説明

近視の抑制方法及び近視を抑制する薬物とするアデニル酸シクラーゼ抑制剤の応用

本発明は近視の抑制方法に係り、該方法は眼内のcAMP作用を低減することによって近視の形成を抑制する。該方法は近視の遅発、抑制に対しては良好な効果を有する。本発明はさらにアデニル酸シクラーゼ抑制剤を近視の抑制の薬物として応用し、近視を抑制する良好な効果を効いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近視を有効に遅発、抑制する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
人類の近視眼は眼軸の延長を主要な特徴としており、眼軸延長の主な部位は眼球の後極部にある。早期の研究は、正常人眼と近視眼とは、コラーゲン線維束構造、繊維直径分布及び繊維形態などの方面において共に顕著な差異を有することを発見した。現在、哺乳類動物(ツパイ、マーモセット、モルモット)の長時間の実験近視眼においても強膜が薄くなり、強膜コラーゲン繊維が細くなり、及び近視眼における内、中、外層繊維の直径分布性変化の消失の現象が見られることをすでに発見した。これらは共に、近視の発展過程において、近視眼の強膜構造の変化が1つの能動的な再建の過程を経験したことを示唆した。
【0003】
近年来、哺乳動物近視モデル(サル、ツパイ)の研究は、実験近視眼において繊維芽細胞の成長が抑制され、コラーゲンの合成が減少され、強膜の乾燥重量が減少されたことを示した。生物力学方面の研究はさらに、近視眼強膜の薄弱は強膜応力の変化を引き起こす可能性があることを発見した。測定の結果、近視眼の強膜の徐変が増加され、強膜の弾性が増加され、組織の破壊荷重が減少されることが確認された。以上の変化は主に後極部強膜によく見られ、最終に近視の発展を招く。
【0004】
前記のように、強膜は現在すでに近視の発生と進展のターゲット組織と認められている。そのため、繊維芽細胞の活性化及び分化を調節することは、近視の発生及び進展に影響を与える可能性がある。Kohyama T, et al.(2002),Liu X, et al.(2004)等は細胞内のcAMP(環状アデノシン一リン酸)の作用を調節することは肺繊維芽細胞の活性に影響を与える可能性があることを発見した。cAMPは繊維芽細胞の活性を抑制する一部の反応において第2メッセンジャーの役割を果している。細胞内のcAMPの作用を向上することによって、肺及び心筋繊維芽細胞の分化を抑制でき、その反対に、cAMPの作用を低減することによって、肺繊維芽細胞の活性化及び分化を促進できる。但し、現在、繊維芽細胞に対するcAMPの作用の結果がまだ報道されておらず、特に近視に対するcAMPの作用がまだ発見されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は眼内のcAMPの作用を低減することによって実験近視に対して干渉を行い、近視を抑制する方法を見つけることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を実現するため、本発明により採用される技術的解決手段は、眼内のcAMP作用を低減することによって近視を抑制する。
【0007】
眼内のcAMP作用を低減する方法は通常3種を有し、第1種は、その合成を減少し、即ちアデニル酸シクラーゼ(cAMPの合成酵素)抑制剤によって、cAMPのレベルを減少し、現在最も常用されているのはSQ22536である。第2種は、その分解を増加し、即ち主にPDE酵素(cAMPを分解する)を向上することによって、cAMPのレベルを減少する。第3種は、cAMPの作用を拮抗し、即ちcAMPの作用下流部分で拮抗することによって、cAMPの作用を遮断または低減する。
【0008】
本発明はさらに近視を抑制する新型の薬物を提供し、即ちアデニル酸シクラーゼ抑制剤を近視の抑制する薬物として応用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有益な効果は、眼内のcAMPの作用を低減することによって、近視を有効に遅発、抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1は実験眼と対側眼とのジオプトリーの差分図である。
図2は実験眼と対側眼との硝子体眼房の深度の差分図である。
図3は実験眼と対側眼との眼軸の長さの差分図である。
図中、「差分」は実験眼と対側眼とのジオプトリーまたは眼軸のパラメータの差分を指し、溶剤群と投与群との間の比較は一元配置分散分析(ANOVA)が使用され、「*」はP<0.05、「* *」はP<0.01、「* * *」はP<0.001を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実験動物は3周齢のイギリス種三色の短毛のモルモットである。マスク法を使用して単眼形態覚遮断(FD)を行い、且つ形態覚遮断眼に対して異なる濃度(例えば1μM及び100μM)のアデニル酸シクラーゼ抑制剤(ACI)SQ22536結膜下注射を行うことによって、眼内のcAMPレベルを異なる程度に低減する。動物を、形態覚遮断対照群(FD+non−injection)、形態覚遮断+溶剤対照群(FD+vehicle)(ここの溶剤は0.9%生理塩水を指す)、形態覚遮断+薬物群(FD+1μM SQ22536及びFD+100μM SQ22536群)に、ランダムに4群を分けた。毎日の午前9時に薬物を結膜下で注射し、連続に4周で注射し、対側眼が処理されない。実験前、投与2周、投与4周でそれぞれ赤外線偏心撮影光屈折測定装置(EIR)でジオプトリー、角膜曲率メーターで角膜曲率半径、Aモード超音波診断装置(11MHz)で硝子体眼房の深度及び眼軸の長さなどの眼軸パラメータを測定する。
【0012】
実験前後の測定パラメータを比較した結果、薬物投与群の形態覚遮断眼の、屈折近視の程度及び硝子体眼房と眼軸の延長程度が共に形態覚遮断対照群及び溶剤投与群より小さく、溶剤対照群と比べて推計的有意性を有することを発見した。そのため、結膜下でアデニル酸シクラーゼ抑制剤(ACI)SQ22536を注射して眼内のcAMP作用を低減することは、モルモットの形態覚遮断性近視の形成を抑制できる。
【0013】
図1から分かるように、実験の4周後、単純の形態覚遮断群と形態覚遮断の溶剤注射群との近視形成量には差異が認められなかったため、注射は形態覚遮断に対して影響しないことを示した。薬物投与の2群の近視形成量が共に溶剤群より小さく、且つ時間効果及び濃度勾配効果を有するため、アデニル酸シクラーゼ抑制剤SQ22536が形態覚遮断性近視の形成を抑制できることを示した。
【0014】
図2から分かるように、実験の4周後、単純の形態覚遮断群と形態覚遮断の溶剤注射群との硝子体眼房の延長には差異が認められなかったため、注射は形態覚遮断に対して影響しないことを示した。薬物投与の2群の硝子体眼房の延長が共に溶剤群より顕著に小さく、且つ時間効果及び濃度勾配効果を有するため、アデニル酸シクラーゼ抑制剤SQ22536が形態覚遮断の硝子体眼房の延長を抑制できることを示した。
【0015】
図3から分かるように、実験の4周後、単純の形態覚遮断群と形態覚遮断の溶剤注射群との眼軸の延長には差異が認められなかったため、注射は形態覚遮断に対して影響しないことを示した。薬物投与の2群の眼軸の延長が共に溶剤群より顕著に小さく、且つ時間効果及び濃度勾配効果を有するため、アデニル酸シクラーゼ抑制剤SQ22536が形態覚遮断後の眼軸の延長を抑制できることを示した。
【0016】
前記実験は、アデニル酸シクラーゼ抑制剤を使用してcAMPの作用を低減することは、近視を遅発する作用を顕著に効できることを証明した。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視を抑制する薬物におけるアデニル酸シクラーゼ抑制剤の応用である。
【請求項2】
前記アデニル酸シクラーゼ抑制剤の型番がSQ22536である、ことを特徴とする請求項1に記載の近視を抑制する薬物におけるアデニル酸シクラーゼ抑制剤の応用。

【公表番号】特表2013−517332(P2013−517332A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550317(P2012−550317)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【国際出願番号】PCT/CN2011/084332
【国際公開番号】WO2012/089053
【国際公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(512172143)スクール オブ オフサルモロジー アンド オプトメトリー, ウェンジョウ メディカル カレッジ (1)
【Fターム(参考)】