説明

近赤外線カット粘着シート部材

【課題】 近赤外線吸収層の塗工性に優れ、近赤外線吸収層と粘着剤層との密着性が良好で、リワーク性に優れ、可視光平均透過率、近赤外線透過率に優れた近赤外線カット粘着シート部材を提供する。
【解決手段】 透明基材フィルム(A)上に、近赤外線吸収層(B)を有し、その上に粘着剤層(C)が積層され、近赤外線吸収層(B)が、メチルメタクリレート30〜97モル%、シクロヘキシルメタクリレート1〜30モル%、2−エチルヘキシルメタクリレート1〜30モル%およびジシクロペンタニルメタクリレート1〜10モル%からなるMw20万〜35万のアクリル系樹脂バインダーと、特定量の近赤外線吸収色素とを含み、粘着剤層(C)が、Mw40万〜250万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線カット粘着シート部材に関するものであり、詳しくは、近赤外線吸収層の塗工性に優れ、近赤外線吸収層と粘着剤層との密着性が良好で、リワーク性に優れ、さらに、可視光平均透過率、近赤外線透過率(850nm、950nm)に優れた近赤外線カット粘着シート部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光エレクトロニクス関連部品、機器の進歩は著しく、その中で、画像を表示するディスプレイは、従来のテレビジョン装置用に加えて、コンピューターモニター用等として需要が増加しつつある。中でも、ディスプレイの大型化および薄肉化に対する市場要求は高まる一方である。最近、大型かつ薄肉化を実現することが可能であるディスプレイとして、プラズマディスプレイパネル(PDP)が注目されている。PDPは、原理上、強い近赤外線を装置外に放出する。この近赤外線は、コードレス電話や赤外線方式のリモートコントローラー等の誤動作を引き起こす原因となる。
【0003】
そこで、近赤外線を遮断するために、PDPに近赤外線(NIR)カットフィルムが使用されている。例えば、780〜1200nmに極大吸収波長を有する近赤外線吸収性色素、多官能化合物及び高分子量重合体を含んでなることを特徴とする近赤外線吸収性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、該近赤外線吸収性樹脂組成物より形成される近赤外線吸収層をPDPのフィルターに使用した場合、上記近赤外線吸収層と粘着剤層との密着性に劣るという問題があり、その結果、例えば作業ミス等の原因により近赤外線カット粘着シート部材を除去しようとすると、PDPフィルターのガラス面に粘着剤層が残存し、いわゆる「のり残り」が生じ、リワーク性に劣るという問題が生じる。さらに、該近赤外線吸収性樹脂組成物より形成される近赤外線吸収層は、塗工性、可視光平均透過率、近赤外線透過率(850nm、950nm)等の特性にも改善の余地があった。
【特許文献1】特開2004−182793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、上記のような従来の課題を解決し、近赤外線吸収層の塗工性に優れ、近赤外線吸収層と粘着剤層との密着性が良好で、リワーク性に優れ、さらに、可視光平均透過率、近赤外線透過率(850nm、950nm)に優れた近赤外線カット粘着シート部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のとおりである。
1.透明基材フィルム(A)上に、近赤外線吸収層(B)を有し、さらに前記近赤外線吸収層(B)上に粘着剤層(C)が積層されてなる近赤外線カット粘着シート部材であって、
前記近赤外線吸収層(B)が、少なくともアクリル系樹脂バインダーおよび近赤外線吸収色素を含有し、
前記アクリル系樹脂バインダーが、メチルメタクリレート30〜97モル%、シクロヘキシルメタクリレート1〜30モル%、2−エチルヘキシルメタクリレート1〜30モル%およびジシクロペンタニルメタクリレート1〜10モル%(ただし、前記4成分の合計は100モル%)からなり、かつ質量平均分子量が20万〜35万であり、
前記アクリル系樹脂バインダー100質量部に対する前記近赤外線吸収色素の割合が、5〜50質量部であり、
前記粘着剤層(C)が、実質的に質量平均分子量40万〜250万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなることを特徴とする近赤外線カット粘着シート部材。
2.前記近赤外線吸収色素が、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素から選ばれた1種以上であることを特徴とする前記1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
3.前記近赤外線吸収色素が、下記一般式(1)で表されるスルホンイミドをアニオン成分にもつジイモニウム系色素であることを特徴とする前記1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1〜R8のうち少なくとも一つは、1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基を表し、他は、それぞれ独立してアルキル基、アルキレン基、シアノアルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子及びフェニルアルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R9およびR10は、それぞれ独立してフルオロアルキル基を表すか、またはそれらが一緒になって形成するフルオロアルキレン基を表す)
4.前記1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基が下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記3に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
−Cnm2n+1-m ・・・・・・一般式(2)
(式中、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜12の自然数、mは1〜25の自然数を示す)
5.前記一般式(1)において、R1〜R8の全てが、前記一般式(2)で表されるハロゲン化アルキル基であることを特徴とする前記4に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
6.前記一般式(1)で表されるスルホンイミドをアニオン成分にもつジイモニウム系色素が、ビス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸]−N,N,N',N'−テトラキス[p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジイモニウムであることを特徴とする前記3に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
7.前記透明基材フィルム(A)が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする前記1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
8.前記粘着剤層(C)における前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする前記1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
9.前記粘着剤層(C)が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対し、波長570〜610nmに極大吸収を有する色素0.01〜0.5質量部を含有することを特徴とする前記1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
10.プラズマディスプレイパネルに使用されることを特徴とする前記1〜9に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明基材フィルム(A)上に、近赤外線吸収層(B)を有し、さらに前記近赤外線吸収層(B)上に粘着剤層(C)が積層されてなる近赤外線カット粘着シート部材であって、前記近赤外線吸収層(B)におけるアクリル系樹脂バインダーを、特定のモノマー組成および質量平均分子量を有する共重合体とし、近赤外線吸収色素を特定量でもって配合するとともに、粘着剤層(C)の組成および質量平均分子量を特定したものであるので、近赤外線吸収層の塗工性に優れ、近赤外線吸収層と粘着剤層との密着性が良好で、リワーク性に優れ、さらに、可視光平均透過率、近赤外線透過率(850nm、950nm)に優れた近赤外線カット粘着シート部材を提供することができる。
とくに本発明では、上記のようにリワーク性を改善することができる。リワーク性とは、作業ミス等の原因により、PDPフィルターに貼着した近赤外線カット粘着シート部材を一旦除去し、再度該部材を貼着する作業に対する適性を意味する。従来技術においては、前述のように近赤外線吸収層と粘着剤層との密着性が乏しいため、PDPフィルターから近赤外線カット粘着シート部材を除去しようとすると、近赤外線吸収層および粘着剤層間が層間剥離し、PDPフィルターに粘着剤層が残存し、いわゆる「のり残り」が生じ、リワーク性に劣るという欠点があった。さらに「のり残り」の除去にも手間がかかっていた。本発明では上記構成によってこの課題も解決することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。なお本発明でいう近赤外線とはおよそ800〜1100nmの波長領域の赤外線を意味しているが、本フィルムは、特に850nm、950nmの近赤外線透過率で評価を行った。850nmで近赤外線透過率が10%以下、950nmで近赤外線透過率が5%以下であることが、必要とされている。
【0010】
(透明基材フィルム(A))
本発明で使用される透明基材フィルム(A)としては特に制限はなく、様々な透明プラスチックフィルムの中から、状況に応じて適宜選択して用いることができる。この透明プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなるフィルム、これらの積層フィルム等が挙げられる。これらの中でも、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的強度と寸法安定性が良好であり、また所望の厚みに調整が可能である。
透明基材フィルム(A)の厚さとしては、例えば10〜300μm、好ましくは20〜200μmである。
透明基材フィルム(A)は、所望により酸化防止剤や紫外線吸収剤等、公知の添加剤を配合してもよい。
また透明基材フィルムは、他層との接着性を高めるために、易接着剤層を設けておくこともできる。
【0011】
(近赤外線吸収層(B))
本発明における近赤外線吸収層(B)は、少なくともアクリル系樹脂バインダーおよび近赤外線吸収色素を含有する。以下、各成分について説明する。
【0012】
(アクリル系樹脂バインダー)
本発明で使用されるアクリル系樹脂バインダーは、メチルメタクリレート30〜97モル%、シクロヘキシルメタクリレート1〜30モル%、2−エチルヘキシルメタクリレート1〜30モル%およびジシクロペンタニルメタクリレート1〜10モル%(ただし、前記4成分の合計は100モル%)からなる。
【0013】
アクリル系樹脂バインダーは、得られる共重合体が上記のモル比の範囲を満たすように、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびジシクロペンタニルメタクリレートを適切な量でもって共重合することにより製造可能である。
合成方法は、各種公知の方法に従えばよい。例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等のラジカル重合法を適宜選択することができる。ラジカル重合開始剤としては、過酸化ラウロイル(LPO)、過酸化ベンゾイル(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の公知のものを使用することができる。重合条件としては、例えば、溶液重合の場合は、反応温度は、通常、50〜150℃であり、反応時間は、通常3〜15時間程度である。重合に際して用いられる溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、アセトン等が用いられる。
【0014】
本発明で使用されるアクリル系樹脂バインダーは、メチルメタクリレート42〜94モル%、シクロヘキシルメタクリレート2〜25モル%、2−エチルヘキシルメタクリレート2〜25モル%およびジシクロペンタニルメタクリレート2〜8モル%(ただし、前記4成分の合計は100モル%)からなるものが、さらに好ましい。
【0015】
また、本発明で使用されるアクリル系樹脂バインダーは、質量平均分子量が20万〜35万である必要がある。質量平均分子量が前記範囲外であると、近赤外線吸収層(B)と粘着剤層(C)との密着性および近赤外線吸収層(B)の塗工性を両立することができない。さらに好ましい質量平均分子量は、23万〜33万である。なお本明細書において、質量平均分子量は、展開溶媒としてクロロホルムを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリメチルメタクリレート換算の値である。
【0016】
(近赤外線吸収色素)
本発明で使用される近赤外線吸収色素は、上記で定義した近赤外線の波長領域の赤外線を吸収可能な色素であればとくに制限されないが、本発明では、近赤外線吸収色素が、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素から選ばれた1種類以上であることが好ましい。
【0017】
(ジイモニウム系色素)
本発明で使用されるジイモニウム系色素は、上記で定義した近赤外線の波長領域の赤外線を吸収可能であり、かつ、下記一般式(1)で表されるスルホンイミドをアニオン成分にもつジイモニウム系色素であるのがさらに好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R1〜R8のうち少なくとも一つは、1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基を表し、他は、それぞれ独立してアルキル基、アルキレン基、シアノアルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子及びフェニルアルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R9およびR10は、それぞれ独立してフルオロアルキル基を表すか、またはそれらが一緒になって形成するフルオロアルキレン基を表す)
【0020】
一般式(1)において、上記のように、R1〜R8のうち少なくとも一つは、1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基であることが必須である。かかるハロゲン化アルキル基は、同一であっても異なっていてもよい。また、上記R1〜R8において、2個以上がハロゲン化アルキル基である場合は、その炭素数は、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。なお、一般式(1)で表されるジイモニウム系色素は、通常考えられるその他の共鳴構造をも含んでいるものとする。
【0021】
上記ハロゲン化アルキル基の好ましいものとしては、下記一般式(2)
−Cnm2n+1-m ・・・・・・(2)
(式中、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜12の自然数、mは1〜25の自然数を示す)
で表されるものが挙げられる。
上記のハロゲン化アルキル基において、その炭素数は、1〜12個の範囲であり、好ましくは1〜6個である。ハロゲン化アルキル基の炭素数が12個を超えると、ジイモニウム塩の質量吸光係数が低下してしまう場合がある。
【0022】
ハロゲン化アルキル基のハロゲン原子としては、特に限定はなく、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の何れでもよいが、ジイモニウム系色素の安定性を上げる効果に優れる点から、特にフッ素原子が好ましい。ハロゲン原子は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0023】
かかるハロゲン化アルキル基の好ましい具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3,−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基、8,8,8−トリフルオロオクチル基、2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、2−トリフルオロ−ペルフルオロプロピル基等のフッ化アルキル基;トリクロロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、3,3,3−トリクロロプロピル基、4,4,4−トリクロロブチル基、5,5,5−トリクロロペンチル基、6,6,6−トリクロロヘキシル基、8,8,8−トリクロロオクチル基、2−メチル−3,3,3−トリクロロプロピル基、ペルクロロエチル基、ペルクロロプロピル基、ペルクロロブチル基、ペルクロロヘキシル基、ペルクロロオクチル基、2−トリクロロ−ペルクロロプロピル基等の塩化アルキル基;トリブロモメチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、3,3,3−トリブロモプロピル基、4,4,4−トリブロモブチル基、5,5,5−トリブロモペンチル基、6,6,6−トリブロモヘキシル基、8,8,8−トリブロモオクチル基、2−メチル−3,3,3−トリブロモプロピル基、ペルブロモエチル基、ペルブロモプロピル基、ペルブロモブチル基、ペルブロモヘキシル基、ペルブロモオクチル基、2−トリブロモ−ペルブロモプロピル基等の臭化アルキル基等が挙げられる。
【0024】
このうち、特に好ましい具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3,−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基等が挙げられる。
【0025】
本発明においては、一般式(1)中のR1〜R8の少なくとも1つが、ハロゲン化アルキル基であることが必須であり、好ましくは一般式(2)のハロゲン化アルキル基であるが、8個のうち4個以上が上記一般式(2)で表されるハロゲン化アルキル基であることがより好ましい。更には全ての置換基が、上記一般式(2)で表されるハロゲン化アルキル基であることが、耐熱性、耐湿性、溶解性が良好で、850nm付近の吸収が大きいため特に好ましい。また、全ての置換基が上記一般式(2)で表される同一のハロゲン化アルキル基であることが更に好ましい。
【0026】
一方、一般式(1)中のR1〜R8において、ハロゲン化アルキル基以外の置換基は、アルキル基、アルキレン基、シアノアルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子またはフェニルアルキル基である。
【0027】
上記アルキル基としては特に限定はないが、炭素数が1〜12個のアルキル基が好ましく、1〜8個が特に好ましく、2〜6個が更に好ましい。かかるアルキル基は、直鎖であっても分岐を有していてもよい。具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ドデシル基等が挙げられ、特に好ましい具体例としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基等が挙げられる。
【0028】
また、上記アルキレン基としては特に限定はないが、炭素数が1〜12個のアルキレン基が好ましい。かかるアルキレン基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、二重結合の数と位置にも特に限定はない。特に好ましい具体例としては、アリル基等が挙げられる。
【0029】
上記シアノアルキル基としては特に限定はないが、炭素数が1〜12個のシアノアルキル基であることが好ましく、置換されているシアノ基の数は、1〜3個が好ましい。特に好ましい具体例としては、プロピルニトリル基、ブチロニトリル基、ペンチルニトリル基、1−メチルーブチロニトリル基、1−メチルーブチロニトリル基等が挙げられる。
【0030】
上記アルキルスルホン酸基としては特に限定はないが、炭素数が1〜6個のアルキルスルホン酸基が好ましい。特に好ましい具体例としては、メチルスルホン酸基、エチルスルホン酸基、プロピルスルホン酸基、ブチルスルホン酸基等が挙げられる。
【0031】
上記アルコキシ基としては特に限定はないが、炭素数が1〜12個のアルコキシ基が好ましい。特に好ましい具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0032】
上記アリール基としては特に限定はないが、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、トリル基、フリル基、ピリジル基等が挙げられる。特に好ましい具体例としてはフェニル基、トリル基等が挙げられる。
【0033】
一般式(1)中、ハロゲン化アルキル基以外の置換基としてのハロゲン原子としては特に限定はないが、塩素原子、フッ素原子等が好ましい。
【0034】
一般式(1)中のフェニルアルキル基としては、アルキル基の炭素数が、1〜18個のものが好ましく、1〜8個のものが特に好ましい。更にフェニル基は、置換基を有していなくてもよいが、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有していてもよい。
【0035】
かかるフェニルアルキル基として具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニル−α−メチルプロピル基、フェニル−β−メチルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルオクチル基等が挙げられる。最も好ましいものとして、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0036】
一方、本発明の一般式(1)において、アニオン成分はスルホンイミドであり、R9およびR10は、それぞれ独立してフルオロアルキル基を表すか、またはそれらが一緒になって形成するフルオロアルキレン基を表す。上記基において、フッ素原子の数や炭素数には特に限定はないが、好ましいR9およびR10の例としては、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基が挙げられる。すなわち、好ましい一例としては、下記式で表されるアニオンが挙げられる。
【0037】
【化3】

【0038】
(式中、nおよびn'は、1〜8の整数を示す)
【0039】
ここで、nとn'としては、更に好ましくは1〜4の整数である。好ましい具体例としては、例えば、パーフルオロアルカンスルホニル基が同一(n=n')である、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミド等や、パーフルオロアルカンスルホニル基が異なる(n≠n')ペンタフルオロエタンスルホントリフルオロメタンスルホンイミド、トリフルオロメタンスルホンヘプタフルオロプロパンスルホンイミド、ノナフルオロブタンスルホントリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられ、これらの中でも、パーフルオロアルカンスルホニル基が同一(n=n')で、かつnとn'が、1または2であるビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドまたはビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミドが、近赤外線吸収能力の点で更に好ましい。
【0040】
また、一般式(1)中のアニオン成分におけるR9およびR10の好ましい別の有機基としては、これらが一緒になって形成される炭素数2〜12のフルオロアルキレン基が挙げられる。フルオロアルキレン基のフッ素の数と水素の数には特に限定はないが、特に好ましくは、これらが一緒になって形成される炭素数2〜12のパーフルオロアルキレン基が挙げられる。すなわち、耐熱性、耐湿性の点で、特に好ましいアニオンとして、下記式で表されるアニオンが挙げられる。
【0041】
【化4】

【0042】
(式中、mは、2〜12の整数を示す)
【0043】
ここで、mは好ましくは、2〜8であり、更に好ましくは、mが3である。すなわち具体的には、下記式で表される1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミドが挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
本発明におけるジイモニウム系色素は、吸収波長が短波長側にシフトしているため、従来技術のように、第2の色素類が無添加であっても要求性能を満たす近赤外線吸収能力が得られる。
【0046】
本発明のジイモニウム系色素は、公知の製造方法により製造でき、例えば特開2005−325292号公報に開示されている。また、市販されている色素も使用することができ、例えば日本カーリット社製商品名CIR−RL、CIR−1085Fが挙げられる。
【0047】
本発明においてとくに好ましいジイモニウム系色素は、ビス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸]−N,N,N',N'−テトラキス[p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジイモニウムである。
【0048】
フタロシアニン系色素は、フタロシアニン、フタロシアニン錯体、或いはフタロシアニン及びフタロシアニン錯体であってフタロシアニン骨格のベンゼン環上にOR、SR、NHR、又はNRR′のうちの1種以上有するものである。ここでR、R′は、同一もしくは異なって、置換基を有してもよいフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基を表す。なお置換基のうちの1個がNHRで置換されたフタロシアニンであることが好ましい。
フタロシアニン系色素は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0049】
【化6】

【0050】
(式中、αは、同一もしくは異なって、SR28、OR29、NHR30又はハロゲン原子を表し、NHR30を必須とする。R28、R29及びR30は、同一もしくは異なって、置換基を有してもよいフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基を表す。βは、同一もしくは異なって、SR28、OR29又はハロゲン原子を表し、SR28、OR29を必須とする。Mは無金属、金属、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。)
【0051】
上記一般式(3)において、炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
【0052】
上記R28、R29及びR30におけるフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基は、置換基を1個又は2個以上有してもよい。このような置換基としては、例えばハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基カルボニル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0053】
上記一般式(3)中のMにおいて、無金属とは、金属以外の原子、例えば2個の水素原子であることを意味する。具体的には、フタロシアニン構造の中央部分に存在する、置換基を有してもよい、相対する2つの窒素原子に水素原子が結合している構造となる。金属としては、例えば鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、例えばチタニル、バナジル等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、例えば塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫、塩化ケイ素等が挙げられる。Mとしては、金属、金属酸化物又は金属ハロゲン化物であることが好ましく、具体的には、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、バナジル、ジクロロ錫等が挙げられる。より好ましくは、亜鉛、銅、コバルト、バナジル、ジクロロ錫である。
【0054】
上記一般式(3)で表されるフタロシアニン系色素の好ましい形態としては、8個のβのうち4〜8個が、同一もしくは異なって、SR28又はOR29である。より好ましくは、8個のβが全て、同一もしくは異なって、SR28又はOR29である。このようなフタロシアニン系化合物としては、例えば、ZnPc(PhS)8(PhNH)35、ZnPc(PhS)8(PhNH)44、ZnPc(PhS)8(PhNH)53、ZnPc(PhS)8(PhCH2NH)44、ZnPc(PhS)8(PhCH2NH)53、ZnPc(PhS)8(PhCH2NH)62、CuPc(PhS)8(PhNH)7F、CuPc(PhS)8(PhNH)62、CuPc(PhS)8(PhNH)53、VOPc(PhO)8(PhCH2NH)53、VOPc(PhO)8(PhCH2NH)62、VOPc(PhO)8(PhCH2NH)8、VOPc(PhS)8(PhCH2NH)8、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3F、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、CuPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、CuPc(PhS)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、VOPc(4−CNPhO)8{2,6−Br2−4−(CH3)PhO}4{Ph(CH3)CHNH}4、ZnPc(2,4−Cl2PhO)8{2,6−Br2−4−(CH3)PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3Fの略号で表されるフタロシアニン化合物等が挙げられる。
【0055】
またこれらの化合物の中でも8個のαのうち4個が、同一もしくは異なってNHR30又はハロゲン原子を表す化合物で、例えば、ZnPc(PhS)8(PhNH)35、ZnPc(PhS)8(PhNH)44、ZnPc(PhS)8(PhCH2NH)44、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3F、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、CuPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、CuPc(PhS)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、VOPc(4−CNPhO)8{2,6−Br2−4−(CH3)PhO}4{Ph(CH3)CHNH}4、ZnPc(2,4−Cl2PhO)8{2,6−Br2−4−(CH3)PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3Fの略称で表されるフタロシアニン化合物等が好ましい。
【0056】
なお、上記化合物の略号において、Pcはフタロシアニン核を表し、Pcの後には、β位に置換する8個の置換基を表し、その後にα位に置換する8個の置換基を表す。また、上記Phはフェニル基を表す。更に具体的には、上記略号は、中心金属:Pc:β位の8個の置換基:α位の8個の置換基を表す。例えば、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3Fでは、中心金属がVO:フタロシアニン核:β位に2,5−Cl2PhOが8個置換:α位に2,6−(CH32PhOが4個とPh(CH3)CHNHが3個とFが1個置換したフタロシアニン系化合物を表す。
【0057】
上記一般式(3)で表されるフタロシアニン系色素の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適当に利用することができる。例えば、フタロニトリル化合物を、金属塩、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属から選ばれる一種と環化反応させた後、アミノ化合物と反応させることによって製造される。
【0058】
上記一般式(3)で表されるフタロシアニン系色素の市販品としては、例えば、「イーエックスカラーIR10A」、「イーエックスカラーIR12」、「イーエックスカラーIR14」、「イーエックスカラーHA−1」、「イーエックスカラーHA−14」(いずれも日本触媒製)等があけられ、フタロシアニン系化合物の溶媒溶解性、共重合体(A)との相溶性の点より、近赤外線吸収フィルターとして使用する場合の可視光線透過率、近赤外線吸収効率の点より、「イーエックスカラーIR10A」、「イーエックスカラーIR12」、「イーエックスカラーIR14」が好ましい。
【0059】
これら一般式(3)で表されるフタロシアニン系色素は、800〜900nmの近赤外線領域で吸収極大を持ち、且つ可視光領域での吸収が小さいという特徴を持つ。そこでジイモニウム系色素と組み合わせることにより、両者の相乗効果で800〜1000nmの近赤外線領域を効率良く吸収遮蔽するので、プラズマディスプレイが発する不要な近赤外線を吸収することができる。
また、フタロシアニン系色素は、一般的に耐熱性に優れるため、単独で使用した場合、他の色素と混合した場合でも、耐熱性の低下は問題ない。
【0060】
シアニン系色素は、例えば、下記一般式(4)であることが好ましい。
【0061】
【化7】

【0062】
(一般式(4)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、その具体例は、先述のものと同様なものが挙げられる。nは、0以上の整数を表し、通常は、1〜3である。Z1、Z2は、それぞれ独立に、S原子、O原子、NR36、CR3738である。R36〜R38は、それぞれ独立に、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいフェニル基を表す。その具体例は、先述のものと同様なものが挙げられる。L1、L2は、それぞれ独立に、5〜7員環を形成するものであって、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環などの芳香環である。)
【0063】
シアニン系色素の具体例としては、例えば日本化薬社製CY17、住友精化社製SD50、林原生物化学研究所社製NK−5706、NK−5060、NK−9028などのシアニン系化合物を好適に用いることができる。上記は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0064】
これら一般式(4)で表されるシアニン系色素は、800〜950nmの近赤外線領域で吸収極大を持ち、且つ可視光領域での吸収が小さいという特徴を持つ。そこでジイモニウム系色素と組み合わせることにより、両者の相乗効果で800〜1000nmの近赤外線領域を効率良く吸収遮蔽するので、プラズマディスプレイが発する不要な近赤外線を吸収することができる。
【0065】
前述のように、本発明では近赤外線吸収色素を1種類のみ使用することもできるが、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素から選ばれた2種類以上を使用することもできる。2種類以上を併用する場合、各色素の使用割合は任意であるが、例えばジイモニウム系色素とシアニン系色素を併用する場合は、質量比として、前者1に対し、後者0.01〜0.5が好ましい。また、ジイモニウム系色素とフタロシアニン系色素を併用する場合は、質量比として、前者1に対し、後者0.02〜2.0が好ましい。また、シアニン系色素とフタロシアニン系色素を併用する場合は、質量比として、前者1に対し、後者1.0〜100が好ましい。また、3者をいずれも使用する場合は、質量比として、ジイモニウム系色素1に対し、シアニン系色素0.01〜0.5、フタロシアニン系色素0.02〜2.0が好ましい。
【0066】
本発明の近赤外線吸収層(B)において、アクリル系樹脂バインダー100質量部に対し、前記近赤外線吸収色素の配合割合を5〜50質量部に設定する必要がある。ジイモニウム系色素の配合割合が5質量部未満では、近赤外線の吸収効果が発現されず、逆に50質量部を超えると可視光の透過率に悪影響を及ぼす。さらに好ましい形態としては、アクリル系樹脂バインダー100質量部に対し、近赤外線吸収色素を10〜40質量部使用する形態である。
【0067】
近赤外線吸収層(B)は、アクリル系樹脂バインダーを溶解した溶液に、近赤外線吸収色素を溶解した溶液を加え、適当な溶剤で粘度を調整し、得られた塗布液を透明基材フィルム(A)上に、公知のコーティング方法によって塗布し、加熱乾燥することにより形成できる。なお、近赤外線吸収層(B)の乾燥後の厚さは、例えば0.5μm〜5.0μm、好ましくは1.0μm〜3.0μmである。
【0068】
(粘着剤層(C))
本発明における粘着剤層(C)は、実質的に質量平均分子量40万〜250万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びこれら両者の混合物を示す語句である。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基、アミド基およびN−置換アミド基から選ばれる1種以上の官能基を有するものが好ましい。好ましい官能基はカルボキシル基である。このような官能基の存在により、十分な粘着性を付与することができる。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーとの共重合体を用いることが好ましい。なお、カルボキシル基を除いた、上述の官能基を有する(メタ)アクリル酸モノマーをさらに共重合させることが好ましい。また(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、上記以外にも、他の官能基を有する(メタ)アクリル酸モノマーおよび他の単量体を含み得る。
【0071】
エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
官能基を有する(メタ)アクリル酸モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどのヒドロキシル基を含有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアミド基又はN−置換アミド基を含有するモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基を有するモノマーが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
他の官能基を有する(メタ)アクリル酸モノマーの例としては、アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート及びビニルピリジンなどのアミノ基を含有するモノマー、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセチル基を含有するモノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの3級アミノ基を含有するモノマーが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
所望により用いられる他の単量体の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
また(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、質量平均分子量が40万〜250万の範囲であることが必要である。質量平均分子量が40万未満では、粘着性や耐久性(信頼性)が不十分となるおそれがあり、250万を超えると、粘度が高くなり塗工性不良を起こす原因となる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体の質量平均分子量は、好ましくは60万〜180万であり、より好ましくは80万〜160万である。
【0077】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましく、−70℃〜0℃の範囲であることがより好ましい。ガラス転移温度が0℃より高いと、低温で使用する際にタック(粘着性)が不十分となり、粘性を示さないため好ましくない。本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、常法によって求められる計算値、または実測値を示す。該計算値は、下記式、
(1/Tg)=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・・+(Wn/Tgn
を用いて算出することができる。式中、Tgは、ガラス転移温度(℃)を示し、W1、W2、・・・・、Wnは、単量体組成物中の各単量体の質量分率を示し、Tg1、Tg2、・・・・、Tgnは、対応する単量体の単独重合体のガラス転移温度(℃)を示す。尚、単独重合体のガラス転移温度は、例えば、便覧等の刊行物に記載されている数値を採用すればよい。
【0078】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、各種公知の方法により製造することができ、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等のラジカル重合法を適宜選択することができる。ラジカル重合開始剤としては、過酸化ラウロイル(LPO)、過酸化ベンゾイル(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の公知のものを使用することができる。重合条件としては、例えば、溶液重合の場合は、反応温度は、通常、50〜150℃であり、反応時間は、通常3〜15時間程度である。重合に際して用いられる溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、アセトン等が用いられる。また、市販の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いてもよい。
【0079】
本発明における粘着剤層(C)は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対し、波長570〜610nmに極大吸収を有する色素0.01〜0.5質量部を含有することが好ましい。プラズマディスプレイでは、放電によりキセノンとネオンの混合ガスが励起され真空紫外線を放射し、その真空紫外線励起による赤、青、緑のそれぞれの蛍光体発光を利用して3原色発光を得ているが、その際、ネオン原子が励起された後基底状態に戻る際に600nm付近を中心とするいわゆるネオンオレンジ光が発光する。この為、プラズマディスプレイでは、赤色にオレンジ色が混ざり鮮やかな赤色が得られない欠点がある。そこで、570〜610nmの波長域に透過率極小値をもたせるために、該波長域のネオン光をカットする色素、すなわち波長570〜610nmに極大吸収を有する色素を粘着剤層(C)に添加することが好ましい。
このような色素はとくに制限されないが、波長570〜610nmに極大吸収を有するテトラアザポルフィリン系色素、シアニン系色素等が挙げられる。なお、シアニン系色素を用いる場合は、耐熱性を向上させかつ二次凝集を避けるために、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の酸価を6.9mgKOH/g以上7.5mgKOH/g未満に調整するのが好ましい。シアニン系色素の具体例としては、例えばADEKA社製TY−102(極大吸収波長=587nm)、ADEKA社製TY−171(極大吸収波長=589nm)、(株)林原生物化学研究所製NK−8861(極大吸収波長=600nm)などが挙げられる。
【0080】
波長570〜610nmに極大吸収を有する色素の添加量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対し、好ましくは0.03〜0.3質量部、さらに好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0081】
また粘着剤層(C)には、イソシアネート系硬化剤を添加することもできる。イソシアネート系硬化剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパンなどポリオールとのアダクト体などが挙げられる。イソシアネート系硬化剤の配合割合は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対し、0.02〜1.0質量部、好ましくは0.05〜0.8質量部、さらに好ましくは0.1〜0.6質量部である。
【0082】
また、粘着剤層(C)には、例えばPDPの発光色の色調を所望の色調に調整するために、色調調整色素を添加してもよい。例えばアゾ系、アゾメチン系、シアニン系、ペリレン系、アンスラキノン系、イソインドリノン系、キノリン系、フタロシアニン系等の公知の色素が挙げられ、これらは必要に応じて適宜添加される。
【0083】
本発明における粘着剤層(C)は、実質的に質量平均分子量40万〜250万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなるものであるが、ここでいう「実質的に」とは、上記の波長570〜610nmに極大吸収を有する色素や、その他の任意成分が10質量%以下の割合で含み得ることを意味する。
【0084】
粘着剤層(C)の厚さは、5〜100μm程度、特に10〜60μmの範囲が好ましい。
【0085】
粘着剤層(C)の形成方法としては、特に制限されず、粘着剤層(C)の形成用組成物(溶液)を、転写印刷、ナイフコーター、ロールコーター、グラビアコーター等の通常使用される塗布方法により基材層の片面に塗布し、赤外線、熱風、蒸気等により加熱乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型シートにより転写する方法等が挙げられる。
【0086】
また本発明の近赤外線カット粘着シート部材は、透明基材フィルム(A)の近赤外線吸収層(B)が設けられた面とは反対の面に、帯電防止層、反射防止層およびハードコート層から選ばれた少なくとも1種のコート層を有する形態も好ましい。当該形態の部材は、プラズマディスプレイパネルに好適に使用される。
帯電防止層としては、例えば、水溶性または水分散性導電ポリマーである、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン、アリルアミン系化合物などを含有する水溶液を塗布して形成することができる。
反射防止層としては、高屈折率層および低屈折率層からなる積層材料が挙げられ、高屈折率層は、例えば高屈折率層を形成しうるマトリックス成分に、高屈折率材料である酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、さらにこれらの金属酸化物微粒子にアンチモン、錫等の異種元素をドープした微粒子を高屈折率層形成用マトリックスに分散させ、塗料とし、これを塗布等により形成した層であることができる。また低屈折率層は、例えば、低屈折率層を形成しうるマトリックス成分に、低屈折率材料であるポリシロキサン、中空シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素樹脂などの微粒子を分散させ、塗料とし、これを塗布等により形成した層であることができる。
ハードコート層は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート等の分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートに、光重合開始剤、必要に応じて各種無機化合物微粒子を添加し、紫外線照射することにより硬化させて形成することができる。
【0087】
本発明の近赤外線カット粘着シート部材をプラズマディスプレイパネルに適用する場合は、例えば、プラズマディスプレイパネルの前面ガラス板から視認側にかけて、前面ガラス板、粘着剤層(C)、近赤外線吸収層(B)、透明基材フィルム(A)、必要に応じて上記コート層の順番で適用することができる。なお本発明は、上記順に限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0089】
実施例1
厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製A−1540、両面に易接着剤層が形成されている)上に、下記の近赤外線吸収層(B)形成用塗料を乾燥膜厚1.5μmとなるように塗布し、乾燥し、続いて、下記の粘着剤層(C)形成用塗料を乾燥膜厚25μmとなるように塗布し、乾燥し、本発明の近赤外線カット粘着シート部材を作製した。
【0090】
(近赤外線吸収層(B)形成用塗料)
・アクリル系樹脂バインダー(下記合成例(1)参照) 固形分100質量部
(質量平均分子量(Mw)28万)
Mwは、展開溶媒としてクロロホルムを用い、GPC(ポリメチルメタクリレート換算値)により測定した。GPCの測定条件は、カラムの種類:ShodexK806L×2+K800P、試料濃度:0.2%(w/v)、注入量:100μL、流速:1.0ml/min、測定温度:35℃、検出器:示差屈折計で測定した。
・ジイモニウム系色素(1) 200質量部
(固形分20質量部)
(ビス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸]−N,N,N',N'−テトラキス[p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジイモニウム、日本カーリット社製、CIR−1085F、固形分10%、溶剤はメチルエチルケトン(MEK))
・溶剤 MEK 317質量部
【0091】
合成例(1)
得られる共重合体が下記表1のバインダー構成(1)を有するように、メチルメタクリレート(MMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)およびジシクロペンタニルメタクリレート(DCMA)を適当量配合し、重合開始剤(AIBN)の存在下、加熱し、アクリル系樹脂バインダーを合成した。なお、アクリル系樹脂バインダーにおける上記4種のモノマー組成は、NMRにより確認した。NMRでの確認は、以下の実施例および比較例でも行なった。
【0092】
(粘着剤層(C)形成用塗料A)
・粘着剤 400質量部
(固形分100質量部)
(アクリル酸エステル共重合体の酢酸エチル溶液(固形分25%)、酸価7.0mgKOH/g、重合体の組成=アクリル酸−nブチル(95.5質量%)+アクリル酸2−ヒドロキシエチル(0.5質量%)+アクリル酸(4質量%)、質量平均分子量=180万、Tg=−46℃)
・トリレンジイソシアネート(TDI) 0.58質量部
(固形分0.26質量部)
・溶剤 MEK 120質量部
【0093】
得られた近赤外線カット粘着シート部材について、下記の評価を行った。
(1)近赤外線吸収層(B)の塗工性
厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、近赤外線吸収層形成用塗料を乾燥膜厚1.5μmになるようにグラビアロールで塗工した際の塗工性について、下記の基準により評価する。
○:問題なく塗工できる。
△:やや粘度が高く、塗工にやや問題がある。
×:粘度が高く、うまく塗工できない。
【0094】
(2)近赤外線吸収層(B)と粘着剤層(C)との密着性
プラズマディスプレイのフィルターのガラス面に、得られた近赤外線カット粘着シート部材を貼り合わせた。この粘着シート部材のシートを手で剥し、ガラス面ののり残りを目視で観察し、下記の基準で近赤外線吸収層(B)と粘着剤層(C)との密着性を評価する。
○:(B)層と(C)層の層間剥離がなく、のり残りがない。
△:(B)層と(C)層の層間剥離がわずかにあり、のり残りがわずかにある。
×:(B)層と(C)層の層間剥離が大きく、のり残りが大きい。
【0095】
(3)リワーク性
プラズマディスプレイのフィルターのガラス面に、得られた近赤外線カット粘着シート部材を貼り合わせた。この粘着シート部材のシートを手で剥し、ガラス面に残ったのりを、メタノールを含ませた布を使用してふき取った。一人の作業員で完全にのりを除去するのに要する時間をはかることによりリワーク性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:のりを完全に除去するのに要する時間は、30秒未満である。
△:のりを完全に除去するのに要する時間は、30秒以上10分未満である。
×:のりを完全に除去するのに要する時間は、10分以上である。
【0096】
(4)可視光(400〜700nm)平均透過率
JIS A5759に準拠し測定した。
【0097】
(5)近赤外線透過率(850nm)
分光光度計〔(株)島津製作所製、Solid Spec3700〕を用いて波長850nmの光線透過率を測定した。
【0098】
(6)近赤外線透過率(950nm)
分光光度計〔(株)島津製作所製、Solid Spec3700〕を用いて波長950nmの光線透過率を測定した。
【0099】
結果を表1に示す。
【0100】
実施例2〜7
実施例1において、近赤外線吸収層(B)のアクリル系樹脂バインダーの組成またはMwを、表1および2のように変更し、バインダー構成(2)〜(7)としたこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1および2に示す。
【0101】
実施例8
実施例1において、近赤外線吸収層(B)のジイモニウム系色素(1)の使用量を、100質量部(固形分10質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表2に示す。
【0102】
実施例9
実施例1において、近赤外線吸収層(B)のジイモニウム系色素(1)の使用量を、450質量部(固形分45質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表3に示す。
【0103】
実施例10
実施例1の近赤外線吸収層(B)において、ジイモニウム系色素(1)に替えて、下記のジイモニウム系色素(2)200質量部(固形分20質量部)およびシアニン系色素(1)100質量部(固形分1.0質量部)を使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表3に示す。
ジイモニウム系色素(2):日本カーリット社製、CIR−RL、固形分10%、溶剤はメチルエチルケトン(MEK)
シアニン系色素(1):林原生物化学研究所社製、NK−5060、最大吸収波長は864nm、固形分1%、MEK希釈)
【0104】
実施例11
実施例1の近赤外線吸収層(B)において、ジイモニウム系色素(1)に替えて、上記のジイモニウム系色素(2)200質量部(固形分20質量部)および下記のフタロシアニン系色素(1)200質量部(固形分2.0質量部)を使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表3に示す。
フタロシアニン系色素(1):日本触媒社製、IR−12、最大吸収波長は882nm、固形分1%)
【0105】
実施例12
実施例1において、下記の粘着剤層(C)形成用塗料Bを使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表3に示す。
・粘着剤 400質量部
(固形分100質量部)
(アクリル酸エステル共重合体の酢酸エチル溶液(固形分25%)、酸価7.0mgKOH/g、重合体の組成=アクリル酸−nブチル(95.5質量%)+アクリル酸2−ヒドロキシエチル(0.5質量%)+アクリル酸(4質量%)、質量平均分子量=180万、Tg=−46℃)
・シアニン系色素(2) 5質量部
(固形分0.05質量部)
(ADEKA社製、TY−102、最大吸収波長は587nm、固形分1%、MEK希釈)
・トリレンジイソシアネート(TDI) 0.58質量部
(固形分0.26質量部)
・溶剤 MEK 120質量部
【0106】
比較例1〜5
実施例1において、近赤外線吸収層(B)のアクリル系樹脂バインダーの組成またはMwを、表4および5のように変更し、バインダー構成(8)〜(12)としたこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表4および5に示す。
【0107】
比較例6
実施例1において、近赤外線吸収層(B)のジイモニウム系色素(1)の使用量を、30質量部(固形分3質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表5に示す。
【0108】
比較例7
実施例1において、近赤外線吸収層(B)のジイモニウム系色素(1)の使用量を、550質量部(固形分55質量部)に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表5に示す。
【0109】
比較例8
実施例1において、下記の粘着剤層(C)形成用塗料Aを使用せず、その替わりに、ポリエステル系粘着剤である粘着剤層(C)形成用塗料C(「ニチゴーポリエスターLP−050」(日本合成化学社製、ポリエステル系粘着剤)100質量部+「L−55E」(日本ポリウレタン工業製、硬化剤)3質量部)を使用したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表5に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
【表5】

【0115】
表1〜5の結果から、以下の事項が導き出される。
・実施例1は、近赤外線吸収層(B)におけるアクリル系樹脂バインダーを、特定のモノマー組成および質量平均分子量を有する共重合体とし、近赤外線吸収色素を特定量でもって配合するとともに、粘着剤層(C)の組成および質量平均分子量を特定したものであるので、近赤外線吸収層の塗工性に優れ、近赤外線吸収層と粘着剤層との密着性が良好で、リワーク性に優れ、さらに、可視光平均透過率、近赤外線透過率(850nm、950nm)も優れた値となっている。
・実施例2〜7は、近赤外線吸収層(B)のアクリル系樹脂バインダーの組成またはMwを変更した例である。実施例2および3は、実施例1と同様の性能を示した。実施例4は、アクリル系樹脂バインダーのMwが34万であり、近赤外線吸収層(B)の塗工性が△評価になった。実施例5は、アクリル系樹脂バインダーのMwが21万であり、近赤外線吸収層(B)と粘着剤層(C)との密着性およびリワーク性が△評価になった。実施例6は、アクリル系樹脂バインダーのモノマー組成を変更し、Mwを32万とした例であり、塗工性が△評価になった。実施例7は、アクリル系樹脂バインダーのモノマー組成を変更し、Mwを23万とした例であり、密着性およびリワーク性が△評価になった。
・実施例8は、実施例1のジイモニウム系色素(1)を10質量部添加した例で、近赤外線透過率(850nm)、近赤外線透過率(950nm)がやや悪化した。その他の性能は良好であった。
・実施例9は、実施例1のジイモニウム系色素(1)を45質量部添加した例で、可視光平均透過率がやや悪化した。その他の性能は良好であった。
・実施例10は、ジイモニウム系色素(2)を20質量部、シアニン系色素(1)を1質量部添加した例で、実施例1と同様の性能を示した。
・実施例11は、ジイモニウム系色素(2)を20質量部、フタロシアニン系色素(1)を2質量部添加した例で、可視光平均透過率がやや悪化した。その他の性能は良好であった。
・実施例12は、粘着剤層(C)の組成を変更した例で、可視光平均透過率がやや悪化した。その他の性能は良好であった。
【0116】
・比較例1は、アクリル系樹脂バインダーが、MMAのみからなる例で、本発明の範囲外であるので、密着性およびリワーク性が×評価になった。
・比較例2は、アクリル系樹脂バインダーが、MMAおよびCHMAのみからなる例で、本発明の範囲外であるので、密着性およびリワーク性が×評価になった。
・比較例3は、アクリル系樹脂バインダーが、MMA、CHMAおよびEHMAのみからなる例で、本発明の範囲外であるので、密着性およびリワーク性が×評価になった。
・比較例4は、アクリル系樹脂バインダーのMwが37万である例で、本発明の範囲外であるので、塗工性が×評価になった。
・比較例5は、アクリル系樹脂バインダーのMwが18万である例で、本発明の範囲外であるので、密着性およびリワーク性が×評価になった。
・比較例6は、実施例1のジイモニウム系色素(1)を3質量部添加した例で、本発明の範囲外であるので、近赤外線透過率(850nm)、近赤外線透過率(950nm)が悪化した。
・比較例7は、実施例1のジイモニウム系色素(1)を55量部添加した例で、本発明の範囲外であるので、可視光平均透過率が悪化した。
・比較例8は、粘着剤層(C)にポリエステル系粘着剤を使用した例で、本発明の範囲外であるので、密着性およびリワーク性が×評価になった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の近赤外線カット粘着シート部材は、近赤外線吸収層の塗工性に優れ、近赤外線吸収層と粘着剤層との密着性が良好で、リワーク性に優れ、さらに、可視光平均透過率、近赤外線透過率(850nm、950nm)に優れているので、とくにプラズマディスプレイパネルに好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルム(A)上に、近赤外線吸収層(B)を有し、さらに前記近赤外線吸収層(B)上に粘着剤層(C)が積層されてなる近赤外線カット粘着シート部材であって、
前記近赤外線吸収層(B)が、少なくともアクリル系樹脂バインダーおよび近赤外線吸収色素を含有し、
前記アクリル系樹脂バインダーが、メチルメタクリレート30〜97モル%、シクロヘキシルメタクリレート1〜30モル%、2−エチルヘキシルメタクリレート1〜30モル%およびジシクロペンタニルメタクリレート1〜10モル%(ただし、前記4成分の合計は100モル%)からなり、かつ質量平均分子量が20万〜35万であり、
前記アクリル系樹脂バインダー100質量部に対する前記近赤外線吸収色素の割合が、5〜50質量部であり、
前記粘着剤層(C)が、実質的に質量平均分子量40万〜250万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなることを特徴とする近赤外線カット粘着シート部材。
【請求項2】
前記近赤外線吸収色素が、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【請求項3】
前記近赤外線吸収色素が、下記一般式(1)で表されるスルホンイミドをアニオン成分にもつジイモニウム系色素であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【化1】

(式中、R1〜R8のうち少なくとも一つは、1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基を表し、他は、それぞれ独立してアルキル基、アルキレン基、シアノアルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子及びフェニルアルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R9およびR10は、それぞれ独立してフルオロアルキル基を表すか、またはそれらが一緒になって形成するフルオロアルキレン基を表す)
【請求項4】
前記1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項3に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
−Cnm2n+1-m ・・・・・・一般式(2)
(式中、Xはハロゲン原子を表し、nは1〜12の自然数、mは1〜25の自然数を示す)
【請求項5】
前記一般式(1)において、R1〜R8の全てが、前記一般式(2)で表されるハロゲン化アルキル基であることを特徴とする請求項4に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【請求項6】
前記一般式(1)で表されるスルホンイミドをアニオン成分にもつジイモニウム系色素が、ビス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸]−N,N,N',N'−テトラキス[p−ジ(4,4,4−トリフルオロブチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジイモニウムであることを特徴とする請求項3に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【請求項7】
前記透明基材フィルム(A)が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【請求項8】
前記粘着剤層(C)における前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【請求項9】
前記粘着剤層(C)が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対し、波長570〜610nmに極大吸収を有する色素0.01〜0.5質量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カット粘着シート部材。
【請求項10】
プラズマディスプレイパネルに使用されることを特徴とする請求項1〜9に記載の近赤外線カット粘着シート部材。

【公開番号】特開2009−191224(P2009−191224A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35855(P2008−35855)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】