための平面状の三角形の形状をした散乱体を形成し、その上部に光を導入するための導波路を形成している。そして導波路の下部における散乱体近傍の領域を導波路のコアとは異なる材質で覆い、その材質の屈折率は導波路のコアよりも小さくなるようにしている。ここで導波路の下部とは、スライダ底面に近い部分を言う。このように、近接場光が発生する散乱体の近傍の材料の屈折率を小さくすることにより、散乱体近傍の材料中に発生する分極の大きさを小さくすることが出来、その結果、散乱体中に発生する近接場光強度を大きくすることが出来ると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−280572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術の近接場光ヘッドは、製造方法に関して開示されておらず、記録素子を構成する主磁極、補助磁極およびコイルと散乱体まで光束を伝播するコアおよびクラッドとが、磁気記録媒体の表面に沿った方向に積層された積層構造体となっている。このため、磁気記録媒体の表面に対向する対向面に散乱体を形成する上記した従来の近接場光ヘッドでは、上気した積層構造体の積層方向に直交する端面に散乱体を形成することになるので、散乱体を形成する作業が煩雑であるという問題がある。
【0009】
また、近接場光発生素子の頂点や膜厚には数nmから数十nm程度の加工精度が要求され、電子線描画装置や集束イオンビーム装置などの極めて高度な微細加工技術が必要となる。このように、高度な微細加工技術を記録ヘッド製造へ応用するのは、量産化に不向きであると予想される。
【0010】
そこで本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、光導波路の媒体対向面に近接場光発生素子が容易かつ高精度に成形可能な熱アシスト磁気記録方式の近接場光発生装置、および近接場発生装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の手段を提案する。光束を近接場光として発生させる近接場光発生素子を備えた近接場光発生装置の製造方法であって、第1導波路と、第1導波路の光軸上に備えられた第2導波路とを備える工程と、第1導波路と第2導波路との境界において、第2導波路の断面のうち、第1導波路の断面に相当する部分以外の露出部分に犠牲膜を形成する工程と、犠牲膜をマスクとして第1導波路を除去する導波路除去工程と、犠牲膜の第1導波路の除去された部分に金属膜を形成する工程と、犠牲膜を除去する工程とを備え、金属膜は、第2導波路の光軸上の近接場光発生素子として形成される。
【0012】
このような製造方法により、第1導波路と金属膜との断面形状を同一形状に形成可能となる。そのため、第1導波路の形状、寸法を制御することによって、所望の金属膜の形状、寸法が形成可能となる。
【0013】
また、本発明の近接場光発生装置の製造方法において、導波路除去工程は、第1導波路を除去するとともに、犠牲膜をマスクとして第2導波路の一部を除去するものである。これにより、第2導波路に対する金属膜の位置を制御することが可能となる。
【0014】
また、本発明の近接場光発生装置の製造方法において、犠牲膜を形成する工程は、フォトリソグラフィー技術を用いるものである。
【0015】
また、本発明の近接場光発生装置の製造方法において、パターニング工程では、第1導波路は犠牲構造体を含み、犠牲構造体は、第2導波路と同一材料で構成する。あるいは、犠牲構造体は、第2導波路と異なる材料で構成する。
【0016】
また、本発明の近接場光発生装置の製造方法において、第1導波路の断面形状は、三角形である。
また、本発明の近接場光発生装置の製造方法において、第2導波路の断面形状は、四角形である。
また、本発明は、以上の製造方法を用いて製造された近接場光発生装置を提供する。
【0017】
また、本発明は、以上の近接場光発生装置を含み、一定方向に回転する磁気記録媒体の表面に沿って移動可能なスライダと、スライダに保持されていると共に、主磁極および補助磁極を有し、磁気記録媒体の表面に対向する対向面から記録磁界を発生させる記録素子とを備え、近接場光によって磁気記録媒体を加熱すると共に、記録素子から発生する記録磁界によって磁気記録媒体に磁化反転を生じさせることにより、磁気記録媒体に情報を記録することを特徴とする近接場光ヘッドを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子線描画装置や集束イオンビーム装置などの高度な微細加工技術を必要とせずに、既存の成膜技術で製造できるため、容易に光導波路の媒体対向面に近接場光発生素子を形成可能である。また、光導波路に対して位置ずれが生じず、寸法と厚みを制御可能であるため、高精度に近接場光発生素子を形成できる近接場光発生装置、近接場光ヘッドおよび近接場光発生装置の製造方法を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置を示す構成図である。
【図2】本発明に係る近接場光ヘッドの拡大断面図である。
【図3】図2に示す近接場光ヘッドを、ディスク面側から見た図である。
【図4】図2に示す近接場光ヘッドの断面図である。
【図5】光導波路のコアと近接場光発生素子とを拡大表示した斜視図である。
【図6−1】(A)〜(F) 図5に示すAA'断面およびB側面のそれぞれから、記録ヘッドの第1実施形態の製造プロセスを示した図である。
【図6−2】(G)〜(I) 図5に示すAA'断面およびB側面のそれぞれから、図6−1に続く記録ヘッドの第1実施形態の製造プロセスを示した図である。
【図7−1】(A)〜(F) 図5に示すAA'断面およびB側面のそれぞれから、記録ヘッドの第2実施形態の製造プロセスを示した図である。
【図7−2】(G)〜(I) 図5に示すAA'断面およびB側面のそれぞれから、図7−1に続く記録ヘッドの第2実施形態の製造プロセスを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る情報記録再生装置の記録ヘッド製造方法の第1実施形態を、図1から図6を参照して説明する。
【0021】
まず、情報記録再生装置1と記録ヘッド2の構造について図1から図5を用いて説明する。本実施形態における情報記録再生装置1は、図1に示すように、記録ヘッド2と、ディスク面(磁気記録媒体の表面)D1に平行なXY方向に移動可能とされ、ディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態で記録ヘッド2を先端側で支持するサスペンション3と、光束導入手段4の基端側から該光束導入手段4に対して光束Lを入射させる光信号コントローラ(光源)5と、サスペンション3の基端側を支持すると共に、該サスペンション3をディスク面D1に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ6と、ディスクDを一定方向に回転させるスピンドルモータ(回転駆動部)7と、後述する記録素子21及び光信号コントローラ5の作動を制御する制御部8と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9とを備えている。
【0022】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されていると共に、内側に各構成品を収容する凹部9aが形成されている。また、このハウジング9には、凹部9aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。
【0023】
凹部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。凹部9aの隅角部には、上記アクチュエータ6が取り付けられている。このアクチュエータ6には、軸受10を介してキャリッジ11が取り付けられており、該キャリッジ11の先端にサスペンション3が取り付けられている。そして、キャリッジ11及びサスペンション3は、アクチュエータ6の駆動によって共に上記XY方向に移動可能とされている。
【0024】
なお、キャリッジ11及びサスペンション3は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ6の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。また、記録ヘッド2とサスペンション3とで、ヘッドジンバルアセンブリ12を構成している。また、光信号コントローラ5は、アクチュエータ6に隣接するように凹部9a内に取り付けられている。そして、このアクチュエータ6に隣接して、上記制御部8が取り付けられている。
【0025】
上記記録ヘッド2は、回転するディスクDを加熱すると共に、ディスクDに対して垂直方向の記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させるものである。
【0026】
この記録ヘッド2は、図2及び図3に示すように、ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態でディスクDに対向配置され、ディスク面D1に対向する対向面20aを有するスライダ20と、該スライダ20の先端面(以降、流入端側の側面と表現する)に固定された記録素子21と、該記録素子21に隣接して固定された光導波路22と、該光導波路22の後述するコア40内に光信号コントローラ5からの光束Lを導入する光束導入手段4とを備えている。また、本実施形態の記録ヘッド2は、光導波路22に隣接して固定された再生素子23を備えている。
【0027】
上記スライダ20は、石英ガラス等の光透過性材料や、AlTiC(アルチック)等のセラミック等によって直方体状に形成されている。このスライダ20は、対向面20aをディスクD側にした状態で、ジンバル部24を介してサスペンション3の先端にぶら下がるように支持されている。このジンバル部24は、ディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りにのみ変位するように動きが規制された部品である。これによりスライダ20は、上述したようにディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在とされている。
【0028】
また、スライダ20の下面20aには、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる凸条部20bが形成されている。この凸条部20bは、長手方向(X方向)に沿って延びるように形成されており、レール状に並ぶように間隔を空けて左右(Y方向)に2つ形成されている。但し、凸条部20bはこの場合に限定されるものではなく、スライダ20をディスク面D1から離そうとする正圧とスライダ20をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、スライダ20を最適な状態で浮上させるように設計されていれば、どのような凹凸形状でも構わない。なお、この凸条部20bの表面はABS(AIR BEARING SURFACE)20cと呼ばれている。
【0029】
そしてスライダ20は、この2つの凸条部20bによってディスク面D1から浮上する力を受けている。一方、サスペンション3はディスク面D1に垂直なZ方向に撓むようになっており、スライダ20の浮上力を吸収している。つまり、スライダ20は、浮上した際にサスペンション3によってディスク面D1側に押さえ付けられる力を受けている。よってスライダ20は、この両者の力のバランスによって、上述したようにディスク面D1から所定距離H離間した状態で浮上するようになっている。しかもスライダ20は、ジンバル部24によってX軸回り及びY軸回りに回動するようになっているので、常に姿勢が安定した状態で浮上するようになっている。
【0030】
なお、ディスクDの回転に伴って生じる空気流は、スライダ20の流入端側(サスペンション3のX方向基端側)から流入した後、ABS20cに沿って流れ、スライダ20の流出端側(サスペンション3のX方向先端側)から抜けている。
【0031】
以下、スライダ20の流入端側(リーディングエッジ側)、つまり図2におけるX方向右側を「後方」とし、スライダ20の流出端側(トレイリングエッジ側)、つまり図2におけるX方向左側を「前方」とする。また、記録再生ヘッド2に対してディスク面D1側、つまり図2におけるZ方向下側を「下方」とし、その反対側、つまり図2におけるZ方向上側を「上方」とする。
【0032】
次に、記録ヘッド2の構造を説明する。図4は記録ヘッド2の断面図である。記録ヘッド2は、光束導入手段4、スライダ20、スライダ20に接する、スライダ側クラッド100、コア40、クラッド41から成る光導波路22、近接場光発生素子50、光導波路22に隣接した、主磁極32、コイル33、磁気回路31、補助磁極30、再生素子23から構成される。補助磁極30、主磁極32及び磁気回路31は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)により形成されている。また、コイル33は、ショートしないように、隣り合うコイル33間、磁気回路31との間、補助磁極30、主磁極32との間に隙間が空くように配置されており、この状態で絶縁体34によってモールドされている。磁気回路31及びコイル33は、全体として電磁石を構成している。
【0033】
図5に、記録ヘッド2のディスク面D1に対向している近接場光発生素子50と光導波路22のコア40の拡大図を示す。四角柱形状のコア40のディスクD1側端面に三角柱形状の近接場光発生素子50が形成されている。コア40の材質は屈折率の高いTa25とし、一辺の長さは500nmとする。また近接場光発生素子50の材質は、プラズモンを発生する材料であるAu、Hg、Ptとし、断面形状は三角形であり、一辺の長さは500nm、厚さは50nmとする。
【0034】
次に、情報の記録を行う場合、図1に示す制御部8は光信号コントローラ5を作動させてレーザ光L(図4に示す)を出射させるとともに、情報に応じて変調した電流をコイル33に供給して記録素子21を作動させる。
【0035】
まず、光信号コントローラ5から入射し、伝播してきたレーザ光Lを反射面25で略90度反射された後、光導波路22のコア内をスライダ上方から下方に向かって伝播する。
【0036】
レーザ光Lは、続いて、近接場光生成素子50に入射する。レーザ光Lが近接場光発生素子50に達すると、近接場光発生素子50には表面プラズモンが励起される。近接場光発生素子50は三角形とし、その頂点に特に強い表面プラズモンが発生する。
【0037】
[製造方法]
それでは、図6(A)〜(I)を用いて上述の記録ヘッド2の製造方法について説明する。
【0038】
まず、基板上にスライダ側クラッド100を形成する。具体的にはAl23、SiO2などの絶縁材料を用いる。次に、スライダ側クラッド100上に、コア40の材料であるTa25層を成膜する。成膜方法は特に限定せず、マグネトロンRFスパッタ、イオンビームスパッタなどを用いる。
【0039】
次に、図6(A)に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いてコア40上に、除去すべき領域が開口したマスクパターン(不図示)を形成し、マスクパターンを介して反応性イオンエッチング(RIE)を行う(垂直エッチング)。垂直エッチングで余分な膜を除去した後、マスクパターンを除去し、所定の寸法の四角柱形状のコア40を形成する。
【0040】
次に、図6(B)に示すように、四角柱形状のコア40が形成された状態で、フォトリソグラフィー技術を用いてエッチングマスク101をコア40上の所定の位置に形成する。エッチングマスク101は、特に限定せず、Ta25層のエッチング時に選択比のある材料であるCrなどを用いる。エッチングマスク101形成位置は、コア40の端面からある距離hほど、図6(B)AA'断面の右側にする。ただし、エッチングマスク101は任意の位置に配置可能である。また、図中ではエッチングマスク101はコア40の側面を覆っていないが、実際にはコア側面を覆っても良い。
【0041】
続いて、図6(C)に示すように、三角柱コア40aはArエッチングで成形する。四角柱コア40をスパッタエッチングすると、四角柱の角部が選択的にエッチングされて斜面が形成される。そして、この状態でさらにエッチングを続けると、斜面が底辺に対して一定の角度を保ちながらエッチングされることで、三角柱コア40aに形成される。
【0042】
その後、三角柱コア40aをさらにエッチングすると、三角柱コア40aの断面は相似形を保ちながら幅、および高さが縮小する。したがって、エッチング時間を調整すれば、所望の寸法の三角柱コア40aが成形可能である。
【0043】
その後、図6(D)に示すように、エッチングマスク101を除去し、三角柱コア40aと四角柱のコア40が接続した構造のコアを形成する。
【0044】
次に、図6(E)に示すように、三角柱コア40aおよび四角柱形状のコア40の結合部において、B側面図の三角柱コア40aの外側に位置するコア40の露出端面に犠牲膜103を形成する。まず、三角柱コア40aおよびコア40の全面を覆うようにフォトレジストを塗布し、コア40へ露光用光束L1を入射する。ここで、露光用光束L1は、コア40内を伝播していき、コア40と三角柱コア40aの接続部分に達すると、断面形状が四角形から三角形へ大きく変化するため、コア40のB側面図における露出端面から漏れ出る。漏れ出た露光用光束L1は、コア40の露出端面に塗布されたフォトレジストを露光距離g1ほど感光する。フォトレジストはネガ型フォトレジストを用いる。次に、現像液で所定時間現像を行い、感光されていないフォトレジストを除去すると、コア40の露出端面に犠牲膜103が形成できる。
【0045】
次いで、図6(F)に示すように、B側面から見て四角柱コア40の上部が見えない方向からの異方性エッチングにより犠牲膜103をマスクとして三角柱コア40aを除去する。あるいは、四角柱コア40の露出している全ての面にマスクを形成し(不図示)エッチングをしても良い。除去方法は特に限定せず、ウエットエッチング、ドライエッチング、あるいはイオンミリング法等でも良い。さらにエッチングを継続し、AA’断面図における三角柱コア40aの左側断面を、犠牲膜103の断面と面一になるようにする。本実施形態では、三角柱コア40aの左側断面と犠牲膜103の断面はスライダ側クラッド100に対して垂直としているが、クラッド100に対して斜めでも湾曲していても良い。その後、さらにエッチングを続けると、犠牲膜103をマスクとしてエッチングが進行し、犠牲膜103の左側端面からエッチング距離g2ほど三角柱が除去される。本実施形態では、エッチング距離g2が犠牲膜103の露光距離g1より長くなるようエッチングする。その結果、四角柱形状であるコア40の端面に、三角板形状の窪みが生じる。ここで、エッチング量を管理することによって、エッチング距離g2が制御できる。
【0046】
その後、図6(G)に示すように、AA’断面において、コア40および犠牲膜103の垂直断面に左側から金属膜110を成膜する。金属膜110の厚みは、成膜速度、成膜角度、成膜時間によって制御することが可能となる。
【0047】
続いて、図6(H)に示すように、犠牲膜103を除去する。除去方法は特に限定しないが、犠牲膜103のみ剥離可能なウエットエッチングなど用いれば良い。この工程で、四角柱形状のコア40端面に、三角板形状の近接場光発生素子50が埋め込まれた状態で形成できる。また、埋め込み量は、エッチング距離g2から露光距離g1の差で表すことができるため、図6(F)工程における、エッチング量g2を管理することで制御可能である。
【0048】
その後、図6(I)に示すように、全面を覆うようにAl23、SiO2などの絶縁材料であるクラッド41を形成する。その後、必要があれば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等でクラッド41の表面を研磨して、平坦面に形成する。また、クラッド41上に従来の方法によって主磁極32、磁気回路31(不図示)、絶縁体34、コイル33、再生素子23を形成する。
【0049】
次に、基板をダイシングして、一方向(X方向)に沿って複数のスライダ20が連なった状態のバー(不図示)を形成する。その後、媒体対向面Fを所定距離除去する。除去方法は特に限定されず、例えば機械的研磨や化学機械研磨(CMP)等のラッピング(研磨)法、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、化学エッチング等のエッチング法、これらの任意の組合せ等の方法により媒体対向面側の表面を所定厚み除去しても良い。研磨方法を除去方法として用いるならば、エレクトロラッピングガイド(ELG)を用い、近接場光素子50の露出面の位置だしを行えば良い。従来、磁気ヘッドはELGを用いた研磨量コントロール(研磨終端検出)を行っている。本実施例でも同様にELGを用いて、研磨の終端を近接場光発生素子50の位置に合わせれば、磁気ヘッドの研磨と同様に、近接場光発生素子50の位置で研磨を止められる。
【0050】
その後、バーを切断しスライダ20を形成する。
以上説明した工程によれば、図5で説明した記録ヘッド2を製造することが可能である。
上述の記録ヘッド2の製造方法によれば、既存のプロセス技術を用いて、光導波路22の媒体対向面に近接場光発生素子50を容易かつ高精度に形成することができる。
【0051】
まず、三角柱コア40aはコア40の一部だったため、三角柱コア40aとコア40の位置関係は同軸上である。三角柱コア40aとコア40の断面形状が異なることを利用し、B側面図において、コア40が露出している部分に犠牲膜103を形成する。この後、犠牲膜103をマスクとし、三角柱コア40aを所定距離エッチングし、媒体対向面の全面に金属膜110を成膜する。次に犠牲膜103端面に成膜された金属膜110を、自身の犠牲膜103ごと除去することで、三角柱コア40aと同一形状の近接場光発生素子50が成形する。したがって、コア40と近接場光発生素子50の位置合わせ(アライメント)が不要となる。
【0052】
また、犠牲膜103の形成において、犠牲膜103の断面は、コア40の断面から三角柱コア40aの断面を除いた部分となる。さらに、三角柱コア40aを所定距離エッチングした後、媒体対向面の全面に金属膜110を成膜し、犠牲膜103端面に成膜された金属膜110を除去する。以上の工程より、三角柱コア40aと近接場光発生素子50は同一形状となる。したがって、三角柱コア40aの形状、寸法は制御できるため、所望の形状、寸法の近接場光素子50を成形できる。さらに、近接場光発生素子50の厚みは、金属膜110の成膜時の膜厚で制御可能となる。また、三角柱コア40aを所定距離エッチングする工程において、エッチング量を管理することによって、近接場光発生素子50は、コア40に所定距離ほど埋め込まれた位置で形成可能となる。
【0053】
したがって、既存のプロセス技術で製造できるため容易に製造可能である。また、コア40に対して位置ずれがなく、所望の寸法と厚みの制御が可能であり、近接場光発生素子50はコア40に所定距離ほど埋め込まれた位置で形成可能である。そのため高精度で近接場光発生素子の配置位置の自由度が高い製造方法であると言える。以上より、容易でかつ高精度に、近接場光発生素子50を製造することができる。
以上より、本実施例の製造方法は量産に向いた記録ヘッドの製造方法となる。
【0054】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る情報記録再生装置の記録ヘッド製造方法の第2実施形態を、図7を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0055】
まず、図4、図5に示すような四角柱形状のコア40と三角板形状の近接場光発生素子50を持った記録ヘッド2の製造方法に関して説明する。
【0056】
[製造方法]
第2実施形態では、第1実施形態と同一の工程である図7(H)〜(I)の説明を省略する。
【0057】
まず、図7(A)に示すように、四角柱コア40と犠牲構造体104を、クラッド100に対して垂直面で接続するように形成する。形成方法は特に限定しないが、以下に示す内容で形成しても良い。四角柱コア40の材料であるTa25を全面に成膜する。成膜方法は特に限定せず、マグネトロンRFスパッタ、イオンビームスパッタなどを用いる。ある位置でクラッド100に対して略垂直断面が形成されるようにエッチングした後、全面を覆うように犠牲構造体104の材料を成膜する。ただし、図7では垂直断面を形成しているが、断面が形成されればクラッド100に対して斜めでも湾曲していても良い。次にAA’断面図の上方からエッチングあるいは研磨などの方法で、四角柱コア40の表面上を覆った犠牲構造体104の材料を除去する。この時、エッチングあるいは研磨した表面は光学的な平滑面になり、犠牲構造体およびコア40のAA’断面図における接続部上面は、同一平面になる条件を用いる。その後、フォトリソグラフィー技術を用いてコア40および犠牲構造体104のそれぞれの材料上に、除去すべき領域が開口したマスクパターン(不図示)を形成し、マスクパターンを介して反応性イオンエッチング(RIE)を行う(垂直エッチング)。次に、マスクパターンを除去し、所定の寸法の四角柱形状のコア40と犠牲構造体104を形成する。
【0058】
次に、図7(B)に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いてエッチングマスク101をコア40上の所定の位置に形成する。エッチングマスク101は、コア40と犠牲構造体104の接続部分と、エッチングマスク101自身の端面が同一位置になるように形成する。
【0059】
次に、図7(C)に示すように、犠牲構造体104をArエッチングで断面形状を三角形に成形する。四角柱形状の犠牲構造体104をスパッタエッチングすると、四角柱の角部が選択的にエッチングされて斜面が形成される。そして、この状態でさらにエッチングを続け、斜面が底辺に対して一定の角度を保ちながらエッチングすることで、三角柱に形成する。その後さらにエッチングを続け、三角柱形状の犠牲構造体104の断面は相似形を保ちながら幅、および高さが縮小する。エッチング量を管理することで、犠牲構造体104の断面の寸法を制御することができる。
【0060】
その後、図7(D)に示すように、エッチングマスク101を除去し、三角柱形状の犠牲構造体104と四角柱形状のコア40が接続した状態に形成する。
【0061】
次に、図7(E)に示すように、三角柱コア40aおよび四角柱形状のコア40の結合部において、B側面図の三角柱コア40aの外側に位置するコア40の露出端面に犠牲膜103を形成する。まず、三角柱コア40aおよびコア40の全面を覆うようにフォトレジストを塗布し、コア40へ露光用光束L1を入射する。ここで、露光用光束L1は、コア40内を伝播していき、コア40と三角柱コア40aの接続部分に達すると、断面形状が四角形から三角形へ大きく変化するため、コア40のB側面図における露出端面から漏れ出る。漏れ出た露光用光束L1は、コア40の露出端面に塗布されたフォトレジストを露光距離gほど感光する。フォトレジストはネガ型フォトレジストを用いる。次に、特に限定しないが、現像液で所定時間現像を行い、感光されていないフォトレジストを除去すると、コア40の露出端面に犠牲膜103が形成できる。
【0062】
次いで、図7(F)に示すように、エッチングにより犠牲構造体104を除去する。除去方法は特に限定せず、ウエットエッチング、ドライエッチング等でも良い。エッチングは、コア40の材料であるTa25に対してエッチングが進行せず、犠牲構造体104のみを選択的に除去可能な方法が良い。
【0063】
また、コア40端面を三角板形状に窪ませたい場合は、コア40の材料であるTa25に対してエッチングが進行するようなエッチングを行う。
【0064】
その後、図7(G)に示すように、AA’断面において、コア40および犠牲膜103の垂直断面に左側から金属膜110を成膜する。金属膜110の厚みは、成膜速度、成膜角度、成膜時間によって制御することが可能となる。
【0065】
上述の第2実施形態の製造方法によれば、光導波路22と近接場光発生素子50が形成されているような記録ヘッド2を容易かつ高精度に製造することができる。
【0066】
まず、図7(F)において、犠牲構造体104aの材料を除去し、犠牲膜103の材料は除去しないようなエッチングを施すことによって、近接場光発生素子50をコア40のAA’断面において左方端面に確実に形成することができる。
【0067】
また、三角柱犠牲構造体104aと近接場光発生素子50は同一形状となる。したがって、三角柱犠牲構造体104aの形状、寸法は制御できるため、所望の形状、寸法の近接場光素子50を成形できる。
【0068】
さらに、近接場光発生素子50の厚みは、金属膜110の成膜時の膜厚で制御可能となる。
【0069】
以上のことから、近接場光発生素子50を容易かつ高精度にコア40端面に形成することが可能となる。
以上より、本実施例の製造方法は量産に向いた記録ヘッドの製造方法となる。
【0070】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせて採用することも可能である。
【0071】
例えば、第1導波路と第2導波路との境界とは、第1導波路と第2導波路との端部が僅かに離間している離間状態や、第1導波路と第2導波路とが接触している接触状態を含む。この接触状態の場合、第1導波路及び第2導波路は同一の光導波路を構成することが更に好ましい。これにより、第1導波路と第2導波路とをより確実に同軸に備えることができるため、それらの境界に備えられる近接場光発生素子の位置決め精度をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0072】
D ディスク(磁気記録媒体)
D1 ディスク面
E 垂直断面
F 媒体対向面
L 光束
L1 露光用光束
R 近接場光
1 情報記録再生装置
2 記録ヘッド
3 サスペンション
4 光束導入手段
5 光信号コントローラ(光源)
6 アクチュエータ
7 スピンドルモータ(回転駆動部)
8 制御部
9 ハウジング
10 軸受
11 キャリッジ
12 ヘッドジンバルアセンブリ
20 スライダ
21 記録素子
22 光導波路
23 再生素子
24 ジンバル部
25 反射面
26 基板
30 補助磁極
31 磁気回路
32 主磁極
33 コイル
34 絶縁体
40 コア
40a 三角柱コア
41 クラッド
42 低屈折材料
50 近接場光発生素子
100 スライダ側クラッド
101、102 エッチングマスク
103 犠牲膜
104 犠牲構造体
104a 三角柱犠牲構造体
110 金属膜
h 距離
g1 露光距離
g2 エッチング距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を近接場光として発生させる近接場光発生素子を備えた近接場光発生装置の製造方法であって、
第1導波路と、前記第1導波路の光軸上に備えられた第2導波路とを備える工程と、
前記第1導波路と前記第2導波路との境界において、前記第2導波路の断面のうち、前記第1導波路の断面に相当する部分以外の露出部分に犠牲膜を形成する工程と、
前記犠牲膜をマスクとして前記第1導波路を除去する導波路除去工程と、
前記犠牲膜の前記第1導波路の除去された部分に金属膜を形成する工程と、
前記犠牲膜を除去する工程とを備え、
前記金属膜は、前記第2導波路の前記光軸上の前記近接場光発生素子として形成されることを特徴とする近接場光発生装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の近接場光発生装置の製造方法において、前記導波路除去工程は、前記第1導波路を除去するとともに、前記犠牲膜をマスクとして前記第2導波路の一部を除去することを特徴とする近接場光発生装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の何れかに記載の近接場光発生装置の製造方法において、前記犠牲膜を形成する工程は、フォトリソグラフィー技術を用いることを特徴とする近接場光発生装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の近接場光発生装置の製造方法において、
前記第1導波路は犠牲構造体を含み、前記犠牲構造体は前記第2導波路と同一材料で構成されることを特徴とする近接場光発生装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の近接場光発生装置の製造方法において、
前記第1導波路は犠牲構造体を含み、前記犠牲構造体は前記第2導波路と異なる材料で構成されることを特徴とする近接場光発生装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の近接場光発生装置の製造方法において、前記第1導波路の断面形状が三角形であることを特徴とする近接場光発生装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の近接場光発生装置の製造方法において、前記第2導波路の断面形状が四角形であることを特徴とする近接場光発生装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の近接場光発生装置の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする近接場光発生装置。
【請求項9】
請求項8に記載の近接場光発生装置と、
一定方向に回転する磁気記録媒体の表面に沿って移動可能なスライダと、
前記スライダに保持されていると共に、主磁極および補助磁極を有し、前記磁気記録媒体の表面に対向する対向面から記録磁界を発生させる記録素子とを備え、
前記近接場光によって前記磁気記録媒体を加熱すると共に、前記記録素子から発生する前記記録磁界によって前記磁気記録媒体に磁化反転を生じさせることにより、前記磁気記録媒体に情報を記録することを特徴とする近接場光ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【公開番号】特開2012−160240(P2012−160240A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20837(P2011−20837)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】