説明

近赤外線加熱方法

【課題】金属の板状体を近赤外線加熱する際、近赤外線加熱装置全体としての出力比率を低下させる場合でも、吸収率の低下が少ないようにして加熱する手段を提供する。
【解決手段】点灯する近赤外線ランプを加熱温度に応じて選択し、選択された近赤外線ランプを、加熱温度に応じた40%以上の出力比率で点灯する。点灯する近赤外線ランプを選択する際には、点灯する近赤外線ランプの板幅方向の間隔が50mmを超えないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板などの金属の板状体を近赤外線加熱する方法に関し、特に加熱に使用する近赤外線ランプの効率的な点灯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品の躯体等に用いる鋼板として、溶融めっき鋼板表面をポリオレフィン樹脂やポリウレタン樹脂等によって直接被覆した表面処理鋼板が使用されるようになってきた。
この表面処理鋼板では、樹脂を塗付した後に、樹脂を硬化させるために100℃以上の温度で焼付け処理を行う必要がある。
【0003】
そのような加熱を行う手段の一つとして特許文献1、2に示されているような近赤外線による加熱がある。この近赤外線加熱は,0.72〜2.0μmを波長とする熱源を用いるもので、出力制御が容易である上、中赤外線や遠赤外線よりも熱エネルギーの透過性に優れた加熱方法として知られている。
【0004】
近赤外線加熱では、ヒータとなる近赤外線ランプとして、棒状や球状のものを使用するため、被加熱物が鋼板のような広い面積を加熱する必要がある場合は、多数のランプを配置する必要がある。そのような鋼板の加熱装置の1例を図1に示す。
【0005】
図1に示すように、加熱対象とする鋼板1に対向して、間に石英ガラス3を介してヒーターとなる近赤外線ランプ2が配置される。近赤外線ランプ2の入り口側と出口側は、反射板4によってトンネル状に囲まれており、また、石英ガラス3の側部も反射板4によって囲まれ、熱の放散を防いでいる。
【0006】
近赤外線ランプ2は、鋼板1の幅方向に、例えば15〜25mm程度の間隔で数10本〜100本程度配置され、さらに、鋼板の走行方向に複数列配置される。図1では、2列に近赤外線ランプ2を配置した例を示している。
近赤外線ランプ2は、鋼板1の通板方向に平行な方向の長さが例えば250mm程度のものであり、ランプ1本あたり約3〜5kWの出力を有する。
【0007】
加熱する際は、鋼板1を適当な速度で移動させ、点灯した近赤外線ランプ2の下を通過する際に、輻射伝熱により鋼板1を加熱する。近赤外線ランプは、鋼板の板幅の全域をカバーするすべてのランプを均一の出力で点灯して加熱する。鋼板の板厚や通板速度の条件が変化した場合は、加熱後の温度が一定になるように、加熱温度に応じて近赤外線ランプの出力を調整する。その際、近赤外線ランプの出力が低くなるような場合には、次のような問題がある。
【0008】
図5に、図1に示した近赤外線加熱装置のすべての近赤外線ランプを均一に点灯した状態で、すべての近赤外線ランプの出力を10〜100%に連続的に変化させて、溶融めっき鋼板を加熱した場合の、ランプ出力比率に対する吸収率と近赤外線ランプの温度との関係を示す。
なお、吸収率は、ランプに投入した電力のうち鋼板が受取った熱量の比率を表わすもので、投入した電力はランプに供給する電気の電圧・電流を測定することにより求め、鋼板が受取った熱量は加熱前後の鋼板温度差に処理量、比熱を乗じることによって求める。
【0009】
図5に示されるように、ランプの出力比率が低下し、近赤外線ランプの温度が3000
K以下に下がると、吸収率が急激に低下する。
【0010】
このように吸収率が低下する理由は、次のように考えられる。
一般に、近赤外線ランプが放射する輻射エネルギーの波長分布は、図2に示すように近赤外線ランプの温度に依存しており、ランプ温度が高いほど波長が短いエネルギーの割合が増える傾向にある。
【0011】
また、本発明者の調査によれば、溶融めっき鋼板における輻射エネルギーの波長と吸収率との関係は、例えば、図3、4のようになっており、波長が短いほど鋼板の吸収率が高く、波長が短いほど鋼板を効率的に加熱できる傾向にある。
図3に示すSn−Zn溶融めっき鋼板の例では、輻射エネルギーの波長が短いほど鋼板の吸収率が高くなっており、図4に示すZn溶融めっき鋼板の例では、波長が短いところに吸収率のピークがあり、この場合も波長が短いほど吸収率が高くなっている。
【0012】
このことから、近赤外線ランプの出力比率が低下すると、ランプの温度が低下し、波長の長い輻射エネルギーの割合が増加し、その結果、鋼板の吸収率が低下するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−275828号公報
【特許文献2】特表2006−500547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、近赤外線加熱装置全体としての出力比率を低下させる場合でも、吸収率の低下が少ないようにして加熱する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、近赤外線加熱装置全体としての出力比率を低下させる場合、すべての近赤外線ランプの出力比率を同じように低下させるのではなく、近赤外線ランプの温度ができるだけ高くなるようにランプの点灯パターンを切り替えることで、鋼板の吸収率(=加熱効率)を高い状態に保つようにして、上記課題を解決した。
そのような本発明の要旨は以下の通りである。
【0016】
(1)複数の近赤外線ランプを用いて、該ランプに対向して配置された板状の被加熱物を加熱する近赤外線加熱方法において、
点灯する近赤外線ランプを加熱温度に応じて選択し、選択された近赤外線ランプを、加熱温度に応じた40%以上の出力比率で点灯することを特徴とする近赤外線加熱方法。
(2)点灯する近赤外線ランプの板幅方向の間隔が50mmを超えないように、点灯する近赤外線ランプを選択することを特徴とする(1)に記載の近赤外線加熱方法。
(3)板状の被加熱物が、溶融めっき鋼板表面をポリオレフィン樹脂またはポリウレタン樹脂によって直接被覆した表面処理鋼板であることを特徴とする(1)または(2)に記載の近赤外線加熱方法。
【発明の効果】
【0017】
近赤外線加熱装置全体としての出力比率を低下させる場合でも、個々の近赤外線ランプの出力比率の低下量が少なくなるように近赤外線ランプを点灯して、加熱効率の低下が少ないように加熱する手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】近赤外線加熱装置の構造を概略的に示す図である。
【図2】照射する光の波長と輻射エネルギーの関係を示す図である。
【図3】Sn−Zn溶融めっき鋼板における被加熱物に照射する光の波長と吸収率の関係を示す図である。
【図4】Zn溶融めっき鋼板における図3と同様の関係を示す図である。
【図5】本発明により近赤外線ランプの点灯パターンを変化した場合における、ランプ出力比率に対する吸収率とランプの温度との関係の一例を示す図である。
【図6】従来の近赤外線ランプの点灯パターンにおける、ランプ出力比率に対する吸収率とランプの温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者は、吸収率を大きくするには、短い波長で加熱する方が有利であること、ランプの温度が高いほど、波長が短い輻射エネルギーの割合が増えることから、大きな熱出力を必要としない加熱の場合でも、なるべく高い出力で近赤外線ランプを点灯する手段について検討した。
【0020】
その結果、図1に示したような複数の近赤外線ランプを有する加熱装置において、全部の近赤外線ランプを点灯するのではなく、必要な熱出力に応じて点灯するランプの数を増減すればよいこと、その際、単にランプの数を増減するのではなく、近赤外線ランプの出力をできるだけ高い出力で点灯する必要があることを着想した。
【0021】
そこで、図1に示した装置を用いて次のような実験を行った。
ランプの点灯数と点灯ランプの出力比率を(a)〜(d)のように変化させた。
(a)は4分の1の数のランプを40〜100%の出力で点灯する。
(b)は2分の1の数のランプを50〜100%の出力で点灯する。
(c)は4分の3の数のランプを67〜100%の出力で点灯する。
(d)は全部の数のランプを75〜100%の出力で点灯する。
【0022】
図4に、ランプ出力比率に対する吸収率と近赤外線ランプの温度との関係を示す。
図4に示されるように、全ランプの出力比率が50%以下の領域では、(a)、(b)のようにランプを点灯した場合、従来のように均一にランプを点灯した場合に比べて吸収率の低下が大幅に少なくなっており、選択的にランプを点灯するとともに、各ランプの出力比率を少なくとも40%以上にすることにより、大きな吸収率の低下をともなうことなく、効率的に被加熱物を加熱できることが確認できた。
【0023】
そこで、加熱温度に応じた近赤外線ランプを選択する条件について検討した。
【0024】
まず、板状の被加熱物を均一加熱するために必要な点灯ランプの配置を求めるために、近赤外線ランプを全部点灯した状態で、被加熱物である鋼板を加熱した後、ランプを少しずつ消灯しながら鋼板の温度分布を測定した。
【0025】
ランプを1本おきに消灯した場合では、ランプの点灯部分と消灯部分に位置する鋼板の間に温度差はなかった。次に、3本おきに点灯(3分の2を消灯)した場合では、消灯部分に位置する鋼板の温度が低くなっていた。
以上の実験を、ランプを15〜25mmの間隔で配置した場合について行ったが、いずれも同様の結果であり、点灯するランプの間隔がランプ2本分の間隔(30〜50mm)を超えないように、点灯ランプと消灯ランプを交互に配置することで均一に加熱することが可能であることがわかった。
【0026】
以上の検討結果を基づき、目標加熱温度に対する、点灯ランプの数と分布や点灯ランプの出力の決め方について説明する。
【0027】
まず、近赤外線加熱装置全体の出力比率に対して使用するランプの数と点灯ランプ出力を予め次のように決めておく。
(a)加熱装置全体の出力比率を0%以上25%未満とする場合は、4分の1の数のランプを図4(a)のように点灯させ、個々のランプを40〜100%の出力で点灯する。
(b)同じく25%以上50%未満とする場合は、2分の1の数のランプを図4(b)のように点灯させ、個々のランプを50〜100%の出力で点灯する。
(c)同じく50%以上75%未満の場合は、4分の3の数のランプを図4(c)のように点灯させ、個々のランプを67〜100%の出力で点灯する。
(d)同じく75%以上の場合は、全部の数のランプをそれぞれ75〜100%の出力で点灯する。
そして、近赤外線加熱装置の出口に設置された温度計で鋼板温度を測定し、目標加熱温度になるよう点灯する近赤外線ランプの出力比率をフィードバック制御によって調整する。
【0028】
以上のような、本発明の近赤外線加熱方法は、溶融めっき鋼板表面をポリオレフィン樹脂またはポリウレタン樹脂によって直接被覆した表面処理鋼板の製造において、被覆した樹脂を100℃付近の温度で加熱して硬化させる焼付け処理を行う場合に特に好適であり、低コストで効率的に加熱することができる。
以下、その際に用いられるポリオレフィン樹脂またはポリウレタン樹脂について説明する。
【0029】
ポリオレフィン樹脂およびポリウレタン樹脂には、被覆を形成させるための架橋剤、耐食効果を得るための防錆剤、加工時の潤滑性を持たせるための潤滑剤が含まれていてもよい。また、溶接性向上のため導電フィラーのほか、意匠性向上のための着色顔料、沈降防止剤、レベリング剤、粘度調整のための増粘剤などが添加されていてもよい。
【0030】
上記架橋剤として、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物およびそのブロック体、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、シラン化合物、架橋性ジルコニウム化合物、チタン化合物等を挙げることができる。
【0031】
上記アミノ樹脂としては、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、イミノ基型メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、尿素樹脂等、一般に公知のアミノ樹脂を使用することができる。これらの樹脂には、市販されているもの、例えば、三井サイテック社製「サイメルT M 」、「マイコートT M」(何れも三井サイテック社の登録商標)、大日本インキ化学工業社製「ベッカミンT M 」、「スーパーベッカミンT M 」(何れも大日本インキ化学工業社の登録商標)等を使用することができる。また、複数の種類のアミノ樹脂を混合して使用しても良い。これらの中でも、特に、ヘキサメトキシメチル化メラミンを用いると、耐食性と密着性とのバランスが良く、より好適である。
【0032】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、そのブロック化物は、上記ポリイソシアネート化合物のブロック化物である。
【0033】
上記エポキシ化合物としては、例えば、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ソルビタンポリグルシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンレングリコールジグリシジルエーテル、2,2−ビス−(4’−グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0034】
上記カルボジイミド化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドを合成した後、更にイソシアネート基との反応性を有する官能基を持つ親水性セグメントを付加した化合物等を挙げることができる。
【0035】
上記シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0036】
上記架橋性ジルコニウム化合物としては、カルボキシル基や水酸基と反応しうる官能基を複数個有するジルコニウム含有化合物であれば特に限定されないが、水又は、有機溶剤に可溶である化合物が好ましく、水溶性のジルコニウム化合物であることがより好ましい。このような化合物として例えば、炭酸ジルコニルアンモニウムを挙げることができる。
上記チタン化合物としてはジプロポキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシ・ビス(ジエタノールアミナト)チタン、プロポキシ・トリス(ジエタノールアミナト)チタン、ジブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジブトキシ・ビス(ジエタノールアミナト)チタン、ジプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジヒドロキシ・ビス(ラクタト)チタンモノアンモニウム塩、ジヒドロキシ・ビス(ラクタト)チタンジアンモニウム塩、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等を挙げることができる。
【0037】
上記防錆剤として、シリカ粒子、リン酸化合物、ニオブ化合物、ジルコニウム化合物等を挙げることができる。
【0038】
上記シリカ粒子を樹脂に含有させることによって、より耐食性を向上させることができる。上記シリカ粒子としては特に限定されないが、皮膜が薄膜であることから、一次粒子径が5 〜 5 0 n m のコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等のシリカ微粒子であることが好ましい。市販品としては、例えば、スノーテックスC、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスS、スノーテックスUP、スノーテックスPS−M、スノーテックスPS−L、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40(何れも日産化学工業製)、アデライトAT−20N、アデライトAT−20A、アデライトAT−20Q(何れも旭電化工業製) 、アエロジル2 0 0 ( 日本アエロジル) 等を挙げることができる。
【0039】
上記リン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類及びそれらの塩、また、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類及びそれらの塩、また、フィチン酸塩等を挙げることができる。
【0040】
上記ニオブ化合物としては、例えば、酸化ニオブ、ニオブ酸及びその塩、フルオロニオブ酸塩、フルオロオキソニオブ酸塩等を挙げることができる。
上記ジルコニウム化合物としては、例えば、酸化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸及びその塩等を挙げることができる。
【0041】
上記潤滑剤として、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、シリコーン及びその誘導体を挙げることができる。
【0042】
上記ポリオレフィンワックス及びその誘導体としては、例えば、パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレン等の炭化水素系のワックス、これらの誘導体等を挙げることができる。上記誘導体として、例えば、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等を挙げることができる。上記レベリング剤として、例えば、ブチルセルソルブ等の親水性溶剤等を挙げることができる。上記増粘剤として、例えば、ポリアクリル酸等を挙げることができる。
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、近赤外線加熱装置全体としての出力比率を低下させる場合でも、加熱効率の低下が少ないように加熱することができるが、さらに、実施例により、本発明の実施可能性及び効果について説明する。
【実施例】
【0044】
鋼板の通板方向に平行な方向の長さが250mmであり、約1〜5kWの出力を有する近赤外線ランプを、鋼板の幅方向に20mmの間隔で70本配置し、さらに、鋼板の走行方向に2列に配置した、図1に示した装置と同様の近赤外線加熱装置を用いて、Sn−Zn溶融めっき鋼板を、種々の点灯条件で100℃に加熱した。
【0045】
表1に点灯条件と吸収率を示す。
発明例では、個々の点灯ランプの出力を80%として、点灯ランプのパターンを3種類に変化させ、鋼板の走行速度を調整して100℃になるようにした。比較例では、全ランプの出力を一様に3段に変化させて同様に100℃に加熱した(ランプ個々の出力とランプ全体の出力は同じ)。
【0046】
本発明例によれば、比較例に比べて高い吸収率で鋼板を加熱することができた。また、ランプ全体では、低い出力比率で点灯しても、発明例では、高い出力比率の場合と同様の吸収率で加熱できた。
【0047】
【表1】

【符号の説明】
【0048】
1 被加熱物である鋼板
2 近赤外線ランプ
3 石英ガラス
4 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の近赤外線ランプを用いて、該ランプに対向して配置された板状の被加熱物を加熱する近赤外線加熱方法において、
点灯する近赤外線ランプを加熱温度に応じて選択し、選択された近赤外線ランプを、加熱温度に応じた40%以上の出力比率で点灯することを特徴とする近赤外線加熱方法。
【請求項2】
点灯する近赤外線ランプの板幅方向の間隔が50mmを超えないように、点灯する近赤外線ランプを選択することを特徴とする請求項1に記載の近赤外線加熱方法。
【請求項3】
板状の被加熱物が、溶融めっき鋼板表面をポリオレフィン樹脂またはポリウレタン樹脂によって直接被覆した表面処理鋼板であることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−7469(P2011−7469A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154268(P2009−154268)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】